水性の生物種からの蛍光タンパク質
四種の新規蛍光タンパク質が提供される。これらのタンパク質は、二種の野生型蛍光タンパク質:アクチノディスクス(Actinodiscus)またはディスコソマ種(Discosoma sp.)1から単離された赤色蛍光タンパク質(RFP)、およびモンタストラエア・カベルノーサ(Montastraea cavernosa)から単離された緑色蛍光タンパク質(GFP)に由来するものであった。それぞれの野生型タンパク質から、二種の突然変異型が生じた。突然変異型のそれぞれは、それぞれの野生型よりも強い蛍光強度を有する。蛍光タンパク質の突然変異型によって、タンパク質によって発せられる蛍光のより鋭敏な検出が可能となる。さらに、一つの突然変異タンパク質は、その野生型タンパク質よりも光退色に対する抵抗性が強い。本発明は、野生型のRFPおよびGFPの突然変異型をコードする単離された核酸も包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(文献目録)
括弧に入れた筆頭執筆者の姓によって本明細書に引用された参考文献の完全な書誌的事項の列挙を、請求の範囲の直前にある文献目録の項において見出すことができる。
【0002】
(政府の補助金への言及)
本発明は、国立環境衛生科学研究所−MFBSC、契約番号ES05705、NIH−国立神経疾患脳卒中研究所、契約番号NS36998、および国立一般医学研究所、契約番号GM57505によって与えられた合衆国政府の補助によって行われた。合衆国は、本発明において一定の権利を保有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、生化学的アッセイおよび試薬の分野に関する。より具体的には、本発明は蛍光タンパク質およびそれらを使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(関連技術の説明)
研究者が、ますます多くの種類の生物体から蛍光タンパク質をコードする遺伝子を単離し、クローニングカセット(cloning cassette)内にそれらの遺伝子を含めてきたので、蛍光を発するレポーター遺伝子の利用可能な数は増加してきた。たとえば、海洋生物からの蛍光タンパク質が、クローニングカセット(cloning cassette)を介してDNA内に組み込むことができるレポーター遺伝子として用いられてきた。これらの遺伝子の産物は、特定の波長の光の下で蛍光を発し、たとえば異種細胞、具体的にはイヌの細胞およびサルの細胞においてタンパク質を追跡することが可能となる。最も一般的に用いられるこの性質のタンパク質は緑色の蛍光を発し、これらはクラゲ、エクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)およびウミシイタケ、レニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis)から得られた。さらに、drFP583として知られる赤色蛍光タンパク質(RFP)、およびdsFP483として知られる明るい青緑色の蛍光タンパク質が、インド洋・西太平洋地域のクサビライシ(mushroom coral)(それぞれディスコソマ種(Discosoma sp.)「赤色」およびディスコソマ・ストリアタ(Discosoma striata))から単離された。ディスコソマ(Discosoma)およびアクチノディスクス(Actinodiscus)の両者はクサビライシ(mushroom coral)であり、外骨格が生じない、体が軟らかい花虫類である。ディスコソマ(Discosoma)属とアクチノディスクス(Actinodiscus)属との関係は十分に理解されていないことに留意すべきである。アクチノディスクス(Actinodiscus)およびディスコソマ(Discosoma)の両者はアクチノディスシダエ(Actinodiscidae)科の一員であり、これはコーラルリンポルファアリア(Corallimporpharia)目(キノコ状のもの)の一員である。コーラルリンポルファアリア(Corallimporpharia)の分類学の定義は不完全であり、それゆえに、アクチノディスクス(Actinodiscus)のディスコソマ(Discosoma)との関係の本質は定かではない。ディスコソマ(Discosoma)およびアクチノディスクス(Actinodiscus)は同一の科の異なる属であると考えられているが、これらはより近い関係にあるか、またはより遠い関係にあるかもしれない。
【0005】
種々の蛍光タンパク質および試薬の有用性のおかげで、研究者が彼らの仕事でレポータータンパク質を採用する機会が広がってきた。蛍光タンパク質をコードする単離されたDNAを変異させて、それらの光学的性質を変えてきた。たとえば、エクオレア(Aequorea)の緑色蛍光タンパク質(GFP)のアミノ酸組成におけるアミノ酸66におけるチロシンをヒスチジンに変異させることによって、このタンパク質が、青色の蛍光を発色するタンパク質に変化する。アミノ酸64がフェニルアラニンからロイシンに、アミノ酸65がセリンからトレオニンに、およびアミノ酸145がチロシンからフェニルアラニンに変化すると、親分子よりも強い明るさで蛍光を発し、励起の最適条件が移動したGFPが生じる。さらに、GFPのアミノ酸組成を遺伝子的に改変することによって、研究者がその光の吸収/発光特性を変化させて黄色蛍光タンパク質を生み出すことが可能となった。
【0006】
蛍光タンパク質は、多数のアッセイに用いることができる。一例として、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイに蛍光タンパク質を用いることができる。第一のフルオロフォアの発光スペクトルが第二のフルオロフォアの励起スペクトルと重なり合うことによって、FRETが起こる。これらのフルオロフォアが非常に近接する場合、「ドナー」の励起が結果的に「アクセプター」の発光となる。したがって、このようなフルオロフォアのペアは、分子の相互作用をモニターするのに有用である。蛍光タンパク質、たとえばGFPは、タンパク質の分析に有用である。すなわち、これらの蛍光を発する発光スペクトルおよび励起スペクトルが、FRETが可能となるように重なり合う場合、インビボまたはインビトロのいずれかでのタンパク質の相互作用の分析に有用である。ドナーおよびアクセプターの蛍光タンパク質は、相互作用の分析が行われるタンパク質との融合タンパク質として形成されてもよい。GFPのこれらのタイプの応用は、ハイスループットアッセイを特に求めている。というのは、読み出した情報は直接的であり、細胞下の局在性とは無関係だからである。
【0007】
その緑色蛍光が簡単に検出できるために、エクオレア(Aequorea)からのGFPが遺伝子発現およびタンパク質の局在性の研究のために広く用いられてきた。さらに、その他の蛍光タンパク質のように、GFPは蛍光を発するための基質または補因子を必要としない。したがって、GFPを直接発現させて、多数の種においておよび広範囲の細胞においてレポーターとして用いることが可能である。しかしながら、蛍光の色および強度以外の因子が、研究におけるタンパク質の有用性に影響を与える。多数の蛍光タンパク質が安定であることは、短期間の事象または反復性の事象の測定が求められる場合には、これらのタンパク質を、用いるには望ましくないレポーターにしてしまう。さらに、蓄積したタンパク質はいくらかの哺乳動物細胞にとって毒性を示す可能性がある。たとえば、エクオレア(Aequorea)からのGFPの特定の型がアポトーシスを誘導することが示されている(リュー(Liu)ら)。発明者らはエクオレア(Aequorea)からのGFPの毒性がただ一つの説明に制限されることを望んでいるわけではないが、このことは恐らく、GFPの産生と1:1の化学量論で生じるフリーラジカル(H2O2)の形成によるものであり、高レベルのGFPの発現が特に有毒となると考えられている。このことは、クロマフォア(chromaphore)の成熟の直接の結果であると考えられ、あらゆる公知のGFPにおいて生じると考えられている。
【0008】
光退色は前記の蛍光タンパク質のもう一つの懸念である。光退色は、光によって導かれるフルオロフォアの変化であり、結果として、フルオロフォアによる特定の波長の光の吸収が減少する。このことは、結果的にそのフルオロフォアの蛍光発光の減少を招く。多くの蛍光タンパク質は、励起下で急速に光退色する。このプロセスは通常可逆的であるが、たとえば試料を撮影できる時間が短くなることによって、GFP発現の有用性を制限する可能性がある。しかしながら、光退色の可逆変化が短時間で行われる場合、この特性によって蛍光タンパク質が特定の応用例にとって有用なものとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、研究の将来性を最大化させるための、ある範囲のスペクトル出力および低い毒性を有する容易に発現可能な蛍光タンパク質についての必要性が依然として存在する。このような研究の応用例としては、遺伝子レポーターとしての、短命の活性のモニタリングを可能にするであろう短命の蛍光タンパク質が挙げられるが、これらに制限されるわけではない。このような研究の応用例としては、長期間のモニタリング、または細胞もしくは生物体の安定的なトランスフェクションを可能とする低い毒性の蛍光タンパク質がさらに挙げられるが、これらに制限されるわけではない。
【0010】
さらに、新しい発光スペクトルを有する蛍光タンパク質についての必要性が依然として存在する。これによって、多重プロセスを同時にモニタリングすること、およびバックグラウンドの蛍光発光を最小化することが可能となるだろう。FRET分析システムに適用できる選択の対象も増やせるだろう。さらに、より強い相対蛍光を有する蛍光タンパク質は、蛍光タンパク質の低レベルの発現の検出を可能とするのに必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明(この開示の最後に提示された請求の範囲に定義されている)は、上記の少なくともいくつかの問題を解決することを目的とする。本発明は、強化された特性、たとえば、実質的に強化された蛍光発光および低められた毒性を伴う改良された蛍光タンパク質を提供する。この改良された蛍光タンパク質は研究において有用であり、たとえば、アップ・レギュレーションまたはダウン・レギュレーションなどの遺伝子発現を測定するかまたは検出すること、プロモーター活性をモニターすること、長期間のモニタリングを可能にすること、およびタンパク質の局在を突き止めることに用いることができる。
【0012】
新しい野生型の赤色蛍光タンパク質(RFP)を、アクチノディスクス(Actinodiscus)の種またはディスコソマ(Discosoma)の種のいずれかであると考えられている水性の生物種から単離した。以下、このタンパク質をAc/DsRFPと称する。本発明は、Ac/DsRFPに由来する二種のタンパク質変異体を提供する。本明細書において、本発明の突然変異RFPをRed IおよびRed IIと称する。これらのそれぞれおよびそれらに関連するアミノ酸配列をコードする単離された核酸も含まれる。
【0013】
さらに、新規緑色蛍光タンパク質(GFP)をモンタストラエア・カベルノーサ(Montastraea cavernosa)から単離した。本明細書において、このタンパク質をMcGFPと称する。本発明は、McGFPに由来する二種の新規タンパク質を提供する。本明細書において、好ましい新規タンパク質をGreen IおよびGreen IIと称する。McGFPの特定の変異体が極めて急速に光退色することも見出された。
【0014】
本発明は、選択されたポリペプチドをコードする第一のコード配列および本発明の蛍光タンパク質をコードする第二のコード配列を含む核酸構築物も提供する。第一のコード配列によってコードされているポリペプチドが、第二のコード配列によってコードされているポリペプチドにその中で融合しているところの蛍光を発するハイブリッドタンパク質が、融合配列の発現によって生じるように、この第一のコード配列は第二のコード配列に融合されている。
【0015】
本発明の種々の単離された核酸を含むベクターも提供される。種々の能力のベクターは分子生物学者にとっては周知であり、真核細胞または原核細胞を形質転換することに用いることができる。これらを、インビボの発現系およびインビトロの発現系と一緒に用いることもできる。
【0016】
蛍光タンパク質をコードする核酸の発現を検出する方法も提供される。この方法は、本発明の核酸を細胞内または生物体内に導入する工程を含む。好ましい実施形態においては、プロモーターが核酸の発現をコントロールする。核酸の発現の検出を可能とする蛍光の発光によって、核酸の発現を検出する。好ましい実施形態においては、細胞は真核細胞である。別の好ましい実施形態においては、細胞は原核細胞である。核酸の発現をインビボで検出することができる。核酸の発現をインビトロでおよび固定細胞、たとえばホルマリン固定細胞で検出することもできる。
【0017】
核酸の発現を検出する方法の好ましい実施形態においては、対象の遺伝子が蛍光タンパク質をコードする核酸に融合される。この融合タンパク質は、プロモーターからの発現および/または細胞下の局在性の測定を可能とする細胞下の特定のロケーター・シグナル(locator signal)を含んでもよい。対象の遺伝子の発現を、蛍光の発光によって検出する。
【0018】
本発明の核酸を含む細胞も提供される。好ましい実施形態においては、核酸はその細胞のゲノム内に組み込まれている。別の好ましい実施形態においては、核酸はその細胞のゲノム内に組み込まれていない。たとえば、核酸は染色体の外に存在してもよい。
【0019】
さらに、本発明の単離された核酸を有する動物が提供される。好ましい実施形態においては、動物はゼブラフィッシュである。
【0020】
本発明の好ましい模範的な実施形態を添付の図面で示す。
【0021】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、次の説明に記載された内容または図面において図解された内容の構成および配列の詳細事項にまで制限されないことを理解すべきである。本発明はその他の実施形態であることができ、または、種々のやり方で、実行し、もしくは実施することができる。さらに、本明細書で採用されている語法および専門用語は説明目的のためであり、制限するものとみなすべきではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(詳細な説明)
定義:
本発明の目的のために、次の定義を用いる。
標準的な一文字コード「A」、「C」、「G」、「T」、および「U」は、本明細書においてそれぞれヌクレオチドのアデニン、シトシン、グアニン、チミン、およびウラシルの代わりに用いられる。「N」は任意のヌクレオチドを示す。オリゴヌクレオチド配列またはポリヌクレオチド配列は、5’−末端から3’−末端に向けて記載されている。
【0023】
本明細書で用いられる場合、「アミノ酸」は標準的なポリペプチド命名法、J. Biol. Chem., 243: 3557-59, (1969)に沿って記載される。本明細書において特定されるすべてのアミノ酸残基は、天然のL−配置である。標準的なポリペプチド命名法に沿って、アミノ酸残基についての略語を次の対応表に示す。
対応表
1文字 3文字 アミノ酸
Y Tyr L−チロシン
G Gly グリシン
F Phe L−フェニルアラニン
M Met L−メチオニン
A Ala L−アラニン
S Ser L−セリン
I Ile L−イソロイシン
L Leu L−ロイシン
T Thr L−トレオニン
V Val L−バリン
P Pro L−プロリン
K Lys L−リシン
H His L−ヒスチジン
Q Gln L−グルタミン
E Glu L−グルタミン酸
W Trp L−トリプトファン
R Arg L−アルギニン
D Asp L−アスパラギン酸
N Asn L−アスパラギン
C Cys L−システイン
【0024】
「タンパク質」および「ポリペプチド」とは、長さまたは翻訳後修飾、たとえばグリコシル化またはリン酸化に関係なく、任意のアミノ酸の鎖を意味する。本発明の合成遺伝子は種々の天然タンパク質の変異体またはそのポリペプチド断片をコードしてもよい。好ましくは、このようなタンパク質のポリペプチドのアミノ酸配列は、それが由来するところの天然(ネイティブ)タンパク質のアミノ酸配列と、少なくとも85%、好ましくは90%、および最も好ましくは95%または99%の同一性を有する。
【0025】
