説明

水又は或る種の溶媒の添加によるブタジエンコポリマーの臭素化方法

臭素化剤として或る種の第四級アンモニウムトリブロミドを使用してブタジエンコポリマーを臭素化する。この臭素化方法は、穏和な条件下で容易に進行し、優れた熱安定性を有する臭素化生成物を生成する。第四級アンモニウムモノブロミド塩が反応副生物として生成する。脂肪族炭素−炭素二重結合の約25〜90%臭素化後に、モノブロミド塩用の溶媒を反応に添加する。この方法は、僅かな不純物を含有する生成物を生成させると共に、著しく短い反応時間を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件特許出願は2008年3月6日出願の米国仮特許出願第61/034,355号からの優先権を請求する。
【0002】
本発明はスチレン及びブタジエンの臭素化ブロック、ランダム又はグラフトコポリマーのような、ブタジエンコポリマーの臭素化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、ブタジエンコポリマーの臭素化方法が記載されている。この臭素化剤はフェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミド又はテトラアルキルアンモニウムトリブロミドである。この方法は溶液中のコポリマーで実施される。脂肪族炭素−炭素二重結合の非常に選択的な臭素化が達成され、芳香族環は本質的に影響を受けないままである。この方法は、好ましくは酸素を含有していない塩素化溶媒中で行われる。これは、ポリマー上のエーテル基の形成を最小にするための助けになり、エーテル基は、しばしば、臭素化ポリマーの熱安定性に悪影響を与えるので、これは有利である。別の利点は、温度条件を約80℃よりも低く制御する場合に、臭素化ポリマーと塩素化溶媒との間で、ハロゲン交換が驚くべきことに殆ど起きないことである。
【0004】
臭素化ポリマーの潜在的な用途は、熱可塑性ポリマー、例えばポリスチレン用の難燃性添加物としてである。この臭素化ポリマーの熱的特性は、この用途に於いて非常に重要である。熱可塑性ポリマーは、典型的には、この臭素化ポリマーと溶融ブレンドプロセスでブレンドされる。このブレンドは、殆どの場合に、同時に又は続いて溶融加工されて、加工品を形成する。例えばこのブレンドは、それを押出成形して発泡若しくは未発泡物品を形成することにより又は射出成形により、溶融流延により若しくはブレンドを溶融させて、それを所望の製品形に転換することを含む他のプロセスにより、溶融加工することができる。この臭素化ポリマーは、溶融ブレンド及び溶融加工操作の間に遭遇する温度で熱安定性でなくてはならない。更に、この臭素化ポリマーは,火災条件下で分解して、臭素及び臭化水素を遊離することができなくてはならない。この臭素化ポリマーが熱安定性でありすぎると、これは正しい温度で分解せず、難燃剤として効力がない。臭素化ポリブタジエンコポリマーは、これを、或る種の副反応を最小にすることによって注意深く製造する場合、難燃剤用途のために必要である熱的特性を有し得ることが見出された。特許文献1に記載されている方法によって、所望の熱的特性を有する臭素化ポリブタジエンコポリマーが製造される。
【0005】
特許文献1に記載されている臭素化方法の問題点は、この反応が、他の場合には有利である反応条件下でゆっくり進行することである。この長い反応時間は、任意の所定の製造装置内で、処理能力に影響を与える。より長い反応時間は、単位時間当たり生成物の所定の量を製造するために、より大きい又はより多くの装置が必要であることを意味する。この理由のために、この方法は、所望されるものよりも一層資本集約的である。反応速度を増加させて、処理量を増加させ、資本コストを対応して減少できることが望まれるであろう。反応温度を上昇させることによって、反応速度を単純に増加させることは、より高い反応温度で、望ましくない副反応が一層多く見られる傾向があるので、この問題点に対する実用的な解決ではない。これらの望ましくない副反応には、前記のハロゲン交換反応及びヒドロブロム化反応、環ハロゲン化、第三級炭素原子でのハロゲン化、ヒドロキシル基の生成等が含まれてよい。これらの副反応は、殆どの場合に、臭素化ポリマーの熱安定性を低下させ、従って、このポリマーを、難燃性添加剤としてあまり有用でないようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許出願公開第WO2008/021417号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、良好な熱的特性を有する臭素化ブタジエンポリマーを、一層迅速に製造することができる方法が、望まれるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一つの面に於いて、脂肪族炭素−炭素二重結合を含有するブタジエンポリマーを、フェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミド又はテトラアルキルアンモニウムトリブロミドと、ブタジエンポリマー用の少なくとも1種の溶媒の存在下に、反応させて、臭素化ブタジエンポリマー及びフェニルトリアルキルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムモノブロミド又はテトラアルキルアンモニウムモノブロミド副生物を生成させることを含んでなる方法であって、ブタジエンポリマー中の脂肪族炭素−炭素二重結合の約25〜90%が臭素化されたときに、フェニルトリアルキルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムモノブロミド又はテトラアルキルアンモニウムモノブロミド副生物用の溶媒を、反応混合物に添加して、フェニルトリアルキルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムモノブロミド又はテトラアルキルアンモニウムモノブロミド副生物用の溶媒の存在下に、臭素化反応の残りを実施する方法である。
【0009】
