説明

水性粘着付与剤分散液中に使用する乳化剤

ロジン酸又はその誘導体をベースにするアニオン性乳化剤及びその乳化剤の製造方法。この乳化剤は、泡安定性に関して改良された特性を有する粘着付与剤分散液を製造するために有用である。そのようなものとして、粘着付与剤分散液は、改良された接着及び凝集特性を与える水性接着剤中に有利に使用される。この接着剤は、任意の種類の表面上のラベル貼り、包装応用、フローリング接着剤、道路マーキング又は水性テープ、バリヤーコーティング若しくはシーラントの任意の種類のため使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、乳化剤の分野及びそれによる安定な分散液の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化剤(emulsifier)(本発明の目的のためには、用語「界面活性剤(surfactant)」と同義語であると理解される用語)は、乳化の間に形成される粒子の安定性を与え、凝集を防止する。乳化剤は、更に、最終分散液中の粒子の凝集又は凝結を防止する。乳化剤分子は、それらの両親媒性特徴のために、油相と水相との両方のための親和力を有する。その結果、油−水界面に存在する乳化剤分子と、油相及び水相中に存在する分子との間に平衡が存在する。本発明に関連して、本発明の乳化剤の機能性を、主として、粘着付与剤分散液に関連して検討する。しかしながら、本発明の乳化剤は、任意の他の考えられる分散液の粘度を低下させ及び/又は乳化を改良するために、容易に使用することができる。
【0003】
関連する先行技術の説明
特許文献1は、ラッカー及びその他の工業に於ける補助手段として適している、樹脂アルコール及び樹脂アミンをベースにする縮合生成物の製造方法に関連している。特許文献1に従って得られた生成物は、(ポリ)オキシアルキル又はオキシアルキルエーテル単位に結合したアビエチニル部分(abietinyl moiety)を含んでいる。アビエチニル部分と鎖との間の結合は、エーテル結合に限られている。このエーテル鎖の長さは、水適合性(water suitability)を増加し、従って、分散液を形成するための化合物の一般的有用性として、見られる。特許文献1には、スルホン化剤による遊離末端ヒドロキシル基の官能化が記載されている。特許文献1は、主として、ラッカー中に軟化剤を与えることに関する。
【0004】
特許文献2には、トール油ロジン酸部分(moiety)、ホスフェート官能基及び炭化水素オキシド部分(portion)からなる乳化剤分子が記載されている。特許文献2に従った乳化剤中のオキサイド単位の全量は、50〜100の範囲である。このオキサイド単位の大きい数は、混合グレードアスファルトエマルジョンを作るための乳化剤の使用に起因している。特許文献2の開示は、前記アスファルトエマルジョンを製造することに限定されている。
【0005】
特許文献3は、エラストマーラテックスと相溶性であるロジンエステルの安定な分散液を形成するための界面活性剤に関する。この界面活性剤は、式R−R−Rを有する。R及びRは、それぞれロジン(即ちロジン、ロジン二量体又はロジンとロジン二量体との混合物)である。Rは、ポリエチレングリコール及び変性PEG鎖からなる群から選択される。この界面活性剤は、ロジン材料をポリエチレングリコールでエステル化することによって製造される。これらの化合物は、ロジンエステルを粘着付与剤分散液中に安定化させるために使用される。
【0006】
特許文献3に記載されている全ての界面活性剤は非イオン性であり、水溶解度は、特に長いPEG鎖を導入することによって(即ち、大きい数のエチレンオキサイド単位を有することによって)達成される。同様の発明は特許文献4に記載されており、特許文献4は、また、ロジン酸部分をベースにする非イオン性界面活性剤に関しており、その親水性官能性は高分子量ポリエチレングリコール鎖によってもたらされる。
【0007】
水性粘着付与剤分散液の製造に於ける主たる関心事は、泡の形成及び安定性である。「泡(foam)」は、水相中に存在する乳化剤分子によって安定化されている空気バブルと見なすことができる。安定な泡は、分散液中の粗い粒子の形成に至り得る。粗い粒子は、しばしば、乾燥の結果であり、フィルター閉塞に至り得る。粗い粒子は、また、基体(又は下地)(substrate)上に適用したとき分散液を含む最終製品のフィルムの脱湿潤を誘導し、従って、基体上の最終皮膜内に孔を生じるおそれがある。被覆プロセスに於いてリサイクル流によって誘導される泡形成は、また、空気バブルが最終皮膜内で孔を生じるおそれがあるので望ましくない。基体に適用されるコーティングのリサイクルは、ラベル貼り/包装工業に於いて一般的であり、接着剤及び/又は粘着付与剤分散液が空気の非存在下で配合された場合であっても、必然的に、製品を空気と接触状態にする。
【0008】
これらの及びその他の潜在的欠点を最小にするために、泡形成を、回避し、制限し又は崩壊させることが必要である。他の要因の中で、泡の崩壊は、空気/液体界面の安定性及び優勢な密度差に起因して空気バブルが分散液の表面の方に移動する速度によって影響を受ける。後者は、分散液の全体粘度を調節することによって制御することができる。一般的に、分散液の粘度が低下するとき、発泡挙動は改善される、即ち、より少ない泡が形成される。
