説明

水性ポリウレタン樹脂およびコーティング材

【課題】 ノニオン性内部乳化剤が有する側鎖のポリオキシエチレン基によって、得られる被膜に透湿性能を付与し、親水性および疎水性のバランスがとれ、しかも、得られる被膜に、所望の透湿性および強度を付与することができる、水性ポリウレタン樹脂、および、その水性ポリウレタン樹脂を含むコーティング材を提供すること。
【解決手段】 アルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシアルキレンポリオールおよび/またはポリエステルポリオールからなる疎水性マクロポリオールと、少なくとも4、4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を含むポリイソシアネートと、2つ以上の活性水素基または2つ以上のイソシアネート基を含み、側鎖にポリオキシエチレン基を有するノニオン性内部乳化剤とを反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマーを、少なくともポリアミンを含む鎖伸長剤によって鎖伸長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリウレタン樹脂、および、その水性ポリウレタン樹脂を含むコーティング材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被膜の形成などにおいて、ポリウレタン樹脂が用いられている。
近年、環境負荷の観点から、有機溶剤の使用を低減することが望まれており、溶媒として有機溶剤を使用する有機溶媒系ポリウレタン樹脂から、分散媒として水を使用する水性ポリウレタン樹脂への転換が検討されている。
このような水性ポリウレタン樹脂に、親水性基を導入して、親水性を高くし、得られる被膜の透湿性を高くすることが知られている。水性ポリウレタン樹脂に、導入する親水性基の量を多くすれば、水性ポリウレタン樹脂の親水性、および、被膜の透湿性は高くなる一方、導入する親水性基の量を多くしすぎると、水性ポリウレタン樹脂のゲル化などを生じ、安定性が低下したり、被膜の強度が低くなる。
【0003】
一方、水性ポリウレタン樹脂において、疎水性基を導入して親水性を低くすれば、安定性や得られる被膜の強度は高くなるが、透湿性が低くなる。
そのため、水性ポリウレタン樹脂に導入する親水性基および疎水性基の量を調節して、安定性を高くし、所望の透湿性および強度を有する被膜を得ることが、検討されている。
例えば、親水性の水溶性ポリエーテル系ポリウレタンと、疎水性の自己乳化型ポリエーテル系ポリウレタンとを混合した水性ポリウレタン樹脂が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、水性ポリウレタン樹脂に、側鎖型ポリエチレンオキシドまたは懸垂状のポリオキシエチレン鎖を導入することによって、水分散性を向上させることが知られている。(例えば、特許文献2、3参照。)。
さらに、マクロポリオールがポリ(オキシエチレン)ジオールであり、さらに側鎖ポリエーテル鎖含有グリコールを反応させることにより得られる高親水性のポリウレタン樹脂を含む水性ポリウレタン樹脂が、提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【特許文献1】特開2004−256800号公報
【特許文献2】特開昭50−2794号公報
【特許文献3】特開平1−104612号公報
【特許文献4】特開平11−106733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載される水性ポリウレタン樹脂は、親水性のポリウレタンと疎水性のポリウレタンとを混合するのみであるため、混合後における親水性のポリウレタンと疎水性のポリウレタンとの相溶性が不十分であり、安定性が低下する。
また、特許文献2、3に記載される水性ポリウレタン樹脂では、導入する側鎖型ポリエチレンオキシドの量が少なく、ポリウレタン樹脂に水分散性を付与できるものの、得られる被膜に透湿性を付与できるものではない。
【0006】
また、特許文献4に記載される水性ポリウレタン樹脂では、高親水性のポリウレタン樹脂を含むが、水系ポリイソシアネート硬化剤を用いなければ、被膜の強度が発現しない。
本発明の目的は、ノニオン性内部乳化剤が有する側鎖のポリオキシエチレン基によって、得られる被膜に透湿性能を付与し、親水性および疎水性のバランスがとれ、しかも、得られる被膜に、所望の透湿性および強度を付与することができる、水性ポリウレタン樹脂、および、その水性ポリウレタン樹脂を含むコーティング材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、アルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシアルキレンポリオールおよび/またはポリエステルポリオールからなる疎水性マクロポリオールと、少なくとも4、4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を含むポリイソシアネートと、2つ以上の活性水素基または2つ以上のイソシアネート基を含み、側鎖にポリオキシエチレン基を有するノニオン性内部乳化剤と、少なくともポリアミンを含む鎖伸長剤とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、水中に分散または溶解され、前記ポリウレタン樹脂中のポリオキシエチレン基が、15〜50重量%であることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、前記ポリウレタン樹脂中のウレタン基当量およびウレア基当量の総量が、1.8〜3.2ミリモル当量であることが好適である。
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、前記ポリウレタン樹脂中の芳香環および脂環の総量が、12〜30重量%であることが好適である。