別の面に於いて、本発明は、脂肪族炭素−炭素二重結合を含有するブタジエンポリマーを、フェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミド又はテトラアルキルアンモニウムトリブロミドと、ブタジエンポリマー用の少なくとも1種の溶媒の存在下に、反応させて、臭素化ブタジエンポリマー及びフェニルトリアルキルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムモノブロミド又はテトラアルキルアンモニウムモノブロミド副生物を生成させることを含んでなる方法であって、ブタジエンポリマー中の脂肪族炭素−炭素二重結合の約25〜90%が臭素化されたときに、水を反応混合物に添加して、水の存在下に、臭素化反応の残りを実施する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第四級アンモニウムモノブロミド副生物用の溶媒の添加は、臭素化反応の速度に於ける劇的な増加に至り、これは、脂肪族炭素−炭素二重結合の所定の転化率を得るために、より短い反応時間が必要であることを意味する。水は、その低コスト、容易な入手性及び良好な性能のために、第四級アンモニウムモノブロミド副生物用の特に好ましい溶媒である。
【0011】
モノブロミド副生物用の溶媒の添加のタイミングは、生成物の品質に著しく影響を与えることが見出された。ブタジエンポリマーの脂肪族炭素−炭素二重結合の転化率が、少なくとも25%であるまで、モノブロミド副生物のための溶媒を反応の中に添加しないときに、不純物生成は最小になる。約25%転化率の前に、モノブロミド副生物用の溶媒を添加する場合、不純物レベルは著しく増加する傾向がある。不純物は、生成物臭素化ポリマーの熱安定性を低下させる傾向があるので、モノブロミド不純物用の溶媒の導入を遅延させることによって、不純物の生成を減少させることが非常に望ましい。他方、モノブロミド副生物用の溶媒を、約90%転化率の前に添加しない場合には、より速い反応速度の利益の大部分は失われる。転化率が25〜90%であるときモノブロミド副生物のための溶媒を導入し、この反応の残りをこの溶媒の存在下に実施するとき、より短い反応時間及び低い不純物生成の二重の利益を認識することができる。
【0012】
ブタジエンのポリマーは、本発明の方法に於ける出発材料である。このブタジエンポリマーはホモポリマー又はブタジエンと1種若しくはそれ以上の他のモノマーとのコポリマーであってよい。コポリマーは、ランダム、ブロック又はグラフトコポリマーであってよく、少なくとも10重量%の重合されたポリブタジエンを含有していなくてはならない。ブタジエンは重合して2種の繰り返し単位を形成する。本明細書に於いて「1,2−ブタジエン単位」として参照される一つの種類は、形:
−CH2−CH−

CH=CH2
を取り、そうして、ポリマーに側鎖の不飽和基を導入する。本明細書に於いて「1,4−ブタジエン」単位として参照される第二の種類は、形:
−CH2−CH=CH−CH2
を取り、主ポリマー鎖中に不飽和を導入する。このブタジエンポリマーは、少なくとも幾らかの1,2−ブタジエン単位を含有していなくてはならない。このブタジエンポリマー中のブタジエン単位の、適切には少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、更に好ましくは少なくとも20%、なお更に好ましくは少なくとも25%は、1,2−ブタジエン単位である。1,2−ブタジエン単位は、ブタジエンポリマー中のブタジエン単位の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%又は少なくとも70%を構成することができる。1,2−ブタジエン単位の比率は、ポリマー中のブタジエン単位の85%よりも多く又は90%よりも多くてよい。
【0013】
制御された1,2−ブタジエン含有量を有するブタジエンポリマーの製造方法は、Journal of Polymer Science(D,Macromolecular Review)、第3巻、第317頁(1968年)に於いてJ.F.Henderson及びM.Szwarcによって、J.Polym.Sci.A−2、9、43−57(1971)に於いてY.Tanaka、Y.Takeuchi、M.Kobayashi及びH.Tadokoroによって、Macromolecules、6、129−133(1973)に於いてJ.Zymona、E.Santte及びH.Harwoodによって並びにJ.Polym.Sci.Polym.Chem.、21、1853−1860(1983)に於いてH.Ashitaka等によって記載されている。
【0014】
好ましい出発材料は、ブタジエン及び少なくとも1種のビニル芳香族モノマーの、ランダム、ブロック又はグラフトコポリマーである。「ビニル芳香族」モノマーは、芳香族環の炭素原子に直接結合されている重合性エチレン性不飽和基を有する芳香族化合物である。ビニル芳香族モノマーには、置換されていない材料、例えばスチレン及びビニルナフタレン並びにエチレン性不飽和基上で置換された(例えばα−メチルスチレン)及び/又は環置換された化合物が含まれる。環置換されたビニル芳香族モノマーには、芳香族環の炭素原子に直接結合されているハロゲン、アルコキシ、ニトロ又は置換若しくは非置換のアルキル基を有するものが含まれる。このような環置換されたビニル芳香族モノマーの例には、2−又は4−ブロモスチレン、2−又は4−クロロスチレン、2−又は4−メトキシスチレン、2−又は4−ニトロスチレン、2−又は4−メチルスチレン及び2,4−ジメチルスチレンが含まれる。好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン及びこれらの混合物である。
【0015】
「ビニル芳香族単位」は、ビニル芳香族モノマーが重合されたとき形成される出発材料中の繰り返し単位である。適切なブタジエン/ビニル芳香族出発コポリマーには、5〜90重量パーセントの重合されたビニル芳香族モノマー単位及び少なくとも10重量%の重合されたブタジエンが含有されている。
