説明

水性アルキドの種に基づく小粒子ラテックス組成物

小さい粒度を特徴とする水性ラテックスポリマー分散液組成物を開示する。この組成物は、スルホネート基を含むアルキド樹脂の種の存在下における1種又はそれ以上のエチレン性不飽和モノマーの乳化重合によって調製される。ラテックス分散液を基材とする被覆は、フィルム形成性、光沢度、硬度における改善された利点、低残留モノマー含量、より低い黄変度及び低VOCを有する。平均粒度60〜140nmのラテックス分散液は、ラテックス粒子生長用の種として少ない比率(すなわち、約2〜15重量%)の水性アルキド樹脂分散液を用いることによって調製される。水性アルキド樹脂は、5−ソジオスルホ−イソフタル酸及び不飽和又は飽和脂肪酸を基材とする。こうして得られたラテックスルポリマー分散液は、改良されたフィルム形成性及び低残留モノマー含量を有する。ラテックスは、外部融合助剤の不存在下で室温において透明な硬質フィルムを形成できる。さらに、得られたフィルムは本質的に無黄変である、従って、本発明のラテックスは種々の被覆用のゼロ又は低VOCペイント中に配合できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒度の小さい水性ラテックスポリマー分散液組成物に関し、さらに詳しくは、スルホネート基を含むアルキド樹脂を種として用いるエチレン性不飽和モノマーの乳化重合によって調製された組成物に関する。これらの分散液を基材とする被覆の利点には、フィルム形成性、光沢度、硬度の改良、低残留モノマー量、黄変度の低下(アルキド樹脂含量が20%超の他のアルキル樹脂/アクリル樹脂ハイブリッドに比較した場合)及びより低い揮発性有機化合物含量(VOC)がある。
【背景技術】
【0002】
ますます厳しくなるVOC規制により、被覆(コーティング又は塗料)業界は、建築用、自動車用及び工業用のメインテナンスを含む被覆型からの溶剤放出を減少させる新規技術を探求することが促された。水性被覆は、環境に優しく且つ溶剤系被覆と同様に基体(substrate)に簡便に適用できるので、特に重要である。
【0003】
アルキド樹脂エマルジョン乳濁液及びアクリルラテックスは、被覆業界において使用されている2つの最も一般的な水性技術である。アルキド樹脂エマルジョンを基材とする被覆は、光沢度、はけ塗適性、風乾時間、流動&レベリング、ハイディング・パー・コート(hiding per coat)、表面摩擦抵抗、サンド・アビリティー(sand ability)、及び密着性に関して、ラテックスを基材とする被覆(又は塗料)よりも優れている。アルキド樹脂エマルジョンに比較してアクリルラテックスが優れている点は、速乾性、耐久性、無黄変、耐脆化性及びノンチョーキング(non−chalking)などである。2つの被覆型それぞれの最良の性質の理想的なバランスで得ることは、当業界で進歩であることが明白であろう。
【0004】
アルキド樹脂に関する前記利点の他に、アルキド樹脂改質ラテックスを基材とする被覆は、一般に低いガラス転移温度(Tg)を有するアルキド部分の存在による改良されたフィルム形成性を有する。しかし、アルキド樹脂の混和はまた、軟質フィルム(吸塵及び不良な耐ブロッキング性を引き起こす)、高残留モノマー含量(不飽和基への連鎖移動による不完全な乳化重合によって引き起こされる)、及び黄変のような重大な問題を引き起こしている。従って、低残留モノマー含量、低黄変度及び硬質フィルム形成能を有するアルキド樹脂改質ラテックスが依然として必要とされている。
【0005】
アルキド樹脂エマルジョンは一般に、界面活性剤及びホモジナイザーを用いる精巧な乳化方法によって調製される。この方法は、高温高圧下で実施されることが多い。5−ソジオスルホイソフタル酸(SSIPA)のようなスルホモノマーの共重合によって調製されたアルキド樹脂は、水性アルキド樹脂の調製に代わるものを提供する。このようなアルキド樹脂は水中に簡便に分散させることができ、例えば、特許文献1及び2に開示されている。
【0006】
特許文献3は、スルフェート及びスルホネート基を含むポリエステル又はポリアミドから選ばれた安定剤の存在下においてエチレン性不飽和モノマーの水性乳化重合によって安定なポリマー分散液を製造する方法を開示している。このようなポリエステル又はポリアミドは、ジカルボン酸、その無水物又はそのエステルとジオール又はジアミンとの縮合によって得られ、約2,000〜約100,000の平均分子量を有する。
【0007】
特許文献4は、2段乳化重合法による、粒度の小さいポリエステル/アクリルハイブリッドラテックスの調製を開示している。この方法において、第1段階では、比較的親水性の第1段階を得るために水分散性ポリエステル又はポリエステル−アミドの存在下においてより親水性のアクリルモノマーが重合される。第1段階で形成されたラテックスの「種」に疎水性モノマーを続いて添加することによって、より親水性の第1段階が粒子表面にあるようにラテックスの逆転が起こる。
【0008】
直前の2つの特許文献は、線状ポリエステルの存在下におけるポリエステル/アクリルハイブリッドラテックスの調製を教示している。これらのポリエステルは、ポリマー組成物中に脂肪酸若しくはエステル又は天然の油を含まないので、アルキドポリマーとは異なる。従って、これらは一般により高分子量、より高Tg及びより低い疎水性を有し、これらはいずれも、改良されたラテックスフィルム形成性を得るという点では不都合である。
【0009】
次の2つの特許文献は、アルキド樹脂/ラテックスハイブリッドポリマー分散液の調製に関する。
【0010】
特許文献5は、風乾アルキド樹脂とアクリル酸樹脂とが水中に分散されたハイブリッドエマルジョンを開示している。アルキド樹脂は、約0〜約90%の油長を有すると考えられ、pKaが約3未満の酸性基の塩であるイオン性基を結合している。この特許文献は、最初に粒度152〜488nmのアルキド樹脂エマルジョンをアクリルモノマーと混合してプレエマルジョンを生成することによる、アルキド樹脂/アクリル樹脂の比が50:50のハイブリッドエマルジョンの調製を例示している。次いで、プレエマルジョンは高圧乳化装置中でさらに乳化される。アルキド樹脂/アクリル樹脂混合物の得られたプレエマルジョンを次に80℃に加熱し、回分乳化重合法のために開始剤を添加する。こうして調製されたハイブリッドエマルジョンは、176〜540nmの平均粒度を有する。
【0011】
特許文献6は、少なくとも1種のペンダントスルホネート官能基を有する水性アルキド樹脂の存在下において重合された少なくとも1種の潜在的酸化官能性(latent oxidatively functional)モノマーの生成物を含む潜在的酸化官能性改質アルキド樹脂を開示している。この特許は、乳化重合の過程においてアクリルモノマーをアルキド樹脂分散液に供給することによって生成されるアクリル改質スルホン化アルキド樹脂分散液の調製に関する例を含んでいる。アルキド樹脂含量は、20〜50%の範囲であり、得られるアクリル改質アルキド樹脂分散液は146〜371nmの範囲の平均粒度を有していた。
【0012】
直前の2つの特許文献は、ラテックス及びアルキド樹脂の総乾燥重量に関して約20〜50重量%の量でアルキド樹脂を用いたアルキド樹脂/ラテックスハブリッド分散液の調製に関する。これらのハイブリッドエマルジョンの報告された粒度は、前述のように比較的大きいことがわかる。これらの特許文献は、例えば約60〜140nmの小さい粒度を有するハイブリッドエマルジョンの調製には取り組んでいない。実際に、これらの特許文献において報告されたデーターに基づき、当業者ならば、より低レベル(20重量%未満)のアルキド樹脂を乳化重合に用いれば、報告された200〜500nmよりも大きい粒度を有するラテックスが得られることを予想する。これは、SSIPAアルキド樹脂がポリマー界面活性剤として働くとしたら、他の全てが等しい場合には、界面活性剤の使用量が少ないほど、形成されるラテックス粒子は大きいことが当業界でよく知られているためである。SSIPAアルキド樹脂が種として働くとしたら、使用する種ガが少ないほど得られる各粒子は大きくなることが同様に予想されるであろう。
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,378,757号
【特許文献2】米国特許第5,530,059号
【特許文献3】米国特許第5,277,978号
【特許文献4】米国特許第6,001,922号
【特許文献5】PCT WO 95/02019
【特許文献6】米国特許第6,262,149号
【発明の開示】
【0014】
これらの予想とは反して、本発明者らは、種(seed)として使用する約2〜15重量%の水性アルキド樹脂を、約85〜98重量%の1種又はそれ以上のエチレン性不飽和ラテックスモノマーと反応させる場合には(量はいずれもアルキド樹脂及びラテックスの総固形分重量に基づく)、得られるラテックス分散液粒子は約60〜140nmの平均粒度を有することを発見した。別の側面においては、10重量%未満の水性アルキド樹脂を対応する重量%のラテックスモノマーと反応させて、平均粒度が約70〜約130nm、又は約80〜約110nmのラテックス分散液粒子が得られる。
【0015】
この発見は、学問的に重要なだけではない。比較的小さい平均粒度を有するラテックス分散液は、光沢度及びフィルム形成性、フィルム透明度、並びに多孔質基質透過率に関して有利であるので、非常に望ましい。本件の「特許請求の範囲」に記載された本発明に係る分散液は、比較的小さい粒度、低い残留モノマー含量、低下した黄変度及び低いVOCを硬質フィルム形成能と共に有するアルキド樹脂/アクリル樹脂ハイブリッドラテックス分散液を提供する。
【0016】
一側面において、本発明は、アルキド樹脂及びラテックスの総重量に基づき、2〜15重量%のスルホン化水性アルキド樹脂を種として用いて乳化重合することよって生成された、約60〜140nmの平均粒度を有する水性ラテックス分散液に関する。この種は、ラテックス乳化重合の技術に熟練した者に知られるように、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと反応させる。
【0017】
別の側面において、本発明は、
(a)(a)及び(b)の総固形分重量に基づき、約2〜15重量%の
i.グリコール及び/又はポリオール約10〜50重量%、
ii.一塩基性脂肪酸若しくは脂肪酸エステル、天然油、又は部分鹸化油約10〜80重量%、
iii.ジ−及び/又はポリ−カルボン酸又は無水物約5〜40重量%、並びに
iv.スルホモノマー、又は少なくとも1つのスルホモノマー基を含むスルホモノマー付加物約5〜15重量%(重量%はスルホモノマー又はスルホモノマー基の重量に基づく)
の重縮合反応生成物を含んでなる水性アルキド樹脂((i)、(ii)、(iii)及び(iv)の重量%は(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の総重量に基づく);
(b)(a)及び(b)の総固形分重量に基づき、約85〜98重量%の1種又はそれ以上のエチレン性不飽和モノマー;さらに
(c)触媒量の遊離基乳化重合用開始剤
の乳化重合反応生成物を含んでなる、約60〜140nmの平均粒度(average particle size)を有する水性ラテックス分散液組成物に関する。この組成物において、成分(b)及び(c)は、乳化重合プロセス中に(a)の水性分散液中に、好ましくは連続的に供給される。
【0018】
こうして得られたラテックスポリマー分散液は、粒度が小さいだけでなく、改良されたフィルム形成性及び低残留モノマー含量を有する。ラテックスは、外部融合助剤の不存在下において室温で透明な硬質フィルムを形成できる。さらに、得られるフィルムは本質的に無黄変である。従って、これらは、光沢及び半光沢被覆用途のためにゼロ−又は低−VOCペイント中に配合できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者らは意外にも、少量(約2〜15重量%又は5〜10重量%)のスルホネート基を含むアルキド樹脂の存在下におけるエチレン性不飽和モノマーの乳化重合によって、平均粒度の小さい(例えば、140nm未満の)水性ラテックス分散液を調製できることを見出した。小さいラテックス粒子の形成は、平均粒度約15〜50nm、又は約20〜40nmのアルキド樹脂の水性分散液を、ラテックス粒子生長のための基礎又は種として用いることによって達成する。
【0020】
こうして得られたラテックスポリマー分散液は、小さい粒度を有するだけでなく、改良されたフィルム形成性及び低残留モノマー含量を有する。ラテックスは、外部融合助剤の不存在下において室温で透明な硬質フィルムを形成できる。さらに、得られるフィルムは本質的に無黄変である。本発明のラテックス分散液は、乳化重合用の安定剤としてよく使用される界面活性剤を添加せずに合成できる。これは、改良された耐水性を有する被覆用途に有利である。
【0021】
従って、一側面において、本発明は、
(a)(a)及び(b)の総重量に基づき、約2〜約15重量%のスルホン化アルキド樹脂;
(b)(a)及び(b)の総重量に基づき、約85〜約98重量%の1種又はそれ以上のエチレン性不飽和モノマー;並びに
(c)触媒量の遊離基乳化重合用開始剤
の乳化重合反応生成物を含んでなる水性ラテックス分散液組成物を提供する。この組成物において、成分(b)及び(c)は乳化重合プロセス中に(a)の水性分散液中に供給される。
【0022】
本発明のスルホン化アルキド樹脂は、
i.1種又はそれ以上のグリコール又はポリオール約10〜約50重量%、
ii.一塩基性脂肪酸、一塩基性脂肪酸エステル、天然油、又は部分鹸化油の1種又はそれ以上約10〜約80重量%、
iii.ジカルボン酸若しくはその無水物又はポリカルボン酸若しくはその無水物の1種又はそれ以上約5〜約40重量%、並びに
iv.スルホモノマー又は少なくとも1つのスルホモノマー基を含むスルホモノマー付加物の1種又はそれ以上約5〜約15重量%(重量%はスルホモノマーの重量に基づく)
の重縮合反応生成物を含んでなることができる((i)、(ii)、(iii)及び(iv)の重量%は(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の総重量に基づく)。
【0023】
別の実施態様において、本発明の水性ラテックス分散液組成物は、約60〜140nmの平均粒度を有し、
(a)(a)及び(b)の総固形分重量に基づき、約2〜15重量%の
i.グリコール及び/又はポリオール約10〜約50重量%、
ii.一塩基性脂肪酸若しくは脂肪酸エステル、天然油、又は部分鹸化油約10〜約80重量%、
iii.ジ−及び/又はポリ−カルボン酸又は無水物約5〜約40重量%、並びに
iv.スルホモノマー又は少なくとも1つのスルホモノマー基を含むスルホモノマー付加物約5〜約15重量%(重量%はスルホモノマー又はスルホモノマー基の重量に基づく)
の重縮合反応生成物を含んでなる水性アルキド樹脂((i)、(ii)、(iii)及び(iv)の重量%は(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の総重量に基づく);
(b)(a)及び(b)の総固形分重量に基づき、約85〜98重量%の1種又はそれ以上のエチレン性不飽和モノマー;さらに
(c)触媒量の遊離基乳化重合用開始剤
の乳化重合反応生成物を含む。この組成物において、成分(b)及び(c)は、乳化重合プロセス中に(a)の水性分散液中に、好ましくは連続的に供給される。
【0024】
