説明

水性塗料組成物、及びこの組成物を使用するプラスチック成型品の塗装方法

【課題】90℃以下の低温焼付でも厚膜形成時の耐水性、耐湿性、耐ガソホール性、耐溶剤性、耐擦り傷性などに優れた塗膜を形成する水性塗料組成物、及びこの組成物を使用するプラスチック成型品の塗装方法を提供する。
【解決手段】(A)融点が120℃以下で且つ重量平均分子量が30,000〜200,000の範囲内にある不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)を水性媒体中に分散せしめてなる変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)カルボジイミド基、オキサゾリン基及びカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する樹脂、及び(C)顔料を含有することを特徴とする水性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、90℃以下の低温焼付でも厚膜形成時の耐水性、耐湿性、耐ガソホール性、耐溶剤性、耐擦り傷性などに優れた塗膜を形成する水性塗料組成物、及びこの組成物を使用するプラスチック成型品の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車外板部、家電製品などの部材として金属に代って、エチレン、プロピレンなどのオレフィンを含むポリオレフィンの成型品が多く使用されている。そして、これらの成型品にポリイソシアネート化合物を含有する2液型上塗り塗料を塗装する場合、上塗り塗膜と成型品との付着性を向上させるために、通常、塩素化ポリオレフィンを含有するプライマーがあらかじめ塗装されている。
【0003】
しかしながら、ポリオレフィン成型体にこれまで含有されていたゴム成分(例えば、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴムなど)や水酸基含有ポリオレフィンを減量したり又は全く添加されないことが多くなったために、かかるプライマーでは成型品との付着性が低下するという欠陥が発生していた。
【0004】
上記問題を解決するため、本出願人は、特定の塩素化ポリオレフィン及びブロックポリイソシアネートを使用し、これらをポリオール樹脂と併用してなるプライマーを提案した(特許文献1参照)。
【0005】
上記のようなプライマーでは、使用されているポリオレフィンの溶解性の点からトルエンやキシレンなどの芳香族系有機溶剤を使用してきたが、安全衛生、環境保全の観点から、上記のようなプライマーについても水性化が求められていた。
【0006】
これに対して塩素化ポリオレフィンの水性分散液を製造する試みが種々なされてきており、例えば特許文献2や特許文献3において、その方策が提案されている。
【0007】
他方、ポリオレフィン成型体の高剛性化が進んでおり、特に80〜90℃程度の低温焼付条件において、従来プライマーに用いられてきた塩素化ポリオレフィンの水性分散液では形成塗膜の付着性が十分に得られず、対応が困難になってきている。更に、自動車部品用途では耐ガソホール性等も兼ね備えることが求められるようになり、一層対応が困難な状況にあった。
【0008】
一方、自動車の内装にもポリオレフィン素材のプラスチック成型品が多く使用されつつあり、これらにも1コート仕上げでしかも80〜90℃の焼付条件よりさらに低温での焼付けによって付着性だけでなく耐溶剤性、耐擦り傷性などにも優れた塗膜の形成が求められている。
【0009】
【特許文献1】特開2002−121462号公報
【特許文献2】特開2003−327761号公報
【特許文献3】特開2004−91559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、90℃以下の低温焼付でも厚膜形成時の耐水性、耐湿性、耐ガソホール性、耐溶剤性、耐擦り傷性などに優れた塗膜を形成する水性塗料組成物、及びこの組成物を用いたプラスチック成型品の塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が鋭意検討した結果、特定の変性ポリオレフィンの水分散体、特定の架橋性官能基を有する樹脂、及び顔料を配合することによって上記目的に達し得ることを見出し本発明に至った。
【0012】
即ち本発明は、(A)融点が120℃以下で且つ重量平均分子量が30,000〜200,000の範囲内にある不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)を水性媒体中に分散せしめてなる変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)カルボジイミド基、オキサゾリン基及びカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する樹脂、及び(C)顔料を含有することを特徴とする水性塗料組成物、及びこの組成物を用いたプラスチック成型品の塗装方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、変性ポリオレフィンの水分散体に特定の架橋性官能基を有する樹脂を併用することによって、90℃以下の低温焼付でも成型品との付着性に優れ、しかも耐水性、耐湿性、耐ガソホール性にも優れた塗膜を形成することが可能であり、さらには1コート仕上げで成型品との付着性に優れ、しかも耐溶剤性、耐擦り傷性に優れた塗膜を形成することが可能である。従って本発明の水性塗料組成物は、自動車外板部品用のプライマーとして、また内装部品用の1コート仕上げ塗料として非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で使用する変性ポリオレフィンの水分散体(A)は、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)を水性媒体中に分散してなるものである。
【0015】
不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)は、通常、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンなどの炭素数が2〜10のオレフィン類から選ばれた1種又は2種以上を重合せしめてなるポリオレフィンを、さらに(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸又はこれらの酸無水物を用いて、既知の方法に従ってグラフト共重合して変性したものであり、特にマレイン酸又はその酸無水物によって変性されたものが好適である。該不飽和カルボン酸又はその酸無水物によるグラフト共重合量は、ポリオレフィンの固形分重量に対して1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%の範囲内が適当である。
【0016】
上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)に使用されるポリオレフィンとしては、特に得られるポリオレフィンの分子量分布が狭く、ランダム共重合性等にも優れる等の点から、その重合触媒としてシングルサイト触媒を用いて製造されたものが好適である。シングルサイト触媒は、活性点が同種(シングルサイト)のものであり、該シングルサイト触媒の中でも特にメタロセン系触媒が好ましく、該メタロセン系触媒は、通常、共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4〜6族及び8族の遷移金属化合物や3族の希土類遷移金属化合物であるメタロセン(ビス(シクロペンタジエニル)金属錯体及びその誘導体)と、これを活性化できるアルミノキサン等の助触媒、さらにトリメチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を組合せて得られるものである。該ポリオレフィンの製造方法には、従来公知の方法が採用でき、例えばプロピレンやエチレン等と水素を反応容器に供給しながら連続的にアルキルアルミニウムとメタロセン系触媒を添加しながら製造する方法が挙げられる。
【0017】
また上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)は、必要に応じて、さらにアクリル変性されていても良い。該アクリル変性に使用する重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどのアクリル系モノマーやさらにスチレンなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0018】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0019】
