説明

水性塗料組成物

【課題】 加工性、基材への接着性、耐食性及び耐膜残り性に優れた塗膜を形成でき、缶蓋用としての適性を有する水性塗料を得る。
【解決手段】(A)アクリル樹脂変性エポキシ樹脂及び、該樹脂(A)100質量部を基準にして、(B)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー0.1〜15質量%及びその他の重合性不飽和モノマー85〜99.9質量%からなるモノマーの共重合体であって、重量平均分子量が30万以上であり、かつ質量濃度1.35%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液とした分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下である水分散性アクリル樹脂0.5〜30質量部を含有する水性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル樹脂変性エポキシ樹脂系の水性塗料組成物に関し、特に、加工性、接着性、耐食性に優れた塗膜を形成できる、缶の塗装、なかでも缶蓋の塗装に適した水性塗料組成物及びこの水性塗料組成物を用いた金属板上への塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶蓋用塗料としては、加工性に優れた塗膜を形成できることから有機溶剤系の塩ビゾル塗料が多く使用されているが、有機溶剤の揮散による環境、安全衛生の問題があり、缶蓋用塗料の水性化が急務となっている。
【0003】
従来、缶内面用の水性塗料として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂を適宜、組合わせたり、反応させてなる塗料が主として使用されている。これらの水性塗料は、缶蓋の塗装に使用すると、得られる塗膜は一般的に硬く、缶蓋用の塩ビゾル塗料からの塗膜に比べて加工性、基材への接着性、耐食性が劣り、また、缶蓋のタブを開いたときに塗膜が残り、耐膜残り性が悪いという問題がある。
【0004】
これらの問題を解決する方法が種々提案されている。例えば特許文献1には、ビスフェノールF型エポキシ樹脂から誘導されるカルボキシル基含有の自己乳化性エポキシ樹脂によって形成された外側部と共役ジエン系樹脂によって形成された芯部とを有する水分散型微粒子状樹脂を含む金属被覆用水性樹脂組成物が提案されている。また、特許文献2には、数平均分子量が9,000以上である芳香族高分子エポキシ樹脂を必須成分とするカルボキシル基含有アクリル樹脂変性エポキシ樹脂を水分散化した水性塗料が提案されている。さらに特許文献3には、アクリル樹脂変性エポキシ樹脂に、特定のレゾール型フェノール樹脂及びスチレン共重合体ゴムを配合した水性塗料組成物が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記提案のいずれの組成物においても、得られる塗膜は、加工性、基材への接着性、耐食性、耐膜残り性のバランスが十分でなく実用化に至っていない。
【0006】
本発明の目的は、上記のような問題がなく、加工性、基材への接着性、耐食性及び耐膜残り性に優れた塗膜を形成でき、缶蓋用としての適性を有する水性塗料を得ることである。
【0007】
【特許文献1】特開平5−9431号公報
【特許文献2】特開平7−138523号公報
【特許文献3】特開平11−263938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アクリル樹脂変性エポキシ樹脂と高分子量で架橋度が極めて低い特定の水分散性アクリル重合体粒子とを含有する水性塗料によって上記課題を解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして、本発明によれば、「1.(A)アクリル樹脂変性エポキシ樹脂及び、該樹脂(A)100質量部を基準にして、(B)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー0.1〜15質量%及びその他の重合性不飽和モノマー85〜99.9質量%からなるモノマーの共重合体であって、重量平均分子量が30万以上であり、かつ質量濃度1.35%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液とした分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下である水分散性アクリル樹脂0.5〜30質量部を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
【0010】
2.アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)とをエステル化反応させてなるか又はビスフェノール型エポキシ樹脂(a)にカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分をグラフト重合させてなるアクリル樹脂変性エポキシ樹脂である上記項1記載の水性塗料組成物、
3.水分散性アクリル重合体粒子(B)の重量平均分子量が30万〜1000万である上記項1又は2記載の水性塗料組成物。
【0011】
4.水分散性アクリル重合体粒子(B)が、1分子中に、
−(CHCHO)n−(式中、nは5〜60の整数)で表わされるポリオキシエチレン基及び重合性不飽和基を有する反応性乳化剤の存在下で乳化重合してなるものである上記項1〜3のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【0012】
5.さらに、架橋剤(C)として、フェノール樹脂及びアミノ樹脂のうちの少なくとも1種を含有する上記項1〜4のいずれか一項に記載の水性塗料組成物、
6.(A)成分の樹脂固形分100質量部を基準にして、(C)成分の固形分量が0〜15質量%である上記項1〜5のいずれか一項に記載の水性塗料組成物、
7.上記項1〜6のいずれか一項に記載の水性塗料組成物を、金属板上にロール塗装し、焼付け硬化させることを特徴とする塗膜形成方法。」を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水性塗料組成物は、アクリル樹脂変性エポキシ樹脂に、重量平均分子量が30万以上であり、かつ、質量濃度1.35%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液とした分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下である、高分子量でありながら架橋度が極めて低い水分散性アクリル重合体粒子を配合したものである。この特定の配合とすることにより加工性、基材への接着性、加工性、耐水性、耐食性、衛生性及び耐膜残り性などの塗膜性能に優れた塗膜を形成できたものであり、缶の内外面の塗装用なかでも、缶蓋用として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の水性塗料組成物について詳細に説明する。まず、本発明の水性塗料組成物の各成分について説明する。
【0015】
アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)
本発明組成物の(A)成分であるアクリル樹脂変性エポキシ樹脂は、アクリル樹脂によって変性されたエポキシ樹脂であり、好適な具体例として、例えば、下記の(I)、(II)を挙げることができる。