【0016】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーは、コポリマーの、ランダム、ブロック(多ブロック、例えばジブロック又はトリブロック型を含む)又はグラフト型であってよい。スチレン/ブタジエンブロックコポリマーは、商業的量で広く入手可能である。商品名VECTOR(登録商標)でDexco Polymersから入手可能なものが適している。スチレン/ブタジエンランダムコポリマーは、Polymer、第46巻、第4166頁(2005年)中にA.F.Halasaによって記載された方法に従って製造することができる。スチレン/ブタジエングラフトコポリマーは、Journal of Polymer Science(Polymer Chemistry Edition)、第14巻、第497頁(1976年)中にA.F.Halasaによって記載された方法に従って製造することができる。スチレン/ブタジエンランダム及びグラフトコポリマーは、Anionic Polymerization Principles and Practical Applications、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1996年刊の第9章中に、Hsieh及びQuirkによって記載された方法に従って製造することもできる。
【0017】
このブタジエンポリマーは、ブタジエン及びビニル芳香族モノマー以外のモノマーを重合させることによって形成された繰り返し単位を含有していてもよい。このような他のモノマーには、オレフィン、例えばエチレン及びプロピレン、アクリレート又はアクリルモノマー、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸等が含まれる。これらのモノマーは、ブタジエンとランダムに重合されてよく、ブロックを形成するように重合されてよく又はブタジエンポリマーの上にグラフトされていてよい。
【0018】
ブタジエンポリマーの最も好ましい種類は1個又はそれ以上のポリスチレンブロック及び1個又はそれ以上のポリブタジエンブロックを含有するブロックコポリマーである。これらの中で、中央のポリブタジエンブロック及び末端のポリスチレンブロックを有するジブロックコポリマー及びトリブロックコポリマーが特に好ましい。
【0019】
このブタジエンポリマーは1,000〜400,000、好ましくは2,000〜300,000、更に好ましくは5,000〜200,000、なお更に好ましくは50,000〜175,000の範囲内の重量平均分子量(Mw)を有する。本発明の目的のために、分子量は、ポリスチレン標準物質に対する、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定したときの見掛け分子量である。GPC分子量決定は、直列で連結した2個のPolymer Laboratories PLgel5マイクロメーターMixed−Cカラム及びAgilent G1362A屈折率検出器を取り付けたAgilent 1100シリーズ液体クロマトグラフを使用して、溶離剤として、1mL/分の速度で流し、35℃の温度に加熱したテトラヒドロフラン(THF)で、実施することができる。
【0020】
本発明に於いて使用される臭素化剤は、フェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミド又はテトラアルキルアンモニウムトリブロミドの1種又はそれ以上から選択される第四級アンモニウムトリブロミドである。これらの例には、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、テトラメチルアンモニウムトリブロミド、テトラエチルアンモニウムトリブロミド、テトラプロピルアンモニウムトリブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムトリブロミド等が含まれる。
【0021】
この第四級トリブロミド臭素化剤は、対応する第四級アンモニウムモノブロミド塩を元素状臭素と混合することによって製造することができる。このモノブロミド塩は、通常、水溶性であるので、トリブロミドを製造する便利な方法は、元素状臭素を、モノブロミド塩の水溶液に添加することである。この反応は、ほぼ室温で充分に進行するが、所望により、より高い温度又はより低い温度を使用することができる。トリブロミドは、水相から沈殿する傾向があるので、任意の便利な固液分離方法によって、液相から回収することができる。第四級アンモニウムトリブロミドは、有機溶媒中に可溶性であるので、これは、有機溶媒による抽出によって、有機溶媒中の第四級アンモニウムトリブロミドの溶液を形成することによって、水相から分離することができる。このトリブロミドは多くの有機溶媒中に可溶性であり、所望により、反応混合物の中へのトリブロミドの添加を容易にするために、このような溶媒中に溶解させることができる。有機溶媒を使用する場合、好ましくは、ブタジエンポリマー用の溶媒でもあり、最も好ましくは、ブタジエンポリマーを溶解するために使用した同じ溶媒である。トリブロミドを水の存在下で製造した場合、これは、ブタジエンポリマーと接触される前に水から分離される。
【0022】
臭素化反応は、ブタジエンポリマー用の溶媒中で実施される。便宜上、ブタジエンポリマー用の溶媒は、時には、本明細書に於いて「第一の」溶媒として参照される。第一の溶媒は、好ましくはアンモニウムトリブロミド臭素化剤用の溶媒であるが、反応中に生成されるアンモニウムモノブロミド副生物用の溶媒ではない。適切な第一の溶媒の例には、エーテル、例えばテトラヒドロフラン;ハロゲン化アルカン、例えば四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ブロモクロロメタン(CH2BrCl)及び1,2−ジクロロエタン;炭化水素、例えばシクロヘキサン及びトルエン並びにハロゲン化芳香族化合物、例えばブロモベンゼン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼンが含まれる。第一の溶媒の好ましい種類は、臭素化条件下で液体であり、臭素化剤と望ましくなく反応しないものである。第一の溶媒は、好ましくは非プロトン性であり、酸素含有溶媒は、ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーの脂肪族二重結合に亘る付加反応に関与して、生成物の熱的特性の低下に至り得るので、酸化されていない。従って、ハロゲン化された溶媒及び炭化水素溶媒が、酸素含有溶媒を超えて第一の溶媒として好ましい。穏和な反応条件が使用されるとき、ハロゲン交換反応は顕著な程度まで生じないことが見出され、この理由のために、塩素化された溶媒が、本発明に於いて使用するために非常に適している。