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、前記ポリウレタン樹脂は、芳香環および/または脂環が、ウレタン結合またはウレア結合に隣接しているか、または、炭素原子1つを介してウレタン結合またはウレア結合に隣接していることが好適である。
【0009】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、前記鎖伸長剤中、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミンおよび脂環族ポリアミンの総量が、50重量%以上であることが好適である。
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、前記ポリオキシエチレン基の平均分子量が、600〜6000であることが好適である。
【0010】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、前記ノニオン性内部乳化剤は、ウレア基、ウレタン基およびアロファネート基から選択される化学結合を、少なくとも1つ有していることが好適である。
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、前記疎水性マクロポリオールが、アルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシアルキレンポリオールであることが好適である。
【0011】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、透湿防水布帛用途に用いられることが好適である。
また、本発明のコーティング材は、上記の水性ポリウレタン樹脂を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水性ポリウレタン樹脂は、疎水性マクロポリオールと、側鎖にポリオキシエチレン基を有するノニオン性内部乳化剤とを含んでいるので、親水性および疎水性のバランスがとれ、高い安定性を得ることができる。また、ノニオン性内部乳化剤が有する側鎖のポリオキシエチレン基によって、得られる被膜に透湿性能を付与することができるので、そのような被膜に、所望の透湿性および強度を付与することができる。そのため、本発明の水性ポリウレタン樹脂を含むコーティング材は、透湿防水布帛用途として好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の水性ポリウレタン樹脂は、疎水性マクロポリオールと、ポリイソシアネートと、ノニオン性内部乳化剤と、鎖伸長剤とを反応させて得られたポリウレタン樹脂を、水中に分散または溶解することにより、得ることができる。
本発明において、疎水性マクロポリオールは、アルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシアルキレンポリオールおよび/またはポリエステルポリオールからなる。
【0014】
アルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシアルキレンポリオールは、炭素数が3〜10のポリオキシアルキレン基を有するポリオールであって、例えば、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの環状エーテル類を、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの低分子量ジオールを開始剤として、開環付加重合したものなどが挙げられる。
【0015】
好ましくは、アルキレン基の炭素数が3〜7のポリオキシアルキレンポリオール、さらに好ましくは、炭素数4〜6のポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。特に好ましくは、ポリオキシテトラメチレングリコールが挙げられる。ポリオキシテトラメチレングリコールとしては、例えば、保土ヶ谷化学社製PTGシリーズや、PTXGシリーズが挙げられる。
【0016】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコールの1種または2種以上と、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、酒石酸、ピメリン酸、セバチン酸、シュウ酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ダイマー酸、トリメリット酸などの多価カルボン酸またはその誘導体との反応により得られるポリエステルポリオール、または、ε−カプロラクトンなどの開環重合により得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0017】
疎水性マクロポリオールの数平均分子量は、通常、300〜10000、好ましくは、500〜5000である。
このような疎水性マクロポリオールは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用することもできる。また、好ましくは、アルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。
【0018】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂では、疎水性マクロポリオールとともに、低分子量ポリオールを併用することができる。
そのような低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルカン(炭素数7〜22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、アルカン−1,2−ジオール(炭素数17〜20)、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレートなどの低分子量ジオール、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールなどの低分子量トリオールなどが挙げられる。
【0019】
