説明

水性ガスシフト用共触媒を伴う脱水素用触媒

脱水素用触媒および水性ガスシフト用共触媒を含有して成る触媒をアルキル芳香族炭化水素からアルケニル芳香族炭化水素を生じさせる脱水素で用いることができる。例えば、本触媒はエチルベンゼンからスチレンを生じさせる脱水素で使用可能である。本触媒に鉄化合物、カリウム化合物およびセリウム化合物を含有させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
該当なし。
【技術分野】
【0002】
本発明は一般にアルキル芳香族炭化水素からアルケニル芳香族炭化水素を生じさせる脱水素用の脱水素用触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
脱水素用触媒はアルキル芳香族炭化水素からアルケニル芳香族炭化水素を生じさせる変換で使用可能である。そのような触媒は例えばエチルベンゼンからスチレンを生じさせる脱水素などで使用可能である。スチレンは、重合体であるポリスチレンを生じさせる基の単量体である。ポリスチレンは、数多くの商業的用途を有する良く知られたプラスチックである。それを押出し加工、射出成形またはブロー成形することでプラスチック製器具およびCD用ケーシングの如き物品を製造することができる。また、ポリスチレンをゴム成分、例えばポリブタジエンなどと一緒に成形することで高耐衝撃性ポリスチレン、即ちHIPSなどを生じさせることも可能である。また、それは一般に発泡形態でも用いられる。
【0004】
通常の脱水素用触媒は典型的に酸化鉄、カリウム源および場合によりセリウム源を含有して成る。また、そのような脱水素用触媒の組成に安定剤および/または助触媒として働き得る他の元素も含有させることも可能であり、それにはCr、Mo、W、Ca、Naなどが含まれ得る。
【0005】
脱水素用触媒の評価は変換率、選択率および寿命に関して実施可能である。変換率(または活性)は一般に供給材料である炭化水素が生成物である炭化水素に変化した分率またはパーセントを指す。選択率は一般に特定の所望生成物が含有する全ての炭化水素生成物の分率を指す。触媒の活性は一般に経時的に低下し、最終的に当該触媒の分解または失活が起こることでなくなる。触媒の寿命は当該触媒が分解または失活したことで再生または交換が必要になるまで触媒を脱水素反応槽で使用することができる時間である。再生および交換は、交換中の生産損失および/または触媒の再生に伴う出費が理由で費用がかかり得る工程である。当該触媒が示す安定性を向上させて触媒の寿命を長くすることができれば、それによって当該触媒を用いた工程の経済性が向上するであろう。
【0006】
触媒の失活はいくつかの要因で起こる可能性があり、そのような要因の中の1つはコーキングである。コーキングは触媒表面の炭化であり、それが起こると触媒表面に存在する孔が炭素質沈着物(コークス)で物理的に詰まる。コーキングは当該触媒が示す変換率および選択率を低下させる可能性がありかつ触媒の再生および/または交換の頻度を好ましくなく多くする必要があり得る。
【0007】
当該触媒を再生させる1つのデコーキング方法は、その触媒を水蒸気で処理しかつ加熱することを伴う。しかしながら、そのような再生操作によって触媒構造の物理的分解が起こる可能性がある。カリウムは脱水素用触媒の一般的成分である。しかしながら、カリウムは高温になると特に水蒸気と一緒に移動する可能性がある。水蒸気によるデコーキング工程ではカリウムが移動して失われることが問題であり得るが、それは当該触媒の構造が物理的にいくらか分解を起こすことで更に悪化し得る。
【0008】
このように、当該触媒の寿命を長くし、再生の頻度を少なくしかつ再生中に多量の水蒸
気が使用されないようにするには、当該触媒の表面がコーキングを起こさないようにするのが好ましい。コーキングを防止する可能性がありかつデコーキングに役立ち得るような組成を有する脱水素用触媒の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の態様は一般に脱水素用触媒および水性ガスシフト用共触媒を含有して成る触媒および前記触媒をアルキル芳香族炭化水素からアルケニル芳香族炭化水素を生じさせる変換で用いる方法を包含する。
【0010】
