説明

水性アルカリに可溶性である、(メタ)アクリレートコポリマーの塊状重合

本発明は、水性アルカリに可溶性である、(メタ)アクリレートベースの塊状重合体の合成に関する。殊に本発明は、塊状重合によるポリマーの合成に関する。係る塊状重合体は、不均一系での水性重合法、例えば乳化重合又は懸濁重合によって製造された相応する重合体より明らかに良好な、水性アルカリ性媒体中への可溶性を示す。より良好に可溶性であるとは、このコンテキストにおいては、同じ大きさの粒子の場合に溶解速度がより速く、溶解後に大きな混濁が残らず、かつ、同一の固形分の場合に、得られた溶液の粘度がより僅かであるという事実により言い表される。そのうえまた、水性ベース塗料に対する本発明による化合物の相溶性は、少なくとも匹敵するものであるか又はそれどころか改善されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性アルカリに可溶性である、(メタ)アクリレートベースの塊状重合体の合成に関する。殊に本発明は、塊状重合によるポリマーの合成に関する。係る塊状重合体は、不均一系での水性重合法、例えば乳化重合又は懸濁重合によって製造される相応する重合体より明らかに良好な、水性アルカリ性媒体中への可溶性を示す。より良好に可溶性であるとは、このコンテキストにおいては、同じ大きさの粒子の場合に溶解速度がより速く、溶解後に大きな混濁が残らず、かつ、同一の固形分の場合に、得られた溶液の粘度がより僅かであるという事実により言い表される。そのうえまた、水性ベース塗料に対する本発明による化合物の相溶性は、少なくとも匹敵するものであるか又はそれどころか改善されている。
【背景技術】
【0002】
EP1268690には、水性塗料用のアクリレートベースのバインダーが記載され、WO2005/058993には、アクリレートとポリウレタンの組合せ物を対象にしたバインダーが記載される。その際、ビニル成分の製造は、それぞれ乳化重合によって行われる。溶液重合又はそれに塊状重合のような方法に対する乳化重合の利点は、水分散化が重合媒体中で直接行われることができることである。しかしながら、加工が水性の溶液若しくは分散液中で直接は行われず、例えば、コンパウンド化のために押出機中で行われる場合、高い極性及び沸点に基づき、水は媒体としてとりわけ不利であると判明している。塗料適用のための乳化重合の更なる欠点は、大量の助剤及びプロセス媒体であり、これらは、バインダーから煩雑にしか除去されることができず、かつ、塗料品質に影響を及ぼす。
【0003】
塊状重合体は、それに対して、より少ない助剤及びプロセス媒体を用いて製造されることができる。それに対して、高い酸価と、それに伴って水への良好な分散性を有するポリマーは、不十分にしか実現されない。数多くの酸基が、水相に対するモノマーの界面での液滴形成を妨げるか、又は酸含有モノマーの大部分が簡単に水相に溶解され、重合がそれに伴ってもはや利用可能ではなくなる。係る商業的に調達可能な懸濁重合体の例が、DSM B.V.(Geleen,NL)社のNeocryl B 817の名称で得られるアクリレートバインダーである。
【0004】
乳化重合に際してのみならず懸濁重合に際しても現れるこれらの境界相の効果は、付加的に、ポリマー鎖全体にわたった酸基の非一様な分布をもたらす。それゆえに、非極性及び極性の鎖セグメントを有する。しかしながら、この鎖構成は、水溶液中で2つの更なる欠点を必然的に伴う:一方では、係る水性分散液からの水溶液若しくは塗料が、相分離に基づき混濁する傾向にある;他方では、係るセグメント化ポリマーの水性の溶液若しくは分散液が、規則的に構造化された類似するポリマーより明らかに高い溶液粘度を有する。
【0005】
光学的明澄度及び良好な水溶性若しくは水分散性の外に、最新の水性塗料系用のアクリレートバインダーは、今日まで先行技術により不十分にしか満たされていない更なる特性を有さなければならない。理想的には、バインダーは、多数の異なる他の塗料系に対して良好な相溶性を示すとされる。例として、ポリウレタン、他のポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル又はエポキシ系が挙げられる。バインダーは、しかしながら、顔料の良好な分散化特性も同時に有するべきである。単に良好に分散された顔料は、あとの塗料中で、高い色濃度及び均等性と、それに伴って所望の塗料品質を生じる。そのうえまた、ポリ(メタ)アクリレートは、他の塗料バインダーとの組合せにおいて、これらの特性にプラスに寄与するべきである。しかしながら、先行技術に従ったポリ(メタ)アクリレートは、これらの所望の特性より成る組合せを有さない。
【0006】
酸官能性ポリ(メタ)アクリレートを製造するための連続的に行われる塊状重合は、原則的に規定されている。
【0007】