ポリウレタン樹脂中の芳香環および脂環の含量を増やす観点からは、好ましくは、シクロヘキサンジメタノールやキシレングリコールが挙げられる。
低分子量ポリオールは、疎水性マクロポリオール100重量部に対して、0.5〜15重量部、好ましくは、1〜8重量部の割合で配合される。
本発明において、ポリイソシアネートは、少なくとも4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を含み、その他のジイソシアネートを併用することもできる。
【0020】
併用するジイソシアネートとしては、特に制限されず、例えば、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、および、これらジイソシアネートの誘導体や変性体などが挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4´−トルイジンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが挙げられる。
【0021】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,5(2,6)−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどが挙げられる。
【0022】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4、4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどが挙げられる。
【0023】
また、ジイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したジイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレットジオン、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)およびクルードTDIなどが挙げられる。
さらに、ジイソシアネートの変性体としては、例えば、上記したジイソシアネートやジイソシアネートの誘導体と、上記した低分子量ポリオールとを、ジイソシアネートのイソシアネート基が、低分子量ポリオールの水酸基よりも過剰となる当量比で反応させることによって得られる、ポリオール変性体などが挙げられる。
【0024】
ポリイソシアネートとしては、好ましくは、60重量%以上の4、4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を含み、さらに好ましくは、4、4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が単独で用いられる。
本発明において、ノニオン性内部乳化剤は、2つ以上の活性水素基または2つ以上のイソシアネート基を含み、側鎖にポリオキシエチレン基を有している。このノニオン性内部乳化剤において、ポリオキシエチレン基は、好ましくは、50重量%以上、さらに好ましくは、60〜90重量%含有されており、ポリオキシエチレン基の数平均分子量が、好ましくは、600〜6000、さらに好ましくは、700〜3000、とりわけ好ましくは、800〜2500である。
【0025】
2つ以上の活性水素基を含み、側鎖にポリオキシエチレン基を有するノニオン性内部乳化剤(以下、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールという。)は、例えば、まず、ジイソシアネート(上記したジイソシアネート)と片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(C1〜20のアルキル基で末端封止したアルコキシエチレングリコール)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールのヒドロキシル基に対してジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させた後、必要により未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得て、次いで、得られたポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(C1〜20のジアルカノールアミン)とをウレア化反応させることにより、得ることができる。
【0026】
このようにして得られたポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールは、例えば、ウレタン基およびウレア基を有し、次式(1)で示される。
【0027】
【化1】

【0028】
(式中、X1は、ジイソシアネート残基(ジイソシアネートのイソシアネート基以外の部分)、X2は、炭素数1〜20のアルキル基、X3は、炭素数1〜20のアルキル基、nは、13〜140の整数を示す。)
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールは、疎水性マクロポリオール100重量部に対して、20〜300重量部、好ましくは、25〜200重量部の割合で配合される。
【0029】
2つ以上のイソシアネート基を含み、側鎖にポリオキシエチレン基を有しているノニオン性内部乳化剤(以下、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリイソシアネートという。)は、例えば、まず、ジイソシアネート(上記したジイソシアネート)と片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(C1〜20のアルキル基で末端封止したアルコキシエチレングリコール)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールのヒドロキシル基に対してジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させた後、必要により未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得て、次いで、得られたポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジイソシアネートとをアロファネート化反応させることにより、得ることができる。
