説明

水圧試験機での耐高圧用のパッキンバックアップリング

【課題】水圧試験時にパッキンリングに不要な変形が生じないパッキンリングを提供する。
【解決手段】パッキンバックアップリング10は、リング半径方向の断面が、矩形状部10Aと、該矩形状部10Aのリング内周側の辺とパッキンリング対面側の辺とがなす角部分を、リング長さが増加し、かつこの増加分より小さい減少分でリング内径が減少する方向に張り出させてなる矢形状部10Bとからなるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管の気密性を検査する水圧試験機の部品として使用され、高い試験圧力での水圧試験でもパッキンリングのシール性を確保しうる、耐高圧用のパッキンバックアップリングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より流体移送用や内圧負荷用の鋼管には、管内を静水圧により所定の試験圧力まで加圧する水圧試験を行って、気密性を検査している。この検査に用いる水圧試験機は、例えば図1に示すように、検査対象の鋼管1の両端部に、先端開口7と後端給水口9とを有する中空のシールヘッド2を外嵌し、シールヘッド2内に設けた連通孔5により鋼管1内部と連通する、シールヘッド2内周面と鋼管1外周面との隙間6を封鎖するために、シールヘッド2の開口端7付近の内周面に設けた凹座部8内に、先端開口7を背にして隙間6を封鎖する弾性のパッキンリング3と、パッキンリング3の背面を補強する剛性のパッキンバックアップリング4とを嵌装して構成される。
【0003】
パッキンリング3は、シール効果を高めるために、通常、半径方向断面が矩形状である胴体部3Aの前面側に外径リップ3Bと内径リップ3Cとを外開きの両脚とするV字形状部が連なる形状とされている。胴体部3Aの内径は鋼管1の外径よりも大きくとられ、外径リップ3Bの先端部の外径は凹座部8の内径よりも大きくとられ、内径リップ3Cの先端部の内径は鋼管1の外径よりも小さくとられている。パッキンバックアップリング4は、通常、半径方向断面が矩形状であってその内径は、鋼管1への容易装着可能とする観点から、鋼管1の外径よりも大きく、かつ、パッキンリング3の胴体部3Aの内径よりも大きくとられている。
【0004】
なお、パッキンリング背面とパッキンバックアップリングのパッキン押さえ面とのそれぞれに凹溝を設け、双方の凹溝に環状の移動阻止部材を嵌装することで、パッキンリングの半径方向不均一変形によるシール性低下を防ぐ旨の提案もある(特許文献1)。
水圧試験中は、シールヘッド2の後端給水口9から鋼管1の内部に負荷された高水圧が、連通孔5から隙間6に伝達してパッキンリング3の前面で受圧され、これによって外径リップ3Bが凹座部8の内周面に密着し、かつ、内径リップ3Cが鋼管1の外周面に密着することで、シール性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−292706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者らは、上述の従来技術には、図2に示すような問題点があることを知見した。すなわち、試験圧力が比較的高くなると、パッキンリング3の変形量が増大して、胴体部3Aまで変形するようになり、その結果、胴体部3Aの内周面側(B部)が、パッキンバックアップリング4の内周面と鋼管1の外周面との隙間にはみ出して破損し、当該隙間から破損抜けして水圧試験ができなくなる場合が少なからず起こるという問題点である。
【0007】
つまり、従来技術では水圧試験時にパッキンリングに不要な変形が生じてパッキンリングの寿命を縮めているという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであって、その要旨は次のとおりである。
(1)鋼管の水圧試験に用いるパッキンバックアップリングであって、リング半径方向の断面が、矩形状部と、該矩形状部のリング内周側の辺とパッキンリング対面側の辺とがなす角部分を、リング長さが増加し、かつこの増加分より小さい減少分でリング内径が減少する方向に張り出させてなる矢形状部とからなることを特徴とする、水圧試験機での耐高圧用のパッキンバックアップリング。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水圧試験時にパッキンリングの不要な変形が防止され、パッキンリングの寿命が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来に係る水圧試験でのシール構造の概要を示す断面図
【図2】従来の問題点を示す断面図
【図3】本発明に係る水圧試験でのシール構造の概要を示す断面図
【図4】本発明例のパッキンバックアップリングの寸法を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図3は、本発明に係る水圧試験でのシール構造の概要を示す断面図である。図3において、10は本発明のパッキンバックアップリングであり、このものは、リング半径方向の断面が、矩形状部10Aと、該矩形状部10Aのリング内周側の辺とパッキンリング対面側の辺とがなす角部分を、リング長さが増加し、かつこの増加分より小さい減少分でリング内径が減少する方向に張り出させてなる矢形状部10Bとからなっている。なお、図1と同一または相当部材には同じ符号を付し、説明を省略する。図3に示すように、本発明のパッキンバックアップリング10は、矩形部10Aと一体をなしてリング内径が矩形部10Aよりもやや小径でかつパッキンリング3側に比較的大きく張り出した矢形状部10Bを有するから、高水圧によりパッキンリング3の胴体部3Aが変形しても、この変形した部分がパッキンバックアップリング10の内周面と鋼管1の外周面との隙間にはみ出すことは、矢形状部10Bによって抑制され(図3のA部参照)、その結果、従来のような破損抜け(図2のB部参照)には至らず、パッキンリング3の寿命が向上する。
【実施例】
【0012】
本発明例として、中径シームレス鋼管13-5/8Bサイズ(外径φ347mm)を試験対象として図3に示した方法で水圧試験を行った。試験水圧は65MPaとした。用いた本発明のパッキンバックアップリングの寸法および材質を図4に示す。なお、パッキンリングの材質は布入りゴムとした。本発明例において、パッキンリングの寿命は、使用開始から劣化して交換されるまでのパッキンリング1個当たりの試験鋼管本数で評価して100本/個であり、図1に示した従来のパッキンバックアップリングを用いた方法ではそれが1本/個であったのに対して、大幅に向上した。
【符号の説明】
【0013】
1 鋼管
2 シールヘッド
3 パッキンリング(従来)
3A 胴体部
3B 外径リップ
3C 内径リップ
4 従来のパッキンバックアップリング
5 連通孔
6 隙間
7 先端開口
8 凹座部
9 後端給水口
10 本発明のパッキンバックアップリング
10A 矩形状部
10B 矢形状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管(1)の水圧試験に用いるパッキンバックアップリング(10)であって、リング半径方向の断面が、矩形状部(10A)と、該矩形状部のリング内周側の辺とパッキンリング対面側の辺とがなす角部分を、リング長さが増加し、かつこの増加分より小さい減少分でリング内径が減少する方向に張り出させてなる矢形状部(10B)とからなることを特徴とする、水圧試験機での耐高圧用のパッキンバックアップリング。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−169725(P2011−169725A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33347(P2010−33347)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】