本明細書の開示において使用する用語「平均粒度」又は「粒度」は、最も一般的な粒度指標:以下の詳述する、Polymer Laboratories(Amherst,MA)から入手できるPL−PSDA粒度分布分析器によって測定される粒度分布の(又は容積モード直径)最大を意味する。さらに、粒度は、最大又は主ピークを意味し、これは粒度分布中に存在する唯一のピークであってもなくてもよい。1個より多いピークの存在は一般に、二峰性又は多峰性粒度分布を意味する。主ピークが総粒度分布の少なくとも70%に相当するのが好ましい。
【0025】
他の側面において、(a)の百分率が約3〜10%であり且つ(b)の百分率が約97〜90%であるか、又は(a)の百分率が5〜8%であり且つ(b)の百分率が95〜92%である。水性ラテックス分散液の固形分は、約25〜60重量%、又は約35〜55%、又は約40〜50%である。
【0026】
水性アルキド樹脂の合成に使用する成分(ii)の脂肪酸、脂肪酸エステル又は油は、不飽和、飽和又はそれらの混合物であることができる。
【0027】
成分(a)は、撹拌機、蒸気ジャケット付き分縮器、Dean−Starkトラップ、水凝縮器及び窒素注入口を装着した反応器中で反応体(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び、場合によっては、触媒量の酸触媒を接触させることによって調製できる。次いで、温度を徐々に200〜240℃に上昇させ、水を回収する。反応は、所望の酸価(例えば、5〜20mgKOH/g)が得られるまで続けさせる。得られたアルキド樹脂は、そのまま、又は固形分30〜70%の水性分散液として単離できる。分散液は、約60〜90℃において反応器に適当な量の水を徐々に添加することによって、又は別の容器中で温水(例えば、60〜80℃)に高温アルキド樹脂(例えば、80〜200℃)を添加することによって調製できる。
【0028】
前記方法以外のSSIPAアルキド樹脂の好ましい製造方法は2段法である。この方法においては、第1段階でネオペンチルグリコール(NPG)及びSSIPAを反応させることによって、又は別の反応器中のマスターバッチとしてNPG/SIP付加物を調製する。NPG/SIP付加物の調製方法に関する記載は、例えば、米国特許第6,444,781号に記載されており、その開示全体を引用することによって本明細書中に組み入れる。こうして調製されたNPG/SIP付加物は、そのまま又は水中固形分90%として単離できる。次いで、この付加物を、前記1段法に従って成分(i)、(ii)及び(iii)と共に樹脂合成用の反応体として使用する。NPG/SIP付加物の調製に必要なNPG(ジオール)及びSSIPA(スルホモノマー)の量は、前記アルキド樹脂組成物中の成分(i)〜(iv)の一部として考慮に入れなければならない。
【0029】
本発明の水性ラテックスポリマー分散液は、攪拌装置を装着した反応器中で成分(a)のアルキド樹脂又はその水性分散液(固形分30〜70%)を適当な量の水と混合して、稀薄アルキド樹脂溶液を生成することによって調製する。次いで、反応混合物を、遊離基乳化重合に適当な温度(例えば、熱開始剤を使用するものの場合には約70〜90℃、レドックス開始剤の場合には約55〜65℃)に加熱する。攪拌したアルキド樹脂分散液に、開始剤(c)の溶液及び純粋なエチレン性不飽和モノマー(b)の混合物を2〜4時間の間に同時に供給する。添加後、残留モノマー含量を低減させるために少量の追加開始剤、好ましくはレドックス系を「チェイサー」として続いて添加する。この「チェイサー」工程は一般に、40〜60℃において30〜60分間実施する。最終ラテックス生成物中の未反応モノマーは500ppm未満であるのが望ましい。
【0030】
従って、本発明の別の側面は、スルホン化アルキド樹脂の水性分散液を調製して、種粒子を形成し;そしてスルホン化アルキド樹脂種粒子の存在下で1種又はそれ以上のエチレン性不飽和モノマーを重合して、水性ラテックス分散液を得る工程を含んでなる水性ラテックス分散液の調製方法である。この方法において、スルホン化アルキド樹脂は、スルホン化アルキド樹脂及び1種又はそれ以上のエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づき約2〜15重量%の量で供給する。
【0031】
さらに別の側面において、本発明は、
I.反応器中で成分(a)と水とを混合して、稀薄アルキド樹脂分散液を生成し;
II.反応混合物の温度を、熱開始剤を用いる反応に関して約70〜90℃に、又はレドックス開始剤を用いる反応に関しては約55〜65℃に上昇させ;
III.開始剤(c)の溶液及びエチレン性不飽和モノマー(b)の混合物を2〜4時間にわたって同時に供給し;そして
IV.場合によっては、追加量の開始剤を添加して、反応をさらに30〜60分間継続させて、反応の完了を確実にする
工程を含む、水性ラテックス分散液を調製するための遊離基乳化重合法に関する。
【0032】
前記方法においては、乳化重合プロセスをより効果的に開始するために工程IIIの開始前に反応混合物に追加量の開始剤(分解促進剤)を添加することが多い。さらに、乳化重合中の反応混合物のpHを調整するために、開始剤供給材料溶液に炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムのような塩基(緩衝剤)を添加することが多い。
【0033】
工程IIIにおいては純粋なモノマー混合物の代わりにモノマープレエマルジョンを使用することができる。モノマープレエマルジョンは、水中で成分(b)を界面活性剤と混合することによって調製する。適当な界面活性剤としては、DISPONIL FES 993(Cognis Corp. Ambler,PAから入手可能なラウリルエーテル硫酸ナトリウム)、ASEROSOL TR 70(CYTEC Industries,West Paterson、NLから入手可能なビストリデシルスルホコハク酸ナトリウム)、及びHITENOL BC−1025(Montello Inc,Tulsa,OKから入手可能なポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアンモニウムスルフェート)が挙げられる。
【0034】
2段階モノマー供給はまた、当業界で一般的に行われているように「コア−シェル」構造を有するラテックスの生成に使用できる。この場合、2つのモノマー供給は連続的に実施する。2つのモノマー供給は一般に、硬質相(高Tg)及び軟質相(低Tg)として設計される。これらの2つのモノマー供給は、第2のモノマー供給材料を第1のモノマー供給材料に好ましくは連続的に添加し、第1のモノマー供給材料中の得られる混合物を反応混合物に同時に添加して、傾斜ポリマー組成を有するラテックスを生成する「粉体供給」法によっても実施できる。用語「傾斜ポリマー組成」は、粉体供給法において、モノマー供給材料組成が連続的に変化し、それによって、ポリマー分子中の第2のモノマー供給材料からのモノマーの比率が経時的に次第に高くなるという事実を意味する。
【0035】
代表的な開始剤(熱開始剤又はレドックス開始剤)としては、過酸化水素、パーオキシ二硫酸カリウム若しくはアンモニウム、ジベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0036】
前記開始剤をレドックス系に用いる場合には、それらは還元剤及び場合によっては触媒と組み合わせて使用する。
【0037】
適当な還元剤は、重合速度を増加させるものであり、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸及びそれらの混合物が挙げられる。
【0038】
適当な触媒は、重合速度を増加させ且つ前記還元剤と一緒に反応条件下で重合開始剤の分解を促進する化合物である。
【0039】
適当な触媒としては、遷移金属化合物、例えば、硫酸鉄(II)アンモニウム六水和物、塩化第一鉄、硫酸第二銅、塩化第二銅、酢酸コバルト、硫酸第一コバルト及びそれらの混合物が挙げられる。
【0040】
本発明の水性ラテックス分散液の粒度は、アルキド樹脂比率を調整することによって制御できる−アルキド樹脂比率が高いほど、ラテックス粒子は小さい。乳化重合用の種として使用するアルキド樹脂分散液の平均粒度は約15〜50nmであり、得られるラテックスは約60〜140nmである。
【0041】
ラテックスは、エーテルアルコール及びエステルアルコールのような一般的な融合助剤の不存在下で室温において透明な硬質フィルムを形成できる。
【0042】
特に断らない限り、本明細書に記載した測定には、粒度分布分析器、Polymer Laboratories(Amherst,MA)から入手可能なモデルPL−PSDAを用いたが、以下の詳述するように他の測定方法も当業者に知られている。Polymer Laboratories Ltd,Essex Road,Churdh Stretton,Shropshire SY6 6AX、UKによって供給されるPL−PSDA Operating Manual全体を、引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0043】
本明細書中に記載したPL−PSDAに基づく粒度測定において、粒度は、20〜2000nmのカラムを装着したPolymer Labs PSDA分析器、2ml/分の流量、Polymer Labs有標溶離剤の移動相及び254nmにおけるUV検出を用いて流体力学的分別クロマトグラフィーによって測定した。ニトロベンゼンスルホン酸をフローマーカーとして用いた。サンプルは、有標溶離剤10ml中にラテックス20mgを分散させ、2μmのフィルターに通して濾過することによって調製した。得られた溶液の20μlのサンプルをカラムに注入した。得られたクロマトグラムからPolymer Labs有標ソフトウェアを用いて粒度分布を計算した。機器は、22、50、102、343、512、701及び993nmのDuke PS粒度標準に対して較正した。
【0044】
流体力学的分別クロマトグラフィーにおいて、保持時間は、球形粒子の場合には粒子の直径に比例する、流体力学容量の関数である。保持時間と流量との関係は、一連のDuke粒度標準を測定することによって検量する。機器は外部粒度標準に対して較正し且つサンプルは標準と同じ実験条件下で用いるので、測定された粒度は流量、カラム型などのような因子とは無関係である。粒度の較正は、標準の保持期間に二次方程式、d(t)を適合させることによって行う。
【0045】
カラムの広がりは、Duke標準のそれぞれに分割Pearson−7ピークを適合させることによって較正する。次いで、得られたピーク幅を二次方程式に適合させて、広がりを粒度の関数とする(w(t))。
【0046】
d(t)及びw(t)がわかれば、下記式を解析することによって粒度分布を計算できる:
c(t)=∫p(t)d(t)w(t)dt
[式中、c(t)=測定されたクロマトグラム及びp(t)=微分容積粒度分布]。
【0047】
計算された粒度分布は、微分容積分布、又は
【0048】
【数1】

【0049】
[式中、r=粒径]
である。
【0050】
ソフトウェアにより、使用者は、計算に使用する最大及び最小粒径を選択でき、又はソフトウェアに直径範囲を選択させることができる。直径範囲が、解析に「クロマトグラムの重要部分」を使用しないように選択されるならば、得られる粒度分布が影響される。「クロマトグラムの重要部分」とは、粒子が基線の上側で検出されたクロマトグラムの部分を意味する。従って、全ての場合のおいて、クロマトグラムの重要部分が全て計算に用いられるように最大及び最小直径を選択する。
【0051】
分布中に極小を有する分布と定義される多峰性分布に関しては、有標ソフトウェアは、粒度分布を複数のモードの粒度分布に分割する。各モードの容積モード直径又は平均直径は、そのモード内のdv/dr分布の最大として計算される。モードの形状はこのパラメーターに関係しない。
【0052】
別の粒度測定法は、動的光散乱に基づく。この方法は、例えば、Microtrac UPA 150及びUPA 350(両者とも、Microtrac,Inc.(Montgomeryville,PA)から入手可能)によって使用する。本明細書の実施例においては、PL−PSDAから得られた結果を比較するために、Microtrac UPA 150も用いていくつかのサンプルを測定した。一般に、50nm未満の粒度は、Microtrac UPA 150では検出されず、2つの方法の結果の間には若干の差異もあった。例えば、実施例4において調製されたラテックスはPSDSでは107nmを示し、Microtracでは115nmを示した。また、実施例13のラテックスはPSDAでは96nmを、Microtracでは86nmを示した。粒度測定技術におけるこれらの相違は公知である。このような粒度測定は全体的でないこと並びに妥当な許容誤差は使用装置及び試験されるポリマー粒子の粒度によって±5と見なされることが一般に了解されている。
【0053】
従って、本発明の水性ラテックス分散液組成物において、水性ラテックス分散液は一般に水中に分散された粒子として存在する。粒子は一般に球形である。粒子は、構造化粒子又は非構造化粒子であることができる。構造化粒子としては、コア/シェル粒子及び傾斜粒子(gradient particle)が挙げられるがこれらに限定されない。コア/シェルポリマー粒子はまた、多葉形、ピーナッツシェル、どんぐり形、又はラズベリー形で調製できる。このような粒子においては、コア部分が粒子総重量の約20〜約80重量%を構成し且つシェル部分が粒子総重量の約80〜約20重量%を構成するのがさらに好ましい。
【0054】
水性ラテックス分散液の平均粒度は、約60〜約140nm、又は約70〜約110nm、又は140nm未満、又は110nm未満の範囲であることができる。粒子は一般に球形である。
【0055】
本発明に係るハイブリッド樹脂のアクリル樹脂部分のガラス転移温度(Tg)は、約100℃以下であることができる。本発明の好ましい実施態様において、周囲温度におけるフィルム形成が望ましい場合には、ガラス転移温度は好ましくは約70℃未満、又は約0〜60℃であることができる。
【0056】
本発明の水性ラテックス分散液は、スルホン化水性アルキド樹脂を種粒子として用いて少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを重合することによって調製する。乳化重合は低粘度における高分子量のポリマーの調製を可能にするので、本発明では乳化重合法を用いる。重合は、1段又は多段供給として行うことができる。
【0057】
スルホン化水性アルキド樹脂
本発明の水性ラテックス分散液に用いるためのスルホン化水性アルキド樹脂は、任意の水散逸性、水分散性又は水希釈性(すなわち、水中に分散させることができる)アルキド樹脂を含む、公知の少なくとも1種のペンダントスルホネート官能基を有する任意の水性アルキド樹脂であることができる。このようなアルキド樹脂の例は、米国特許第5,378,757号及び第5,530,059号に記載されており、これらの特許をいずれも、引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0058】
一般に、スルホン水性アルキド樹脂は、一塩基性脂肪酸若しくは脂肪酸エステル、又は天然油、部分鹸化油;グリコール又はポリオール;ポリカルボン酸;及びスルホモノマー又は少なくとも1つのスルホモノマー基を含むスルホモノマー付加物を反応させることによって調製できる。
【0059】
一塩基性脂肪酸、脂肪酸エステル又は天然の部分鹸化油は好ましくは、下記式(I)、(II)及び(III)から選ばれる:
