説明

水性アクロレイン溶液でバラスト水を処理するための装置

昇圧ポンプ(VP)によって、バラスト水が水噴射ポンプ(Z)で汲み上げられ、水噴射ポンプの負圧領域が制御弁(SV)を通じて液圧で非円形の閉じた反応コンテナに連結され、その反応コンテナが、偏心に配置された強力な撹拌ユニット(T)と、アクロレイン・アセタール(AC)、酸(HX)、および、加水分解水(W)を外側から供給するための分離供給ポートと、を含むことを特徴とする、水性アクロレイン溶液でバラスト水を処理するための装置。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アクロレインの使用により、船のバラスト水が殺菌できることは、すでに公知である。
【0002】
2004年11月、ロンドンの国際海事機関発行の「バラスト水処理R&Dディレクトリ」The 2nd edition("Ballast Water Treatment R & D Directory", 2nd addition, November 2004, issued by the International Marine Organization, London)の61ページには、ある港から他の港へのバクテリア、藻、カワホトトギスガイおよびその他の動物プランクトンの移入は、バラスト水に1から15ppmのアクロレインに加えることによって、確かに抑制されることが記載されている。
【0003】
アクロレインの添加の利点は、特にカワホトトギスガイの幼生に対する持続効果、および、アクロレインが数日後にそれ自体分解すること、すなわち、到着港にバラスト水を放出しても、この生物致死剤によって港の船溜りに少しも新たに負担をかけないという事実である。
【0004】
上記の利点が証明されている一方で、他方では、アクロレインが催涙ガス効果を有する非常に有毒な液体であるため、純粋なアクロレインの船上での取扱い、輸送、および、格納が実行できないという問題があり、船の乗組員は、ガスマスクを使用して「NBC」(NBC =核、生物学的製剤、および、化学製品)防護服で完全に保護された状態でしか、この生物致死剤の取扱いができない。
【0005】
水性アクロレイン溶液は有毒ではなく、安全に取り扱うことができる。しかしながら、この溶液は、たった数日間しか安定しないので、物流を効率的に管理するシステムの問題のため船上での使用は不可能である。
【0006】
上述した問題点を克服するため多くの試みがなされており、これにより、危険の少ないアクロレイン誘導体がアクロレインとして使われる。
【0007】
米国特許US‐A‐5,183,944号は、水性酸性溶液を使用できる場所で、アクロレインに代えて、非有毒の水性アクロレイン・アセタールを分解すること、そしてその後、不活性ガス流による反応混合物からアセタールで形成されたアクロレインを取り除くことを提案している。アクロレイン含有の不活性ガスは、その後水処理に使用される。船上でこの方法を使用するには、非常に有毒なアクロレイン気体混合物のために絶対に確実な二重壁のある導管を設置しなければならない。
【0008】
バラスト水タンクにアクロレイン含有のガスを導入すると、その不活性ガスはバラスト水タンクの換気導管から放出されるが、それはまだ相当量の残余アクロレインを含んでいるので、その催涙ガス効果のためにデッキで作用させるのが不可能であり、危険な作業状態を引き起こす。さらに、US‐A‐5,183,944号に記載の方法では、船上で処理するには問題のある残余物を含んだ水が発生する。
【0009】
US‐A‐5,560,833号は、アクロレイン・アセタールのアルコール溶液の使用、および、使用場所でアクロレイン溶液を形成するための酸開裂を提案する。イソプロピルアルコールに溶解されたアクロレイン・アセタールと、10%に希釈された無機酸とは、均質の反応液を形成するため、パイプ・コイル内において圧力下で混合される。その後、アクロレイン・アセタールの脱アセタール化が完全に終わるまで、混合液はゆっくり層流で貯蔵タンクを通過する。
【0010】
US‐A‐5,560,833号の他の実施態様において、ゆっくり動く多数の撹拌ユニットを有する、高い内部乱流のないパイプ形状の循環ミキサが、貯蔵タンクとして貯蔵タンク自体の代わりに使用される。アルコール・アセタール溶液と、希釈された無機酸を混合するためのパイプ・コイルとが、例えばこの例では、パイプ形状の撹拌ミキサの同軸の内部設備として配置される。
【0011】
濃縮した無機酸と水との予混合物、ならびにイソプロピルアルコールとアセタールとの予混合物を現場で生成することは、船上でアクロレインを生成するこの方法を実施するための前提条件である。US‐A‐5,560,833号の教示によれば、これらの2つの予混合物は、使用に備えて各々圧力容器へ移しておかなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許US‐A‐5,183,944号公報
