説明

水性塗料組成物

【課題】固形分濃度が十分に高く、かつ、優れた外観および耐久性(例えば、耐アルカリ性)を有する塗膜が得られる水性塗料組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の水性塗料組成物は、水性媒体中に分散したディスパーションである樹脂(A)と、櫛形構造を有する高分子である樹脂(B)とを含む。樹脂(A)は、脂肪族または芳香族の疎水性ドメイン(a−i)を有する。樹脂(B)は、主鎖および/または複数の側鎖に疎水性ドメイン(b−i)を有し、かつ、複数の側鎖が親水性ドメイン(b−ii)を構成し、ならびに、疎水性ドメインと親水性ドメインとの配合比(b−i)/(b−ii)が重量比で80/20〜25/75である。本発明の水性塗料組成物は、No.4フォードカップでの希釈粘度が40秒のときに固形分濃度が60%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する意識の高まりから、有機溶媒の使用量を削減した水性塗料への要求が高まっている。水性塗料としては、例えば、水溶性アクリル樹脂やアクリル樹脂エマルションを用いた水性塗料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記のようなアクリル系水性塗料は、固形分濃度が低く、塗装作業性が不十分であるという問題がある。一方、塗装作業性を改善するために固形分濃度を高くすると、得られる塗膜の平滑性が不十分であり、その結果、塗膜の外観や光沢が不十分であるという問題がある。
【特許文献1】特開2006−265535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、固形分濃度が十分に高く、かつ、優れた外観および耐久性(例えば、耐アルカリ性)を有する塗膜が得られる水性塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水性塗料組成物は、水性媒体中に分散したディスパーションである樹脂(A)と、櫛形構造を有する高分子である樹脂(B)とを含む。樹脂(A)は、脂肪族または芳香族の疎水性ドメイン(a−i)を有する。樹脂(B)は、主鎖および/または複数の側鎖に疎水性ドメイン(b−i)を有し、かつ、複数の側鎖が親水性ドメイン(b−ii)を構成し、ならびに、疎水性ドメインと親水性ドメインとの配合比(b−i)/(b−ii)が重量比で80/20〜25/75である。組成物の固形分濃度は、No.4フォードカップでの希釈粘度が40秒のときに60%以上である。
【0006】
好ましい実施形態においては、上記樹脂(A)の疎水性ドメイン(a−i)は式(I)で表され、上記樹脂(B)の親水性ドメイン(b−ii)は、ポリエチレングリコール由来の残基およびイオン性官能基から選択される少なくとも1つを含む:
【化1】

式(I)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数5以上18以下の疎水性官能基である。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記樹脂(A)の平均粒子径は20nm〜250nmであり、該樹脂(A)における上記疎水性ドメイン(a−i)の構成比率は、該樹脂(A)の固形分中1重量%以上である。好ましい実施形態においては、上記樹脂(A)の酸価は5〜100mgKOH/gであり、水酸基価は10〜150mgKOH/gであり、重量平均分子量は7000〜300000である。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記樹脂(B)の親水性ドメイン(b−ii)は、ポリエチレングリコール由来であり、(b−ii)におけるポリエチレングリコールの含有量は30〜65重量%であり、上記樹脂(B)の重量平均分子量は2000〜1000000である。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記樹脂(A)および上記樹脂(B)の配合比は、固形分重量比基準で、(A)/(B)=98/2〜50/50である。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記水性塗料組成物は、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、カルボジイミド化合物およびオキサゾリン化合物からなる群から選ばれる1種類以上の化合物が硬化剤として配合されている。
【0011】
本発明の別の局面によれば、物品が提供される。この物品は、上記の水性塗料組成物が塗装されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、疎水性ドメインを有するディスパーション樹脂と特定の櫛形構造を有する高分子とを組み合わせて用いることにより、粘度調整剤(増粘剤とも言う)を添加しても、固形分濃度が十分に高く、優れた塗装作業性を有し、かつ、優れた外観および耐久性(例えば、耐アルカリ性)を有する塗膜が得られる水性塗料組成物を提供することができる。すなわち、本発明によれば、従来の水性塗料組成物では実現できなかった、固形分濃度の増大と塗膜外観の向上とを両立させることができる。加えて、耐久性(例えば、耐アルカリ性)を有する塗膜が得られ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の水性塗料組成物は、水性媒体中に分散したディスパーションである樹脂(A)と、櫛形構造を有する高分子である樹脂(B)とを含む。