【0060】
【化1】

【0061】
【化2】

【0062】
【化3】

【0063】
式(I)、(II)及び(III)において、Rは飽和又は不飽和C8〜C20アルキル基である。より詳細には、Rは以下の不飽和C17アルキル基の1つである。
【0064】
【化4】

【0065】
【化5】

【0066】
【化6】

【0067】
一塩基性脂肪酸若しくは脂肪酸エステル又は天然の部分鹸化油は、脂肪酸又は油をポリオールと反応させることによって調製できる。適当な油の例としては、ひまわり油、菜種油、脱水ひまし油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、魚油、アマニ油、オイチシカ油、大豆油、及びキリ油、動物性グリース、ひまし油、ラード、パーム核油、ピーナッツ油、紫蘇油、ベニハナ油、牛脂油、クルミ油などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。単独の又は油の成分としての脂肪酸の適当な例としては、牛脂酸、大豆酸、ミリスチン酸、アマニ酸、クロトン酸、バーサチック酸、ココナッツ酸、牛脂油脂肪酸、ロジン酸、ネオデカン酸、ネオペンタン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、綿実酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0068】
グリコール又はポリオールは好ましくは、脂肪族、脂環式及びアリールアルキルグリコールから選ばれる。グリコールの適当な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチル−ヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−テトラメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、p−キシレンジオール、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、1,10−デカンジオール、水素化ビスフェノールAなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
ポリオールの適当な例としては、トリメチロールプロパン(TMP)、ペンタエリトリトール(PE)、トリメチロールエタン、エリトリトール、トレイトール、ジペンタエリトリトール、ソルビトール、グリセリンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、ポリオールは、トリメチロールプロパン(TMP)又はペンタエリトリトール(PE)である。
【0070】
アルキド樹脂の多酸(ジカルボン酸又はトリカルボン酸)及び一官能価酸(モノカルボン酸)成分は、アルキド樹脂の形成に使用される公知に任意の多酸又は一官能価酸であることができる。ジカルボン酸は、例えば、イソフタル酸、フタル酸若しくは無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、テトラクロロフタル酸無水物、ドデカン二酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、無水マレイン酸、フマル酸、無水コハク酸、コハク酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、グルタル酸などであることができる。好ましくは、ジカルボン酸はイソフタル酸、無水フタル酸、又はフタル酸である。トリカルボン酸は、例えば、トリメリット酸無水物であることができる。一官能価酸はまた、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、t−ブチル安息香酸及びブタン酸であることができる。
【0071】
スルホモノマー付加物のスルホモノマーは、芳香核に結合した−SO3M基[式中、Mは、水素又は例えばNa+、Li+、K+、Ca2+、Cu2+、Fe2+又はFe3+のような金属イオンである]を含む二官能価又は一官能価モノマーである。二官能価モノマー成分としてのスルホモノマーは、−SO3M基[式中、Mは前に定義した通りである]を含むジカルボン酸(又はその誘導体)であることができる。−SO3M基が結合できる芳香核の適当な例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ジフェニル、オキシジフェニル、スルホニル−ジフェニル及びメチレンジフェニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
特に良好な結果は、二官能価モノマーがスルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホフタル酸、4−スルホ−ナフタレン−2,7−ジカルボン酸又はそれらの誘導体のナトリウム塩である場合に得られる。より好ましくは、二官能価モノマーは、5−ソジオスルホイソフタル酸又はその誘導体、例えば、5−ソジオスルホイソフタル酸ジメチルである。他の好ましい二官能価モノマーは、リチウム5−スルホイソフタル酸、ジメチルリチウム5−スルホイソフタレート、カリウム5−スルホイソフタル酸及びジメチルカリウム5−スルホイソフタレートである。
【0073】
芳香核に結合した−SO3M基を含む他の有効な二官能価モノマーとしては、式IV:
【0074】
【化7】

【0075】
[式中、Xは三価芳香族炭化水素基であり、Yは二価芳香族炭化水素基であり、R’は水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、M’は水素、Na+、Li+又はK+である]
の芳香族スルホン酸又はそれらの各エステルの金属塩が挙げられる。式(IV)の好ましいモノマーの例としては、4−ソジオスルホフェニル−3.5−ジカルボメトキシベンゼンスルホネート、4−リチオスルホフェニル−3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホネート及び6−ソジオスルホ−2−ナフチル−3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホネートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
芳香核に結合した−SO3M基を含むさらに他の有効な二官能価モノマーとしては、式(V):
【0077】
【化8】

【0078】
[式中、R”は水素、炭素数1〜8のアルキル基又はフェニルであり、M”は水素、K+、Na+又はLi+である]
のスルホジフェニルエーテルジカルボン酸又はそのエステルの金属塩が挙げられる。好ましいモノマーの例としては、ジメチル5−[4−(ソジオスルホ)フェノキシ]イソフタレート、ジメチル5−[4−(ソジオスルホ)フェノキシ]テレフタレート及び5−[4−(ソジオスルホ)フェノキシ]イソフタル酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このようなモノマーのその他の例は、米国特許第3,734,874号に開示されており、この特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0079】
有用なイオン含有アルキド樹脂を得るために、水分散性のために選ばれる金属スルホネートの型及び量を変化させることができる。反応体の総重量に基づき、わずか2重量%のアルキド樹脂組成物でも、かなりの水混和性をあたえるが、少なくとも3%が好ましい。水溶性アルキド樹脂には、20重量%もの金属スルホネートを配合できる。しかし、感水性の影響を打ち消すための実際的上限は15%、好ましくは10%である。
【0080】
好ましい金属スルホネートとしては、5−ソジオスルホイソフタル酸、ジメチル5−ソジオスルホイソフタレート、リチウム5−ソジオイソフタル酸、ジメチルリチウム5−ソジオイソフタレート、カリウム5−スルホイソフタル酸、ジメチルカリウム5−ソジオイソフタレート、3−ソジオスルホ安息香酸などが挙げられる。
【0081】
場合によっては、ポリオールと反応させてポリオール(例えば、ジオール)スルホモノマー付加物を生成できる、少なくとも1個のスルホネート基を含むスルホモノマーは、少なくとも3個のヒドロキシル基を含むポリオールと反応できる少なくとも1個のスルホネート基を含む一官能価スルホモノマーであることができる。一官能価スルホモノマーは好ましくは、以下の群のスルホモノマーから選ばれる:
【0082】
【化9】

【0083】
[式中、X’はCH2、SO2又はOであり、M”’はアルカリ金属又はアルカリ土類金属である]。
【0084】
二官能価スルホモノマーをポリオールと反応させることによってポリオールスルホモノマー付加物を調製する場合には、ポリオールは好ましくはジオールである。ジオールの適当な例には前述のものがあるが、好ましいもののいくつかは以下のジオールである。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,3−ブタンジオール、水素化ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール及びネオペンチルグリコール。
【0085】
好ましい工程に従って脂肪酸若しくは脂肪酸エステル又は天然油若しくは部分鹸化油と反応される量のポリオールの他に、また、一官能価スルホモノマーからのスルホモノマー付加物の調製に使用されるポリオールの他に、追加量のポリオール又は他の分岐剤、例えばポリカルボン酸を用いて、水性アルキド樹脂の分子量及び分岐を増大させることができる。これらの分岐剤は好ましくは、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、グリセリン、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸及びトリメチロールプロパンから選ばれる。
【0086】
ハイブリッドラテックス中においてアルキド樹脂が反応性フィルム形成性(filming)助剤として(酸化カップリングによる)働き且つ架橋ポリマーフィルム中に組み込まれるためには、アルキド樹脂は多少限定された油長を有する−長油、中油又は短油であるのが好ましい。限定された油長又は油分は一般に、アルキド樹脂組成物中においてアルキド樹脂の総重量に基づき約20〜約90重量%である。「長」油アルキド樹脂は、アルキド樹脂の総重量に基づき約60〜90重量%の油長又は油分を有する。「中」油アルキド樹脂は、アルキド樹脂の総重量に基づき約40〜60重量%の油分を有する。「短」油アルキド樹脂は、アルキド樹脂の総重量に基づき約20〜40重量%の油長又は油分を有する。
【0087】
エチレン性不飽和モノマー
水性ラテックス分散液のアクリル部分は、前述のようにして、スルホン化水性アルキド樹脂を種として用いて少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーの遊離基重合によって調製できる。ラテックスポリマーの調製に使用できる適当なエチレン性不飽和モノマーとしては、以下のものの1つ又はそれ以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソプレン、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、トリメチロールプロピルトリアクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、グリシジルメタクリレート、カルボジイミドメタクリレート、C1〜C18アルキルクロトネート、マレイン酸ジ−n−ブチル、α若しくはβ−ビニルナフタレン、ジ−オクチルマレエート、メタクリル酸アリル、マレイン酸ジ−アリル、マロン酸ジ−アリル、メトキシブテニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシブテニルメタクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルエチレンカーボネート、エポキシブテン、3,4−ジヒドロキシブテン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メタクリルアミド、アクリルアミド、ブチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ブタジエン、ビニルエステルモノマー、ビニル(メタ)アクリレート、イソプロペニル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート、エチルホルムアミド、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、3,4−ジ−アセトキシ−1−ブテン、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、及びアジピン酸モノビニル、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−(2−メタクリロイルオキシ−エチル)エチレン尿素並びにメタクリルアミドエチルエチレン尿素。その他のモノマーは、The Brandon Associates,2dn edtion,1992 Merrimack,New Hampshire及びPolymers and Monomers,the 1966−1997 Catalog,Polyscience,Inc.,Warrington,Pennsylvania,U.S.Aに記載されている。
【0088】
水性ラテックス
本発明の水性ラテックス分散液は、少なくとも1つのペンダントスルホネート官能基を有する水性アルキド樹脂の水性分散液を種として用いて少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを重合することによって調製する。
【0089】
水性ラテックス分散液を製造する重合法はまた、開始剤、還元剤又は触媒を必要とする場合がある。適当な開始剤としては、過硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキサイド、硫酸アンモニウム若しくは硫酸アルカリ、ジ−ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブテロニトリル、ベンゾイルパーオキサイドなどのような汎用の開始剤が挙げられる。
【0090】
適当な還元剤は、重合速度を増加させるものであり、例えば亜硫酸水素ナトリウム、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸及びそれらの混合物が挙げられる。
【0091】
適当な触媒は、重合反応条件下で重合開始剤の分解を促進し、それによって重合速度を増加させる化合物である。適当な触媒には、遷移金属化合物及び乾燥剤がある。このような触媒の例としては、硫酸第一鉄七水和物、塩化第一鉄、硫酸第二銅、塩化第二銅、酢酸コバルト、硫酸第一コバルト及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
