説明

水力発電設備

S字形の管として形成される水路(40)であって第1、第2および第3の部分(100、200、300)を有する水路(40)を備えた水力発電設備が提供される。この水路(40)は、第1部分(100)において第1の直径(400)および第1の中心線(410)と、第3部分(300)において第2の直径(500)および第2の中心線(510)とを有する。この第1および第2中心線の間には、距離(600)が設けられる。この水力発電設備は、さらに、第1部分(100)におけるタービン翼(10)と、軸(20)を介してこのタービン翼(10)に連結される第3部分(300)における発電機(30)とを有する。水路(40)は、発電機(30)の領域において、基本的に鋼製である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の水力発電設備が知られている。
【0003】
S字形の管形状を有する既知の水力発電設備の一例が図1に示されている。この場合、水路40は、第1、第2および第3部分100、200、300を有するようにS字形に形成することが可能である。さらに、第1および第3部分100、300はほぼ直線に形成でき、かつ、その第1および第2部分は互いに離して配置される。第2部分200は、第1部分100を第3部分300に連結する役割を果たす。第1部分の領域には、タービン翼10を備えた回転ホイールを設けることができる。タービン翼10は、軸20を介して発電機30に連結できる。水路40を流れる水流によって、タービン翼10が駆動され、この回転運動が、発電機30において電気エネルギーに変換される。発電機30は、通常、コンクリート製の基礎50の上に設置される。
【0004】
先行技術として、引用文献1、引用文献2、引用文献3および引用文献4が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2550826号明細書
【特許文献2】米国特許第4319142号明細書
【特許文献3】米国特許第1859215号明細書
【特許文献4】特開昭60−008474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、効率が改善された水力発電設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1による水力発電設備によって達成される。
【0008】
すなわち、S字形の管として形成される水路であって、第1、第2および第3の部分を有する水路を備えた水力発電設備が提供される。この水路は、第1部分において第1の直径および第1の中心線と、第3部分において第2の直径および第2の中心線とを有する。第1および第2の中心線の間には距離が設けられる。この水力発電設備は、さらに、第1部分におけるタービン翼と、軸を介してこのタービン翼に連結される第3部分における発電機とを備えている。水路は、発電機の領域において、基本的に鋼からなる。
【0009】
本発明の一態様によれば、第2部分の長さの、第1および第2中心線の間の距離に対する比が、2〜4、好ましくは3である。
【0010】
本発明の別の態様によれば、発電機用の基礎が、第3部分における水路の天井部分の領域に設けられる。この水路の天井部分は例えば鋼構造として形成できる。
【0011】
本発明のさらに別の態様によれば、基礎が、第3部分における水路内の水力学的荷重を除去し得るように形成される。
【0012】
本発明のまたさらに別の態様によれば、第1または第3部分に、第1および第2の拡開部分が設けられる。
【0013】
本発明は、通常、回転ホイール翼の前後の状況のみが観察されているに過ぎないという認識に基づいている。この場合は、水路並びに吸い込み管内で発生する損失が等閑にされるということになる可能性がある。特に、第3部分の形態は、吸い込み管内で生じる水力学的荷重が除去されるように構成されるべきである。このため、第3部分における水路の天井部分はそれに対応するように形成しなければならない。しかし、第3部分における水路の天井部分の形態は、吸い込み管もしくは水路の第2部分の勾配にも影響する。第3部分における水路の天井部分の形態を改善することによって、第2部分における必要な勾配を低減することが可能である。これは、特に、水力学的荷重を除去するために鋼材を使用することによって実現できる。これによって、勾配を低減し、曲がり部の半径を大きくし、水路40内の流れの特性を有利なものにすることができる。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態は従属請求項の対象である。
【0015】
次に、本発明の実施形態および利点を、図面に関連付けて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】先行技術による水力発電設備の概略図である。
【図2】第1実施形態による水力発電設備の概略図である。
【図3】第2実施形態による水力発電設備の概略平面図である。
【図4】第2実施形態による水力発電設備の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2は、第1実施形態による水力発電設備の概略図を示す。この水力発電設備は、第1、第2および第3部分100、200、300を有する。水路40は、ほぼS字形の管として形成され、第1、第2および第3部分100、200、300を通って延びている。水路40は、第1部分100において、ほぼ直線に形成され、かつ第1直径400および第1中心線410を有する。第3部分300において、水路は、同様にほぼ直線に形成され、かつ第2直径500および第2中心線510を有する。第2部分200は第1部分100を第3部分300に連結する。第1および第2の中心線410、510は、第1距離600だけ互いに離して配置される。
【0018】
第1部分100の領域に、タービン翼10を備えた回転ホイールが設けられる。発電機30は、第3部分300の領域において基礎50上に配置される。回転ホイール10は軸20を介して発電機30に連結される。
【0019】
オプションとして、第1および/または第3部分100、300に、水路の第1または第2拡開部分800、900を設けることができる。第2部分200は中心線220を有することができる。この中心線220は勾配αを有することができ、αは、10°〜30°の間、特に18°〜22°の間にすることができる。αは、好ましくは21°とすることができる。
【0020】
第1部分100には圧力領域が、回転ホイール10の背後の部分には水路の吸い込み領域が設けられる。
【0021】
この場合、第1、第2および第3領域100、200、300は、特に、流れが水路の壁面から離れないように形成される。この第1実施形態による水路40の形態によって、第2部分200を先行技術より長く形成できる。
【0022】
