説明

水噴射式圧縮機

【課題】圧縮機内部の水を確実に排出して凍結防止を図ると共に、凍結防止のための消費電力の増加を抑制する。
【解決手段】水噴射式圧縮機は、吸込弁6からの空気を圧縮すると共に水が供給される圧縮機本体2、水分離器8、吐出系統9、水分離器内の水を前記圧縮機本体へ送水する送水系統10、水分離器からの水を冷却する水クーラ11、送水系統の水を外部に排出する排水配管19、この排水配管に設けられた排水弁20、吐出系統の圧縮空気を放気する放気系統25などを備えている。また、送水系統における水流の有無を検出する水流検出手段31と、前記排水弁を開閉して送水系統の排水運転を行わせる制御手段4を備える。この制御手段は、排水運転開始時には、排水弁を開き、放気系統から放気して吸込弁を閉じる無負荷運転をしながら排水させ、排水運転終了時には、水流検出手段からの信号に基づいて排水運転を終了させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機本体内部に水を噴射する水噴射式圧縮機に係り、特に水の凍結を防止するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機本体内部の圧縮作用空間に水を噴射して圧縮作用空間内の密封と冷却作用を行うようにした水噴射式圧縮機(水潤滑式圧縮機ともいう)が知られており、このような水噴射式圧縮機では圧縮空気中に油分を含ませることなく、圧縮効率を高めることができるという特徴がある。
【0003】
この種従来技術としては特開2009−167874号公報(特許文献1)や特開2009−185660号公報(特許文献2)に記載のものがある。
前記特許文献1のものには、電熱ヒータやファンを用いることなく、圧縮気体の供給先で圧縮気体の需要が少ないとき、若しくは無いときに、前記圧縮機の水系統から水を抜き取ることにより、気温が低下し、前記水噴射式圧縮機内部の水が凍結する恐れがある場合でも、凍結防止できるようにした水噴射式の圧縮機が提案されている。
【0004】
上記特許文献2のものには、圧縮気体の供給先で圧縮気体の需要が少ないとき、若しくは無いときには、圧縮機の圧縮空気出口から空気を出すことなしに水循環ラインの水を循環させることで、ヒータなどを使用することなく、水循環ラインの凍結を防止するようにした水噴射式の圧縮機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−167874号公報
【特許文献2】特開2009−185660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のものでは、水系統中に存在する水量が多い場合には、水が抜け切らない可能性があり、少なくとも水クーラから確実に水を抜き取るため、水を排水するための排水開閉弁を0.5MPa以上とならない限り開弁しない保圧逆止弁で構成して、特に水の凍結の影響を受け易い水クーラから確実に水を抜き取ることができるようにしている。
【0007】
この特許文献1のものでは、排水せずに圧縮機本体が圧縮空気を吐出する通常の運転を行う際も、吐出圧力は0.5MPa以上となってしまう。しかし、圧縮空気の需要先からは、圧縮機の消費電力をできるだけ低減したいという要望もあり、そのためには圧縮機の吐出圧力を更に低く設定する必要があるが、凍結防止を優先すると圧縮機の消費電力低減が困難になるという課題がある。
【0008】
また、前記排水開閉弁を0.5MPa以上で開弁するようにして水クーラからの水はほぼ確実に排出できるようにしても、水分離器(水タンク)など圧縮機の水系統全体から十分に水を抜き取ることは困難であり、圧縮機全体の十分な凍結防止は困難であるという課題もある。
【0009】
上記特許文献2のものは、水を循環させることで、水循環ラインの凍結を防止するものであるため、気温が設定値よりも低い状態が続く限り、圧縮機本体を運転し続けて水を循環させなければならず、長時間にわたり電力を消費してしまうという課題がある。
【0010】