【0009】
先行技術から公知である水性粘着付与剤分散液は、典型的には、エトキシル化されたアルキルフェノール又はアルキルアルコールアニオン性乳化剤を含む。これらの乳化剤によって製造された分散液は、それらの発泡挙動及び/又はそれらの全固形分含量及び/又はそれらの粒子サイズに関して制限される。一般的に、これらの乳化剤を使用して、下記の問題点、即ち、発泡が観察される又は固形分含量が十分に高くない又は粒子が大きすぎるの少なくとも一つが起こる。先行技術から公知であるこれらの乳化剤の使用は、典型的に、分散液の固形分含量が増加すると、泡形成の増加に至る。
【0010】
乳化剤の特徴は、また、接着剤の凝集及び接着特性への顕著な影響を有し得る。これは水性接着剤について特に真実である。先行技術から公知であるアニオン性乳化剤、特にエトキシル化されたアルキルフェノール又はアルキルアルコールアニオン性乳化剤は可塑剤として作用し、従って接着剤の凝集強度を低下させることが知られている。先行技術から公知の他の界面活性剤は、非イオン性である傾向があり、従って、改良された発泡特徴を有する水性分散液のために、良くは適合していない。
【0011】
更に、アルキルフェノールエトキシレートを含有する乳化剤は、これらの化合物の毒性及びエストロゲン活性のために、接着剤及び他の応用から徐々に排除されつつある。従って、アルキルフェノールエトキシレートを含有しない乳化剤を提供することの、当該技術分野に於けるニーズが存在する。
【0012】
また、先行技術から公知の乳化剤を使用する分散液、特に一般的に使用されるエトキシル化されたアルキルフェノール又はアルキルアルコールアニオン性乳化剤を含む先行技術の分散液のように、全固体含有量及び/又は粒子サイズに関して限定されることのない、粘着付与剤分散液を製造するために使用することができる乳化剤を提供することの、当該技術分野に於けるニーズが存在する。理想的には、妥当な発泡挙動をなお得ながら、固形分含量の増大及び/又は粒子サイズの減少が達成されるべきである。
【0013】
最後に、接着剤の改良された凝集強度及び/又は基体上の改良された接着を与えながら、先行技術の欠点を回避する、接着剤に於いて使用すべき粘着付与剤分散液を提供することの、当該技術分野に於けるニーズが存在する。
【0014】
【特許文献1】米国特許第2,194,429号明細書
【特許文献2】米国特許第5,137,572号明細書
【特許文献3】米国特許第6,274,657号明細書
【特許文献4】米国特許第5,552,519号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、新規な乳化剤及びその製造に関する。本発明は、更に、その乳化剤の、新規な水性粘着付与剤分散液を製造するための応用に関する。
【0016】
本発明の一つの面は、粘着付与剤分散液中に使用する乳化剤に関する。この乳化剤には、少なくとも1個のロジン酸部分又は少なくとも1個のロジン酸誘導体部分、前記ロジン酸又はロジン酸誘導体に結合した極性鎖及びこの極性鎖に結合したアニオン性ヘッド基が含有され、この極性鎖は、少なくとも1個の繰り返し単位中に少なくとも1個の炭素−酸素結合を含む少なくとも2個の繰り返し単位を含む。
【0017】
本発明の別の面は、水性粘着付与剤分散液に関する。本発明に従った水性粘着付与剤分散液は、水及び下記の粘着付与剤:(i)少なくとも1種のロジンエステル、(ii)少なくとも1種の炭化水素樹脂、例えばC〜C炭化水素樹脂、(iii)少なくとも1種の低分子量アクリレート又は(iv)少なくとも1種のテルペン樹脂、の少なくとも1種と組み合わせて、少なくとも1種の本発明に従った乳化剤を含んでなる。適切には、これらの粘着付与剤の2種若しくはそれ以上又はこれらの粘着付与剤の1種と他の粘着付与剤との任意の混合物も使用することができる。
【0018】
本発明の更なる面は、エラストマー性ラテックスと組合せた、これらの水性粘着付与剤分散液の使用に関する。例えば、本発明に従った水性粘着付与剤分散液を、アクリルポリマー又はスチレンブタジエンゴム(SBR)と組合せて使用して、水性接着剤を製造することができる。本発明に従った接着剤は、下記の分野、即ち任意の種類の表面上のラベル貼り、包装応用、フローリング接着剤、道路マーキング又は水性テープ、バリヤーコーティング若しくはシーラントの任意の種類に於いて使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、以下の本発明の詳細な説明及びそれに含まれる実施例を参照することによって、一層容易に理解することができる。
【0020】
本発明の物質組成物及び方法を開示し、説明する前に、本発明は、他の方法によって示されない限り、特定の合成方法又は特別の配合に限定されず、そのようなものとしてこの開示から変えることができることが理解されるべきである。また、使用される用語は、特定の態様を説明する目的のみのためであり、本発明の範囲を限定することを意図していないことも理解されるべきである。
【0021】