【0023】
第四級アンモニウムモノブロミド塩用の溶媒は、時には、便宜の目的のために、そして、それを、「第一の」溶媒、即ちブタジエンポリマー用の溶媒から容易に区別するために、本明細書に於いて「第二の溶媒」として参照される。第四級アンモニウムモノブロミドのための溶媒(第二の溶媒)には、臭素化反応の条件下で、出発ブタジエンポリマー、臭素化ブタジエンポリマー、第四級アンモニウムトリブロミド又は第一の溶媒と反応性ではない、極性化合物が含まれる。第二の溶媒は、好ましくは臭素化反応の条件下で液体である。第二の溶媒は非プロトン性又はプロトン性であってよい。これは、第一の溶媒と混和性であってよく又は混和性でなくてもよいが、最も好ましくは、第一の溶媒と混和性ではなく、したがって、(溶解された第四級アンモニウムモノブロミド塩を含有する)第二の溶媒を、第一の溶媒及び臭素化ブタジエンポリマーから分離し、回収することが、より容易である。水が、明らかに最も好ましい第二の溶媒である。
【0024】
臭素化反応はブタジエンポリマー、溶媒及び第四級アンモニウムトリブロミドを一緒に混合し、この混合物を、ブタジエン単位の所望の比率が臭素化されるまで、反応させることによって実施される。本発明の関連に於いて「臭素化」は、炭素原子のそれぞれが、臭素原子に結合するようになるように、炭素−炭素二重結合に亘る2個の臭素原子の付加を指す。ブタジエンポリマー、第四級アンモニウムトリブロミド及び第一の溶媒の添加の順序は、トリブロミド及びブタジエン/ビニル芳香族コポリマーを最初に混合する場合、顕著な反応が生じる前に溶媒を添加することが好ましいことを除いて、特に重要ではない。
【0025】
第一の溶媒は、反応の条件下で、ブタジエンポリマーを溶解するために充分な量で使用される。溶媒中のブタジエンポリマーの濃度は、例えば1〜50重量%、特に5〜35重量%の範囲であってよい。
【0026】
ブタジエンポリマー中のブタジエン単位のモル当たり、約0.5〜約5モルの第四級アンモニウムトリブロミドが適切に使用され、更に適切な量は約0.9〜約2.5モル/モルであり、なお更に適切な量は1〜1.5モル/モルである。
【0027】
一般的に、臭素化を実施するためには、穏和な条件のみが必要である。臭素化温度は、−20〜100℃の範囲であってよく、好ましくは0〜90℃、特に40〜80℃である。100℃を超える温度を使用することができるが、必要ではなく、選択率の低下及び/又は副生物の増加に至り得る。反応が進行すると、トリブロミドは対応する第四級アンモニウムモノブロミド塩に転化されるようになる。この第四級アンモニウムモノブロミド塩は、殆どの場合に、第一の溶媒及びブタジエンポリマー中に不溶性であり、ポリマー溶液から沈殿する傾向がある。
【0028】
ブタジエンポリマーが部分的に臭素化された後、「第二の」溶媒、即ち第四級アンモニウムモノブロミド塩用の溶媒を、反応混合物の中に導入する。一般的に、第二の溶媒の量は、第二の溶媒を添加しない場合のような他の場合に比較して、所望の転化率を得るために必要な時間の短縮を与えるために充分である。第二の溶媒は、臭素化反応が進行するとき生成する第四級アンモニウムモノブロミド塩の少なくとも50%、更に好ましくは少なくとも80%、なお更に好ましくは少なくとも95%を溶解するために充分である量で導入することができるが、より少ない量の第二の溶媒を使用することも可能であろう。第四級アンモニウムモノブロミド塩の少なくとも一部は、第二の溶媒中に溶解されるようになると考えられる。
【0029】
第二の溶媒は、ブタジエンポリマー上の脂肪族炭素−炭素二重結合の少なくとも25%が臭素化された後(即ち少なくとも25%の転化率の後)導入する。脂肪族炭素−炭素二重結合の部分転化後の第二の溶媒のこの導入の前に、反応混合物は、本質的に、第四級アンモニウムモノブロミド用の溶媒を有していてはならない。第二の溶媒のより早い添加は著しく多量の不純物生成に至ることが見出された。好ましくは、第二の溶媒は少なくとも50%転化率まで又は少なくとも60%転化率まで導入しない。第二の溶媒は、90%転化率以前に、好ましくは約80%転化率以前に、なお更に好ましくは約70%転化率以前に添加すべきである。反応中の添加が遅すぎる場合、反応時間の短縮の観点からは、利点はほとんど実現されない。特に、第二の溶媒を、約50%又は60%転化率の前又は約80%転化率の後に添加する場合、反応速度に対する不純物レベルでの幾らかのかね合いが存在する。第二の溶媒を添加した後、臭素化反応を、第二の溶媒の存在下で、好ましくは少なくとも90%転化率まで、更に好ましくは少なくとも95%転化率まで、なお更に好ましくは少なくとも97%転化率まで続ける。第二の溶媒の存在以外に、臭素化反応の適切な条件は、前記したものと同じままである。相の間の良好な接触を与えるために、第二の溶媒を添加した後、反応混合物を撹拌しなくてはならない。
【0030】
所望により、反応を分析的に追跡して、脂肪族炭素−炭素二重結合の転化をモニターすることができる。臭素化の程度は、プロトンNMR方法を使用して決定することができる。残留する脂肪族炭素−炭素二重結合は、適切なプロトン(残留二重結合プロトンは4.8ppmと6ppmとの間にある)(テトラメチルシラン(TMS)に対して)及び臭素化ポリブタジエンのためのプロトン(このためのシグナルは3.0ppmと4.8ppmとの間にある)に起因する、シグナルの積分面積を比較することによって決定することができる。Varian INOVA(登録商標)300NMR分光計又は均等デバイスが、このような決定のために有用であり、適切には、定量的積分のためにプロトンの緩和を最大にするために30秒間の遅延時間で操作される。ジュウテロ置換溶媒(deutero-substituted solvent)、例えばジュウテロ−クロロホルム(deutero-chloroform)又はd5−ピリジンが、NMR分析用のサンプルを希釈するために適している。
【0031】