本発明の目的は、確実に圧縮機内部の水を排出して凍結防止を図ることができると共に、圧縮機の凍結防止のための消費電力の増加を抑制することも可能な水噴射式圧縮機を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明は、吸込弁を有する吸込系統から吸入された空気を圧縮すると共に圧縮作用空間に水が供給される圧縮機本体と、前記圧縮機本体から吐出される圧縮空気と水を分離する水分離器と、該水分離器からの圧縮空気が流れる吐出配管を備える吐出系統と、前記水分離器内の水を前記圧縮機本体へ送水した後再び前記水分離器に戻るように循環させる送水系統と、この送水系統を構成する送水配管の途中に設けられ前記水分離器からの水を冷却するための水クーラと、前記送水系統の水を外部に排出するための排水系統と、この排水系統を構成する排水配管に設けられた排水弁と、前記吐出系統の圧縮空気を放気するための放気系統を備えた水噴射式圧縮機において、前記送水系統における水流の有無を検出するための水流検出手段と、前記排水配管の排水弁を開閉して前記送水系統の水を抜く排水運転を行わせるように制御する制御手段を備え、前記制御手段は、排水運転開始時には、前記排水配管の排水弁を開き、前記放気系統から放気すると共に前記吸込弁を閉じて前記圧縮機本体を無負荷運転しながら排水するように制御し、排水運転終了時には、前記水流検出手段からの信号に基づいて排水運転を終了させるように制御することを特徴とする。
【0012】
ここで、前記送水系統を構成する前記送水配管における前記水クーラの下流側には、前記水から不純物を除去するための水フィルタと、圧縮機本体への給水を制御する本体給水弁を備えていることが好ましい。
【0013】
また、前記水分離器と前記水クーラ間の前記送水配管に設けられた送水弁と、前記送水弁と前記水クーラ間の前記送水配管と前記吐出系統の吐出配管とを接続するバイパス配管と、このバイパス配管に設けられたバイパス弁とを備え、前記制御手段は、前記排水運転を行う場合、前記送水弁を閉じると共に前記バイパス弁を開くように制御しても良い。
【0014】
前記水流検出手段を、前記送水系統に設けられた流量センサで構成し、排水運転中に前記流量センサが水流なしを検出すると、前記制御手段は前記圧縮機本体の運転を停止させて前記排水運転を終了させるように構成すると良い。
【0015】
或いは、前記水流検出手段に代えて、前記吐出系統上に設けられた吐出温度検出手段を備え、排水運転中に前記吐出温度検出手段が、圧縮機本体から吐出される圧縮空気の温度が予め設定された温度以上となったことを検出すると、前記制御手段は前記圧縮機本体の運転を停止させて前記排水運転を終了させるようにしても良い。
【0016】
外気の温度を検出する外気温度検出手段を備え、前記圧縮機本体が停止した運転待機状態或いは圧縮機が停止している状態のときに、前記外気温度検出手段により検出された温度が予め設定された温度以下となった場合、前記制御手段は自動的に前記排水運転を開始するように制御しても良い。
【0017】
前記圧縮機本体が運転状態或いは運転待機状態にあるときに、外部からの圧縮機停止指令が入力された場合、前記制御手段は、前記排水運転を実施し、この排水運転が終了した後に圧縮機を停止させるように制御しても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、確実に圧縮機内部の水を排出して凍結防止を図ることができると共に、圧縮機の凍結防止のための消費電力の増加を抑制することも可能な水噴射式圧縮機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1の水噴射式圧縮機を説明する系統図である。
【図2】本発明の実施例2の水噴射式圧縮機を説明する系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の水噴射式圧縮機の具体的実施例を図面に基づき説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の実施例1の水噴射式圧縮機を説明する系統図である。
図1において、1は水噴射式の圧縮機であり、この実施例では雄雌一対のスクリュロータをもつスクリュ圧縮機で構成され、空気を圧縮するように構成されている。
【0022】
即ち、前記圧縮機1は、圧縮機本体2、圧縮機本体2を駆動するモータ3、圧縮機1全体を制御する制御盤(制御手段)4などにより構成されている。前記圧縮機本体2は、回転可能に支持された雄雌一対のスクリュロータ5を有し、このスクリュロータ5は前記モータ3によって回転駆動されることで、空気を吸込み、圧縮して吐出するようになっている。なお、前記雄雌一対のスクリュロータ5はタイミングギア36により互いに微小な隙間を形成して回転されるようになっている。このような水噴射式圧縮機では、圧縮機本体内部の前記スクリュロータ5で形成された圧縮作用空間に水を噴射し、この圧縮作用空間内の密封(シール)と、空気の圧縮熱によるスクリュロータ5の焼き付き防止のための冷却作用や潤滑作用などをさせている。
