説明

水性ポリウレタン分散液

水性ポリウレタン分散液は、少なくとも1種の有機脂肪族、脂環式または芳香族ジ、トリまたはポリイソシアネート;少なくとも1種のイソシアネート反応性ポリカーボネートジオール、トリオールまたはポリオール;少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのフリーラジカル的に重合可能な不飽和基を含む少なくとも1種の化合物;および少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの分散活性基を含む少なくとも1種の化合物;および任意選択的に少なくとも2つのイソシアネート反応性基を含み、1000g/モル未満の分子量を有する少なくとも1種の化合物を含む反応混合物を反応させて得られた反応生成物を水に分散させることによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート、イソシアネート反応性(isocyanate reactive)ポリカーボネートジオール、トリオールおよび/またはポリオール、および不飽和化合物をベース(基材、基剤)とする水性ポリウレタン分散液に関する。本発明は、更に、前記ポリウレタン分散液を含む、例えば、コーティング(coating:被膜、塗膜)用または成型用のような組成物、および、前記ポリウレタン分散液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、放射線硬化性(radiation curable)ポリウレタンのような水で乳化可能なまたは分散可能なポリウレタンは、例えば米国特許第5,905,113号(特許文献1)、欧州特許出願公開0801092号(特許文献2)および欧州特許出願公開0704469号(特許文献3)から公知であり、これらに開示されている。これらは、一般に、例えば少なくとも2種類のヒドロキシル基または少なくとも2種類のNH基を含有する成分のような鎖伸長剤(chain extender)、分散活性基(dispersing active group)、即ち非イオン性、イオン性またはイオン化可能な基を含有し、且つイソシアネート反応性基(isocyanate reactive group)を含有する少なくとも1種の化合物、および少なくとも1種の、エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、特にヒドロキシエチルアクリレートの混合物を、少なくとも2つのイソシアネート基を含有する化合物と反応することによって得ることができる。しばしば使用される2つのヒドロキシル基を含有する二官能性化合物は、ヒドロキシ官能性ポリエステルまたはポリエーテルである。しかし、天候安定性(weather stability)は、ヒドロキシ官能性ポリエ−テルを使用した場合に、不十分となる。ポリエステル構造を含有するポリウレタンは加水分解に対して不安定であり、従って、天候に安定なコーティングには不適切である。更に、得られたコーティングの表面粘着力(tack:接着力)が高い。ポリカプロラクトンを使用することによって、天候安定性が改善される。
【0003】
水性ポリウレタン分散液は、主に、内装(インテリア)用途において、木、革および紙をコーティングするのに使用される。外装(エクステリア)用途において放射線硬化性コーティングを使用することは、まだ問題がある。なぜならば、水性分散液が、特に、所望の天候および化学的安定性を有していないからである。
【0004】
米国特許第5,859,135号(特許文献4)は、官能性架橋可能基(functional crosslinkable groups)を含み、特にポリエステルをベースとする親油性主鎖を有するポリマーの水性分散液を開示する。しかし、開示されたその親油性主鎖が高分子量であるために、達成される架橋密度(crosslinking densities)は良好なスクラッチ(scratch:ひっかき)耐性および化学的安定性に欠ける。欧州特許出願公開0026313号(特許文献5)および欧州特許出願公開0554784号(特許文献6)は、水性ポリウレタン分散液およびコーティング組成物におけるその使用を開示する。スルホン酸基および/またはスルホネート(sulfonate)基の存在により、高い親水性がこれらのポリウレタンに付与され、不十分な湿潤強度(wet strength)を示すコーティングになる。
【0005】
分散活性成分としてカルボン酸基を含有するポリウレタンは、現在までのところ、その性能特性(performance properties)において不十分である。例えば、欧州特許出願公開0392352号(特許文献7)、欧州特許出願公開0181486号(特許文献8)および欧州特許出願公開0209684号(特許文献9)に開示されているようなポリウレタン分散液は、化学的耐性および機械的特性、例えばコーティングの硬度、弾性および可撓性(flexibility:柔軟性)に関して不利益(欠点)を示す。
【0006】
水で乳化可能なまたは分散可能な放射線硬化性ポリウレタンも欧州特許出願公開0704469号(特許文献10)から公知である。このポリウレタンは、有機ポリイソシアネート、ポリエステルポリオール、少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのカルボキシルまたはカルボキシレート基を含む化合物、少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの共重合可能な不飽和基を含む化合物、および、所望であればそれ以上の成分から構成される。これらのポリウレタンは、これらからもたらされるコーティングの湿潤強度、化学的耐性および機械的特性に関して改善されている。しかし、特に天候安定性、化学的安定性、スクラッチ耐性、可撓性およびその他の機械的特性に関する改善が更に必要である。
【0007】
ポリエステルおよびポリエーテルとは異なり、ポリカーボネートポリオールは加水分解に対して著しい耐性を示し、これによって、ポリカーボネートポリオールは、長い耐用年数を有する製品の製造に特に適したものとなる。ポリカーボネートポリオールの熱および加水分解に対する耐性は、特開2003-246830号(特許文献11)に、ホットメルトウレタン接着剤で実証されている。現在まで、1,6−ヘキサンジオールをベースとするポリカーボネートジオールのみが、真の技術的および商業的重要性を有している。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,905,113号
【特許文献2】欧州特許出願公開0801092号
【特許文献3】欧州特許出願公開0704469号
【特許文献4】米国特許第5,859,135号
【特許文献5】欧州特許出願公開0026313号
【特許文献6】欧州特許出願公開0554784号
【特許文献7】欧州特許出願公開0392352号
【特許文献8】欧州特許出願公開0181486号
【特許文献9】欧州特許出願公開0209684号
【特許文献10】欧州特許出願公開0704469号
【特許文献11】特開2003-246830号
【特許文献12】米国特許第5,171,830号
【非特許文献1】Polymer Reviews 9 “Chemistry and Physics of Polycarbonates,” pp9-20, 1964