核酸に関連して「単離された核酸」または「単離されたポリヌクレオチド」として用いられる場合の「単離された」という用語は、特定された核酸配列であって、通常はその起源において付随している少なくとも一つの夾雑物から分離された核酸配列を意味する。したがって、単離された核酸は、天然で見られる形または状態とは異なる形または状態で存在する。対照的に、単離されていない核酸、たとえばDNAおよびRNAは、天然に存在する状態で見出される。具体的には、所定のDNA配列、たとえば遺伝子は、宿主細胞の染色体上で、隣接する遺伝子に近接した状態で見出される。RNA配列、たとえば特定のタンパク質をコードする特定のmRNA配列は、細胞中で、数多くのタンパク質をコードするその他の多数のmRNAとの混合物として見出される。しかしながら、単離された核酸としては、例示目的で、このような天然の細胞の染色体の位置とは異なる染色体の位置にある核酸か、または天然で見出されるものとは異なる核酸配列で挟まれた核酸を普通は発現するような細胞内の核酸が挙げられる。単離された核酸は、一本鎖の形または二本鎖の形で存在してもよい。単離された核酸をタンパク質の発現に利用する予定の場合、そのオリゴヌクレオチドは少なくともセンス鎖またはコード鎖を含む。すなわち、そのオリゴヌクレオチドは一本鎖でもよいが、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含んでもよい。すなわち、そのオリゴヌクレオチドは二本鎖でもよい。
【0026】
ポリペプチドに関連して「単離されたタンパク質」または「単離されたポリペプチド」として用いられる場合の「単離された」という用語は、特定されたポリペプチドであって、通常はその起源において付随している少なくとも一つの夾雑物から分離されたポリペプチドを意味する。したがって、単離されたポリペプチドは、天然で見られる形または設定とは異なる形または設定で存在する。対照的に、単離されていないポリペプチド、たとえばタンパク質および酵素は、天然に存在する状態で見出される。
【0027】
「精製された」または「精製すること」という用語は、対象の成分、たとえばタンパク質または核酸からいくつかの夾雑物を除去する任意のプロセスの結果を意味する。精製された成分のパーセントはそれによってサンプル内で高まる。
【0028】
本発明の核酸に関連して、「核酸」という用語は、DNA、ゲノムDNA、cDNA、RNA、mRNAおよびリストに記載された種々の核酸の混成物を意味する。この核酸は合成起源または天然起源のものであり得る。本明細書で用いられる場合、核酸とはヌクレオチドが共有的に結合した配列であり、この中では、一つのヌクレオチドのペントースの3’位がホスホジエステル基によって次のペントースの5’位に結合し、ヌクレオチド残基(塩基)が特定の配列の状態、すなわちヌクレオチドが直鎖の順序で結合している。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「野生型」という用語は、天然の源から単離された遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を意味する。野生型遺伝子は、集団内で最も多く観察されるものであり、したがって、遺伝子の「野生型」の形と自由裁量的に呼ばれる。対照的に、「突然変異体」という用語は、配列および/または機能上の特性に変異が現れている、すなわち、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に特性が改変されている遺伝子または遺伝子産物を意味する。自然発生的な突然変異も単離できることが知られており、これらは野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、それらの特性が改変されていたという事実によって、特定される。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「より強い相対蛍光強度」または「増加した明るさ」とは、所定の条件の組み合わせの下で、野生型蛍光タンパク質によって示される蛍光強度または明るさよりも強いことを意味する。一般的に、蛍光強度または明るさの増加とは、改変体の蛍光発光が、所定の条件の組み合わせの下で、野生型蛍光タンパク質よりも少なくとも25%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは100%以上強いか、または明るいことを意味する。
【0031】
「核酸構築物」という用語は、異なる源に由来する二種以上の核酸配列から構成される核酸であって、当分野において公知の方法を用いて互いに連結されている核酸を意味する。
【0032】
本明細書で用いられる場合、「宿主細胞」という用語は、任意の生物体からの細胞を意味する。好ましい宿主細胞は、植物、細菌、酵母、真菌、昆虫、またはその他の動物に由来するものである。ポリヌクレオチド配列を種々のタイプの宿主細胞内に導入するための方法は、当分野において周知である。宿主細胞としては、これらの指定されたものの子孫または潜在的な子孫が含まれる。
【0033】
「ベクター」という用語は、その中にDNA断片が挿入され得るかクローニングされ得る核酸分子であって、単数(または複数の)DNAセグメントを細胞内に移すことに用いることができ、かつ細胞内での複製が可能な核酸分子に関連して用いられる。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、ウイルス、コスミドなどに由来するものでもよい。
【0034】
本明細書で用いられる場合、「発現ベクター」という用語は、所望のコード配列、および、特定の宿主生物体内で機能できるように結合しているコード配列の発現に必要な適切なDNA配列またはRNA配列を含むDNA配列またはRNA配列を意味する。原核生物の発現ベクターは通常、プロモーター、リボソーム結合部位、宿主細胞での自律増殖のための複製起点、および場合によりその他の配列、たとえば任意のオペレーター配列、任意の制限酵素部位を含む。プロモーターは、RNAポリメラーゼをDNAとの結合に導き、かつRNA合成の開始を導くDNA配列と定義される。真核生物の発現ベクターは通常、プロモーター、必要に応じてポリアデニル化シグナルおよび必要に応じてエンハンサー配列を含む。
【0035】
「機能できるように結合」という用語は、コード配列を発現させるために、コード配列の発現に必要な制御配列を、コード配列に関連してDNA分子内の適切な位置に置くことを意味する。これと同一の定義が、発現ベクターにおけるコード配列ならびに転写制御要素、たとえばプロモーター、エンハンサー、およびターミネーション要素の配置に時々適用されることがある。
【0036】
本発明において、当分野における従来の分子生物学および微生物学を採用してもよい。このような技術は文献で十分に説明されている。たとえば、サンブロック、フリッチェおよびマニアティス、Molecular Cloning: A Laboratory, Third Edition (2001) Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor N.Y.を参照すること。
【0037】
本発明にしたがって、新規の野生型蛍光タンパク質を単離した。この野生型蛍光タンパク質を変異させて、蛍光タンパク質の突然変異型、たとえば、それぞれの野生型蛍光タンパク質よりも強い相対蛍光強度を有するか、またはより強い光退色に対する抵抗能力を有するものを生じさせた。
【0038】
I.野生型蛍光タンパク質の単離
簡単に言えば、対象の生物体からの組織を集め、下記に詳述した方法でホモジナイズした。RNAを単離し、RT−PCRを実施した。サイズが選択されたDNAをアガロースゲルから回収し、次いで細菌の選択に適したベクター内に連結した。ベクターは、誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターを含むことができる。好ましい実施形態においては、ベクターとしてプラスミドを用いた。プラスミドのコンピテント細菌内へのエレクトロポレーションを行った。細菌をLB−アンピシリンプレート(100μg/mL)上でインキュベートした。対象のクローンを、蛍光強度および/またはカラークオリティー(color quality)の定性的測定に基づいて単離した。
【0039】
本手法(下記の実施例に詳述されている)を用いて、野生型の赤色蛍光タンパク質をコードするcDNAを、アクチノディスクス(Actinodiscus)またはディスコソマ(Discosoma)と考えられる水性の生物種から単離した。アクチノディスクス(Actinodiscus)属またはディスコソマ(Discosoma)属との関係が明確ではないので(このことは上記の関連技術の説明の項目で検討している)、このタンパク質を以下、Ac/DsRFPと称する。Ac/DsRFPをコードする単離されたcDNAをさらに変異させ、単離されたものを、下記に詳述されるような対象とする特性に基づいて選択した。さらに、本明細書に記載の方法を用いて、野生型の緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするcDNAをモンタストラエア・カベルノーサ(Montastraea cavernosa)から単離した。これを本明細書においてMcGFPと称する。下記のように、McGFPをコードする単離されたcDNAをさらに変異させ、対象の特性に基づいて選択した。
【0040】
II.変異した蛍光タンパク質の作製
単離された野生型遺伝子のそれぞれについて低ストリンジェント条件(下記のような低いアニーリング温度、過度に長い伸長時間、余分なサイクル)下で実施され、重合の間に突然変異を導入するそれぞれのPCR全体を通して、コード配列におけるランダム変異を誘導した。得られたPCR産物を細菌の発現ベクター内にクローニングした。対応する野生型蛍光タンパク質と比較した場合の増加した相対蛍光、対象とする色、および減少した光退色について、クローンのスクリーニングを行った。次いで、このベクターDNAを選択されたクローンから精製し、シークエンシングを行って、関連するPCRによって誘導された突然変異の変化を測定した。次いで、このプロセスを数回繰り返した。
【0041】
a.Red IおよびRed II
Ac/DsRFP(ディスコソマ(Discosoma)からの野生型RFP)をコードするDNAを、数ラウンドの低ストリンジェントPCRによって上記のように変異させた。ベクターへのクローニングおよび形質転換した細菌の蛍光特性についての視覚的なスクリーニングの後、Red IおよびRed IIによってコードされたタンパク質を、親のAc/DsRFPの野生型と比べてより強い相対蛍光強度に基づいて選択した。定性的測定を行う時、Red IIはRed Iの強度よりも少なくとも50%強い蛍光強度を有する。
【0042】
Red I(配列番号:1)およびRed II(配列番号:2)のDNA配列を図1A〜図1Bに示す。Red IをコードするDNAと比較した場合、Red IIをコードするDNAは、単一のヌクレオチドの相違、すなわち694位においてRed IがGを有し、Red IIがAを有するという相違を含む。Red I(配列番号:2)およびRed II(配列番号:4)のアミノ酸配列を図2に示す。この図から、232位において、Red IがDを有し、その一方Red IIがNを有することが示される。
【0043】
図3〜図5を参照すると、Red IおよびRed IIの分光分析、ならびにRed IおよびRed IIの両方の分光分析が示されている。
【0044】
b.Green IおよびGreen II
McGFP(エム・カベルノーサ(M. cavernosa)からの野生型GFP)をコードするDNA配列を、低ストリンジェント条件下のPCRを用いて本明細書に記載のように変異させた。より強い蛍光を発する突然変異GFPを単離した。これをGreen Iと表す。第二ラウンドの低ストリンジェントPCRをGreen Iに関して実施し、光退色に対して強い抵抗性を有する第二の突然変異GFPを得た。これをGreen IIと表す。Green IをコードするDNA配列と比較した場合、Green IIをコードするDNAは単一のヌクレオチドの変化:図6A〜図6Bにおいて配列番号:5および配列番号:7として示されるようなヌクレオチド527におけるシトシンからチミンへの変異を含む。これらのアミノ酸配列は、図7において配列番号:6および配列番号:8として示されている。この図は、Green Iにおける176位のS、およびGreen IIにおける同一の位置のFを示している。
【0045】
McGFPと比較した場合、Green Iはより強い相対蛍光強度を有していた。Green IIはさらに、相対的により強い蛍光を発するが、光退色に対する高い抵抗性も有し、Green Iタンパク質における特性は明白ではない。蛍光顕微鏡検査法で広く採用されている、Attoarc(商標) HBO 100W・可変性電源装置で操作を行う水銀アークレーザーを用いて、Green Iが適切な条件下で光退色することを見出した。弱いレーザー強度とは25%未満の強度であると考えられており、強いレーザー強度とはこの装置にとって75%を超えることであると考えられている。ツァイス・アキシオベルト(Zeiss Axiovert) S100顕微鏡を用いて、細胞を可視化した。弱いレーザー強度、たとえば10%の下では、どちらの誘導されたタンパク質も同一に見える。しかしながら、強いレーザー強度、たとえば80%の下で数秒間の後では、Green Iの光は見えない。暗所にて数分間の後再照射すると、Green Iの蛍光発光が再び明らかになる。Green Iは、420nmの光による励起が急速に光退色を無効化するという点でもまた珍しい。Green IIはこの光退色反応を受けることはない。
【0046】
図8〜図10を参照すると、Green I(図8)およびGreen II(図9)の分光分析、ならびにGreen IおよびGreen IIの両方(図10)の分光分析が示されている。
【0047】
IV.蛍光タンパク質の例示的な使用
本明細書に記載された蛍光タンパク質のすべてを、たとえば対象の遺伝子および蛍光タンパク質をコードするDNAをベクター内に挿入することによって、対象の遺伝子の発現を検出するマーカーとして用いることができる。このベクターを真核生物または原核生物、たとえば細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、および哺乳動物細胞などの宿主細胞内に形質転換することができる。当分野において知られているように、宿主細胞はコンピテントであるか、または、リン酸カルシウム沈殿、レシピエント細胞の当該DNAを含む細菌のプロトプラストとの融合、レシピエント細胞の当該DNAを含むリポソームによる処理、DEAEデキストラン、レセプター媒介型エンドサイトーシス、エレクトロポレーション、および当該DNAの細胞内への直接的なマイクロインジェクションを含む種々の技術(これらに制限されるわけではない)によって、コンピテントにすることが可能なものである。このDNAを宿主細胞の染色体DNA内に組み込むことができ、またはそれは染色体外、たとえばプラスミドに存在してもよい。
【0048】
本発明の蛍光タンパク質を、生化学的アッセイにおいて、および試薬として用いることもできる。たとえば、この蛍光タンパク質を、発酵プロセスをモニターするレポーター、および遺伝子発現を定量するレポーターとして用いることができる。
【0049】
さらに、本発明の蛍光タンパク質は、多重標識システムで用いることができるさらなる蛍光タンパク質を提供する。具体的には、たとえばFACS(fluorescence activated cell sorting)の間に二種の異なる細胞集団を追跡できるように、本発明の一つのGFPを第一の細胞集団の標識に用いることができ、本発明の一つのRFPを第二の細胞集団の標識に用いることができる。同様に、Red IおよびRed IIを、たとえば異なる細胞集団を標識し追跡することに用いることができる。というのは、Red IおよびRed IIは異なる波長の蛍光を発するからである。
【0050】
さらに、本発明の蛍光タンパク質を原核生物および真核生物の発現系内で用いることもできる。たとえば、蛍光タンパク質についてのコード配列およびその他の遺伝子を含む融合タンパク質を生じさせることができる。本発明の典型的な融合タンパク質は、選択されたポリペプチドをコードする第一のコード配列および本発明の蛍光タンパク質をコードする第二のコード配列を含む。第一のコード配列によってコードされているポリペプチドが、第二のコード配列によってコードされているポリペプチドにその中で融合しているところの蛍光を発するハイブリッドタンパク質が、融合配列の発現によって生じるように、この第一のコード配列は第二のコード配列に融合されている。コード配列の3’末端または5’末端のいずれかにおいて、本発明の蛍光タンパク質を融合することができると考えられている。さらに、たとえばβ-ガラクトシダーゼなどのタンパク質についてのコード配列を伴う融合タンパク質とは異なり、蛍光タンパク質についてのコード配列を含む融合タンパク質は、外因性の基質または補因子を添加することを必要としない。このことは、蛍光タンパク質を生きている細胞中で用いることを可能とするので有益である。