EP0143035には、エチルアクリレートとメタクリル酸より成るコポリマーが記載されており、該コポリマーは、メタクリル酸少なくとも17質量%を含有し、かつ、アルカリ性溶液を用いた処理によって溶解し得る保護フィルムを製造するために用いられることができる。ポリマーの製造は、二軸押出機を用いて行われる。しかしながら、塗料適用のために、2つの異なる構造単位より成るこれらのポリマーは適していない。該ポリマーは、他の系と非相溶性であり、かつ、高い酸価が理由となって混濁する傾向にある。
【0008】
WO01/05841では、エポキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、粉末塗料適用のために連続的な重合によって製造される。しかしながら、これらは水系に適していない。非常に短鎖の、アクリル酸35質量%を含有するポリアクリレートの合成も記されている。しかしながら、これらは、顔料の分散化にも、他のポリマーとのコンパウンド化にも適していない。
【0009】
WO02/18456には、2つの反応ゾーン、一般に管形反応器が、酸含有ポリメタクリレートの合成のために連続的に使用される方法が開示され、その際、第二の反応ゾーンには、なかでも官能基に関して第一の組成物と区別されるモノマー組成物が添加される。そのようにして、鎖位のアクリル基を有し、かつ、電子ビームによって硬化される系のために、種々のポリマー組成物の混合物が常に得られる。一般に、該方法は、溶媒の添加下でのみ行われることができるか、又は非常に僅かな、明らかに10Tより小さい分子量Mwで行われることができる。加えて、水分散化のために製造されたポリマーは、少なくとも30質量%のアクリル酸割合若しくはマレイン酸割合を有する。係る系は、既に指摘した欠点を示しており、かつ、水系での顔料分散化には適していない。
【0010】
WO00/02933によれば、同じ技術的な方法が、二段階のプロセスにおいて、ラジカル重合を重縮合と組み合わせるために用いられる。この煩雑な方法を介して得られる生成物は、非常に様々なポリマー種の混合物であり、それらは不十分にしか完全に水分散性若しくは水溶性でない。加えて、係る不均一系のポリマー構造は、顔料の完全な分散化に不十分にしか適していないと考えられる。
【0011】
WO00/02934ではまた、連続的な塊状重合によって、溶媒の10〜15質量%の添加下で、酸含有ポリアクリレートが、水系用、特に印刷インキ用の顔料調製物を製造するために製造される。これらのポリアクリレートは、炭素原子少なくとも11個を有するアルコールのアクリルエステル少なくとも8.5質量%を含有することを特徴とする。非極性構造単位のこの大きな割合により水系への分散性を可能にするために、ポリマーは、それに対応して、アクリル酸少なくとも18質量%を含有していなければならない。しかしながら、この組成物は、例えば印刷インキにおいて適用されるが、しかしながら、塗料においては適用されない少数の顔料にのみ適している。
【0012】
課題
本発明の課題は、水性塗料配合物用のアクリレートベース若しくはメタクリレートベース(以下では(メタ)アクリレートベースと略記)の改善されたバインダーを提供することであった。
【0013】
特に課題は、簡単に、かつ、既成の塗料系への良好な顔料分散下で組み込まれることができる顔料調製物の製造を可能にする水性塗料系用の(メタ)アクリレートバインダーを提供することであった。
【0014】
そのうえまた課題は、これらの顔料調製物が、非常に良好な光沢特性、隠蔽特性、加工特性及び着色特性を有する水性塗料にさらに加工可能であるということであった。
【0015】
同時に本発明の課題は、前述のバインダーを連続的な製造法により製造することであった。その際、連続的な製造法とは、中断無しに連続的に実施可能な方法を意味しており、これは、詳細にはモノマー計量供給、重合、脱気及びペレット化の工程段階から成る。
【0016】
解決手段
課題は、新規の塊状重合体を提供することによって解決された。これは、官能性(メタ)アクリレートを高い変換率により溶媒不含で重合させることができる連続的な塊状重合法の改良された使用によって製造される。懸濁重合に対する塊状重合法の利点とは、助剤、例えば乳化剤、安定化剤、消泡剤又は他の懸濁助剤の添加無しに製造されることができる生成物の高い純度である。
【0017】
本発明によるバインダーを用いたVOC割合(揮発性の有機構成成分の割合)に関しての塗料工業の現在若しくは将来の要求と一致した顔料調製物を製造することができるように、バインダーは、極度に少ない揮発性成分の割合を有していなければならない。これは、本発明により、バインダーを溶媒及び水不含で連続的な塊状重合により提供することによって解決された。さらに、熱的な後処理との組合せによって、本発明が成し遂げる事柄は、残留モノマーの含有量も非常に少ないものでしかなく、かつ、バインダーの熱安定性が改善されることである。
