説明

水性バインダーラテックスの生成方法

水相中での多段階乳化重合による水性バインダーラテックスの生成方法であって、連続するステップ:1)少なくとも1つの酸基を混合物Aの酸価10〜100mgKOH/gに対応する比率で含む少なくとも1つのモノマー、および0.5〜5重量%の少なくとも1つのオレフィン性多不飽和モノマーを含むラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーの混合物Aの水相におけるラジカル重合と、2)工程ステップ1)で生成されたポリマーの酸基の中和と、3)工程ステップ2)で得られた生成物の存在下で、少なくとも1つの酸基を混合物Bまたは混合物Bのそれぞれの酸価0〜5mgKOH/g未満に対応する比率で含む少なくとも1つのモノマー、少なくとも1つのヒドロキシル基を混合物Bまたは混合物Bのそれぞれのヒドロキシル価0〜5mgKOH/g未満に対応する比率で含む少なくとも1つのモノマー、および混合物Bまたは混合物Bのそれぞれに対して0.5〜5重量%の比率の少なくとも1つのオレフィン性多不飽和モノマーを含むラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーの少なくとも1つの混合物Bのラジカル重合とを含み、混合物Aと少なくとも1つの混合物Bの重量比が15:85〜85:15であり、混合物Aのモノマーの少なくとも90重量%の重合が完了するまで、工程ステップ2)における中和を開始しない方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性バインダーラテックスの生成方法、その方法を使用して生成された水性バインダーラテックス、および水性コーティング組成物中のバインダーとしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第300 612号(A1)明細書は、架橋されたコアと、ベースコート/クリアコートの2層コーティングの生成に有用な水系ベースコート中のバインダーとして使用可能な塩の基を含む安定化シェルとを含む水性コアシェルポリマー粒子を開示する。欧州特許出願公開第300 612号(A1)明細書の実施例のセクションから明らかなように、コアシェルポリマー粒子は、最初に、オレフィン性多不飽和モノマーを含むが酸官能性モノマーを含まない、ラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマー混合物を乳化重合し、次いで得られたエマルジョンポリマーの存在下で、酸官能性モノマーを含むがオレフィン性多不飽和モノマーを含まないモノマー混合物を乳化重合し、続いて酸基を中和することによって生成される。
【0003】
国際公開第01/72909号パンフレットは、ベースコート/クリアコートの2層コーティングの生成に有用な水系ベースコート中のバインダーとして使用可能な水性エマルジョンポリマーであって、オレフィン性不飽和酸官能性モノマーを含むがオレフィン性多不飽和モノマーを含まない第1のモノマー混合物の乳化重合、このようにして得られたエマルジョンポリマーの酸基の中和、続いて先に生成したエマルジョンポリマーの存在下でオレフィン性多不飽和モノマーを含む第2のモノマー混合物の乳化重合によって生成されたエマルジョンポリマーを開示する。
【0004】
米国特許第5,403,894号明細書は、コアシェルポリマー粒子をセメント改質剤としての使用に適した再分散性粉末の形で単離することができる水性コアシェルポリマー分散液を開示する。水性コアシェルポリマー分散液は、オレフィン性多不飽和モノマーおよびオレフィン性不飽和酸官能性モノマーを含む第1のモノマー混合物の乳化重合、このようにして得られたエマルジョンポリマーの酸基の中和、続いて先に生成したエマルジョンポリマーの存在下で第2のモノマー混合物の乳化重合によって生成される。第2のモノマー混合物は、この場合はオレフィン性多不飽和モノマーを含まない。水性コアシェルポリマー分散液を、ベースコート/クリアコートの2層コーティングの生成に有用な水系ベースコート中のバインダーとして使用できることは記載も示唆もされていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今回、前記エマルジョンポリマーが多段階乳化重合で生成され、オレフィン性多不飽和モノマーが乳化重合のすべての段階で共重合され、酸基を含むオレフィン性不飽和モノマーが乳化重合の第1段階で共重合され、乳化重合の第1段階の終了後に、酸基が中和される場合に、ベースコート/クリアコートの2層コーティングの生成に有用な水系ベースコート中のバインダーとして特に適切なエマルジョンポリマーを得ることができることがわかった。乳化重合のすべての段階でオレフィン性多不飽和モノマーを使用すると、乳化重合の各段階で生成されたポリマー生成物が、架橋された構造、またはゲル構造さえも示すことが確実になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水相中での多段階乳化重合による水性バインダーラテックスの生成方法であって、
次の連続するステップ:
1)少なくとも1つの酸基を混合物Aの酸価10〜100mgKOH/gに対応する比率で含む少なくとも1つのモノマー、および0.5〜5重量%の少なくとも1つのオレフィン性多不飽和モノマーを含むラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーの混合物Aの水相におけるラジカル重合と、
2)工程ステップ1)で生成されたポリマーの酸基の中和と、
3)工程ステップ2)で得られた生成物の存在下で、少なくとも1つの酸基を混合物Bまたは混合物Bのそれぞれの酸価0〜5mgKOH/g未満に対応する比率で含む少なくとも1つのモノマー、少なくとも1つのヒドロキシル基を混合物Bまたは混合物Bのそれぞれのヒドロキシル価0〜5mgKOH/g未満に対応する比率で含む少なくとも1つのモノマー、および混合物Bまたは混合物Bのそれぞれに対して0.5〜5重量%の比率の少なくとも1つのオレフィン性多不飽和モノマーを含むラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーの少なくとも1つの混合物Bのラジカル重合と