単数形(“a”,“an”及び“the”)には、文脈が他の方法で明瞭に指示していない限り、複数の参照物が含まれる。
【0022】
本件明細書を通して、特許又は刊行物が参照されるとき、これらの文献の開示は、それらの全部が、本発明が関係する技術水準を一層完全に説明するために、参照して本件明細書中に含められることが意図される。
【0023】
本発明は、分散液、特に粘着付与剤分散液の発泡挙動を改良する乳化剤を提供する。如何なる理論にも結び付けられることなく、この改良された発泡挙動が達成できる一つの理由は、分散液粘度に於ける低下に帰因させることができる。水相の粘度に於けるこの低下を、図1に図解的に示す。図1の左側のパネルは、粘着付与剤粒子を表す。図示するように、粘着付与剤油相中に存在する乳化剤分子(個々の分子として又はミセルとして広がっている)、粘着付与剤油−水界面に存在する乳化剤分子及び水相中に存在する乳化剤分子の間に平衡が存在する。
【0024】
本発明の乳化剤は、また、油−水界面のための増加した親和性を有するように官能化させることができる。これは、水相中に存在する乳化剤分子の減少になる。その結果、図1の右側のパネルに示されるような異なった平衡が生じる。より僅かな乳化剤分子が水相中に存在するので、水相の粘度は低下し、従って、分散液全体の粘度の低下に至る。更に、より僅かな乳化剤分子が水相中に存在するので、より僅かな分子が、空気−水界面を安定化するために利用可能である。安定化された空気−水界面は、泡生成及び泡安定性の増加の一つの理由として見ることができる。従って、如何なる理論によっても結び付けられることなく、本発明の乳化剤は、疎水性単位の含有に起因して、減少した、水相中に存在するための傾向を有するアニオン性乳化剤を与えることによって、それによって製造された分散液の発泡挙動を改良できる。
【0025】
本発明の乳化剤は、疎水性ロジン酸部分又はその誘導体を含んでいてよい。これに結合して、この乳化剤は、少なくとも1個の炭素−酸素結合を含む少なくとも2個の繰り返し単位からなる極性鎖を含む。極性鎖の酸素原子は、(全体の)両親媒性乳化剤の親水性官能性に寄与する。極性鎖の他の端部に結合して、乳化剤は、更に、アニオン性ヘッド基を含み、従って、全体の乳化剤をアニオン性にする。アニオン性ヘッド基は、また、両親媒性乳化剤の親水性特性に寄与する。
【0026】
本発明の別の面は、本発明の粘着付与剤分散液で製造した接着配合物の接着特性に関する。接着は表面現象であり、従って、接着剤中に存在する乳化剤の選択によって影響を受け得る。一般的に、乳化剤は、空気と接着剤との間の界面に移動する傾向を有する。従って、乳化剤は、表面特性及び接着剤の接着エネルギーを変えることができる。本発明は、それによって、(アニオン性乳化剤を含有する)(水性)粘着付与剤分散液を含む接着剤の接着特性が、使用される乳化剤の種類によって著しく影響を受け得る効果に関する。粘度変更乳化剤(viscosity altering emulsifier)の存在は、また、接着剤の凝集特性への影響を有し得る。
【0027】
本発明に関連して使用するとき、幾つかの関連する技術用語は、(説明を通して、他の方法で特に示されない限り)、下記のように理解すべきであるように意味される。
【0028】
本発明の意味に於いて、「接着(adhesion)」(又は接着特性)は、接着配合物と、それが適用されている基体との相互作用に関連している。特徴的に、接着力は、主として、接着剤と基体との間の界面に関係している。接着を測定するための適切な試験は、例えば、「ループタック(loop tack)」試験及び「剥離強度(peel strength)」試験である。これらの試験は、FINAT技術ハンドブック(FINAT Technical Handbook)、第6版、2001年に記載されている。ループタックは、FINAT試験方法(FTM)9(このハンドブックの22頁以下参照)に従って測定される。剥離強度は、FTM1(このハンドブックの6頁以下参照)に従って測定する。
【0029】
本発明の意味に於いて、「凝集(cohesion)」(又は凝集特性)は、接着剤内の相互作用/力に関連している。典型的に、凝集力は、主として、接着剤のバルク相に関係している。凝集を測定するための適切な試験は、「剪断凝集」試験である。剪断凝集は、FTM8(このハンドブックの20頁以下参照)に従って測定する。
【0030】
本発明に従った「ロジン酸」は、下記の分子主鎖:
【0031】
【化1】

【0032】
を有する実体(entity)に関連している。
【0033】
一つの態様に於いて、R〜Rは、それぞれ、任意のアルキル基、例えばエチル又はメチルであってもよい。別の態様に於いて、この構造は、2個の共役二重結合を含む。更なる態様に於いて、ロジン酸分子は20個の炭素原子を含む。この主鎖の構造的異性体が、同様に適している。
【0034】
3個の環の少なくとも1個は芳香族である。本発明に従った「ロジン酸」は、また、種々のロジン酸分子の混合物を含むことを理解されたい。容易に入手可能であり、天然に産する、この種類の混合物には、これらに限定されないが、トール油ロジン、ガムロジン又は木材(ウッド)ロジンが含まれる。これらの天然混合物は、変化する量で、アビエチン型及び/又はピマル型のロジン酸、例えばとりわけ、アビエチン酸、パルストリン酸、ネオアビエチン酸、レボピマル(levopirmaric)酸、ピマル酸、イソピマル酸又はデヒドロアビエチン酸を含んでいてよい。任意のこのような混合物は、混合物の分子の少なくとも1種が、上記のロジン酸主鎖又はその構造異性体を有する限り、ロジン酸と考えられる。