(I)ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)[以下、「エポキシ樹脂(a)」と略称することがある]とカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)[以下、「アクリル樹脂(b)」と略称することがある]とをエステル付加反応させてなる樹脂、
(II)ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)にカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分をグラフト重合させてなる樹脂。
【0016】
上記(I)においては、エポキシ樹脂(a)とアクリル樹脂(b)とを、例えば有機溶剤溶液中、エステル化触媒の存在下にて加熱することにより容易にエステル付加反応させることができる。
【0017】
上記(II)においては、例えば有機溶剤中において、ベンゾイルパーオキサイド等のラジカル発生剤の存在下にて、エポキシ樹脂(a)に重合性不飽和モノマー成分をグラフト重合させることができる。
【0018】
上記(I)、(II)において使用されるビスフェノール型エポキシ樹脂(a)としては、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に高分子量まで縮合させてなる樹脂、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に、縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られた樹脂、及び得られたこれらの樹脂又は上記低分子量エポキシ樹脂に、二塩基酸を反応させてなるエポキシエステル樹脂のいずれであってもよい。
【0019】
上記ビスフェノールとしては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなどを挙げることができ、なかでもビスフェノールA、ビスフェノールFが好適に使用される。上記ビスフェノール類は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0020】
前記エポキシエステル樹脂の製造に用いられる二塩基酸としては、下記式
HOOC−(CH2 )n −COOH
(式中、nは1〜12の整数である。)で示される化合物が好適に用いられ、具体的には、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサヒドロフタル酸等を例示できる。
【0021】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製の、エピコート1007(エポキシ当量約1,700、数平均分子量約2,900)、エピコート1009(エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,750)、エピコート1010(エポキシ当量約4,500、数平均分子量約5,500);旭チバ社製の、アラルダイトAER6099(エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,800);及び三井化学(株)製の、エポミックR−309(エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,800)などを挙げることができる。
【0022】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)としては、なかでも数平均分子量が2,000〜35,000、好ましくは4,000〜30,000であり、エポキシ当量が1,000〜12,000、好ましくは3,000〜10,000の範囲のビスフェノール型エポキシ樹脂であることが、得られる塗膜の加工性、耐食性などの点から好適である。
なお、本明細書において、後記水分散性アクリル重合体粒子(B)以外の樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの数平均分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
【0023】
前記(I)においては、エステル付加反応の際に、エポキシ樹脂(a)中のエポキシ基にアクリル樹脂(b)中のカルボキシル基がエステル付加反応するので、エポキシ樹脂(a)中にエポキシ基が必要であり、エポキシ樹脂1分子当りエポキシ基は平均0.5〜2個、好ましくは0.5〜1.6個の範囲内であるのがよい。一方、前記(II)においては、グラフト反応がエポキシ樹脂主鎖の水素引き抜きによって起こりグラフト重合反応が進行するので、エポキシ樹脂(a)中にエポキシ基は実質上存在しなくてもよい。
【0024】
上記(1)において使用されるカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)は、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーとを単量体成分とする共重合体樹脂である。
【0025】
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの1種又は2種以上の混合物を挙げることができ、なかでもメタクリル酸が好適に使用される。
【0026】
カルボキシル基含有アクリル樹脂(b)の単量体成分である、その他の重合性不飽和モノマーは、上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能なモノマーであればよく、求められる性能に応じて適宜選択して使用することができるものであり、例えば、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどの芳香族系ビニルモノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−,i−又はt−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−,i−又はt−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸のC2 〜C8 ヒドロキシアルキルエステル;N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのN−置換アクリルアミド系又はN−置換メタクリルアミド系モノマーなどの1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。上記その他の重合性不飽和モノマーとしては、特にスチレン及びアクリル酸エチルの混合物が好ましく、スチレン/アクリル酸エチルの構成質量比が99.9/0.1〜40/60、さらには99/1〜50/50の範囲内であることが適している。
【0027】
カルボキシル基含有アクリル樹脂(b)は、モノマーの構成比率、種類は特に制限されるものではないが、通常、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーが15〜60質量%、特に20〜50質量%であることが好ましく、その他の重合性不飽和モノマーが85〜40質量%、特に80〜50質量%であることが好ましい。
【0028】
カルボキシル基含有アクリル樹脂(b)の調製は、例えば、上記した単量体組成を重合開始剤の存在下、有機溶剤中で溶液重合することにより容易に行うことができる。アクリル樹脂(b)は、樹脂酸価が100〜400、数平均分子量が5,000〜100,000の範囲内であるのがよい。
【0029】
前記(I)でのエステル付加反応において、上記エポキシ樹脂(b)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)との配合割合は、エポキシ基の当量に対してカルボキシル基の当量が過剰となる条件下で、塗装作業性や塗膜性能に応じて適宜選択すればよいが、エポキシ樹脂(a)とアクリル樹脂(b)との固形分質量比で前者:後者が、通常、6:4〜9:1、さらには7:3〜9:1の範囲内であることが好ましい。
【0030】
上記エステル付加反応は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、エポキシ樹脂(a)とアクリル樹脂(b)との均一な有機溶剤溶液中にエステル化触媒を配合せしめ、実質的にエポキシ基の全てが消費されるまで、通常、60〜130℃の反応温度にて約1〜6時間反応させることによって行うことができる。上記エステル化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンなどの第3級アミン類やトリフェニルフォスフィンなどの第4級塩化合物などを挙げることができ、なかでも第3級アミン類が好適である。
【0031】
エポキシ樹脂(a)とアクリル樹脂(b)との反応系における固形分濃度は、反応系が反応に支障のない粘度範囲内である限り特に限定されるものではない。また、エステル付加反応させる際にエステル化触媒を使用する場合には、その使用量はエポキシ樹脂(b)中のエポキシ基1当量に対して通常、0.1〜1当量の範囲で使用するのがよい。
【0032】
アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)が前記(II)による樹脂である場合、エポキシ樹脂(a)にグラフト重合させるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分は、前記(I)におけるカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)の製造に用いられる単量体成分であるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを挙げることができる。
【0033】
前記(II)の反応において、エポキシ樹脂(a)とカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分との使用割合は、特に制限されるものではないが、通常、前者:後者の比が、95〜70質量%:5〜30質量%の範囲内とするのがよい。この場合、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーは、全重合性不飽和モノマー中、20〜80質量%となる配合とするのがよい。グラフト重合反応におけるラジカル発生剤の使用量は、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分に対して通常、3〜15質量%の範囲内が適当である。
【0034】
上記(II)におけるグラフト重合反応は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、80〜150℃に加熱されたエポキシ樹脂(a)の有機溶剤溶液中に、ラジカル発生剤と重合性不飽和モノマー成分との均一な混合溶液を徐々に添加し、同温度に1〜10時間程度保持することによって行うことができる。上記ラジカル発生剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾイルオクタノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどを挙げることができる。
【0035】
上記(I)でのエステル付加反応や上記(II)でのグラフト重合反応の際に使用される有機溶剤としては、エポキシ樹脂(a)とアクリル樹脂(b)又はカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分とを溶解し、且つこれらの反応生成物であるアクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)を中和、水性化する場合にエマルジョンの形成に支障を来さない有機溶剤である限り、従来公知のものを使用することができる。
【0036】
上記有機溶媒としては、アルコール系溶剤、エチレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤及びジエチレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤が好ましい。この有機溶剤の具体例としては、イソプロパノール、ブチルアルコール、2−ヒドロキシ−4−メチルペンタン、2−エチルヘキシルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。また有機溶剤としては、上記以外の水と混合し難い有機溶剤もカルボキシル基含有反応生成物(A)の水性媒体中での安定性に支障を来さない範囲で使用可能であり、この有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等がすることができる。
【0037】
上記(I)又は(II)によって得られるアクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)は、カルボキシル基を有し、樹脂酸価が10〜160、さらには20〜100の範囲内であることが水分散性、塗膜性能などの観点から好ましい。
【0038】
アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)は、塩基性化合物で樹脂中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和することによって水性媒体中に分散可能となる。上記カルボキシル基の中和に用いられる塩基性化合物としては、アミン類やアンモニアが好適に使用される。上記アミン類の代表例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアルキルアミン類;ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノールなどのアルカノールアミン類;モルホリンなどの環状アミン類などを挙げることができる。アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)の中和程度は、特に限定されるものではないが、樹脂(A)中のカルボキシル基に対して通常0.1〜2.0当量中和の範囲であることが好ましい。
【0039】
上記水性媒体は、水のみであってもよいが、水と有機溶剤との混合物であってもよい。この有機溶剤としてはアクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)の水性媒体中での安定性に支障を来さない、水と混合し得る有機溶媒である限り、従来公知のものをいずれも使用でき、前記アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)製造の際に使用できる有機溶剤として挙げたものを好適に使用することができる。本発明の水性塗料組成物における有機溶剤の量は、環境保護の観点などから20質量%以下の範囲であることが望ましい。
【0040】
アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)を水性媒体中に中和、分散するには、常法によればよく、例えば中和剤である塩基性化合物を含有する水性媒体中に撹拌下にアクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)を徐々に添加する方法、アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)を塩基性化合物によって中和した後、撹拌下にて、この中和物に水性媒体を添加するか又はこの中和物を水性媒体中に添加する方法などを挙げることができる。
【0041】
水分散性アクリル重合体粒子(B)
本発明の水性塗料組成物は、中和されたアクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)に加えて、(B)成分として、特定の水分散性アクリル重合体粒子を含有する。
【0042】
水分散性アクリル重合体粒子(B)は、重量平均分子量が30万以上、かつ、質量濃度1.35%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液とした分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下である水分散性アクリル重合体粒子である。上記吸光度の値が低いほど1,4−ジオキサンを溶媒とする液としたときの透明性が高く、重合体粒子は架橋度が低いものとなる。水分散性アクリル重合体粒子(B)は、上記吸光度測定による吸光度の値が0.2以下であり、極めて透明度が高いという特徴を有するものである。なお、本明細書においては、1,4−ジオキサンを溶媒とする液とは、1,4−ジオキサンを溶媒とする溶液及び分散液の両方を包含する。
【0043】
水分散性アクリル重合体粒子(B)は、例えば、ビニルモノマーに代表される重合性不飽和モノマーを界面活性剤などの分散安定剤の存在下で、ラジカル重合開始剤を用いて乳化重合せしめることによって得ることができる。

【0044】
乳化重合せしめる重合性不飽和モノマーとしては、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)、及び重合性不飽和基を1分子中に1個以上有するその他の重合性不飽和モノマー(M−2)、ならびに必要に応じて、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する多ビニル化合物(M−3)等を使用することができる。
【0045】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)は、1分子中に1個以上のカルボキシル基と1個の重合性不飽和基とを有する化合物であり、水分散性アクリル重合体粒子(B)にカルボキシル基を導入するためのモノマーであって、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等を挙げることができる。さらに、これらの化合物の酸無水物や該酸無水物を半エステル化したモノカルボン酸なども該モノマー(M−1)に包含されるものとする。これらのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーは、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0046】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)としては、アクリル酸又はメタクリル酸が、一般によく用いられるが、耐水性等の塗膜性能の観点から、なかでもメタクリル酸を好適に使用することができる。アクリル酸を使用した場合は、アクリル酸はメタクリル酸に比べ水中での解離度が高いので、生成した重合体粒子におけるカルボキシル基が粒子表面に局在化しやすくなる。これに対し、メタクリル酸を使用した場合は、アクリル酸を使用した場合に比べ、カルボキシル基が粒子内部に均一に分布しやすくなる。このような理由により、メタクリル酸を使用すると、アクリル酸を使用した場合に比べ、塗膜としたときに、親水基であるカルボキシル基が粒子内部に均一に分布することとなるため、塗膜の耐水性(耐白化性)が良好になるものと推定している。
【0047】
その他の重合性不飽和モノマー(M−2)は、上記モノマー(M−1)以外の、1分子中に1個の重合性不飽和基を有する化合物であり、その具体例を以下の(1)〜(9)に列挙する。
【0048】
(1)アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのモノエステル化物:例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等;
(2)芳香族系ビニルモノマー:例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等;
(3)グリシジル基含有ビニルモノマー:1分子中に1個以上のグリシジル基と1個の重合性不飽和結合とを有する化合物で、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等;
(4)含窒素アルキル(炭素数1〜20)(メタ)アクリレート:例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等;
(5)重合性不飽和基含有アミド系化合物:1分子中に1個以上のアミド基と1個の重合性不飽和結合とを有する化合物で、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等;
(6)水酸基含有重合性不飽和モノマー:1分子中に1個以上の水酸基と1個の重合性不飽和基とを有する化合物で、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートモノマー、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2〜10個の2価アルコールとのモノエステル化物;N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等;
(7)重合性不飽和基含有ニトリル系化合物:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等;
(8)ジエン系化合物:例えばブタジエン、イソプレン等;
(9)ビニル化合物:例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル等。
【0049】
これらのその他の重合性不飽和モノマー(M−2)は、1種で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0050】
多ビニル化合物(M−3)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する化合物であり、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。なお、多ビニル化合物(M−4)には前記ジエン系化合物は含まれない。これらの多ビニル化合物は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0051】
水分散性アクリル重合体粒子(B)における重合性不飽和モノマーの配合割合は、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、下記のとおりである。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1):0.1〜15質量%、好ましくは3〜10質量%、
その他の重合性不飽和モノマー(M−2):85〜99.9質量%、好ましくは90〜97質量%、
多ビニル化合物(M−3):0〜1質量%、好ましくは0〜0.3質量%。