を含み、
混合物Aと少なくとも1つの混合物Bの重量比が15:85〜85:15であり、混合物Aのモノマーの少なくとも90重量%の重合が完了するまで、工程ステップ2)における中和を開始しない方法に関する。
【0007】
「水性バインダーラテックス」は、ラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーを乳化重合することによって調製され、水系コーティング組成物、具体的にはベースコート/クリアコート仕上げの水系ベースコート中のフィルム形成バインダーとして使用可能な水分散エマルジョンポリマー、すなわち水分散ポリマー粒子を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明による方法では、水性バインダーラテックスは、多段階、好ましくは2段階乳化重合で生成される。すなわち、ラジカル重合させるオレフィン性不飽和モノマーの混合物AおよびBを、水性乳濁液中で行われるラジカル重合の、当業者に周知の通常の条件下で、すなわち1つまたは複数の乳化剤を使用し、ラジカルに熱解離する1つまたは複数の開始剤を添加して重合する。乳化重合の各段階で生成されたポリマー生成物中で、架橋された構造、またはゲル構造さえも形成することを確実にするために、オレフィン性多不飽和モノマーを乳化重合の各段階で使用し、共重合する。乳化重合時間(混合物AおよびBを水性初期仕込みに分配するのにかかる時間+工程ステップ2)の中和操作の時間+後重合相の時間)は、例えば1〜10時間である。水相での重合温度は、例えば50〜95℃である。
【0009】
乳化剤は、混合物AおよびBの重量の合計に対して一般的に全量で例えば0.1〜3重量%が使用され、混合物AおよびBの構成成分として最初に導入かつ/または添加されてもよく、かつ/あるいは混合物AおよびBの分配と並行して添加されてもよい。使用可能な乳化剤の例は、例えば塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテルなど、乳化重合の場合に使用可能な通常のカチオン性、アニオン性、および非イオン性の乳化剤である。確実に、カチオン性およびアニオン性の乳化剤を互いと共に使用しないように注意しなければならない。
【0010】
ラジカルに熱解離する開始剤(ラジカル開始剤)は、混合物AおよびBの重量の合計に対して一般的に全量で例えば0.02〜2重量%が使用され、混合物AおよびBの分配と同時に添加され得る。水溶性ラジカル開始剤を、そのまま、混合物AおよびBの構成成分として、具体的には水溶液として添加することができる。しかし、モノマーの添加が完了すると、ラジカル開始剤の一部分を最初に導入かつ/または添加することができる。混合物AおよびBの分配の前に、開始剤を完全に添加することも可能である。ラジカル開始剤は、好ましくは水溶性である。使用可能なラジカル開始剤の例は、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムなどのペルオキソ二硫酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)のアンモニウム塩、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、ならびに鉄、銅、またはクロム塩などの触媒金属塩と場合によっては組み合わせた過酸化水素/アスコルビン酸など、当業者に周知の通常のレドックス開始剤系である。
【0011】
工程ステップ1)および3)に従ってラジカル重合させるモノマー混合物AおよびBは、乳化重合でよくあるように、一般にすでに重合温度に調整された水性初期仕込みに分配、すなわち添加される。工程ステップ1)および3)は、したがって混合物AおよびBの分配を含み、特定の分配の開始から始まる。混合物AおよびBは、連続する工程ステップ1)および3)に従って次々に分配され、1つまたは複数の混合物Bの分配は、早ければ工程ステップ2)の完了後、すなわち早ければ混合物Aのモノマーの少なくとも90重量%の重合が完了し、工程ステップ2)に従って中和が行われると工程ステップ3)で始まる。重合を完了する程度は、固形分を決定することによって容易に決定することができる。したがって、少なくとも1つの混合物Bの水性初期仕込みへの分配は、混合物Aの90%の分配、続いて中和剤の工程ステップ2)での添加後に早ければ始まることができる。これは、実質的に瞬間重合変換率が100%である非常に速い重合速度の場合に対応する。しかし、一般に、混合物A)はその全体を工程ステップ1)中に最初に分配され、その後、混合物A)モノマーが少なくとも90%、好ましくは完全に重合されると、中和剤を工程ステップ2)で添加し、その後になって始めて、工程ステップ3)中に、少なくとも1つの混合物Bを分配する。
【0012】
工程ステップ1)で得られたポリマーの酸基は、アンモニア、特に例えばトリエチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、および2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなど、アミンならびに/またはアミノアルコールなど、通常の塩基性中和剤を使用して中和する。
【0013】
塩基性中和剤を、例えば10〜100%の中和度に一致させて添加する。中和度100%は、この場合は混合物Aに起因するポリマー中の各酸基の化学量論的中和に対応する。例えば、中和度は、本発明による方法の完了後に得られる水性バインダーラテックスの固形分に応じて、さらに混合物Aの酸価にも応じて選択される。一般に、低い中和度は、高い酸価および高い固形分の場合に選択され、逆の場合も同様である。
【0014】
混合物AおよびBに関連して使用される用語「混合物」は、特定のモノマーの個別の分配を除外しない。すなわち、モノマーを、個別に、またはモノマーのほんの一部の異なる2つ以上の混合物として分配することもできる。しかし、実際の混合物AおよびBを分配することが好ましい。混合物AおよびBを、プレエマルジョンの形で分配することもできる。