【0035】
1個のカルボン酸官能基を有するロジン酸に加えて、2個又はそれ以上のカルボン酸官能基を有するロジン酸も、本発明の意味に於いてロジン酸として考えられる。
【0036】
本発明に従った「ロジン酸誘導体」は、上記のような分子状ロジン酸主鎖を有するが、以下の手段の少なくとも1個で変性されている任意の分子である。一つの態様に於いて、少なくとも1個の二重結合が水素化される(水素化)。別の態様に於いて、少なくとも1個のロジン及び主鎖の環が脱水素化されて、芳香族環になる(脱水素化)。別の態様に於いて、ロジン酸のカルボキシ官能基が、例えばアルコール官能基に変性される(例えばメチル化及び水素化されたゴムロジンは、水素化分解の手段によってアビトール(Abitol)に転化される)。別の態様に於いて、カルボキシ官能基はアミド官能基に変性される。更に別の態様に於いて、ロジン酸主鎖の共役二重結合への付加物、特にディールス−アルダー型反応での無水マレイン酸の付加が含まれる。得られる付加物は、本発明に従ったロジン酸誘導体の1種類と考えられる。
【0037】
本発明に従った「ロジンエステル」は、少なくとも2個のロジン酸又はロジン酸誘導体部分が、少なくとも1個のエステル結合の手段によって結合されている任意の分子である。少なくとも2個のヒドロキシル基を有する任意の分子を使用して、少なくとも2個のロジン酸単位の間のエステル結合を与えることができる。一般的な例には、これらに限定されないが、グリセロールエステル、ペンタエリスリトールエステル及び(トリエチレン)グリコールエステルが含まれる。
【0038】
粘着付与剤分散液の「固形分含量」は、(他の方法で示されない限り)分散液の総重量当たりの重量%で示される。固形分含量を測定する方法を例示する試験プロトコルを、「実施例」部分に示す。
【0039】
本発明に従った「水性」粘着付与剤分散液は、溶媒が一般的に水又は水溶液である、粘着付与剤実体の分散液である。しかしながら、水と非水性溶媒、特に有機溶媒との混合物も、発泡特性又は他の分散液特性が負の影響を与えない限り、適しているであろう。水と他の水溶性溶媒との混合物も、同様に使用することができる。
【0040】
本発明に従った乳化剤
本発明の一つの態様に於いて、乳化剤分子は、少なくとも下記の官能性実体(部分)からなる。即ち、
・少なくとも1個のロジン酸部分又は少なくとも1個のロジン酸誘導体部分、
・前記ロジン酸又はロジン酸誘導体に結合した極性鎖、
・極性鎖に結合したアニオン性頭基。
【0041】
この構造の乳化剤分子の2種又はそれ以上の混合物も、また、本発明に従った乳化剤である。
【0042】
ロジン酸(誘導体)部分は、乳化剤分子上の疎水性(親油性)特性を与えるとして見られる。極性鎖及びアニオン性ヘッド基は、共に、乳化剤分子に親水性(疎油性)特性を与えるとして見られる。
【0043】
本発明の一つの態様に於いて、疎水性部分はロジン酸である。疎水性部分としてロジン酸を使用するとき、良好な発泡挙動と一緒の低粘度値及び250nm以下の粒子サイズを得ることができる。疎水性部分としてロジン酸を使用し、極性鎖が酸素を含むとき、得られる疎水性部分と極性鎖との間の結合は、典型的にエステル結合である。
【0044】
別の態様に於いて、ロジン酸は、天然に生じる源泉、例えばトール油ロジン、ガムロジン又はウッドロジンから得られる。これらの源泉の画分又は混合物を、同様に使用することができる。この混合物は、2種若しくはそれ以上の天然産物のお互いとの組合せであってよく又は同様に、天然産物を、精製した若しくは合成的に製造したロジン酸と混合することができる。カルボキシル官能基が、分子の少なくとも幾らかについて元のままで残っている限り、ロジン酸の「R」基の何れかの水素化、脱水素化又は変形の程度に関して、制限は存在しない。
【0045】
別の態様に於いて、ロジン酸のカルボキシル官能基は、例えばメチル化したロジン酸の水素化分解によって、ヒドロキシル官能基に転化される。
【0046】
別の態様に於いて、極性鎖は、少なくとも2個の、少なくとも1個の酸素原子に結合している少なくとも1個の炭素原子を含む単位の繰り返し、即ち、繰り返し単位当たり少なくとも1個の炭素−酸素結合を含む。例えば、エチレンオキサイド(EO)、即ち−C−O−を含む単位が適しており、従って、ポリエチレンオキサイド鎖になるであろう。この極性鎖は、酸素を含有する基によって末端停止されている必要はなく又は排除的にC、O及びH原子からなっている必要はない。アミン末端停止極性鎖も、同様に適しているであろう。例えば、ポリプロピレンブロック及びポリエチレンブロックからなるブロックコポリマー(「プルロニック」)も、本発明に従った極性鎖として見られる。
【0047】
更なる態様に於いて、極性鎖は、2〜50個の(繰り返し)単位を含む。例えば3〜20個の単位又は4〜20個の単位を使用できる。同様に、4〜15個の単位又は4〜11個の単位又は5〜9個の単位が、本発明に従って適している。