【特許文献2】米国特許US‐A‐5,560,833号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】バラスト水処理R&Dディレクトリ 第2版2004年11月、ロンドン国際海事機関発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
海洋船上での両方の生成操作のために訓練された人員はいない。その上、容易に揮発する可燃性のC1からC3アルコールを保護ガスなしで取り扱うことは、火事の原因となる。US‐A‐5,560,833号の方法で作用させる場合、提案された装置の寿命は短く、そして、それらがガラスではなく通常のような耐酸性の純度の高い鋼鉄から構成される場合には、その後使用出来なくなることがわかっている。
【0015】
US‐A‐5,560,833による装置を少しの間動作させると、液体に接触している高純度鋼鉄製の貯蔵タンクの壁面、および、パイプ形状の撹拌ミキサに、ビスアクロレインおよび他のアクロレインの縮合物に由来する樹脂のような被覆が生じる。この不利な効果は、特に、層流及び低い乱流のみを有する所に生じる。
【0016】
上述した不備のため、US‐A‐5,183,944号、および、US‐A‐5,560,833号により上記提案された装置は、船上においてアクロレインでバラスト水を処理するために使用することはできない。
【0017】
本発明は、バラスト水を船上においてアクロレインで処理するために設置が容易であるとともに、動作時間が長期に渡っても危険な操作状態に直面することなくおよび/または予混合物を生成する必要なく、操作が保証される装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的を達成するため、本発明の装置は、昇圧ポンプによって、バラスト水が水噴射ポンプで汲み上げられ、水噴射ポンプの負圧領域が制御弁を通じて液圧で非円形の反応コンテナに連結され、その反応コンテナは、いかなる固定された内部の設備も含まないが、唯一、偏心に配置された強力な撹拌ユニットとともに、アクロレイン・アセタール、酸、および、加水分解水を外側から供給するための分離供給ポートを含むことを特徴とする。この単純な構造にもかかわらず、極めて確実で、かつ、アクロレインの希釈溶液でのバラスト水の問題のない処理が好適な方法で達成される。
【0019】
さらなる利点は、純粋なアクロレインが装置内のいかなる場所にも存在せず、それが危険な操作状態の発生に対するさらなる安全を意味することにある。装置の安全な操作もまた、さまざまな変化を確実にするか、又は、バラスト水の供給を中断する。脱アセタール化が起こる非円形の反応コンテナが常に完全に満たされるので、装置の問題のない機能もまた、荒れた海の状態の場合にも悪影響を受けない。
【0020】
強力な撹拌ユニットの偏心配置は、高い撹拌エネルギが投入される場合であっても、非円形の反応コンテナ内で血栓型の撹拌形状が形成されず、このことにより、装置の金属壁における被覆のような樹脂の発生の主要な理由の1つが取り除かれるという結果につながる。
【0021】
上述のように、アクロレインでバラスト水を処理するコンパクトな装置は、驚くべき多くの重要な技術的利点を提供する。アクロレイン・アセタールは、溶剤に予混合させる必要なく、本発明の装置で直接使用できる。装置に投与され、事前に水で希釈することなく、触媒として使われる酸にも同じことが当てはまる。すでに利用可能な船上に積載された水の供給システムは、加水分解用の水を供給するために使用できるため、追加の供与ポンプおよび制御装置が必要ないということは、本発明の装置の配置において特に好都合である。特に、その操作状態に関係ない、装置内への一定供給割合で水の供給は、軽率な操作または電力供給がブレークダウンした場合の追加的な安全手段である。
【0022】
アクロレインでバラスト水を処理する本発明の装置において、非円形の反応コンテナと水噴射ポンプの負圧領域との間の連結管の単一制御弁は、水性アクロレイン溶液の供給を制御する。本発明の好適な実施態様によれば、制御弁は調節可能な開口圧力を有する安全弁であり、それによって、昇圧ポンプが作用している場合のみアクロレイン溶液が負圧領域へと流れることが保証される。
【0023】
本発明の好適な実施態様によれば、非円形の反応コンテナは、閉じた箱の形状を有する。箱の高さはおよそその幅に対応し、そして、箱の高さに対する長さの比率は1:2になる。
【0024】
本発明の好適な実施態様によれば、強力な撹拌器はタービン撹拌器の形状を有し、箱容積の1立方メートル当たりの撹拌エネルギの入力は、500ワットより大きくなる。タービン撹拌器の直径は、箱の幅のおよそ0.3倍になる。
【0025】
本発明の好適な実施態様によれば、強力な撹拌器は、箱の内部空間において箱の長さに関して偏心して配置される。箱の長さに対する偏心の関係は、およそ0.1から0.2になる。箱底部から強力な撹拌器までの距離は、タービン撹拌器の直径にほぼ等しい。
【0026】
水性アクロレイン溶液を調合するための本発明の箱は、さらに、アクロレイン・アセタール、触媒酸、および、加水分解水のための3つの供給ポートによって特徴付けられる。