本触媒は鉄化合物を20から70重量パーセント、アルカリ金属化合物を1から40重量パーセント、セリウム化合物を0.5から25重量パーセントおよび水性ガスシフト用共触媒を20から80重量パーセント含有し得る。場合により、本触媒に鉄化合物を25から50重量パーセント、アルカリ金属化合物を10から30重量パーセント、セリウム化合物を5から20重量パーセントおよび水性ガスシフト用共触媒を20から50重量パーセント含有させてもよい。
【0011】
前記鉄化合物は酸化鉄またはカリウムフェライトであってもよい。前記アルカリ金属化合物はアルカリ金属の酸化物、硝酸塩、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩およびこれらの組み合わせから成る群より選択可能でありかつナトリウムまたはカリウム化合物を含んで成っていてもよい。前記アルカリ金属化合物はカリウムフェライトであってもよい。前記セリウム化合物は酸化セリウムであってもよい。前記水性ガスシフト用共触媒は当該技術分野で公知のいずれであってもよく、例えば酸化銅、酸化亜鉛およびアルミナなどを含有する水性ガスシフト用触媒であってもよい。
【0012】
場合により、本触媒に更に貴金属も0.1ppmから1000ppm含有させてもよい。場合により、本触媒に更に周期律表のIA、IB、IIA、IB、IIIA、VB、VIB、VIIBおよびVIII族および希土類金属から成る群より選択した少なくとも1種の無酸化触媒作用化合物も10重量パーセント以下の有効量で含有させることも可能である。場合により、本触媒に更に物性を向上させる少なくとも1種の化合物を含有させることも可能であり、それはグラファイト、メチルセルロースおよびセメントから成る包括的群から選択可能である。
【0013】
本発明の1つの態様は、アルキル芳香族炭化水素からアルケニル芳香族炭化水素を生じさせる脱水素方法である。この方法は、鉄化合物を20から70重量パーセント、アルカリ金属化合物を1から40重量パーセント、セリウム化合物を0.5から25重量パーセントおよび水性ガスシフト用共触媒を20から80重量パーセント有する脱水素用触媒を脱水素反応槽に供給することを包含する。炭化水素原料であるアルキル芳香族炭化水素および水蒸気を前記脱水素反応槽に供給する。前記炭化水素原料と水蒸気と前記脱水素用触媒の接触を前記アルキル芳香族炭化水素の少なくとも一部が脱水素されてアルケニル芳香族炭化水素が生じるに有効な条件下の前記反応槽内で起こさせる。生成物であるアルケニル芳香族炭化水素を前記脱水素反応槽から回収する。
【0014】
前記原料中のアルキル芳香族炭化水素にはエチルベンゼンが含まれ得かつ前記生成物のアルケニル芳香族炭化水素にはスチレンが含まれ得る。
【詳細な説明】
【0015】
本発明は、脱水素用触媒および水性ガスシフト(WGS)用共触媒を含有する触媒に関する発明である。本触媒はアルキル芳香族炭化水素からアルケニル芳香族炭化水素を生じさせる変換、例えばエチルベンゼンからスチレンを生じさせる変換などで使用可能である。本触媒は向上した特性、例えばコークスの防止、向上したデコーキングおよび向上した
安定性などを示し得る。
【0016】
本発明の触媒に通常の脱水素用触媒を少なくとも40重量%入れてもよい。通常の脱水素用触媒は一般に鉄化合物、アルカリ金属化合物および場合によりセリウム化合物を含有し、各々が触媒全体重量の特定パーセントを構成している。本出願に示す重量パーセントは全部がWGS用共触媒を含有する触媒全体を指し、脱水素用共触媒単独を指すことはない。
【0017】
前記鉄化合物の形態は酸化鉄、例えば赤色酸化鉄(Fe)、黄色酸化鉄(FeO(OH))または酸化鉄水化物などの形態であってもよい。本発明に従って使用可能な他の酸化鉄には、これらに限定するものでないが、黒色酸化鉄、例えば磁鉄鉱など、褐色酸化鉄、例えば磁赤鉄鉱などおよび他の黄色酸化鉄、例えば針鉄鉱などが含まれる。その鉄化合は場合によりカリウムフェライトであってもよい。本発明で用いる酸化鉄は天然および合成(当該技術分野で公知のいずれかの方法を用いた)両方の様々な前駆体材料から誘導されたものであってもよい。本発明の触媒の鉄化合物含有量を20から70重量%、場合により25から50重量%にしてもよい。
【0018】