【0048】
乳化剤の極性鎖を形成する単位の数は、この乳化剤で生じた分散液中の粘着付与剤粒子のサイズに影響を有するであろう。小さい粒子サイズが、以下の理由のために一般的に好ましい。第一に、粘着付与剤粒子が小さいほど、粒子は重力によって沈降し難くなり、従って分散液を脱安定化し難くなる。適切な長さの極性鎖を有する本発明の乳化剤で製造された粘着付与剤分散液は、数年間に亘って安定であり得る。次に、小さい粘着付与剤粒子サイズは、全表面積の増加に至り、従って、より多くの乳化剤分子を油相に結合し、そして水相中の乳化剤含有量を減少させることができる。これは、分散液全体の粘度の低下に至るであろう。最後に、大きい粒子サイズを有する粘着付与剤は、ますます劣った発泡挙動に至り得ることが見出された。ポリエチレンオキサイド鎖について、分散液中の粘着付与剤の最小の粒子サイズは、4〜15個の範囲内のEO単位を有する極性鎖を有する乳化剤を使用するとき達成できることを見出した。例えば4〜11個の単位又は5〜9個の単位が適切であろう。
【0049】
アニオン性ヘッド基に関して、極性鎖の末端基に(部分的に)負電荷を与える全ての基が適している。例えば極性鎖の末端基は、鉱酸、例えば(ポリ)リン酸又は硫酸によって官能化することができる。リン酸化(phosphorylation)のために、酸化物又はハロゲン化物、例えば五酸化リン(P)、三塩化リン(PCl)又はオキシ塩化リン(POCl)を使用することができる。硫酸化(sulfation)のために、対応する硫黄酸化物又はハロゲン化物を使用することができる。別の態様に於いて、極性鎖を、カルボン酸官能性になるように変性することができる(例えば、エステル化)。ヘッド基がアニオン性乳化剤を与える限り、任意の方法が本発明に従って許容されるであろう。
【0050】
本発明の関連でアニオン性ヘッド基を使用することは、粒子アグロメレーション/凝析を防止する反発的静電力を与えると思われる。アニオン性ヘッド基を使用することは、また、親水性特性の全てが(長い)極性鎖からもたらされる必要がないので、先行技術で公知の乳化剤と比較したとき、本発明に於いてより短い極性鎖を可能にできる。
【0051】
本発明に従った疎水性部分、例えばロジン酸(誘導体)部分は、先行技術から公知である疎水性部分、例えばアルキルフェノール又はアルキルアルコールを含む乳化剤に比較したとき、疎水性粘着付与剤、例えばロジンエステル、炭化水素樹脂又はこれらの混合物のための増加した親和力を有する乳化剤に至り得る。
【0052】
従って、ロジン酸(誘導体)疎水性部分を有する乳化剤を提供することは、粘着付与剤分散液中の油−水界面のための乳化剤の選択性を改良し、従って、水性粘着付与剤分散液の水相中に存在する乳化剤分子の減少になると見ることができる。その結果、水相の粘度を低下させることができる。従って、分散液全体の粘度も低下させることができる。
【0053】
本発明に従った粘着付与剤分散液
本発明に従った粘着付与剤分散液は、水、少なくとも1種の前記のような乳化剤及び少なくとも1種の以下の粘着付与剤、即ち少なくとも1種のロジンエステル又は少なくとも1種の炭化水素樹脂又は少なくとも1種の、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、インデン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1個若しくはそれ以上のアルキル基を有するジビニルベンゼンから製造された樹脂又は少なくとも1種のテルペン樹脂又はこれらの粘着付与剤の少なくとも2種の任意の混合物からなる。
【0054】
例えば粘着付与剤の少なくとも1種はロジンエステルであってよい。この態様に於いて、ロジンエステルと、乳化剤中に使用されるロジン酸単位との間の構造的類似性は、表面への乳化剤の移動を減少させることができる。移動は、潜在的に、前記乳化剤を含む接着剤の接着特性に有害であろう。適切には、粘着付与剤として、炭化水素樹脂が、単独で又はロジンエステルとの混合物中に使用される態様に於いて、C〜C炭化水素樹脂を使用することができる。
【0055】
本発明の一つの態様に於いて、ロジンエステルは、25よりも小さい酸価(acid number)(即ち1gの酸を中和するために必要なKOHのmgで与えられる数字)を有してよい。他の態様に於いて、炭化水素樹脂は200〜20,000g・モル−1、例えば、4,000〜7,000g・モル−1の範囲内の重量平均分子量を有する。
【0056】
別の態様に於いて、粘着付与剤分散液の少なくとも1種の粘着付与剤は、(環球式装置により、ネーバルストアズから誘導された樹脂の軟化点のための標準試験方法である、ASTM E28−99(2004)の「環球(ring-and-ball)」方法に従って測定したとき)−30℃〜160℃の範囲内、例えば20℃〜120℃の範囲内の軟化点を有していてよい。
【0057】
上記の粘着付与剤分散液中の粘着付与剤の平均粒子サイズは、適切には2μmよりも小さい。例えば、この粘着付与剤の平均粒子サイズは、1μmよりも小さく又は500nmよりも小さい。別の態様に於いて、粘着付与剤の平均粒子サイズは、250nmよりも小さい。一般的に、粒子サイズ及び粒子サイズ分布は、(レーザー)光散乱法によって測定する。