【0030】
このようにして得られたポリオキシエチレン側鎖含有ポリイソシアネートは、例えば、ウレタン基およびアロファネート基を有し、次式(2)で示される。
【0031】
【化2】

【0032】
(式中、X1およびX4は、互いに同一または相異なって、ジイソシアネート残基(ジイソシアネートのイソシアネート基以外の部分)、X2は、炭素数1〜20のアルキル基、nは、13〜140の整数を示す。)
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリイソシアネートは、ポリイソシアネート100重量部に対して、100〜5000重量部、好ましくは、200〜2000重量部の割合で配合される。
【0033】
なお、上記したポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールおよびポリオキシエチレン側鎖含有ポリイソシアネートの調製において、ジイソシアネートとしては、好ましくは、脂肪族ジイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート)が挙げられる。
本発明において、鎖伸長剤は、少なくともポリアミンを含み、その他のポリオールを併用することもできる。
【0034】
ポリアミンとしては、例えば、4,4´−ジフェニルメタンジアミンなどの芳香族ポリアミン、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジアミンもしくはその混合物などの芳香脂肪族ポリアミン、例えば、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(慣用名:イソホロンジアミン)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジアミンなどの脂環族ポリアミン、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン(水和物を含む。)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族ポリアミン、例えば、N−(2−アミノエチル)エタノールアミンなどのアミノアルコールなどが挙げられる。
【0035】
また、ポリアミンとして、第1級アミノ基,または,第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物や、ポリオキシエチレン基含有ポリアミンも挙げられる。より具体的には、第1級アミノ基,または,第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物として、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有モノアミン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0036】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンは、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社のジェファーミンED―2003、EDR−148、XTJ−512などが挙げられる。
なお、このようなポリアミンは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用することもできる。
【0037】
併用するポリオールとしては、特に制限されず、上記した低分子量ポリオールが挙げられる。低分子量ポリオールは、その目的および用途によって、ポリアミンに対して、適宜の配合割合で用いられる。
鎖伸長剤としては、好ましくは、ポリアミンのみが用いられ、さらに好ましくは、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミンおよび脂環族ポリアミンが、それらの総量が50重量%以上となる割合で用いられ、とりわけ好ましくは、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミンおよび脂環族ポリアミンから選択される少なくとも1種のみが用いられる。
【0038】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、上記各成分とともに、カルボン酸基を含有する活性水素化合物を併用することができる。カルボン酸基を含有する活性水素化合物としては、例えば、1つのアニオン性基を有し、かつ、2つ以上の活性水素基を有する化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2、2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸、例えば、リジン、アルギニンなどのジアミノカルボン酸などが挙げられる。ジヒドロキシルカルボン酸やジアミノカルボン酸中のカルボン酸は、必要に応じて、三級アミンと中和して、塩を形成させおくこともできる。
【0039】
カルボン酸基を含有する活性水素化合物は、疎水性マクロポリオール100重量部に対して、1.5〜10重量部、好ましくは、1〜7重量部の割合で配合される。
次に、本発明の水性ポリウレタン樹脂の製造方法について、説明する。
本発明の水性ポリウレタン樹脂を得るには、まず、疎水性マクロポリオールと、ポリイソシアネートと、ノニオン性内部乳化剤と、必要により低分子量ポリオールと、必要によりカルボン酸基を含有する活性水素化合物とを反応させて、イソシアネート基を分子末端に有するイソシアネート基末端プレポリマーを得る。
【0040】