前記アルカリ金属化合物はアルカリ金属の酸化物、硝酸塩、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩およびこれらの組み合わせから成る群より選択可能であり、それにはナトリウムまたはカリウム化合物が含まれ得る。そのアルカリ金属化合物はカリウムフェライトであってもよい。本発明の触媒に含有させるアルカリ金属化合物の量は1から40重量%、場合により10から30重量%であってもよい。
【0019】
前記セリウム化合物は酸化セリウムの形態で使用可能である。そのようなセリウム化合物の源は、焼成中に分解を起こして酸化物の形態になり得る塩、例えば水化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩または他の同様な源などであってもよい。本発明の触媒に含有させるセリウム化合物の量は0.5から25重量%、場合により5から20重量%であってもよい。
【0020】
また、本発明の触媒に他の化合物を含有させることも可能である。そのような化合物は本触媒に特定の特性、例えば本触媒が示す活性および/または安定性の向上などをもたらす可能性がある。例えば、本触媒に貴金属化合物を0.1ppmから1000ppm、場合により1.0ppmから800ppm、場合により1.0ppmから500ppm含有させてもよい。加うるに、本触媒にIA、IB、IIA、IB、IIIA、VB、VIB、VIIBおよびVIII族および希土類金属の無酸化触媒作用化合物、例えば炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、クロムまたは銅の塩など、またはクロム、マンガン、アルミニウム、バナジウム、マグネシウム、トリウムおよび/またはモリブデンなどの元素の酸化物などのいずれかを10重量%以下の量で含有させてもよい。それらを有効量で添加してもよいが、その量は当該化合物およびそれが最終的触媒の使用に影響を与える度合に応じて多様であり得る。有効量はある場合には少なくとも0.001重量%、場合により少なくとも0.01重量%、場合により少なくとも0.1重量%、場合により少なくとも1.0重量%であり得る。また、他の添加剤、例えばカーボンブラックまたはグラファイト、メチルセルロースおよびセメントなどを含有させることも可能である。グラファイトおよびメチルセルロースなどの如き添加剤を本触媒の混合物に含有させてもよいが、その後、それらは焼成段階中に焼失し、その結果として最終的触媒に空隙が生じることで間隙率が影響を受ける可能性がある。
【0021】
前記WGS用共触媒は、当該技術分野で公知の如何なるWGS用触媒であってもよく、それには低温シフト用触媒または高温シフト用触媒のいずれも含まれる。高温シフト用触媒には一般に鉄およびクロムの酸化物が含まれる一方、低温シフト用触媒には一般に酸化銅、酸化亜鉛およびアルミナが含まれる。1つの態様のWGS用触媒は一般に45%の量
のCuO、45%の量のZnOおよび10%の量のアルミナから成り得るが、しかしながら、WGS用触媒を生じさせる時に使用可能な他の化合物組み合わせも当該技術分野で公知である。担体である酸化ジルコニウムがルテニウム、白金、コバルトおよびモリブデンの中の1種以上を担持しているWGS用触媒が1つの非限定例である。貴金属を含有する態様は一般に担体上に充填されている貴金属を5%以下の量で有する可能性がある。遷移金属の酸化物を含有する態様は一般に担体上に充填されている遷移金属酸化物を20%以下の量で有する可能性がある。
【0022】
そのようなWGS用共触媒が本触媒全体を構成する量を5から90重量%にしてもよい。場合により、そのようなWGS用共触媒が本触媒全体を構成する量を10から70重量%または25から50重量%にすることも可能である。
【0023】
一酸化炭素が脱水素反応槽内で起こる水性ガス反応(式1)で生じる可能性があり、この反応では炭素質沈着物、即ちコークスと水蒸気が反応して一酸化炭素と水素が生じる。WGS用触媒は水性ガスシフト反応(式2)に触媒作用を及ぼし、この反応で一酸化炭素と水蒸気が反応して二酸化炭素と水素が生じる。この2つの反応を以下に示す。
式1、水性ガス反応: C(コークス)+ HO ――> CO+H
式2、水性ガスシフト反応: CO + HO ――> CO+H
【0024】
WGS用共触媒は、式1の一酸化炭素生成物を除去し、式1の平衡を乱しかつ式1をより大きな度合で起こさせてコークスを触媒表面からより多い量で除去することによって当該触媒のデコークスを補助する働きをし得る。
【0025】