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明の目的は、良好な天候安定性および良好な化学的耐性を有し、これによって、外装の適用例に適した、例えばコーティングを結果として形成するポリウレタン分散物を提供することである。本発明の別の目的は、例えば装飾用および/または保護コーティングのようなポリウレタンを含む組成物を提供することである。
【0010】
上記目的は、
a)少なくとも1種の、有機脂肪族、脂環式(cycloaliphatic)または芳香族、ジ、トリまたはポリイソシアネート、
b)少なくとも1種のイソシアネート反応性ポリカーボネートジオール、トリオールまたはポリオール、
c)少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのフリーラジカル的に(free radically:遊離基的に)重合可能な不飽和基を有する、少なくとも1種の化合物、
d)少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの分散活性基を有する、少なくとも1種の化合物、および、任意選択的に(オプションとして)
e)少なくとも2つのイソシアネート反応性基および、最大で1000g/モル、好ましくは多くて500g/モルの分子量(molecular weight)を有する、少なくとも1種の化合物、
を含む混合物を反応させ、得られた反応生成物を水に分散または乳化することによって得ることができる水性ポリウレタン分散液によって達成できることが、全く予期せずに見いだされた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
前記ジ、トリまたはポリイソシアネートは、本発明の実施形態では、任意の適したイソシアネートまたはイソシアネートの組み合わせであり、これには、1分子あたり少なくとも2つの対称的または非対称的に配置されたイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式および芳香族イソシアネートの異性体または異性体混合物が含まれる。最も好ましいイソシアネートはジイソシアネートである。使用し得る芳香族ジイソシアネートの例には、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートおよびフェニレンジイソシアネートが含まれる。特に適したものは脂肪族または脂環式ジイソシアネートの使用である。なぜならば、これらは黄変の傾向が非常に低く、したがって、例えばコーティング材料で使用するのに十分適しているからである。脂環式ジイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートの水素化生成物、例えばシクロへキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネートおよびジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである。脂肪族ジイソシアネートの適した典型例として、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートを挙げることができる。最も好ましいジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネートおよびジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである。
【0012】
本発明のポリウレタンで使用されるポリカーボネートジオール、トリオールおよびポリオールは、例えば、非隣接ジオール、トリオールおよびポリオールからジアリールカーボネート(diarylcarbonates)、ジアルキルカーボネート、ジオキソラノン類(dioxolanones)、ホスゲン、ビスクロロ炭酸エステル(bischlorocarbonic acid ester)または尿素との反応によって調製される。ポリカーボネートジオール、トリオールおよびポリオールは、Polymer Reviews 9 “Chemistry and Physics of Polycarbonates,”(ポリマーレビュー9、「ポリカーボネートの化学と物理」) pp.9-20, 1964(非特許文献1)に概説されている。さらに、前記ポリカーボネートジオール、トリオールおよびポリオールは、例えば、米国特許第5,171,830号(特許文献12)に開示されているポリカーボネートポリオールの製造のためのエステル交換法(process:プロセス)を用いて製造することができる。しかし、本発明のポリウレタンで使用されるポリカーボネートジオール、トリオールおよびポリオールは、前記方法を使用して調製される種類(species)に限定されない。
【0013】
多くのジオール、トリオールおよびポリオールが、ポリカーボネートジオール、トリオールおよびポリオール、例えば2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール類(2,2-dialkyl-1,3-propanediols)、2−アルキル−2−ヒドロキシアルキル−1,3−プロパンジオール類(2-alkyl-2-hydroxyalkyl-1,3-propanediols)および/または2,2−ジヒドロキシアルキル−1,3−プロパンジオール類(2,2-dihydoxyalkyl-1,3-propanediols)の製造に使用することができる。適したジオール、トリオールおよびポリオールの例には、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、1,3−ジメタノール−シクロヘキサン、1,4−ジメタノール−シクロヘキサン、1,3−ジメタノールベンゼン、1,4−ジメタノールベンゼン、ビス−ヒドロキシエチルビスフェノールA、ジメタノールトリシクロデカン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール(pentaerythritol:ペンタエリトリトール)、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、アンヒドロエンネアヘプチトール(anhydroenneaheptitol)、1,4−ブタンジオール−2(1,4-butanediol-2)、ビス−ヒドロキシエチル−ヒドロキノン(bis-hydroxyethyl-hydroquinone)、および樹枝状(dendritic)ポリエステルおよび/またはポリエーテルポリオールが含まれるが、これらに限定されない。更に適したジオール、トリオールおよびポリオールには、例えばネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン,ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパンおよびジペンタエリスリトールのアルコキシル化、例えばエトキシル化および/またはプロポキシル化された種が含まれる。ポリオールの混合物を使用することができ、物理的特性を変更する場合、例えば結晶性を低下させること、または低い融点が望まれる場合には、混合物が好ましいことが多い。
【0014】
例えばポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのようなポリエーテルジオール、および、例えばアジピン酸ポリエチレングリコールのようなポリエステルジオールおよびポリオール、および、樹枝状および分岐ポリール(branched poluols:分枝ポリール)も適したヒドロキシ官能性化合物である。ポリエーテルまたはポリエステルと、ポリカーボネートのブロック共重合体(block copolymer:ブロックコポリマー)は、エステル交換法における出発物質としてこれらのジオール、トリオールおよびポリオールを使用して調製することができる。
【0015】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのフリーラジカル的に重合可能な不飽和基を含む前記少なくとも1種の化合物は、本発明の実施形態では、適したものとして、モノエチレン性不飽和C〜Cモノカルボン酸のエステル、好ましくは、アクリル酸またはメタクリル酸とジオール、トリオールまたはポリオールのエステルであって、エステルの少なくとも1つのヒドロキシル基がエステル化されずに残っているものである。C〜C12ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、特にC〜Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであって、アルキル鎖が線状(linear:直鎖状)または分岐(分枝)しているものが優先される。前記ジオール、トリオールまたはポリオールは、適したものとして、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール類(2,2-dialkyl-1,3-propandiols)、2−アルキル−2−ヒドロキシアルキル−1,3−プロパンジオール類および2,2−ジヒドロキシアルキル−1,3−プロパンジオール類よりなる群から選択される。適したジオール、トリオールおよびポリオールの典型例として、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、1,3−ジメタノール−シクロヘキサン、1,4−ジメタノール−シクロヘキサン、1,3−ジメタノールベンゼン、1,4−ジメタノールベンゼン、ビス−ヒドロキシエチルビスフェノールA、ジメタノールトリシクロデカン、トリメチロールエタン、トリメチルロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、アンヒドロエンネアへプチトール、1,4−ブタンジオール−2(1,4-butanediol-2)、ビス−ヒドロキシエチル−ヒドロキノンビスフェノールA(bis-hydroxyethylhydroquinone bisphonol A)、ビスフェノールFおよび/または樹枝状ポリエステルおよび/またはポリエーテルポリオールを挙げることができる。少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのフリーラジカル的に重合可能な不飽和基を含む前記少なくとも1種の化合物の典型例として、本発明の実施形態では、適したものとして、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性(modified:改質)グリセロールジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性ペンタエリスリトールジまたはトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジまたはトリ(メタ)アクリレートおよび/またはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。前記アルキレンオキシドは、好ましくは、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドである。
【0016】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのフリーラジカル的に重合可能な不飽和基を含む前記少なくとも1種の化合物は、本発明の別の実施形態では、有利な形態では、ヒドロキシまたはヒドロキシアルキルビニルエーテル、例えばヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルおよび/またはシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルである。
【0017】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのフリーラジカル的に重合可能な不飽和基を含む前記少なくとも1種の化合物は、本発明のさらに別の実施形態では、適したものとして、ジオール、トリオールまたはポリオールのアリル(allyl)またはメタアリル(methallyl)エーテルであって、このエーテルが少なくとも1つのエーテル化されていないヒドロキシル基を有するものである。前記アリルまたはメタアリルエーテルの典型例として、グリセロール、トリメチロールエタンおよびトリメチロールプロパンのモノおよびジ(メタ)アリルエーテル、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタンおよびジトリメチロールプロパンのモノ、ジおよびトリ(メタ)アリルエーテル、および/またはジペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラおよびペンタ(メタ)アリルエーテルを挙げることができる。
【0018】
特に好ましい、少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのフリーラジカル的に重合可能な不飽和基を含む前記少なくとも1種の化合物には、例えばヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルおよびヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類(hydroxyalkyl (meth)acrylates)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートおよび、例えばヒドロキシブチルビニルエーテルおよびシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルのようなヒドロキシエチルビニルエーテル類(hydroxyethyl vinylethers)が含まれる。
【0019】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの分散活性基を含む前記少なくとも1種の化合物は、本発明の実施形態では、好ましくは、イソシアネート基と反応できる2つの水素原子、および、少なくとも1つの非イオン性もしくはアニオン性(陰イオン性)基またはアニオン性基に変換できる少なくとも1つの基を有する。イソシアネート基と反応する適切な基は、特に、ヒドロキシル基およびアミノ基である。アニオンを形成できる基は、カルボキシル、スルホン酸および/またはホスホン酸基である。前記少なくとも1つのイソシアネート反応性基および前記少なくとも1つの分散活性基を含む好ましい化合物は、ジヒドロキシアルカン酸(dihydroxyalkanoic acid)、例えばジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシコハク酸およびジヒドロキシ安息香酸である。一般式R−C(CHOH)−COOH(式中、Rは水素または、例えば1〜20の炭素原子を有するアルキル基である。)のα,α−ジメチロールアルカン酸が特に好ましい。このような化合物の例には、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸および2,2−ジメチロールペンタン酸が含まれる。