イソシアネート基末端プレポリマーを得るには、例えば、疎水性マクロポリオールと、ポリイソシアネートと、ノニオン性内部乳化剤と、必要により低分子量ポリオールと、必要によりカルボン酸基を含有する活性水素化合物とを、ヒドロキシル基に対するイソシアネート基の当量比(NCO/OH)において、1を越える割合、好ましくは、1.1〜10の割合において配合し、バルク重合や溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、反応性および粘度の調節がより容易な溶液重合によって反応させる。
【0041】
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下において、ポリイソシアネートを撹拌しつつ、これに、疎水性マクロポリオールと、ノニオン性内部乳化剤と、必要により低分子量ポリオールと、必要によりカルボン酸基を含有する活性水素化合物とを加えて、反応温度75〜85℃で、1〜20時間程度反応させる。
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下において、有機溶媒に、疎水性マクロポリオールと、ポリイソシアネートと、ノニオン性内部乳化剤と、必要により低分子量ポリオールと、必要によりカルボン酸基を含有する活性水素化合物とを加えて、反応温度20〜80℃で、1〜20時間程度反応させる。
【0042】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどが挙げられる。
また、このような反応では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの公知のウレタン化触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから未反応ポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の手段により除去することもできる。
【0043】
また、カルボン酸基を含有する活性水素化合物が含まれている場合には、反応前または反応後に、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類や、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、その他、アンモニアなどの中和剤を添加して、アニオン性基が塩を形成するように、中和することもできる。このような中和剤は、例えば、アニオン性基1当量あたり、0.4〜1.2当量、さらには、0.6〜1.00当量の割合で添加する。
【0044】
そして、本発明の水性ポリウレタン樹脂を得るには、次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させて、分散または溶解する。これによって、イソシアネート基末端プレポリマーが鎖伸長剤によって鎖伸長されたポリウレタン樹脂が、水中に分散または溶解した状態の、水性ポリウレタン樹脂を得ることができる。
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、イソシアネート基末端プレポリマーを水中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、これに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤によって鎖伸長する。
【0045】
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100重量部に対して、水20〜500重量部の割合において、水中に、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを添加する。
また、鎖伸長剤は、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、攪拌下、鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基およびヒドロキシル基)に対するイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、0.8〜1.2の割合となるように、滴下する。鎖伸長剤は、好ましくは、30℃以下の温度で滴下し、滴下終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。
【0046】
なお、反応終了後には、ポリウレタン樹脂が溶液重合により得られている場合には、有機溶媒を、例えば、減圧下において、適宜の温度で加熱することにより除去する。
そして、本発明の水性ポリウレタン樹脂においては、ポリウレタン樹脂(つまり、水性ポリウレタン樹脂の固形分)中には、ポリオキシエチレン基が、15〜50重量%、好ましくは、20〜45重量%、とりわけ好ましくは、25〜40重量%の割合で含まれている。ポリウレタン樹脂中のポリオキシエチレン基の割合が、これより少ないと、得られる被膜の透湿性が低くなり、これより多いと、得られる被膜の強度が発現しにくくなる。
【0047】
また、ポリウレタン樹脂(つまり、水性ポリウレタン樹脂の固形分)中には、ウレタン基当量およびウレア基当量の総量が、好ましくは、1.8〜3.2ミリモル当量、さらに好ましくは、2.0〜3.0ミリモル当量、とりわけ好ましくは、2.1〜2.9ミリモル当量の割合で含まれている。ポリウレタン樹脂中のウレタン基当量およびウレア基当量の総量が、これより少ないと、得られる被膜の強度が発現しにくくなり、これより多いと、得られる被膜の柔軟性が損なわれ、非常に硬い被膜になったり、もろくなったりする。
【0048】
また、ポリウレタン樹脂(つまり、水性ポリウレタン樹脂の固形分)中には、芳香環および脂環の総量が、好ましくは、12〜30重量%、さらに好ましくは、14〜20重量%の割合で含まれている。ポリウレタン樹脂中の芳香環および脂環の総量が、これより少ないと、得られる被膜の強度が発現しにくくなり、これより多いと、得られる被膜の柔軟性が損なわれ、非常に硬い被膜になったり、もろくなったりする。
【0049】
また、ポリウレタン樹脂では、好ましくは、芳香環および/または脂環のすべてが、ウレタン結合またはウレア結合に隣接しているか、または、炭素原子1つを介してウレタン結合またはウレア結合に隣接する部分化学構造を有している。