【0018】
意想外にも、本発明による方法によって、酸基のみならずヒドロキシ基も有する(メタ)アクリレートベースのバインダーも製造できることが見出された。当業者であれば、係る重要なバインダーの製造のためには、これらの双方のモノマー種が、強く希釈されて(溶液重合)存在するか、又は種々の極性に基づき分離して(懸濁重合)存在することになる重合法を有利には使用すると考えられる。
【0019】
そのうえまた、意想外にも、水性アルカリ性条件下で可溶性若しくは分散性であるのみならず、顔料調製物の製造のためにも非常に良好に適している組成物が見出された。そのうえまた、これらの顔料調製物を含有する塗料は、非常に良好な光沢特性、隠蔽特性、加工特性及び着色特性を示す。加えて、顔料調製物は、本発明によるバインダーの使用下で、先行技術と比較してより簡単に製造及び加工されることができる。特に、この技術的な問題は、先行技術と比較して少ない酸割合を有し、その際、水性アルカリ性への可溶性若しくは分散性が悪影響を及ぼされていないバインダーの提供に成功することによって解決された。
【0020】
本発明が成し遂げる特別な事柄とは、バインダーのこれらの基準を正確に満たす構造単位より成る組合せ物を提供することである。そのためには、次の構造単位の組合せ物のみが適している:
重合されるメタクリレートは、直鎖状、分枝鎖状又は脂環式の、炭素原子1〜8個を有するアルコールのアルキルメタクリレートの群から選択されている。これらより成る混合物も使用可能である。有利な例は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート又はシクロヘキシルメタクリレートである。とりわけ有利なのは、メチルメタクリレート(MMA)である。
【0021】
重合されるアクリレートは、直鎖状、分枝鎖状又は脂環式の、炭素原子1〜8個を有するアルコールのアルキルアクリレートの群から選択されている。これらより成る混合物も使用可能である。有利な例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート又はシクロヘキシルアクリレートである。とりわけ有利なのは、エチルアクリレート(EA)である。
【0022】
前で説明した(メタ)アクリレートの外に、重合されるべき組成物は、前で挙げた(メタ)アクリレートと共重合可能である更なる不飽和モノマーも有してよい。これらには、なかでも、スチレン、α−メチルスチレン又はp−メチルスチレン、有利にはスチレンが含まれる。
【0023】
そのうえ、重合されるべき組成物中には、ヒドロキシ官能基を有する(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリレートの混合物が含有されている。有利な例は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート及びヒドロキシプロピルメタクリレートである。
【0024】
最後に、重合されるべき混合物中には、アクリル酸及び/又はメタクリル酸が含有されている。
【0025】
本発明が成し遂げる更なる特別な事柄とは、技術的な課題の解決のために適している個々の構造単位間の比率を提供することである。その際、特に意想外にも、本発明によるポリマーは、水性アルカリ性で可溶性若しくは分散性の、先行技術と比較して単に少ない酸割合を有する顔料調製物の製造のために製造可能であることが見出された。
【0026】
特に、顔料調製物を製造するための本発明によるバインダーは、それが水性アルカリ性溶液に可溶性若しくは分散性であり、かつ、多数の様々な顔料に対しての良好な分散特性を有することを特徴とする。
【0027】
特にこの特性は、バインダーがもっぱら次のモノマーから製造されることによって達成される:
− 炭素原子1〜8個より成るアルキル基を含有する1種以上のメタクリレート及び/又はスチレン及び/又はα−メチルスチレン40〜70質量%、有利には45質量%〜65質量%。有利には、このモノマーは、メチルメタクリレート、スチレン、又はメチルメタクリレートとスチレンより成る混合物である。
− 炭素原子1〜8個より成るアルキル基を含有する1種以上のアクリレート20〜40質量%、有利には25質量%〜35質量%。有利には、このアクリレートは、エチルアクリレートである。
− アルキル基上にヒドロキシ官能基を有する1種以上の(メタ)アクリレート1〜15質量%、有利には4質量%〜10質量%。有利には、このモノマーは、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート又はヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
− アクリル酸及び/又はメタクリル酸1質量%〜17質量%、有利には7質量%〜15質量%。有利には、このモノマーは、アクリル酸である。