【0058】
更なる態様に於いて、粘着付与剤分散液は、300mPa・sよりも小さい又は250mPa・sよりも小さいブルックフィールド粘度を有する。一般的に、粘度は、ブルックフィールドLVT粘度計によって測定する。より高い粘度を有する乳化剤は、発泡挙動が許容でき、固形分含量が特定された範囲内である限り、本発明によってカバーされる。
【0059】
本発明に従った粘着付与剤分散液の固形分含量は、適切には、50重量%〜70重量%、例えば、55重量%〜65重量%の範囲内である。
【0060】
本発明に従った接着配合物
本発明の乳化剤は、本発明に従った粘着付与剤分散液に応用したとき、粘着付与剤分散液で製造した水性接着剤の改良された凝集及び接着特性になる。例えば、このような接着剤は、ラベル貼り及び包装工業に於いて、水性粘着テープ、道路マーキング及びフローリング応用のために有利に使用することができる。上記の応用に於いて、接着剤は感圧性である。接着剤が感圧性ではない他の応用が、同様に含まれる。このような応用には、これらに限定されないが、バリヤーコーティング又はシーラントが含まれる。
【0061】
本発明の別の態様に於いて、本発明の乳化剤を使用する粘着付与剤分散液は、接着配合物を製造するために使用することができる。この接着配合物は、少なくとも1種の前記のような粘着付与剤分散液及び少なくとも1種のポリマー成分を含む。一般的に、ポリマー成分は、エラストマー性ラテックス、例えばアクリル樹脂又はスチレン−ブタジエンゴムを含むエラストマー性成分である。本発明に従った粘着付与剤分散液と共に使用するために適している他のポリマーには、これらに限定されないが、
−天然ゴムの懸濁液、
−アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸及びアクリル酸若しくはこれらの混合物から誘導されたアクリルポリマー、
−ポリスチレン、
−スチレン−ブタジエンコポリマー、
−酢酸ビニルから誘導されたポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、
−ポリクロロプレン又は
−アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー
が含まれる。
【0062】
これらのポリマーの2種又はそれ以上の任意の混合物を、同様に適切に使用することができる。
【0063】
本発明の湿潤接着配合物(即ち水性)を製造するために、本発明に従った粘着付与剤分散液及びラテックスをブレンドすることができる。一般的に、接着配合物は、15%〜50%、例えば20%〜40%(乾燥重量基準)の粘着付与剤を含む。
【0064】
本発明に従った乳化剤の代表的製造方法
極性鎖としてポリエチレンオキサイド鎖をベースにする、本発明に従った非イオン性中間体及びアニオン性乳化剤を製造するための図解的合成経路を、下記に例として説明する。
【0065】
(I)可能性のある合成経路:エステル化経路:
(a)ロジン酸を、過剰のポリエチレングリコール(PEG)によってエステル化する工程、
(b)工程(a)からの中間生成物(A)の未反応PEGからの分離工程、
【0066】
【化2】

【0067】
(c)工程(b)からの生成物の、鉱酸又はカルボン酸との反応による、アニオン性乳化剤に到達する工程(ここでは、(ポリ)リン酸を使用する)。
【0068】
疎水性ロジン酸ベース部分を含むアニオン性乳化剤の主な分子構造を、以下に図示する。
【0069】
【化3】

【0070】
生成物混合物には、また、とりわけ、少量の二リン酸エステル及び遊離リン酸(20〜60モル%)が含有されているであろう。必要なとき、精製工程を、先行技術から公知である標準的方法に従って実施することができる。
【0071】
(II)代替合成経路:エトキシル化経路:
(a)カルボキシル基のヒドロキシル基への転化によって、ロジン酸誘導体を製造する工程、
(b)ヒドロキシル官能基をエチレンオキサイド(EO)によってエトキシル化して、ポリエチレンオキサイド鎖に到達する工程、
【0072】
【化4】

【0073】
(c)粗製生成物を真空ストリッピングして、未反応EOを除去する工程、
(d)(c)からの中間生成物(B)を、鉱酸又はカルボン酸(ここではポリリン酸)と反応させる工程。
【0074】
ここには、ロジン酸誘導体のエトキシル化を記載したが、ロジン酸も同様に使用することができる。疎水性ヒドロキシル変性ロジン酸部分を含むアニオン性乳化剤の主な分子構造を、以下に図示する。
【0075】
【化5】

【0076】
この生成物混合物には、また、とりわけ、少量の二リン酸エステル及び遊離リン酸(20〜60モル%)が含有されているであろう。必要なとき、精製工程を、先行技術から公知である標準的方法に従って実施することができる。
【0077】
両方の経路に従った典型的な生成物は、半固体であり、上昇した温度で液体になり、水中の適度の溶解度を有する。典型的に、その塩の形で、この生成物は良好な水溶解度を有する。
【0078】