【0014】
上記樹脂(A)は、疎水性ドメイン(a−i)を有する。樹脂(A)としては、疎水性ドメインを有し、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切なディスパーション樹脂が採用され得る。使用可能なディスパーション樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。好ましくは、アクリル系樹脂である。アクリル系樹脂ディスパーション(以下、単にアクリルディスパーションとも称する)は製造が容易であり、かつ、塗料組成物を加熱した際の固形分濃度および粘度の制御が、樹脂の官能基あるいは分子量の変更などにより比較的容易だからである。上記ディスパーション樹脂は、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。
【0015】
好ましくは、上記樹脂(A)の疎水性ドメイン(a−i)は式(I)で表される:
【化2】

式(I)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数5以上18以下の疎水性官能基である。より詳細には、Rは、炭素数5以上18以下の直鎖状、分岐状または脂環式アルキル基、炭素数6以上18以下の芳香族基であり、これらは疎水性の置換基で置換されていてもよい。Rは、好ましくは芳香環または炭素数8から12の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基である。
【0016】
上記樹脂(A)における上記疎水性ドメイン(a−i)の構成比率は、当該樹脂(A)の固形分中、好ましくは1重量%以上であり、さらに好ましくは3重量%〜60重量%であり、特に好ましくは5重量%〜30重量%である。1重量%を下回った場合および60重量%を上回った場合は、塗料の高固形分化が困難になることが多い。
【0017】
以下、樹脂(A)の一例として、アクリルディスパーションについて説明する。アクリルディスパーションは、例えば、α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を任意の適切な方法(例えば、溶液重合、乳化重合)で(共)重合することにより得られる。α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物は、酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマー、水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマー、および、他のα,β−エチレン性不飽和モノマーの少なくとも1つを含有する。例えば、アクリルディスパーションは、開始剤存在下でα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を溶液重合し、溶媒を実質的に除去した後、水および分散剤を加えることにより得られ得る。具体的な重合方法、重合開始剤、溶媒および分散剤等は業界で周知であるので、詳細な説明は省略する。上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物に含まれるモノマーの種類、使用量および組み合わせ等は、目的に応じて適切に調整され得る。好ましくは、これらのモノマーは、得られる(共)重合体が上記式(I)で表される疎水性ドメイン(a−i)を上記所望の含有量になるように適切に組み合わせて用いられ得る。
【0018】
上記酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、イソクロトン酸、α−ハイドロ−ω−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ポリ[オキシ(1−オキソ−1,6−ヘキサンジイル)]、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、3−ビニルサリチル酸、3−ビニルアセチルサリチル酸等を挙げることができる。これらの中で好ましいものは、アクリル酸、メタクリル酸である。
【0019】
上記水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アリルアルコール、メタクリルアルコール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物等を挙げることができる。なかでも、被塗物への付着性や得られる塗膜の物性の観点から、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物が好ましい。