【0015】
混合物Aと少なくとも1つの混合物Bの重量比は、15:85〜85:15である。
【0016】
混合物Aは、少なくとも1つの酸基を具体的には混合物Aの酸価10〜100mgKOH/gに対応する比率で含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマー、および0.5〜5重量%の少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーを含む。
【0017】
少なくとも1つの酸基を含むラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーの例は、具体的には例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アコニット酸、マレイン酸、およびフマル酸、マレイン酸およびフマル酸の半エステル、(メタ)アクリル酸のカルボキシアルキルエステル、例えばアクリル酸β−カルボキシエチル、ならびにヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートとカルボン酸無水物との付加物、例えばフタル酸モノ−2−(メタ)アクリロイロキシエチルエステルなど、カルボキシル基を含むオレフィン性不飽和モノマーである。(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0018】
本明細書および特許請求の範囲で用語「(メタ)アクリル酸の」を使用する。これは、「アクリル酸の」および/または「メタクリル酸の」を意味する。
【0019】
ラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーの例は、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、エチレンおよびプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,3−および1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、ビニル(メタ)アクリラート、アリル(メタ)アクリラート、ジアリルフタラート、グリセロールトリ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、ジ−およびトリ−プロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミドである。別の例は、補完的化合物の縮合、または好ましくは付加反応によって生成することができ、いずれの場合にも、1つまたは複数のオレフィン性二重結合に加えて、1分子当たり1つまたは複数の別の官能基を含む化合物である。個々の補完的化合物の別の官能基は、相互補完的な反応性基の対、具体的には起こり得る縮合または付加反応のために互いと反応することができる基を含む。
【0020】
縮合反応によって生成されたラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーの例は、アルコキシシラン官能性(メタ)アクリルモノマーから、加水分解、アルコールの脱離反応、およびシロキサン架橋の形成の後に生成された反応生成物である。別の例は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートと、イソシアナトアルキル(メタ)アクリラートやm−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアナートなど、イソシアナート基がブロックされたオレフィン性不飽和イソシアナートとから、ブロッキング剤の脱離反応およびウレタン基の形成で生成された反応生成物である。
【0021】
付加反応によって生成されたラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートと、イソシアナトアルキル(メタ)アクリラートやm−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアナートなどのオレフィン性不飽和イソシアナートとから、ウレタン基の形成で生成された付加生成物、または例えばグリシジル(メタ)アクリラートと(メタ)アクリル酸から生成された付加生成物など、不飽和酸のカルボキシル基への不飽和エポキシ化合物のエポキシ基の開環付加およびエステル基とヒドロキシル基の形成によって形成された反応生成物である。
【0022】
少なくとも1つの酸基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーおよび少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーのほかに、混合物Aは、1つまたは複数の別のラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーも含む。これらは官能基を含んでも含まなくてもよく、また組み合わせて使用することもできる。
【0023】
混合物Aで使用可能な、官能基を含まないラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーの例は、スチレン、ビニルトルエンなどのモノビニル芳香族化合物;ビニルエーテル、および酢酸ビニル、ベルサチン酸ビニルなどのビニルエステル;マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸のジアルキルエステル、具体的にはメチル(メタ)アクリラート、エチル(メタ)アクリラート、プロピル(メタ)アクリラート、ブチル(メタ)アクリラート、イソブチル(メタ)アクリラート、tert−ブチル(メタ)アクリラート、ヘキシル(メタ)アクリラート、シクロヘキシル(メタ)アクリラート、エチルヘキシル(メタ)アクリラート、デシル(メタ)アクリラート、ドデシル(メタ)アクリラート、ヘキサデシル(メタ)アクリラート、ラウリル(メタ)アクリラート、およびイソボルニル(メタ)アクリラートなどの(シクロ)アルキル(メタ)アクリラートである。