【0051】
本明細書で提供される蛍光タンパク質を、インビボ、たとえばmRNAマイクロインジェクションアッセイにおけるマーカーとして用いることもできる。蛍光タンパク質を用いるその他の例は、トランスジェニックマウス、カエンホルバブディティス・エレガンス(Caenhorbabditis elegans)、ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)、およびゼブラフィッシュにおけるインビボマーカーとしてである。
【0052】
さらに、本発明の蛍光タンパク質を、刺胞動物の遺伝学の研究のための分類学上のマーカー、診断用キットにおける色指示薬、着色された食品添加物、および化粧料の原料として用いることができる。
【実施例】
【0053】
(実施例)
例示を目的とするためだけに次の実施例が提供される。これらの実施例は、現在記載されている発明を単により完全に理解するのに役立てるために、本明細書に含まれる。これらの実施例は、本明細書に記載された発明または本明細書で権利を主張する発明の範囲を、いかなる方法においても制限しない。
【0054】
実施例1
種の収集と動物の管理:
二種の源からサンゴ群体を得た。第一のいくつかのアクチノディスクス(Actinodiscus)/ディスコソマ種(Discosoma sp.)のポリプからなる硬い赤レンガ色の群体を、地元の観賞魚店から得た。第二のモンタストラエア・カベルノーサ(Montastraea cavernosa)の群体を、フロリダ南部の領域のサンゴ礁から集めた。両方の種を、ろ過した海水が流水式で入る小さな水槽内で保存した。
【0055】
実施例2
全RNAの単離、逆転写、増幅およびcDNAの回収:
単一のポリプ(アクチノディスクス(Actinodiscus)/ディスコソマ種(Discosoma sp.))から、またはその下にある骨格(エム・カベルノーサ(M. cavernosa))から軽くエアブラシで空気を吹き付けて得た細胞塊から、全RNAキット(カタログ番号1902、アンビオン社、オースチン、テキサス州)を用いてRNAを単離した。簡単に言えば、その組織をホモジナイズし、約10倍量の変性溶液と共に試験管を反転させて混合し、1倍量のフェノール/クロロホルムで抽出した。水性の上清を清浄な容器に移した。10分の1倍量の3M 酢酸ナトリウムをこの上清に添加した。次いでこれを1倍量の酸性フェノール/クロロホルムでさらに1回抽出した。再び、この水性の上清を清浄な容器に移した。1倍量のイソプロパノールをこの上清に添加し、遠心分離によって全RNAを沈殿させた。このペレットを75% エタノールで洗浄し、50μLのRNアーゼを含まない水で再懸濁させた。収率を分光光度計で測定し、品質をゲル電気泳動によって評価した。
【0056】
このようにして単離されたRNAをFirst Choice(商標)RLM−RACEキット(カタログ番号1700、アンビオン社)に用いて、cDNAを生じさせ、増幅した。RLM−RACEプロトコール・バージョン0010に従って、「スモールリアクション(small reaction)」プロトコールを続けた。簡単に言えば、仔ウシ小腸ホスファターゼ(CIP)で全RNAを処理して、分解しキャップ付加されていないRNAから5’リン酸塩を除去する。次いでフェノール:クロロホルムで抽出した。次いで、タバコ酸性ピロホスファターゼ(TAP)を用いて全長mRNAからキャップを除去する。含まれている5’RACEアダプター(5’−GCUGAUGGCGAUGAAUGAACACUGCGUUUGCUGGCUUUGAUGAAA−3’)(配列番号:9)を、T4 RNAリガーゼを用いて、キャップを除いた全mRNAに連結した。MMLV逆転写酵素およびポリTプライマー(5’−CTCGAGAAGCTTGAATTCGGATCCTTTTTTTTTTTTTTTTT−3’)(配列番号:10)を用いて、逆転写を行った。
【0057】
同一のポリTプライマー、5’RACEアウタープライマー(5’−GCTGATGGCGATGAATGAACACTG−3’)(配列番号:11)およびSuperTaqポリメラーゼ(アンビオン社、カタログ番号2050)を用いて、結果として生じたcDNAの増幅を行った。
【0058】
PCRを次のように実施した。94℃/5分間、80℃を維持、ポリメラーゼを添加、94℃/30秒間、60℃/1分間、72℃/1分間を34サイクル、および最後に72℃で10分間。増幅されたcDNAをゲルで精製した。約500〜1200塩基対(bp)の画分を集め、シリコーン処理をしたグラスウールを介する低速度の遠心分離に引き続いたイソプロパノール沈殿によって回収した。
【0059】
実施例3
細菌のクローンの形質転換および選択、プラスミドの調製、ならびに野生型蛍光タンパク質のDNAシークエンシング:
ゲル精製したcDNA画分を、pCR IIクローニングベクター(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)内に連結し、結果として生じたプラスミドをTop 10大腸菌(インビトロジェン)内に電気的形質転換(electrotransform)した。形質転換した細菌をLB−アンピシリン(100μg/mL)プレート上で培養し、蛍光発色について、ライカMZFLIII蛍光実体解剖顕微鏡を用いてコロニーのスクリーニングを行った。単一の蛍光のコロニーを選定し、数ラウンドの間再画線(restreak)してモザイク現象を除去し、液体培地中で培養した。キアゲンMidiキット(キアゲン、バレンシア、カリフォルニア州)を用いて、プラスミドDNAを調製した。
【0060】
アクチノディスクス(Actinodiscus)/ディスコソマ種(Discosoma sp.)1のRNAから生じた細菌のコロニーから、野生型の赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現するコロニーを単離した。本明細書において、これはAc/DsRFPと呼ばれる。
【0061】
さらに、エム・カベルノーサ(M. cavernosa)のRNAから生じた細菌のコロニーから、野生型の緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するコロニーを単離し、McGFPと名づけた。
【0062】
実施例4
蛍光タンパク質の突然変異の誘発:
野生型タンパク質をコードする遺伝子のそれぞれについて、誤りがち(error-prone)PCRを行った。そのPCR産物をクローニングし、PCR産物によってコードされたタンパク質の発現に基づいて定性的に選択した。
【0063】
具体的に言えば、Kpn Iの制限部位、シャイン−ダルガーノ配列およびコザックコンセンサスアップトランスレーション(uptranslation)配列、コード領域の開始ATG、ならびに約10bpの下流のホモロジーを含む5’「上流」プライマーを、Ac/DsRFPおよびMcGFPの両方のために設計した。Ac/DsRFPのための上流プライマーは:5’−CCGGTACCTAAGGAGGCCACCATGAGTTGTTCC−3’(配列番号:12)であり、McGFPのための上流プライマーは:5’−CCGGTACCTAAGGAGGCCACCATGAGTGTGATAAAAC−3’(配列番号:13)であった。
【0064】
Xba Iの制限部位、コード領域の終止コドン、および約10bpの上流のホモロジーを有する3’「下流」プライマーも、蛍光タンパク質の単離物のそれぞれのために設計した。Ac/DsRFPのための下流プライマーは:5’−CCACTAGTCTAGATCATTACCGCTC−3’(配列番号:14)であり、McGFPのための下流プライマーは:5’−GGTCTAGATTACTTGGCCTGCCTC−3’(配列番号:15)であった。
【0065】
蛍光タンパク質のプラスミドDNAに関しての低ストリンジェントPCRのプロトコールを、上記のプライマーを用いて実施した。条件は:94℃/5分間、80℃/維持、ポリメラーゼの添加、94℃/1分間、42℃/2分間、72℃/3分間を10サイクル、94℃/30秒間、55℃/1分間、72℃/1分間を30サイクル、および最後に72℃で10分間であった。PCR産物を、フェノール/クロロホルム抽出およびイソプロパノール沈殿、Kpn I/Xba Iによる消化、ゲル精製を用いて精製し、Kpn I/Xba Iで消化されたpBS II KS+プラスミド(ストラタジーン、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)内に連結した。連結されたものの混合物をTop 10細胞(インビトロジェン)内に電気的形質転換(electrotransform)し、1)親よりも明るいこと、2)発色の速度、3)大きさ、および4)色について、コロニーのスクリーニングを行った。
【0066】
上記のような低ストリンジェントPCRを数ラウンド行うことによって、Ac/DsRFP、野生型の赤色蛍光タンパク質から二種の変異体が生じた。ベクター内にクローニングし、蛍光特性について形質転換した細菌の視覚的なスクリーニングを行った後、親のAc/DsRFP野生型と比べてより強い相対蛍光強度に基づいて、RedIおよびRed IIによってコードされたタンパク質を選択した。生じた突然変異クローンをRed IおよびRed IIと名づけた。
【0067】
さらに、McGFP、野生型の緑色蛍光タンパク質からGreen I変異体が生じた。Green IをコードするDNA上で低ストリンジェントPCRの第二ラウンドを実施し、上記の四点の基準を満たすコロニーを単離した。Green Iから生じた突然変異クローンをGreen IIと名づけた。アイオワ大学DNA施設(アイオワシティー、アイオワ州)によって、精製プラスミド調製品を用いてシークエンシングを実施した。Red IおよびRed IIのDNA配列を図1A〜図1Bに示し、そのアミノ酸配列を図2に示す。Green IおよびGreen IIのDNA配列を図6A〜図6Bに示し、そのアミノ酸配列を図7に示す。
【0068】
実施例5
その他の発現ベクター内にクローニングされた蛍光タンパク質およびそれらの分光分析:
哺乳動物の発現のために、四種の突然変異蛍光タンパク質(Red I、Red II、Green I、およびGreen II)のそれぞれをKpnI/XbaIで制限分解し、次いでT4 DNAポリメラーゼで処理して平滑末端を生じさせ、平滑末端のSmaI制限部位を利用してpCI−neo哺乳動物発現ベクター(プロメガ、マディソン、ウィスコンシン州)内にクローニングして、pCI−Neo−Red I、pCI−Neo−Red II、pCI−Neo−Green I、およびpCI−Neo−Green IIを生じさせた。
【0069】
哺乳動物細胞および細菌細胞の両方において発現する蛍光タンパク質に関して、分光分析を測定した。Trans−Fast(商標)トランスフェクションプロダクト(プロメガ)を用いて、哺乳動物のCHO細胞をpCI−Neo−Red Iプラスミド、pCI−Neo−Red IIプラスミド、pCI−Neo−Green Iプラスミド、またはpCI−Neo−Green IIプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクトされたCHO細胞の細胞溶解物に関して、スペックス・フルオロログ(Spex Fluorolog) 1680、0.22mの二重分光計を用いて分光分析を測定した。Red IIプラスミドおよびGreen IIプラスミドも原核細胞内で発現した。NcoI−NotIの制限部位を生じさせるオリゴヌクレオチドを用いて、適切なプラスミドの断片をPCRで増幅した。NcoIおよびNotIでPCRアンプリコンを消化し、原核生物の発現ベクター内の同一の部位内にクローニングした。次いでこれを用いて細菌の大腸菌JM109に形質転換した。蛍光タンパク質を精製した後、いくつかのタンパク質についての励起スペクトルおよび発光スペクトルを集め、ツァイスの顕微鏡を用いてその他のタンパク質を視覚的に評価した。ここで留意すべきことは、これらのスペクトルを24時間の時点で記録したが、Red IIについての完全な蛍光の発光には24時間を超えて48時間までを必要とし、その発光ピークは583nmである。
【0070】
実施例6
蛍光タンパク質を発現するトランスジェニック動物:
以前の記述(ギブスら(Gibbs et al.)、1994)のようにして、最終濃度が約2μg/mLの直鎖DNAと0.05%のフェノールレッドを用いて、ゼブラフィッシュの胚内へのマイクロインジェクションのためのDNAを調製した。解剖顕微鏡の下で、胚培養溶液(ERS−25mg/L硫酸ネオマイシン、0.5mg/Lメチレンブルー、17.5mg/Lチオ硫酸ナトリウム、および125μL/Lアンキュール(Amquel) [コルドン(Kordon)]を含む水道水)中の数百の新たに受精した卵を1〜2mmの一個の窪みを有する1%の寒天が入った、35mmのペトリ皿に移した。左手で5番のピンセットを用いて、無傷の漿膜を持つ一個の卵を窪みの中に転がして移し、動物極が上を向く位置に保持した。右手で可動シリンジ(針先が5〜10ミクロンのギルモントS−1100)を用いて、この卵について、卵黄と細胞質の境目の近傍にある最初の細胞の中央下部にある領域内へのマイクロインジェクションを行った。この境目の崩壊とDNA溶液の下部に横たわる卵黄への漏出が、ほとんどの卵に生じた。このことが結果として生じた胚に悪影響を与えることはなかった。マイクロインジェクションの後、この卵を左手のピンセットでERSを含む100mmのペトリ皿に移した。そして、その次の卵を窪みの中の場所に転がして移した。この技術を用いることによって、一日あたり500以上の卵についてマイクロインジェクションを行うことができた。サザンブロット分析によって確立されたところの胚あたりの平均投与量は、50pgのDNAであった。この投与量は経験的に選択された。というのは、その投与量の結果、遺伝子転移の比率が高かったからであった。これらの条件の下、約半分の胚が最初の24時間で死滅し、性的に成熟するまで生き残るのはインジェクションが行われた卵の10〜20%と予想した。しかしながら、模擬物のインジェクションを行った(DNAを受け取っていない)胚の生き残りは、処理を行っていないコントロールの生き残りの約90%であった。
【0071】
魚から得た生きている胚およびホールマウント(whole mount)組織を観察して、カメラを備えたライカMZFL III実体蛍光解剖顕微鏡で写真撮影した。用いたフィルターセットは、FITCフィルターセット(励起、470nm;発光515nm)、改変FITCフィルターセット(ライカ−GFP)(励起、425nm;発光、480nm)またはローダミンフィルターセット(励起、546nm;発光、590nm)であった。約50μLのERSの滴が入ったピペットで、裏返した100mmのペトリ皿の蓋に胚を個別に移し、約50の胚のグループを観察した。写真撮影および詳細な観察を目的として胚を固定するために、1mLの20×のストックしておいた麻酔剤を、100mmのペトリ皿中の約20mLのERSに添加した。この20×のストックしておいた麻酔剤は、ERS中に3g/Lのトリカインメタンスルホナート(MS−222)、20mM Trisを含むpH 8のものであった。麻酔をかけられた胚は、無傷の漿膜の有無にかかわらず、約2分間で固定化され、この溶液内で少なくとも30分間は生存していた。観察の後、これらの胚をERSの新たな皿に移し、数分間以内に移動性が回復した。
【0072】
魚の直鎖状にされた発現DNAベクターでマイクロインジェクションが行われた、Red IIまたはGreen IIのいずれかを含む単細胞の段階の胚は、蛍光タンパク質の発現が24時間以内に陽性として記録された。典型的には、50%を超える胚が、成熟時に個体の約10%において保持される蛍光を発する細胞または蛍光パッチ(fluorescent patch)を含んでいた。胚から成魚を通して至る所でRed IIが発現する一連の魚は、Red II発現の蛍光パッチ(fluorescent patch)を含む成魚の一つに由来するものであった。
【0073】
(文献目録)
Fradkov, A. F. , et al. (2000) Novel Fluorescent protein from Discosoma coral and its mutants possesses a unique far-red fluorescence. FEBS Letters 479: 127-130.