上記アクリル変性の方法としては、例えば不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン中のカルボキシル基に対して反応性を有する、例えば(メタ)アクリル酸グリシジルなどをまず反応させて重合性不飽和基を導入し、次いで他のモノマーを単独で又は2種以上混合して用いて、重合性不飽和基が導入された不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィンと共重合させるなどの方法が挙げられる。アクリル変性する場合の上記重合性不飽和モノマーの使用量は、得られる変性ポリオレフィン(a)中において固形分重量で85重量%以下、好ましくは0.1〜80重量%の範囲内とすることが他成分との相溶性や形成塗膜の付着性の点から望ましい。
【0020】
また上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)は、90℃以下の低温焼付で厚膜形成時の耐水性、耐湿性、耐ガソホール性等の点から、必要に応じて、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物によって変性されていても良い。ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物におけるポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック鎖などを挙げることができる。
【0021】
ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物は、数平均分子量が400〜3,000、好ましくは500〜2,000の範囲内にあることが好適である。数平均分子量が400より小さい場合には親水基としての効果を十分発揮することができず、また塗膜性能(特に耐水性)に悪影響を及ぼすため好ましくなく、一方、3,000より大きい場合には、室温において固形化し溶解性が悪くなるため、取り扱いにくく好ましくない。
【0022】
上記ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物による変性は、特に不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィンに水酸基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(i)を反応させて得られるものや、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィンが上述のようにアクリル変性されたものである場合には重合性不飽和基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(ii)を用いてなるものが好適に使用できる。
【0023】
上記水酸基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(i)としては、例えばポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルファニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミンのエチレンオキサイドプロピレンオキサイド重合体付加物などのポリオキシアルキレンアルキルアミン等が挙げられ、これらは1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィンと水酸基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(i)との反応は、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィンを80〜200℃で加熱溶融し、そこへ化合物(i)を添加し、必要に応じて塩基性物質等を添加し加熱して行うことができる。その使用割合は、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィンの固形分100重量部に対して化合物(i)0.5〜50重量部、好ましくは0.5〜25重量部の範囲内が望ましい。
【0024】
上記重合性不飽和基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(ii)としては、例えばポリエリレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルマレイン酸エステル、アリル基含有ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどが挙げられ、これらは1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(i)と重合性不飽和基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(ii)との反応は、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィンを80〜200℃で加熱溶融し、上記アクリル変性の説明で述べた通り不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン中のカルボキシル基に対して反応性を有する、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどを添加し、必要に応じて重合禁止剤や塩基性物質等を添加し加熱して変性ポリオレフィンに重合性不飽和基をまず導入し、次いでそこへ化合物(ii)を添加し、必要に応じて重合開始剤等を添加し加熱して行うことができる。その使用割合は、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィンの固形分100重量部に対して化合物(ii)0.5〜50重量部、好ましくは0.5〜25重量部の範囲内が望ましい。
【0025】
また上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)は、必要に応じて、さらに塩素化されていても良い。ポリオレフィンの塩素化は、例えば、ポリオレフィン又はその変性物の有機溶剤溶液又は分散液に塩素ガスを吹き込むことによって行うことができ、反応温度は50〜120℃とすることができる。ポリオレフィンの塩素化物(固形分)中の塩素含有率は、ポリオレフィンの塩素化物に望まれる物性などに応じて変えることができるが、形成塗膜の付着性などの点から、一般には、ポリオレフィンの塩素化物の重量を基準にして35重量%以下、特に10〜30重量%、さらに特に12〜25重量%の範囲内とすることが望ましい。
【0026】
上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)に使用されるポリオレフィンは、特にプロピレンを重合成分として含有するものであることが好適であり、該不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)におけるプロピレンの重量分率は、0.5〜0.99、好ましくは0.7〜0.95であることが他成分との相溶性や形成塗膜の付着性の点から好適である。
【0027】
上記の通り得られる不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)は、融点が120℃以下、好ましくは50〜100℃の範囲内であり、重量平均分子量(Mw)が30000〜180000、好ましくは50000〜120000の範囲内である。これらの範囲から逸脱すると本発明の目的が達成されず、他成分との相溶性、形成塗膜のポリオレフィン基材や上塗り塗膜層との層間付着性が低下するので好ましくない。また不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)の融解熱量は、1〜50mJ/mg、好ましくは2〜50mJ/mgの範囲内であることが上記のような付着性の点から望ましい。
【0028】
ここで融点及び融解熱量は、「DSC−5200」(セイコー電子工業社製、商品名)を使用し、変性ポリオレフィン20mgを用いて、−100℃から150℃まで昇温速度10℃/分にて熱量を測定して得た。融点の調整はポリオレフィンの組成、特にα−オレフィンモノマー量を変化させることにより行なうことができる。融解熱量が求め難い場合には、測定試料を120℃まで加熱後、10℃/分で冷却してから、2日以上静置し上記の方法で熱量を測定しても良い。
【0029】
また上記変性ポリオレフィンの重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値であり、「HLC/GPC150C」(Water社製、60cm×1)により、カラム温度135℃、溶媒としてo−ジクロロベンゼンを使用し、流量1.0ml/minで測定したものである。注入試料は、o−ジクロロベンゼン3.4mlに対しポリオレフィン5mgの溶液濃度となるように140℃で1〜3時間溶解して調製した。尚、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィに用いるカラムとしては、「GMHHR −H(S)HT」(東ソー(株)社製、商品名)を挙げることができる。