エステル化経路に従って、非イオン性中間体(A)を製造する一つの方法に於いて、ロジン酸(混合物)を、モル過剰のポリエチレングリコールと、少なくとも1種の金属酸化物触媒の存在下で反応させる。典型的には、反応温度は270℃〜290℃である。この反応は、好ましくは、不活性窒素条件下で実施される。一般的に、この方法に於いて使用するときポリエチレングリコールは、100〜1,000g・モル−1、例えば200〜500g・モル−1の範囲内の数平均分子量を有する。
【0079】
典型的な反応時間は30時間であり、90〜99%の転化率に達する。一つの態様に於いて、繰り返した水−ジエチルエーテル抽出により、未反応ポリエチレングリコールが、中間体反応生成物から除去される。別の態様に於いて、抽出工程での良好な相分離を得るために、2重量%よりも少ないNaClを水に添加する。典型的には、中間体非イオン性生成物中の2重量%よりも低いポリエチレングリコールレベルに達するために、5回の抽出工程が必要である。7個のEO単位よりも長いPEG鎖が作られる場合、非イオン性中間体の望まない溶解度が見出され、他方、5個のEO単位よりも短いPEG鎖が作られる場合、エーテル中のPEGの著しく望まない溶解度が見出さる。
【0080】
別の態様に於いて、ロジン酸のポリエチレングリコールに対するモル比は、1:2〜1:10、例えば1:3〜1:7の範囲内である。別の例によって、1:5の比も適している。
【0081】
非イオン性中間体を製造する代替方法は、少なくとも1個のヒドロキシル官能基を有するロジン酸又はロジン酸誘導体と、エチレンオキサイド又は同様の官能基を有する分子との反応(エトキシル化)を含む。この反応は、典型的には、触媒量のKOHの存在下で実施される。更に、この反応は、160℃〜190℃の温度で、好ましくは不活性窒素条件下で行われる。更に、4〜5バールの圧力が、一般的に適用される。前記のエステル化経路を超えたこの方法の一つの利点は、抽出工程が必要でなく、従ってEO単位の数を限定しないことである。
【0082】
本発明に従ったアニオン性乳化剤は、前記のような非イオン性中間体(A)若しくは(B)又はこれらの混合物と、鉱酸、カルボン酸又はこれらの任意の混合物との反応によって製造することができる。
【0083】
別の態様に於いて、(ポリ)リン酸を使用することができる。ポリリン酸の当量は、典型的に、%リン酸で表される。これは、当量質量のP10に転化させることができる。この当量質量は、当量質量のヒドロキシルと反応できる。この場合に、ヒドロキシルのP10に対する分子比は、適切に、5:1〜1:5、例えば3:1(過剰のヒドロキシルに相当する)の範囲内である。
【0084】
リン酸化を使用する場合、リン酸化工程は、好ましくは60℃〜70℃の範囲内の温度で、ポリリン酸の、非イオン性中間体(A)若しくは(B)又はこれらの混合物への遅い添加を含む。ポリリン酸を、1〜90分間、例えば10〜70分間の範囲内の時間間隔で添加する。一つの態様に於いて、反応温度を、ポリリン酸の添加後に、3〜4時間掛けて、100℃まで上昇させることができる。
【0085】
本発明に従って、乳化剤の製造に関して、抽出工程の費用節約省略のために、エステル化の代わりにエトキシル化を使用することができる。エーテル結合ではなくてエステル結合を与えるために、ロジン酸誘導体ではなくてロジン酸をエトキシル化することが、また適している。全体的に、本発明に従った乳化剤を製造する適切な方法は、以下の工程、即ち(a)エチレンオキサイドによる少なくとも1種のロジン酸のエトキシル化、(b)(a)からの中間体生成物と鉱酸又はカルボン酸との反応の少なくとも1個からなっていてよい。
【0086】
本発明に従った乳化剤を使用した、粘着付与剤分散液の代表的な製造方法
本発明に従った乳化剤をベースにする粘着付与剤分散液に到達するための一つの態様に於いて、前記粘着付与剤分散液をバッチ反転(inversion)プロセスに従って製造することができる。
【0087】
別の態様に於いて、粘着付与剤又は粘着付与剤混合物を、粘着付与剤/粘着付与剤の混合物の軟化点よりも約10〜30℃高くまで加熱することができる。次いで、本発明に従った乳化剤を、粘着付与剤/粘着付与剤混合物に添加することができる。更なる態様に於いて、乳化剤を中和剤と一緒に添加することができる。適切な中和剤には、NaOH、KOH又はトリエタノールアミンが含まれる。
【0088】
更なる工程に於いて、水を、相反転が達せられるまで、攪拌下に粘着付与剤混合物にゆっくり添加することができる。一つの態様に於いて、得られるエマルジョンを、所望の全固体含有量にまで、更に希釈する。次いで、得られる分散液を、優しく撹拌しながら、ゆっくり冷却させる。
【0089】
粘着付与剤に添加する乳化剤の量は、適切には、それぞれ(重量当たりの部で)、粘着付与剤100部当たり、4〜9部、例えば5〜8部である。添加する中和剤の量は、最終分散液が4〜10又は6〜8の範囲内のpH値を有するような方式で、調節する。
【0090】
本発明を、それらの可能性のある態様の下記の実施例によって例示することができるが、これらの実施例は、単に、例示の目的のために含まれ、他の方法によって特別に示されていない限り、本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解されるであろう。