【0020】
上記他のα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、エステル部の炭素数が3以上の(メタ)アクリル酸エステル(例えば(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸ステアリル等)、重合性芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルケトン、t−ブチルスチレン、パラクロロスチレン及びビニルナフタレン等)、重合性アミド化合物(例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N−モノブチル(メタ)アクリルアミド、N−モノオクチル(メタ)アクリルアミド
2,4−ジヒドロキシ−4−ビニルベンゾフェノン、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等)、重合性ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、α−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン等)が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。
【0021】
上記樹脂(A)の平均粒子径は、好ましくは20nm〜250nmである。1つの実施形態においては、上記樹脂(A)の平均粒子径は、好ましくは20nm〜230nmであり、さらに好ましくは20nm〜100nmである。このような平均粒子径であれば、得られる塗膜の高外観と塗料の高固形分化との両立が可能になるという利点がある。なお、上記樹脂(A)の平均粒子径は、試料を脱イオン水にて希釈し、レーザー散乱式粒度分布測定装置(大塚電子製、商品名ELS−800)を用いて25℃で測定したときの値(キュムラント解析により求めた値)である。
【0022】
上記樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは7000以上であり、さらに好ましくは3000〜300000である。分子量がこのような範囲であれば、当該樹脂(A)を適用した塗料の粘度の制御が容易である。上記分子量は、ポリスチレンを標準としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定され得る。
【0023】
1つの実施形態においては、上記樹脂(A)の酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上であり、さらに好ましくは10mgKOH/g以上である。酸価が5mgKOH/g未満である場合、得られる塗膜の硬化性が不十分になる場合があるだけでなく、樹脂(A)のディスパーションとしての安定性が十分に確保できないおそれがある。一方、酸価は、好ましくは100mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは70mgKOH/g以下である。酸価が100mgKOH/gを超える場合、得られる塗膜の耐水性をはじめとする諸性能が低下する場合がある。1つの実施形態においては、上記樹脂(A)の水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g以上、さらに好ましくは20mgKOH/g以上である。水酸基価が10mgKOH/g未満である場合、充分な硬化性が得られない場合がある。一方、水酸基価は、好ましくは150mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは100mgKOH/g以下である。水酸基価が150mgKOH/gを超える場合、得られる塗膜の耐水性をはじめとする諸性能が低下する場合がある。ポリマーの酸価および/または水酸基価は、モノマー混合物中の酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーおよび水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーの含有量を調整することにより制御され得る。なお、ここでいう酸価および水酸基価は、樹脂固形分に対する値である。
【0024】
上記樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−20〜80℃である。ガラス転移温度(Tg)がこのような範囲であれば、水性塗料組成物を加熱する際の固形分濃度および粘度の制御が容易であり、かつ、得られる塗膜のワレの発生を回避する点において優れる。
【0025】
上記のように、樹脂(B)は、櫛形構造を有する高分子(以下、単に櫛形高分子または櫛形ポリマーとも称する)である。本明細書において「櫛形高分子」とは、主鎖と当該主鎖から延びる複数の側鎖を有し、当該複数の側鎖が主鎖から櫛の歯のように延びているものをいう。櫛形高分子は、任意の適切なグラフト重合法により得られ得る。
【0026】