【0030】
本発明では、さらに上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)の重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.5〜4.0、好ましくは2.0〜3.5であることが他成分との相溶性や形成塗膜の付着性の点から望ましい。
【0031】
本発明において、変性ポリオレフィンの水分散体(A)は、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)を水性媒体中に分散することによって得られるものであり、必要に応じて、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)中のカルボキシル基の一部もしくは全部をアミン化合物で中和する、及び/又は乳化剤で水分散して得られるものである。上記変性ポリオレフィン(a)がポリオキシアルキレン鎖を有する場合には、該アミン化合物や乳化剤を使用せず、もしくは少量使用で変性ポリオレフィン(a)を水性媒体中に分散することが可能である。
【0032】
上記アミン化合物として、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、モルホリンなどの2級アミン;プロピルアミン、エタノールアミンなどの1級アミンなどがあげられる。
【0033】
上記アミン化合物を使用する場合には、その使用量が上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)中のカルボキシル基に対して0.1〜1.0モル当量の範囲内であることが望ましい。
【0034】
上記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のノニオン系乳化剤;アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸などのナトリウム塩やアンモニウム塩等のアニオン系乳化剤などが挙げられ、さらに1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤や1分子中に該アニオン性基と重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤なども挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0035】
上記乳化剤の使用量は、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)の固形分100重量部に対して30重量部以下、好ましくは0.5〜25重量部の範囲内であることが望ましい。
【0036】
本発明において樹脂(B)は、カルボジイミド基、オキサゾリン基及びカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する樹脂である。
【0037】
カルボジイミド基含有樹脂は、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめることにより得ることができ、該当する市販品としては、例えば、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)などを用いることができる。
【0038】
オキサゾリン基含有樹脂としては、オキサゾリン基を有する重合体、例えばオキサゾリン基を有する重合性不飽和モノマーを、必要に応じその他の重合性不飽和モノマーと従来公知の方法(例えば溶液重合、乳化重合等)によって共重合させることにより得られる(共)重合体を挙げることができる。
【0039】
オキサゾリン基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどを挙げることができる。
【0040】
上記のその他の重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜24個のアルキルまたはシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数2〜8個のヒドロキシアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上適宜選択される。
【0041】
上記オキサゾリン基を有する重合性不飽和モノマー及びその他の重合性性不飽和モノマーの共重合割合は、貯蔵性や厚膜形成時の耐水性、耐ガソホール性等の点から、オキサゾリン基を有する重合性不飽和モノマーが3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、その他の重合性不飽和モノマーが60〜97重量%、好ましくは70〜95重量%の範囲内が適当である。
【0042】
上記オキサゾリン基含有樹脂の数平均分子量は500〜100,000、好ましくは1,000〜50,000、さらに好ましくは3,000〜30,000の範囲内が好適である。得られるオキサゾリン基含有樹脂は水溶性もしくは水分散性のいずれかであることが望ましい。
【0043】
上記カルボジイミド基含有樹脂及び/又はオキサゾリン基含有樹脂を(B)成分として用いる場合、前記変性ポリオレフィンの水分散体(A)中のカルボキシル基と反応し得るものである。
【0044】
カルボニル基含有樹脂としては、例えばカルボニル基を有する重合体、例えばカルボニル基を有する重合性不飽和モノマーを、必要に応じその他の重合性不飽和モノマーと従来公知の方法(例えば溶液重合、乳化重合等)によって共重合させることにより得られる(共)重合体を挙げることができる。
【0045】
カルボニル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等が挙げられる。このうち特にダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミドが好適である。
【0046】
上記カルボニル基を有する重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーとしては、前記オキサゾリン基含有樹脂の説明で列記したその他の重合性不飽和モノマーから適宜選択して使用することができる。
【0047】
カルボニル基を有する重合体の製造は、上記カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを用いて多段階で乳化重合を行なっても良く、具体的には、まず内部層成分を形成するモノマー混合物を、乳化剤の存在下で重合開始剤を使用して第1段階の乳化重合を行い重合体水分散液を得た後、該水分散液中に、外層成分を形成するモノマー混合物を乳化剤及び重合開始剤を使用して第2段階以降の乳化重合を順次同様に行うことが挙げられ、それにより複層構造を有する乳化重合体の水分散液を得ることができる。
【0048】
上記カルボニル基を含有する重合性不飽和モノマー及びその他の重合性性不飽和モノマーの共重合割合は、貯蔵性や厚膜形成時の耐水性等の点から、カルボニル基を含有する重合性不飽和モノマーが3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、その他の重合性不飽和モノマーが60〜97重量%、好ましくは70〜95重量%の範囲内が適当である。
【0049】
上記カルボニル基含有樹脂としては、また、ケトン類(シクロヘキサノン,メチルシクロヘキサノン,アセトフェノン等)とホルムアルデヒドの縮合により得られるケトン樹脂も使用可能で、得られたケトン部分を水素添加したしたものも使用することができる。
【0050】
上記カルボニル基含有樹脂を(B)成分として用いる場合には、本発明組成物にヒドラジド基含有化合物又はセミカルバジド基含有化合物を配合することが望ましい。該ヒドラジド基含有化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の2〜18個の炭素原子を有する飽和ジカルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸ジヒドラジド;フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジドまたはイソフタル酸ジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジドまたはテトラヒドラジド;ニトリロトリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジンまたはヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させることにより得られるポリヒドラジド;炭酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0051】