【0027】
本発明の好適な実施態様によれば、アクロレイン・アセタールと触媒酸とのための供給ポートは、箱の蓋に溶接されるパイプ部である。その2つのパイプ部には、アクロレイン・アセタールおよび触媒酸のための供給ラインへ、水性アクロレイン溶液が箱から流出するのを防ぐための逆止弁が取り付けられる。
【0028】
本発明の好適な実施態様によれば、箱に加水分解水を供給する供給ポートは、撹拌器軸と箱の蓋の撹拌器軸のための開口との間の円形ギャップである。加水分解水は、撹拌器軸の封止ハブでパイプ部を通じてリングギャップに達し、このことにより、箱からの水性アクロレイン溶液の放出を妨げる水流を形成する。
【0029】
本発明の好適な実施態様によれば、箱は、箱内の反応液が摂氏35度より低い温度に維持されるような、冷却水の供給および放出ポートを有する、外側の冷却ジャケットを備える。
【0030】
本発明の好適な実施態様によれば、強力な撹拌器は、その回転速度が周波数変換機によって調整されるように適応する電気モータによって駆動される。
【0031】
本発明の好適な実施態様によれば、装置は、水噴射ポンプの負圧領域の圧力が所定値を上回る場合、アクロレイン・アセタールおよび触媒酸の箱への供給を中断する、電気または空気制御ユニットを備える。
【0032】
本発明の好適な実施態様によれば、装置は、加水分解水の供給が中断される場合、箱へのアクロレイン・アセタールおよび触媒酸の供給を中断する電気または空気制御ユニットを備える。
【0033】
本発明の好適な実施態様によれば、装置は、撹拌器軸の駆動モータが休止している場合、箱へのアクロレイン・アセタールおよび触媒酸の供給を中断する電気または空気制御ユニットを備える。
【0034】
本発明の好適な実施態様によれば、周波数変換機によって制御される電気モータは昇圧ポンプの駆動手段として役立ち、それによって、水噴射ポンプの入力圧力の効果的な制御が達成され、そして、本発明の装置の制御が、簡易な方法のアナログまたはデジタル・コンピュータ・システムによって実行できる。
【0035】
本発明の好適な実施態様によれば、アクロレインでバラスト水を処理する装置の処理パラメータに基づいて昇圧ポンプの回転速度を制御するように構成された制御ユニットが提供される。
【0036】
本発明の好適な実施態様によれば、処理パラメータは、水噴射ポンプからの供給と放出との圧力差である。
【0037】
本発明の好適な実施態様によれば、圧力差に基づいた制御ユニットは、少なくとも2つの圧力センサと、圧力センサの計測値からの圧力差を決定し、基準値と実際値との間の比較を実行し、モータの回転速度制御に結果の制御信号を出力するように構成される計測変換器と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】強力な撹拌器が偏心してその中に配置された、閉じた箱の形の非円形の反応コンテナの概略図である。
【図2】アクロレインでバラスト水を処理するための本発明の装置におけるそれぞれの流れを示す概略図である。
【図3】箱への加水分解水の供給を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の実施形態を、添付の図面に即して説明する。図1は、強力な撹拌器が偏心してその中に配置された、閉じた箱の形の非円形の反応コンテナの概略図である。図2は、アクロレインでバラスト水を処理するための本発明の装置におけるそれぞれの流れを示す概略図である。図3は、箱への加水分解水の供給を概略的に示したものである。
【0040】
1.図1に示されるように、非円形の反応コンテナは、閉じた箱Kの形状を有する。箱Kは、高さA、幅B、および、長さCを有し、固定された内部の設備を含まない。強力な撹拌要素Tは、撹拌器軸Sに固定的に連結される。撹拌器軸Sは、箱の蓋の開口Oを通じて延設される。撹拌器軸S、および、それに関する撹拌要素Tが、箱の長さCの中点からの距離Eだけ偏心して配置される。撹拌要素は直径Dを有し、箱の底部から距離Fで配置される。代案として、図示されないが、いくつかの強力な撹拌要素が、箱(K)の内部に配置されてもよい。
【0041】
箱容積1立方メートル当たり少なくとも500ワットの機械的な撹拌動力が生成できるように、撹拌要素Tの回転速度は可変である。箱Kは完全に反応液で満たされ、高い乱流による液体のいかなる血栓の形状も含まず、固定された内部の設備がないので、生成される水性アクロレインから樹脂が産出されることはない。
【0042】
本発明の装置の詳細は、図2に示される。図2に示されるように、アクロレインで処理されるバラスト水の流れVE(容積/単位時間)は、導管L7を通じて昇圧ポンプVPの吸込みパイプへ流れる。バラスト水は圧力導管L8を通じて水噴射ポンプZへ流れ、制御弁SVを通じて負圧領域に吸い込まれる水性アクロレイン溶液と混合される。アクロレインで処理されたバラスト水は、流れVO(容積/単位時間)として、導管L9を通じて本発明の装置から放出される。