Gibbs, P. D. L. , Peek, A. , and Thorgaard, G. (1994) An in vivo screen for the luciferase transgene in zebrafish. Mol. Mar. Biol. Biotechnol. 3: 307-316.
Gibbs, P. D. L. & Schmale, M. C. (March/April 2000) GFP as a Genetic Marker Scorable Throughout the Life Cycle of Transgenic Zebrafish. Marine Biotechnology. 2: 107-125.
Liu, H. S. , et al. (1999) Is Green Fluorescent Protein Toxic to the Living Cells? Biochemical & Biophysical Research Communications 260: 712-717.
Matz, M. V. , et al. (October 1999) Fluorescent proteins from nonbioluminescent Antlzozoa species. Nature Biotech 17: 969-973.
Ormo, M. , et al. (1996) Crystal structure of the Aequorea victoria green fluorescent protein. Science 273: 1392-1395.
Yang, F. , Moss, L. G. , and Phillips, G. N. , Jr. (1996) The Molecular Structure of GFP. Nature Biotech 14: 1246-1251.
【0074】
すべての刊行物、特許および特許出願は、引用することによって本明細書に取り込まれる。上記の明細書において、本発明がその特定の好ましい実施形態に関連して記載され、そして例示目的のために多数の詳細な事項が説明されたとはいえ、当業者にとって、本発明がさらなる実施形態に影響を受けやすいこと、および本発明の基本的な原理から逸脱すること無く、本明細書の特定の詳細な事項が大幅に変化し得ることは自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1A】図1Aは、二種の突然変異赤色蛍光タンパク質をコードするDNA:Red I(配列番号:1)およびRed II(配列番号:3)の配列のアラインメントであり、これらのそれぞれは、アクチノディスクス(Actinodiscus)/ディスコソマ種(Discosoma sp.)から当初に単離されたタンパク質から生じた。このアラインメントおよびその他のすべてのアラインメントにおいて、並べられた配列間の相違点は、「コンセンサス」の行におけるモノマーの欠失によって示される。
【図1B】図1Bは、二種の突然変異赤色蛍光タンパク質をコードするDNA:Red I(配列番号:1)およびRed II(配列番号:3)の配列のアラインメントであり、これらのそれぞれは、アクチノディスクス(Actinodiscus)/ディスコソマ種(Discosoma sp.)から当初に単離されたタンパク質から生じた。このアラインメントおよびその他のすべてのアラインメントにおいて、並べられた配列間の相違点は、「コンセンサス」の行におけるモノマーの欠失によって示される。
【図2】図2は、Red I(配列番号:2)およびRed II(配列番号:4)のDNA配列によってコードされているアミノ酸のアラインメントである。
【図3】図3は、Red Iの分光分析のグラフである。
【図4】図4は、Red IIの分光分析のグラフである。
【図5】図5は、Red IおよびRed IIの分光分析のグラフである。
【図6A】図6Aは、二種の突然変異緑色蛍光タンパク質をコードするDNA:Green I(配列番号:5)およびGreen II(配列番号:7)の配列のアラインメントを示し、これらのそれぞれは、エム・カベルノーサ(M. cavernosa)から当初に単離されたタンパク質から生じた。
【図6B】図6Bは、二種の突然変異緑色蛍光タンパク質をコードするDNA:Green I(配列番号:5)およびGreen II(配列番号:7)の配列のアラインメントを示し、これらのそれぞれは、エム・カベルノーサ(M. cavernosa)から当初に単離されたタンパク質から生じた。
【図7】図7は、Green I(配列番号:6)およびGreen II(配列番号:8)のDNA配列によってコードされているアミノ酸のアミノ酸アラインメントである。
【図8】図8は、Green Iの分光分析のグラフである。
【図9】図9は、Green IIの分光分析のグラフである。
【図10】図10は、Green IおよびGreen IIの分光分析のグラフである。
【配列表】
【技術分野】
【0001】
(文献目録)
括弧に入れた筆頭執筆者の姓によって本明細書に引用された参考文献の完全な書誌的事項の列挙を、請求の範囲の直前にある文献目録の項において見出すことができる。
【0002】
(政府の補助金への言及)
本発明は、国立環境衛生科学研究所−MFBSC、契約番号ES05705、NIH−国立神経疾患脳卒中研究所、契約番号NS36998、および国立一般医学研究所、契約番号GM57505によって与えられた合衆国政府の補助によって行われた。合衆国は、本発明において一定の権利を保有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、生化学的アッセイおよび試薬の分野に関する。より具体的には、本発明は蛍光タンパク質およびそれらを使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(関連技術の説明)
研究者が、ますます多くの種類の生物体から蛍光タンパク質をコードする遺伝子を単離し、クローニングカセット(cloning cassette)内にそれらの遺伝子を含めてきたので、蛍光を発するレポーター遺伝子の利用可能な数は増加してきた。たとえば、海洋生物からの蛍光タンパク質が、クローニングカセット(cloning cassette)を介してDNA内に組み込むことができるレポーター遺伝子として用いられてきた。これらの遺伝子の産物は、特定の波長の光の下で蛍光を発し、たとえば異種細胞、具体的にはイヌの細胞およびサルの細胞においてタンパク質を追跡することが可能となる。最も一般的に用いられるこの性質のタンパク質は緑色の蛍光を発し、これらはクラゲ、エクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)およびウミシイタケ、レニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis)から得られた。さらに、drFP583として知られる赤色蛍光タンパク質(RFP)、およびdsFP483として知られる明るい青緑色の蛍光タンパク質が、インド洋・西太平洋地域のクサビライシ(mushroom coral)(それぞれディスコソマ種(Discosoma sp.)「赤色」およびディスコソマ・ストリアタ(Discosoma striata))から単離された。ディスコソマ(Discosoma)およびアクチノディスクス(Actinodiscus)の両者はクサビライシ(mushroom coral)であり、外骨格が生じない、体が軟らかい花虫類である。ディスコソマ(Discosoma)属とアクチノディスクス(Actinodiscus)属との関係は十分に理解されていないことに留意すべきである。アクチノディスクス(Actinodiscus)およびディスコソマ(Discosoma)の両者はアクチノディスシダエ(Actinodiscidae)科の一員であり、これはコーラルリンポルファアリア(Corallimporpharia)目(キノコ状のもの)の一員である。コーラルリンポルファアリア(Corallimporpharia)の分類学の定義は不完全であり、それゆえに、アクチノディスクス(Actinodiscus)のディスコソマ(Discosoma)との関係の本質は定かではない。ディスコソマ(Discosoma)およびアクチノディスクス(Actinodiscus)は同一の科の異なる属であると考えられているが、これらはより近い関係にあるか、またはより遠い関係にあるかもしれない。
【0005】
種々の蛍光タンパク質および試薬の有用性のおかげで、研究者が彼らの仕事でレポータータンパク質を採用する機会が広がってきた。蛍光タンパク質をコードする単離されたDNAを変異させて、それらの光学的性質を変えてきた。たとえば、エクオレア(Aequorea)の緑色蛍光タンパク質(GFP)のアミノ酸組成におけるアミノ酸66におけるチロシンをヒスチジンに変異させることによって、このタンパク質が、青色の蛍光を発色するタンパク質に変化する。アミノ酸64がフェニルアラニンからロイシンに、アミノ酸65がセリンからトレオニンに、およびアミノ酸145がチロシンからフェニルアラニンに変化すると、親分子よりも強い明るさで蛍光を発し、励起の最適条件が移動したGFPが生じる。さらに、GFPのアミノ酸組成を遺伝子的に改変することによって、研究者がその光の吸収/発光特性を変化させて黄色蛍光タンパク質を生み出すことが可能となった。
【0006】
蛍光タンパク質は、多数のアッセイに用いることができる。一例として、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイに蛍光タンパク質を用いることができる。第一のフルオロフォアの発光スペクトルが第二のフルオロフォアの励起スペクトルと重なり合うことによって、FRETが起こる。これらのフルオロフォアが非常に近接する場合、「ドナー」の励起が結果的に「アクセプター」の発光となる。したがって、このようなフルオロフォアのペアは、分子の相互作用をモニターするのに有用である。蛍光タンパク質、たとえばGFPは、タンパク質の分析に有用である。すなわち、これらの蛍光を発する発光スペクトルおよび励起スペクトルが、FRETが可能となるように重なり合う場合、インビボまたはインビトロのいずれかでのタンパク質の相互作用の分析に有用である。ドナーおよびアクセプターの蛍光タンパク質は、相互作用の分析が行われるタンパク質との融合タンパク質として形成されてもよい。GFPのこれらのタイプの応用は、ハイスループットアッセイを特に求めている。というのは、読み出した情報は直接的であり、細胞下の局在性とは無関係だからである。
【0007】
その緑色蛍光が簡単に検出できるために、エクオレア(Aequorea)からのGFPが遺伝子発現およびタンパク質の局在性の研究のために広く用いられてきた。さらに、その他の蛍光タンパク質のように、GFPは蛍光を発するための基質または補因子を必要としない。したがって、GFPを直接発現させて、多数の種においておよび広範囲の細胞においてレポーターとして用いることが可能である。しかしながら、蛍光の色および強度以外の因子が、研究におけるタンパク質の有用性に影響を与える。多数の蛍光タンパク質が安定であることは、短期間の事象または反復性の事象の測定が求められる場合には、これらのタンパク質を、用いるには望ましくないレポーターにしてしまう。さらに、蓄積したタンパク質はいくらかの哺乳動物細胞にとって毒性を示す可能性がある。たとえば、エクオレア(Aequorea)からのGFPの特定の型がアポトーシスを誘導することが示されている(リュー(Liu)ら)。発明者らはエクオレア(Aequorea)からのGFPの毒性がただ一つの説明に制限されることを望んでいるわけではないが、このことは恐らく、GFPの産生と1:1の化学量論で生じるフリーラジカル(H2O2)の形成によるものであり、高レベルのGFPの発現が特に有毒となると考えられている。このことは、クロマフォア(chromaphore)の成熟の直接の結果であると考えられ、あらゆる公知のGFPにおいて生じると考えられている。
【0008】
光退色は前記の蛍光タンパク質のもう一つの懸念である。光退色は、光によって導かれるフルオロフォアの変化であり、結果として、フルオロフォアによる特定の波長の光の吸収が減少する。このことは、結果的にそのフルオロフォアの蛍光発光の減少を招く。多くの蛍光タンパク質は、励起下で急速に光退色する。このプロセスは通常可逆的であるが、たとえば試料を撮影できる時間が短くなることによって、GFP発現の有用性を制限する可能性がある。しかしながら、光退色の可逆変化が短時間で行われる場合、この特性によって蛍光タンパク質が特定の応用例にとって有用なものとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、研究の将来性を最大化させるための、ある範囲のスペクトル出力および低い毒性を有する容易に発現可能な蛍光タンパク質についての必要性が依然として存在する。このような研究の応用例としては、遺伝子レポーターとしての、短命の活性のモニタリングを可能にするであろう短命の蛍光タンパク質が挙げられるが、これらに制限されるわけではない。このような研究の応用例としては、長期間のモニタリング、または細胞もしくは生物体の安定的なトランスフェクションを可能とする低い毒性の蛍光タンパク質がさらに挙げられるが、これらに制限されるわけではない。
【0010】
さらに、新しい発光スペクトルを有する蛍光タンパク質についての必要性が依然として存在する。これによって、多重プロセスを同時にモニタリングすること、およびバックグラウンドの蛍光発光を最小化することが可能となるだろう。FRET分析システムに適用できる選択の対象も増やせるだろう。さらに、より強い相対蛍光を有する蛍光タンパク質は、蛍光タンパク質の低レベルの発現の検出を可能とするのに必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明(この開示の最後に提示された請求の範囲に定義されている)は、上記の少なくともいくつかの問題を解決することを目的とする。本発明は、強化された特性、たとえば、実質的に強化された蛍光発光および低められた毒性を伴う改良された蛍光タンパク質を提供する。この改良された蛍光タンパク質は研究において有用であり、たとえば、アップ・レギュレーションまたはダウン・レギュレーションなどの遺伝子発現を測定するかまたは検出すること、プロモーター活性をモニターすること、長期間のモニタリングを可能にすること、およびタンパク質の局在を突き止めることに用いることができる。