場合によっては、陰イオン性又は非イオン性乳化剤のような汎用の界面活性剤又は界面活性剤の組合せを補助安定剤又は補助界面活性剤として、本発明のハイブリッドラテックスの懸濁又は乳化重合による調製に使用できる。好ましい界面活性剤の例としては、アルカリ若しくはアンモニウムアルキルスルフェート、アルキルスルホン酸、又は脂肪酸、オキシエチル化アルキルフェノール、又は陰イオン性若しくは非イオン性界面活性剤の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。より好ましい界面活性剤モノマーは、HITENOL HS−20(日本のDKS International,Inc.から入手可能なポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアンモニウムスルフェート)である。適当な界面活性剤の一覧は、以下の専門書において得られる:McCutcheon’s Emulsifiers & Detergents,North American Edition and International Edition,MC Publishing Co.,Glen Rock,N.J.,1993。
【0093】
一般に、ハイブリッドラテックスのアルキド樹脂部分は、ラテックスの総固形分の約2〜15重量%、好ましくは約3〜12重量%又は約5〜10重量%に相当するのに対し、ハブリッドラテックスのアクリル樹脂部分は対応する残り、すなわち、一般にラテックスの総固形分の約85〜98重量%、又は約88〜97重量%又は約90〜95重量%に相当する。このようなハイブリッドラテックスはさらに被覆組成物中に使用できる。
【0094】
本発明の被覆組成物は、本発明の水性ラテックス分散液を含み、例えば米国特許第4,698,391号、第4,737,551号及び第3,345,313号(これらの特許はいずれも、引用することによってその全体を本明細書中に組み入れる)のいずれかに開示されたような公知方法によって調製できる。このような被覆組成物の例としては、例えば、建築用被覆、メインテナンス被覆、工業用被覆、自動車用被覆、織物コーティング、インキ、接着剤並びに紙、木材及びプラスチック用の被覆が挙げられる。本発明の被覆組成物は、溶剤含量が著しく低く、25重量%未満〜わずか1重量%であるか、又はゼロVOC含量ですらある。ハイブリッド樹脂の水性アルキド樹脂部分がアルキド樹脂の望ましい性質を持ち続けながら、樹脂のアクリル樹脂部分がハブリッドアルキド樹脂の硬度及び耐久性を改善する。本発明の被覆組成物は、高光沢度、速乾性並びに優れた耐酸性及び耐アルカリ性を有する被覆を生成する。
【0095】
被覆組成物は、公知方法を用いて(例えば、金属パネル上に3〜4milの液状被覆組成物を噴霧被覆し、且つ150℃の強制空気炉中で30分間加熱することによって)支持体に塗布し且つ硬化させることができる。基体(substrate)は、木材、紙、ポリエステルフィルム、例えばポリエチレン及びポリプロピレン、金属、例えばアルミニウム及びスチール、ガラス、ウレタンエラストマー、下塗り(被覆)基体などのような任意の一般的な基体であることができる。本発明の被覆組成物は、室温で(周囲硬化)、高温で(熱硬化)硬化させることもできるし、あるいは光化学的に硬化させることもできる。
【0096】
本発明の被覆組成物はさらに、被覆添加剤を含むことができる。このような被覆添加剤の例としては、1種又はそれ以上のレベリング、レオロジー及び流れ調整剤、例えば珪素樹脂、フルオロカーボン樹脂又はセルロース樹脂;増量剤;反応性融合助剤、例えば米国特許第5,349,026号(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載されたもの;可塑剤;艶消し剤;顔料湿潤及び分散剤及び界面活性剤;紫外線(UV)吸収剤;UV安定剤;色味付け顔料;着色剤;脱泡剤及び消泡剤;沈澱防止、垂れ防止及び増粘剤;皮張り防止剤;浮き色防止及び色別れ防止剤;殺生物剤、殺真菌剤及びカビ駆除剤;腐蝕防止剤;増粘剤;又は融合助剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような添加剤の具体例は、Raw Materials Index(the National Paint & Coatings Association(1500 Rhode Island Avenue,N.W.,Washington,D.C.20005)によって発行)に記載されている。このような添加剤及び乳化重合の方法の更なる例は、米国特許第5,371,148号に記載されており、この特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0097】
艶消し剤の例としては、合成シリカ(Davison Chemical Division of W.R.Grace & Companyから商品名SYLOIDとして入手可能);ポリプロピレン(Hercules Inc.から商品名HERCOFLATとして入手可能);及び合成シリケート(J.M.Huber Corporationから商品名ZEOLEXとして入手可能)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
分散剤及び界面活性剤の例としては、ナトリウムビス(トリデシル)スルホスクシネート、ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウムスルホスクシネート、ナトリウムジヘキシルスルホスクシネート、ナトリウムジシクロへキシルスルホスクシネート、ジアミルナトリウムスルホスクシネート、ナトリウムジイソブチルスルホスクシネート、二ナトリウムイソデシルスルホスクシネート、スルホコハク酸の二ナトリウムエトキシル化アルコール半エステル、二ナトリウムアルキルアミドポリエトキシスルホスクシネート、テトラ−ナトリウムN−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホスクシナメート、二ナトリウムN−オクタスルホスクシナメート、硫酸化エトキシル化ノニルフェノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
粘度、懸濁及び流れ調整剤の例としては、ポリアミノアミドホスフェート、ポリアミンアミドの高分子量カルボン酸塩及び不飽和脂肪酸のアルキレンアミン塩(これらは全て、BYK Chemie U.S.A,から商品名ANTI TERRAとして入手可能である)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。その他の例としては、ポリシロキサンコポリマー、ポリアクリレート溶液、セルロースエステル、ヒドロキシエチルセルロース、疎水変性ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアミドワックス、ポリオレフィンワックス、カルボキシメチルセルロース、アンモニウムポリアクリレート、ナトリウムポリアクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキシド、グアーガムなどが挙げられる。増粘剤の他の例としては、メチレン/エチレンオキシド会合性増粘剤及び水溶性カルボキシル化増粘剤、例えばUCAR POLYPHOBE(Union Carbide)が挙げられる。
【0100】
いくつかの有標消泡剤(proprietary antifoaming agent)が市販されており、その例としては例えば以下のものが挙げられる:BUBREAK(Buckman Laboratories Inc.)、BYK(BYK Chemie,U.S.A.)、FOAMASTER及びNOPCO(Henkel Corp./Coating Chemicals)、DREWPLUS(Drew Industrial Division of Ashland Chemical Company)、TRYSOL及びTROYKYD(Troy Chemical Corporation)及びSAG(Union Carbide Corporation)。
【0101】
殺真菌剤、カビ駆除剤及び殺生物剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
4,4−ジメチルオキサゾリジン、3,4,4−トリメチルオキサゾリジン、改質メタ硼酸バリウム、カリウムN−ヒドロキシ−メチル−N−メチルジチオカルバメート、2−(チオシアノ−メチルチオ)ベンゾチアゾール、カリウムジメチルジチオカルバメート、アダマンタン、N−(トリクロロメチルチオ)フタルイミド、2,4,5,6−テトラクロロ−イソフタロニトリル、オルトフェニルフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、デヒドロ酢酸、ナフテン酸銅、オクタン酸銅、有機砒素、トリブチル錫オキシド、ナフテン酸亜鉛及び8−キノリン酸銅。
【0102】
U.V.吸収剤及びU.V.安定剤の例としては、とりわけ、置換ベンゾフェノン、置換ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン、及びヒンダードベンゾエート(American Cyanamid Companyから商品名CYASORB UVとして入手可能)、並びにジエチル−3−アセチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−ホスホネート、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン及びレゾルシノールモノベンゾエートが挙げられる。
【0103】
溶剤及び融合助剤の例は公知であり、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリメチルペンタンジオールモノ−イソブチレート、エチレングリコールモノ−オクチルエーテル、ジアセトンアルコール、TEXANOL(登録商標)エステルアルコール(Eastman Chemical Company)など。このような溶剤及び融合助剤ははまた、反応性溶剤及び融合助剤、例えば、フタル酸ジアリル、SANTOLINK XI−100(Monsanto製のポリグリシジルアリルエーテル)、並びに米国特許第5,349,026号及び第5,371,148号(これらの特許を引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載されたその他のものを含むことができる。
【0104】
本発明によって想定される被覆組成物への使用に適当な顔料は、表面被覆の技術における通常の技術を有する者によく知られた代表的な有機及び無機顔料、特にColour Index,3d Ed.,2d Rev.,1982(the Society of Dyers and Colourists及びthe American Association of Textile Chemists and Coloristsによって共同出版)に記載されたものである。例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
二酸化チタン、バライト、クレイ、若しくは炭酸カルシウム、CI Pigment White 6(二酸化チタン);CI Pigment Red 101(赤色酸化鉄);CI Pigment Yellow 42;CI Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4(銅フタロシアニン);CI Pigment Red 49:1;及びCI Pigment Red 57:1。フタロシアニンブルー、モリブデートオレンジ又はカーボンブラックのような着色剤もまた、本発明の被覆組成物に適当である。
【0105】
アルキド樹脂の比率とアクリルモノマーTgとの適切な組み合わせを用いると、本発明のラテックス分散液は、基体への被覆時に一般的な融合助剤又は有機溶剤を用いずに透明なフィルムを形成できる。これについては、実施例の項で更に説明する。実施例中で調製された全てのラテックス(実施例16及び17を除く)は、外部融合助剤の不存在下で室温において透明な非粘着性フィルムを形成する。得られるフィルムはまた、実施例中に記載するように、優れた光沢度及び硬度を有する。さらに。調製されたラテックスは全て、低残留モノマー含量(500ppm未満)を有する。
【0106】
さらに別の側面において、本発明の水性ラテックス分散液は、TiO2のような顔料及び1種又はそれ以上の添加剤、例えば中和剤、乾燥剤、脱泡剤、湿潤及び分散剤、レオロジー改質剤、流れ調整剤、増粘剤、光若しくは熱安定剤、殺生剤、又は腐蝕防止剤を添加することによってペイント中に配合できる。適当な添加剤の例は、Handbook of Coatings Additives,L.J.Calbo編;Marcel Dekker,Inc.;New York,New York;1987に記載されている。
【0107】
このようなペイントは、最初に水、顔料及び分散添加剤を単独又は他の添加剤と共に用いて顔料粉砕物を調製することによって調製できる。得られた顔料粉砕物を次に、ラテックス分散液、他の添加剤及び場合によっては追加の水と混合する。
【0108】
本発明は、前述の「本発明の詳細な説明」を参照することによって、また、そこに含まれる実施例によって理解できる。
【0109】
本発明は、特に断らない限り、特定の合成方法にも特定の配合物にも限定せず、従って、本明細書中の記載とは異なることができる。本明細書中の記載に用いる用語は、個々の実施態様を説明する目的でのみ用い、限定的な意味合いを持たないものとする。
【0110】
単数形は、前後関係からそうでないことが明白に指示されない限り、複数の指示対象を含む。「任意の」又は「場合によっては」は、「好ましい」及び「好ましくは」と同様に、その後に記載される事象又は状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味する。この記載は、その事象又は状況が起こる場合と、それが起こらない場合を共に含む。
【0111】
範囲は本明細書中では、約を前置した「一方の特定の値」から及び/又は約を前置した「もう一方の特定の値」までと表することができる。このような範囲が表される場合、「一方の特定の値」から及び/又は「もう一方の特定の値」までは別の実施態様であることを理解されたい。
【0112】
本明細書全体を通して使用する単位「phr」は、エチレン性不飽和モノマー百部当たりの部を意味するものと理解されたい。従って、例えば、種として使用する5phrのSSIPAアルキド樹脂は、アルキド樹脂及びアクリル樹脂の総重量が5(アルキド樹脂)+100(アクリル樹脂)=105(合計)に等しいので、アルキド樹脂/アクリル樹脂比4.8/95.2重量%に相当する。この変換法は、本願において所定の任意の重量%値を対応するphr値に変換するのに用いることができる。所定の任意の重量%値は、対応するphr値に相当するものと理解されたい。
【0113】
本明細書全体を通して、参考文献を引用する場合、本発明が関連する最新技術をより詳細に説明するために、これらの参考文献の開示全体を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【実施例】
【0114】
本発明をその好ましい実施態様の以下の実施例によって詳述するが、これらの実施例は説明のためにのみ記載するのであって、特に断らない限り、本発明の範囲を限定することを目的としない。
【0115】
実施例1:NPG/SIP付加物の調製