【0024】
官能基を含むラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーの挙げることができる例は、具体的にはアリルアルコールなど、少なくとも1つのヒドロキシル基を含むオレフィン性不飽和モノマー、具体的には例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、およびヒドロキシル基の位置に関して異性体を示すヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリラートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートである。別の例は、グリセロールモノ(メタ)アクリラート、例えばベルサチン酸グリシジルエステルなど、モノエポキシドへの(メタ)アクリル酸付加物、および例えば酢酸やプロピオン酸などのモノカルボン酸へのグリシジル(メタ)アクリラート付加物である。
【0025】
混合物Aが、少なくとも1つのヒドロキシル基を含むラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーを少なくとも1つ含み、これが有利となり得る場合、混合物A中でのその比率は、混合物Aのヒドロキシル価60mgKOH/g未満、具体的には5〜30mgKOH/gに対応する範囲にある。
【0026】
例えば、混合物Aは、
a)0.5〜5重量%の少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーと、
b)混合物Aの酸価10〜100mgKOH/gに対応する比率(重量%)、例えば1超〜20重量%の少なくとも1つの酸基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと、
c)55〜98.5重量%未満の官能基を含まない少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと、
d)混合物Aのヒドロキシル価0〜60mgKOH/g未満に対応する比率(重量%)、例えば0〜20重量%の少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと
からなることができ、重量百分率は合計100重量%になる。
【0027】
具体的には、混合物Aは、
a)0.5〜3重量%の少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーと、
b)1超〜10重量%の範囲で、同時に混合物Aの酸価10〜100mgKOH/gに対応する比率の少なくとも1つの酸基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと、
c)77〜97.5重量%未満の官能基を含まない少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと、
d)1超〜10重量%の範囲で、同時に混合物Aのヒドロキシル価5〜30mgKOH/gに対応する比率の少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと
からなることができ、重量百分率は合計100重量%になる。
【0028】
本明細書および特許請求の範囲には、少なくとも1つの混合物Bが記載されている。1つより多い混合物Bを使用する場合、これらを同時にまたは連続的に分配することができる。好ましくは、単独の混合物Bのみを使用し、この場合、本発明による方法は2段階乳化重合であり、混合物Aを工程ステップ1)で重合し、混合物Bを工程ステップ3)で重合する。
【0029】
好ましくはたった1つの混合物B、または2つ以上の混合物Bの場合、混合物Bのそれぞれは、混合物の酸価5mgKOH/g未満に対応する比率の少なくとも1つの酸基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマー、混合物のヒドロキシル価5mgKOH/g未満に対応する比率の少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマー、および0.5〜5重量%の少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーを含む。混合物Bまたは複数の混合物Bは、好ましくは少なくとも1つの酸基を含むラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーも少なくとも1つのヒドロキシル基を含むラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーも含まない。
【0030】
ラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマー、および少なくとも1つの酸基または少なくとも1つのヒドロキシル基を含むラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーの例は、混合物Aに関連して記載されたものと同じである。
【0031】
少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマー、および考え得るが不在であることが好ましい、少なくとも1つの酸基または少なくとも1つのヒドロキシル基を含むラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーのほかに、少なくとも1つの混合物Bは、官能基を含まない少なくとも1つの別のラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーを含む。このような官能基を含まないラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーの例は、混合物Aに関連して記載されたものと同じである。
【0032】