【0012】
新しい野生型の赤色蛍光タンパク質(RFP)を、アクチノディスクス(Actinodiscus)の種またはディスコソマ(Discosoma)の種のいずれかであると考えられている水性の生物種から単離した。以下、このタンパク質をAc/DsRFPと称する。本発明は、Ac/DsRFPに由来する二種のタンパク質変異体を提供する。本明細書において、本発明の突然変異RFPをRed IおよびRed IIと称する。これらのそれぞれおよびそれらに関連するアミノ酸配列をコードする単離された核酸も含まれる。
【0013】
さらに、新規緑色蛍光タンパク質(GFP)をモンタストラエア・カベルノーサ(Montastraea cavernosa)から単離した。本明細書において、このタンパク質をMcGFPと称する。本発明は、McGFPに由来する二種の新規タンパク質を提供する。本明細書において、好ましい新規タンパク質をGreen IおよびGreen IIと称する。McGFPの特定の変異体が極めて急速に光退色することも見出された。
【0014】
本発明は、選択されたポリペプチドをコードする第一のコード配列および本発明の蛍光タンパク質をコードする第二のコード配列を含む核酸構築物も提供する。第一のコード配列によってコードされているポリペプチドが、第二のコード配列によってコードされているポリペプチドにその中で融合しているところの蛍光を発するハイブリッドタンパク質が、融合配列の発現によって生じるように、この第一のコード配列は第二のコード配列に融合されている。
【0015】
本発明の種々の単離された核酸を含むベクターも提供される。種々の能力のベクターは分子生物学者にとっては周知であり、真核細胞または原核細胞を形質転換することに用いることができる。これらを、インビボの発現系およびインビトロの発現系と一緒に用いることもできる。
【0016】
蛍光タンパク質をコードする核酸の発現を検出する方法も提供される。この方法は、本発明の核酸を細胞内または生物体内に導入する工程を含む。好ましい実施形態においては、プロモーターが核酸の発現をコントロールする。核酸の発現の検出を可能とする蛍光の発光によって、核酸の発現を検出する。好ましい実施形態においては、細胞は真核細胞である。別の好ましい実施形態においては、細胞は原核細胞である。核酸の発現をインビボで検出することができる。核酸の発現をインビトロでおよび固定細胞、たとえばホルマリン固定細胞で検出することもできる。
【0017】
核酸の発現を検出する方法の好ましい実施形態においては、対象の遺伝子が蛍光タンパク質をコードする核酸に融合される。この融合タンパク質は、プロモーターからの発現および/または細胞下の局在性の測定を可能とする細胞下の特定のロケーター・シグナル(locator signal)を含んでもよい。対象の遺伝子の発現を、蛍光の発光によって検出する。
【0018】
本発明の核酸を含む細胞も提供される。好ましい実施形態においては、核酸はその細胞のゲノム内に組み込まれている。別の好ましい実施形態においては、核酸はその細胞のゲノム内に組み込まれていない。たとえば、核酸は染色体の外に存在してもよい。
【0019】
さらに、本発明の単離された核酸を有する動物が提供される。好ましい実施形態においては、動物はゼブラフィッシュである。
【0020】
本発明の好ましい模範的な実施形態を添付の図面で示す。
【0021】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、次の説明に記載された内容または図面において図解された内容の構成および配列の詳細事項にまで制限されないことを理解すべきである。本発明はその他の実施形態であることができ、または、種々のやり方で、実行し、もしくは実施することができる。さらに、本明細書で採用されている語法および専門用語は説明目的のためであり、制限するものとみなすべきではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(詳細な説明)
定義:
本発明の目的のために、次の定義を用いる。
標準的な一文字コード「A」、「C」、「G」、「T」、および「U」は、本明細書においてそれぞれヌクレオチドのアデニン、シトシン、グアニン、チミン、およびウラシルの代わりに用いられる。「N」は任意のヌクレオチドを示す。オリゴヌクレオチド配列またはポリヌクレオチド配列は、5’−末端から3’−末端に向けて記載されている。
【0023】
本明細書で用いられる場合、「アミノ酸」は標準的なポリペプチド命名法、J. Biol. Chem., 243: 3557-59, (1969)に沿って記載される。本明細書において特定されるすべてのアミノ酸残基は、天然のL−配置である。標準的なポリペプチド命名法に沿って、アミノ酸残基についての略語を次の対応表に示す。
対応表
1文字 3文字 アミノ酸
Y Tyr L−チロシン
G Gly グリシン
F Phe L−フェニルアラニン
M Met L−メチオニン
A Ala L−アラニン
S Ser L−セリン
I Ile L−イソロイシン
L Leu L−ロイシン
T Thr L−トレオニン
V Val L−バリン
P Pro L−プロリン
K Lys L−リシン
H His L−ヒスチジン
Q Gln L−グルタミン
E Glu L−グルタミン酸
W Trp L−トリプトファン
R Arg L−アルギニン
D Asp L−アスパラギン酸
N Asn L−アスパラギン
C Cys L−システイン
【0024】
「タンパク質」および「ポリペプチド」とは、長さまたは翻訳後修飾、たとえばグリコシル化またはリン酸化に関係なく、任意のアミノ酸の鎖を意味する。本発明の合成遺伝子は種々の天然タンパク質の変異体またはそのポリペプチド断片をコードしてもよい。好ましくは、このようなタンパク質のポリペプチドのアミノ酸配列は、それが由来するところの天然(ネイティブ)タンパク質のアミノ酸配列と、少なくとも85%、好ましくは90%、および最も好ましくは95%または99%の同一性を有する。
【0025】
核酸に関連して「単離された核酸」または「単離されたポリヌクレオチド」として用いられる場合の「単離された」という用語は、特定された核酸配列であって、通常はその起源において付随している少なくとも一つの夾雑物から分離された核酸配列を意味する。したがって、単離された核酸は、天然で見られる形または状態とは異なる形または状態で存在する。対照的に、単離されていない核酸、たとえばDNAおよびRNAは、天然に存在する状態で見出される。具体的には、所定のDNA配列、たとえば遺伝子は、宿主細胞の染色体上で、隣接する遺伝子に近接した状態で見出される。RNA配列、たとえば特定のタンパク質をコードする特定のmRNA配列は、細胞中で、数多くのタンパク質をコードするその他の多数のmRNAとの混合物として見出される。しかしながら、単離された核酸としては、例示目的で、このような天然の細胞の染色体の位置とは異なる染色体の位置にある核酸か、または天然で見出されるものとは異なる核酸配列で挟まれた核酸を普通は発現するような細胞内の核酸が挙げられる。単離された核酸は、一本鎖の形または二本鎖の形で存在してもよい。単離された核酸をタンパク質の発現に利用する予定の場合、そのオリゴヌクレオチドは少なくともセンス鎖またはコード鎖を含む。すなわち、そのオリゴヌクレオチドは一本鎖でもよいが、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含んでもよい。すなわち、そのオリゴヌクレオチドは二本鎖でもよい。
【0026】
ポリペプチドに関連して「単離されたタンパク質」または「単離されたポリペプチド」として用いられる場合の「単離された」という用語は、特定されたポリペプチドであって、通常はその起源において付随している少なくとも一つの夾雑物から分離されたポリペプチドを意味する。したがって、単離されたポリペプチドは、天然で見られる形または設定とは異なる形または設定で存在する。対照的に、単離されていないポリペプチド、たとえばタンパク質および酵素は、天然に存在する状態で見出される。
【0027】
「精製された」または「精製すること」という用語は、対象の成分、たとえばタンパク質または核酸からいくつかの夾雑物を除去する任意のプロセスの結果を意味する。精製された成分のパーセントはそれによってサンプル内で高まる。
【0028】
本発明の核酸に関連して、「核酸」という用語は、DNA、ゲノムDNA、cDNA、RNA、mRNAおよびリストに記載された種々の核酸の混成物を意味する。この核酸は合成起源または天然起源のものであり得る。本明細書で用いられる場合、核酸とはヌクレオチドが共有的に結合した配列であり、この中では、一つのヌクレオチドのペントースの3’位がホスホジエステル基によって次のペントースの5’位に結合し、ヌクレオチド残基(塩基)が特定の配列の状態、すなわちヌクレオチドが直鎖の順序で結合している。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「野生型」という用語は、天然の源から単離された遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を意味する。野生型遺伝子は、集団内で最も多く観察されるものであり、したがって、遺伝子の「野生型」の形と自由裁量的に呼ばれる。対照的に、「突然変異体」という用語は、配列および/または機能上の特性に変異が現れている、すなわち、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に特性が改変されている遺伝子または遺伝子産物を意味する。自然発生的な突然変異も単離できることが知られており、これらは野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に、それらの特性が改変されていたという事実によって、特定される。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「より強い相対蛍光強度」または「増加した明るさ」とは、所定の条件の組み合わせの下で、野生型蛍光タンパク質によって示される蛍光強度または明るさよりも強いことを意味する。一般的に、蛍光強度または明るさの増加とは、改変体の蛍光発光が、所定の条件の組み合わせの下で、野生型蛍光タンパク質よりも少なくとも25%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは100%以上強いか、または明るいことを意味する。
【0031】
「核酸構築物」という用語は、異なる源に由来する二種以上の核酸配列から構成される核酸であって、当分野において公知の方法を用いて互いに連結されている核酸を意味する。
【0032】
本明細書で用いられる場合、「宿主細胞」という用語は、任意の生物体からの細胞を意味する。好ましい宿主細胞は、植物、細菌、酵母、真菌、昆虫、またはその他の動物に由来するものである。ポリヌクレオチド配列を種々のタイプの宿主細胞内に導入するための方法は、当分野において周知である。宿主細胞としては、これらの指定されたものの子孫または潜在的な子孫が含まれる。
【0033】
「ベクター」という用語は、その中にDNA断片が挿入され得るかクローニングされ得る核酸分子であって、単数(または複数の)DNAセグメントを細胞内に移すことに用いることができ、かつ細胞内での複製が可能な核酸分子に関連して用いられる。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、ウイルス、コスミドなどに由来するものでもよい。
【0034】
本明細書で用いられる場合、「発現ベクター」という用語は、所望のコード配列、および、特定の宿主生物体内で機能できるように結合しているコード配列の発現に必要な適切なDNA配列またはRNA配列を含むDNA配列またはRNA配列を意味する。原核生物の発現ベクターは通常、プロモーター、リボソーム結合部位、宿主細胞での自律増殖のための複製起点、および場合によりその他の配列、たとえば任意のオペレーター配列、任意の制限酵素部位を含む。プロモーターは、RNAポリメラーゼをDNAとの結合に導き、かつRNA合成の開始を導くDNA配列と定義される。真核生物の発現ベクターは通常、プロモーター、必要に応じてポリアデニル化シグナルおよび必要に応じてエンハンサー配列を含む。
【0035】
「機能できるように結合」という用語は、コード配列を発現させるために、コード配列の発現に必要な制御配列を、コード配列に関連してDNA分子内の適切な位置に置くことを意味する。これと同一の定義が、発現ベクターにおけるコード配列ならびに転写制御要素、たとえばプロモーター、エンハンサー、およびターミネーション要素の配置に時々適用されることがある。
【0036】
本発明において、当分野における従来の分子生物学および微生物学を採用してもよい。このような技術は文献で十分に説明されている。たとえば、サンブロック、フリッチェおよびマニアティス、Molecular Cloning: A Laboratory, Third Edition (2001) Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor N.Y.を参照すること。
【0037】
本発明にしたがって、新規の野生型蛍光タンパク質を単離した。この野生型蛍光タンパク質を変異させて、蛍光タンパク質の突然変異型、たとえば、それぞれの野生型蛍光タンパク質よりも強い相対蛍光強度を有するか、またはより強い光退色に対する抵抗能力を有するものを生じさせた。
【0038】
I.野生型蛍光タンパク質の単離
