説明

水性樹脂組成物及びこれを含む水性塗料組成物

【課題】アルコキシシリル基を有するポリウレタンを含有する水性樹脂組成物及びこれを含む水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】環状カーボネート系化合物(i)とアミノシラン(ii)との反応によって得られる1分子中に少なくとも2つの活性水素基を有する反応生成物(a)、ポリオール成分(b)、及びポリイソシアネート成分(c)とを原料とするポリウレタン樹脂(I)が、水性媒体中に水分散されていることを特徴とする水性樹脂組成物、該ポリウレタン樹脂(I)と重合性不飽和モノマー(e)による重合体(II)との複合樹脂(III)の水分散体を含有することを特徴とする水性樹脂組成物、さらには該水性樹脂組成物を含んでなる水性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシシリル基を有するポリウレタンを含有する水性樹脂組成物及びこれを含む水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂は、塗料、接着剤等に有用な材料として、広範に使用されている。一方、最近、溶剤系で合成された樹脂は、その合成に使用された溶剤が大気中に飛散し、環境及び人体を汚染するという欠点を有するので、溶剤タイプのポリウレタン樹脂に代わり、水溶性又は水分散性タイプのポリウレタン樹脂が塗料、接着剤等の分野で使用されつつあり、その使用検討も急速に進んでいる。
【0003】
このポリウレタン樹脂には、常温から比較的低温加熱によって強固な架橋構造を有する皮膜を形成することが期待されており、その手法としてポリウレタン樹脂へのアルコキシシリル基の導入が種々提案されている。たとえば特許文献1、特許文献2には、分子内にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーにアルコキシシラン誘導体を反応させてアルコキシシリル基を導入したポリウレタン水性組成物が開示されている。
【0004】
しかし、これらの場合には、尿素結合を介してアルコキシシリル基を導入するために結晶性が強く、他の原料との混合性が悪くなるという不具合があった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−138469号公報
【特許文献2】特開平7−138524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記不具合が生じることなくアルコキシシリル基を導入でき、しかもポリマー設計の容易なアルコキシシリル基を有するポリウレタンを含有する水性樹脂組成物及びこれを含む水性塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、環状カーボネート系化合物(i)とアミノシラン(ii)との反応によって得られる1分子中に少なくとも2つの活性水素基を有する反応生成物(a)、ポリオール成分(b)、及びポリイソシアネート成分(c)とを原料とするポリウレタン樹脂(I)が、水性媒体中に水分散されていることを特徴とする水性樹脂組成物、該ポリウレタン樹脂(I)と重合性不飽和モノマー(e)による重合体(II)との複合樹脂(III)の水分散体を含有することを特徴とする水性樹脂組成物、さらには該水性樹脂組成物を含んでなる水性塗料組成物、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、環状カーボネート系化合物(i)とアミノシラン(ii)との反応生成物(a)を原料として用いることによって、他成分との相溶性に悪影響を及ぼすことなく容易にアルコキシシリル基を導入したポリウレタンを製造することができ、これを含む水性樹脂組成物を用いることによって比較的低温で強固な架橋構造を有する、耐水性や付着性、仕上がり性などに優れた皮膜を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において環状カーボネート系化合物(i)は、1分子当たりに少なくとも1つの環状カーボネート基を含有するものであり、通常、5員または6員環カーボネート基を含有する化合物である。5員環状カーボネートとしては、例えばグリセリンカーボネート(1,3−ジオキソラン−2−オン−4−メタノール)、1,3−ジオキソラン−2−オン−4−プロパノール、1,3−ジオキソラン−2−オン−ブタノール、1,3−ジオキソラン−2−オン−ペンタノールなどの水酸基含有カーボネート;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのフェノール類のジグリシジルエーテルやビスフェノール型エポキシ樹脂などのポリエポキシドと炭酸ガスとの反応物等が挙げられる。6員環環状カーボネートは、(1,3−ジオキソラン−2−オン)−2−メチル,2−エチルプロパノール、(1,3−ジオキソラン−2−オン)−2,2−ジエチルプロパノール、(1,3−ジオキソラン−2−オン)−2,2−ジメチルプロパノールなどの水酸基含有カーボネート等が挙げられる。これらのうち、合成のし易さの点から、グリセリンカーボネートが好適に使用できる。また環状カーボネート系化合物(i)として、塗膜物性等の点からはビスフェノール骨格を有するものが好適に使用できる。
【0010】
アミノシラン(ii)は、1分子中にアミノ基及びアルコキシシリル基を含有するものであり、その具体例としては、例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの1級アミノ基を1個含有するアミノシラン;N−β−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシランなどの1級及び2級のアミノ基を1個ずつ含有するアミノシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0011】