またセミカルバジド基含有化合物としては、例えば、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート又はそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド、該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルとポリオール類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物等のセミカルバジド基を有する化合物;ビスアセチルジヒドラゾン等のヒドラゾン基を有する化合物等が挙げられる。
【0052】
上記ヒドラジド基含有化合物又はセミカルバジド基含有化合物は、カルボニル基含有樹脂中に含まれるカルボニル基1モルに対してヒドラジド基含有化合物中のヒドラジド基又はセミカルバジド基含有化合物中のセミカルバジド基が0.01〜2モル程度となるように配合されることが望ましい。
【0053】
本発明では、貯蔵性や厚膜形成時の耐水性、耐ガソホール性、さらには耐溶剤性や耐擦り傷性等の点から、成分(A)及び(B)の使用比が、(A)/(B)の固形分重量比で10/90〜80/20、好ましくは25/75〜70/30の範囲内であることが望ましい。
【0054】
本発明の水性組成物は、顔料(C)を含有する。かかる顔料(C)としては、導電性顔料、着色顔料、体質顔料などが挙げられ、特に導電性顔料を用いることによって、プライマーとして有用な導電性の塗膜が得られ、それによって上塗り塗料を静電塗装することが可能となり、また内装用途にも帯電防止の点から有用である。
【0055】
上記導電性顔料としては、形成される塗膜に導電性を付与することができるものであれば特に制限はなく使用することができ、粒子状、フレーク状、ファイバー(ウィスカー含む)状などのいずれの形状のものであってもよく、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンマイクロコイル等の導電性カーボンや、銀、ニッケル、銅、グラファイト、アルミニウム等の金属粉が挙げられる。さらに、アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、酸化錫/アンチモンで表面被覆された針状酸化チタン、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、インジウム錫オキシド、カーボンやグラファイトのウィスカー表面に酸化錫等を被覆した顔料;フレーク状のマイカ表面に酸化錫やアンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫及び酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性金属酸化物を被覆した顔料;二酸化チタン粒子表面に酸化錫及びリンを含む導電性を有する顔料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0056】
これらのうち導電性カーボンを用いることが好適であり、特に比表面積が400m/g以上、好ましくは600m/g以上である導電性カーボンが好適に使用できる。
【0057】
上記着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、ベンガラ、アルミペースト、アゾ系、フタロシアニン系などが挙げられ、体質顔料としては、例えば、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、亜鉛華(酸化亜鉛)などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。特に内装用途においてはタルクや硫酸バリウムなどの体質顔料を適宜配合することにより艶消し塗膜を形成可能となる。
【0058】
また本発明組成物を明度の高い塗料とする場合には、顔料(C)として白色顔料、その中でも特に酸化チタンを含有することが望ましく、意匠性や耐薬品性などの点から、その平均粒子径が約0.05〜約2μm、特に0.1〜1μmの範囲内にあるものを使用するのが好適である。
【0059】
顔料(C)の使用量は、形成塗膜の付着性、耐水性等の点から、組成物中の全樹脂固形分100重量部に対して0.5〜200重量部、好ましくは1〜150重量部の範囲内である。そのうち導電性カーボンを使用する場合には、その使用量は組成物中の全樹脂固形分100重量部に対して0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部の範囲内であることが望ましい。さらに上記白色顔料を使用する場合、その含有量は、形成塗膜のL値が35以上となるように選択されることが望ましく、通常、組成物中の全樹脂固形分100重量部に対して50〜150重量部、好ましくは70〜130重量部の範囲内が適当である。
【0060】
本発明の水性塗料組成物は、以上に述べた変性ポリオレフィンの水分散体(A)、カルボジイミド基、オキサゾリン基及びカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する樹脂(B)及び顔料(C)を常法に従い配合し、適宜水性媒体、例えば脱イオン水で希釈することにより調製することができる。
【0061】
本発明では、さらに必要に応じてイオン性官能基を含有するアクリル樹脂(D)を配合することができる。該樹脂(D)としては、イオン性官能基を有するものであれば特に制限なく従来公知のアクリル樹脂が使用可能であり、特にイオン性官能基が3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、スルホン酸基、リン酸基、4級アンモニウム塩をカウンターイオンに持つカルボン酸塩基から選ばれる少なくとも1種であることが好適である。また樹脂(D)は、特に後述の顔料(C)の分散時に顔料分散樹脂として用いることが好適である。
【0062】
上記樹脂(D)は、通常、イオン性官能基含有重合性不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーとを共重合することによって得ることができる。
【0063】
イオン性官能基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジt−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートなどの3級アミノ基含有重合性不飽和モノマー;2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェートなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩;メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムブロマイドなどの(メタ)アクリロイルアミノアルキルトリアルキルアンモニウム塩;テトラブチルアンモニウム(メタ)アクリレートなどのテトラアルキル(メタ)アクリレート;トリメチルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレートなどのトリアルキルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレートのような4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリルアミド−アルカンスルホン酸;2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホアルキル(メタ)アクリレートのようなスルホン酸基含有重合性不飽和モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、モノアルキル(ブチル、デシル、ラウリル、ステアリルなど)リン酸にグリシジルメタクリレートを付加させて得た重合性不飽和モノマー、ベンジルリン酸にグリシジルメタクリレートを付加させて得た重合性不飽和モノマーなどのリン酸基含有重合性不飽和モノマー;4級アンモニウム塩化カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらのモノマーは1種のみ又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0064】
その他の重合性不飽和モノマーは、上記モノマーと共重合可能である、上記モノマー以外の重合性不飽和モノマーであって、本樹脂に望まれる特性などに応じて適宜選択して使用される。該その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等のC〜C24直鎖状又は環状アルキル(メタ)アクリレートモノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有重合性不飽和モノマ;メタクリル酸、アクリル酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド;3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−ブチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタンなどのオキセタン環含有(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニルなどを挙げることができる。これらの重合性不飽和モノマーは1種のみ又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0065】