機械的撹拌機、蒸気ジャケット付き分縮器、Dean−Starkトラップ、水凝縮器及び窒素注入口を装着した3Lの3つ口丸底フラスコに、ネオペンチルグリコール(NPG)827.0g(7.95モル)、5−SSIPA 535.6g(2.00モル)、Fascat 4100(1.1g)及び水91.9gを装入した。混合物を140〜190℃で反応させ、留出物を回収した。2.3mg KOH/gの酸価が得られるまで、反応を続けた。得られた付加物を120℃に冷却し、そのまま単離した。固形分90%の付加物を得るために、水をさらに添加することもできる。
【0116】
実施例2:SSIPAアルキド樹脂1の調製
機械的撹拌機、蒸気ジャケット付き分縮器、Dean−Starkトラップ、水凝縮器及び窒素注入口を装着した500mL3つ口丸底フラスコに、ペンタエリトリトール(PE)21.52g(0.16モル)、トリメチロールプロパン(TMP)69.74g(0.52モル)、実施例1のNPG/SIP付加物(水中90%)164.00g、イソフタル酸(IPA)123.25g(0.74モル)、無水マレイン酸(MA)11.36g(0.12モル)、Pamolyn 200(一般名;Eastman Chemical Comapany,Kingsport,TNから入手可能)259.38g(0.89モル)及びFascat 4100 0.46gを装入した。反応温度を30分で徐々に150℃まで上昇させ、水留出物を回収した(12mL)。15mg KOH/gの酸価が得られるまで、反応を170℃で30分間、200℃で30分間、228℃で2時間続けさせた(凝縮液65mL)。得られた粘稠な樹脂を150℃に冷却させ、500gの攪拌水中にゆっくりと注いだ。混合を80〜90℃で1時間続けさせて、固形分45.5%の水性分散液を生成した。樹脂の分子量は、Mn2,001及びMw117,072と測定された。平均粒度は、16nm(約70%)及び93nm(約30%)と測定された。
【0117】
実施例3:SSIPAアルキド樹脂1を基材とするラテックス1の調製
実施例3は、乳化重合用の種として5phr(エチレン性不飽和モノマー100部当たりの部)のSSIPAアルキド樹脂1を用いた水性ラテックス分散液の調製を示す(アルキド樹脂/アクリル樹脂=4.8/95.2重量%)。使用したSSIPAアルキド樹脂は、固形分48%の実施例2の拡大バッチであった。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は30℃である。
【0118】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂1分散液(実施例2から;固形分48%)36.82g及び水445.26gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.80g、炭酸アンモニウム0.88g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.80g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル191.61g、アクリル酸n−ブチル154.84g、メタクリル酸7.07g及び連鎖移動剤イソオクチル3−メルカプトプロピオネート(IOMP)1.77gのモノマー混合物。反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマー混合物を次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体(oxidant):t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.27g及び水10.02g、2)還元体:ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)1.27g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.27g及びエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(EDTA,水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分ごとに3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度(PS)を測定した。固形分%:42.2%;PS:88nm。
【0119】
以下の実施例は、種としての5phrのSSIPAアルキド樹脂及び乳化重合用のモノマープレエマルジョンを用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は30℃である。
【0120】
実施例4:SSIPAアルキド樹脂1を基材とするラテックス2の調製
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂1分散液(実施例2;48%)36.65g及び水245.45gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.79g、炭酸アンモニウム0.88g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.79g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル190.71g、アクリル酸n−ブチル154.12g、メタクリル酸7.04g、界面活性剤DISPONIL FES 993(30%;Cognis Corp.,Ambler,PAから入手可能)5.86g、水195.80g及び連鎖移動剤IOMP 1.76gのモノマープレエマルジョン。反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマープレエマルジョンを次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.27g及び水10.02g、2)還元体:ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)1.27g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.27g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分ごとに3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.2%;PS:107nm。
【0121】
実施例5:3.5phr SSIPAアルキド樹脂1を基材とするラテックス3の調製
実施例5は、種としてのそれぞれ3.5phr(アルキド/アクリル=3.4/96.6重量%)、5.0phr(アルキド/アクリル=4.8/95.2重量%)及び7.5phr(アルキド/アクリル=7/93重量%)のSSIPAアルキド1及び乳化重合用のモノマープレエマルジョンを用いた、水性ラテックス分散液、ラテックス3、4及び5の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は30℃である。
【0122】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂1分散液(実施例2;固形分48%)26.24g及び水288.87gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.80g、炭酸アンモニウム0.89g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.80g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル193.36g、アクリル酸n−ブチル156.26g、メタクリル酸7.14g、界面活性剤AEROSOL TR 70(70%;CYTEC Industires,West Paterson,NJから入手可能)1.78g、水161.88g及び連鎖移動剤IOMP 1.78gのモノマープレエマルジョン。反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマープレエマルジョンを次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.28g及び水10.02g、2)還元体:d−イソアスコルビン酸(IAA)1.28g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.28g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において1時間かけて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.0%;PS:98nm;残留モノマー:11ppm。
【0123】
前記方法に従って、それぞれ5.0phr及び7.5phrのSSIPAアルキド樹脂1を用いてラテックス4及び5を調製し、それらの粒度を測定した。ラテックス4:100nm;ラテックス5:84nm。
【0124】
実施例6、7及び8はそれぞれ、一段(均一)法、2段(コア−シェル)法及び粉体供給(傾斜)法並びに乳化重合用SSIPAアルキド樹脂5phrを用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は30℃である。
【0125】
実施例6:SSIPAアルキド樹脂1を基材とするラテックス6の調製
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂1分散液(実施例2;固形分48%)36.82g及び水445.26gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.80g、炭酸アンモニウム0.88g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.80g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル191.61g、アクリル酸n−ブチル154.84g、メタクリル酸7.07g及び連鎖移動剤IOMP 1.77gのモノマー混合物。
【0126】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマープレエマルジョンを次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.27g及び水10.02g、2)還元体:d−イソアスコルビン酸(IAA)1.27g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.27g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において1時間かけて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度(PS)を測定した。固形分%:42.2%;PS:97nm;残留モノマー:4ppm。ラテックスから流延された透明なフィルムの光沢度:60°/20°=88/62。
【0127】
実施例7:SSIPAアルキド樹脂1を基材とするラテックス7の調製(2段法)
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂1分散液(実施例2;固形分48%)36.82g及び水445.26gを加えた。それとは別個に、4種の溶液をフラスコ中で調製した−1)過硫酸アンモニウム0.80g、炭酸アンモニウム0.88g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.80g及び水11.64gの分解促進剤溶液、3)メタクリル酸メチル115.81g、アクリル酸n−ブチル29.70g、メタクリル酸2.97g及び連鎖移動剤IOMP 0.74gの第1モノマー混合物、並びに4)メタクリル酸メチル75.86g、アクリル酸n−ブチル125.07g、メタクリル酸4.10g及び連鎖移動剤 IOMP 1.03gの第2モノマー混合物。
【0128】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。次いで、開始剤溶液及び第1モノマー混合物を反応釜に同時に供給した。開始剤の供給が210分間持続し、第1モノマー混合物の供給が117分間持続するように、供給速度を設定した。第1モノマー混合物の供給完了後、第2モノマー混合物を93分かけて供給した。開始剤及びモノマーの供給完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.27g及び水10.02g、2)還元体:d−イソアスコルビン酸(IAA)1.27g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.27g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において1時間かけて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.8%;PS:91nm。ラテックスから流延された透明なフィルムの光沢度:60°/20°=83/54。
【0129】
実施例8:SSIPAアルキド樹脂1を基材とするラテックス8の調製(粉体供給)
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂1分散液(実施例2;固形分48%)36.65g及び水285.69gを加えた。それとは別個に、4種の溶液をフラスコ中で調製した−1)過硫酸アンモニウム0.79g、炭酸アンモニウム0.88g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.79g及び水11.64gの分解促進剤溶液、3)メタクリル酸メチル115.27g、アクリル酸n−ブチル29.56g、メタクリル酸2.96g、界面活性剤TR 70 1.06g、、水66.74g及び連鎖移動剤IOMP 0.74gの第1モノマープレエマルジョン、並びに4)メタクリル酸メチル75.51g、アクリル酸n−ブチル124.49g、メタクリル酸4.08g、界面活性剤TR 70 1.46g、水92.17g及び連鎖移動剤 IOMP 1.02gの第2モノマープレエマルジョン。
【0130】
第2モノマープレエマルジョンが、攪拌第1モノマープレエマルジョン中に供給され、それが反応釜に同時に供給されるように反応を設定した。反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し且つ分解促進剤を添加した後、この合わさったモノマーの供給、第2モノマーの供給及び開始剤の供給を同時に開始した。各供給の供給時間は、210分であるように設定した。添加完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.27g及び水10.02g、2)還元体:d−イソアスコルビン酸(IAA)1.27g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.27g及びEDTA(水中1%)0.63g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において1時間かけて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.1%;PS:86nm。
【0131】
実施例9:飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂2の調製