例えば、混合物Bまたは混合物Bのそれぞれは、
a)0.5〜5重量%の少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーと、
b)混合物Bの酸価0〜5mgKOH/g未満に対応する比率(重量%)、例えば0〜1重量%未満の少なくとも1つの酸基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと、
c)混合物Bのヒドロキシル価0〜5mgKOH/g未満に対応する比率(重量%)、例えば0〜2重量%未満の少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと、
d)92超〜99.5重量%の官能基を含まない少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと
からなることができ、重量百分率は合計100重量%になる。
【0033】
具体的には、混合物Bまたは混合物Bのそれぞれは、
a)0.5〜3重量%の少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーと、
b)97〜99.5重量%の官能基を含まない少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと
からなることができ、重量百分率は合計100重量%になる。
【0034】
本発明による方法によって、固形分が例えば30〜60重量%の水性バインダーラテックスの生成が可能になる。
【0035】
水性バインダーラテックスから生成された乾燥層の厚さ約90nmのミクロトーム切片の電子顕微鏡写真に基づいて、個々のラテックス粒子が一般に数字の8の様相と類似した直接相互連結した2つの気泡の構造を有することを確立できることを示した。この粒子形態は、本発明による水性バインダーラテックスの顕著なレオロジー特性の根本的原因であると考えられる。これらのバインダーラテックスは、実際には明白な擬似塑性を明白なチキソトロピー特性とも組み合わせて発現する。
【0036】
本発明による水性バインダーラテックスを使用して、特定のレオロジー特性を特徴とする水性コーティング組成物を配合することができる。実際には、水性コーティング組成物は、優れた垂れ特性、すなわち低い垂れ傾向を特徴とする。水性コーティング組成物が、特殊効果顔料(効果フレーク顔料)を含有するコーティング組成物である場合、これらの組成物は、特殊効果(優れたフレーク配向)、例えば優れた金属効果の優れた発現を特徴とする。斑点形成(曇りの形成)の傾向が事実上完全にないこと、または完全にないことが顕著である。
【0037】
例えば、ベースコート/クリアコートの2層コーティングの生成に適した水系ベースコートを、本発明による水性バインダーラテックスで配合することができる。
【0038】
水系ベースコートは、顔料を本発明による水性バインダーラテックス、ならびにいずれの場合にも次の任意の構成成分:別のバインダー、架橋剤、充填剤(延長剤)、通常のコーティング添加剤および有機溶媒と混合することによって生成される。
【0039】
水系ベースコートは、固形分が例えば10〜45重量%、好ましくは15〜35重量%である。顔料含有量と樹脂固形分の重量比は、いずれの場合にも固形分の重量に対して、例えば0.05:1〜2:1であり、特殊効果水系ベースコートの場合は、例えば好ましくは0.06:1〜0.6:1であり、ソリッドカラー(単色)水系ベースコートの場合は、好ましくはより高く、例えば0.06:1〜2:1である。水、少なくとも1つの顔料;本発明による水性バインダーラテックスによって導入された少なくとも1つのバインダー、場合によっては1つまたは複数のそれとは異なる別のバインダー、および場合によっては1つまたは複数の架橋剤を含む樹脂固形分;場合によっては1つまたは複数の充填剤、ならびに場合によっては1つまたは複数の有機溶媒のほかに、水系ベースコートは、一般に1つまたは複数の通常のコーティング添加剤も含有する。本発明による水性バインダーラテックスによって導入された少なくとも1つのバインダー、およびそれとは異なる別の任意のバインダーは、バインダー固形分を形成する。語句「場合によってはそれとは異なる別のバインダー」には、バインダー樹脂だけでなく、顔料粉砕樹脂も包含される。本発明による水性バインダーラテックスによって導入されたバインダーは、唯一のバインダーとすることができる。本発明による水性バインダーラテックスによって導入された少なくとも1つのバインダーに加えて、それとは異なる別のバインダーも存在する場合、バインダー固形分中のその比率は、例えば20〜80重量%である。
【0040】
本発明による水性バインダーラテックスによって導入されたバインダーとは異なるバインダーの例は、水希釈性ポリエステル樹脂、水希釈性(メタ)アクリル酸コポリマー樹脂、または水希釈性ポリエステル/(メタ)アクリル酸コポリマーハイブリッド、および水希釈性ポリウレタン樹脂もしくはポリウレタン/(メタ)アクリル酸コポリマーハイブリッドなど、当業者に周知の通常のフィルム形成水希釈性バインダーである。これらは、反応性または非官能性の樹脂とすることができる。
【0041】
水系ベースコートは、自己乾燥(物理的乾燥)、自己架橋、または外部架橋することができる。したがって、水系ベースコートは、例えば遊離もしくはブロック型ポリイソシアナート、またはアミノ樹脂、例えばメラミン樹脂などの架橋剤を含有することができる。場合によっては使用される架橋剤の選択は、バインダーの架橋性基のタイプに応じて異なり、当業者に周知である。架橋剤は、個別にまたは組み合わせて使用することができる。架橋剤固形物とバインダー固形物の混合比は、例えば10:90〜40:60、好ましくは20:80〜30:70になる。
【0042】
水系ベースコートは、通常のコーティング顔料、例えば特殊効果顔料、ならびに/または白色、有色、および黒色の顔料から選択された顔料を含有する。
【0043】