第3部分における水路40の天井部分41は、発生する水力学的荷重を吸収し得るように形成される。天井部分41は、例えば、水力学的荷重を除去するための鋼材を有することができる。天井部分41、もしくは発電機30の下部の水路40の領域部分は、オプションとしての鋼材、特に特殊鋼を有する。特殊鋼は、特に、水に接触する表面用として用いられる。従って、水路40は、基本的にコンクリート製として形成できるが、発電機30の下部の領域は(特殊)鋼製とするのである。
【0023】
第1実施形態によれば、発電機30は、基礎50としての鋼製の軌条または鋼製架台の上に配置できる。この基礎50は水路の天井部分41と組み合わせることができる。この鋼製架台は、水路の水力学的荷重を吸収するのに役立つ。
【0024】
発電機30は、歯車伝動装置なしに、軸20もしくは回転ホイール翼に連結することが望ましい。これによって、駆動系における損失を少なくすると共に、高速回転する構造部品を避けることができる。この方式は、必要な保守コストと油性の運転材料の使用とが僅かなものになるので特に有利である。回転ホイール10は、いわゆるアップウィンドロータとして形成できるがそれが望ましい。これによって、最適な流れの条件が可能になる。案内翼を支持構造として形成できるので、導水路内の組み込み部分の個数が最小化される。水力発電設備のこの形態によって、特に水路40の形態によって、方向転換部分の半径が小さくなることを回避でき、その結果、タービンにおける落差の損失が最小化される。
【0025】
図3は、第2実施形態による水力発電設備の平面図を示す。この水力発電設備は、1つの水路40を含む第1、第2および第3部分100、200、300を有する。さらに、水路40内には、タービン翼10と、それに結合される軸とが設けられる。水路40の外側においては、発電機30が基礎50の上に設けられる。
【0026】
図4は、第2実施形態による水力発電設備の概略図を示す。この水力発電設備は第1、第2および第3部分100、200、300を有する。水路40がほぼS字形の管として形成され、第1、第2および第3部分100、200、300を通って延びている。水路40は、第1部分100において、ほぼ直線に形成され、かつ第1直径400および第1中心線410を有する。第3部分300において、水路は、同様にほぼ直線に形成され、かつ第2直径500および第2中心線510を有する。第2部分200は第1部分100を第3部分300に連結する。第1および第2の中心線410、510は、第1距離600だけ互いに離して配置される。
【0027】
第1部分100の領域に、タービン翼10を備えた回転ホイールが設けられる。発電機30は、第3部分300の領域において基礎50上に配置される。回転ホイール10は軸20を介して発電機30に連結される。
【0028】
オプションとして、第1および/または第3部分100、300に、水路の第1または第2拡開部分800、900を設けることができる。第2部分200は中心線220を有することができる。この中心線220は勾配αを有することができ、αは、10°〜30°の間、特に18°〜22°の間にすることができる。αは、好ましくは21°とすることができる。
【0029】
第1および第2直径400、500は、4m〜6mの間、好ましくは4.50m〜5mの間、特に4.8mとすることができる。第2部分200の長さ700は、15m〜21mの間、好ましくは18mとすることができる。2つの中心線410、510の間の距離600は、4m〜8mの間、好ましくは6mとすることができる。
【0030】
第2部分200の長さ700の、第1および第2中心線410、510の間の距離に対する比は、2〜4の間、好ましくは3である。
【0031】
本発明の1つの実施形態によれば、第1および第2直径400、500と、第2部分200の長さ700との間の比を、0.15〜0.35、特に0.267とすることができる。本発明のさらに別の態様によれば、第1または第2直径400、500の角度αに対する比を、0.2〜0.3の間、特に0.229とすることができる。
【0032】
S字形の管または水路の本発明による形態によって、第1および第2部分の間、並びに第2および第3部分の間のバランスの取れた移行が実現できる。これは、水路内における渦の生成を低減できるので、特に有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
S字形の管として形成される水路(40)であり、第1、第2および第3の部分(100、200、300)を有する水路(40)であって、この水路(40)は、第1部分(100)において第1の直径(400)および第1の中心線(410)と、第3部分(300)において第2の直径(500)および第2の中心線(510)とを有し、その場合、この第1および第2中心線の間に距離(600)が設けられる水路(40)と、
前記第1部分(100)におけるタービン翼(10)、および、軸(20)を介してこのタービン翼(10)に連結される前記第3部分(300)における発電機(30)と、
を備えた水力発電設備であって、
前記水路(40)が、前記第3部分(300)における発電機(30)の領域において、基本的に鋼製である、水力発電設備。
【請求項2】
前記第2部分(200)の長さ(700)の、前記第1および第2中心線(410、510)の間の距離(600)に対する比が2〜4である、請求項1に記載の水力発電設備。
【請求項3】
前記長さ(700)と前記距離(600)との間の比が3である、請求項1または2に記載の水力発電設備。
【請求項4】
前記発電機(30)用の基礎(50)が、前記第3部分(300)における水路(40)の天井部分(41)の領域に設けられ、かつ、基本的に鋼構造として形成される、請求項1、2または3に記載の水力発電設備。
【請求項5】
前記基礎(50)が、前記第3部分(300)における水路(40)内の水力学的荷重を除去し得るように形成される、請求項4に記載の水力発電設備。
【請求項6】
前記第1および/または第3部分(100、300)に、第1および/または第2拡開部分(800、900)を備えた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水力発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−502215(P2012−502215A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525506(P2011−525506)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060888
【国際公開番号】WO2010/026072
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)
【Fターム(参考)】