【0020】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの分散活性基を含む前記少なくとも1種の化合物は、本発明の別の実施形態では、適したものとして、少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する非イオン性親水性化合物である。このような化合物には、例えば、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシド単位(units:ユニット)を取り込んでいる分子が含まれる。これらの非イオン性分散剤は、好ましくは、上で開示したようなアニオン性化合物と組み合わせて使用される。
【0021】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの分散活性基を含む前記化合物によって、ポリウレタンは、例えば保護コロイドまたは乳化剤のような乳化または分散補助剤(auxiliaries:助剤)を使用する必要性なく、例えば水に乳化または分散することができる。水中での乳化または分散に先立って、またはその間に、カルボキシル基および/またはスルホン酸基が、有機および/または無機塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属炭酸水素塩、アンモニア、または、第1級、第2級、もしくは、例えばトリエチルアミンのような、好ましくは第3級アミンを用いて中和され得る。
【0022】
少なくとも2つのイソシアネート反応性基を含み、1000g/モル未満の分子量を有する、前記任意選択的な(オプションとしての)少なくとも1種の化合物として適した化合物には、例えばジオール、トリオールおよびポリオール、および、ジ、トリおよびポリアミンのような末端イソシアネート反応性基を持つ低分子量化合物が含まれる。低分子量ジオール、トリオールおよびポリオールの例は、例えば2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール類、2−アルキル−2−ヒドロキシアルキル−1,3−プロパンジオール類および/または2,2−ジヒドロキシアルキル−1,3−プロパンジオール類のような分子中に例えば1〜20の炭素原子を有するジ、トリおよび多価アルコールである。適したジオール、トリオールおよびポリオールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、1,3−ジメタノール−シクロヘキサン、1,4−ジメタノール−シクロヘキサン、1,3−ジメタノールベンゼン、1,4−ジメタノールベンゼン、ビス−ヒドロキシエチルビスフェノールA、ジメタノールトリシクロデカン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、アンヒドロエンネアへプチトール、1,4−ブタンジオール−2(1,4-butanediol-2)、ビス−ヒドロキシエチル−ヒドロキノン(bis-hydroxyethyl-hydroquinone)、ビスフェノールA(bisphonol A)、ビスフェノールFおよび樹枝状ポリエステルおよび/またはポリエーテルポリオールが含まれるが、これらに限定されない。低分子量ジ、トリおよびポリアミンの例は、1〜30、例えば2〜12の炭素原子を有する、例えばアルキレンジ、トリおよびポリアミンである。好ましいジ、トリおよびポリアミンは、線状または分岐脂肪族、脂環式または芳香族構造と、少なくとも2つの第1級アミノ基とを有するものである。適したジ、トリおよびポリアミンの典型例として、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブチレンジアミン、ピペラジン、1,4−シクロヘキシルジメチルアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミンおよびジブチレントリアミンを挙げることができる。別の適したアミンには、ヒドラジン類(hydrazines)および置換ヒドラジン類が含まれる。
【0023】
本発明の反応混合物におけるイソシアネート基 対 イソシアネート反応性基のモル比は、好ましくは、1:0.8と1:1.2の間(1:0.8乃至1:1.2)であり、特に好ましくは約1:1のモル比である。
【0024】
本発明の水性ポリウレタン分散液は、含まれる成分を反応し、水中において、得られた生成物を分散または乳化することによって適切に調製することができる。反応の進行(course)は、官能基、特にイソシアネート基の消費量によって監視(monitor:モニタ)してもよい。この反応は、好ましくは、例えばアセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンおよび/またはN−メチルピロリドンのような、不活性な水混和性または水溶性溶媒中で行われる。その反応温度は、典型的にはおよび好ましくは、20〜100℃、例えば50〜80℃である。イソシアネートの反応は、例えばジブチルスズジラウレート(dibutyltin dilaurate)、スズ(II)オクトエート(tin(II) octoate)またはジアゾビシクロ[2.2]オクタンのような少なくとも1種の従来通りの触媒を用いて促進することができる。所望であれば、次に、任意の低沸点溶媒を蒸溜によって除去することができる。
【0025】
水中において、得られたポリウレタンを分散または乳化する前、または分散または乳化するときに(際に)、得られた反応生成物中のアニオン性基はどれも、適したものとしておよび好ましくは、例えばアミンまたはアンモニアのような塩基(base)を用いて塩性基(salt groups:塩を形成した基)に変換される。適したアミンは、第1級、第2級または第3級アミンである。このようなアミンの例には、トリアルキルアミン、N−アルキルモルホリン、N−ジアルキルアルカノールアミンおよびジアルキルアミンが含まれる。アミンの混合物も、もちろん使用することができる。適したものとして、30および100%の間(30乃至100%)の前記アニオン性/酸性基が塩性基に変換される。中和された反応生成物は、その混合物を撹拌下で水に添加すること、または、好ましくは、反応生成物に水を加えることのいずれかによって水において分散または乳化され、水中油型(water-in-oil)エマルジョン(emersion:エマルション、乳液、乳剤、乳濁液)の段階を経て、その後このエマルジョンは油中水型(oil-in-water)エマルジョンに変わり、完成したポリウレタン分散液が結果として得られる。
【0026】
別の特徴(側面)では、本発明は、例えば成型(モールド、成形)またはコーティングのような組成物であって、上述のような少なくとも1種のポリウレタン分散液を含むものに関する。前記組成物は、例えば、光開始剤、フリーラジカル開始剤、硬化促進剤、フロー(flow)およびレベリング剤(leveling agent:均染剤、均展材)、顔料、染料、フィラー(充填剤)および他の通例の成型および/またはコーティング補助剤のような添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0027】