【0052】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)は、該重合体粒子の水分散性及び耐水性等の観点から、0.1〜15質量%である。多ビニル化合物(M−3)は、必要に応じて使用されるが、前記吸光度の値が0.2以下である透明度の高い、換言すれば、極めて架橋度の低い水分散性アクリル重合体粒子とする観点からは、使用する場合においても極少量とするのが好ましい。
上記重合性不飽和モノマーを乳化重合する際に使用される分散安定剤としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、両性イオン乳化剤などを挙げることができる。具体的には、アニオン系乳化剤としては、例えば、脂肪酸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩などが挙げられる。ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどをあげることができる。両性イオン乳化剤としては、アルキルベダインなどを挙げることができる。
【0053】
なお、分散安定剤としては、水分散性アクリル重合体粒子を形成するビニルモノマーの乳化重合反応における共重合性、本塗料中における水分散性アクリル重合体粒子の分散安定性、本塗料により得られる塗膜の耐水性等の塗膜性能及び環境対策のための残存モノマー削減等の観点から、特に反応性乳化剤を好適に使用することができる。反応性乳化剤とは、ビニルモノマーとラジカル反応性を有する乳化剤であり、換言すれば、1分子中に重合性不飽和基を有する界面活性剤である。
【0054】
反応性乳化剤の具体例としては、エレミノールJS−1、エレミノールJS−2(三洋化成社製)、S−120、S−180A、S−180、ラテムルPD−104、ラテムルPD−420、ラテムルPD−430S、ラテムルPD−450(花王社製)、アクアロンHS−10、アクアロンKH−10(第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE−10N、アデカリアソープSE−20N、アデカリアソープSR−1025、アデカリアソープER−10、アデカリアソープER−20、アデカリアソープER−30、アデカリアソープER−40(旭電化社製)、ANTOX MS−60(日本乳化剤社製)などを挙げることができる。
【0055】
上記反応性乳化剤のうち、特に好ましいものとして、1分子中に−(CHCHO)n−(式中、nは5〜60、好ましくは10〜55、さらに好ましくは20〜45の整数)で表わされるポリオキシエチレン基及び重合性不飽和基を有する反応性乳化剤を挙げることができる。上記特に好ましい反応性乳化剤の具体例として、アデカリアソープER−30、アデカリアソープER−40、ラテムルPD−450等を挙げることができる。
【0056】
上記ポリオキシエチレン基及び重合性不飽和基を有する反応性乳化剤を用いて合成される水分散性アクリル重合体粒子は、水分散性アクリル重合体粒子の主鎖に該反応性乳化剤が有するポリオキシエチレン基が枝状にグラフトした構造となるので、塗料組成物としての塗液状態では、塗料組成物中の他の樹脂成分等に対して分散安定剤的な作用をし、未硬化の塗膜状態においては他の樹脂成分等との相溶化剤的な作用をするので、本発明の塗料組成物の水分散性アクリル重合体粒子(B)として特に好ましい。上記乳化剤等の分散安定剤は、乳化重合反応において、1種で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0057】
水分散性アクリル重合体粒子(B)の乳化重合に際して用いられる分散安定剤の使用量は、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、0.1〜10質量%、特に1〜7.5質量%、さらに特に、1.5〜6質量%の範囲であるのが好ましい。
【0058】
また、水分散性アクリル重合体粒子(B)の乳化重合に際して用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化アンモニウム等に代表される過酸化物、これら過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤とが組み合わされたいわゆるレドックス系開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕などのアゾ化合物等を挙げることができる。これらのうち、アゾ化合物が好ましい。
【0059】
また、アゾ化合物の中でも25℃の水に対する溶解度が3質量%以下の水難溶性のアゾ化合物が好ましい。このようなアゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等を挙げることができ、特に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートが高分子量化の観点から好ましい。
【0060】
ラジカル重合開始剤の量は水分散性アクリル重合体粒子を形成する重合性不飽和モノマーの総重量に対して、通常、0.01〜5.0質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%の範囲内であるのが適している。また、乳化重合反応系における重合性不飽和モノマーの濃度は、通常、0.1〜60質量%、好ましくは0.5〜50質量%の範囲内であることが適している。
【0061】
乳化重合の際の反応温度は、使用するラジカル重合開始剤により異なるが、通常40〜100℃、好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃とすることができる。
反応時間は通常3〜24時間、好ましくは5〜20時間、さらに好ましくは7〜16時間とすることができる。
【0062】
水分散性アクリル重合体粒子(B)は、通常の均一構造又はコア/シェル構造などの多層構造のいずれであってもよい。コア/シェル構造の水分散性アクリル重合体粒子は、具体的には、例えば、最初にカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)を全く又は殆んど含有しない重合性不飽和モノマー成分を乳化重合し、その後、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)を多量に含んだ重合性不飽和モノマー成分を加えて乳化重合することによって得ることができる。
【0063】
コア部とシェル部とを結合させる場合は、例えば、最初の重合性不飽和モノマー成分中にアリルアクリレート、アリルメタクリレート等を含有させておき、コア部の表面に残存するアリルアクリレート、アリルメタクリレート等に基く未反応の重合性不飽和結合(アリル基)に、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)を含む重合性不飽和モノマー成分を共重合させることによって行なうことができる。
【0064】
また、水分散性アクリル重合体粒子は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、0.5〜120mgKOH/g、好ましくは0.5〜80mgKOH/g、さらに好ましくは3〜35mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。
【0065】
さらに、水分散性アクリル重合体粒子(B)は、粒子の分散安定性及び塗膜とした時の平滑性の観点から、10〜500nm、好ましくは20〜300nm、さらに好ましくは40〜200nmの範囲内の平均粒子径を有することが適している。