特殊効果顔料の例は、例えばアルミニウム、銅、または他の金属で作製された金属顔料、例えば金属酸化物被覆金属顔料、例えば酸化鉄被覆アルミニウムなどの干渉顔料、例えば二酸化チタン被覆マイカなどの被覆マイカ、グラファイト効果をもたらす顔料、フレーク形の酸化鉄、液晶顔料、被覆酸化アルミニウム顔料、被覆二酸化ケイ素顔料など、観測角に依存するカラーおよび/または明度フロップをコーティングに付与する通常の顔料である。
【0044】
白色、有色、および黒色の顔料の例は、例えば二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール顔料、ペリレン顔料など、当業者に周知の通常の無機または有機顔料である。
【0045】
水系ベースコートは、充填剤を、例えば樹脂固形分に対して0〜30重量%の比率で含有することもできる。充填剤は、顔料含有量の一部分とならない。例は、硫酸バリウム、カオリン、タルカム、二酸化ケイ素、層状ケイ酸塩である。
【0046】
特殊効果顔料を、一般にまず通常の市販水性または非水性のペーストの形で導入し、場合によっては、好ましくは水希釈性有機溶媒および添加剤と組み合わせ、次いで水性バインダーと混合する。粉末の特殊効果顔料を、最初に好ましくは水希釈性有機溶媒および添加剤と処理して、ペーストを得ることができる。
【0047】
白色、有色、および黒色の顔料、ならびに/または充填剤を、例えば水性バインダーの一部分中で粉砕することができる。粉砕を、好ましくは特殊な水希釈性ペースト樹脂中で行うこともできる。次いで、配合物を、残部の水性バインダー、または水性ペースト樹脂で作製する。
【0048】
水系ベースコートは、通常のコーティング添加剤を通常の量、その固形分に対して例えば0.1〜5重量%で含有することができる。例は、中和剤、消泡剤、濡れ剤、接着促進剤、触媒、レベリング剤、クレーター防止剤、増粘剤、および光安定剤である。
【0049】
水系ベースコートは、通常のコーティング溶剤を例えば好ましくは20重量%未満、特に好ましくは15重量%未満の比率で含むことができる。これらは、通常のコーティング溶剤であり、例えばバインダーの生成に由来することがあり、または別に添加される。このような溶媒の例は、1価または多価アルコール、例えばプロパノール、ブタノール、ヘキサノール;グリコールエーテルまたはエステル、例えばジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル(いずれの場合にもC1〜6アルキルを含む)、エトキシプロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテル;グリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、およびそのオリゴマー;例えばN−メチルピロリドンなどのN−アルキルピロリドン;メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン、ならびに芳香族または脂肪族の炭化水素である。
【0050】
ベースコート/クリアコートの2層コーティング内でカラーおよび/または特殊効果を付与するコーティング層を生成するために、水系ベースコートを使用することができる。水系ベースコートは、通常の方法で塗布することができる。これらを、好ましくは例えば8〜40μmの乾燥膜厚に噴霧塗布する。特殊効果水系ベースコートの場合、乾燥膜厚は、例えば8〜25μmであり、ソリッドカラー水系ベースコートの場合、好ましくはより厚く、例えば10〜40μmである。塗布は、好ましくはウェットオンウェット方法で進行する。すなわち例えば20〜80℃でのフラッシュオフ段階後、水系ベースコート層をクリアコートで好ましくは30〜60μmの乾燥膜厚に上塗りし、後者と共に例えば20〜150℃の温度で乾燥または架橋する。乾燥条件は、使用するクリアコート系によって決定する。補修目的には、例えば20〜80℃の温度が好ましい。量産コーティング目的には、100℃超、例えば110℃超の温度が好ましい。
【0051】
既知のクリアコートはすべて、原理的にはクリアコートとして適切である。使用可能なクリアコートは、この場合は溶媒含有1成分(1液型)もしくは2成分(2液型)クリアコート、水希釈性1液型もしくは2液型クリアコート、粉末クリアコート、または水性粉末クリアコートスラリーのいずれもである。
【0052】
このようにして生成された多層コーティングを、様々なタイプの基材に塗布することができる。基材は、一般に金属またはプラスチックである。これらをプレコートすることが多い。すなわち、プラスチック基材は、例えばプラスチックプライマーを施されることがあり、金属基材は、一般に電気泳動塗布されたプライマー、および場合によっては例えばプライマーサーフェーサー層(充填剤層)など、さらに1つまたは複数の別のコーティング層を有する。これらの層は、一般に硬化される。
【0053】
水系ベースコートを用いて得られた多層コーティングは、現在の自動車コーティングに課せられた通常の要件を満たす。したがって、水系ベースコートは、オリジナルおよび補修の車両コーティングに適しているが、他の部門、例えばプラスチックコーティング、具体的には車両部品コーティングで使用することもできる。
【実施例】
【0054】
実施例1〜11(水性バインダーラテックスの調製)
反応器に、688pbw(重量部)の脱イオン水および16pbwのRhodapex EST30(Rhodiaから入手可能なアニオン性界面活性剤;水中30重量%)を加えた。水および界面活性剤を窒素雰囲気中で80℃に加熱し、反応中その温度を保持した。表1に列挙された成分からなる第1の撹拌されたモノマー乳濁液を別に調製した。3.2pbwのペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)の100pbwの脱イオン水溶液を反応器内容物に添加し、次いで、第1のモノマー乳濁液を反応器内容物に徐々に添加した。第1のモノマー乳濁液すべてを入れた後、反応器内容物を80℃でさらに1時間保持し、その間に、表1に列挙された成分からなる第2の撹拌されたモノマー乳濁液、および13pbwの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(水中90重量%)の98pbwの脱イオン水溶液を別々に調製した。第1のモノマー乳濁液の組成に応じて、下記に記載するa)またはb)に従って、調製をさらに実施した。