前記組成物は、放射線硬化性装飾用および/または保護用コーティングである。放射線による硬化は、例えば250〜600nmの波長を持つ紫外(UV)線のような高エネルギ線に晒すことによって、または、例えば150〜300keVの高エネルギ電子線(EB)で衝撃を与えることによって起こる。使用される放射線源(radiation sources)の例は、高圧水銀灯、レーザ、パルスランプ(pulsed lamps)(閃光(flashlight))、ハロゲンランプおよびエキシマ・エミッタ(excimer emitters)である。UV硬化の場合、架橋するのに通常十分な放射線量は、80〜3000mJ/cmの範囲である。放射線による硬化の後、本発明のコーティングは、非常に良好な天候安定性、化学的安定性、スクラッチ耐性(引っかき抵抗性)、硬度、引っ張り強さ(tensile strength:伸張強度、抗張力)、弾性(elasticity)、可撓性(flexibility)および接着力を有する。
【0028】
前記放射線硬化性装飾用および/または保護用コーティングに適した光開始剤の典型例として、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルおよび酢酸ベンゾインのようなベンゾインおよびベンゾイン誘導体、例えばアセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノン、4−(フェニルチオ)アセトフェノンおよび1,1−ジクロロアセトフェノンのようなアセトフェノン類(acetophenones)、例えばベンジルジメチルケタールおよびベンジルジエチルケタールのようなベンジルおよびベンジルケタール、例えば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tertブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンおよび2−アミルアントラキノンのようなアントラキノン類(anthraquinones)、トリフェニルホスフィン、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドのようなベンゾイルホスフィンオキシド、例えばベンゾフェノン、ジメトキシベンゾフェノン、ジフェノキシベンゾフェノンおよび4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン類(benzophenones)、チオキサントン類(thioxanthones)およびキサントン類(xanthones)、アクリジン誘導体、フェナゼン(phenazene)誘導体、キノキサリン誘導体、I−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム(I-phenyl-1,2-propandione-2-O-benzoyloxime)、I−アミノフェニルケトン類(I-aminophenyl ketones)および例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトンおよび4−イソプロピルフェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトンのような1−ヒドロキシフェニルケトン類(1-hydroxylphenyl ketones)、および、例えば4’’’−メチルチオフェニル−1−ジ(トリクロロメチル)−3,5−S−トリアジン、S−トリアジン−2−(スチルベン)−4,6−ビストリクロロメチルおよびパラメトキシスチリルトリアジンのようなトリアジン化合物を挙げることができる。
【0029】
本発明の装飾用およびまたは保護用コーティングは、高温でフリーラジカルを形成する開始剤の添加によって熱的に架橋させることもできる。例えば、過酸化ジベンゾイル、クメンヒドロキシペルオキシドまたはアゾジイソブチロニトリルを使用してもよい。
【0030】
本発明のポリウレタン分散物およびそれによる前記コーティング組成物は、例えば、木、紙、織物、革、不織布、プラスチック、ガラス、セラミック、例えば成形した(shaped)セメント製品および繊維セメント石板(slabs:スラブ)のような鉱物を含む建築材料(mineral building materials)、および金属または被覆金属のような基材(substrate:基板)の装飾用および/または保護用コーティングに特に適している。
【0031】
更に詳述することなく、先の説明を用いて、この分野の専門家であれば、その限度いっぱいまで本発明を利用することができると考えられる。従って、以下の好ましい特定の実施形態は、単に例示として解釈されるべきであり、いかなる方法であろうともその開示の残余部分を制限するものではない。以下の例1および2は、本発明のウレタン分散液の実施形態で使用されるポリカーボネートジオールの合成に関し、例3および4は、例1および2のポリカーボネートジオールをベースとするアクリル性ポリウレタン分散液(acrylic polyurethane dispersions)の調製に関する。例5および6は、ポリエステルおよびポリエーテルポリオールをベースとするアクリル性ポリウレタン分散液を調製する比較例である。例7は、例3〜6で得られたポリウレタン分散液を含むコーティング組成物を示す。
【0032】
実施例
例1
この合成は、2ステップ、即ち大気圧でのトランスカルボニル化ステップと、これに続く減圧下での重合ステップで行われる。トランスカルボニル化(このステップでは、ジメチルカーボネート(DMC)がネオペンチルグリコールのモノおよびジメチルカーボネートエステルを形成する)は、メタノールとの共沸混合物を形成することによる重合ステップでのDMCの損失を防ぐために行われる。この合成は、90%より多い(を越える)ネオペンチルグリコールのポリカーボネートの収量をもたらし、この生成物は、100〜110℃の範囲の融点と112mgKOH/gのヒドロキシル価を有する白色固体であった。
【0033】
ステップ1:169g(1.88モル)のDMCと140g(1.34モル)のネオペンチルグリコールを、加熱および攪拌しながら500mlのガラス反応容器に充填した。ネオペンチルグリコールが溶液の状態になり始めたとき、1.07g(0.013モル)のNaOH(50%水溶液)をゆっくり滴下した。混合物を94℃の開始温度で環流させた。温度が81℃に達したとき、生成したメタノールと残留DMCが大気圧下で留去された。蒸留温度の幅は82〜124℃であった。
【0034】
ステップ2:この重合ステップでは、圧力を25分の間に7mbarまで低下させ、反応を120℃で60分間前記圧力に維持することによって完結した。
【0035】
例2
この合成は、2ステップ、即ち大気圧でのトランスカルボニル化ステップと、これに続く減圧下での重合ステップで行われる。トラスカルボニル化(このステップでは、ジメチルカーボネート(DMC)が2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(BEPD)のモノおよびジメチルカーボネートエステルを形成する)は、メタノールとの共沸混合物を形成することによる重合ステップでのDMCの損失を防ぐために行われる。この合成は、90%より多い(を越える)BEPDのポリカーボネートの収量をもたらし、この生成物は室温で液体であり、112mgKOH/gのヒドロキシル価を有していた。
【0036】