【0043】
昇圧ポンプVPの回転速度は可変である。例えば、駆動モータMPは、その回転速度が周波数変換器FCによって制御される三相のモータであってもよい。この周波数変換器はメイン・ケーブルACに接続され、例えば4から20mAの信号電流として(または、図2のΔPによって示される制御装置および計測変換器からの0から5ボルトの信号電圧として)その制御信号を得る。
【0044】
制御装置ΔPは、2つの圧力センサP1およびP3と連結される。制御装置ΔPの計測変換器は、圧力センサP1およびP3の入力信号から差圧を計算し、この差圧を所定の基準値と比較する。基準値と実際の値との間の偏差は、制御信号として周波数変換器FCに供給される。この制御回路によって、水噴射ポンプZの負圧領域の圧力P2はバラスト水の様々な供給の場合にも最小値を超えず、バラスト水への水性アクロレイン溶液の供給は連続的に影響を受け、妨害がないことが保証される。
【0045】
図2に示されるように、水噴射ポンプZの負圧領域は、制御弁SVによって、箱Kに溶接される排水装置導管L6に液圧で連結される。箱Kからの反応液は、箱Kの内部の低い圧力と水噴射ポンプZの負圧領域の負圧P2との間の圧力差により、導管L6を通じて水噴射ポンプへ流れる。
【0046】
本発明の装置のこの有利な配置のため、希釈された水性アクロレイン溶液のために、別々の供給ポンプは必要でなく、それによって、装置の操作の安全性は非常に高くなる。
【0047】
箱Kは、冷却液の流れKWEのための供給パイプ部L4、および、放出された冷却液の流れKWOのための冷却液排出パイプ部L5を有する外側の冷却ジャケットKMを備える。水または通常の他の冷却液は、冷却手段として役立つことができる。
【0048】
図に示されるように、箱Kはいかなる固定された内部の設備も含まないが、箱の縦軸に関わる偏心して配置される撹拌ユニットのみを含み、その撹拌ユニットは、撹拌タービンとして示される撹拌要素T、および、駆動モータMRに連結される撹拌器軸Sから構成される。
【0049】
箱上部の蓋の撹拌器軸Sの開口は、Oによって示され、撹拌器軸よりいくぶん大きい開口直径を有する。撹拌器軸は、Oの開口に関して軸方向中央に調整される。アクロレイン・アセタールの加水分解のために必要である加水分解水Wは、開口Oと軸Sとの間のリングギャップを通じて流れる。内部が中空である封止ハブBUは、液密状態の箱の蓋にねじ込まれる。その上端部で、ハブBUは、箱Kから水または反応液が漏れるのを防止するため、パッキング・ケースまたは位相シールによって撹拌器軸Sに係わって封止される。
【0050】
連続的に供給される加水分解水Wのための供給導管L3は、封止ハブBUにねじ込まれる。
【0051】
本発明のこの有利な実施形態によれば、加水分解水Wは同時に、箱Kに対する撹拌器軸Sの機械的なシーリングのための遮断水としても役立つ。
【0052】
図に示されるように、箱の蓋は、放出導管6からできるだけ離れて配置される2つの供給ポートをさらに備える。供給導管L2は、箱Kにアクロレイン・アセタールを開裂するのに必要な酸HSを連続的に供給する。供給導管L1は、箱Kにアクロレイン・アセタールを連続的に供給する。供給導管L1およびL2内に箱Kから液体が流出するのを防止するため、それらの導管は、逆流防止弁RV1およびRV2を備える。
【0053】
実際、加水分解水Wの供給ラインL3内の圧力はおそらく数バールになるので、逆流防止弁の覆いはこの供給ラインには必要ない。
【0054】
本発明の装置を始動させ、水性アクロレイン溶液によるバラスト水の処理の間、加水分解水の単位時間当たりの供給量は、固定的に調整される。このことにより、はじめに、箱Kおよび導管L6が水で完全に満たされることが保証される。その後、撹拌ユニットMRが始動する。昇圧ポンプVPがその基準動作に制御され、負圧P2が規定値に達するとすぐに、供給ラインL2介して箱Kへ酸HXの連続供給が始まる。US‐A‐5,183,944号に記載される酸が脱アセタール化のための酸として使われてもよい。酸の供給を開始した数分後、アクロレイン・アセタールACのための供給ポンプが始動され、アクロレイン・アセタールは、供給ラインL1を通じて箱へ送り出される。
【0055】
バラスト水の処理が終わった後、アクロレイン・アセタールAC、酸、加水分解水HXおよびWのための供給流が反対のシーケンス[Mate_Will2]内で止まり、それによって、装置が、最後には再び水のみで満たされることが保証される。
【0056】
例えばポンプVPの故障によってバラスト水の処理の間に障害が発生した場合、かつ、その結果負圧P2が所定値を超える場合、箱Kへのアクロレイン・アセタールACおよび酸HXの供給流は、安全回路(図示せず)によって止まる。
【0057】
遮断水回路、および、本発明の装置の箱K内への加水分解水Wの供給の詳細は、図3に示される。
【0058】
この図に示されるように、箱Kに密着するハブBUは中空のシリンダ状に形成される。撹拌器軸Sに対する機械的シールGDは、ハブBUの上端部に配置される。シールGDはパッキング・リング、または、好適には、フェーズシールを有するパッキングカバーであってもよい。