上記環状カーボネート系化合物(i)とアミノシラン(ii)との反応生成物(a)は、化合物(i)中の環状カーボネート基とアミノシラン(ii)中のアミノ基との反応によって得られるものであり、分子内にウレタン結合を有し、1分子中に少なくとも2個の活性水素基を有するものであり、特に1分子中に2個の活性水素基を有することが好適である。本発明では特に1分子中に2個の活性水素基を有する反応生成物(a)が得られるように化合物(i)とアミノシラン(ii)の組み合わせを選択することが望ましく、例えば化合物(i)としてグリセリンカーボネートなどを用いる場合にはアミノシラン(ii)として1級アミノ基を1個含有するアミノシランを用いることができ、化合物(i)としてエチレンカーボネートなどを用いる場合にはアミノシラン(ii)として1級及び2級のアミノ基を1個ずつ含有するアミノシランを用いることができる。
【0012】
上記の反応は、通常、40〜140℃、好ましくは70〜100℃の温度で行われる。上記環状カーボネート系化合物(i)とアミノシラン(ii)とは、環状カーボネート系化合物(i)中の環状カーボネート基とアミノシラン(ii)中のアミノ基とのモル比が1:0.5〜1:1.5、好ましくは1:0.7〜1:1.2の範囲となるように反応させることが望ましい。
【0013】
上記反応生成物(a)の含有割合は、(a)、(b)及び(c)成分の合計固形分重量に基づいて5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは20〜65重量%の範囲内が好適である。この含有割合が5重量%未満では形成塗膜の硬化性が不十分となる場合があり、一方80重量%を越えると貯蔵中における安定性不良の恐れがあるので望ましくない。
【0014】
ポリオール成分(b)は、上記反応生成物(a)以外の、1分子中に少なくとも2個以上の水酸基を有する、例えば低分子量グリコール類、高分子量グリコール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類等を含むことができ、それぞれ単独に用いてもよく、また、ポリエステルポリオールや高分子量グリコールに低分子量グリコールを併用しても良い。
【0015】
低分子量グリコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、オクタンジオール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAポリエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテルなどがあり、これ等は単独または2種以上混合して使用しても良い。
【0016】
高分子量グリコール類としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートグリコールなどが挙げられ、ポリエステルポリオール類としては、グリコール成分とジカルボン酸成分を反応させたものが挙げられ、公知の方法で容易に製造でき、エステル化反応に限らず、エステル交換反応によっても製造できる。またε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環反応によって得られるポリエステルジオール及びこれ等の共縮合ポリエステルも含むことができる。
【0017】
ポリオール成分(b)は、さらにカルボキシル基含有ジオールを含むことができる。カルボキシル基含有ジオールとしては、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸及びこれ等を縮合したポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールなどが挙げられる。これ等に12−ヒドロキシステアリン酸、パラオキシ安息香酸、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸を併用することもできる。
【0018】
ポリイソシアネート成分(c)は、1分子中にイソシアネート基を2個以上含有するものであり、その具体的としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類;これらのジイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−トルイジンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルエーテルイソシアネート、(m−もしくはp−)フェニレンジイソシアネート、4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネ−ト化合物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4´,4´´−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4´−ジメチルジフェニルメタン−2,2´,5,5´−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類;これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロ−ルプロパン、ヘキサントリオ−ルなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。
【0019】