【0023】
前記圧縮機本体2の吸込側の吸込系統には、吸込弁6及び吸込みフィルタ7が設けられている。また、前記圧縮機本体2の吐出側には、水分離器8が設けられている。この水分離器8は、圧縮機本体2から吐出された圧縮空気とこれに含まれる水とを分離するものである。
【0024】
前記水分離器8で分離された水は、該水分離器8の下部に一旦貯留された後、吐出圧力の圧縮空気により、送水系統を構成する送水配管10を通って水クーラ11に送られて冷却され、該水クーラ11で冷却された水は、その後水フィルタ13に送られ、ここで不純物が除去された後、圧縮機本体2内部に噴射されるように構成されている。前記水クーラ11では、冷却ファン12からの冷却風により水分離機8からの水が冷却される。なお、水フィルタ13の下流側には本体給水弁14が設けられている。
【0025】
15は、前記水分離器8内に貯留された水量が減少した場合に、水を外部から補給するための外部給水配管であり、更にこの外部給水配管15から分岐して外部給水配管16が設けられている。前記外部給水配管15の前記外部給水配管16との分岐部よりも下流側には外部給水弁17が設けられ、また前記外部給水配管16にも外部給水弁18が設けられている。外部給水配管15は、圧縮機本体2の運転中に水分離器8に貯留された水量が減少した場合に、圧縮機本体2の吸込側から外部の水を補給する配管、外部給水配管16は、停止時に前記送水配管10の前記水クーラ11と前記水フィルタ13との間に外部から水を補給する配管である。
【0026】
19は、前記水分離器8などの送水系統の水を圧縮機1の外部に排出するための排水系統を構成する排水配管で、この排水配管19には排水弁20が設けられ、更に手動排水用として、排水配管19から分岐する排水配管19aと、この排水配管19aに備えられた手動排水弁21aが設けられている。また、この排水配管19aの前記手動排水弁21aの下流側と前記水フィルタ13とを接続する排水配管19bも設けられており、この排水配管19bにも手動排水弁21bが備えられている。
【0027】
圧縮機本体2から吐出され、水分離器8で水を分離された圧縮空気は、吐出系統を構成する吐出配管9を介してドライヤ22に送られ、このドライヤ22で除湿された後、需要先に供給されるように構成されている。前記吐出配管9には、吐出方向にのみ圧縮空気が流れ且つ保圧機能を有するように逆止弁23及び保圧弁24が設けられている。本実施例では前記逆止弁23と保圧弁24を別々に設けるようにしたが、逆止弁と保圧弁の両方の機能をもった1つの弁(保圧逆止弁)で構成するようにしても良い。
【0028】
25は、前記吐出配管9の前記逆止弁23上流側から分岐し、吐出配管9内の圧縮空気を大気側に放気するための放気系統を構成する放気配管で、この放気配管25には放気弁26が設けられている。なお、放気弁26と、圧縮機本体2の吸込側(吸込系統)に設けられている前記吸込弁6とは連動して動作するように構成されており、前記放気弁26が閉状態の場合、前記吸込弁6は開状態となり、前記放気弁26が開状態になると前記吸込弁6は閉状態となる。
【0029】
前記ドライヤ22には、圧縮空気から除湿されて残留しているドレンを排出するためのドレン排出配管22aが設けられており、このドレン排出配管22aにはドレン排出弁22bが備えられている。
【0030】
前記吐出配管9には、圧縮機本体2から吐出される圧縮空気の吐出圧力を検出するための吐出圧力センサ27が設けられており、またこの吐出配管9における前記ドライヤ22と前記保圧弁24の間には、需要先への圧縮空気の供給圧力を検出するための供給圧力センサ28が設けられている。なお、29は圧縮機1の外気温度を検出するための外気温度センサ、30は圧縮機から吐出される圧縮空気の温度を検出するための吐出温度センサであり、更に本実施例では、前記送水配管10における前記本体給水弁14下流側に該送水配管10内の水流の有無(流れる水の流量でも良い)を検出するための流量センサ(水流検出手段)31が設けられ、前記水分離器8には該水分離器8内に溜められている水の水位を検出する水位センサ32が設けられている。
【0031】