【0028】
自動車塗膜の製造のために特に適している、第一の、より軟質の組成物においては、次の組成が有利である:
− 炭素原子1〜8個より成るアルキル基を含有する1種以上のメタクリレート40〜60質量%、有利には45質量%〜60質量%。有利には、このメタクリレートは、メチルメタクリレートである。
− 炭素原子1〜8個より成るアルキル基を含有する1種以上のアクリレート20〜40質量%、有利には25質量%〜35質量%。有利には、このアクリレートは、エチルアクリレートである。
− スチレン及び/又はα−メチルスチレン0質量%〜10質量%、有利には5質量%まで。有利には、このモノマーは、もっぱらスチレンである。
− アルキル基上にヒドロキシ官能基を有する1種以上の(メタ)アクリレート1〜15質量%、有利には4質量%〜10質量%。有利には、このモノマーは、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート又はヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
− アクリル酸及び/又はメタクリル酸1質量%〜17質量%、有利には7質量%〜15質量%。有利には、このモノマーは、アクリル酸である。
【0029】
建築塗料、いわゆる装飾塗料用に特に適している、代替的な、より硬質の組成物においては、次の組成が有利である:
− 炭素原子1〜8個より成るアルキル基を含有する1種以上のメタクリレート0〜10質量%。有利には、このメタクリレートは、メチルメタクリレートである。
− 炭素原子1〜8個より成るアルキル基を含有する1種以上のアクリレート20〜40質量%。有利には、このアクリレートは、エチルアクリレートである。
− スチレン40〜60質量%。
− アルキル基上にヒドロキシ官能基を有する1種以上の(メタ)アクリレート1〜15質量%、有利には4質量%〜10質量%。有利には、このモノマーは、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート又はヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
− アクリル酸及び/又はメタクリル酸1質量%〜17質量%、有利には7質量%〜15質量%。有利には、このモノマーは、アクリル酸である。
【0030】
組成とは無関係に、バインダーは、少なくとも5T、有利には少なくとも10T、かつ、最大80T、有利には50Tの質量平均分子量Mwを有する。分子量は、DIN55672−1 "Gelpermeationschromatographie,part 1(ゲル浸透クロマトグラフィー、第1部):溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)"に依拠させゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いてPMMA標準と対照させて測定した。
【0031】
本発明によるバインダーは、係る系の製造にとって新規の方法によって製造される。これは、記載したモノマー混合物が、混練機中での連続的な塊状重合に関連して新規であることを特徴とする。そのうえ重合法は、溶媒及び助剤不含で実施される。さらにポリマーは、重合に直接続けてペレット化される。
【0032】
懸濁重合に対する塊状重合の利点は、親水性コモノマー、例えば(メタ)アクリル酸、アミノ−又はヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートの任意の量の使用である。
【0033】
溶液重合に対する利点は、揮発性構成成分が重合プロセスにおいて若しくは一次生成物中に無いこと若しくは非常に少ない割合でしかないことである。
【0034】
バッチ運転方式における塊状重合に対する本発明による方法の利点は、明らかにより高い達成可能な変換率と、それに伴って最終生成物中での残留モノマーのより少ない割合である。さらに付け加えられるのは、製造速度がより高いこと及びプロセスパラメーターを変化させることができる範囲がより広いことである。
【0035】
塗料又は被覆材料用のバインダーを製造するための本発明による方法のより特別な利点は、生成物が製造プロセスの最後に更なる加工なしに存在することである。重合のための連続的に運転される混練機、脱気、例えば揮発性構成成分の除去のための若しくはポリマーの熱的な後処理のためのフラッシュ式脱気装置又は脱気式混練機及びペレタイザーの組合せによって、第一に溶媒不含であり、第二に、使用されるモノマー、連鎖移動剤及び開始剤に帰せられることができ、かつ、調整可能なペレットサイズを有する構成成分からもっぱら成る生成物が得られる。
【0036】