ステップ1:126.1g(1.4モル)のDMCと162.25g(1.34モル)のBEPDを、加熱および攪拌しながら500mlのガラス反応容器に充填した。そのネオペンチルグリコール(BEPD)が溶液の状態になり始めたとき、0.04g(0.0005モル)のNaOH(50%水溶液)をゆっくり滴下した。混合物を99℃の開始温度で環流させた。温度が81℃に達したとき、生成したメタノールと残留DMCが大気圧下で留去された。
【0037】
ステップ2:この重合ステップでは、圧力を25分の間に15mbarまで低下させ、反応を120℃で270分間前記圧力に維持することによって完結した。
【0038】
例3
100gの、例1のポリカーボネートジオール、11.5gのジメチロールプロピオン酸、11.3gのN−メチルピロリジノン、3.2gのジブチルスズラウレート(dibutyl tin laurate)、13.3gのアクリル酸2−ヒドロキシエチルおよび7.7gのトリメチロールプロパンを、撹拌機、温度計、窒素パージ(nitrogen purge)および環流コンデンサ(凝縮器)を備えた五首反応フラスコ(five necked reaction flask)に充填した。充填した原材料を60℃で混合し、続いて、88.9gのイソホロンジイソシアネートを2時間かけて滴下した。次に、得られた混合物を、NCO−含有樹脂(2.6重量%のNCO)が形成されるまで、撹拌下で3〜4時間、75℃に加熱した。7.8gのトリエチルアミンを60℃で加え、30分間混合した。7.7gのエチレンジアミンを40〜50℃、且つ撹拌下で、5時間かけて中和した反応混合物に加えた。最後に、460gの脱イオン化水反応生成物に加え、ポリウレタン分散液を形成した。この分散液の固形物含有量は35重量%であり、粒子径は<100nm(100nm未満)であった。
【0039】
例4
例1のポリカーボネートジオールに代えて、例2のポリカーボネートジオールを使用したことを差異(相違)点として、例3を繰り返した。
【0040】
例5(比較例)
例1のポリカーボネートジオールに代えて、アジピン酸ネオペンチルグリコールを使用したことを差異点として、例3を繰り返した。
【0041】
例6(比較例)
例1のポリカーボネートジオールに代えて、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(デュポン(DuPont)社から得たテラタン(Terathane(商標))1000)を使用したことを差異点として、例3を繰り返した。
【0042】
例7
例3〜6のポリウレタン分散液(サンプル(試料)3〜6)を、2.5重量%のダロキュア(Darocur)(登録商標)1173(光開始剤、チバ(CIBA))と混合し、90μmの湿潤膜厚でスチールパネルにコーティングした。このコーティングを、硬化前に、80℃において10分間フラッシュした(flash:液体を急速に蒸発させた)。コーティングしたパネルを80W/cmのUV H灯下に10m/分の速度で5回通すことにより、硬化を行った。
【0043】
蛍光灯を備えたQUVウェザー−o−メータ(QUV Weather-o-Meter)UVA−A−340中において、80℃で8時間の照射、および50℃で4時間の暗所凝結(dark condensation)からなるUV/水サイクルにそれらのサンプルを晒すことによって、耐候安定性(weathering stability)を測定した。300時間後、サンプル2および3で見いだされるものよりも遙かに(非常に)高い程度で、サンプル5は加水分解を受けており、サンプル6はUV分解を受けていることが見いだされた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリウレタン分散液であって、
a)少なくとも1種の有機脂肪族、脂環式または芳香族ジ、トリまたはポリイソシアネート、
b)少なくとも1種のイソシアネート反応性ポリカーボネートジオール、トリオールまたはポリオール、
c)少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのフリーラジカル的に重合可能な不飽和基を含む少なくとも1種の化合物、および
d)少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの分散活性基を含む少なくとも1種の化合物、および任意選択的に
e)少なくとも2つのイソシアネート反応性基を含み、1000g/モル未満、好ましくは500g/モル未満の分子量を有する少なくとも1種の化合物
を含む混合物を反応に付し、得られた反応生成物を水に分散させることによって得られることを特徴とする、水性ポリウレタン分散液。
【請求項2】
前記少なくとも1種のジ、トリまたはポリイソシアネートが、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートおよびフェニレンジイソシアネートよりなる群から選択される芳香族ジイソシアネートであることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン分散液。
【請求項3】
前記少なくとも1種のジ、トリまたはポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネートおよびジシクロヘキシルメタンジイソシアネートよりなる群から選択される脂環式ジイソシアネートであることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン分散液。
【請求項4】
前記少なくとも1種のジ、トリまたはポリイソシアネートが、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートよりなる群から選択される脂肪族ジイソシアネートであることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン分散液。
【請求項5】
前記ポリカーボネートジオール、トリオールまたはポリオールが、少なくとも1種のアルキルカーボネートと、少なくとも1種のジオール、トリオールおよび/またはポリオールとの間の反応によって得られることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項6】
前記アルキルカーボネートが、ジメチルカーボネートおよび/またはジエチルカーボネートであることを特徴とする、請求項5に記載のポリウレタン分散液。
【請求項7】
前記ジオール、トリオールまたはポリオールが、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール、2−アルキル−2−ヒドロキシアルキル−1,3−プロパンジオールおよび/または2,2−ジヒドロキシアルキル−1,3−プロパンジオールであることを特徴とする、請求項5または6に記載のポリウレタン分散液。
【請求項8】