前記の条件下で、臭素化反応は、幾つかの事項で、高度に選択的である傾向がある。芳香族環上には、臭素化は殆ど又は全く起こらない。他の場合に、臭素化は1,2−ブタジエン単位及び1,4−ブタジエン単位の両方の炭素−炭素二重結合で起こる傾向があり、臭素化は第三級炭素原子で臭素化が殆ど起こらない傾向がある。臭素化は、望まない臭素をアリル性又は第三級炭素原子で導入する傾向があるフリーラジカルメカニズムではなくて、イオンメカニズムによって起こると考えられる。アリル性又は第三級炭素原子に結合された臭素は、他の臭素−炭素結合よりも熱的にあまり安定性ではないと考えられ、従って、それらの存在は、臭素化コポリマーの温度安定性に悪影響を与える。ヒドロブロム化(炭素−炭素二重結合に亘るHBrの付加)は、この方法を使用して最小であると見出された。
【0032】
臭素化ブタジエンポリマーは、臭素化が進行したとき、反応混合物中に不溶性になるであろう。このような場合に、生成物は、任意の便利な固体/液体分離方法、例えば濾過、デカンテーション等を使用して回収することができる。臭素化ポリマーが、反応混合物中に可溶性のままである場合、これは、混合物から、適切な方法、例えば溶媒の蒸留又は臭素化コポリマーを不溶性になるようにし、沈殿するようにする反溶媒(anti-solvent)の添加によって便利に単離される。このような反溶媒の例には、低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール及びt−ブタノールが含まれる。
【0033】
特別の用途のために所望又は必要とするとき、単離されたポリマーを精製して、残留する臭素、臭素化剤、溶媒及び副生物を除去することができる。臭化物塩は、ポリマーを、シリカゲル又はイオン交換樹脂床に通過させることによって除去することができる。ポリマーを、亜硫酸水素ナトリウム水溶液によって洗浄して、存在するかもしれない未反応の臭素化剤を中和又はクエンチすることができる。これは、残留する臭素又は臭素化合物のためにポリマー中に存在するかもしれない任意の橙色を有効に除去又は排除する。
【0034】
一つの特定の回収方法に於いて、粗製反応溶液を、スプレーによって、例えば粗製反応溶液を、それが非混和性である液体の中に分散させることによって、微細な小滴に形成することができる。次いで、第一の溶媒を、この小滴から熱的にストリッピングして、臭素化ブタジエンポリマーの粒子を形成する。熱ストリッピング工程の前又は後に、小滴又は粒子を、非溶媒液体中で洗浄する。この方法で形成された臭素化ポリマー粒子を、次いで、非溶媒液体から分離する。これを行うための幾つかのアプローチが存在する。一つのアプローチに於いて、粗製反応混合物をスプレーして、小滴を形成し、これを熱的にストリッピングして(例えばこれらをスチームと一緒にスプレーすることにより)、臭素化ブタジエン粒子を形成し、続いてこの粒子を、非溶媒液体中に分散させ、洗浄し、回収する。第二のアプローチに於いて、粗製反応混合物を、前記のように、スプレーして小滴を形成するが、この小滴を、熱的にストリッピングする前に,非溶媒液体中に分散させる。この場合に、ストリッピングのための熱は、非溶媒液体の表面よりも下にスチームを導入することによって便利に与えられる。第三の変形に於いて、粗製反応混合物を、非溶媒液体の中に導入し、非溶媒液体中にある間に小滴に形成する。この小滴を、非溶媒液体中に分散されている間に、再び熱的にストリッピングし、ここでこれらも洗浄される。
【0035】
本発明の方法は、優れた熱安定性を有する臭素化コポリマー製品を製造する傾向がある。熱安定性の有用な指標は、5%重量損失温度であり、これは、熱重量分析によって下記のようにして測定される。即ち10ミリグラムのポリマーを、TA InstrumentsモデルHi−Res TGA2950又は均等装置を使用して、気体状窒素の60ミリリットル/分(mL/分)流及び室温(公称25℃)から600℃までの範囲に亘る10℃/分の加熱速度で分析する。このサンプルによる重量損失を、加熱工程の間モニターし、サンプルがその最初の重量の5%を失ったときの温度を、5%重量損失温度(5%WLT)として指定する。この方法は、サンプルが、最初のサンプル重量基準で5重量%の蓄積重量損失を受けた温度を与える。この臭素化コポリマーは、好ましくは、少なくとも200℃の5%WLTを示す。この5%WLTは、好ましくは少なくとも220℃、更に好ましくは少なくとも230℃、なお更に好ましくは少なくとも240℃、なお更に好ましくは少なくとも250℃である。ブタジエン単位の少なくとも85%が臭素化されており、このような5%WLT値を有する臭素化コポリマーが特に関心のあるものである。
【0036】
臭素化ブタジエンポリマーをアルカリ金属塩基で処理した場合に、熱安定性に於ける更なる増加が時々見られる。このアルカリ金属塩基は、例えば水酸化物又は炭酸塩であってよい。このアルカリ金属塩基は、アルカリ金属アルコキシドが、幾つかの他の塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、炭酸塩又はカルボン酸塩が行うよりも多くの熱安定性に於ける増加を与える傾向があるので、好ましくはアルカリ金属アルコキシドである。このアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウムであってよい。リチウム、ナトリウム及びカリウムが好ましい。好ましい態様に於いて、この塩基はアルカリ金属アルコキシドである。このアルコキシドイオンは、1〜8個、好ましくは1〜4個の炭素原子を含有していてよく、メトキシド及びエトキシドが特に好ましい。特に好ましいアルカリ金属アルコキシドは、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド及びカリウムエトキシドである。臭素化ブタジエンポリマーは、コポリマー中の重合されたブタジエン単位(臭素化された又は臭素化されていない)の1モル当たり、0.01モルのように少ないアルカリ金属基で処理することができる。アルカリ金属塩基の量での上限は存在しないが、コポリマー中の重合された(臭素化された又は臭素化されていない)ブタジエン単位の1モル当たり、約1モルよりも多いアルカリ金属塩基を使用することに対して、コスト及び取扱い上の注意が軽減する。好ましい量は、0.03〜0.50モル/モルの重合された(臭素化された又は臭素化されていない)ブタジエン単位であり、特に好ましい量は0.05〜0.20モル/モルである。
【0037】