本発明により製造されたバインダーは、そのうえ、粒が粗い構成成分、すなわち、5mmより大きい粒子を含有しない。より大きい粒子は、例えばノズルの閉塞を引き起こす可能性がある。係る粗粒物の特別な欠点は、特に、有機溶媒、可塑剤又は水の中での溶解速度が落ちることである。これは、より小さい粒子に比べてより都合の悪い表面積/質量の比から明らかに容易にわかる。
【0037】
課題を解決するための有利な方法は、連続的に行われる混練機技術である。List社の連続的なバルク重合のための係る逆混合式混練反応器の説明が、WO2006/034875若しくはWO2007/112901に見出される。重合は、ポリマーのガラス転移温度より高く実施される。モノマー、触媒、開始剤等は、その際、連続的に反応器中に通され、かつ、既に反応した生成物と逆混合される。
【0038】
同時に、反応した生成物が、連続的に混合混練機から除去される。反応しなかったモノマーは、残留物用脱気装置によって分離され、かつ、反応器に再び供給される。同時に、この残留物用脱気装置中で、ポリマーの熱的な後処理が実施される。
【0039】
重合が完了した後、生成物は、熱的に後処理されることができる。90℃より高い、有利には110℃より高い温度の場合、生成物中に含有された揮発性構成成分、例えば残留モノマー又は任意に使用された溶媒が除去されることができる。そのようにして取得されたモノマーは、任意に重合プロセスに返送されることができる。係る処理の仕方が、混練機技術にも問題なく、続いて行われる工程段階、例えばフラッシュ式脱気、脱気式混練機又は脱気式押出機によって実行可能である。
【0040】
一般にモノマー相に加えられる重合開始剤として、通常用いられるラジカル開始剤、特に過酸化物及びアゾ化合物が利用される。場合によっては、様々な開始剤の混合物を使用することが好ましくあり得る。一般的に、使用量は、モノマー相を基準として0.1質量%〜5質量%の範囲にある。好ましくは、アゾ化合物、例えばアゾビスイソ酪酸ニトリル、アゾビス−(2,4−ジメチル)−バレロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(WAKO(R)V40)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル(WAKO(R)V30)又は過酸化物、例えばt−ブチルペルオクトエート、t−ブチルペルベンゾエート、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、モノクロロベンゾイルペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド、p−エチルベンゾイルペルオキシド、ジ(t−ブチル)ペルオキシド(DTBP)、ジ(t−アミル)ペルオキシド(DTAP)、t−ブチルペルオキシ−(2−エチルヘキシル)カーボネート(TBPEHC)及び高温で分解する更なる過酸化物がラジカル開始剤として使用される。高い温度で分解するラジカル開始剤は、85〜150℃の温度範囲で1時間の半減期を有する化合物と解される。
【0041】
形成された重合体の分子量の調整のために、モノマー相に、通常は、1種以上の自体公知の鎖調節剤8質量%までが加えられることができる。例えば以下のものが挙げられる:メルカプタン、例えばn−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン又はメルカプトエタノール;チオグリコール酸又はチオグリコール酸エステル、例えばチオグリコール酸イソオクチルエステル又はチオグリコール酸ラウリルエステル;脂肪族塩素化合物;エノールエーテル又はα−メチルスチレン二量体。
【0042】
分枝状重合体が製造されるべき場合、モノマー相はまた、約1質量%まで多官能性モノマー、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼンを含有してよい。
【0043】
有利にはペレットの形態における、本発明による塊状重合体は、有利には、顔料及び任意に更なる添加剤とコンパウンド化して顔料調製物とされる。コンパウンド化は、有利には押出によって行われる。生成物として、そのように高い割合の顔料を含有するペレットが製造され、該ペレットは、バインダー及び更なる塗料構成成分とコーティング組成物中に組み込まれることができる。そのために、ペレットはこれらの他の構成成分と一緒にアルカリ性水性媒体中で溶解される。この溶液は、水性塗料として使用可能である。ペレットは、20質量%〜80質量%の顔料を含有してよい。これらの顔料は、それに関して制限を課すものではなく、例えばカーボンブラック、有機顔料又は鉱物質顔料であってよい。
【0044】
これらの顔料調製物は、主として水性塗料配合物中での使用のために開発されていたが、ペレットは、溶媒ベースの塗料系、ハイソリッド系又は100%系でも使用されることができる。