より具体的には、このような部分化学構造は、例えば、ポリイソシアネートとして、4、4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が用いられ、鎖伸長剤として、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミンおよび脂環族ポリアミンから選択されるポリアミンが用いられた場合に、構成される。
【0050】
また、このようにして得られる水性ポリウレタン樹脂には、水性ポリウレタン樹脂の安定性を向上させるために、耐水性を阻害しない範囲において、界面活性剤を配合することができる。
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどのノニオン系界面活性剤、例えば、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アミンオキサイドなどのカチオン系および両性イオン系界面活性剤などが挙げられる。好ましくは、ノニオン系界面活性剤が挙げられる。これら界面活性剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用することもできる。
【0051】
界面活性剤を配合する割合は、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂(つまり、水性ポリウレタン樹脂の固形分)100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは、0.1〜5重量部である。
また、界面活性剤は、例えば、水中に分散する前のイソシアネート基末端プレポリマーに配合してもよく、また、ポリウレタン樹脂が水中に分散した後に配合してもよく、さらに、溶液重合の場合には、有機溶媒の除去後に配合することもできる。
【0052】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂には、その目的および用途に応じて、種々の添加剤、例えば、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、防カビ剤、防錆剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料、硬化剤、タック防止剤などを適宜配合することができる。
【0053】
これら各種の添加剤の配合割合は、その目的および用途により適宜選択される。
そして、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、疎水性マクロポリオールと、側鎖にポリオキシエチレン基を有するノニオン性内部乳化剤とを含んでいるので、親水性および疎水性のバランスがとれ、高い安定性を得ることができる。また、ノニオン性内部乳化剤が有する側鎖のポリオキシエチレン基によって、得られる被膜に透湿性能を付与することができるので、そのような被膜に、所望の透湿性および強度を付与することができる。そのため、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、透湿防水布帛用途のコーティング材として、好適に用いられる。
【0054】
本発明のコーティング材は、上記により得られた本発明の水性ポリウレタン樹脂からなり、公知のキャスティング法またはコーティング法により、布帛にコーティングする。
コーティング材のキャスティングまたはコーティングは、公知のキャスティング法またはコーティング法が用いられる。より具体的には、ラミネート法、ダイレクトコート法などが用いられ、適宜その目的および用途によって選択される。
【0055】
ラミネート法では、例えば、コーティング材を、離型紙などの表面に塗布して熱処理した後、その離型紙を布帛に積層して熱融着する。
布帛としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、綿などの繊維からなる織物、編物、不織布などが挙げられる。
そして、このようなキャスティングにより、布帛の表面に、ポリウレタン樹脂からなる透湿防水性を有する被膜が形成され、これによって、布帛の表面が透湿防水加工される。
【0056】
また、ダイレクトコート法では、例えば、布帛に、例えば、ナイフコーターなどを用いて直接塗布する。
そして、このようなコーティングにより、基布の表面に、ポリウレタン樹脂からなる透湿防水性を有する被膜が形成され、これによって、布帛の表面が透湿防水加工される。
なお、透湿防水性とは、被膜が、雨やその他の水は通さないが、湿気(水蒸気)を通す性能であって、例えば、衣料用途では、身体からの発汗による水蒸気を衣服外へ放出し、かつ、雨が衣服内に入ることを防止する性能である。なお、透湿防水性を有した被膜は、その被膜が微多孔質または無孔質のいずれでもよい。
【0057】
なお、本発明のコーティング材は、形成された被膜の引張強度が、例えば、5MPa以上、好ましくは、7MPa以上であり、伸び率が、例えば、200%以上、好ましくは、300%以上、さらに好ましくは、400%以上であり、100%モジュラスが、1.0MPa以上、2.5MPa以下であることが好適である。
また、本発明のコーティング材は、形成された被膜の透湿性が、透湿性試験A−1法(JIS L1099に準拠)において、キャスティングした被膜の厚み0.02mmで、例えば、4500(g/m2・24hrs)以上、好ましくは、5000(g/m2・24hrs)以上であることが好適である。
【0058】
なお、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、上記したような、透湿防水布帛用途のコーティング材に限らず、例えば、自動車、電子機器、建材、人工皮革などの各種用途にも用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下に、合成例、実施例および比較例を参照して、本発明をさらに具体的に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、重量基準である。