【0066】
本明細書において、水分散性アクリル重合体粒子の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0067】
水分散性アクリル重合体粒子(B)の重量平均分子量は、貯蔵安定性や得られる塗膜の加工性、基材への接着性、耐食性、耐膜残り性等の塗膜性能の観点から、30万以上であり、好ましくは30万〜1000万、さらに好ましくは80〜500万である。
【0068】
水分散性アクリル重合体粒子(B)の重量平均分子量は、静的光散乱法により求めることができる。具体的には、多角度の光散乱検出装置を使用し、ジムプロット等を作成することにより値を得ることができる。あるいは、サイズ排除クロマトグラフに多角度光散乱検出器を接続したSEC−MALLS法により、デバイプロット等を作成することにより得ることができる。
【0069】
本明細書においては、上記のSEC−MALLS法により重量平均分子量の測定を行なうものとする。
【0070】
一般に光散乱法による分子量測定には、以下の光散乱の基礎式(1)
Kc/R(θ)=1/MwP(θ)+2Ac+・・・ (1)
R(θ)=角度θにおける散乱光(レイリー係数)の還元強度
c=サンプル濃度
Mw=重量平均分子量
=第2ビリアル係数
K=光学パラメーター
P(θ)=角度散乱関数
が用いられるが、本発明の重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフに多角度光散乱検出器を接続したSEC−MALLS法と同様、上記式(1)において、第2ビリアル係数とサンプル濃度との積である第2項以降を無視した式から求めた値をいうものとする。
後記製造例等における測定を含め、本明細書においては、検出器として、DAWN DSP Laser Photometer(Wyatt Technology Co.製)を用い、カラムとして、「KF−806L」を2本、「KF−802」を1本(いずれもShodex社製、商品名)の計3本を用い、溶媒;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、サンプル濃度;0.1質量%の条件で行うものとする。
試料の調製は、水分散性アクリル重合体粒子(B)のエマルションを常温にて乾燥させ、乾燥した重合体粒子を、固形分濃度が2.5質量%となるようテトラヒドロフランに加え、2時間室温にて溶解させることにより行なった。測定時はテトラヒドロフランにて、さらに濃度0.1質量%に希釈し、ポアサイズ1μmのメンブランフィルターにてろ過したものを測定試料として用いた。
水分散性アクリル重合体粒子の1,4−ジオキサンを溶媒とする液の吸光度は、水分散性アクリル重合体粒子のエマルションを常温にて乾燥した後、1,4−ジオキサンを溶媒とする濃度1.35wt%液に調整したものを試料とし、分光光度計を用いて、波長330nmの条件で、吸光度を測定し、その測定値をセルの長さ(cm単位)で除して、1cm当たりの吸光度にすることにより求めた。分光光度計としては、U−4100(HITACHI社製)を用いた。上記1,4−ジオキサンを溶媒とする液は、乾燥した重合体粒子を2時間室温で溶解させようとしたものであり、溶液、分散液のいずれをも包含する。
【0071】
水分散性アクリル重合体粒子(B)は、1.35質量%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液とした分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が、得られる塗膜の仕上り性の観点から、0.2以下であり、好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.1以下である。
【0072】
水分散性アクリル重合体粒子(B)は塩基性化合物で中和することが好ましい。水分散性アクリル重合体粒子(B)の中和剤としては、アンモニア又は水溶性アミノ化合物、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジエタノールアミン、モルホリン等を好適に使用することができる。
【0073】
架橋剤(C)
本発明組成物は、硬化性を向上するために、前記(A)成分や(B)成分中の官能基と反応性を有する架橋剤(C)を必要に応じて含有することができる。(A)成分や(B)成分中には、官能基として水酸基、カルボキシル基などが存在することができ、これらの官能基と反応性を有すると架橋剤(C)としてフェノール樹脂やアミノ樹脂などを含有することができる。
【0074】
上記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールやビスフェノールAなどのフェノール類とホルムアルデヒドなどのアルデヒド類とを反応触媒の存在下で縮合反応させて、メチロール基を導入してなるレゾール型フェノール樹脂を挙げることができる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。また、上記樹脂のメチロール基の少なくとも一部をメチルアルコール、エチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどの炭素原子数1〜8のアルコールにてエーテル化したものも使用できる。レゾール型フェノール樹脂としては、数平均分子量が200〜2,000、好ましくは300〜1,200の範囲内であり、かつベンゼン核1核当りのメチロール基の平均数が0.3〜3.0個、好ましくは0.5〜3.0個、さらに好ましくは0.7〜3.0個の範囲内であることが適当である。
【0075】
架橋剤(C)として用いられる上記アミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。また、上記樹脂のメチロール基の少なくとも一部をメチルアルコール、エチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどの炭素原子数1〜8のアルコールにてエーテル化したものも使用できる。
【0076】
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物において、前記水分散性アクリル重合体粒子(B)及び架橋剤(C)の配合割合は、アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)100質量部を基準にして、固形分量で下記の範囲内にあることが好適である。
(B)成分:0.5〜30質量%、好ましくは3〜20質量%、
(C)成分:0〜15質量%、好ましくは0〜8質量%。
【0077】
本発明の水性塗料組成物は、アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)が中和され、水性媒体中に分散されており、その組成物中に水分散性アクリル重合体粒子(B)及び必要に応じて架橋剤(C)を含有するものであるが、塗装性、塗膜性能及び塗膜の美粧性の向上、加工時や輸送時の塗膜の傷付き防止、臭気の改善などの目的で、さらに必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、顔料、ワックス、香料などを適宜含有するものであってもよい。本発明の水性塗料組成物の固形分濃度は特に限定されるものではないが、通常20〜45重量%の範囲で用いられる。
【0078】