本発明の触媒の生成は、調製しておいたWGS用共触媒を本脱水素用触媒を構成する鉄、アルカリ金属、セリウムおよび他の化合物と一緒にすることを通して実施可能である。そのようなWGS用共触媒は商業的に入手可能であるか或はWGSシフト用触媒の製造に関して当該技術分野で公知の方法のいずれかを用いて調製可能である。その後、その調製したWGS用共触媒を本脱水素用触媒の化合物と公知手段のいずれかで一緒にしてもよく、そのような手段には、共沈、分解、含浸および機械的混合が含まれる。次に、その混合した触媒を湿らせた後、反応槽の中に入れるに適したいずれかの形態に成形してもよい。成形は手を用いるか或は押出し加工機またはダイスを用いて実施可能である。次に、その成形した触媒に乾燥そして焼成を例えば当該技術分野で公知のいずれかの方法を用いて受けさせてもよい。乾燥を100℃から200℃の温度で実施してもよくかつ持続時間を1時間から数時間にしてもよい。焼成を500℃から900℃、場合により600℃から800℃の温度で実施してもよい。温度を50℃などの増分でゆっくり時間をかけて上昇させることで焼成温度に到達させてもよい。
【0026】
本発明の1つの非限定態様は、アルキル芳香族炭化水素からアルケニル芳香族炭化水素を生じさせる脱水素方法、例えばエチルベンゼンからスチレンを生じさせる脱水素方法などである。本方法は、通常の脱水素用触媒が少なくとも20重量%または30重量%または40重量%で水性ガスシフト用共触媒が20から60重量%の触媒を脱水素反応槽に供給することを包含する。炭化水素原料であるアルキル芳香族炭化水素および水蒸気を前記脱水素反応槽に供給してもよい。前記炭化水素原料と水蒸気の接触を前記アルキル芳香族炭化水素の少なくとも一部が脱水素されてアルケニル芳香族炭化水素が生じるに有効な条件下の反応槽内で起こさせてもよい。生成物であるアルケニル芳香族炭化水素を前記脱水素反応槽から回収する。
【0027】
そのような脱水素反応を1組の反応条件に従って起こさせてもよく、そのような条件には原料の仕様、温度、圧力および空間速度が含まれる。一般に、そのような条件は当該技術分野で公知であり、以下にいくつかの非限定例を示す。
【0028】
上述した如き原料にアルキル芳香族炭化水素および水蒸気を含有させてもよい。アルキル芳香族炭化水素は一般に1個以上のアルキル基で置換されている芳香基、例えばベンゼンまたはナフタレンなどを有するが、前記アルキル基は当該炭化水素の脱水素可能成分である。そのようなアルキル基の炭素原子数は少なくとも2であり得る。本発明で使用可能なアルキル芳香族炭化水素のいくつかの非限定例には、エチルベンゼン、クメン、エチルトルエン、ジエチルベンゼンなどが含まれる。水蒸気を希釈剤および熱源として働かせることができ、それは触媒表面に付着する炭素質沈着物、即ちコークスなどの生成を抑制し得る。水蒸気と炭化水素を一緒に反応槽に注入するか或は個別に注入してもよい。ある態様では、水蒸気と炭化水素を炭化水素に対する水蒸気のモル比(また油に対する水蒸気、即ちS/O比としても認識)が2から20、場合により3から9になるように反応槽に導入してもよい。
【0029】
脱水素反応は一般に吸熱反応であることから、反応槽内の温度を500℃から700℃、場合により520℃から680℃、場合により540℃から660℃にしてもよい。圧力を大気圧以上または大気圧以下、例えば0.3気圧から1.5気圧などにしてもよい。接触時間は一般に1時間当たりの液体空間速度(LHSV)の項に関係しており、それは1時間毎の触媒体積当たりの液状炭化水素反応体の体積として定義される。適切なLHSVの一例は、本明細書で限定するものでないが、0.1時−1から5時−1であり得る。
【0030】
前記反応槽は当該技術分野で公知の如何なる種類のものであってもよく、それには炭化水素および水蒸気用の入り口1個または2個以上および生成物である炭化水素用の出口が備わっていてもよい。エチルベンゼンの脱水素の場合の所望生成物である炭化水素はスチレンである。また、ベンゼンおよびトルエンを包含する他の炭化水素も生成物であり得る。
【実施例】
【0031】