上記樹脂(B)は、主鎖および/または複数の側鎖に疎水性ドメイン(b−i)を有する。より具体的には、疎水性ドメイン(b−i)は、主鎖全体が当該疎水性ドメインで構成されてもよく、主鎖の所定の部位に当該疎水性ドメインが所定の数で存在してもよく、主鎖および/または側鎖の末端に当該疎水性ドメインが存在してもよく(すなわち、疎水性ドメインでエンドキャップされてもよく)、側鎖の所定の部位に当該疎水性ドメインが所定の数で存在してもよい。これらを組み合わせた形態であってもよい。
【0027】
疎水性ドメイン(b−i)としては、疎水性を有し、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な残基、置換基、繰り返し単位等が採用され得る。1つの実施形態においては、主鎖全体が疎水性ドメインで構成される(すなわち、主鎖全体が疎水性を有する)。このような主鎖の具体例としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−アクリルモノマー共重合体、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ポリsクリルアミン、および側鎖にグリシジル基を有するアクリルポリマーが挙げられる。別の実施形態においては、主鎖の所定の部位に当該疎水性ドメインが所定の数(所定の含有率)で存在し得る。言い換えれば、上記のような主鎖を構成し得る疎水性モノマーと親水性モノマーとが共重合されて主鎖を構成してもよい。櫛形高分子の主鎖は、好ましくはその全体が疎水性ドメインで構成され、特に好ましくはスチレン−無水マレイン酸共重合体で構成される。別の実施形態においては、所定の側鎖の末端に疎水性ドメインが存在し得る。すなわち、所定の側鎖の末端が疎水性ドメインでエンドキャップされ得る。このような疎水性ドメインの具体例としては、低級アルコール(例えば、炭素数が6個以下のアルコール)由来の基が挙げられる。好ましくは、低級アルコールであって、かつ、高沸点(例えば、沸点が150℃以上)のアルコール由来の基であり、さらに好ましくは、ブチルセロソルブ由来の基である。
【0028】
上記樹脂(B)は、複数の側鎖が親水性ドメイン(b−ii)を構成する。親水性ドメイン(b−ii)としては、親水性を有し、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な残基、置換基、繰り返し単位等が採用され得る。親水性ドメイン(b−ii)の好ましい具体例としては、ポリエチレングリコール由来の残基およびイオン性官能基が挙げられる。イオン性官能基の具体例としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホ基、アミノカルボン酸基等の酸基およびこれらの酸基が中和された基が挙げられる。これらは、単独で親水性ドメインを構成してもよく、組み合わせて親水性ドメインを構成してもよい。さらに好ましくは、親水性ドメインは、ポリエチレングリコール由来の基またはカルボキシル基である。
【0029】
上記樹脂(B)の重量平均分子量は好ましくは2000〜100000であり、さらに好ましくは2500〜100000である。分子量が2000未満である場合には、得られる塗膜の耐水性が不十分になるおそれがある他、得られる塗料の安定性が不十分となる場合がある。分子量が100000を超えると、粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難となる場合がある。
【0030】
上記樹脂(B)の櫛形構造における主鎖の分子量は、好ましくは1000〜10000であり、さらに好ましくは1000〜5000である。主鎖の分子量がこのような範囲であれば、塗膜の耐水性および塗料の安定性を共に満足する水性塗料組成物が得られ得る。分子量が上記好ましい範囲の上限を超えた場合、樹脂の粘度が高くなりすぎて当該樹脂の製造が困難になるおそれがある。当該櫛形構造における側鎖(櫛の歯)の数は、好ましくは5本〜15本であり、さらに好ましくは5本〜10本である。
【0031】
本発明においては、樹脂(B)の上記疎水性ドメインと上記親水性ドメインとの配合比(b−i)/(b−ii)は、重量比で80/20〜25/75であり、好ましくは70/30〜35/65であり、さらに好ましくは60/40〜45/55である。配合比がこのような範囲であれば、樹脂(B)を配合した水性塗料の高固形分化が可能になる。
【0032】
上記樹脂(B)の特に好ましい具体例としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体を主鎖とし、ポリエチレングリコールを側鎖とするグラフト共重合体が挙げられる。当該共重合体において、無水マレイン酸由来の過剰なカルボキシル基は、ブチルセロソルブでキャップされている。
【0033】
本発明の水性塗料組成物における上記樹脂(A)および上記樹脂(B)の配合比は、固形分重量比基準で(A)/(B)が、好ましくは98/2〜50/50であり、さらに好ましくは98/2〜70/30であり、特に好ましくは95/5〜80/20である。このような配合比であれば、塗膜の耐水性を損なうことなく得られる塗料の高固形分化が可能となる。