この臭素化ブタジエンポリマーは、種々の有機ポリマー用の難燃添加剤として有用である。関心のある有機ポリマーには、ビニル芳香族又はアルケニル芳香族ポリマー(アルケニル芳香族ホモポリマー、アルケニル芳香族コポリマー又はアルケニル芳香族ホモポリマー及び/若しくはアルケニル芳香族コポリマーの1種又はそれ以上のブレンドを含む)並びにこの臭素化コポリマーが可溶性であるか又はサイズが10μmよりも小さい、好ましくは5μmよりも小さいドメインを形成するように分散させることができる他の有機ポリマーが含まれる。ブレンド重量基準で、0.1重量%〜25重量%の範囲内の臭素含有量を有するブレンドを提供するために充分な臭素化ブタジエンポリマーが、ブレンド中に好ましく存在する。
【0038】
臭素化ブタジエンポリマーのブレンドには、他の添加剤、例えば他の難燃添加剤、難燃アジュバント、熱安定剤、紫外光安定剤、核生成剤、酸化防止剤、発泡剤、酸スカベンジャー及び着色剤が含有されてよい。
【実施例】
【0039】
下記の実施例は、本発明を例示するために提供されるが、その範囲を限定しない。全ての部及びパーセントは、他の方法で示されない限り重量基準である。
【0040】
実施例1及び2並びに比較実験A及びB
ブタジエン単位の種々の比率を臭素化した後、臭素化反応に水を添加する影響を評価するために、一連の実験を行った。
【0041】
第四級アンモニウムトリブロミド出発材料を、脱イオン水252部、テトラエチルアンモニウムモノブロミド252部(0.60モル)及び塩化メチレン236部を、底排液口、窒素入口及びオーバーヘッド攪拌機を取り付けたフラスコに添加することによって製造する。臭素81部(0.51モル)を、この撹拌した混合物に添加し、これによって、混合物の温度は、14℃から20℃まで上昇する。この混合物を15分間撹拌して、下方の有機層(溶液中にテトラエチルアンモニウムトリブロミドを含有する)及び上方の水性層を製造する。
【0042】
1,2−ジクロロエタン中のポリスチレン−ブタジエン−ポリスチレンブロックターポリマー(0.50モルの重合したブタジエン)の9%溶液501部を、添加漏斗、オーバーヘッド攪拌機及び窒素入口を取り付けた第二反応容器に装入する。有機テトラエチルアンモニウムトリブロミド溶液(水性層無し)を、撹拌しながら窒素流下で、約2分間かけて添加し、これは、25℃から30℃への容器内容物の温度に於ける上昇になる。この反応混合物を、撹拌を続けながら、35〜42℃まで加熱する。有機テトラエチルアンモニウムトリブロミド溶液を添加して1.5時間後に、テトラエチルアンモニウムトリブロミド合成からの水性層を、反応容器に添加する。水性層を添加した時点で、脂肪族炭素−炭素二重結合の転化率は約73%である。この反応を、同じ温度で更に90分間進行させる。この時点で、この反応混合物を、底排液口、窒素入口及びオーバーヘッド攪拌機を取り付けたフラスコに移し、撹拌しながら塩化メチレン256部で希釈する。次いで、希釈した混合物を、水性層と有機層とに分離させる。この水性層を除去し、残留する有機層を、最初に、水中の重亜硫酸ナトリウムの10%溶液99部及び脱イオン水443部で洗浄し、次いで、脱イオン水479部で洗浄する。次いで、洗浄した有機層を、撹拌しながら、2−プロパノール2721部に添加して、臭素化ポリマーを沈殿させる。有機液体を濾別し、ポリマー粒子を2−プロパノール311部で洗浄する。この粒子を一夜乾燥させる。得られる臭素化ポリマーは、明るい白色粉末である。これは、実施例1として指定する。プロトンNMRによって、脂肪族炭素−炭素二重結合の98%が臭素化された(98%転化率)ことが示される。プロトンNMRによって検出された不純物は、約1%である。本実施例及び残りの実施例に於いて、「不純物」は、例えばアリル性又は第三級炭素原子での、ヒドロブロム化、ヒドロキシル若しくはエーテル基生成又は臭素化を含む、臭素化反応の間にブタジエンポリマーに導入された、プロトンNMRによって検出可能である望まない置換物質を指す。この材料についての5%WLTは261℃である。
【0043】
実施例2は、反応温度を60℃で維持し、この時水性層を60分ほど後に添加し、この時点で、脂肪族炭素−炭素二重結合の転化率が約67%である以外は、同様の方法で実施する。水性層を添加した後、反応を約90分間続ける。生成物でのプロトンNMRによって、脂肪族炭素−炭素二重結合の98%転化率及び約1%不純物が示される。この材料についての5%WLTは267℃である。
【0044】
比較実験Aは、水性相を添加することなく、実施例1及び2と同じ方法で実施する。98%転化率への時間は8時間超である。不純物は約1%である。5%WLTは265℃である。
【0045】
比較実験Bは、水性層を、テトラエチルアンモニウムトリブロミド溶液を添加するのと同時に、臭素化反応の開始時に添加する以外は、実施例1及び2と同じ方法で実施する。この場合に、98%転化率が約90分後に見られるが、不純物は3%を超える。この材料についての5%WLTは246℃である。
【0046】
比較実験Aは、比較のためのベースラインを与える。水添加無しでは、5%WLTによって示されるように、生成物は、低量の不純物で、非常に良好な熱安定性を有する。しかしながら、98%転化率に到達する時間は非常に長い。
【0047】
実施例1及び2に於けるように、転化率が67〜73%であるとき水を添加するとき、不純物レベル又は5%WLTへの影響は本質的に存在しないが、反応時間は、8時間から2-1/2〜3時間に短縮される。
【0048】
比較実験Bは、反応の開始から方法内に水を有することの影響を示す。速い反応が見られるが、不純物レベルが上昇する。比較実験Bは、NMRによって測定されるような不純物レベルと5%WLTとの間の相互関係を示す。この場合に、比較実験A並びに実施例1及び2に比較して、熱安定性に於ける非常に顕著な低下が存在し、これは比較実験Bに於ける不純物のより高いレベルに相互関係する。
【0049】
実施例3
ポリスチレン−ポリブタジエンブロックコポリマー(112.7部、60%ポリブタジエン)及びブロモクロロメタン(970.4部)を、オーバーヘッド攪拌機、添加漏斗、窒素入口及び還流凝縮器を有する3L丸底フラスコに添加する。この混合物を、加熱マントルを使用して64℃まで加熱し、僅かに曇った溶液を製造する。
【0050】