触媒の調製を本発明の数多くの態様の中の1つの例として実施した。この調製では、低表面積のアルミナとCuOとZnOを撹拌型ボールミル内で密に混合してサブミクロンの粒子を生じさせることを通して、基本的WGS用触媒を生じさせた。次に、そのWGS用触媒に焼成を775℃で受けさせた。次に、このWGS用共触媒を酸化鉄水化物、炭酸カリウム、炭酸セリウム、酸化モリブデン、炭酸カルシウムおよびセメントと混合した。その粉末混合物を湿らせ、触媒粒子に成形した後、焼成を775℃で実施した。その最終的触媒はWGS用共触媒を23.1重量%、酸化鉄水化物を36.2重量%、炭酸カリウムを19.1重量%、炭酸セリウムを13.2重量%、酸化モリブデンを1重量%、炭酸カルシウムを3.4重量%およびセメントを4重量%含有していた。
【0032】
前記触媒は、3床の断熱反応槽内でLHSVを0.37にし、PSIAアウトレットを7.6にしそしてS/Oを8:1にした時に62%の変換率および93モル%のスチレン選択率を示した。
【0033】
この上に示した実施例は本発明の1つの可能な態様を例証するものである。本発明のいくつかの態様が可能であり、可能な態様の全部を本開示の中に明白には例示しないが、それでもそれらは本発明の範囲内であることを意図する。
【0034】
用語“アルキル”は、単結合の炭素と水素原子のみで構成されている官能基もしくは側鎖、例えばメチルまたはエチルなどを指す。
【0035】
用語“有効量”は、当該化合物およびそれが最終的触媒の使用に対して示す影響に応じて多様であり得る。有効量はある場合には少なくとも0.001重量%、場合により少な
くとも0.01重量%、場合により少なくとも0.1重量%、場合により少なくとも1.0重量%であり得る。
【0036】
ある請求項のいずれかの要素に関して用語“場合により”を用いる場合、その主題要素が必要であるか或は必要でないことを意味することを意図する。両方の選択肢を当該請求項の範囲内に入れることを意図する。幅広い用語、例えば含んで成る、包含する、有するなどの使用は、より狭い用語、例えばから成る、から本質的に成る、で実質的に構成されるなどの下支えを与えるものであると理解されるべきである。
【0037】
本明細書で“本発明”を言及する場合、文脈に応じて、それらはある場合には全部が特定の具体的態様のみを指し得る。他の場合として、それは、必ずしも全部ではないが1つ以上の請求項に示す主題事項を指し得る。前述は本発明の態様、変形および例に向けたものであるが、それらは、通常の当業者が本特許の中の情報を入手可能な情報および技術と組み合わせた時に本発明を成しかつ使用することができるようにする目的で含めたものであり、本発明をそのような個々の態様、変形および例のみに限定するものでない。本発明の基本的範囲から逸脱しない限り本発明の他のさらなる態様、変形および例を考案することができ、本発明の範囲を以下の請求項で決定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素の脱水素用触媒であって、
脱水素用触媒、および
水性ガスシフト用共触媒、
を含有して成る触媒。
【請求項2】
前記脱水素用触媒が鉄化合物、アルカリ金属化合物およびセリウム化合物を含有して成る請求項1記載の触媒。
【請求項3】
前記アルカリ金属化合物がカリウム化合物である請求項2記載の触媒。
【請求項4】
酸化鉄を20から70重量パーセント含有して成る請求項1記載の触媒。
【請求項5】
アルカリ金属化合物を1から40重量パーセント含有して成る請求項1記載の触媒。
【請求項6】
酸化セリウムまたは炭酸セリウムを0.5から25重量パーセント含有して成る請求項1記載の触媒。
【請求項7】
貴金属を0.1ppmから1000ppm含有して成る請求項1記載の触媒。
【請求項8】
周期律表のIA、IB、IIA、IB、IIIA、VB、VIB、VIIBおよびVIII族および希土類金属から成る群より選択される少なくとも1種の無酸化触媒作用化合物を10重量パーセント以下の有効量で含有して成る請求項1記載の触媒。
【請求項9】
物性の目的で添加されたグラファイト、メチルセルロースおよびセメントから成る群より選択される少なくとも1種の化合物を有効量で含有して成る請求項1記載の触媒。
【請求項10】
前記水性ガスシフト用共触媒を20から80重量パーセント含有して成る請求項1記載の触媒。
【請求項11】
アルキル芳香族炭化水素からアルケニル芳香族炭化水素を生じさせる脱水素用の触媒であって、
鉄化合物を20から70重量パーセント、
アルカリ金属化合物を1から40重量パーセント、
セリウム化合物を0.5から25重量パーセント、および