簡単に言えば、対象の生物体からの組織を集め、下記に詳述した方法でホモジナイズした。RNAを単離し、RT−PCRを実施した。サイズが選択されたDNAをアガロースゲルから回収し、次いで細菌の選択に適したベクター内に連結した。ベクターは、誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターを含むことができる。好ましい実施形態においては、ベクターとしてプラスミドを用いた。プラスミドのコンピテント細菌内へのエレクトロポレーションを行った。細菌をLB−アンピシリンプレート(100μg/mL)上でインキュベートした。対象のクローンを、蛍光強度および/またはカラークオリティー(color quality)の定性的測定に基づいて単離した。
【0039】
本手法(下記の実施例に詳述されている)を用いて、野生型の赤色蛍光タンパク質をコードするcDNAを、アクチノディスクス(Actinodiscus)またはディスコソマ(Discosoma)と考えられる水性の生物種から単離した。アクチノディスクス(Actinodiscus)属またはディスコソマ(Discosoma)属との関係が明確ではないので(このことは上記の関連技術の説明の項目で検討している)、このタンパク質を以下、Ac/DsRFPと称する。Ac/DsRFPをコードする単離されたcDNAをさらに変異させ、単離されたものを、下記に詳述されるような対象とする特性に基づいて選択した。さらに、本明細書に記載の方法を用いて、野生型の緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするcDNAをモンタストラエア・カベルノーサ(Montastraea cavernosa)から単離した。これを本明細書においてMcGFPと称する。下記のように、McGFPをコードする単離されたcDNAをさらに変異させ、対象の特性に基づいて選択した。
【0040】
II.変異した蛍光タンパク質の作製
単離された野生型遺伝子のそれぞれについて低ストリンジェント条件(下記のような低いアニーリング温度、過度に長い伸長時間、余分なサイクル)下で実施され、重合の間に突然変異を導入するそれぞれのPCR全体を通して、コード配列におけるランダム変異を誘導した。得られたPCR産物を細菌の発現ベクター内にクローニングした。対応する野生型蛍光タンパク質と比較した場合の増加した相対蛍光、対象とする色、および減少した光退色について、クローンのスクリーニングを行った。次いで、このベクターDNAを選択されたクローンから精製し、シークエンシングを行って、関連するPCRによって誘導された突然変異の変化を測定した。次いで、このプロセスを数回繰り返した。
【0041】
a.Red IおよびRed II
Ac/DsRFP(ディスコソマ(Discosoma)からの野生型RFP)をコードするDNAを、数ラウンドの低ストリンジェントPCRによって上記のように変異させた。ベクターへのクローニングおよび形質転換した細菌の蛍光特性についての視覚的なスクリーニングの後、Red IおよびRed IIによってコードされたタンパク質を、親のAc/DsRFPの野生型と比べてより強い相対蛍光強度に基づいて選択した。定性的測定を行う時、Red IIはRed Iの強度よりも少なくとも50%強い蛍光強度を有する。
【0042】
Red I(配列番号:1)およびRed II(配列番号:2)のDNA配列を図1A〜図1Bに示す。Red IをコードするDNAと比較した場合、Red IIをコードするDNAは、単一のヌクレオチドの相違、すなわち694位においてRed IがGを有し、Red IIがAを有するという相違を含む。Red I(配列番号:2)およびRed II(配列番号:4)のアミノ酸配列を図2に示す。この図から、232位において、Red IがDを有し、その一方Red IIがNを有することが示される。
【0043】
図3〜図5を参照すると、Red IおよびRed IIの分光分析、ならびにRed IおよびRed IIの両方の分光分析が示されている。
【0044】
b.Green IおよびGreen II
McGFP(エム・カベルノーサ(M. cavernosa)からの野生型GFP)をコードするDNA配列を、低ストリンジェント条件下のPCRを用いて本明細書に記載のように変異させた。より強い蛍光を発する突然変異GFPを単離した。これをGreen Iと表す。第二ラウンドの低ストリンジェントPCRをGreen Iに関して実施し、光退色に対して強い抵抗性を有する第二の突然変異GFPを得た。これをGreen IIと表す。Green IをコードするDNA配列と比較した場合、Green IIをコードするDNAは単一のヌクレオチドの変化:図6A〜図6Bにおいて配列番号:5および配列番号:7として示されるようなヌクレオチド527におけるシトシンからチミンへの変異を含む。これらのアミノ酸配列は、図7において配列番号:6および配列番号:8として示されている。この図は、Green Iにおける176位のS、およびGreen IIにおける同一の位置のFを示している。
【0045】
McGFPと比較した場合、Green Iはより強い相対蛍光強度を有していた。Green IIはさらに、相対的により強い蛍光を発するが、光退色に対する高い抵抗性も有し、Green Iタンパク質における特性は明白ではない。蛍光顕微鏡検査法で広く採用されている、Attoarc(商標) HBO 100W・可変性電源装置で操作を行う水銀アークレーザーを用いて、Green Iが適切な条件下で光退色することを見出した。弱いレーザー強度とは25%未満の強度であると考えられており、強いレーザー強度とはこの装置にとって75%を超えることであると考えられている。ツァイス・アキシオベルト(Zeiss Axiovert) S100顕微鏡を用いて、細胞を可視化した。弱いレーザー強度、たとえば10%の下では、どちらの誘導されたタンパク質も同一に見える。しかしながら、強いレーザー強度、たとえば80%の下で数秒間の後では、Green Iの光は見えない。暗所にて数分間の後再照射すると、Green Iの蛍光発光が再び明らかになる。Green Iは、420nmの光による励起が急速に光退色を無効化するという点でもまた珍しい。Green IIはこの光退色反応を受けることはない。
【0046】
図8〜図10を参照すると、Green I(図8)およびGreen II(図9)の分光分析、ならびにGreen IおよびGreen IIの両方(図10)の分光分析が示されている。
【0047】
IV.蛍光タンパク質の例示的な使用
本明細書に記載された蛍光タンパク質のすべてを、たとえば対象の遺伝子および蛍光タンパク質をコードするDNAをベクター内に挿入することによって、対象の遺伝子の発現を検出するマーカーとして用いることができる。このベクターを真核生物または原核生物、たとえば細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、および哺乳動物細胞などの宿主細胞内に形質転換することができる。当分野において知られているように、宿主細胞はコンピテントであるか、または、リン酸カルシウム沈殿、レシピエント細胞の当該DNAを含む細菌のプロトプラストとの融合、レシピエント細胞の当該DNAを含むリポソームによる処理、DEAEデキストラン、レセプター媒介型エンドサイトーシス、エレクトロポレーション、および当該DNAの細胞内への直接的なマイクロインジェクションを含む種々の技術(これらに制限されるわけではない)によって、コンピテントにすることが可能なものである。このDNAを宿主細胞の染色体DNA内に組み込むことができ、またはそれは染色体外、たとえばプラスミドに存在してもよい。
【0048】
本発明の蛍光タンパク質を、生化学的アッセイにおいて、および試薬として用いることもできる。たとえば、この蛍光タンパク質を、発酵プロセスをモニターするレポーター、および遺伝子発現を定量するレポーターとして用いることができる。
【0049】
さらに、本発明の蛍光タンパク質は、多重標識システムで用いることができるさらなる蛍光タンパク質を提供する。具体的には、たとえばFACS(fluorescence activated cell sorting)の間に二種の異なる細胞集団を追跡できるように、本発明の一つのGFPを第一の細胞集団の標識に用いることができ、本発明の一つのRFPを第二の細胞集団の標識に用いることができる。同様に、Red IおよびRed IIを、たとえば異なる細胞集団を標識し追跡することに用いることができる。というのは、Red IおよびRed IIは異なる波長の蛍光を発するからである。
【0050】
さらに、本発明の蛍光タンパク質を原核生物および真核生物の発現系内で用いることもできる。たとえば、蛍光タンパク質についてのコード配列およびその他の遺伝子を含む融合タンパク質を生じさせることができる。本発明の典型的な融合タンパク質は、選択されたポリペプチドをコードする第一のコード配列および本発明の蛍光タンパク質をコードする第二のコード配列を含む。第一のコード配列によってコードされているポリペプチドが、第二のコード配列によってコードされているポリペプチドにその中で融合しているところの蛍光を発するハイブリッドタンパク質が、融合配列の発現によって生じるように、この第一のコード配列は第二のコード配列に融合されている。コード配列の3’末端または5’末端のいずれかにおいて、本発明の蛍光タンパク質を融合することができると考えられている。さらに、たとえばβ-ガラクトシダーゼなどのタンパク質についてのコード配列を伴う融合タンパク質とは異なり、蛍光タンパク質についてのコード配列を含む融合タンパク質は、外因性の基質または補因子を添加することを必要としない。このことは、蛍光タンパク質を生きている細胞中で用いることを可能とするので有益である。
【0051】
本明細書で提供される蛍光タンパク質を、インビボ、たとえばmRNAマイクロインジェクションアッセイにおけるマーカーとして用いることもできる。蛍光タンパク質を用いるその他の例は、トランスジェニックマウス、カエンホルバブディティス・エレガンス(Caenhorbabditis elegans)、ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)、およびゼブラフィッシュにおけるインビボマーカーとしてである。
【0052】
さらに、本発明の蛍光タンパク質を、刺胞動物の遺伝学の研究のための分類学上のマーカー、診断用キットにおける色指示薬、着色された食品添加物、および化粧料の原料として用いることができる。
【実施例】
【0053】
(実施例)
例示を目的とするためだけに次の実施例が提供される。これらの実施例は、現在記載されている発明を単により完全に理解するのに役立てるために、本明細書に含まれる。これらの実施例は、本明細書に記載された発明または本明細書で権利を主張する発明の範囲を、いかなる方法においても制限しない。
【0054】
実施例1
種の収集と動物の管理:
二種の源からサンゴ群体を得た。第一のいくつかのアクチノディスクス(Actinodiscus)/ディスコソマ種(Discosoma sp.)のポリプからなる硬い赤レンガ色の群体を、地元の観賞魚店から得た。第二のモンタストラエア・カベルノーサ(Montastraea cavernosa)の群体を、フロリダ南部の領域のサンゴ礁から集めた。両方の種を、ろ過した海水が流水式で入る小さな水槽内で保存した。
【0055】
実施例2
全RNAの単離、逆転写、増幅およびcDNAの回収:
単一のポリプ(アクチノディスクス(Actinodiscus)/ディスコソマ種(Discosoma sp.))から、またはその下にある骨格(エム・カベルノーサ(M. cavernosa))から軽くエアブラシで空気を吹き付けて得た細胞塊から、全RNAキット(カタログ番号1902、アンビオン社、オースチン、テキサス州)を用いてRNAを単離した。簡単に言えば、その組織をホモジナイズし、約10倍量の変性溶液と共に試験管を反転させて混合し、1倍量のフェノール/クロロホルムで抽出した。水性の上清を清浄な容器に移した。10分の1倍量の3M 酢酸ナトリウムをこの上清に添加した。次いでこれを1倍量の酸性フェノール/クロロホルムでさらに1回抽出した。再び、この水性の上清を清浄な容器に移した。1倍量のイソプロパノールをこの上清に添加し、遠心分離によって全RNAを沈殿させた。このペレットを75% エタノールで洗浄し、50μLのRNアーゼを含まない水で再懸濁させた。収率を分光光度計で測定し、品質をゲル電気泳動によって評価した。
【0056】
このようにして単離されたRNAをFirst Choice(商標)RLM−RACEキット(カタログ番号1700、アンビオン社)に用いて、cDNAを生じさせ、増幅した。RLM−RACEプロトコール・バージョン0010に従って、「スモールリアクション(small reaction)」プロトコールを続けた。簡単に言えば、仔ウシ小腸ホスファターゼ(CIP)で全RNAを処理して、分解しキャップ付加されていないRNAから5’リン酸塩を除去する。次いでフェノール:クロロホルムで抽出した。次いで、タバコ酸性ピロホスファターゼ(TAP)を用いて全長mRNAからキャップを除去する。含まれている5’RACEアダプター(5’−GCUGAUGGCGAUGAAUGAACACUGCGUUUGCUGGCUUUGAUGAAA−3’)(配列番号:9)を、T4 RNAリガーゼを用いて、キャップを除いた全mRNAに連結した。MMLV逆転写酵素およびポリTプライマー(5’−CTCGAGAAGCTTGAATTCGGATCCTTTTTTTTTTTTTTTTT−3’)(配列番号:10)を用いて、逆転写を行った。
【0057】
同一のポリTプライマー、5’RACEアウタープライマー(5’−GCTGATGGCGATGAATGAACACTG−3’)(配列番号:11)およびSuperTaqポリメラーゼ(アンビオン社、カタログ番号2050)を用いて、結果として生じたcDNAの増幅を行った。
【0058】