本発明ではイオン性官能基を含有するアクリル樹脂(D)が、水分散性や導電性の点から、さらにポリオキシアルキレン鎖を含有することが望ましく、該ポリオキシアルキレン鎖を導入するには、例えば上記樹脂(D)製造時に、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーを上記イオン性官能基含有重合性不飽和モノマーやその他のエチレン性不飽和モノマーと共重合することによって可能となる。
【0066】
ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラピロプレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの中、特に、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが好適である。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合わせて使用することができる。
【0067】
樹脂(D)の製造に際し、イオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマー、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーの使用割合は、顔料分散性と導電性の点から、イオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマーが0.5〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーが10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%、その他の重合性不飽和モノマーが50〜89.5重量%、好ましくは60〜84重量%の範囲内が適当である。これらの共重合は、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法などの方法により行なうことができるが、なかでも溶液重合法が好適である。
【0068】
上記樹脂(D)の重量平均分子量は約5000〜300000、好ましくは10000〜50000範囲内が適当である。かかるアクリル樹脂(B)の重量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算したときの値である。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ装置には「HLC8120GPC」(東ソー(株)社製、商品名)が使用でき、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィに用いるカラムとしては、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を使用する。
【0069】
上記樹脂(D)は、必要に応じて中和剤を用いて中和して水溶化することができる。該樹脂(D)の配合量は、顔料分散性や形成塗膜の耐水性、導電性等の点から、組成物中の全樹脂固形分中に30重量%以下、好ましくは10〜25重量%の範囲内であることが望ましい。
【0070】
本発明組成物では、さらに必要に応じビヒクル成分として、ウレタン樹脂を含有することができる。かかるウレタン樹脂は、分子中にウレタン結合を有する水溶性もしくは水分散性の樹脂であり、酸価を持つ自己乳化型エマルションや乳化剤を併用したエマルション、水溶性樹脂が挙げられ、特にディスパージョンの形態が好適である。ウレタンディスパージョンは、通常、乳化剤の存在下に予めジオールとジイソシアネート、さらに必要に応じてジメチロールアルカン酸等を反応させて得られるウレタンプレポリマーを水中に分散させながら、強制乳化または自己乳化することにより得られるディスパージョンである。
【0071】
上記ウレタン樹脂の骨格としては、例えばエーテル系、カーボネート系、エステル系などが挙げられ、これらのうち形成膜の耐水性の点からはエーテル系やカーボネート系が望ましい。また上記ウレタン樹脂は水酸基を含有するものであっても良い。
【0072】
上記ウレタン樹脂は、塗膜物性向上などの点から、組成物中の全樹脂固形分中に50重量%以下、特に10〜40重量%の範囲内となるようにして配合することが望ましい。
【0073】
本発明組成物には、さらに必要に応じて上記ウレタン樹脂以外の水溶性もしくは水分散性の樹脂を配合することができ、該水溶性もしくは水分散性の樹脂としては、例えば前記樹脂(B)や樹脂(D)以外のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、これら樹脂のグラフト体、アクリル変性もしくはポリエステル変性エポキシ樹脂、さらにはブロックイソシアネート基含有ポリエステル樹脂等の自己架橋型樹脂などが挙げられ、特に水溶性もしくは水分散性アクリル樹脂や水溶性もしくは水分散性ポリエステル樹脂が好適である。
【0074】
本発明組成物は、内装部品用途に用いる場合にはさらに必要に応じて、ホルマリン等のアルデヒド化合物を吸着或いは分解する化合物を含有することができる。このような化合物としては、ホルマリン等を吸着或いは分解する従来公知のものが特に制限なく使用でき、例えばアミン系化合物、結晶性層状りん酸化合物、多孔質材などが挙げられる。これらは単独であるいは二種以上を組み合わせて使用でき、その配合量は組成物固形分中に0.01〜25重量部の範囲内が適当である。
【0075】
アミン系化合物としては、例えばアミノ基、ヒドラジド基、尿素結合、アミド基またはイミド基を有する化合物などが挙げられる。アミノ基を有する化合物としては、例えばヒドロキシルアミン、クロルアミン、アンモニア、メタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、プロリン、ヒドロキシプロリン、ジシアノジアミド、エチレンイミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、モルホリン、2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾール、3−アザヘキサン−1,6−ジアミン、2−アクリルアミドー2ーメチルプロパンスルホン酸、α−アミノ−ε−カプロラクタム、アセトグアナミン、アセトアルデヒドアンモニア、4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンなどが挙げられる。ヒドラジド基を有する化合物としては、例えば蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸ジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸またはイソフタル酸ジヒドラジド、ならびにピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジドまたはテトラヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジドなどが挙げられる。尿素結合を有する化合物としては、例えば尿素、チオ尿素、メチル尿素、エチル尿素、ジメチル尿素、ジエチル尿素、エチレン尿素、グアニル尿素、グアニルチオ尿素、アゾジカルボンアミド、グリコリルウレア、アセチルウレアなどが挙げられる。アミド基を有する化合物としては、例えばホルムアミド、アセトアミド、ベンズアミド、オキサミド、オキサミン酸、コハク酸アミド、マロンアミドなどがある。イミド基を有する化合物としては、例えばスクシンイミド、フタルイミド、マレイミド、1−メチロール−5,5−ジメチルヒダントイン、イソシアヌル酸などが挙げられる。これらのアミン系化合物は、単独であるいは二種以上を組み合わせて使用できる。これらのうちヒドラジド基含有化合物を用いる場合、前述のカルボニル基含有樹脂を(B)成分として用いる際には架橋に要する量以上となるように配合量を選択することができる。
【0076】
結晶性層状りん酸化合物としては、例えば上述のようなポリアミン化合物を層状りん酸化合物にインターカレートした化合物、結晶性層状りん酸化合物に亜鉛や銀イオンなどの抗菌作用を有する金属イオンをインターカレートした化合物、さらに結晶性層状りん酸化合物に4級アンモニウム塩やチアゾール系化合物などをインターカレートした化合物などが挙げられる(ここで、「インターカレート」とは主に層状化合物又は層状物の層間の陽イオンとイオン交換することである)。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0077】