【0059】
ハブBUは、加水分解水Wの供給ラインL3が流体密封されて取り付けられるねじ切られた開口またはフランジ・ソケットを含む。
【0060】
加水分解水Wは、側面から、圧力下で、ハブBU内へパイプ管L3および逆流防止弁RW3を通じて導かれ、リングギャップ方向の撹拌器軸の周囲の流れは、箱の蓋の開口Oと、下方で、箱Kの内部にあるOの軸方向中央に配置される撹拌器軸と、によって形成される。
【0061】
リングギャップの強制的な流れ状態によって、反応液は箱Kの内部からハブBUの内部まで入ることができない。
【0062】
シーリングGDが失敗した場合、水Wは本発明の装置から出るが反応液は出ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇圧ポンプ(VP)によって、バラスト水が水噴射ポンプ(Z)で汲み上げられ、
前記水噴射ポンプの負圧領域が制御弁(SV)を通じて液圧で非円形の閉じた反応コンテナに連結され、
その反応コンテナが、
偏心に配置された強力な撹拌ユニット(T)と、
アクロレイン・アセタール(AC)、酸(HX)、および、加水分解水(W)を外側から供給するための分離供給ポートと、
を備えることを特徴とする、水性アクロレイン溶液でバラスト水を処理するための装置。
【請求項2】
前記強力な撹拌要素(T)がタービン撹拌器であることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記非円形の反応コンテナが閉じた箱(K)の形状を有することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記箱に機械的に入力される撹拌パワーが、箱容積1立方メートル当たり0.5キロワットより大きいことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記箱(K)の高さ(A)、長さ(C)、幅(B)の寸法の比率は、およそ1対1.2対1であることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記撹拌タービンの直径(D)に対する前記箱(B)の幅の比率は、およそ1対3であり、その底部(F)までの距離に対する前記撹拌タービン(D)の直径の比率は、およそ1対1であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記撹拌器軸の偏心(E)は、前記箱の長さ(C)のおよそ0.1から0.2倍であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記加水分解水のための供給開口は、前記撹拌器軸(S)と、前記箱の蓋における前記撹拌器軸のための前記開口(O)との間のリングギャップであることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記箱(K)は、完全に液体で満たされることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記箱(K)は、外側に冷却ジャケット(KM)を備えることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項11】
前記強力ないくつかの撹拌要素は、前記箱(K)の内部に配置されることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項12】
電気モータ(MP)は、周波数変換器(FC)によって制御され、前記昇圧ポンプ(VP)のための駆動装置の役割をすることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項13】
制御ユニット(ΔP)は、前記昇圧ポンプ(P1)、および、前記装置(P3)から放出されると前記バラスト水の圧力差を測定することによって、基準値と実際の値との比較を実行し、前記昇圧ポンプ(VP)の前記周波数変換器(FC)に結果の制御信号を出力することを特徴とする、請求項1および11記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−523305(P2010−523305A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501376(P2010−501376)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010334
【国際公開番号】WO2008/119371
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(509177418)
【氏名又は名称原語表記】BLUM, Holger
【住所又は居所原語表記】Hechtstrasse 8b, CH−9053, Teufen, AR, CH
【Fターム(参考)】