【0045】
このように製造された塗料配合物にとって幅広い適用分野が生まれる。有利には、これらは、例えば金属、プラスチック、セラミック又は木材の表面のコーティングにおいて使用される。例は、とりわけ、建築塗料、船舶塗料又はコンテナ塗料及び特に自動車ラッカーにおける顔料調製物の使用である。
【0046】
下記に挙げる例は、本発明をより具体的に説明するものであるが、しかしながら、本発明を、ここに開示された特徴に限定するには相応しくない。
【0047】

粒度
下記にd50値として記している粒度及び粒度分布は、クールター LS 13 320を用いてISO 13320−1に従い0.04μm〜2000μmの測定範囲で測定した。平均粒度d50は、粒子体積を基礎とする、粒径の中央値と呼ばれる;すなわち、全粒子体積の50%が、平均粒度より小さく、かつ、50%が平均粒度より大きい。
【0048】
さらに、2000μmより大きい粒度を、Retsch Technology社のCamsizerを用いてISO/FDISm13322−2.2:2006(E)に従い測定した。
【0049】
ガラス転移温度の測定
ガラス転移温度Tgの測定は、ISO 11357−2に従った示差走査熱量測定(DSC)によって行う。
【0050】
溶解時間の測定
例の合成若しくは比較例の合成の未変化の生成物の溶解時間の測定を、25質量%の水溶液により行った。そのために、攪拌ユニットとして、4cmの長さの磁気攪拌棒及びIKA Labortechnik(R)社の磁気攪拌機(加熱攪拌プレート)、RCTタイプを使用した。広口ガラス250mlに、溶媒(水)70.6g、アンモニア溶液2.2g(水中で25%)及びDMEA溶液2.2g(水中でジメチルエチルアミン25%)を装入した。ポリマー試料(25g)を、攪拌(レベル9)下で添加した。直ぐにふたを閉じる。外観検査に際して固体物質若しくは浮遊物質がもはや確認できなくなったら即座に、磁気攪拌機を止め、時間を記録し、そして試料を外観的に評価する。
【0051】
粘度
溶解時間を調べるための試験において調製したバインダー溶液の粘度ηを、DIN 53018に従い、コーンプレート型粘度計によりThermo Elektron社のHaake RS1を用いて測定した。回転体として、35,002mmの直径を有するC35/2 Tiコーンを用いる。測定は、剪断速度Dに応じて行った。
【0052】
塗料特性を決定するための試験法
バインダー溶液(純粋な樹脂6%)を、溶解機を用いて1500rpmにて2分間、それぞれの塗料系に組み込んだ。2成分(K)PUR系の場合に硬化剤を組み込む時間は、2000rpmにて2分間であった。そうして仕上がった塗料を、100μmの(NFD)4面式フィルムアプリケーターを用いてガラスプレートに塗布した。完全に乾燥した後、バインダーの相溶性を目視により判断した。相溶性の尺度は、フィルムの透明度及び表面品質(平滑性、へこみ形成等)である。
【0053】
例B1、組成物1(連続的な塊状重合)
メチルメタクリレート51.5質量%、エチルアクリレート31質量%、アクリル酸9質量%、ヒドロキシプロピルメタクリレート6.5質量%、シクロヘキシルメタクリレート2質量%、脂肪族化合物中で50質量%のt−ブチルペルアセテートの溶液(AKZO社のTRIGONOX F−C50)0.9質量%及びイソオクチルチオグリコレート(TGIO)2.8質量%から成る混合物を、例えばWO2006/034875に記載されるようなList社の逆混合式混練反応器に連続的に供給し、かつ同時に、反応したポリマーを反応器から連続的に取り出す。反応器中の内部温度は110℃であり、その際、変動してよい温度値は10℃までである。平均滞留時間は約40分である。生成物を、適した容器に集め、引き続き粉砕した。
【0054】
例B2、組成物2(連続的な塊状重合)
スチレン52.1質量%、エチルアクリレート30質量%、アクリル酸13質量%、ヒドロキシエチルメタクリレート4.9質量%、脂肪族化合物中で50質量%のt−ブチルペルアセテートの溶液(AKZO社のTRIGONOX F−C50)1.35質量%及びイソオクチルチオグリコレート(TGIO)3.3質量%から成る混合物を、例えばWO2006/034875に記載されるようなList社の逆混合式混練反応器に連続的に供給し、かつ同時に、反応したポリマーを反応器から連続的に取り出す。反応器中の内部温度は130℃である。平均滞留時間は約20分である。ポリマー溶融物を、反応器の直後に、溶融管を介して140℃でList社の脱気式混練機に移し、そこで120℃の温度で、反応しなかった残留モノマーをポリマーから除去する。生成物を、適した容器に集め、引き続き粉砕した。
【0055】
例3、組成物3(連続的な塊状重合)