多孔質材としては、例えば活性アルミナ、活性白土、ゼオライト、珪藻土、活性炭、セラミック活性炭などが挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて使用できる。
【0078】
本発明組成物には、さらに必要に応じて、硬化触媒、レオロジーコントロール剤、樹脂微粒子、消泡剤、表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤、可塑剤、有機溶剤などの塗料用添加剤等を適宜含有することができる。
【0079】
上記の通り得られる本発明の水性塗料組成物はプラスチック成型品に塗装することができる。
【0080】
プラスチック成型品としては、例えば、バンパー、スポイラー、グリル、フェンダーなどの自動車外板部;ダッシュボード、インストメンタルパネル、ハンドルなどの自動車内装部;家庭電化製品の外板部などに使用されているプラスチック成型品などが挙げられ、その材質としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンなどの炭素数2〜10のオレフィン類の1種もしくは2種以上を(共)重合せしめてなるポリオレフィンが特に好適であるが、それ以外に、ポリカーボネート、ABS樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドなどにも本発明組成物を適用することができる。
【0081】
これらのプラスチック成型品は、本発明組成物の塗装に先立ち、それ自体既知の方法で、脱脂処理、水洗処理などを適宜行なっておくことができる。
【0082】
本発明組成物の塗装は、被塗物に対し、通常、プライマー用途においては乾燥膜厚で1〜50μm、好ましくは5〜45μmの範囲内となるように、また1コート仕上げ用途においては乾燥膜厚で5〜50μm、好ましくは10〜40μmの範囲内となるように、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬塗装、刷毛などを用いて行なうことができる。該組成物の塗装後、得られる塗膜面を、必要に応じて室温で1〜60分間セッティングし又は40〜80℃程度の温度で1〜60分間予備加熱することができ、あるいは約60〜約140℃、好ましくは約60〜約120℃の温度で20〜40分間程度加熱して硬化させることができる。
【0083】
上記の如くして形成される塗膜は、プライマー用途においては表面抵抗率が1×10Ω/□以下であることが望ましい。これによって導電プライマー塗膜として次の工程での良好な静電塗装が可能となる。なお、本明細書において、「表面抵抗率」の測定は、乾燥膜厚が約5〜15μmとなるように塗装した塗膜を、80℃で10分間の条件で乾燥させ、TREK社製表面抵抗計、商品名「TREK MODEL 150」を用いて行うことができる(単位:Ω/□)。
【0084】
また上記形成塗膜は、L値が35以上、好ましくは40〜80であることが望ましい。ここでL値は、本発明組成物を隠蔽膜厚(通常、乾燥膜厚で5〜15μm)になるようにしてプラスチック板上に塗装し、焼付硬化させた時の塗膜のCIE1976表色系によるL値を色差計で測定したものである。L値が大きい程、白色度が高いことを示す。
【0085】
本発明の塗装方法は、上記の通り得られる水性塗料組成物をプラスチック成型品に塗装して1コート仕上げとすることができ、また上記の通り得られる水性塗料組成物をプライマーとしてプラスチック成型品に塗装し、ついでその塗面に、上塗り塗料を塗装することができる。上塗り塗料としては、着色塗料を単独で用いて塗装しても良いし、該着色塗料をベース塗料として用いて、ベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装することもできる。
【0086】
上記着色ベース塗料は、通常、有機溶剤及び/又は水を主たる溶媒とし、着色顔料、光輝顔料、染料などの着色成分、基体樹脂、架橋剤などの樹脂成分を主に含有するものである。
【0087】
上記着色ベース塗料に使用される基体樹脂としては、例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、シラノール基のような架橋性官能基を有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等を挙げることができる。また架橋剤としては、これらの官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂や(ブロック)ポリイソシアネート、ポリエポキシド、ポリカルボン酸等を挙げることができる。
【0088】
上記着色ベース塗料には、さらに必要に応じて、体質顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、塗面調製剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックス、防腐剤などの塗料用添加剤等を適宜含有することができる。
【0089】
上記着色ベース塗料は、通常、乾燥膜厚で5〜50μm、好ましくは10〜20μmの範囲内となるように静電塗装し、得られた塗膜面を、必要に応じて室温で1〜60分間セッティングしたり、約40〜80℃程度で1〜60分間予備加熱することができ、あるいは約60〜140℃、好ましくは約80〜120℃程度の温度で20〜40分間加熱して硬化させることができる。
【0090】
本発明方法に使用されるクリヤー塗料は、基体樹脂、架橋剤などの樹脂成分、及び有機溶剤や水などを主に含有し、さらに必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、塗面調整剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックスなどの塗料用添加剤を配合してなる有機溶剤系或いは水系の熱硬化性塗料であり、このクリヤー塗膜を透して下層塗膜を視認できる程度の透明性を有するものである。
【0091】
上記基体樹脂としては、例えば水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基などの少なくとも1種の架橋性官能基を含有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などが挙げられ、特に水酸基含有アクリル樹脂が好適である。架橋剤としては、これらの官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物などが挙げられ、特にブロックイソシアネート化合物が好適である。
【0092】
上記クリヤー塗料の塗装は、乾燥膜厚で10〜50μm、好ましくは15〜40μmの範囲内となるように静電塗装し、得られた塗膜面を、必要に応じて室温で1〜60分間セッティングしたり、約40〜80℃程度で1〜60分間予備加熱した後、約60〜140℃、好ましくは約70〜120℃程度の温度で20〜40分間加熱して硬化させることができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「重量部」及び「重量%」を示す。
【0094】
カルボニル基含有樹脂水分散体(B−1)の製造
還流冷却器、攪拌器、温度計、滴下ロートを装備した容量2リットルの4つ口フラスコに脱イオン水312部、「Newcol707SF」(注1)0.9部を加え、窒素置換後、80℃に保った。この中に過硫酸アンモニウム0.4部を添加し、添加15分後から下記組成をエマルション化してなるプレエマルションを140分間にわたって滴下した。
【0095】
脱イオン水 210部
メチルメタクリレート 118.56部
n−ブチルアクリレート 312部
アクリル酸 1.44部
「Newcol707SF」 37.3部
過硫酸アンモニウム 0.48部
【0096】
滴下終了後1時間熟成してから、下記組成をエマルション化してなるプレエマルションを60分間にわたって滴下した。
【0097】
脱イオン水 140部
メチルメタクリレート 207.04部
n−ブチルアクリレート 96部
アクリル酸 0.96部
ダイアセトンアクリルアミド 16部
「Newcol707SF」 21.3部
過硫酸アンモニウム 0.32部
【0098】
滴下終了後30分熟成してから、過硫酸アンモニウム0.8部を脱イオン水7部に溶かした溶液を30分かけて滴下し、さらに2時間80℃に保持した。その後40〜60℃に温度を下げ、アンモニア水でpH7〜8に調整し、不揮発分53.6%の共重合体エマルション(B−1)を得た。
【0099】
(注1)「Newcol707SF」:商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、有効成分30%。
【0100】
水酸基含有アクリルエマルション(B−2)の製造
ガラスビーカーに下記成分を入れ、ディスパーにて2000rpmで15分間攪拌し、予備乳化液を製造した後、この予備乳化液を高圧エネルギーを加えて流体同士を衝突させる高圧乳化装置にて150MPaで高圧処理することにより、分散粒子の平均粒子径が230nmのモノマー乳化物を得た。