PCRを次のように実施した。94℃/5分間、80℃を維持、ポリメラーゼを添加、94℃/30秒間、60℃/1分間、72℃/1分間を34サイクル、および最後に72℃で10分間。増幅されたcDNAをゲルで精製した。約500〜1200塩基対(bp)の画分を集め、シリコーン処理をしたグラスウールを介する低速度の遠心分離に引き続いたイソプロパノール沈殿によって回収した。
【0059】
実施例3
細菌のクローンの形質転換および選択、プラスミドの調製、ならびに野生型蛍光タンパク質のDNAシークエンシング:
ゲル精製したcDNA画分を、pCR IIクローニングベクター(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)内に連結し、結果として生じたプラスミドをTop 10大腸菌(インビトロジェン)内に電気的形質転換(electrotransform)した。形質転換した細菌をLB−アンピシリン(100μg/mL)プレート上で培養し、蛍光発色について、ライカMZFLIII蛍光実体解剖顕微鏡を用いてコロニーのスクリーニングを行った。単一の蛍光のコロニーを選定し、数ラウンドの間再画線(restreak)してモザイク現象を除去し、液体培地中で培養した。キアゲンMidiキット(キアゲン、バレンシア、カリフォルニア州)を用いて、プラスミドDNAを調製した。
【0060】
アクチノディスクス(Actinodiscus)/ディスコソマ種(Discosoma sp.)1のRNAから生じた細菌のコロニーから、野生型の赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現するコロニーを単離した。本明細書において、これはAc/DsRFPと呼ばれる。
【0061】
さらに、エム・カベルノーサ(M. cavernosa)のRNAから生じた細菌のコロニーから、野生型の緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するコロニーを単離し、McGFPと名づけた。
【0062】
実施例4
蛍光タンパク質の突然変異の誘発:
野生型タンパク質をコードする遺伝子のそれぞれについて、誤りがち(error-prone)PCRを行った。そのPCR産物をクローニングし、PCR産物によってコードされたタンパク質の発現に基づいて定性的に選択した。
【0063】
具体的に言えば、Kpn Iの制限部位、シャイン−ダルガーノ配列およびコザックコンセンサスアップトランスレーション(uptranslation)配列、コード領域の開始ATG、ならびに約10bpの下流のホモロジーを含む5’「上流」プライマーを、Ac/DsRFPおよびMcGFPの両方のために設計した。Ac/DsRFPのための上流プライマーは:5’−CCGGTACCTAAGGAGGCCACCATGAGTTGTTCC−3’(配列番号:12)であり、McGFPのための上流プライマーは:5’−CCGGTACCTAAGGAGGCCACCATGAGTGTGATAAAAC−3’(配列番号:13)であった。
【0064】
Xba Iの制限部位、コード領域の終止コドン、および約10bpの上流のホモロジーを有する3’「下流」プライマーも、蛍光タンパク質の単離物のそれぞれのために設計した。Ac/DsRFPのための下流プライマーは:5’−CCACTAGTCTAGATCATTACCGCTC−3’(配列番号:14)であり、McGFPのための下流プライマーは:5’−GGTCTAGATTACTTGGCCTGCCTC−3’(配列番号:15)であった。
【0065】
蛍光タンパク質のプラスミドDNAに関しての低ストリンジェントPCRのプロトコールを、上記のプライマーを用いて実施した。条件は:94℃/5分間、80℃/維持、ポリメラーゼの添加、94℃/1分間、42℃/2分間、72℃/3分間を10サイクル、94℃/30秒間、55℃/1分間、72℃/1分間を30サイクル、および最後に72℃で10分間であった。PCR産物を、フェノール/クロロホルム抽出およびイソプロパノール沈殿、Kpn I/Xba Iによる消化、ゲル精製を用いて精製し、Kpn I/Xba Iで消化されたpBS II KS+プラスミド(ストラタジーン、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)内に連結した。連結されたものの混合物をTop 10細胞(インビトロジェン)内に電気的形質転換(electrotransform)し、1)親よりも明るいこと、2)発色の速度、3)大きさ、および4)色について、コロニーのスクリーニングを行った。
【0066】
上記のような低ストリンジェントPCRを数ラウンド行うことによって、Ac/DsRFP、野生型の赤色蛍光タンパク質から二種の変異体が生じた。ベクター内にクローニングし、蛍光特性について形質転換した細菌の視覚的なスクリーニングを行った後、親のAc/DsRFP野生型と比べてより強い相対蛍光強度に基づいて、RedIおよびRed IIによってコードされたタンパク質を選択した。生じた突然変異クローンをRed IおよびRed IIと名づけた。
【0067】
さらに、McGFP、野生型の緑色蛍光タンパク質からGreen I変異体が生じた。Green IをコードするDNA上で低ストリンジェントPCRの第二ラウンドを実施し、上記の四点の基準を満たすコロニーを単離した。Green Iから生じた突然変異クローンをGreen IIと名づけた。アイオワ大学DNA施設(アイオワシティー、アイオワ州)によって、精製プラスミド調製品を用いてシークエンシングを実施した。Red IおよびRed IIのDNA配列を図1A〜図1Bに示し、そのアミノ酸配列を図2に示す。Green IおよびGreen IIのDNA配列を図6A〜図6Bに示し、そのアミノ酸配列を図7に示す。
【0068】
実施例5
その他の発現ベクター内にクローニングされた蛍光タンパク質およびそれらの分光分析:
哺乳動物の発現のために、四種の突然変異蛍光タンパク質(Red I、Red II、Green I、およびGreen II)のそれぞれをKpnI/XbaIで制限分解し、次いでT4 DNAポリメラーゼで処理して平滑末端を生じさせ、平滑末端のSmaI制限部位を利用してpCI−neo哺乳動物発現ベクター(プロメガ、マディソン、ウィスコンシン州)内にクローニングして、pCI−Neo−Red I、pCI−Neo−Red II、pCI−Neo−Green I、およびpCI−Neo−Green IIを生じさせた。
【0069】
哺乳動物細胞および細菌細胞の両方において発現する蛍光タンパク質に関して、分光分析を測定した。Trans−Fast(商標)トランスフェクションプロダクト(プロメガ)を用いて、哺乳動物のCHO細胞をpCI−Neo−Red Iプラスミド、pCI−Neo−Red IIプラスミド、pCI−Neo−Green Iプラスミド、またはpCI−Neo−Green IIプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクトされたCHO細胞の細胞溶解物に関して、スペックス・フルオロログ(Spex Fluorolog) 1680、0.22mの二重分光計を用いて分光分析を測定した。Red IIプラスミドおよびGreen IIプラスミドも原核細胞内で発現した。NcoI−NotIの制限部位を生じさせるオリゴヌクレオチドを用いて、適切なプラスミドの断片をPCRで増幅した。NcoIおよびNotIでPCRアンプリコンを消化し、原核生物の発現ベクター内の同一の部位内にクローニングした。次いでこれを用いて細菌の大腸菌JM109に形質転換した。蛍光タンパク質を精製した後、いくつかのタンパク質についての励起スペクトルおよび発光スペクトルを集め、ツァイスの顕微鏡を用いてその他のタンパク質を視覚的に評価した。ここで留意すべきことは、これらのスペクトルを24時間の時点で記録したが、Red IIについての完全な蛍光の発光には24時間を超えて48時間までを必要とし、その発光ピークは583nmである。
【0070】
実施例6
蛍光タンパク質を発現するトランスジェニック動物:
以前の記述(ギブスら(Gibbs et al.)、1994)のようにして、最終濃度が約2μg/mLの直鎖DNAと0.05%のフェノールレッドを用いて、ゼブラフィッシュの胚内へのマイクロインジェクションのためのDNAを調製した。解剖顕微鏡の下で、胚培養溶液(ERS−25mg/L硫酸ネオマイシン、0.5mg/Lメチレンブルー、17.5mg/Lチオ硫酸ナトリウム、および125μL/Lアンキュール(Amquel) [コルドン(Kordon)]を含む水道水)中の数百の新たに受精した卵を1〜2mmの一個の窪みを有する1%の寒天が入った、35mmのペトリ皿に移した。左手で5番のピンセットを用いて、無傷の漿膜を持つ一個の卵を窪みの中に転がして移し、動物極が上を向く位置に保持した。右手で可動シリンジ(針先が5〜10ミクロンのギルモントS−1100)を用いて、この卵について、卵黄と細胞質の境目の近傍にある最初の細胞の中央下部にある領域内へのマイクロインジェクションを行った。この境目の崩壊とDNA溶液の下部に横たわる卵黄への漏出が、ほとんどの卵に生じた。このことが結果として生じた胚に悪影響を与えることはなかった。マイクロインジェクションの後、この卵を左手のピンセットでERSを含む100mmのペトリ皿に移した。そして、その次の卵を窪みの中の場所に転がして移した。この技術を用いることによって、一日あたり500以上の卵についてマイクロインジェクションを行うことができた。サザンブロット分析によって確立されたところの胚あたりの平均投与量は、50pgのDNAであった。この投与量は経験的に選択された。というのは、その投与量の結果、遺伝子転移の比率が高かったからであった。これらの条件の下、約半分の胚が最初の24時間で死滅し、性的に成熟するまで生き残るのはインジェクションが行われた卵の10〜20%と予想した。しかしながら、模擬物のインジェクションを行った(DNAを受け取っていない)胚の生き残りは、処理を行っていないコントロールの生き残りの約90%であった。
【0071】
魚から得た生きている胚およびホールマウント(whole mount)組織を観察して、カメラを備えたライカMZFL III実体蛍光解剖顕微鏡で写真撮影した。用いたフィルターセットは、FITCフィルターセット(励起、470nm;発光515nm)、改変FITCフィルターセット(ライカ−GFP)(励起、425nm;発光、480nm)またはローダミンフィルターセット(励起、546nm;発光、590nm)であった。約50μLのERSの滴が入ったピペットで、裏返した100mmのペトリ皿の蓋に胚を個別に移し、約50の胚のグループを観察した。写真撮影および詳細な観察を目的として胚を固定するために、1mLの20×のストックしておいた麻酔剤を、100mmのペトリ皿中の約20mLのERSに添加した。この20×のストックしておいた麻酔剤は、ERS中に3g/Lのトリカインメタンスルホナート(MS−222)、20mM Trisを含むpH 8のものであった。麻酔をかけられた胚は、無傷の漿膜の有無にかかわらず、約2分間で固定化され、この溶液内で少なくとも30分間は生存していた。観察の後、これらの胚をERSの新たな皿に移し、数分間以内に移動性が回復した。
【0072】
魚の直鎖状にされた発現DNAベクターでマイクロインジェクションが行われた、Red IIまたはGreen IIのいずれかを含む単細胞の段階の胚は、蛍光タンパク質の発現が24時間以内に陽性として記録された。典型的には、50%を超える胚が、成熟時に個体の約10%において保持される蛍光を発する細胞または蛍光パッチ(fluorescent patch)を含んでいた。胚から成魚を通して至る所でRed IIが発現する一連の魚は、Red II発現の蛍光パッチ(fluorescent patch)を含む成魚の一つに由来するものであった。
【0073】
(文献目録)
Fradkov, A. F. , et al. (2000) Novel Fluorescent protein from Discosoma coral and its mutants possesses a unique far-red fluorescence. FEBS Letters 479: 127-130.
Gibbs, P. D. L. , Peek, A. , and Thorgaard, G. (1994) An in vivo screen for the luciferase transgene in zebrafish. Mol. Mar. Biol. Biotechnol. 3: 307-316.
Gibbs, P. D. L. & Schmale, M. C. (March/April 2000) GFP as a Genetic Marker Scorable Throughout the Life Cycle of Transgenic Zebrafish. Marine Biotechnology. 2: 107-125.
Liu, H. S. , et al. (1999) Is Green Fluorescent Protein Toxic to the Living Cells? Biochemical & Biophysical Research Communications 260: 712-717.
Matz, M. V. , et al. (October 1999) Fluorescent proteins from nonbioluminescent Antlzozoa species. Nature Biotech 17: 969-973.
Ormo, M. , et al. (1996) Crystal structure of the Aequorea victoria green fluorescent protein. Science 273: 1392-1395.
Yang, F. , Moss, L. G. , and Phillips, G. N. , Jr. (1996) The Molecular Structure of GFP. Nature Biotech 14: 1246-1251.