前記制御盤4は、インバータ4aを備えており、このインバータ4aの出力周波数を変化させることで、前記モータ3の回転速度を制御することができる。上記各センサ27〜32からの検出信号に基づいて、前記制御盤4は圧縮機1全体の制御、即ち前述したモータ3、冷却ファン12、本体給水弁14、外部給水弁17,18、排水弁20、ドレン排出弁22b、放気弁26などの制御を行うように構成されている。また、前記制御盤4は操作パネル4bを備えており、操作者は前記操作パネル4bを通して圧縮機1の運転指令や停止指令などを入力することができるようになっている。
【0032】
前記水位センサ32は水分離器8内に貯留されている水の水位を検出して、その検出信号を前記制御盤4に送るが、圧縮機本体2が運転中(負荷運転或いは無負荷運転中)のときに、前記水位センサ32で検出された水位が予め設定された下限水位以下の場合には、前記制御盤4は前記外部給水弁17を開いて外部の給水口からの水を圧縮機本体2の吸込側に補給する。これによって水分離器8内の水位が予め設定された中間水位に戻れば、前記外部給水弁17を閉じる制御を行う。また、前記制御盤4は、前記水分離器8内の水位が予め設定された上限水位以上となった場合には、前記排水配管19に設けられている排水弁20を開いて排水し、水位が前記中間水位に戻れば、排水弁20を閉じるように制御する。
【0033】
前記圧縮機本体2が停止時に、圧縮機1内の水を交換したい場合、操作者が前記制御盤4を操作して、前記排水弁20を開くと、前記水分離器8内の水位が低下する。そして、前記水位センサ32が下限水位を検出すると、前記排水弁20は閉じられ、前記外部給水弁18が開いて、前記本体給水弁14より上流の前記送水配管10及び前記水クーラ11を介して前記水分離器8へ給水する。その後、水位センサ32が予め設定された上限水位を検出すると前記外部給水弁18が閉じて、水の交換を完了させる。
【0034】
前記制御盤4から圧縮機1の運転指令を入力すると、前記モータ3が駆動され、圧縮機本体2のスクリュロータ5の回転が開始される。このとき、前記放気弁26は閉状態、前記吸込弁6は開状態となり、空気が吸込フィルタ7及び吸込弁6を介して圧縮機本体2に吸入され、圧縮された後、圧縮空気が吐出される負荷運転が行なわれる。また、これと同時に、送水配管10の前記本体給水弁14も開状態に制御され、水が圧縮機本体2内部に噴射される。圧縮機本体2から吐出された圧縮空気は噴射された水と共に前記水分離器8に流入して、水は圧縮空気から遠心分離されて水分離器8内に貯留される。水が分離された圧縮空気は吐出配管9を介して逆止弁23を通り、前記保圧弁24に達し、この保圧弁24の設定圧力、例えば0.5MPa以上であればドライヤ22側に流出して圧縮空気内に残留している水分を更に除去された後、需要先に供給される。なお、前記保圧弁24の設定圧力は、0.5MPa或いはそれ以上には限定されず、例えば圧縮機の消費電力をできるだけ低減したい場合には、例えば0.4MPaなど0.5MPa以下に設定することも可能である。
【0035】
需要先での圧縮空気の需要が少なくなった場合、或いは全く需要がなくなった場合、前記保圧弁24下流側の供給圧力は次第に上昇し、前記供給圧力センサ28が予め設定された設定圧力よりも高い供給圧力を検出すると、前記制御盤4は、前記放気弁26を開き、同時に前記吸込弁6を閉状態にし、更に前記モータ3の回転速度も低下させて、圧縮機本体2の無負荷運転を行う。これによって、消費電力を少なく抑えることができる。なお、この無負荷運転時の場合にも、前記本体給水弁14は開状態のままに保持され、圧縮機本体2への給水は継続されている。また、この無負荷運転時には吐出配管9内の圧縮空気の圧力は前記保圧弁24の設定圧力(例えば0.5MPa)以下となるため、圧縮空気は保圧弁24下流の需要先側に吐出されない。
【0036】
この無負荷運転状態が予め設定された時間(例えば、3分)継続されると、前記制御盤4は圧縮機本体2の運転を停止し、前記圧縮機本体2は運転待機状態となる。この運転待機状態になると、前記本体給水弁14は閉じられ、圧縮機本体2への給水は行われない。
【0037】
前記圧縮機本体2が前述した負荷運転や無負荷運転を行っている場合には、空気の圧縮熱によって圧縮機1内の送水系統(水分離器8内の水を送水配管10を介して圧縮機本体2に送水した後再び前記水分離器8に戻るように構成された系統)の水は温められているため、圧縮機1内の水系統の水の凍結の虞はない。しかし、前述した運転待機状態で圧縮機本体2が停止している場合や圧縮機を完全に停止させている場合には、外気温度が低下して0℃付近となると、圧縮機1内部の水が凍結する虞がある。