第四級アンモニウムトリブロミドを、テトラエチルアンモニウムブロミド50%水溶液630.5部(1.50モル)及びブロモクロロメタン647.4部を、底排液口、オーバーヘッド攪拌機、添加漏斗及び窒素入口を有する別の3L丸底フラスコに添加することによって製造する。ブロモクロロメタン113.4部中の臭素199.9部(1.25モル)を添加したとき、この混合物を撹拌すると、22℃から35℃への反応混合物の温度に於ける上昇になる。撹拌を15分間続け、その後、この混合物は、2個の液層に分離される。底の有機層を、10分間かけて、スチレン−ブタジエン溶液に添加する。これによって、ポット温度が64℃から66℃まで上昇する。第四級アンモニウムトリブロミド添加が完結して20分後に、第四級アンモニウムトリブロミド製造からの水性層を添加する。水性層を添加したときの転化率は、約68%である。温度を64〜66℃に維持しながら、加熱を更に1時間続ける(それで、合計反応時間は、僅かに1.5時間である)。この混合物を、急速に49℃まで冷却する。これを、移動を助けるためにブロモクロロメタン242.6部を使用して、底排液口、オーバーヘッド攪拌機、添加漏斗及び窒素入口を有する3L丸底フラスコに移動させる。
【0051】
数分後に、有機層と水性層とが分離し、この水性層を除去する。有機層を、脱イオン水1193.8部で更に希釈した、重亜硫酸ナトリウムの10%水溶液260.4部で洗浄し、次いで、脱イオン水1262.0部で洗浄する。有機層をブロモクロロメタン498.2部で希釈し、ほぼ等しい2個の部分で、別々の、それぞれ約1965部の撹拌した2−プロパノールを含有する5Lフラスコに移動させて、臭素化ポリマーを沈殿させる。得られるスラリーを、粗いガラスフリット漏斗に通して濾過し、2−プロパノールで洗浄する。得られる湿ったケークを、環境条件下で6日間乾燥し、綿毛状の白色固体の形で臭素化コポリマー279.3部(89%収率)を得る。
【0052】
プロトンNMRによって、不純物が1.3%で、98.5%転化率が達成されたことが示される。5%WLTは267.4℃である。GPCによる重量平均分子量は132,280である。
【0053】
実施例4及び5並びに比較実験C
実施例4は、臭素化反応の温度を60℃まで低下させる以外は、実施例3の繰り返しである。水性相を添加する時点で、転化率は約58%である。水性相を添加して1時間後に、臭素化反応を終結させたとき、転化率は、プロトンNMRによって97.1%である。プロトンNMRによる不純物は1.2%で、5%WLTは264.2℃である。
【0054】
実施例5は、第四級アンモニウムトリブロミド添加が完結して50分後に、水性相を添加する(この時点で、転化率は約72%である)以外は、実施例4の繰り返しである。水性相を添加して1時間後に、臭素化反応を終結させたとき、転化率は、プロトンNMRによって98.5%である。プロトンNMRによる不純物は0.9%で、5%WLTは267.2℃である。
【0055】
比較実験Cは、第四級アンモニウムトリブロミド製造からの水性相を、臭素化反応に添加しない以外は、実施例4及び5と同じ条件下で実施する。4時間の反応時間後に、転化率は僅かに92.7%である。不純物は、プロトンNMRにより0.7%で、5%WLTは260.2℃である。
【0056】
実施例6
添加ライン、撹拌バー及び窒素入口を有する500mL圧力ボトルに、ポリスチレン−ポリブタジエンコポリマー(60%ポリブタジエン、0.1モル当量ポリブタジエン)9.0部及びブロモクロロメタン104.8部を添加する。このボトルを窒素でパージした後、ボトルをシールし、この混合物を、熱水浴中で77℃まで加熱する。
【0057】
テトラエチルアンモニウムトリブロミドの溶液を、別個に、実施例3に記載した一般的な方法で、テトラエチルアンモニウムブロミド50%水溶液50.0部、ブロモクロロメタン63.2部及び臭素16.0部から製造する。
【0058】
テトラエチルアンモニウムトリブロミド製造からの有機層を、圧力ボトル内のコポリマー溶液に22分間かけて添加する。次いで、添加ラインをブロモクロロメタン12.5部でフラッシュし、このフラッシュをボトルに添加する。有機層添加が完結して2分後に、テトラエチルアンモニウムトリブロミド製造からの上方の水性層を、10分間かけて添加する。水性相添加を始めた時点での転化率は、65〜75%である。テトラエチルアンモニウムトリブロミド製造からの有機層の添加を開始して1時間後に、反応混合物を冷却し、圧力ボトルを開き、有機層と水性層とを分離する。有機層を、脱イオン水96.7部で更に希釈した、重亜硫酸ナトリウム10%水溶液23.5部で洗浄し、再び、脱イオン水100.8部で洗浄する。有機層を撹拌した2−プロパノール421部に添加することによって、有機層から臭素化コポリマーを沈殿させる。得られるスラリーを濾過し、2−プロパノール87部で洗浄する。得られる湿ったケークを、環境条件下で一夜乾燥し、綿毛状の白色固体の形で臭素化コポリマー22.3部(89%収率)を得る。
【0059】
プロトンNMRによって、不純物が1.1%で、98.5%転化率が達成されたことが示される。5%WLTは268.3℃である。GPCによる重量平均分子量は128,790である。
【0060】
実施例7
添加ライン、撹拌バー及び窒素入口を有する500mL圧力ボトルに、ポリスチレン−ポリブタジエンコポリマー(60%ポリブタジエン、0.1モル当量ポリブタジエン)9.0部及び塩化メチレン104.8部を添加する。このボトルを窒素でパージした後、ボトルをシールし、この混合物を、熱水浴中で65℃まで加熱する。
【0061】
テトラエチルアンモニウムトリブロミドの溶液を、別個に、実施例3に記載した一般的な方法で、テトラエチルアンモニウムブロミド50%水溶液50.6部、塩化メチレン41.2部及び臭素16.0部から製造する。
【0062】
テトラエチルアンモニウムトリブロミド製造からの有機層を、圧力ボトル内のコポリマー溶液に20分間かけて添加する。有機層添加が完結した直後に、テトラエチルアンモニウムトリブロミド製造からの上方の水性層を、20分間かけて添加する。水性相添加を始めた時点での転化率は、65〜75%である。テトラエチルアンモニウムトリブロミド製造からの有機層の添加を開始して2時間後に、反応混合物を冷却し、圧力ボトルを開き、有機層と水性層とを分離する。有機層を、重亜硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、再び、脱イオン水で洗浄する。有機層を撹拌した2−プロパノールに添加することによって、有機層から臭素化コポリマーを沈殿させる。得られるスラリーを濾過し、2−プロパノールで洗浄する。得られる湿ったケークを、環境条件下で一夜乾燥し、綿毛状の白色固体の形で臭素化コポリマー18.9部(76%収率)を得る。