【0101】
モノマー乳化物組成
シクロヘキシルメタクリレート 33部
2−エチルヘキシルアクリレート 55部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 10部
アクリル酸 2部
「Newcol707SF」(注1) 15部
脱イオン水 85部
次いで、上記モノマー乳化物を攪拌機、還流冷却管、窒素ガス導入管、温度計を備えたガラス製反応容器に移し、脱イオン水にて固形分濃度が45%となるように希釈した。その後85℃まで昇温させ、過硫酸アンモニウム1部を脱イオン水9.4部に溶解させた重合開始剤水溶液を反応容器に添加し、窒素気流下で該温度を保持しながら3時間攪拌した。その後、過硫酸アンモニウム0.3部を脱イオン水3部に溶解させた重合開始剤水溶液を添加し、該温度を保持しながら1時間攪拌した後、40℃まで冷却し、ジメチルエタノールでpHを8.0に調整し、固形分濃度43%の水酸基含有アクリルエマルション(B−2)を得た。
【0102】
イオン性官能基含有樹脂(D−1)の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管の備わった通常のアクリル樹脂反応槽に、エチレングリコールモノブチルエーテル35部を仕込み、加熱撹拌して110℃に保持した。この中に、スチレン10部、メチルメタクリレート40部、n−ブチルメタクリレート25部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、メタクリル酸3部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート5部(固形分量、脱イオン水10部に溶解して配合)、「NFバイソマーPEM6E」(第一工業製薬(株)製、商品名、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、分子量約350)10部、アゾビスイソブチロニトリル4部及びイソブチルアルコール20部からなる混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で30分間熟成し、次にエチレングリコールモノブチルエーテル15部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部からなる追加触媒混合液を1時間かけて滴下した。ついで110℃で1時間熟成したのち冷却し、固形分55%のイオン性官能基含有樹脂(D−1)溶液を得た。該樹脂(D−1)は水酸基価43mgKOH/g、重量平均分子量約2万であった。
【0103】
水性塗料の作成
実施例1
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−1)(メタロセン系触媒を用いて得られたエチレン−プロピレン共重合体(エチレン含有率5%)に対しマレイン酸付加量8重量%で変性したもので、融点80℃、Mwが約10万、Mw/Mnが約2.1、酸価35であるものを、ジメチルエタノールアミンで当量中和し、さらにポリプロピレン/エチレン共重合体100部に対して乳化剤10部使用で水分散)を固形分重量で55部、「UX5210」(三洋化成工業社製、ウレタンディスパージョン)を固形分重量で20部、「エポクロスWS−100」(日本触媒社製、オキサゾリン基含有アクリル樹脂、固形分40%、オキサゾリン当量220)を固形分重量で10部、イオン性官能基含有樹脂(D−1)溶液を固形分重量で15部、「JR−806」(テイカ社製、チタン白)120部を、常法に従って配合し、固形分40%となるように脱イオン水で希釈して水性塗料(1)を得た。
【0104】
実施例2
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−1)を固形分重量で55部、「UX5210」を固形分重量で20部、イオン性官能基含有樹脂(D−1)溶液を固形分重量で15部、「カルボジライトV−02」(日清紡社製、、カルボジイミド基含有化合物、固形分40%、カルボジイミド当量590)を固形分重量で10部、「JR−806」120部を、常法に従って配合し、固形分40%となるように脱イオン水で希釈して水性塗料(2)を得た。
【0105】
実施例3
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−1)を固形分重量で30部、カルボニル基含有樹脂水分散体(B−1)を固形分重量で45部、イオン性官能基含有樹脂(D−1)溶液を固形分重量で15部、アジピン酸ジヒドラジド10部、「JR−806」120部を、常法に従って配合し、固形分40%となるように脱イオン水で希釈して水性塗料(3)を得た。
【0106】
実施例4
変性ポリプロピレンの水分散体(A−2)(注2)を固形分重量で30部、カルボニル基含有樹脂水分散体(B−1)を固形分重量で45部、イオン性官能基含有樹脂(D−1)溶液を固形分重量で15部、セミカルバジド硬化剤(注3)10部、「JR−806」120部を、常法に従って配合し、固形分40%となるように脱イオン水で希釈して水性塗料(4)を得た。
(注2)変性ポリプロピレンの水分散体(A−2):攪拌器、冷却管、温度計及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中で、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(メタロセン系触媒を用いて得られたポリプロピレンに対しマレイン酸付加量4重量%で変性したもので、融点80℃、Mw約15万、Mw/Mn約2.5)100gを140℃で加熱溶融し、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(「ニューコール1820」、片末端水酸基含有ポリオキシエチレン化合物、日本乳化剤社製)15gを添加し、攪拌しながら140℃で4時間反応を行った。反応後、90℃に冷却し、脱イオン水を加えてろ過を行い、固形分30%の変性ポリプロピレンの水性分散体(A−2)を得た。
(注3)セミカルバジド硬化剤:80%ヒドラジン水和物250g、メタノール250gを還流冷却器、温度計、攪拌装置を有する反応容器にいれた。その後、メタノール2250g、イソホロンジイソシアネート500gをスタティックミキサーで混合しながら、1時間かけて室温下で滴下した。その後、さらに室温で1時間攪拌した後、ジオキサン400gを加え、30℃以下の温度で減圧下、メタノールを除去した。しばらく静置すると白色粉末が析出し、これを濾別し室温下で真空乾燥してセミカルバジド硬化剤を得た。
【0107】
実施例5
変性ポリプロピレンの水分散体(A−3)(注4)を固形分重量で30部、カルボニル基含有樹脂水分散体(B−1)を固形分重量で45部、イオン性官能基含有樹脂(D−1)溶液を固形分重量で15部、セミカルバジド硬化剤(注3)10部、「JR−806」120部を、常法に従って配合し、固形分40%となるように脱イオン水で希釈して水性塗料(5)を得た。
(注4)変性ポリプロピレンの水分散体(A−3):攪拌器、冷却管、温度計及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中で、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(メタロセン系触媒を用いて得られたポリプロピレンに対しマレイン酸付加量4重量%で変性したもので、融点80℃、Mw約15万、Mw/Mn約2.5)200gを120℃で加熱溶融し、2−ヒドロキシアクリレート10gと重合禁止剤(ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン)0.1g、トリエチルアミン2.0gを添加し、1時間撹拌した。そこへポリエチレングリコールモノメタクリレート(「ブレンマーPE−350」、日本油脂社製)30gと重合開始剤(「パーブチルO」、日本油脂社製)0.3gを、攪拌しながら120℃で1時間添加して反応を行った。反応後、トリエチルアミン4gを添加し、30分攪拌後、90℃に冷却し、脱イオン水を加えてろ過を行い、固形分30%の変性ポリプロピレンの水性分散体(A−3)を得た。
【0108】
比較例1
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−4)(メタロセン系触媒を用いて得られたエチレン−プロピレン共重合体(エチレン含有率5%)に対しマレイン酸付加量8重量%で変性したもので、融点140℃、Mwが約20万、Mw/Mnが約2.1であるものを、ジメチルエタノールアミンで当量中和し、さらにポリプロピレン/エチレン共重合体100部に対して乳化剤10部使用で水分散)を固形分重量で55部、「UX5210」を固形分重量で30部、イオン性官能基含有樹脂(D−1)溶液を固形分重量で15部、「JR−806」120部を、常法に従って配合し、固形分40%となるように脱イオン水で希釈して水性塗料(6)を得た。
【0109】
比較例2