機械的撹拌機、蒸気ジャケット付き分縮器、Dean−Starkトラップ、水凝縮器及び窒素注入口を装着した500mL3つ口丸底フラスコに、ネオペンチルグリコール(NPG)41.88g(0.40モル)、トリメチロールプロパン(TMP)48.66g(0.36モル)、NPG/SIP付加物(水中90%)78.50g、無水フタル酸(PA)79.92g(0.54モル)、無水マレイン酸(MA)20.76g(0.21モル)、ココナッツ油脂肪酸100.00g(0.48モル)及びFascat 4100 0.18gを装入した。反応温度を60分で徐々に130℃まで上昇させ、水留出物を回収した(12mL)。8mgKOH/gの酸価が得られるまで、反応を170℃で45分間、200℃で45分間、及び225℃で3時間続けさせた(凝縮液30.5mL)。得られた粘稠な樹脂を80℃に冷却させ、水(270g)を1時間かけて滴加して、固形分55.3%の水性分散液を生成した。樹脂の分子量はMn823及びMw2,153と測定された。平均粒度は13nm(約25%)及び39nm(約75%)と測定された。
【0132】
実施例10:SSIPAアルキド樹脂2を基材とするラテックス9の調製
実施例10は、乳化重合用の種として飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂2(実施例9)5phrを用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は25℃である。
【0133】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、アルキド樹脂2分散液(実施例9から;55.3%)31.96g及び水450.12gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.80g、炭酸アンモニウム0.88g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.80g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル181.71g、アクリル酸n−ブチル164.74g、メタクリル酸7.07g及び連鎖移動剤IOMP 1.77gのモノマー混合物。反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマー混合物を次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.27g及び水10.02g、2)還元体:ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)1.27g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.27g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分ごとに3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.5%;PS:104nm。ラテックスから流延された透明なフィルムの光沢度:60°/20°=88/70;Pendulum硬度:40〜45。
【0134】
同一方法及び組成を用いることによって、固形分50%のラテックスが同様に成功裡に調製された。それはPS 110nmを示した。
【0135】
実施例11:SSIPAアルキド樹脂2を基材とするラテックス10の調製
実施例11は、乳化重合用の種として飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂10phrを用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は25℃である。
【0136】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂2分散液(実施例9から;固形分55.3%)61.07g及び水437.20gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.76g、炭酸アンモニウム0.84g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.76g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル173.59g、アクリル酸n−ブチル157.38g、メタクリル酸6.75g及び連鎖移動剤IOMP 1.69gのモノマー混合物。反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマー混合物を次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した:1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.27g及び水10.02g、2)還元体:ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)1.27g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.27g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分ごとに3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.2%;PS:90nm。ラテックスから流延された透明なフィルムの光沢度:60°/20°=89/72;残留モノマー:6ppm。
【0137】
実施例12:SSIPAアルキド樹脂2を基材とするラテックス11の調製
実施例12は、乳化重合用の種及びモノマープレエマルジョンとして飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂2を5phr用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は30℃である。
【0138】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂2分散液(実施例9;固形分55.3%)31.81g及び水290.53gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した−1)過硫酸アンモニウム0.79g、炭酸アンモニウム0.88g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.79g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル190.71g、アクリル酸n−ブチル154.12g、メタクリル酸7.04g、界面活性剤TR 1.76g、水159.67g及び連鎖移動剤IOMP 1.76gのモノマープレエマルジョン。
【0139】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマープレエマルジョンを次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.27g及び水10.02g、2)還元体:ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)1.27g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.27g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分ごとに3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.0%;PS:108nm。ラテックスから流延された透明なフィルムの光沢度:60°/20°=88/70;Pendulum硬度:60〜65。
【0140】
実施例13:SSIPAアルキド樹脂2を基材とするラテックス12の調製
実施例13は、乳化重合用の種及びモノマープレエマルジョンとして飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂2を10phr用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は30℃である。
【0141】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、アルキド樹脂2分散液(実施例9から;固形分55.3%)60.80g及び水284.76gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.76g、炭酸アンモニウム0.84g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.76g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル182.23g、アクリル酸n−ブチル147.27g、メタクリル酸6.72g、界面活性剤TR 1.68g、水152.5g及び連鎖移動剤IOMP 1.68gのモノマープレエマルジョン。
【0142】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマープレエマルジョンを次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.27g及び水10.02g、2)還元体:ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)1.27g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.27g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分ごとに3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.2%;PS:96nm。
【0143】
実施例14:SSIPAアルキド樹脂2を基材とするラテックス13の調製
実施例14は、乳化重合用の種として飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂2を5phr用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は25℃である。
【0144】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂2分散液(実施例9から;固形分55.3%)31.96g及び水450.12gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.80g、炭酸アンモニウム0.88g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.80g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル191.61g、アクリル酸n−ブチル154.84g、メタクリル酸7.07g及び連鎖移動剤IOMP 1.77gのモノマー混合物。
【0145】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマー混合物を次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.27g及び水10.02g、2)還元体:ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)1.27g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.27g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分ごとに3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:41.8%;PS:109nm。
【0146】
実施例15:SSIPAアルキド樹脂2を基材とするラテックス14の調製
実施例15は、乳化重合用の種として飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂2を10phr用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は30℃である。
【0147】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂2分散液(実施例9から;固形分50%)67.54g及び水430.72gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.76g、炭酸アンモニウム0.84g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.76g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル183.05g、アクリル酸n−ブチル147.92g、メタクリル酸6.75g及び連鎖移動剤IOMP 1.69gのモノマー混合物。
【0148】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマー混合物を次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.22g及び水10.02g、2)還元体:ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)1.22g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.22g及びEDTA(水中1%)0.61g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分ごとに3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.4%;PS:99nm。
【0149】
実施例16:SSIPAアルキド樹脂2を基材とするラテックス15の調製
実施例16は、乳化重合用の種として飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂2を5phr用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は35℃である。
【0150】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂2分散液(実施例9から;固形分55.3%)31.96g及び水450.12gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.80g、炭酸アンモニウム0.88g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.80g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル203.10g、アクリル酸n−ブチル143.35g、メタクリル酸7.07g及び連鎖移動剤IOMP 1.77gのモノマー混合物。