【0074】
すべての刊行物、特許および特許出願は、引用することによって本明細書に取り込まれる。上記の明細書において、本発明がその特定の好ましい実施形態に関連して記載され、そして例示目的のために多数の詳細な事項が説明されたとはいえ、当業者にとって、本発明がさらなる実施形態に影響を受けやすいこと、および本発明の基本的な原理から逸脱すること無く、本明細書の特定の詳細な事項が大幅に変化し得ることは自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1A】図1Aは、二種の突然変異赤色蛍光タンパク質をコードするDNA:Red I(配列番号:1)およびRed II(配列番号:3)の配列のアラインメントであり、これらのそれぞれは、アクチノディスクス(Actinodiscus)/ディスコソマ種(Discosoma sp.)から当初に単離されたタンパク質から生じた。このアラインメントおよびその他のすべてのアラインメントにおいて、並べられた配列間の相違点は、「コンセンサス」の行におけるモノマーの欠失によって示される。
【図1B】図1Bは、二種の突然変異赤色蛍光タンパク質をコードするDNA:Red I(配列番号:1)およびRed II(配列番号:3)の配列のアラインメントであり、これらのそれぞれは、アクチノディスクス(Actinodiscus)/ディスコソマ種(Discosoma sp.)から当初に単離されたタンパク質から生じた。このアラインメントおよびその他のすべてのアラインメントにおいて、並べられた配列間の相違点は、「コンセンサス」の行におけるモノマーの欠失によって示される。
【図2】図2は、Red I(配列番号:2)およびRed II(配列番号:4)のDNA配列によってコードされているアミノ酸のアラインメントである。
【図3】図3は、Red Iの分光分析のグラフである。
【図4】図4は、Red IIの分光分析のグラフである。
【図5】図5は、Red IおよびRed IIの分光分析のグラフである。
【図6A】図6Aは、二種の突然変異緑色蛍光タンパク質をコードするDNA:Green I(配列番号:5)およびGreen II(配列番号:7)の配列のアラインメントを示し、これらのそれぞれは、エム・カベルノーサ(M. cavernosa)から当初に単離されたタンパク質から生じた。
【図6B】図6Bは、二種の突然変異緑色蛍光タンパク質をコードするDNA:Green I(配列番号:5)およびGreen II(配列番号:7)の配列のアラインメントを示し、これらのそれぞれは、エム・カベルノーサ(M. cavernosa)から当初に単離されたタンパク質から生じた。
【図7】図7は、Green I(配列番号:6)およびGreen II(配列番号:8)のDNA配列によってコードされているアミノ酸のアミノ酸アラインメントである。
【図8】図8は、Green Iの分光分析のグラフである。
【図9】図9は、Green IIの分光分析のグラフである。
【図10】図10は、Green IおよびGreen IIの分光分析のグラフである。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのアミノ酸の置換によって、対応する野生型の赤色蛍光タンパク質のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む第一の突然変異蛍光タンパク質であって、第一の突然変異蛍光タンパク質突然変異体が野生型の赤色蛍光タンパク質によって生じる、対応する光学的性質と相対的に異なる光学的性質を有する、第一の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項2】
異なる光学的性質がより強い相対蛍光強度を含む、請求項1に記載の第一の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項3】
第一の突然変異蛍光タンパク質が配列番号:1(Red I)を含むアミノ酸配列によってコードされている、請求項2に記載の第一の突然変異蛍光タンパク質変異体。
【請求項4】
少なくとも一つのアミノ酸の置換によって、請求項1に記載の第一の突然変異蛍光タンパク質のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む第二の突然変異蛍光タンパク質であって、第二の突然変異蛍光タンパク質が第一の突然変異蛍光タンパク質によって生じる、対応する光学的性質と相対的に異なる光学的性質を有する、第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項5】
異なる光学的性質がより強い相対蛍光強度を含む、請求項4に記載の第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項6】
アミノ酸の置換が配列番号:2のRed Iの232位に対応する位置である、請求項5に記載の第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項7】
第二の突然変異蛍光タンパク質が配列番号:4(Red II)を含むアミノ酸配列によってコードされている、請求項5に記載の第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項8】
突然変異蛍光タンパク質をコードする単離された核酸であって、ポリヌクレオチド配列またはその相補体を含む核酸。
【請求項9】
核酸が配列番号:1(Red I)を含む、請求項8に記載の単離された核酸。
【請求項10】
核酸が配列番号:3(Red II)を含む、請求項8に記載の単離された核酸。
【請求項11】
請求項8に記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項12】
さらにプロモーターを含み、そのプロモーターが機能できるように核酸に結合している、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
(A)選択されたポリペプチドをコードする第一のコード配列、
(B)請求項8に記載の核酸からなる群より選択される第二のコード配列、
を含む核酸構築物であって、
第一のコード配列によってコードされているポリペプチドが、第二のコード配列によってコードされているポリペプチドにその中で融合しているところの蛍光を発するハイブリッドタンパク質が、融合配列の発現によって生じるように、第一のコード配列が第二のコード配列に融合されている核酸構築物。
【請求項14】
請求項8に記載の核酸を細胞内または生物体内に導入する工程、その細胞を増殖させる工程、および蛍光の発光によって核酸の発現を検出する工程を含む、遺伝子の発現を検出する方法。
【請求項15】
核酸が真核細胞内に導入される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
核酸が原核細胞内に導入される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
核酸発現の発現がインビボで検出される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
核酸の発現がインビトロで検出される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
請求項8に記載の核酸を含む細胞。
【請求項20】
核酸がその細胞のゲノム内に組み込まれている、請求項19に記載の細胞。
【請求項21】
核酸がその細胞のゲノム内に組み込まれていない、請求項19に記載の細胞。
【請求項22】
請求項8に記載の単離された核酸を含む動物。
【請求項23】
動物がゼブラフィッシュである、請求項22に記載の動物。
【請求項24】
少なくとも一つのアミノ酸の置換によって、対応する野生型の緑色蛍光タンパク質のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む第一の突然変異蛍光タンパク質であって、第一の突然変異蛍光タンパク質突然変異体が野生型の緑色蛍光タンパク質によって生じる、対応する光学的性質と相対的に異なる光学的性質を有する、第一の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項25】
異なる光学的性質がより強い相対蛍光強度を含む、請求項24に記載の第一の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項26】
第一の突然変異蛍光タンパク質が配列番号:5(Green I)を含むアミノ酸配列によってコードされている、請求項25に記載の第一の突然変異蛍光タンパク質変異体。
【請求項27】
少なくとも一つのアミノ酸の置換によって、請求項24に記載の第一の突然変異蛍光タンパク質のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む第二の突然変異蛍光タンパク質であって、第二の突然変異蛍光タンパク質が第一の突然変異蛍光タンパク質によって生じる、対応する光学的性質と相対的に異なる光学的性質を有する、第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項28】
異なる光学的性質がより強い相対蛍光強度を含む、請求項27に記載の第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項29】
アミノ酸の置換が配列番号:6のGreen Iの176位に対応する位置である、請求項28に記載の第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項30】
第二の突然変異蛍光タンパク質が配列番号:8(Green II)を含むアミノ酸配列によってコードされている、請求項28に記載の第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項31】
突然変異緑色蛍光タンパク質をコードする単離された核酸であって、ポリヌクレオチド配列またはその相補体を含む核酸。
【請求項32】
核酸が配列番号:5(Green I)を含む、請求項31に記載の単離された核酸。
【請求項33】
核酸が配列番号:6(Green II)を含む、請求項31に記載の核酸の突然変異型。
【請求項34】
請求項31に記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項35】
さらにプロモーターを含み、そのプロモーターが機能できるように核酸に結合している、請求項34に記載のベクター。
【請求項36】
(A)選択されたポリペプチドをコードする第一のコード配列、
(B)請求項31に記載の核酸からなる群より選択される第二のコード配列、
を含む核酸構築物であって、
第一のコード配列によってコードされているポリペプチドが、第二のコード配列によってコードされているポリペプチドにその中で融合しているところの蛍光を発するハイブリッドタンパク質が、融合配列の発現によって生じるように、第一のコード配列が第二のコード配列に融合されている核酸構築物。
【請求項37】
請求項31に記載の核酸を細胞内または生物体内に導入する工程、その細胞を増殖させる工程、および蛍光の発光によって核酸の発現を検出する工程を含む、核酸の発現を検出する方法。
【請求項38】
核酸が真核細胞内に導入される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
核酸が原核細胞内に導入される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
核酸の発現がインビボで検出される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
核酸の発現がインビトロで検出される、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
請求項31に記載の核酸を含む細胞。
【請求項43】
核酸がその細胞のゲノム内に組み込まれている、請求項42に記載の細胞。
【請求項44】
核酸がその細胞のゲノム内に組み込まれていない、請求項42に記載の細胞。
【請求項45】
請求項31に記載の核酸を含む動物。
【請求項46】
動物がゼブラフィッシュである、請求項45に記載の動物。
【請求項1】
少なくとも一つのアミノ酸の置換によって、対応する野生型の赤色蛍光タンパク質のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む第一の突然変異蛍光タンパク質であって、第一の突然変異蛍光タンパク質突然変異体が野生型の赤色蛍光タンパク質によって生じる、対応する光学的性質と相対的に異なる光学的性質を有する、第一の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項2】
異なる光学的性質がより強い相対蛍光強度を含む、請求項1に記載の第一の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項3】
第一の突然変異蛍光タンパク質が配列番号:1(Red I)を含むアミノ酸配列によってコードされている、請求項2に記載の第一の突然変異蛍光タンパク質変異体。
【請求項4】
少なくとも一つのアミノ酸の置換によって、請求項1に記載の第一の突然変異蛍光タンパク質のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む第二の突然変異蛍光タンパク質であって、第二の突然変異蛍光タンパク質が第一の突然変異蛍光タンパク質によって生じる、対応する光学的性質と相対的に異なる光学的性質を有する、第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項5】
異なる光学的性質がより強い相対蛍光強度を含む、請求項4に記載の第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項6】
アミノ酸の置換が配列番号:2のRed Iの232位に対応する位置である、請求項5に記載の第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項7】
第二の突然変異蛍光タンパク質が配列番号:4(Red II)を含むアミノ酸配列によってコードされている、請求項5に記載の第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項8】
突然変異蛍光タンパク質をコードする単離された核酸であって、ポリヌクレオチド配列またはその相補体を含む核酸。
【請求項9】
核酸が配列番号:1(Red I)を含む、請求項8に記載の単離された核酸。
【請求項10】
核酸が配列番号:3(Red II)を含む、請求項8に記載の単離された核酸。
【請求項11】
請求項8に記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項12】
さらにプロモーターを含み、そのプロモーターが機能できるように核酸に結合している、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
(A)選択されたポリペプチドをコードする第一のコード配列、
(B)請求項8に記載の核酸からなる群より選択される第二のコード配列、
を含む核酸構築物であって、
第一のコード配列によってコードされているポリペプチドが、第二のコード配列によってコードされているポリペプチドにその中で融合しているところの蛍光を発するハイブリッドタンパク質が、融合配列の発現によって生じるように、第一のコード配列が第二のコード配列に融合されている核酸構築物。
【請求項14】
請求項8に記載の核酸を細胞内または生物体内に導入する工程、その細胞を増殖させる工程、および蛍光の発光によって核酸の発現を検出する工程を含む、遺伝子の発現を検出する方法。
【請求項15】
核酸が真核細胞内に導入される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
核酸が原核細胞内に導入される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
核酸発現の発現がインビボで検出される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
核酸の発現がインビトロで検出される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
請求項8に記載の核酸を含む細胞。
【請求項20】
核酸がその細胞のゲノム内に組み込まれている、請求項19に記載の細胞。
【請求項21】
核酸がその細胞のゲノム内に組み込まれていない、請求項19に記載の細胞。
【請求項22】
請求項8に記載の単離された核酸を含む動物。
【請求項23】
動物がゼブラフィッシュである、請求項22に記載の動物。
【請求項24】
少なくとも一つのアミノ酸の置換によって、対応する野生型の緑色蛍光タンパク質のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む第一の突然変異蛍光タンパク質であって、第一の突然変異蛍光タンパク質突然変異体が野生型の緑色蛍光タンパク質によって生じる、対応する光学的性質と相対的に異なる光学的性質を有する、第一の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項25】
異なる光学的性質がより強い相対蛍光強度を含む、請求項24に記載の第一の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項26】
第一の突然変異蛍光タンパク質が配列番号:5(Green I)を含むアミノ酸配列によってコードされている、請求項25に記載の第一の突然変異蛍光タンパク質変異体。
【請求項27】
少なくとも一つのアミノ酸の置換によって、請求項24に記載の第一の突然変異蛍光タンパク質のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む第二の突然変異蛍光タンパク質であって、第二の突然変異蛍光タンパク質が第一の突然変異蛍光タンパク質によって生じる、対応する光学的性質と相対的に異なる光学的性質を有する、第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項28】
異なる光学的性質がより強い相対蛍光強度を含む、請求項27に記載の第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項29】
アミノ酸の置換が配列番号:6のGreen Iの176位に対応する位置である、請求項28に記載の第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項30】
第二の突然変異蛍光タンパク質が配列番号:8(Green II)を含むアミノ酸配列によってコードされている、請求項28に記載の第二の突然変異蛍光タンパク質。
【請求項31】
突然変異緑色蛍光タンパク質をコードする単離された核酸であって、ポリヌクレオチド配列またはその相補体を含む核酸。
【請求項32】
核酸が配列番号:5(Green I)を含む、請求項31に記載の単離された核酸。
【請求項33】
核酸が配列番号:6(Green II)を含む、請求項31に記載の核酸の突然変異型。
【請求項34】
請求項31に記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項35】
さらにプロモーターを含み、そのプロモーターが機能できるように核酸に結合している、請求項34に記載のベクター。
【請求項36】
(A)選択されたポリペプチドをコードする第一のコード配列、
(B)請求項31に記載の核酸からなる群より選択される第二のコード配列、
を含む核酸構築物であって、
第一のコード配列によってコードされているポリペプチドが、第二のコード配列によってコードされているポリペプチドにその中で融合しているところの蛍光を発するハイブリッドタンパク質が、融合配列の発現によって生じるように、第一のコード配列が第二のコード配列に融合されている核酸構築物。
【請求項37】
請求項31に記載の核酸を細胞内または生物体内に導入する工程、その細胞を増殖させる工程、および蛍光の発光によって核酸の発現を検出する工程を含む、核酸の発現を検出する方法。
【請求項38】
核酸が真核細胞内に導入される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
核酸が原核細胞内に導入される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
核酸の発現がインビボで検出される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
核酸の発現がインビトロで検出される、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
請求項31に記載の核酸を含む細胞。
【請求項43】
核酸がその細胞のゲノム内に組み込まれている、請求項42に記載の細胞。
【請求項44】
核酸がその細胞のゲノム内に組み込まれていない、請求項42に記載の細胞。
【請求項45】
請求項31に記載の核酸を含む動物。
【請求項46】
動物がゼブラフィッシュである、請求項45に記載の動物。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2006−508678(P2006−508678A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559066(P2004−559066)
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/031203
【国際公開番号】WO2004/053119
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505211754)ユニバーシティ オブ マイアミ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/031203
【国際公開番号】WO2004/053119
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505211754)ユニバーシティ オブ マイアミ (1)
【Fターム(参考)】
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