メチルメタクリレート54質量%、エチルアクリレート31質量%、アクリル酸9質量%、ヒドロキシプロピルメタクリレート6質量%、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート(TBPEH)0.45質量%、ジ−t−アミルペルオキシド(DTAP)0.45質量%及びイソオクチルチオグリコレート(TGIO)2.6質量%を、例えばWO2006/034875に記載されるようなList社の逆混合式混練反応器に連続的に供給し、かつ同時に、反応したポリマーを反応器から連続的に取り出す。反応器中の内部温度は120℃であり、その際、変動してよい温度値は15℃までである。平均滞留時間は約30分である。ポリマー溶融物を、反応器の直後に、溶融管を介して130℃でList社の脱気式混練機に移し、そこで130℃の温度で、反応しなかった残りのモノマーをポリマーから除去する。脱気後、ポリマー溶融物を、1.5mmの多孔板が備え付けられた、BKG GmbH社の水中ペレタイザーCompact 120にさらに直接導く。ペレットは、引き続き乾燥器Master 300中で乾燥させ、適した容器に集め、そして粒度を−上記のように−測定する。
【0056】
例B4、組成物4(連続的な塊状重合)
MMA49.5質量%、エチルアクリレート26質量%、アクリル酸18質量%、ヒドロキシプロピルメタクリレート6.5質量%、脂肪族化合物中で50質量%のt−ブチルペルアセテートの溶液(AKZO社のTRIGONOX F−C50)0.9質量%及びイソオクチルチオグリコレート3.0質量%(TGIO)から成る混合物を、例えばWO2006/034875に記載されるようなList社の逆混合式混練反応器に連続的に供給し、かつ同時に、反応したポリマーを反応器から連続的に取り出す。反応器中の内部温度は110℃である。平均滞留時間は約20分である。生成物を、適した容器に集め、引き続き粉砕した。
【0057】
例B5、組成物5(連続的な塊状重合)
MMA48質量%、エチルアクリレート30.5質量%、アクリル酸13質量%、スチレン2質量%、ヒドロキシプロピルメタクリレート6.5質量%、脂肪族化合物中で50質量%のt−ブチルペルアセテートの溶液(AKZO社のTRIGONOX F−C50)0.9質量%及びイソオクチルチオグリコレート(TGIO)2.8質量%から成る混合物を、例えばWO2006/034875に記載されるようなList社の逆混合式混練反応器に連続的に供給し、かつ同時に、反応したポリマーを反応器から連続的に取り出す。反応器中の内部温度は110℃である。平均滞留時間は約20分である。ポリマー溶融物を、反応器の直後に、溶融管を介して130℃でList社の脱気式混練機に移し、そこで120℃の温度で、反応しなかった残りのモノマーをポリマーから除去する。生成物を、適した容器に集め、引き続き粉砕した。
【0058】
参考例R1、組成物3(懸濁重合)
InterMIG攪拌機及び還流冷却器が備え付けられた1トンのVAステンレス鋼反応器に、脱イオン水460kgを装入し、攪拌機を毎分70回転の回転速度に調整し、かつ、40℃の外部温度に加熱する。ポリアクリル酸750gを添加し、かつ、攪拌によって溶解する。貯蔵コンテナ中で、メチルメタクリレート265kg(53質量%)、エチルアクリレート155kg(31質量%)、アクリル酸50kg(10質量%)、ヒドロキシプロピルメタクリレート30kg(6質量%)、t−ブチルペルピバレート5kg(脂肪族化合物中で25質量%;TRIGONOX 25−C75)及びイソオクチルグリコレート14kg(TGIO)を混合し、かつ、攪拌下で均質化する。モノマー主要液を、約800mbarの減少させた反応器内圧によって、15分の継続時間にわたって吸引し、かつ、貯蔵コンテナを脱イオン水20kgで後洗浄する。タンクを、20分の継続時間にわたって約800mbarの圧力で真空引きし、引き続き窒素で満たす。内部温度を45℃に制御し、かつ、4時間にわたって漸次的に65℃に高める。熱の発生が途切れたら重合を終える。バッチを冷却する。フィルターヌッチェ(孔径1mm)によって、母液をポリマービーズから分離し、かつ、30℃で乾燥する。粒度を上記のように測定する。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料調製物を製造するためのバインダーにおいて、該バインダーが、水性アルカリ性溶液に可溶性であり、該バインダーが、もっぱら以下のモノマー:
− アルキル基が炭素原子1〜8個から成ることを特徴とする1種以上のメタクリレート及び/又はスチレン及び/又はα−メチルスチレン40質量%〜70質量%、
− アルキル基が炭素原子1〜8個から成ることを特徴とする1種以上のアクリレート20質量%〜40質量%、
− アルキル基がヒドロキシ官能基を有することを特徴とする1種以上の(メタ)アクリレート1質量%〜15質量%
及び
− アクリル酸及び/又はメタクリル酸1質量%〜17質量%