本発明においてポリウレタン樹脂(I)は、上述の反応生成物(a)、ポリオール成分(b)、及びポリイソシアネート成分(c)を原料とするものであり、ポリウレタン樹脂(I)の製造は、特に限定されることなく従来公知の手法が採用でき、例えば前記したこれら成分を一度に反応させても良いし、多段的に反応させても良い。またイソシアネート基に不活性な有機溶剤中で行うことができる。後述する重合体(II)との複合化を行なう場合のポリウレタン樹脂(I)の製造は、溶剤の持ち込みを排除する点から、後述の重合性不飽和モノマー(d)中、イソシアネート基に不活性なモノマーを希釈成分として用いて行なうことが好適である。上記各成分の使用割合は種々変えることができるが、全成分中のイソシアネート基と活性水素基(水酸基含)との当量比が一般に1:0.5〜1:0.9、好ましくは1:0.6〜1:0.8になるようにするのが望ましい。反応は通常40〜180℃、好ましくは60〜130℃の温度で行われる。この反応を促進させるため、通常のウレタン化反応において使用されるトリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒や、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の錫系触媒などを必要に応じて用いてもよい。
【0020】
上記ポリウレタン樹脂(I)は、さらに必要に応じてアミノシラン(d)を原料としても良い。これによってアルコキシシリル基の導入量を増やすことが可能である。特に上述の反応生成物(a)、ポリオール成分(b)及びポリイソシアネート成分(c)の反応によって得られるプレポリマーの末端イソシアネート基に対し、アミノシラン(d)を反応させることが好適である。該アミノシラン(d)としては、上述のアミノシラン(ii)の説明で列記した中から適宜選択して使用することができる。
【0021】
上記の通り得られるポリウレタン樹脂(I)は、水性媒体へ分散される。水性媒体としては、水、または水を主として水溶性有機溶媒などの有機溶媒を溶解してなる水−有機溶媒混合溶液などを挙げることができる。水分散は、特に制限なく従来公知の方法で行うことができ、例えば上記ポリウレタン樹脂(I)に中和剤、界面活性剤などを必要に応じて添加し、水を徐々に加えながら撹拌して混合分散することができる。中和剤としては、カルボキシル基を中和できるものであれば特に制限はないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノプロパノール、トリエチルアミン、アンモニウムなどが挙げられる。中和剤は、ポリウレタン樹脂(I)に加えてカルボキシル基を中和しておいてもよいし、分散媒である水に加えておき分散と同時に中和してもよい。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合物等のノニオン系界面活性剤、ラウリル硫酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0022】
上記ポリウレタン樹脂(I)は、さらに必要に応じて鎖延長剤を反応させることにより高分子量化することができる。鎖延長剤としては、例えばエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン;ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール、3−アミノプロパンジオール等のアミノ基と水酸基をもつ化合物;ヒドラジン類、酸ヒドラジド類等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0023】
上記ポリウレタン樹脂(I)は、酸価5〜60mgKOH/g、好ましくは10〜40mgKOH/gであることが、水分散性や形成塗膜の耐水性等の点から好適である。
【0024】
本発明では、さらに上記ポリウレタン樹脂(I)と重合性不飽和モノマー(e)による重合体(II)との複合樹脂(III)の水分散体を含有する水性樹脂組成物を提供するものである。
【0025】
重合性不飽和モノマー(e)としては、特に制限なく従来公知のモノマーが使用でき、通常、分子中に少なくとも1個、好ましくは1個の重合性不飽和基、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などを含有する化合物が包含される。
【0026】
上記重合性不飽和モノマー(e)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−ト等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する重合性不飽和化合物;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和化合物;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和化合物;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基を有する化合物;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC〜Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコ−ル、上記C〜Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体などの水酸基を有する(メタ)アクリレート;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基を有する重合性不飽和化合物;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和化合物;2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノンなどのヒドロキシベンゾフェノン類とグリシジル(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、或いは2−(2'−ヒドロキシ−5'−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和化合物;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性不飽和化合物;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基を有する重合性不飽和化合物;アリル(メタ)アクリレ−ト、エチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、テトラエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,3−ブチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、1,4−ブタンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ネオペンチルグリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、グリセロ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレ−ト、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレ−ト、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト、ジアリルテレフタレ−ト、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物等が挙げられ、これらは得られる複合樹脂の水分散体に望まれる性能などに応じて単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
前記ポリウレタン樹脂(I)と上記重合性不飽和モノマー(e)による重合体(II)との複合樹脂(III)の水分散体の製造は、従来公知の手法が特に制限なく採用でき、例えば上記ポリウレタン樹脂(I)及び水の存在下で、前述の重合性不飽和モノマー(e)を乳化重合するなどの方法によって行なうことができる。
【0028】
上記方法では乳化剤として、該ポリウレタン樹脂(I)に、必要に応じて公知のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などを適宜併用することができ、該乳化剤の1種または2種以上の存在下で重合開始剤を使用して乳化重合することができる。重合開始剤には、例えばアゾイソバレロニトリル、4、4´−アゾビス−4−シアノ吉草酸のようなアゾ系開始剤、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、t−ブチルハイドロパーオキシド等の過酸化物等既知のものを用いることができる。また該重合開始剤には、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用し、レドックス重合系としてもよい。また、乳化重合反応温度は30〜95℃程度が好ましい。
【0029】
また、得られる複合樹脂の水分散体の粒子の機械的安定性を向上させるために、該複合樹脂の水分散体が酸性基を有する場合には、これを前述のような中和剤により中和することが望ましい。該中和剤は、中和後の水性樹脂分散体のpHが6.5〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
【0030】
上記方法ではさらに、水及び乳化剤の存在下で、前述の重合性不飽和モノマー(e)を用いて多段階で乳化重合を行なっても良く、そのうちの少なくとも1段階の乳化重合において、上記のポリウレタン樹脂(I)を存在させることができる。
【0031】
複合樹脂(III)の水分散体の製造において、前記ポリウレタン樹脂(I)と重合性不飽和モノマー(e)との使用割合は、固形分重量比で10:90〜95:5、好ましくは20:80〜90:10の範囲内であることが、乳化重合時の安定性や速乾性、塗膜性能の点から好適である。
【0032】
本発明の水性樹脂組成物は、上記ポリウレタン樹脂(I)の水分散体を含有するものであり、また上記複合樹脂(III)の水分散体を含有するものである。本発明の水性樹脂組成物は、さらに必要に応じて他の水溶性もしくは水分散性の樹脂を含有することができる。他の水溶性もしくは水分散性の樹脂としては、アクリル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0033】
上記水性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、湿潤剤、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、有機溶剤、増粘剤、防腐剤、防かび剤、pH調整剤、架橋剤、硬化触媒、金属ドライヤー、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、表面調整剤などの添加剤を適宜選択し組合せて含有することができる。
【0034】
かくして、上記水性樹脂組成物は、建築用、自動車外板用、自動車部品用等の塗料用途や印刷インキ等の被覆材、塗料用添加剤、不織布用等の接合剤、接着剤、充填剤、成形材料、レジスト等の種々の用途に使用することができる。
【0035】
本発明はまた、上記の水性樹脂組成物を含む水性塗料組成物を提供するものである。
【0036】