合成例1(ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールAの合成)
温度計、窒素ガス導入管および攪拌機を備えた反応器中で、窒素ガスを導入しながら、ヘキサメチレンジイソシアネート(タケネートT−700、三井武田ケミカル社製)627.1部、50℃に加温した数平均分子量1000のメトキシポリエチレングリコール(MPEG−1000、東邦化学社製)372.9部を仕込み、80℃で6時間反応させた。所定のイソシアネート基含有量に到達した後、スミス式薄膜蒸留器にて未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを取り除き、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートAを得た。このポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートAの計算上の数平均分子量は、1168g/モルであった。
【0060】
次いで、温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応器中で、室温下、窒素ガスを導入しながら、ジエタノールアミン83.9部を仕込んだ。冷却しながら、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートA916.1部を添加し、60℃で3時間反応させた。赤外スペクトルにて尿素結合の生成を確認し、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールAを得た。このポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールAは、78.5重量%のポリオキシエチレン基を含有し、その計算上の数平均分子量は、1275g/モルであった。
【0061】
合成例2(ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールBの合成)
温度計、窒素ガス導入管および攪拌機を備えた反応器中で、窒素ガスを導入しながら、ヘキサメチレンジイソシアネート(タケネートT−700、三井武田ケミカル社製)456.8部、50℃に加温した数平均分子量2000のメトキシポリエチレングリコール(アルドリッチ社製試薬)543.2部を仕込み、80℃で6時間反応させた。所定のイソシアネート基含有量に到達した後、スミス式薄膜蒸留器にて未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを取り除き、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートBを得た。このポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートBの計算上の数平均分子量は、2168g/モルであった。
【0062】
次いで、温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応器中で、室温下、窒素ガスを導入しながら、ジエタノールアミン47.0部を仕込んだ。冷却しながら、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートB953.0部を添加し、60℃で3時間反応させた。赤外スペクトルにて尿素結合の生成を確認し、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールBを得た。このポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールBは、87.9重量%のポリオキシエチレン基を含有し、その計算上の数平均分子量は、2275g/モルであった。
【0063】
実施例1
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、ポリイソシアネートとして、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(商品名デスモジュールW、バイエル社製)87.4gと、疎水性マクロポリオールとして、数平均分子量2000のポリオキシテトラメチレングリコール(商品名PTG−2000SN、保土ヶ谷化学社製)136gと、低分子量ポリオールとして、エチレングリコール2.8gと、ノニオン系内部乳化剤として、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールA158gと、有機溶媒として、アセトニトリル170gとを仕込み、窒素雰囲気下で、反応液温度を75〜78℃に調整して、反応触媒としてオクチル酸第1錫(商品名:スタノクト、APIコーポレーション社製)を微量加え、7時間で反応率99%以上まで反応させた。次いで、これを30℃まで冷却し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。
【0064】
次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水650gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、イソシアネート基末端プレポリマーを添加して水分散した。次いで、鎖伸長剤として、イソホロンジアミン(デグサ−ヒュルス社製)15.4gを加え、3時間攪拌した。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、水性ポリウレタン樹脂を調製した。
【0065】
得られた水性ポリウレタン樹脂について、固形分(重量%)、粘度(mPa・s)および平均粒子径(nm)と、ポリウレタン樹脂について、ポリオキシエチレン基の含有量(EO含量(重量%))、ウレタン基当量およびウレア基当量の総量(ウレタン/ウレア基当量(mmol/g)、芳香環および脂環の総量(総リング含量(重量%))とを表1に示す。なお、平均粒子径は、粒子径測定装置(N4Plus Submicron Particle Sizer、COULTER社製)により測定した。