【0038】
本実施例では、操作者が、圧縮機1内部の水が凍結する虞があると判断した場合に、制御盤4の操作パネル4bから排水運転指令を入力すると、制御盤4は、前記排水弁20を開状態にすると共に、圧縮機本体2を無負荷運転させて排水運転を行わせる。これにより、圧縮空気の圧力で、速やかに圧縮機1内部の水を排出することができる。このとき、本体給水弁14も開状態とされ、圧縮機本体2内部に給水することで、圧縮熱によるスクリュロータ5の焼き付きを防止する。また、必要に応じて、操作者は、前記手動排水弁21a,21bも開いて排水配管19a,19bからも排水する。
【0039】
上述した無負荷運転時の吐出圧力は、インバータ4aによる回転速度低減時で、例えば約0.20MPa程度となるが、水分離器8よりも高所に配置された水クーラ11までの水頭分として約0.02MPa、送水配管10や、水クーラ11、水フィルタ13の圧力損失分として約0.05MPaを差し引いても、送水系統に残留している水を排水するのに十分な圧力が得られる。もし、配管に部分的に水が滞留しやすい箇所(例えば、組立時のバラつきによる立ち下り勾配がついた箇所など)が存在しても、前記無負荷運転時の吐出圧力で確実に排水することができる。
【0040】
排水が進み、前記水分離器8内の水が無くなると、最後に水クーラ11に残留する水が圧縮機本体2内に送水されて、水分離器8及び排水配管19を経由して排水され、最終的には、水クーラ11に残留していた水も無くなる。その結果、送水配管10を流れる水はなくなり、前記流量センサ31からは流量ゼロ(水流なし)の検出信号が制御盤4に送られる。流量センサ31で流量ゼロが検出されれば排水完了であるため、制御盤4は圧縮機本体2の無負荷運転を停止して前述した運転待機状態に戻る。或いは、圧縮機1を停止させていた場合には再び停止状態に戻る。
【0041】
上記排水運転の間、前記ドレン排出弁22bも開放することにより、ドライヤ22内に残留していたドレンも排出することができ、ドレン凍結によるドライヤ22の破損も防止できる。
なお、上記排水運転の間、前記水位センサ32は下限水位を検出するが、前記制御盤4は、排水運転時に水位センサ32が下限水位を検出しても、前記外部給水弁17を開かず、閉状態を保って給水が行なわれないように制御する。
【0042】
また、前記圧縮機本体が運転状態或いは運転待機状態にあるときに、外部からの圧縮機の停止指令が入力されたような場合、単に圧縮機を停止させるのではなく、停止させる前に前記制御盤4は、前述した排水運転を実施し、この排水運転が終了した後に圧縮機を停止させるように制御する構成とすることもできる。このようにすれば、圧縮機1の停止時(完全停止時)にはその都度排水運転を実施するから、凍結防止を図れるだけでなく、次に運転する際に送水系統の水として常に新鮮な水を補給できるから、送水系統の故障などを未然に防止できる効果も得られる。
【0043】
以上説明したように、本実施例によれば、水分離器8内に貯留された水を排出するための排水配管19を有する排水系統と、この排水配管19を開閉する排水弁20を設けると共に、圧縮機本体に水を噴射するための送水系統の送水配管10に水流の有無を検出可能な水流検出手段31を備え、排水運転時には前記排水弁20を開き、放気弁26を開状態、吸込弁6を閉状態として無負荷運転を行うように構成しているので、圧縮機本体2を無負荷運転しながら前記送水系統の排水運転を行うことができ、送水系統内の水を確実に排水できる。また、前記水流検出手段31が水流なし(流量ゼロ)を検出することで前記圧縮機本体2の無負荷運転を停止させることができるから、長時間圧縮機を運転させる必要がなく、排水運転のための動力を必要最小限に抑えることができ、消費電力を抑制できる。従って、確実に圧縮機内部の水を排出して凍結防止を図ることができると共に、圧縮機の凍結防止のための消費電力の増加も抑制可能な水噴射式圧縮機を得ることができる。
【実施例2】
【0044】
図2は本発明の実施例2の水噴射式圧縮機を説明する系統図である。この図2において、上記図1と同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示しており、同一部分については説明を省略する。
【0045】