【0034】
本発明の水性塗料組成物は、No.4フォードカップでの希釈粘度が40秒のときに固形分濃度が60%以上であり、好ましくは63%以上であり、さらに好ましくは65%以上であり、特に好ましくは66%以上であり、最も好ましくは67%以上である。上記特定の樹脂(A)と上記特定の樹脂(B)とを組み合わせて用いることにより、塗装作業性を確保し得る所定の粘度において、このような高固形分濃度を達成することができる。その結果、優れた外観(例えば、光沢)および耐久性(例えば、耐アルカリ性)を有する塗膜を得ることができる。すなわち、従来の水性塗料組成物では実現が困難であった固形分濃度の増大と塗膜外観の向上とを両立させることができる。このような優れた効果は、試行錯誤の末に、特定の樹脂(A)と特定の樹脂(B)とを組み合わせることによってはじめて得られた知見であり、予期せぬ優れた効果である。
【0035】
上記水性塗料組成物は、好ましくは、硬化剤をさらに含有し得る。硬化剤を含有することにより、得られる塗膜に高い硬化性を付与することができる。硬化剤としては、任意の適切な硬化剤が採用され得る。硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。得られる塗膜の諸性能およびコストの観点から、メラミン樹脂が好ましい。1つの実施形態においては、ブロックイソシアネート樹脂、カルボジイミド化合物またはオキサゾリン化合物が併用され得る。これらを併用することにより、低温での硬化性が向上し得る。
【0036】
上記硬化剤の配合量は、塗料樹脂固形分100重量部に対して、好ましくは15〜35重量部であり、さらに好ましくは15〜35重量部である。配合量が15重量部未満である場合には、硬化性が不十分な場合がある。配合量が35重量部を超えると、付着性、耐温水性等が低下する場合がある。
【0037】
上記水性塗料組成物は、必要に応じて、粘性制御剤をさらに含有し得る。粘性制御剤を含有することにより、水性塗料組成物を加熱する際の粘度を所望の範囲に調整することができる。粘性制御剤としては、チクソトロピー性を示すものであれば任意の適切な化合物が採用され得る。具体例としては、脂肪酸アマイドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノアマイドのリン酸塩等のポリアマイド系の化合物、酸化ポリエチレンのコロイド状膨潤分散体等のポリエチレン系等の化合物、有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイト等の有機ベントナイト系の化合物、ケイ酸アルミ、硫酸バリウム等の無機顔料、顔料の形状により粘性が発現する扁平顔料、架橋又は非架橋の樹脂粒子、ウレタン会合型増粘剤、アルカリ増粘型ポリカルボン酸が挙げられる。
【0038】
上記水性塗料組成物は、必要に応じて、添加剤をさらに含有し得る。添加剤の具体例としては、有機着色材(例えば、フタロシアニン系、キノフタロン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系)、無機着色材(例えば、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック)、体質顔料(例えば、硫酸バリウム、タルク、クレー)、防錆顔料、ポリシロキサン等の表面調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、アミン化合物、イミタゾール化合物、カチオン重合開始剤等の硬化触媒、消泡剤が挙げられる。含有されるべき添加剤の種類および量は、目的に応じて適切に選択され得る。
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
【0040】
(製造例1)
反応容器にジプロピレングリコールメチルエーテル10.00部およびプロピレングリコールメチルエーテル25.20部を加え、窒素気流中で混合撹拌しながら115℃に昇温した。次いで、反応容器内の温度を維持しながら、メタクリル酸6.14部、メタクリル酸メチル26.60部、アクリル酸ブチル27.27部、メタクリル酸2‐ヒドロキシエチル13.92部、アクリル酸2−エチルヘキシル26.07部と、プロピレングリコールメチルエーテル15.0部およびt‐ブチルパーオキシ2‐エチルヘキサノエート6部からなる開始剤溶液とを、3時間にわたり並行して当該反応容器に滴下した。滴下終了後、0.5時間同温度で熟成を行った。次に、当該温度を維持しながら、プロピレングリコールメチルエーテル3.0部およびt‐ブチルパーオキシ2―エチルヘキサノエート0.3部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり反応容器に滴下した。滴下終了後、1時間同温度で熟成を行った。さらに、脱溶剤装置を用いて、減圧下(70torr)、110℃で溶媒を42.88部留去した後、イオン交換水147.45部およびジメチルエタノールアミン3.14部を加えてアクリル系樹脂ディスパーション(A−1)を得た。得られたアクリル系樹脂ディスパーション(A−1)の不揮発分は40.0%、固形分酸価は40mgKOH/g、水酸基価は60mgKOH/gであった。また、平均粒子径は50nmであった。