【0055】
a)第1のモノマー乳濁液がメタクリル酸を含有した場合、水性2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール溶液を反応混合物に徐々に添加し、次いで1.1pbwのペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)の70pbwの脱イオン水溶液を反応器内容物に徐々に添加した。次いで、第2のモノマー乳濁液を反応器内容物に徐々に添加した。添加が完了した後、反応器内容物を80℃でさらに1時間保持した。次いで、得られた水性バインダーラテックスを室温に冷却した。
【0056】
b)第1のモノマー乳濁液がメタクリル酸を含有しなかった場合、1.1pbwのペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)の70pbwの脱イオン水溶液を、反応器内容物に徐々に添加し、次いで第2のモノマー乳濁液を反応内容物に徐々に添加した。添加が完了した後、反応器内容物を80℃でさらに1時間保持した。次いで、水性2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール溶液を反応器内容物に徐々に添加した。次いで、得られた水性バインダーラテックスを室温に冷却した。
【0057】
表1

*)本発明による
**)比較例
MMA:メチルメタクリラート
BA:ブチルアクリラート
HEA:ヒドロキシエチルアクリラート
MAA:メタクリル酸
AMA:アリルメタクリラート
【0058】
実施例12(水性ポリウレタンバインダー分散液の調製)
1005gの直鎖ポリエステル(アジピン酸、イソフタル酸、およびヘキサンジオールから構成、ヒドロキシル価102mgKOH/g)を90℃に加熱し、1.8gのトリメチロールプロパン、および393gのイソホロンジイソシアナートを添加した。NCO値が一定になるまで、反応を90℃で行った。60℃に冷却した後、35.3gのジメチロールプロピオン酸、26.1gのトリエチルアミン、および250gのN−メチルピロリドンの溶液を添加した。80℃に加熱した後、NCO値が一定になるまで反応温度を維持した。バッチを、NCO含有モル量に基づくモル量の脱イオン水と混合し、NCOがもはや検出されなくなるまで、溶液を80℃で維持した。次いで、脱イオン水を添加することによって、バッチを固形分35重量%の水性分散液に変換した。
【0059】
実施例13a−l(銀色水系ベースコートの調製):
表2に列挙された構成成分を混合することによって、銀色水系ベースコート13a−lを調製した。比率の単位はpbwである。表2は、水系ベースコートについて行われた技術試験の結果も示す。
【0060】
表2

【0061】
表2続き

*)本発明による
**)比較例
BE:ブトキシエタノール
NMP:N−メチルピロリドン
BuOH:n−ブタノール
DEGMBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
【0062】
1)50pbwのBEおよび50pbwのEckart製Stapa Hydrolac(登録商標)WHH 2154の混合物。
2)3pbwのSuedchemie製Optigel(登録商標)SH、3pbwのポリプロピレングリコール900、および94pbwの脱イオン水の混合物。
3)Surface Specialties製メラミン樹脂。
4)33pbwのAllied Colloids製Viscalex HV 30、2.5pbwのDMEA、および64.5pbwの脱イオン水の混合物。
5)水系ベースコートをそれぞれ、EDCプライマーおよびプライマーサーフェーサーからなるプレコーティングを設けた鋼試験パネルに14μmの乾燥膜厚で塗布した。20℃で5分間、80℃でさらに5分間フラッシュオフした後、試験パネルにそれぞれ、市販の2成分ポリウレタンクリアコートを40μmの乾燥膜厚で噴霧コーティングし、20℃で5分間フラッシュオフした後、対象温度140℃で20分間ベーキングした。
照射角が垂直方向に45度および観測角が鏡面方向に15度の輝度L*(CIEL*a*b*、DIN 6174に準拠)を、X−Rite Incorporated社、Grandeville, Michigan, U.S. A.販売の装置X−Rite MA 68で測定した。
6)水系ベースコートをそれぞれ、EDCプライマーおよびプライマーサーフェーサーからなるプレコーティングを設けた鋼試験パネル(サイズ:30cm×60cm)に14μmの乾燥膜厚で塗布した。20℃で5分間、80℃でさらに5分間フラッシュオフした後、試験パネルにそれぞれ、市販の2成分ポリウレタンクリアコートを40μmの乾燥膜厚で噴霧コーティングし、20℃で5分間フラッシュオフした後、対象温度140℃で20分間ベーキングした。得られたコーティングを、斑点形成現象(曇りの形成)の発生率について評価した。斑点形成発生:−、斑点形成せず:+。
【0063】
7)水系ベースコートをそれぞれ、EDCプライマーおよびプライマーサーフェーサーからなるプレコーティングを設けた有孔鋼試験パネル(サイズ:30cm×60cm;直径10mmの穿孔)に、楔状乾燥膜厚勾配0〜40μmで塗布した。20℃で5分間、80℃でさらに5分間フラッシュオフした後、試験パネルにそれぞれ、市販の2成分ポリウレタンクリアコートを40μmの乾燥膜厚で噴霧コーティングし、20℃で5分間フラッシュオフした後、対象温度140℃で20分間ベーキングした。ベースコートの垂れ限度と2層コーティングのポッピング限度とを決定した(単位μm)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相中での多段階乳化重合による水性バインダーラテックスの生成方法であって、
次の連続するステップ:
1)少なくとも1つの酸基を混合物Aの酸価10〜100mgKOH/gに対応する比率で含む少なくとも1つのモノマー、および0.5〜5重量%の少なくとも1つのオレフィン性多不飽和モノマーを含むラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーの混合物Aを水相でラジカル重合するステップと、
2)工程ステップ1)で生成されたポリマーの酸基を中和するステップと、
3)工程ステップ2)で得られた生成物の存在下で、少なくとも1つの酸基を混合物Bまたは混合物Bのそれぞれの酸価0〜5mgKOH/g未満に対応する比率で含む少なくとも1つのモノマー、少なくとも1つのヒドロキシル基を混合物Bまたは混合物Bのそれぞれのヒドロキシル価0〜5mgKOH/g未満に対応する比率で含む少なくとも1つのモノマー、および混合物Bまたは混合物Bのそれぞれに対して0.5〜5重量%の比率の少なくとも1つのオレフィン性多不飽和モノマーを含むラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーの少なくとも1つの混合物Bをラジカル重合するステップと
を含み、
混合物Aと少なくとも1つの混合物Bの重量比が15:85〜85:15であり、混合物Aのモノマーの少なくとも90重量%の重合が完了するまで、工程ステップ2)における中和を開始しない方法。
【請求項2】
混合物Aが、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーを混合物Aのヒドロキシル価60mgKOH/g未満に対応する比率で含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合物Aが、0.5〜5重量%の少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーと、混合物Aの酸価10〜100mgKOH/gに対応する比率(重量%)の少なくとも1つの酸基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと、55〜98.5重量%未満の官能基を含まない少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと、混合物Aのヒドロキシル価0〜60mgKOH/g未満に対応する比率(重量%)の少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーとからなり、重量百分率が合計100重量%になる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
混合物Aが、0.5〜3重量%の少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーと、混合物Aの酸価10〜100mgKOH/gに同時に対応する1超〜10重量%の少なくとも1つの酸基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと、77〜97.5重量%未満の官能基を含まない少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと、混合物Aのヒドロキシル価5〜30mgKOH/gに同時に対応する1超〜10重量%の少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーとからなり、重量百分率が合計100重量%になる請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ただ1つの混合物Bが使用される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
混合物Bまたは混合物Bのそれぞれが、0.5〜5重量%の少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーと、混合物Bの酸価0〜5mgKOH/g未満に対応する比率(重量%)の少なくとも1つの酸基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと、混合物Bのヒドロキシル価0〜5mgKOH/g未満に対応する比率(重量%)の少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーと、92超〜99.5重量%の官能基を含まない少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーとからなり、重量百分率が合計100重量%になる請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
混合物Bまたは混合物Bのそれぞれが、0.5〜3重量%の少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性多不飽和モノマーと、97〜99.5重量%の官能基を含まない少なくとも1つのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和モノマーとからなり、重量百分率が合計100重量%になる請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって生成された水性バインダーラテックス。
【請求項9】
請求項8に記載の水性バインダーラテックスをバインダーとして使用して生成された水性コーティング組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の水性コーティング組成物を水系ベースコートとして使用するベースコート/クリアコートの2層コーティングの生成方法。

【公表番号】特表2008−539321(P2008−539321A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509146(P2008−509146)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/016110
【国際公開番号】WO2006/118974
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】