本発明の水性塗料組成物は、種々の基材に適用することができ、例えばブリキ、アルミニウム、ティンフリースチール、鉄、亜鉛、銅、亜鉛メッキ鋼板、合金メッキ鋼板などの金属、これらの金属にリン酸塩処理やクロメート処理などの表面処理を施した化成処理金属板、及びこれらの金属板にエポキシ系、ビニル系などのプライマーを塗装した金属板など、ならびにこれらの金属板を缶などに加工したものなどを挙げることができる。本発明組成物から得られる塗膜は、加工性、基材への接着性、加工性、耐水性、耐食性、衛生性に優れており、缶蓋に適用した場合にタブを開けた際の耐膜残り性にも優れている。
【0079】
本発明の水性塗料組成物を基材に塗装する方法としては、公知の各種の方法、例えばロールコータ塗装、スプレー塗装、浸漬塗装や電着塗装等が適用できる。なかでもロールコータ塗装が好ましい。塗膜厚は用途によって適宜選定すればよいが、通常3〜20μm程度が好ましい。塗装した塗膜の乾燥条件としては、通常、素材到達最高温度が120〜300℃となる条件で10秒〜30分間が好ましく、ロールコータ塗装の場合には、200〜280℃で10秒〜50秒間の範囲内であるがさらに好ましい。
【実施例】
【0080】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、特に断らない限り「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0081】
製造例1 カルボキシル基含有アクリル樹脂溶液の製造
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素導入口を備えた4ツ口フラスコにブタノール400部を秤取した。次にメタクリル酸174部、スチレン87部、エチルアクリレート29部及びベンゾイルパーオキサイド(75%水湿潤物)14.5部をビーカーに秤取し、よく混合撹拌し、予備混合物を調製した。フラスコ中のブタノールの温度を105℃に加熱し、この温度において前記予備混合物を滴下ロートから3時間に亙って滴下した。同温度で更に2時間保持し、共重合反応を完了させた。次いで2−ブトキシエタノール290部を加えて、粘度370センチポイズ、樹脂酸価390、固形分濃度30%のカルボキシル基含有アクリル系樹脂溶液(以下「アクリル系樹脂溶液a」という)を得た。
【0082】
製造例2 エポキシ樹脂溶液の製造
エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂、エポキシ当量約190、粘度約130ポイズ、25℃)505部、ビスフェノールA286部、トリ−n−ブチルアミン0.5部及びメチルイソブチルケトン88部を反応容器に入れ、窒素気流下で135℃に加熱したところ、内容物は180℃まで発熱した。このものを160℃まで冷却し、約3時間反応を行なってエポキシ当量4000、溶液粘度(25℃における樹脂分40%のブチルカルビトール溶液のガードナーホルト粘度)Z4の90%エポキシ樹脂溶液(以下「エポキシ樹脂溶液b−1」という)を得た。
【0083】
製造例3
エピコート828 を165部 、エピコート806H(ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量約170、分子量約320) 579部 ビスフェノールF 410部 、テトラブチルアンモニウムブロマイド 0.6部及びメチルイソブチルケトン88部を反応容器に入れ、窒素気流下160℃で反応を行った。反応はエポキシ当量で追跡し、約6時間反応することにより数平均分子量約8,000、エポキシ当量約6,500の90%ビスフェノールA/F共重合型エポキシ樹脂溶液b−2を得た。
【0084】
製造例4 アクリル樹脂変性エポキシ樹脂の水分散液の製造
配 合
(1)アクリル樹脂溶液a 165部
(2)エポキシ樹脂溶液b−1 312部
(3)n−ブタノール 86部
(4)2−ブトキシエタノール 47部
(5)脱イオン水 3.2部
(6)ジメチルアミノエタノール 5.3部
(7)ジメチルアミノエタノール 9.5部
(8)脱イオン水 372部
上記(1)〜(8)の合計は、1000部である。
【0085】
反応容器に上記(1)〜(4)を入れ、窒素気流下で115℃に加熱し、樹脂成分を溶解せしめた。溶解後105℃まで冷却し、(5)〜(6)の順に加え、105℃で3時間保持した。反応生成物はアクリル系樹脂/エポキシ樹脂の固形分質量比が15/85である。反応は、酸価を測定して追跡し、反応終点では酸価51であった。次いで3時間後に(7)を添加し、ついで、(8)を30分間に亙って添加して水分散化させて、固形分約33%のアクリル樹脂変性エポキシ樹脂水分散液a−1を得た。
【0086】
製造例5
製造例4において、エポキシ樹脂溶液b−1のかわりにをエポキシ樹脂b−2を使用する以外は製造例4と同様に行い、固形分約33%のアクリル樹脂変性エポキシ樹脂水分散液a−2を得た。
【0087】
製造例6
配合
エポキシ樹脂溶液b−1 80部
n−ブタノール 28部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 33部
メタクリル酸 12部
スチレン 6部
エチルアクリレート 2部
過酸化ベンゾイル 2部
ジメチルアミノエタノール 5部
脱イオン水 135部
反応容器に上記(1)〜(3)を入れ、窒素気流下で115℃に加熱し、樹脂を溶解せしめた。溶解後、115℃を保持して(4)〜(6)の混合物を滴下ロートから1時間かけて滴下し、さらに、同温度を保持して約2時間反応を行った。ついで、105℃まで冷却し、(8)を添加して5分間撹拌した後、系の温度を70℃とし、上記(9)を徐々に加えて水分散を行った。さらに減圧蒸留により過剰の溶剤を除去し、固形分約33%のアクリル樹脂変性エポキシ樹脂の水分散液a−3を得た。
【0088】
製造例7 水分散性アクリル重合体粒子の水分散液の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水85部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、75℃に昇温した。次いで下記のモノマーと開始剤の乳化物(注1)全量のうちの3%量及び0.5%過硫酸アンモニウム水溶液10部とを反応容器内に導入し75℃で2時間保持した。その後、残りのモノマーと開始剤の乳化物を5時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後6時間熟成を行なった。その後、30℃まで冷却し、5.0%ジメチルエタノールアミン水溶液と脱イオン水を用いて固形分濃度40%、pHが6.8となるように調整した。ついで、200メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、固形分40%の水分散性アクリル樹脂1の水分散液を得た。得られた水分散性アクリル樹脂1は、平均粒子径140nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、酸価10mgKOH/gを有していた。
【0089】
(注1)モノマーと開始剤の乳化物:脱イオン水55部、ドデシルベンゼンスルホン酸アミン塩乳化剤3.0部、スチレン28.5部、アクリル酸エチル70部、メタクリル酸1.5部、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕0.2部を混合攪拌して、モノマーと開始剤の乳化物を得た。
【0090】
製造例8〜14
モノマーと開始剤の乳化物の組成を下記表1に示すとおりとする以外、製造例7と同様にして合成を行い、水分散性アクリル重合体粒子2〜8の水分散液を得た。製造例7と併せて、得られた水分散性アクリル樹脂1〜8の重量平均分子量、吸光度、平均粒子径、酸価及び固形分濃度を下記表1に示す。
【0091】
【表1】

製造例15