【0041】
(製造例2)
アクリル酸2−エチルヘキシルの代わりにスチレンを26.07部使用したこと以外は製造例1と同様にして、アクリル系樹脂ディスパーション(A−2)を得た。得られたアクリル系樹脂ディスパーション(A−2)の不揮発分は40.1%、平均粒子径は60nmであった。
【0042】
(製造例3)
アクリル酸2−エチルヘキシルの代わりにステアリルメタクリレートを26.07部使用したこと以外は製造例1と同様にして、アクリル系樹脂ディスパーション(A−3)を得た。得られたアクリル系樹脂ディスパーション(A−3)の不揮発分は40.3%、平均粒子径は65nmであった。
【0043】
(製造例4)
ジメチルエタノールアミンの使用量を2.51部に変更し、イオン交換水の使用量を146.58部に変更したこと以外は製造例1と同様にして、アクリル系樹脂ディスパーション(A−4)を得た。得られたアクリル系樹脂ディスパーション(A−4)の不揮発分は40.1%、平均粒子径は230nmであった。
【0044】
(製造例5)
アクリル酸ブチルの使用量を51.84部に変更し、アクリル酸2−エチルヘキシルの使用量を1.50部に変更したこと以外は製造例1と同様にして、アクリル系樹脂ディスパーション(A−5)を得た。得られたアクリル系樹脂ディスパーション(A−5)の不揮発分は40.1%、平均粒子径は25nmであった。
【0045】
(製造例6)
アクリル酸ブチルの使用量を53.34部に変更し、アクリル酸2−エチルヘキシルを使用しなかったこと以外は製造例1と同様にして、アクリル系樹脂ディスパーション(A−6)を得た。得られたアクリル系樹脂ディスパーション(A−6)の不揮発分は39.8%、平均粒子径は80nmであった。
【0046】
(製造例7)
アクリル酸ブチルの使用量を52.84部に変更し、アクリル酸2−エチルヘキシルの使用量を0.50部に変更したこと以外は製造例1と同様にして、アクリル系樹脂ディスパーション(A−7)を得た。得られたアクリル系樹脂ディスパーション(A−7)の不揮発分は40.0%、平均粒子径は25nmであった。
【0047】
(製造例8)
ジメチルエタノールアミンの使用量を6.28部に変更し、イオン交換水の使用量を151.78部に変更したこと以外は製造例1と同様にして、アクリル系樹脂(A−8)を得た。アクリル系樹脂(A−8)は溶媒に完全に溶解し、溶液状態(不揮発分40.2%)で得られた。
【0048】
(製造例9)
ポリマー(B−1)の合成
反応容器に平均分子量が550のポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(日本油脂株式会社製、ユニオックスM−500)を1958部仕込み、窒素気流下で撹拌しながら120℃まで加温した。この時点で、粉末状のスチレン・無水マレイン酸共重合体(エルフ・アトケム社製、SMA#1,000、平均分子量1,600、スチレン・無水マレイン酸=1:1共重合モル比)(以下、SMAと呼ぶ)1600部を徐々に追添した後、ブチルセロソルブ453部を投入し、180℃で3時間反応させて櫛形ポリマー(B−1)を合成した。冷却後、6510部のイオン交換水およびジメチルエタノールアミン329部(中和率50%)を入れてポリマー(B−1)を溶解し、不揮発分40.0%の透明な黄色溶液を得た。
【0049】
(製造例10)
ポリマー(B−2)の合成
反応容器にSMAを1600部および酢酸ブチルを2000部仕込み、窒素気流下で撹拌しながら100℃に加温しSMAを溶解させた。そこへ、エチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合体モノメチルエーテルモノアミン(Huntsuman社製、JEFFAMINE M-1000、平均分子量1,000、エチレンオキシド:プロピレンオキシド=86:14共重合モル比)2626部を徐々に添加した後、モノエタノールアミン291部を投入し、80℃で1時間反応させて櫛形ポリマー(B−2)を合成した。さらに、脱溶剤装置を用いて、減圧下(70torr)90℃で溶剤を2000部留去した後、赤外分光光度計にて反応混合物のIRスペクトルを測定し、1655cm−1付近のアミド基由来の吸収を確認した。反応混合物を40℃に冷却した後7269部のイオン交換水およびジメチルエタノールアミン329部(中和率50%)を入れて溶解し、不揮発分40.0%の透明な黄色溶液を得た。
【0050】
(製造例11)
ポリマー(B−3)の合成
脱溶剤の手前までは製造例10と同じ方法で櫛形ポリマーを合成し、脱溶剤装置を用いて、減圧下(70torr)150℃で溶剤を2000部留去した後、同条件で更に3時間の熟成を行った。これらの工程により133gの水が回収された。赤外分光光度計にて反応混合物のIRスペクトルを測定し、1700cm−1付近のイミド基由来の吸収を確認した。反応混合物を40℃に冷却の後、6576部のイオン交換水を入れて溶解し不揮発分40.0%の透明な黄色溶液を得た。
【0051】
(製造例12)
ポリマー(B−4)の合成