上記水性塗料組成物は、クリヤー塗料として又はエナメル塗料として使用することができる。エナメル塗料として使用する場合には、顔料分として、塗料分野で既知の着色顔料、光輝性顔料、体質顔料、防錆顔料等を配合することができる。
【0037】
本発明の水性塗料組成物は、被塗面に、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装、ハケ塗装、ローラー塗装、リシンガン、万能ガン等の方法で塗布することができる。
【0038】
上記水性塗料組成物が適用できる被塗面としては、特に制限されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム等の金属;コンクリート、モルタル、スレート板、木材、石材等の無機基材;プラスチック等の有機基材などの基材面及びこれらの表面処理面などが挙げられ、特に金属面及びその表面処理面が好適である。これらの被塗面に、本発明の水性塗料組成物を下塗り塗料として塗布でき、必要に応じて、さらに既知の上塗り塗料を塗布することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「重量部」及び「重量%」を示す。
【0040】
実施例1
攪拌機、冷却管および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、「エピコート828」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン社製)752部を仕込み、これに二酸化炭素を通気して80℃で付加させ両末端に環状カーボネート基を有する反応生成物(i−1)を得た。同フラスコ中にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン885.6部を仕込み、反応生成物(i−1)に80℃で4時間反応させ、反応生成物(a−1)を得た。
【0041】
次いで同フラスコ中にイソホロンジイソシアネート892部、ジメチロールプロピオン酸130部、N−メチルピロリドン706.4部を加え、反応生成物(a−1)に80℃で4時間反応させウレタンプレポリマーを得た。これを50℃以下に冷却後、さらにメチルエチルケトン1177.3部を加え均一になるまで攪拌した後、トリエチルアミン80.8部を添加し中和した。その中にさらに脱イオン水3578.5部を0.5時間かけて添加しプレポリマーの水分散体を得た。この水分散体に10%エチレンジアミン水溶液601.1部を0.5時間かけて添加し、プレポリマーの鎖延長反応を50℃で2時間行った。さらに真空ポンプにより減圧し、メチルエチルケトンを脱溶剤して、平均粒子径88nm、不揮発分35.5%のポリウレタン樹脂の水分散液(I−1)を得た。尚、平均粒子径は「SALD−3100」(商品名:島津製作所社製、レーザー回式粒度分布測定装置)で測定した。
【0042】
実施例2
攪拌機、冷却管および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、グリセリンカーボネート354部、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン664.2部を仕込み、80℃で4時間反応させ、反応生成物(a−2)を得た。
【0043】
次いで同フラスコ中にイソホロンジイソシアネート1115部、ジメチロールプロピオン酸130部、N−メチルピロリドン565.8部を加え、反応生成物(a−2)に80℃で4時間反応させウレタンプレポリマーを得た。これを50℃以下に冷却後、さらにメチルエチルケトン943部を加え均一になるまで攪拌した後、トリエチルアミン80.8部を添加し中和した。その中にさらに脱イオン水3123部を0.5時間かけて添加しプレポリマーの水分散体を得た。この水分散体に10%エチレンジアミン水溶液601.1部を0.5時間かけて添加し、プレポリマーの鎖延長反応を50℃で2時間行なった。さらに真空ポンプにより減圧し、メチルエチルケトンを脱溶剤して、平均粒子径91nm、不揮発分35.2%のポリウレタン樹脂の水分散液(I−2)を得た。
【0044】
実施例3
実施例1と同様の装置を用いて反応生成物(a−1)を得た後、次いで同フラスコ中にイソホロンジイソシアネート892部、ジメチロールプロピオン酸130部、ブチルアクリレート1412.8部、重合禁止剤としてハイドロキノン0.7部を加え、反応生成物(a−1)に80℃で4時間反応させウレタンプレポリマーを得た。これを50℃以下に冷却後、さらにスチレン706.8部、メチルメタクリレート706.8部を加え均一になるまで攪拌した後、トリエチルアミン80.1部を添加し中和した。その中にさらに脱イオン水9704.9部を0.5時間かけて添加しプレポリマーの水分散体を得た。この水分散体に10%エチレンジアミン水溶液601.1部を0.5時間かけて添加し、プレポリマーの鎖延長反応を50℃で2時間行なった後、70℃まで昇温し、その中に「VA−057」(Wako社製、水溶性ラジカルアゾ系開始剤)10.8部を脱イオン水96.8部に溶解した溶液を2時間かけて滴下し、さらに同温度で2時間保持して、平均粒子径87nm、不揮発分35.8%の複合樹脂の水分散液(I−3)を得た。
【0045】
実施例4
実施例2と同様の装置を用いて反応生成物(a−2)を得た後、次いで同フラスコ中にイソホロンジイソシアネート1115部、ジメチロールプロピオン酸130部、ブチルアクリレート1131.6部、重合禁止剤としてハイドロキノン0.68部を加え、反応生成物(a−2)に80℃で3時間反応させウレタンプレポリマーを得た。これを50℃以下に冷却後、スチレン565.8部、メチルメタクリレート565.8部を加え均一になるまで攪拌した後、トリエチルアミン80.8部を添加し中和した。その中にさらに脱イオン水7800部を0.5時間かけて添加しプレポリマー及びモノマーの乳化物を得た。この乳化物に10%エチレンジアミン水溶液601.1部を0.5時間かけて添加し、プレポリマーの鎖延長反応を50℃で2時間行なった後、70℃まで昇温し、その中に「VA−057」(Wako社製、水溶性ラジカルアゾ系開始剤)11.3部を脱イオン水101.7部に溶解した溶液を2時間かけて滴下し、さらに同温度で2時間保持して、平均粒子径85nm、不揮発分35.5%の複合樹脂の水分散液(I−4)を得た。