前記ジオール、トリオールまたはポリオールが、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、1,3−ジメタノール−シクロヘキサン、1,4−ジメタノール−シクロヘキサン、1,3−ジメタノールベンゼン、1,4−ジメタノールベンゼン、ビス−ヒドロキシエチルビスフェノールA、ジメタノールトリシクロデカン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、アンヒドロエンネアヘプチトール、1,4−ブタンジオール−2、ビス−ヒドロキシエチル−ヒドロキノン、および/または樹枝状ポリエステルおよび/またはポリエーテルポリオールであることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項9】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのフリーラジカル的に重合可能な不飽和基を含む前記少なくとも1種の化合物が、モノエチレン性不飽和C〜Cモノカルボン酸と、ジオール、トリオールまたはポリオールのエステルであり、このエステルは少なくとも1つのエステル化されていないヒドロキシル基を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項10】
前記モノエチレン性不飽和モノカルボン酸がアクリル酸および/またはメタクリル酸であることを特徴とする請求項9に記載のポリウレタン分散液。
【請求項11】
前記ジオールトリオールまたはポリオールが、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール、2−アルキル−2−ヒドロキシアルキル−1,3−プロパンジオールおよび/または2,2−ジヒドロキシアルキル−1,3−プロパンジオールであることを特徴とする請求項9または10に記載のポリウレタン分散液。
【請求項12】
前記ジオール、トリオールまたはポリオールが、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、1,3−ジメタノール−シクロヘキサン、1,4−ジメタノール−シクロヘキサン、1,3−ジメタノールベンゼン、1,4−ジメタノールベンゼン、ビス−ヒドロキシエチルビスフェノールA、ジメタノールトリシクロデカン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、アンヒドロエンネアヘプチトール、1,4−ブタンジオール−2、ビス−ヒドロキシエチル−ヒドロキノンビスフェノールA、ビスフェノールF、および/または樹枝状ポリエステルおよび/またはポリエーテルポリオールであることを特徴とする、請求項9乃至11のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項13】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのフリーラジカル的に重合可能な不飽和基を含む前記少なくとも1種の化合物が、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性グリセロールジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性ペンタエリスリトールジまたはトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジまたはトリ(メタ)アクリレートおよび/またはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項14】
前記アルキレンオキシドが、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドであることを特徴とする、請求項13に記載のポリウレタン分散液。
【請求項15】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのフリーラジカル的に重合可能な不飽和基を含む前記少なくとも1種の化合物が、ヒドロキシまたはヒドロキシアルキルビニルエーテルであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項16】
前記少なくとも1種のヒドロキシまたはヒドロキシアルキルビニルエーテルが、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルおよび/またはシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルであることを特徴とする、請求項15に記載のポリウレタン分散液。
【請求項17】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つのフリーラジカル的に重合可能な不飽和基を含む前記少なくとも1種の化合物が、ジオール、トリオールまたはポリオールのアリルエーテルまたはメタアリルエーテルであり、このエーテルは少なくとも1つのエーテル化されていないヒドロキシル基を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項18】
前記アリルまたはメタアリルエーテルが、グリセロール、トリメチルロールエタンまたはトリメチロールプロパンのモノまたはジ(メタ)アリルエーテル、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタンまたはジトリメチロールプロパンのモノ、ジまたはトリ(メタ)アリルエーテル、および/またはジペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラまたはペンタ(メタ)アリルエーテルであることを特徴とする、請求項17に記載のポリウレタン分散液。
【請求項19】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの分散活性基を含む前記少なくとも1種の化合物が、前記少なくとも1つのイソシアネート反応性基、および、少なくとも1つの非イオン性またはアニオン性基、またはアニオン性基に変換することができる少なくとも1つの基、を有する化合物であることを特徴とする、請求項1乃至18のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項20】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの分散活性基を含む前記少なくとも1種の化合物が、ジヒドロキシアルカン酸であることを特徴とする、請求項1乃至19に記載のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項21】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの分散活性基を含む前記少なくとも1種の化合物が、一般式R−C(CHOH)−COOH(式中、Rは水素または、1〜20の炭素原子を有するアルキル基である。)のα,α−ジメチロールアルカン酸であることを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項22】
前記酸が、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールペンタン酸および/または2,2−ジメチロールプロピオン酸であることを特徴とする請求項20または21に記載のポリウレタン分散液。
【請求項23】
少なくとも2つのイソシアネート反応性基を含み、1000g/モル未満の分子量を有する、前記任意選択的な少なくとも1種の化合物が、ジオール、トリオールまたはポリオールであることを特徴とする、請求項1乃至22のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項24】