【0066】
実施例2〜9および比較例1〜3
下記の表1に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、水性ポリウレタン樹脂を調製した。
また、実施例1と同様に、得られた水性ポリウレタン樹脂について、固形分(重量%)、粘度(mPa・s)および平均粒子径(nm)と、ポリウレタン樹脂について、ポリオキシエチレン基の含有量(EO含量(重量%))、ウレタン基当量およびウレア基当量の総量(ウレタン/ウレア基当量(mmol/g)、芳香環および脂環の総量(総リング含量(重量%))とを表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
なお、表1中の略号は、下記の通りである。
12MDI:4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、商品名デスモジュールW、バイエル社製
6XDI:1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、商品名タケネート600、三井武田ケミカル社製
IPDI:イソホロンジイソシアネート、デグサ−ヒュルス社製
PTG−1:数平均分子量2000のポリオキシテトラメチレングリコール、商品名PTG−2000SN、保土ヶ谷化学社製
PTG−2:数平均分子量1000のポリオキシテトラメチレングリコール、商品名PTG−1000、保土ヶ谷化学社製
ESTER−1:1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アジピン酸からなる、数平均分子量2000のポリエステルポリオール
EG:エチレングリコール
A:ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールA
B:ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールB
AN:アセトニトリル
IPDA:イソホロンジアミン、デグサ−ヒュルス社製
6XDA:1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、三菱ガス化学社製
HYD:ヒドラジン・1水和物
評価
1)透湿性試験A法
各実施例および各比較例の水性ポリウレタン樹脂を、キャスティングして、膜厚0.02mmの乾燥透明被膜を形成した。その後、この被膜を、JIS L1099−A1法に準拠して透湿性を評価した。その結果を表1に示す。
2)機械強度試験
各実施例および各比較例の水性ポリウレタン樹脂を、キャスティングして、膜厚0.1mmの乾燥透明被膜を形成した。その後、この被膜を1cmの短冊状に切断し、引張り速度200mm/分の条件で引張り試験し、破断時の応力(引張強度(MPa))、伸び率(%)および100%モジュラス(MPa)を測定した。その結果を表1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシアルキレンポリオールおよび/またはポリエステルポリオールからなる疎水性マクロポリオールと、
少なくとも4、4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を含むポリイソシアネートと、
2つ以上の活性水素基または2つ以上のイソシアネート基を含み、側鎖にポリオキシエチレン基を有するノニオン性内部乳化剤と、
少なくともポリアミンを含む鎖伸長剤と
を反応させて得られたポリウレタン樹脂が、水中に分散または溶解され、
前記ポリウレタン樹脂中のポリオキシエチレン基が、15〜50重量%であることを特徴とする、水性ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂中のウレタン基当量およびウレア基当量の総量が、1.8〜3.2ミリモル当量であることを特徴とする、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂中の芳香環および脂環の総量が、12〜30重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂は、芳香環および/または脂環が、ウレタン結合またはウレア結合に隣接しているか、または、炭素原子1つを介してウレタン結合またはウレア結合に隣接していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項5】
前記鎖伸長剤中、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミンおよび脂環族ポリアミンの総量が、50重量%以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項6】
前記ポリオキシエチレン基の平均分子量が、600〜6000であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項7】
前記ノニオン性内部乳化剤は、ウレア基、ウレタン基およびアロファネート基から選択される化学結合を、少なくとも1つ有していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項8】
前記疎水性マクロポリオールが、アルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシアルキレンポリオールであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項9】
透湿防水布帛用途に用いられることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂を含んでいることを特徴とする、コーティング材。

【公開番号】特開2006−335950(P2006−335950A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164328(P2005−164328)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【Fターム(参考)】