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−1)を固形分重量で55部、「UX5210」を固形分重量で30部、イオン性官能基含有樹脂(D−1)溶液を固形分重量で15部、「JR−806」120部を、常法に従って配合し、固形分40%となるように脱イオン水で希釈して水性塗料(7)を得た。
【0110】
実施例6
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−1)を固形分重量で30部、カルボニル基含有樹脂水分散体(B−2)を固形分重量で45部、イオン性官能基含有樹脂(D−1)溶液を固形分重量で15部、アジピン酸ジヒドラジド10部、「JR−806」80部、活性白土(日本活性白土社製)50部を、常法に従って配合し、固形分40%となるように脱イオン水で希釈して水性塗料(8)を得た。
【0111】
実施例7
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−1)を固形分重量で30部、カルボニル基含有樹脂水分散体(B−2)を固形分重量で45部、イオン性官能基含有樹脂(D−1)溶液を固形分重量で15部、アジピン酸ジヒドラジド10部、「JR−806」80部、「活性アルミナKC−503」(住友化学社製)50部を、常法に従って配合し、固形分40%となるように脱イオン水で希釈して水性塗料(9)を得た。
【0112】
試験塗装物の作成1
実施例8〜12及び比較例3〜4
バンパーに成型加工したポリプロピレン(脱脂処理済)に、上記の通り作成した水性塗料をプライマーとして表1に示す通り選択し、これを乾燥膜厚で約40μmになるようにスプレー塗装し、80℃で3分間プレヒート後、その上に着色ベースコート塗料として「WBC#713T」(関西ペイント社製、水性白色マイカベースコート塗料)を乾燥膜厚で約15μmとなるように塗装し、80℃で3分間プレヒート後、クリヤー塗料として「ソフレックス#450クリヤー」(関西ペイント社製、アクリルウレタン系溶剤型クリヤー塗料)を乾燥膜厚で約30μmとなるように静電塗装して、90℃で30分間加熱乾燥させて各試験塗装物を作成した。
【0113】
上記の通り作成した各試験塗装物を下記性能試験に供した。その結果を表1に示す。
【0114】
性能試験方法
(*1)初期付着性:塗膜面に素地に達するようにカッターで切り込み線を入れ、大きさ2mm×2mmのマス目を100個作り、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそれを急激に剥離した後のマス目の残存塗膜数を調べた。○は100個(剥離なし)、△は99〜51個、×は50個以下。
【0115】
(*2)耐水性:各試験塗装物の塗装したバンパーの一部を切り取り、40℃の温水に10日間浸漬し、引き上げて乾燥してから、上記の初期付着性試験と同様にして付着性試験を行ない、残存塗膜数を調べた。また乾燥後の塗装面を目視で評価した。○はブリスター発生なし、△はツヤがひけている状態、×はブリスター発生を示す。
【0116】
(*3)リコート付着性:各試験塗装物を室温で7日間放置し、その塗面に同一塗料を再塗装し硬化させてから、室温で3日間放置した後、上記の初期付着性試験と同様にして付着性試験を行なった。
【0117】
(*4)耐ガソホール性:塗装したバンパーの一部を切り取り、これをガソリン/メタノール=90/10重量比の試験液中に20℃で浸し、30分経過時のふくれ、端部の剥がれなどの塗面状態を観察し、全く異常がない場合を○、3mm以下のふくれ、剥がれを○△、3mmを越えて5mm以下のふくれ、剥がれを△、5mmを越えたふくれ、剥がれを×とする。
【0118】
【表1】

【0119】
試験塗装物の作成2
実施例13〜19及び比較例5、6
ポリプロピレン(脱脂処理済)板に、上記の通り作成した水性塗料を表2に示す通り選択し、これを乾燥膜厚で約25μmになるようにスプレー塗装し、70℃で15分間加熱乾燥させて各試験塗装物を作成した。
【0120】
上記の通り作成した各試験塗装物を下記性能試験に供した。その結果を表2に示す。
【0121】
性能試験方法
(*5)初期付着性:塗膜面に素地に達するようにカッターで切り込み線を入れ、大きさ2mm×2mmのマス目を100個作り、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそれを急激に剥離した後のマス目の残存塗膜数を調べた。○は100個(剥離なし)、△は99〜51個、×は50個以下。
【0122】
(*6)耐湿性:各試験塗装物の塗装した基材を、50℃で98%RH下に10日間静置してから、上記の初期付着性試験と同様にして付着性試験を行ない、残存塗膜数を調べた。また乾燥後の塗装面を目視で評価した。○はブリスター発生なし、△はツヤがひけている状態、×はブリスター発生を示す。
【0123】
(*7)耐溶剤性:塗装した基材を、キシレンを湿らせたガーゼを10枚重ねて、荷重約9.8Nを加えて8往復こすった後、光沢の減少を目視にて確認した。光沢減少が認められない場合は○、明らかに光沢減少のある場合は×で示す。
【0124】
(*8)耐擦り傷性:トランバース式磨耗試験機にてブロード布(JIS L0803(白綿布)3号)の6枚重ねで0.1kg/cm荷重、100mmストローク、30往復/分の速度で5000回行った。素地が露出していない場合は○、露出している場合は×で示す。
【0125】
(*9)ホルマリンキャッチャー能:20×50mmのガラス板の表面に、上記各水性塗料を間隙150μmのアプリケ−タ−で塗装し、室温にて7日間乾燥して各試験片を作成した。各試験片4枚と1%ホルムアルデヒド水溶液100mgを2リットルのガラス容器の中に密封し、24時間後、検知管(ガステック社製、91L)でホルムアルデヒド濃度の定量を行なった。得られたホルムアルデヒド気中濃度より下記基準でホルムアルデヒド吸収能を評価した。1ppm以下は◎、1〜20ppmは○、20〜30ppmは△、30ppm以上は×で示す。
【0126】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)融点が120℃以下で且つ重量平均分子量が30,000〜200,000の範囲内にある不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)を水性媒体中に分散せしめてなる変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)カルボジイミド基、オキサゾリン基及びカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する樹脂、及び(C)顔料を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)の重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.5〜4.0である請求項1記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)におけるポリオレフィンが、重合触媒としてシングルサイト触媒を用いて製造されたものである請求項1又は2記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)が、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物によって変性されている請求項1ないし3のいずれか1項記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
(A)/(B)の固形分重量比が10/90〜80/20の範囲内である請求項1記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
顔料(C)が白色顔料を含む請求項1記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
顔料(C)が導電性カーボンを含む請求項1記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
プラスチック成型品に、上記請求項1ないし7のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装することを特徴とするプラスチック成型品の塗装方法。
【請求項9】
プラスチック成型品に、上記請求項1ないし7のいずれか1項に記載の水性塗料組成物をプライマーとして塗装し、ついでその塗面に上塗り塗料を塗装することを特徴とするプラスチック成型品の塗装方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載の塗装方法により得られる塗装物品。

【公開番号】特開2008−31453(P2008−31453A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170107(P2007−170107)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】