【0063】
プロトンNMRによって、不純物が0.7%で、99%転化率が達成されたことが示される。5%WLTは255.5℃である。GPCによる重量平均分子量は108,840である。他の実施例のものと比較した、この臭素化材料の、より低い5%WLT及びより低い分子量は、出発コポリマーのより低い分子量に起因すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族炭素−炭素二重結合を含有するブタジエンポリマーを、フェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミド又はテトラアルキルアンモニウムトリブロミドと、ブタジエンポリマー用の少なくとも1種の溶媒の存在下に、反応させて、臭素化ブタジエンポリマー及びフェニルトリアルキルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムモノブロミド又はテトラアルキルアンモニウムモノブロミド副生物を生成させることを含んでなる方法であって、ブタジエンポリマー中の脂肪族炭素−炭素二重結合の約25〜90%が臭素化されたときに、フェニルトリアルキルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムモノブロミド又はテトラアルキルアンモニウムモノブロミド副生物用の溶媒を、反応混合物に添加して、フェニルトリアルキルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムモノブロミド又はテトラアルキルアンモニウムモノブロミド副生物用の溶媒の存在下に、臭素化反応の残りを実施する方法。
【請求項2】
脂肪族炭素−炭素二重結合を含有するブタジエンポリマーを、フェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミド又はテトラアルキルアンモニウムトリブロミドと、ブタジエンポリマー用の少なくとも1種の溶媒の存在下に、反応させて、臭素化ブタジエンポリマー及びフェニルトリアルキルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムモノブロミド又はテトラアルキルアンモニウムモノブロミド副生物を生成させることを含んでなる方法であって、ブタジエンポリマー中の脂肪族炭素−炭素二重結合の約25〜90%が臭素化されたときに、水を反応混合物に添加して、水の存在下に、臭素化反応の残りを実施する方法。
【請求項3】
水又はフェニルトリアルキルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムモノブロミド若しくはテトラアルキルアンモニウムモノブロミド副生物用の溶媒を、ブタジエンポリマー中の脂肪族炭素−炭素二重結合の約50〜80%が臭素化されたときに、添加する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
フェニルトリアルキルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムモノブロミド若しくはテトラアルキルアンモニウムモノブロミド副生物用の溶媒を、ブタジエンポリマー中の脂肪族炭素−炭素二重結合の約60〜75%が臭素化されたときに、添加する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ブタジエンポリマーをテトラアルキルアンモニウムトリブロミドと反応させる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ブタジエンポリマーをテトラエチルアンモニウムトリブロミドと反応させる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ブタジエンポリマーのための溶媒がハロゲン化アルカン又はハロゲン化芳香族化合物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
水又はフェニルトリアルキルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムモノブロミド若しくはテトラアルキルアンモニウムモノブロミド副生物用の溶媒を添加した後、出発ポリマー上の脂肪族炭素−炭素二重結合の少なくとも90%が臭素化されるまで、反応を続ける請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
水又はフェニルトリアルキルアンモニウムモノブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムモノブロミド若しくはテトラアルキルアンモニウムモノブロミド副生物用の溶媒を添加した後、出発ポリマー上の脂肪族炭素−炭素二重結合の少なくとも90%が臭素化されるまで、反応を続ける請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ブタジエンポリマーがブタジエンとビニル芳香族モノマーとのコポリマーである請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ブタジエンポリマーがブタジエンとスチレンとのブロックコポリマーである請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2011−528380(P2011−528380A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549727(P2010−549727)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/035046
【国際公開番号】WO2009/139942
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】