前記ジオール、トリオールまたはポリオールが、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール、2−アルキル−2−ヒドロキシアルキル−1,3−プロパンジオールおよび/または2,2−ジヒドロキシアルキル−1,3−プロパンジオールであることを特徴とする、請求項23に記載のポリウレタン分散液。
【請求項25】
前記ジオール、トリオールまたはポリオールが、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、1,3−ジメタノール−シクロヘキサン、1,4−ジメタノール−シクロヘキサン、1,3−ジメタノールベンゼン、1,4−ジメタノールベンゼン、ビス−ヒドロキシエチルビスフェノールA、ジメタノールトリシクロデカン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、アンヒドロエンネアヘプチトール、1,4−ブタンジオール−2、ビス−ヒドロキシエチル−ヒドロキノンビスフェノールA、ビスフェノールF、および/または樹枝状ポリエステルおよび/またはポリエーテルポリオールであることを特徴とする、請求項23または24に記載のポリウレタン分散液。
【請求項26】
少なくとも2つのイソシアネート反応性基を含み、1000g/モル未満の分子量を有する、前記任意選択的な少なくとも1種の化合物が、線状または分岐脂肪族、脂環式または芳香族ジ、トリまたはポリアミンであることを特徴とする、請求項1乃至22のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項27】
前記ジ、トリまたはポリアミンが、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブチレンジアミン、ピペラジン、1,4−シクロヘキシルジメチルアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミンおよび/またはジブチレントリアミンであることを特徴とする、請求項26に記載のポリウレタン分散液。
【請求項28】
1:0.8と1:1.2の間、例えば1:1のイソシアネート基対イソシアネート反応性基のモル比であることを特徴とする、請求項1乃至27のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項29】
前記成分は、不活性な水混和性溶媒、例えばアセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンまたはN−メチルピロリドン中で反応されることを特徴とする、請求項1乃至28のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項30】
前記成分が、20〜100℃、例えば50〜80℃の温度で反応されることを特徴とする、請求項1乃至29のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項31】
前記成分が、少なくとも1種の触媒、例えばジブチルスズジラウレート、スズ(II)オクトエートおよび/またはジアゾビシクロ[2.2]オクタンの存在下で反応されることを特徴とする、請求項1乃至30のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項32】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基および少なくとも1つの分散活性基を含む前記少なくとも1種の化合物が、前記少なくとも1つのイソシアネート反応性基、および、少なくとも1つのアニオン性基またはアニオン性基に変換することができる少なくとも1つの基を有する化合物であり、得られた生成物中のアニオン性基の少なくとも30%が少なくとも塩基の添加によって塩性基に変換されることを特徴とする、請求項1乃至31のいずれかに記載のポリウレタン分散液。
【請求項33】
前記少なくとも種の塩基が、少なくとも1種の第1級、第2級または第3級アミンであることを特徴とする、請求項32に記載のポリウレタン分散液。
【請求項34】
前記少なくとも1種のアミンが、トリアルキルアミン、N−アルキルモルホリン、N−ジアルキルアルカノールアミンおよび/またはジアルキルアミンであることを特徴とする、請求項33に記載のポリウレタン分散物。
【請求項35】
請求項1から34のいずれかに記載の少なくとも1種のポリウレタン分散液を含むことを特徴とする組成物。
【請求項36】
前記組成物が、装飾用および/または保護コーティングであることを特徴とする、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記装飾用および/または保護コーティングが、少なくとも1種のフローおよび/またはレベリング剤、少なくとも1種の顔料、少なくとも1種の染料および/または少なくとも1種のフィラーをさらに含むことを特徴とする、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記装飾用および/または保護コーティングが、少なくとも1種の光開始剤をさらに含む放射線硬化性装飾用および/または保護コーティングであることを特徴とする、請求項36または37に記載の組成物。
【請求項39】
前記光開始剤が、ベンゾインまたはベンゾイン誘導体、アセトフェノン、ベンジルまたはベンジルケタール、アントラキノン、トリフェニルホスフィン、ベンゾイルホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、チオキサントン、キサントン、アクリジン誘導体、フェナゼン誘導体および/またはキノキサリン誘導体であることを特徴とする、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記装飾用および/または保護コーティングが、高温でフリーラジカルを形成する少なくとも1種の開始剤をさらに含む熱的に架橋可能な装飾用および/または保護コーティングであることを特徴とする、請求項36または37に記載の組成物。
【請求項41】
前記開始剤が、過酸化ジベンゾイル、クメンヒドロペルオキシドおよび/またはアゾジイソブチロニトリルであることを特徴とする、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
木、紙、織物、革、不織布、プラスチック、ガラス、セラミック、例えば成形したセメント製品および繊維セメント石板のような鉱物を含む建築材料、および金属または被覆金属用の装飾用および/または保護コーティングであることを特徴とする、請求項1乃至34のいずれかに記載のポリウレタン分散液の使用。

【公表番号】特表2008−534710(P2008−534710A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502943(P2008−502943)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000334
【国際公開番号】WO2006/101433
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(502456286)ペルストルプ スペシヤルテイ ケミカルズ アーベー (12)
【氏名又は名称原語表記】Perstorp Specialty Chemicals AB
【住所又は居所原語表記】S−284 80 Perstorp, Sweden
【Fターム(参考)】