【0151】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマー混合物を次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.27g及び水10.02g、2)還元体:ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)1.27g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.27g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分ごとに3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.3%;PS:119nm(約90%)及び46nm(約10%)。このラテックスから流延されたフィルムは、ひび割れした。
【0152】
実施例17:SSIPAアルキド樹脂2を基材とするラテックス16の調製
実施例17は、乳化重合用の種として飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂2を10phr用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は35℃である。
【0153】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂2分散液(実施例9から;固形分55.3%)61.07g及び水437.20gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.76g、炭酸アンモニウム0.84g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.76g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル194.02g、アクリル酸n−ブチル136.95g、メタクリル酸6.75g及び連鎖移動剤IOMP 1.69gのモノマー混合物。
【0154】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマー混合物を次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.22g及び水10.02g、2)還元体:ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)1.22g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.22g及びEDTA(水中1%)0.61g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分間隔で3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:41.8%;PS:103nm(約90%)及び40nm(約10%)。このラテックスから流延されたフィルムはわずかにひび割れした。
【0155】
実施例18:SSIPAアルキド樹脂2を基材とするラテックス17の調製
実施例18は、乳化重合用の種として飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂2を15phr(アルキド樹脂/アクリル樹脂=13/87重量%)用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は35℃である。
【0156】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂2分散液(実施例9から;固形分55.3%)87.69g及び水425.38gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.73g、炭酸アンモニウム0.81g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.73g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル185.73g、アクリル酸n−ブチル131.09g、メタクリル酸6.47g及び連鎖移動剤IOMP 1.62gのモノマー混合物。
【0157】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマー混合物を次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.16g及び水10.02g、2)還元体:ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)1.16g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.16g及びEDTA(水中1%)0.58g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分ごとに3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.3%;PS:93nm(約90%)及び42nm(約10%)。
【0158】
実施例19:SSIPAアルキド樹脂2を基材としたラテックス18の調製
実施例19は、乳化重合用の種として飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂2を5phr用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は30℃である。この実施例はまた、実施例5〜8に使用した量(0.3phr)とは対照的に、チェイサー中により低い比率(0.1phr)のIAAを使用することを示す。この比率に基づくラテックスは、時間が経っても無黄変であることがわかった。IAAは、時間が経つにつれてラテックスに黄変を引き起こすおそれがあることが知られている。
【0159】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂2分散液(実施例9から;固形分50%)35.52g及び水444.76gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.80g、炭酸アンモニウム0.88g及び水25.00gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.80g及び水12.53gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル192.54g、アクリル酸n−ブチル155.60g、メタクリル酸7.10g及び連鎖移動剤IOMP 1.78gのモノマー混合物。
【0160】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマー混合物を次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)0.36g及び水10.02g、2)還元体:d−イソアスコルビン酸(IAA)0.36g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.28g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分ごとに3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.8%;PS:111nm;残留モノマー:73ppm。
【0161】
実施例20:SSIPAアルキド樹脂2を基材とするラテックス19の調製
実施例20は、乳化重合用の種として飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂2を2phr(アルキド樹脂/アクリル樹脂=1.96/98.04重量%)を用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は30℃である。
【0162】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂2分散液(実施例9から;固形分50%)14.62g及び水455.16gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.82g、炭酸アンモニウム0.91g及び水25.00gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.82g及び水12.53gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル198.13g、アクリル酸n−ブチル160.11g、メタクリル酸7.31g及び連鎖移動剤IOMP 1.83gのモノマー混合物。反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液及びモノマー混合物を次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)0.37g及び水10.02g、2)還元体:d−イソアスコルビン酸(IAA)0.37g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.32g及びEDTA(水中1%)0.66g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分間隔で3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.9%;PS:135nm(約85%)及び65nm(約15%)。
【0163】
実施例21:SSIPAアルキド樹脂2を基材とするラテックス20の調製
実施例21は、乳化重合用の種及びレドックス開始剤系として飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂2を5phrを用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は30℃である。
【0164】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂2分散液(実施例9から;固形分50%)35.51g及び水411.87gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP),70%)1.01g及び水25.00gの開始剤溶液(酸化体)、2)d−アスコルビン酸(IAA)0.71g、炭酸アンモニウム0.71g及び水25.00gの還元体溶液、並びに3)メタクリル酸メチル198.13g、アクリル酸n−ブチル160.11g、メタクリル酸7.31g及び連鎖移動剤IOMP 1.83gのモノマー混合物。さらに、3種の溶液からなる分解促進剤も調製した。これらは、(a)水10.02g中tBHP 0.25g、(b)水10.02g中IAA 0.18g及び炭酸アンモニウム0.18g、並びに(c)硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.28g及びEDTA(水中1%)0.64g。
【0165】
反応釜中の反応混合物を65℃に加熱し、分解促進剤を添加した。開始剤溶液、還元態様液及びモノマー混合物を次に210分かけて反応釜に同時に供給した。供給の完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)0.36g及び水10.02g、2)還元体:d−イソアスコルビン酸(IAA)0.36g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.28g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分間隔で3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.1%;PS:123nm。残留モノマー:219ppm。
【0166】
実施例22:SSIPAアルキド樹脂2を基材とするラテックス21の調製(2段法)
実施例22は、種として飽和脂肪酸を基材とするSSIPAアルキド樹脂2を5phrを用い且つ乳化重合のために2段モノマー供給法を用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。アクリルモノマーの全体的Tgの計算値は30℃である。
【0167】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、SSIPAアルキド樹脂2分散液(実施例9から;固形分50%)35.52g及び水444.76gを加えた。それとは別個に、4種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.80g、炭酸アンモニウム0.89g及び水25.00gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.80g及び水12.53gの分解促進剤溶液、3)メタクリル酸メチル115.04g、アクリル酸n−ブチル13.07g、メタクリル酸2.61g及び連鎖移動剤IOMP 0.75gの第1モノマー混合物、並びに4)メタクリル酸メチル77.50g、アクリル酸n−ブチル142.52g、メタクリル酸4.49g及び連鎖移動剤 IOMP 1.03gの第2モノマー混合物。
【0168】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。次いで、開始剤溶液及び第1モノマー混合物を反応釜に同時に供給した。開始剤の供給が210分間持続し且つ第1モノマー混合物の供給が117分間持続するように、供給速度を設定した。第1モノマー混合物の供給完了後、第2モノマー混合物を93分かけて供給した。開始剤及びモノマーの供給完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)0.36g及び水10.02g、2)還元体:d−イソアスコルビン酸(IAA)0.36g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.28g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分間隔で3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.0%;PS:129nm。
【0169】
比較例1:SSIPAアルキド樹脂1を基材とするラテックス22の調製
比較例1は、乳化重合用の種及びモノマープレエマルジョンとしてSSIPAアルキド樹脂1を33.33phr(アルキド樹脂/アクリル樹脂=25/75重量%)を用いた水性ラテックス分散液の調製を示す。この比較例は、高い比率のSSIPAアルキド樹脂を用いる場合には、得られるラテックスは大きい粒度及び高残留モノマー含量を有することを示している。