【0046】
実施例5
攪拌機、冷却管および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、「エピコート828」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン社製)752部を仕込み、これに二酸化炭素を通気して80℃で付加させ両末端に環状カーボネート基を有する反応生成物(i−2)を得た。同フラスコ中にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン442.8部を仕込み、反応生成物(i−2)に80℃で4時間反応させ、反応生成物(a−3)を得た。
【0047】
次いで同フラスコ中にイソホロンジイソシアネート892部、ジメチロールプロピオン酸130部、N−メチルピロリドン567.1部を加え、反応生成物(a−3)に80℃で4時間反応させウレタンプレポリマーを得た。さらにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン442.8部を加え、1時間同温度で反応させた。これを50℃以下に冷却後、さらにメチルエチルケトン1323.3部を加え均一になるまで攪拌した後、トリエチルアミン80.8部を添加し中和した。その中にさらに脱イオン水4650部を0.5時間かけて添加し水分散体を得た。さらに真空ポンプにより減圧し、メチルエチルケトンを脱溶剤して、平均粒子径88nm、不揮発分35.5%のポリウレタン樹脂の水分散液(I−5)を得た。
【0048】
実施例6
実施例2と同様の装置を用いて反応生成物(a−2)を得た後、次いで同フラスコ中にイソホロンジイソシアネート1115部、ジメチロールプロピオン酸130部、N−メチルピロリドン565.8部を加え、反応生成物(a−2)に80℃で3時間反応させウレタンプレポリマーを得た。さらにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン442.8部を加え、1時間同温度で反応させた。これを50℃以下に冷却後、メチルエチルケトン1238.2部を加え均一になるまで攪拌した後、トリエチルアミン80.8部を添加し中和した。その中にさらに脱イオン水3140.6部を0.5時間かけて添加し水分散体を得た。さらに真空ポンプにより減圧し、メチルエチルケトンを脱溶剤して、平均粒子径91nm、不揮発分35.2%のポリウレタン樹脂の水分散液(I−6)を得た。
【0049】
実施例7
実施例5と同様の装置を用いて反応生成物(a−3)を得た後、次いで同フラスコ中にイソホロンジイソシアネート892部、ジメチロールプロピオン酸130部、N−メチルピロリドン598.2部を加え、反応生成物(a−3)に80℃で4時間反応させウレタンプレポリマーを得た。これを50℃以下に冷却後、さらにメチルエチルケトン997部を加え均一になるまで攪拌した後、トリエチルアミン80.8部を添加し中和した。その中にさらに脱イオン水3500部を0.5時間かけて添加し水分散体を得た。この水分散体にN−β−(アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシランの20%水溶液556部を1時間かけて添加し、プレポリマーの鎖延長反応を50℃で2時間行なった。さらに真空ポンプにより減圧し、メチルエチルケトンを脱溶剤して、平均粒子径101nm、不揮発分35.5%のポリウレタン樹脂の水分散液(I−7)を得た。
【0050】
実施例8
実施例5と同様の装置を用いて反応生成物(a−3)を得た後、次いで同フラスコ中にイソホロンジイソシアネート892部、ジメチロールプロピオン酸130部、ブチルアクリレート1417.8部、重合禁止剤としてハイドロキノン0.7部を加え、反応生成物(a−3)に80℃で3時間反応させウレタンプレポリマーを得た。さらにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン442.8部を加え、1時間同温度で反応させた。これを50℃以下に冷却後、スチレン708.9部、メチルメタクリレート708.9部を加え均一になるまで攪拌した後、トリエチルアミン80.1部を添加し中和した。その中にさらに脱イオン水8000部を0.5時間かけて添加しプレポリマー及びモノマーの乳化物を得た。この乳化物を70℃まで昇温し、その中に「VA−057」(Wako社製、水溶性ラジカルアゾ系開始剤)10.8部を脱イオン水96.8部に溶解した溶液を2時間かけて滴下し、さらに同温度で2時間保持して、平均粒子径87nm、不揮発分35.8%の複合樹脂の水分散液(I−8)を得た。
【0051】
比較例1
攪拌機、冷却管および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、「プラクセルPLC205」(ダイセル化学工業社製、ポリカプロラクトンジオール)1100部、ジメチロールプロピオン酸130部、イソホロンジイソシアネート892部、N−メチルピロリドン530.5部を加え、80℃で4時間反応させてウレタンプレポリマーを得た。これを50℃以下に冷却後、さらにメチルエチルケトン884.2部を加え均一になるまで攪拌した後、トリエチルアミン80.8部を添加し中和した。その中にさらに脱イオン水2900部を0.5時間かけて添加しプレポリマーの水分散体を得た。この水分散体に10%エチレンジアミン水溶液601.1部を0.5時間かけて添加し、プレポリマーの鎖延長反応を50℃で2時間行なった。さらに真空ポンプにより減圧し、メチルエチルケトンを脱溶剤して、平均粒子径88nm、不揮発分35.5%のポリウレタン樹脂の水分散液(I−9)を得た。