還流管、温度計、撹拌機を装着した四つ口フラスコに、フェノール188部、37%ホルムアルデヒド水溶液324部をフラスコに仕込み、50℃に加熱し内容物を均一に溶解した。次に、酢酸亜鉛を添加、混合して系内のpHを5.0に調整した後、90℃に加熱し5時間反応を行った。ついで50℃に冷却し、32%水酸化カルシウム水分散液をゆっくり添加しpHを8.5に調整した後、50℃で4時間反応を行った。反応終了後、20%塩酸でpHを4.5に調整した後、キシレン/n−ブタノール=1/1(質量比)の混合溶剤で樹脂分の抽出を行い、触媒、中和塩を除去し、ついで減圧下で共沸脱水し、固形分60%のフェノール樹脂溶液を得た。得られた樹脂(固形分)は、数平均分子量約320で、ベンゼン核1核当り、平均メチロール基数1.3個、平均アルコキシメチル基数0.2個を有していた。
【0092】
実施例1
容器中で、製造例3で得た固形分33%のアクリル樹脂変性エポキシ樹脂の水分散液857.6部、脱イオン水107.0部、製造例9で得た固形分40%の水分散性アクリル樹脂3の水分散液21.2部、製造例15で得た固形分60%のレゾール型フェノール樹脂溶液14.2部を均一に混合し、固形分30%の水性塗料組成物を得た。
【0093】
実施例2〜15及び比較例1〜4
後記表2に示す配合とする以外は実施例1と同様に行い、各水性塗料組成物を得た。表2における配合量は、固形分量による表示である。
【0094】
上記実施例および比較例で得られた各水性塗料組成物について、各種試験を行なった。試験方法は下記方法に従って行なった。試験結果を後記表2に示す。
【0095】
試験方法
試験塗板の作成:厚さ0.3mmのアルミニウム板に各例で得た水性塗料組成物を乾燥塗膜重量が120mg/100cmとなるようにバーコータにて塗装し、100℃で2分間セッティングした後、乾燥機にて素材到達最高温度が260℃となるよう雰囲気温度280℃、風速25m/分の条件で30秒間焼付けて試験板を得た。この試験板について、塗膜の密着性、耐沸騰水性、加工性、MEK抽出率および耐腐食性の各試験に供した。また厚さ0.1mmのアルミ箔を厚さ0.3mmのアルミニウム板のかわりに使用し、乾燥機の雰囲気温度を275℃とする以外は、上記試験板の作成と同様にして過マンガン酸カリウム消費量の試験用の試験板を得た。
【0096】
塗膜の密着性:試験塗板の塗膜面にナイフを使用して約1.5mmの幅で縦、横それぞれ11本の切り目をゴバン目状に入れる。24mm幅のセロハン粘着テープを密着させ、強く剥離した時のゴバン目部の密着性を観察する。
〇:全く剥離なし
△:若干剥離あり
×:著しい剥離あり
耐沸騰水性:試験塗板を約100℃の沸騰水中に30分間浸漬後、塗膜外観を目視で下記基準により評価し、試験後の塗板について上記密着性の試験と同一の評価法で密着性を判定する。
(塗膜外観)
◎:白化、フクレ、剥離などの異常が認められない。
○:わずかに白化が認められるが、フクレ、剥離は認められない。
△:白化がかなり認められるが、フクレ、剥離は認められない。
×:著しい白化、フクレ、剥離のいずれかが認められる。
【0097】
加工性:20℃の室内にて、特殊ハゼ折り型デュポン衝撃試験器を用い、下部を2つ折にした試験塗板の折曲げ部の間に厚さ0.3mmのアルミニウム板を1枚挟み、試験器にセットし、接触面が平らな重さ3kgの鉄のおもりを高さ50cmから落下させて折曲げ部に衝撃を与えた後、折曲げ先端部に印加電圧6.5Vで6秒間通電し、折曲げ先端部20mm幅の電流値(mA)を測定する。
○:5mA未満
△:5mA以上で、かつ15mA未満
×:15mA以上
過マンガン酸カリウム消費量:厚さ0.1mmのアルミ箔に塗装してなる試験塗板を、塗布面積1cm当り活性炭で処理した水道水が1ccとなるように該処理水を満たした耐熱ガラス製ボトルに入れ、ふたをして、125℃、30分間殺菌処理後、その内容液につき食品衛生法記載の試験法(厚生省434号)に準じて過マンガン酸カリウム消費量を測定した。消費量をppmで表す。
【0098】
MEK抽出残率:試験塗板を10cm×10cmの大きさに切断し、塗布面積とメチルエチルケトン(MEK)量との比が1cm/1ccとなるようにして、沸騰しているメチルエチルケトン中に浸漬し、沸騰メチルエチルケトンで1時間抽出処理を行う。試験塗板の処理前の塗膜重量に対する抽出残量の割合を百分率で表わす。
【0099】
耐腐食性:製蓋プレス機を用いて試験塗板の製蓋加工を行った缶蓋を、リンゴ酸2部、クエン酸2部及び食塩2部を脱イオン水100部に溶解した水溶液を充填した缶胴に巻き締め、該製蓋加工された試験塗板の塗膜面が内容物に浸漬された状態で50℃の室内で14日間貯蔵した後、缶を切り開き缶蓋の状態を観察し下記基準にて評価した。
○:缶蓋に異常は認められない。
△:缶蓋に少し錆が認められる。
×:缶蓋に著しく錆が認められる。
【0100】
【表2】

【0101】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリル樹脂変性エポキシ樹脂及び、該樹脂(A)100質量部を基準にして、(B)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー0.1〜15質量%及びその他の重合性不飽和モノマー85〜99.9質量%からなるモノマーの共重合体であって、重量平均分子量が30万以上であり、かつ質量濃度1.35%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液とした分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下である水分散性アクリル樹脂0.5〜30質量部を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
アクリル樹脂変性エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(b)とをエステル化反応させてなるか又はビスフェノール型エポキシ樹脂(a)にカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分をグラフト重合させてなるアクリル樹脂変性エポキシ樹脂である請求項1記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
水分散性アクリル重合体粒子(B)の重量平均分子量が30万〜1000万である請求項1又は2記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
水分散性アクリル重合体粒子(B)が、1分子中に、
−(CHCHO)n−(式中、nは5〜60の整数)で表わされるポリオキシエチレン基及び重合性不飽和基を有する反応性乳化剤の存在下で乳化重合してなるものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
さらに、架橋剤(C)として、フェノール樹脂及びアミノ樹脂のうちの少なくとも1種を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
(A)成分の樹脂固形分100質量部を基準にして、(C)成分の固形分量が0〜15質量%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性塗料組成物を、金属板上にロール塗装し、焼付け硬化させることを特徴とする塗膜形成方法。

【公開番号】特開2009−120642(P2009−120642A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293222(P2007−293222)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】