この実施例2のものが上記実施例1と異なる部分を説明する。この実施例2では、水分離器8と水クーラ11の間の送水配管10に該送水配管を開閉する送水弁33が設けられている。また、前記送水弁33と前記水クーラ11との間の送水配管10と、逆止弁23及び保圧弁24よりも上流側の吐出配管9とを接続するようにバイパス配管35が設けられ、更にこのバイパス配管35には該バイパス配管を開閉するバイパス弁34が設けられている。
【0046】
本実施例では、前記実施例1に対し、上記の構成が更に備えられており、これにより排水運転時には、前記送水弁33を閉じ、前記バイパス弁34を開くことで、水分離器8内に貯留されている水は、前記水クーラ11に送られること無く、排水配管19から排水される。また、吐出圧力は、前記吐出配管9から前記バイパス配管35及び前記送水配管10経由して、前記水クーラ11に作用するため、水クーラ11に残留している水も圧縮機本体2に送水された後、水分離器8内に落ちて排水される。
【0047】
従って、本実施例によれば、上記実施例1の効果に加え、水分離器8に貯留されていた水が水クーラ11に送水されない分、更に迅速に圧縮機1内の送水系統の排水が可能となり、排水運転時間を短縮できると共に、排水運転のための消費電力も更に低減することができる。
【0048】
上記実施例1または実施例2においては、無負荷運転が設定時間経過して圧縮機本体が停止した運転待機状態や、圧縮機が停止した状態のときに、操作者が凍結の虞があると判断した場合に、操作者が操作盤4を操作することで排水運転を開始する例について述べたが、これに加え次の機能を備える構成としても良い。即ち、圧縮機1が運転待機状態の場合や、圧縮機が停止した状態のときに、前記外気温度センサ29が、圧縮機1周辺の外気温度を検出して、外気温度が予め設定された温度(例えば、0℃付近)よりも低くなった場合に、自動的に排水運転を開始するように制御盤4を構成しても良い。
【0049】
排水運転終了後、圧縮空気の需要が出て、圧縮機本体2が負荷運転される場合には、水分離器8内に水は貯留されていないが、操作盤4は水位センサ32からの信号を受けて、給水口から外部給水配管16を介して圧縮機本体2内に水を供給することができる。
【0050】
また、圧縮機1の排水運転をすることなく、長時間或いは長期間完全停止させている場合で、外気温度が0℃付近まで低下して凍結の可能性が出てきたときなどにも、操作者はいつでも排水運転を実施することは可能である。
【0051】
なお、上記各実施例においては、排水運転による排水完了を、前記流量センサ31による水流検出手段で構成し、流量ゼロ(水流なし)を検出することで判断するようにしているが、これに代えて次のように構成しても良い。即ち、排水運転のために、圧縮機本体2の無負荷運転を行うと、排水完了により圧縮機本体2に給水されなくなるため、圧縮空気が冷却されず、このため圧縮空気の吐出温度が上昇する。従って、前記吐出温度センサ30で検出した吐出温度が予め設定された温度よりも高くなった場合に、排水が完了したと判断して圧縮機本体2の運転を停止させるように構成しても良い。このように水流検出手段の代わりに吐出温度センサ30を使用すれば、前記流量センサ31を設けることなく既存の吐出温度センサを使用して排水完了を検出することができ、安価に製作できると共に、ほぼ同様の作用、効果も得られる。
【0052】
なお、吐出温度センサ30で前記流量センサ31を代用した場合、水を供給しないで運転(ドライ運転)される時間が数秒間生じるが、本実施例では雄雌一対のスクリュロータ5がタイミングギア36により微小な隙間を形成して噛み合う構成としているため、一般にはロータが焼き付くことはない。
【符号の説明】
【0053】
1:圧縮機、
2:圧縮機本体、
3:モータ、
4:制御盤(制御手段)、4a:インバータ、4b:操作パネル、
5:スクリュロータ、
6:吸込弁(吸込系統)、7:吸込フィルタ、
8:吐出配管(吐出系統)、
9:水分離器、
10:送水配管(送水系統)、
11:水クーラ、12:冷却ファン、
13:水フィルタ、14:本体給水弁、
15,16:外部給水配管、17,18:外部給水弁、
19,19a,19b:排水配管(排水系統)、
20:排水弁、21a,21b:手動排水弁、
22a:ドレン排出配管、22b:ドレン排出弁、
23:逆止弁、
24:保圧弁、
25:放気配管(放気系統)、26:放気弁、
27:吐出圧力センサ、28:供給圧力センサ、
29:外気温度センサ(外気温度検出手段)、
30:吐出温度センサ(吐出温度検出手段)、
31:流量センサ(水流検出手段)、