【0170】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、前記SSIPAアルキド樹脂1分散液(実施例2から;固形分48%)191.93g及び水177.48gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.62g、炭酸アンモニウム0.69g及び水25.06gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.62g及び水10.18gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル90.11g、アクリル酸2−エチルヘキシル90.66g、スチレン90.11g、メタクリル酸5.53g、界面活性剤Hitenol BC 1025(25%,Montello Inc,Tulsa,OKから入手可能)16.58g、水175.52g及び連鎖移動剤IOMP 1.37gのモノマープレエマルジョン。
【0171】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。次いで、開始剤溶液及びモノマープレエマルジョンを210分かけて反応釜に同時に供給した。供給完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.00g及び水10.02g、2)還元体:d−イソアスコルビン酸(IAA)1.00g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.00g及びEDTA(水中1%)0.50g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において1時間かけて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.0%;PS:545nm(50%)及び58nm(50%);残留モノマー1657ppm。
【0172】
比較例2:SSIPAアルキド樹脂を基材とするラテックス23の調製
比較例2は、乳化重合用にSSIPAアルキド樹脂を用いずに、モノマープレエマルジョンを反応混合物に供給することによる水性ラテックス分散液の調製を示す。この比較例は、ラテックス粒子の生長を制御するためのSSIPAアルキド樹脂粒子が存在しない場合には、得られるラテックスは非常に大きい粒度を有することを示している。
【0173】
機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に、水296.87gを加えた。それとは別個に、3種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.83g、炭酸アンモニウム0.92g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.83g及び水11.64gの分解促進剤溶液、並びに3)メタクリル酸メチル200.02g、アクリル酸n−ブチル161.64g、メタクリル7.38g、界面活性剤TR 70 1.85g、水167.46g及び連鎖移動剤IOMP 1.85gのモノマープレエマルジョン。
【0174】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。次いで、開始剤溶液及びモノマープレエマルジョンを210分かけて反応釜に同時に供給した。供給完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.33g及び水10.02g、2)還元体:d−イソアスコルビン酸(IAA)1.33g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.33g及びEDTA(水中1%)0.66g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において1時間かけて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:43.2%;PS:667nm。
【0175】
比較例3:モノマープレエマルジョン用の界面活性剤としてSSIPAアルキド樹脂1を用いたラテックス24の調製
比較例3は、最初に界面活性剤としてSSIPAアルキド樹脂1(実施例2から;48%)を5phr用いてモノマーを乳化させ、次いで得られたモノマープレエマルジョンの5%を乳化重合用の種として用いることによる、水性ラテックス分散液の調製を示す。これは、界面活性剤を用いることによって最初にモノマープレエマルジョンを調製する公知の代表的な方法である。次いで、ラテックス粒子の生長を制御するために、少ない比率(例えば、5%)のプレエマルジョンを種として用いる。この比較例は、SSIPAを種としてではなくこのような方法のための界面活性剤として用いる場合には、小さい粒子を含むラテックスは得られないことを示している。
【0176】
モノマープレエマルジョンは、SSIPAアルキド樹脂1(実施例2から:固形分48%)36.82gの水199.89g中撹拌分散液にアクリル酸n−ブチル154.84g、メタクリル酸メチル191.61g、メタクリル酸7.07g及び連鎖移動剤IONP 1.77gを順次添加することによって調製した。得られたモノマープレエマルジョンの一部(29.60g)を、機械的撹拌機、水凝縮器、窒素注入口及び反応体供給管を装着した1L水ジャケット付き反応釜に装入した。それとは別個に、2種の溶液をフラスコ中で調製した。1)過硫酸アンモニウム0.80g、炭酸アンモニウム0.88g及び水24.01gの開始剤溶液、2)過硫酸アンモニウム0.80g及び水11.64gの分解促進剤溶液。
【0177】
反応釜中の反応混合物を85℃に加熱し、分解促進剤を添加した。次いで、開始剤溶液及びモノマー混合物を210分かけて反応釜に同時に供給した。供給完了後、反応混合物を60℃に冷却させ、その間に3種の溶液をチェイサーとして用いるために調製した。1)酸化体:t−ブチルヒドロパーオキサイド(tBHP)1.27g及び水10.02g、2)還元体:d−イソアスコルビン酸(IAA)1.27g及び水10.02g;並びに3)触媒:硫酸鉄(II)アンモニウム(水中1%)1.27g及びEDTA(水中1%)0.64g。次いで、触媒溶液を一度に添加し、酸化体溶液及び還元体溶液を60〜40℃において15分間隔で3回に分けて添加した。チェイサーの添加完了後、反応を30分間続けさせ、続いて温度を室温に低下させることによって反応を終了させた。次に、得られたエマルジョンを100メッシュのワイヤー・スクリーンに通して濾過し、その固形分%及び粒度を測定した。固形分%:42.0%;PS:297nm(21nm及び97nmに2つの小さいピークを有する)。
【0178】
本発明を、特にその好ましい実施態様に関して詳述したが、本発明の精神及び範囲内で変更及び変形が可能なことを理解されたい。特定の用語を使用するが、それは一般的且つ説明的意味でのみ用いるものであり、限定を目的とせず、本発明の範囲は添付した「特許請求の範囲」に記載されたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(a)及び(b)の総重量に基づき、約2〜約15重量%のスルホン化アルキド樹脂;
(b)(a)及び(b)の総重量に基づき、約85〜約98重量%の1種又はそれ以上のエチレン性不飽和モノマー;並びに
(c)触媒量の遊離基乳化重合用開始剤
の乳化重合反応生成物を含んでなり、成分(b)及び(c)が乳化重合プロセス中に(a)の水性分散液中に供給される、水性ラテックス分散液組成物。
【請求項2】
前記スルホン化アルキド樹脂が、(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の総重量に基づき、
i.1種又はそれ以上のグリコール又はポリオール約10〜約50重量%、
ii.一塩基性脂肪酸、一塩基性脂肪酸エステル、天然油、又は部分鹸化油の1種又はそれ以上約10〜約80重量%、
iii.ジカルボン酸若しくはその無水物又はポリカルボン酸若しくはその無水物の1種又はそれ以上約5〜約40重量%、並びに
iv.スルホモノマー又は少なくとも1つのスルホモノマー基を含むスルホモノマー付加物の1種又はそれ以上約5〜約15重量%(重量%はスルホモノマーの重量に基づく)
の重縮合反応生成物を含む請求項1に記載の水性ラテックス分散液組成物。
【請求項3】
得られた前記水性ラテックス分散液の平均粒度が約60〜約140nmである請求項1に記載の水性ラテックス分散液。
【請求項4】
得られた前記水性ラテックス分散液の平均粒度が約70〜約130nmである請求項1に記載の水性ラテックス分散液。
【請求項5】
得られた前記水性ラテックス分散液の平均粒度が約140nm未満である請求項1に記載の水性ラテックス分散液。
【請求項6】
得られた前記水性ラテックス分散液の平均粒度が約130nm未満である請求項1に記載の水性ラテックス分散液。
【請求項7】
得られた前記水性ラテックス分散液の平均粒度が約110nm未満である請求項1に記載の水性ラテックス分散液。
【請求項8】
前記水性アルキド樹脂の水性分散液の粒度が約15〜約50nmである請求項1に記載の水性ラテックス分散液。
【請求項9】
前記水性アルキド樹脂の水性分散液の粒度が約20〜約40nmである請求項1に記載の水性ラテックス分散液。
【請求項10】
前記スルホン化アルキド樹脂が約3〜約10重量%の量で供給される請求項1に記載の水性ラテックス分散液。
【請求項11】
前記スルホン化アルキド樹脂が約5〜約8重量%の量で供給される請求項1に記載の水性ラテックス分散液。
【請求項12】
前記開始剤が過酸化水素、パーオキシ二硫酸カリウム、パーオキシ二硫酸アンモニウム、ジベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルヒドロパーオキサイド又はベンゾイルパーオキサイドの1種又はそれ以上を含む請求項1に記載の水性ラテックス分散液。
【請求項13】
1種又はそれ以上のエチレン性不飽和モノマーがスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸グリシジル、カルボジイミドメタクリレート、クロトン酸アルキル、酢酸ビニル、マレイン酸ジ−n−ブチル、ジ−オクチルマレエート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素、又はメタクリルアミドエチルエチレン尿素の1種又はそれ以上を含む請求項1に記載の水性ラッテクス分散液。
【請求項14】
種粒子を形成するためにスルホン化アルキド樹脂の水性分散液を調製し;そしてスルホン化アルキド樹脂種粒子の存在下において1種又はそれ以上のエチレン性不飽和モノマーを重合させて、水性ラテックス分散液を得る工程を含んでなり、前記スルホン化アルキド樹脂を、スルホン化アルキド樹脂及び1種又はそれ以上のエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づき、約2〜15重量%の量で供給する水性ラテックスの調製方法。
【請求項15】
前記スルホン化アルキド樹脂が、
i.1種又はそれ以上のグリコール又はポリオール約10〜約50重量%、
ii.一塩基性脂肪酸、一塩基性脂肪酸エステル、天然油、又は部分鹸化油の1種又はそれ以上約10〜約80重量%、
iii.ジカルボン酸若しくはその無水物又はポリカルボン酸若しくはその無水物の1種又はそれ以上約5〜約40重量%、並びに
iv.スルホモノマー又は少なくとも1つのスルホモノマー基を含むスルホモノマー付加物の1種又はそれ以上約5〜約15重量%(ここで重量%はスルホモノマーの重量に基づく)
の重縮合反応生成物を含む((i)、(ii)、(iii)及び(iv)の重量%は(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の総重量に基づく)請求項4に記載の方法。
【請求項16】
得られた前記水性ラテックス分散液の平均粒度が約60〜約140nmである請求項14に記載の方法。
【請求項17】
得られた前記水性ラテックス分散液の平均粒度が約70〜約130nmである請求項14に記載の方法。
【請求項18】
得られた前記水性ラテックス分散液の平均粒度が約140nm未満である請求項14に記載の方法。
【請求項19】
得られた前記水性ラテックス分散液の平均粒度が約130nm未満である請求項14に記載の方法。
【請求項20】
得られた前記水性ラテックス分散液の平均粒度が約110nm未満である請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記スルホン化アルキド樹脂種粒子の粒度が約15〜約50nmである請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記スルホン化アルキド樹脂種粒子の粒度が約20〜約40nmである請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記スルホン化アルキド樹脂が約3〜約10重量%の量で供給される請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記スルホン化アルキド樹脂が約5〜約8重量%の量で供給される請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記重合を、過酸化水素、パーオキシ二硫酸カリウム、パーオキシ二硫酸アンモニウム、ジベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルヒドロパーオキサイド又はベンゾイルパーオキサイドの1種又はそれ以上を含む開始剤の存在下に、実施する請求項14に記載の方法。
【請求項26】
1種又はそれ以上のエチレン性不飽和モノマーがスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸グリシジル、カルボジイミドメタクリレート、クロトン酸アルキル、酢酸ビニル、マレイン酸ジ−n−ブチル、ジ−オクチルマレエート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素、又はメタクリルアミドエチルエチレン尿素のうち1種又はそれ以上を含む請求項14に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーの乳化重合による水性ラテックス分散液の製造方法において、得られるポリマーラテックスの総重量に対して、約2〜約15重量%の量で供給されたスルホン化アルキド樹脂種粒子の存在下で乳化重合プロセスを実施する点で改良された方法。
【請求項28】
請求項14に記載の方法によって調製された水性ラテックス分散液。
【請求項29】
請求項1に記載の水性ラテックス分散液を製品に適用し、そして被覆組成物を乾燥させることによって調製された被覆製品。
【請求項30】
請求項1に記載の水性ラテックス分散液を含んでなる被覆組成物。
【請求項31】
1種又はそれ以上の充填剤及び/又は顔料を更に含む請求項30に記載の被覆組成物。
【請求項32】
請求項31に記載の被覆組成物が被覆された製品。
【請求項33】
前記製品が木材、木材副製品、石膏ボード、金属、プラスチック、コンクリート、繊維製品、皮革、及び組積造からなる群から選ばれた一員である請求項32に記載の製品。

【公表番号】特表2007−520578(P2007−520578A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517298(P2006−517298)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/019114
【国際公開番号】WO2005/000926
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】