ポリエチレンオキシドモノメチルエーテルM−500の使用量を4070部に変更し、ブチルセロソルブを使用せず、イオン交換水の使用量を8999部に変更したこと以外は製造例9と同様にして、櫛形ポリマー(B−4)の溶液(不揮発分40.0%)を得た。
【0052】
(製造例13)
ポリマー(B−5)の合成
ポリエチレンオキシドモノメチルエーテルM−500の使用量を424部に変更し、ブチルセロソルブの使用量を782部に変更し、イオン交換水の使用量を4703部に変更したこと以外は製造例9と同様にして、櫛形ポリマー(B−5)を得た。櫛形ポリマー(B−5)は、水相から分離した状態で得られた。
【0053】
(製造例14)
ポリマー(B−6)の合成
ポリエチレンオキシドモノメチルエーテルM−500の代わりにMPG−041(平均分子量が1370のポリエチレンオキシドモノメチルエーテル、日本乳化剤製)を10138部用いたこと、ブチルセロソルブを使用しなかったこと、および、イオン交換水の使用量を18101部に変更したこと以外は製造例9と同様にして、櫛形ポリマー(B−6)の溶液(不揮発分40.2%)を得た。
【0054】
(製造例15)
(B−7)の調製
ポリエチレンオキシドモノメチルエーテルM−500を水に溶解し、濃度40.0%の溶液を得た。
【0055】
(製造例16)
(B−8)の調製
ポリマー(B−8)としてプロノン#104(ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコールのブロックポリマー、分子量1670、日本油脂製、EO率40%)を用いた。このポリマーを水に溶解し、濃度40.0%の溶液を得た。
【0056】
(製造例17)
加熱装置、攪拌装置、温度計、還流冷却器および水分離器を備えた4つ口フラスコに、イソフタル酸33.0部、アジピン酸16.7部、1,4−シクロヘキサンジメタノール16.5部、トリメチロールプロパン20.9部、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール18.4部を配合し加熱した。次に、内容物を160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で保持し、生成した縮合水を精留塔により留去させながら、酸価が3mgKOH/g以下になるまで反応させた。次に、生成物に無水トリメリット酸5.7部を付加した後、ジメチルエタノールアミンを5.3部加え中和してから、水を144.7部加え、固形分40%の水酸基含有樹脂の溶液を得た。水酸基価は150mgKOH/g、酸価は35mgKOH/g、数平均分子量は2,000であった。
【0057】
(製造例18)
(1)脱イオン水54 部、アニオン界面活性剤(商品名「Newcol 707SF」、日本乳化剤社製、不揮発分30%)0.5部、エチルアクリレート93部、ヒドロキシエチルアクリレート5部、アクリル酸1部、およびアリルメタクリレート1部を、撹拌し、乳化して、モノマー混合物を得た。
(2)攪拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、脱イオン水40部、「Newcol 707SF」0.8部を加え、窒素置換後攪拌しながら82℃に保った。この中にまず、上記(1)で得たモノマー混合物5部と、過硫酸アンモニウム0.3部を脱イオン水3部で溶解したものとの混合物を添加し、20分後、残りのモノマー混合物と過硫酸アンモニウム0.3部を脱イオン水3部に溶解したものとの混合物を4時間かけて滴下して、乳化重合を行った。滴下終了時から2時間、82℃に保持して、乳化重合を続けた後、40℃にフラスコ内の温度を下げた。アンモニア水でpH8.5に調整し、固形分50重量%のアクリル系エマルション樹脂を得た。エマルション樹脂粒子の平均粒子径は0.15μmであった。また、樹脂の酸価は7.8mgKOH/gで、ガラス転移温度は−23℃であった。
【0058】
(実施例1)
ステンレスビーカーに、製造例1で得られたアクリル系樹脂(A−1)を72部(固形分28.8部)、および製造例9で得られた櫛形ポリマー(B−1)を8部(固形分3.2部)仕込んだ。次に、上記混合物を撹拌しながら、当該混合物に酸化チタン顔料(CR−97)を68部加えた。次いで、ガラスビーズ148gを混合し、SGミルを用いて2000rpmで3時間撹拌した。ガラスビーズを濾別し、分散ペーストを得た(固形分:67.6%)。
【0059】
上記で得られた分散ペースト148部を撹拌しながら、当該分散ペーストに硬化剤(メラミン樹脂、三井サイテック社製サイメル327)を42.9部および消泡剤(サーフィノール440)を1.0部添加して、水性塗料組成物を調製した。この塗料組成物に脱イオン水を加えて希釈し、フォードカップNo.4にて40秒(25℃)になるように粘度を調整した。
【0060】
(実施例2〜9および比較例1〜10)
表1に示す処方としたこと以外は実施例1と同様にして、水性塗料組成物を調製した。
【表1】

表1中、樹脂(A)および樹脂(B)の横に括弧付きで記載している数値は、それぞれ、配合した樹脂(A)および樹脂(B)の固形分量を示す。
【0061】
実施例および比較例で得られた水性塗料組成物を以下の評価に供した。