32:水位センサ、
33:送水弁、
34:バイパス弁、35:バイパス配管、
36:タイミングギア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込弁を有する吸込系統から吸入された空気を圧縮すると共に圧縮作用空間に水が供給される圧縮機本体と、前記圧縮機本体から吐出される圧縮空気と水を分離する水分離器と、該水分離器からの圧縮空気が流れる吐出配管を備える吐出系統と、前記水分離器内の水を前記圧縮機本体へ送水した後再び前記水分離器に戻るように循環させる送水系統と、この送水系統を構成する送水配管の途中に設けられ前記水分離器からの水を冷却するための水クーラと、前記送水系統の水を外部に排出するための排水系統と、この排水系統を構成する排水配管に設けられた排水弁と、前記吐出系統の圧縮空気を放気するための放気系統を備えた水噴射式圧縮機において、
前記送水系統における水流の有無を検出するための水流検出手段と、
前記排水配管の排水弁を開閉して前記送水系統の水を抜く排水運転を行わせるように制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、排水運転開始時には、前記排水配管の排水弁を開き、前記放気系統から放気すると共に前記吸込弁を閉じて前記圧縮機本体を無負荷運転しながら排水するように制御し、排水運転終了時には、前記水流検出手段からの信号に基づいて排水運転を終了させるように制御する
ことを特徴とする水噴射式圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の水噴射式圧縮機において、前記送水系統を構成する前記送水配管における前記水クーラの下流側に、前記水から不純物を除去するための水フィルタと、圧縮機本体への給水を制御する本体給水弁を備えていることを特徴とする水噴射式圧縮機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水噴射式圧縮機において、前記水分離器と前記水クーラ間の前記送水配管に設けられた送水弁と、前記送水弁と前記水クーラ間の前記送水配管と前記吐出系統の吐出配管とを接続するバイパス配管と、このバイパス配管に設けられたバイパス弁とを備え、前記制御手段は、前記排水運転を行う場合、前記送水弁を閉じると共に前記バイパス弁を開くように制御することを特徴とする水噴射式圧縮機。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の水噴射式圧縮機において、前記水流検出手段は、前記送水系統に設けられた流量センサであり、排水運転中に前記流量センサが水流なしを検出すると、前記制御手段は前記圧縮機本体の運転を停止させて前記排水運転を終了させることを特徴とする水噴射式圧縮機。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の水噴射式圧縮機において、前記水流検出手段に代えて前記吐出系統上に設けられた吐出温度検出手段を備え、排水運転中に前記吐出温度検出手段が、圧縮機本体から吐出される圧縮空気の温度が予め設定された温度以上となったことを検出すると、前記制御手段は前記圧縮機本体の運転を停止させて前記排水運転を終了させることを特徴とする水噴射式圧縮機。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の水噴射式圧縮機において、外気の温度を検出する外気温度検出手段を備え、前記圧縮機本体が停止した運転待機状態或いは圧縮機が停止している状態のときに、前記外気温度検出手段により検出された温度が予め設定された温度以下となった場合、前記制御手段は自動的に前記排水運転を開始するように制御することを特徴とする水噴射式圧縮機。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の水噴射式圧縮機において、前記圧縮機本体が運転状態或いは運転待機状態にあるときに、外部からの圧縮機停止指令が入力された場合、前記制御手段は、前記排水運転を実施し、この排水運転が終了した後に圧縮機を停止させるように制御することを特徴とする水噴射式圧縮機。

【図1】
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【図2】
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