【0052】
比較例2
攪拌機、冷却管および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、「スミジュール3300」(住友バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)1512部、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン664.2部、N−メチルピロリドン1904.1部を加え、50℃で2時間反応させた。この中にさらに「プラクセルPLC205」(ダイセル化学工業社製、ポリカプロラクトンジオール)550部、ジメチロールプロピオン酸130部を加え、80℃で4時間反応させてウレタンプレポリマーを得た。これを50℃以下に冷却後、トリエチルアミン80.8部を添加し中和した。その中にさらに脱イオン水2900部を0.5時間かけて添加しプレポリマーの水分散体を得た。この水分散体に10%エチレンジアミン水溶液601.1部を0.5時間かけて添加し、プレポリマーの鎖延長反応を50℃で2時間行なって、平均粒子径88nm、不揮発分35.5%のポリウレタン樹脂の水分散液(I−10)を得た。
【0053】
実施例9〜16及び比較例3、4
上記で得られた各水性樹脂分散液を用いて、下記表1に記載の配合組成により、水性樹脂組成物を得た。各水性樹脂組成物を下記試験に供し評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0054】
(注1)「TEXANOL」:イーストマンケミカル社製、商品名、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤。
【0055】
評価試験方法
(*1)付着性:実施例9〜16及び比較例3〜4の各水性樹脂組成物を乾燥膜厚で40μmになるようにそれぞれアプリケーターで無処理軟鋼板に塗装し、80℃で30分間で乾燥させて各試験塗板とした。これらを23℃の上水に3日間浸漬してから引き上げて、その塗膜面に素地に達するようにカッターでクロスカットし、そのカット部に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそれを急激に剥離した後の塗膜面の状態を調べた(○:剥離なし、△:半分程度剥離、×:全面剥離)。
【0056】
(*2)硬化性:実施例9〜16及び比較例3〜4の各水性樹脂組成物を乾燥膜厚で40μmになるようにアプリケーターでポリプロピレン板に塗装し、80℃で30分間で乾燥させた後、ポリプロピレン板から乾燥膜を剥離して4×4cmの大きさにカットし、試験片とした。
【0057】
得られた試験片を、アセトン中に20℃で24時間浸漬した。抽出前後の塗膜重量から塗膜抽出残分を下記の通り算出した。
塗膜抽出残分(%)=(抽出した後の膜の重量/抽出前の膜の重量)×100(%)。
【0058】
(*3)タック性:実施例9〜16及び比較例3〜4の各水性樹脂組成物を乾燥膜厚で40μmになるようにアプリケーターでポリプロピレン板に塗装し、80℃で30分間で乾燥させた後、放冷して常温下その塗膜面を指触で評価した(○:指につかない、△:やや指につく、×:指にかなりつく)。
【0059】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状カーボネート系化合物(i)とアミノシラン(ii)との反応によって得られる1分子中に少なくとも2つの活性水素基を有する反応生成物(a)、ポリオール成分(b)、及びポリイソシアネート成分(c)とを原料とするポリウレタン樹脂(I)が、水性媒体中に水分散されていることを特徴とする水性樹脂組成物。
【請求項2】
環状カーボネート系化合物(i)がグリセリンカーボネートである請求項1記載の水性樹脂組成物。
【請求項3】
環状カーボネート系化合物(i)が、ビスフェノール骨格を有する請求項1記載の水性樹脂組成物。
【請求項4】
反応生成物(a)が、環状カーボネート系化合物(i)中の環状カーボネート基とアミノシラン(ii)中のアミノ基とのモル比が1:0.5〜1:1.5の範囲となるように反応させて得られるものである請求項1記載の水性樹脂組成物。
【請求項5】
ポリオール成分(b)が、カルボキシル基含有ジオールを含有する請求項1記載の水性樹脂組成物。
【請求項6】
ポリウレタン樹脂(I)が、さらにアミノシラン(d)を原料とする請求項1記載の水性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載のポリウレタン樹脂(I)と重合性不飽和モノマー(e)による重合体(II)との複合樹脂(III)の水分散体を含有することを特徴とする水性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物を含んでなる水性塗料組成物。
【請求項9】
被塗面に、請求項8記載の水性塗料組成物を塗装することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法により形成される塗装物品。


【公開番号】特開2008−56758(P2008−56758A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233181(P2006−233181)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】