から製造されており、かつ、該バインダーが、連続的な塊状重合により製造されていることを特徴とする、顔料調製物を製造するためのバインダー。
【請求項2】
前記バインダーが、水性アルカリ性溶液に可溶性であり、前記バインダーが、もっぱら以下のモノマー:
− アルキル基が炭素原子1〜8個から成ることを特徴とする1種以上のメタクリレート40質量%〜60質量%、
− アルキル基が炭素原子1〜8個から成ることを特徴とする1種以上のアクリレート20質量%〜40質量%、
− スチレン及び/又はα−メチルスチレン0質量%〜10質量%、
− アルキル基がヒドロキシ官能基を有することを特徴とする1種以上の(メタ)アクリレート1質量%〜15質量%
− アクリル酸及び/又はメタクリル酸1質量%〜17質量%
から製造されており、かつ、前記バインダーが、連続的な塊状重合により製造されていることを特徴とする、請求項1記載の顔料調製物を製造するためのバインダー。
【請求項3】
前記バインダーが、もっぱら以下のモノマー:
− アルキル基が炭素原子1〜8個から成ることを特徴とする1種以上のメタクリレート45質量%〜60質量%、
− アルキル基が炭素原子1〜8個から成ることを特徴とする1種以上のアクリレート25質量%〜35質量%、
− スチレン及び/又はα−メチルスチレン0質量%〜5質量%、
− アルキル基がヒドロキシ官能基を有することを特徴とする1種以上の(メタ)アクリレート4質量%〜10質量%
− アクリル酸及び/又はメタクリル酸7質量%〜15質量%
から製造されていることを特徴とする、請求項2記載の顔料調製物を製造するためのバインダー。
【請求項4】
前記バインダーが、水性アルカリ性溶液に可溶性であり、前記バインダーが、もっぱら以下のモノマー:
− アルキル基が炭素原子1〜8個から成ることを特徴とする1種以上のメタクリレート0質量%〜10質量%、
− アルキル基が炭素原子1〜8個から成ることを特徴とする1種以上のアクリレート20質量%〜40質量%、
− スチレン40〜60質量%、
− アルキル基がヒドロキシ官能基を有することを特徴とする1種以上の(メタ)アクリレート1質量%〜15質量%
及び
− アクリル酸及び/又はメタクリル酸1質量%〜17質量%
から製造されており、かつ、前記バインダーが、連続的な塊状重合により製造されていることを特徴とする、請求項1記載の顔料調製物を製造するためのバインダー。
【請求項5】
個々に:
− 炭素原子1〜8個より成るアルキル基を有するメタクリレートが、メチルメタクリレートであり、
− 炭素原子1〜8個より成るアルキル基を有するアクリレートが、エチルアクリレートであり、
− スチレンであり、
− ヒドロキシ官能基を有するアルキル基を有する(メタ)アクリレートが、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート又はヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであり、及び
− アクリル酸
であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の顔料調製物を製造するためのバインダー。
【請求項6】
前記バインダーが、少なくとも10T、かつ、最大で50Tの分子量Mwを有することを特徴とすることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の顔料調製物を製造するためのバインダー。
【請求項7】
前記重合を、混練機中で連続的に実施し、前記モノマー混合物が、溶媒不含であり、かつ、前記ポリマーを、前記重合に直接続けてペレット化することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のバインダーを製造するための方法。
【請求項8】
前記ペレット、顔料及び任意の添加剤からの押出によって、顔料調製物を製造することを特徴とする、請求項7に記載の方法によって製造されたペレットの使用。
【請求項9】
前記調製物を、バインダー及び更なる塗料構成成分とともにアルカリ性水性媒体に溶解又は分散させることを特徴とする、請求項8記載のペレットの使用。
【請求項10】
水性塗料としての、請求項9記載の溶液又は分散液の使用。

【公表番号】特表2013−511578(P2013−511578A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539246(P2012−539246)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064957
【国際公開番号】WO2011/061004
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】