(1)塗装および乾燥塗膜の作成
実施例および比較例で得られた水性塗料組成物を、リン酸亜鉛処理鋼板に乾燥塗膜の膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装した。得られた未硬化の塗膜が付着した鋼板を90℃で10分間加熱し、次に140℃で30分間加熱して、乾燥塗膜を得た。
(2)光沢(グロス)
スガ試験機デジタル変角光沢計を用いて60°方向の光沢を測定した。
(3)耐アルカリ性試験
5%NaOH水溶液に20℃で12時間浸漬した後の塗膜の表面の状態を下記基準に基づき目視で評価した。
4:浸漬しなかった塗膜と比較して、外観に差異が見られない。
3:浸漬しなかった塗膜と比較して、わずかに光沢が低下しているもののほとんど差異がみられない。
2:浸漬しなかった塗膜と比較して、光沢が低下しており、実用レベルではない。
1:ふくれ、はがれなどの異常があり、実用レベルではない。
(4)固形分濃度測定方法
蒸発皿に塗料0.5gを秤量し、これを常圧下で105℃で3時間加熱して、得られた残渣の重量を測定することで、塗料の固形分濃度を測定した。
【0062】
表1から明らかなように、本発明の実施例の水性塗料組成物は、高い固形分濃度と塗膜の外観および耐久性とを両立している。一方、比較例の水性塗料組成物は、優れた特性を有する塗膜が得られる場合には、固形分濃度が低く、塗装作業性が不十分である(比較例1、2、4、5および9)。一方、固形分濃度が高い場合には、優れた特性を有する塗膜が得られない(比較例3、7および10)。さらに、比較例8は、固形分濃度も塗膜特性も不十分であり、比較例6は、塗装不可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の水性塗料組成物は、種々の物品の塗装に好適に利用され得る。塗装され得る物品としては、例えば、家電製品、車両、鋼製家具類が挙げられる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に分散したディスパーションである樹脂(A)と、櫛形構造を有する高分子である樹脂(B)とを含み、
該樹脂(A)が脂肪族または芳香族の疎水性ドメイン(a−i)を有し、
該樹脂(B)が、主鎖および/または複数の側鎖に疎水性ドメイン(b−i)を有し、かつ、複数の側鎖が親水性ドメイン(b−ii)を構成し、ならびに、疎水性ドメインと親水性ドメインとの配合比(b−i)/(b−ii)が重量比で80/20〜25/75であり、
No.4フォードカップでの希釈粘度が40秒のときに固形分濃度が60%以上である
水性塗料組成物。
【請求項2】
前記樹脂(A)の疎水性ドメイン(a−i)が式(I)で表され、前記樹脂(B)の親水性ドメイン(b−ii)が、ポリエチレングリコール由来の残基およびイオン性官能基から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の水性塗料組成物:
【化1】

式(I)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数5以上18以下の疎水性官能基である。
【請求項3】
前記樹脂(A)の平均粒子径が20nm〜250nmであり、該樹脂(A)における前記疎水性ドメイン(a−i)の構成比率が、該樹脂(A)の固形分中1重量%以上である、請求項1または2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
前記樹脂(A)の酸価が5〜100mgKOH/gであり、水酸基価が10〜150mgKOH/gであり、重量平均分子量が7000〜300000である、請求項1から3のいずれかに記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
前記樹脂(B)の親水性ドメイン(b−ii)が、ポリエチレングリコール由来であり、(b−ii)におけるポリエチレングリコールの含有量が30〜65重量%であり、
前記樹脂(B)の重量平均分子量が2000〜1000000である、請求項1から4のいずれかに記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
前記樹脂(A)および前記樹脂(B)の配合比が、固形分重量比基準で、(A)/(B)=98/2〜50/50である、請求項1から5のいずれかに記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、カルボジイミド化合物およびオキサゾリン化合物からなる群から選ばれる1種類以上の化合物が硬化剤として配合されている、請求項1から6のいずれかに記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の水性塗料組成物を塗装した、物品。



【公開番号】特開2009−179787(P2009−179787A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22809(P2008−22809)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】