水性ガスシフト用共触媒を20から50重量パーセント、
含有して成る触媒。
【請求項12】
前記アルキル芳香族炭化水素がエチルベンゼンを含んで成りかつ前記アルケニル芳香族炭化水素がスチレンを含んで成る反応で用いられる請求項11記載の触媒。
【請求項13】
鉄化合物を25から50重量パーセント、アルカリ金属化合物を10から30重量パーセント、セリウム化合物を5から20重量パーセントおよび水性ガスシフト用共触媒を20から50重量パーセント含有して成る請求項11記載の触媒。
【請求項14】
前記鉄化合物が赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、褐色酸化鉄、カリウムフェライトおよびこれらの組み合わせから成る群より選択される請求項11記載の触媒。
【請求項15】
前記アルカリ金属化合物がアルカリ金属の酸化物、硝酸塩、水酸化物、炭酸塩、重炭酸
塩およびこれらの組み合わせから成る群より選択される請求項11記載の触媒。
【請求項16】
前記アルカリ金属化合物がナトリウム化合物である請求項11記載の触媒。
【請求項17】
前記アルカリ金属化合物がカリウム化合物である請求項11記載の触媒。
【請求項18】
前記アルカリ金属化合物がカリウムフェライトを含んで成る請求項11記載の触媒。
【請求項19】
前記水性ガスシフト用共触媒がアルミニウム、亜鉛または銅の中の1種以上を含有して成る請求項11記載の触媒。
【請求項20】
更に貴金属も0.1ppmから1000ppm含有して成る請求項11記載の触媒。
【請求項21】
更に周期律表のIA、IB、IIA、IB、IIIA、VB、VIB、VIIBおよびVIII族および希土類金属から成る群より選択される少なくとも1種の無酸化触媒作用化合物も10重量パーセント以下の有効量で含有して成る請求項11記載の触媒。
【請求項22】
更にグラファイト、メチルセルロースおよびセメントから成る群より選択される少なくとも1種の化合物も有効量で含有して成る請求項11記載の触媒。
【請求項23】
アルキル芳香族炭化水素からアルケニル芳香族炭化水素を生じさせる脱水素方法であって、
脱水素反応槽に、
鉄化合物を20から70重量パーセント、
アルカリ金属化合物を1から40重量パーセント、
セリウム化合物を0.5から25重量パーセント、および
水性ガスシフト用共触媒を20から50重量パーセント、
含有して成る触媒を供給し、
アルキル芳香族炭化水素を含有して成る炭化水素原料および水蒸気を前記脱水素反応槽に供給し、
前記炭化水素原料と水蒸気と前記触媒の接触を前記アルキル芳香族炭化水素の少なくとも一部が脱水素されてアルケニル芳香族炭化水素が生じるに有効な条件下の前記反応槽内で起こさせ、そして
生成物であるアルケニル芳香族炭化水素を前記脱水素反応槽から回収する、
ことを含んで成る方法。
【請求項24】
前記原料であるアルキル芳香族炭化水素がエチルベンゼンを含有して成りそして前記生成物であるアルケニル芳香族炭化水素がスチレンを含有して成る請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記鉄化合物が酸化鉄である請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記アルカリ金属化合物がカリウム化合物である請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記触媒が更にカリウムフェライトも含有して成る請求項23記載の方法。
【請求項28】
前記アルキル芳香族炭化水素の少なくとも一部が脱水素されてアルケニル芳香族炭化水素が生じるに有効な条件に540℃から660℃の温度、0.3気圧から1.5気圧の圧力および0.1時−1から5時−1のLHSVを包含させる請求項23記載の方法。

【公表番号】特表2013−509296(P2013−509296A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537104(P2012−537104)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/054676
【国際公開番号】WO2011/053769
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】