【実施例】
【0091】
実施例1:中間体生成物Aの製造(エステル化)
攪拌機、サーモカップル、窒素入口及びディーン・シュタルク(Dean-Stark)トラップを取り付けた、電気加熱した2リットルのガラス反応器に、ガムロジン(Gum Rosin)(イーストマン・ケミカル社(Eastman Chemical Company)、オランダ国、Middelburg)及び300の数平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG300;アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))を、COOH:OH=1:10のモル当量比で装入した。この混合物を、不活性窒素条件下で180℃まで加熱し、(ガムロジンの重量基準で)0.01%のZnOをエステル化触媒として添加した。この混合物を更に290℃まで加熱し、水を連続的に留去した。
【0092】
この反応混合物を、少なくとも90%の転化率が達せられるまで反応させた。典型的な反応時間は、25〜30時間であった。粗製中間体を環境にまで冷却し、ジエチルエーテル中に溶解させた。100部の粗製生成物を、80部のジエチルエーテル中に溶解させた。67部のNaCl水溶液(2重量%)を、この溶液に添加した。この混合物を分液漏斗内で激しく振盪し、2個又は3個の分離した層が得られるまで放置した。残留するPEG300及びNaClを含有する水層を除去した。この手順を、残留するPEG300の少なくとも98%が、付加物から除去されるまで、最初のジエチルエーテル溶液で4回繰り返した。回転フィルムエバポレーターを使用して、70〜80℃の温度で減圧(100〜200ミリバール)下で、ジエチルエーテル蒸気が測定できなくなるまで、ジエチルエーテルを除去した。
【0093】
実施例2:中間体生成物Bの製造(エステル化)
PEG300を、200の数平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG200;アルドリッチ・ケミカル社、ウィスコンシン州ミルウォーキー)によって置き換えて、実施例1の手順を繰り返した。
【0094】
実施例3:中間体生成物Cの製造(エトキシル化)
攪拌機、サーモカップル、窒素入口及び圧力計を取り付けた、1リットルのオートクレーブを、約85℃に加熱し、300gのアビトールE(イーストマン・ケミカル社、オランダ国、Middelburg)及び0.3gのKOH粉末を装入した。撹拌を500rpmで開始した。反応器を、窒素で3回不活性にした。この混合物を180℃に加熱した。エチレンオキサイド(一般的に、5、7、9又は11モル)を、反応器に、約16時間で、5バールに加圧した付与容器を使用して、連続的に添加した。反応器内の圧力は4.7バールであった。この混合物を一夜反応させた。反応器を窒素で3回不活性にし、環境温度まで冷却し、そして排出させた。好ましいモル比アビトールE:EOは1:7であった。
【0095】
実施例4:アニオン性乳化剤の製造
攪拌機、サーモカップル、窒素入口、滴下漏斗及び冷却器を取り付けた、電気加熱した250mLの三つ口ガラス反応器に、別々のバッチで、実施例1,2及び3からの中間体生成物を装入し、120〜140℃に加熱した。微量の水を、付加物が500ppmよりも少ない水含有量を有するまで、減圧(200〜400ミリバール)及び窒素パージ下で除去した。この付加物を80℃まで冷却し、ポリリン酸(115%HPO;アルドリッチ・ケミカル社、ウィスコンシン州ミルウォーキー)を、当量比OH:P10=3:1でゆっくり添加した。約10℃の発熱が観察された。ポリリン酸を添加した後、反応温度は100℃まで上昇し、3〜4時間反応させた。反応の進行を、滴定曲線を決定することによってモニターした。
【0096】
実施例5:粘着付与剤分散液の製造−200gスケール
ステンレススチールビーカーに、100部のプリカーサー(Precursor)105樹脂(イーストマン・ケミカル社、オランダ国、Middelburg)を装入し、約100℃まで加熱した。この溶融した樹脂に、6〜8部の界面活性剤(実施例4から得た)及び20%水酸化ナトリウムを添加した。界面活性剤と水酸化ナトリウムとの重量比は、最終分散液のpHが6〜9であるような方式で選択した。この混合物を、90〜100℃の温度まで再加熱した。撹拌速度を1800rpmまで増加させ、熱水を、システムが油中水滴型分散液に反転するまで、粘稠な混合物にゆっくり添加した。この分散液を、所望の固体含有量にまで更に希釈した。次いで、この分散液を、環境まで冷却した。得られた分散液は、6〜9のpH及び200〜300nmの平均粒子サイズを有している。
【0097】
異なった分散液の特性を、表I中に要約する。分散液A及びBは、実施例1(非イオン性中間体)、実施例4(アニオン性界面活性剤)及び実施例5(分散液)から製造した。分散液Cは、分散液が下記の実施例6に従って得られたこと以外は、分散液A及びBと同様である。分散液Dは、実施例3−実施例4−実施例5である。分散液Eは、実施例3−実施例4−実施例6であり、分散液Fは、実施例2−実施例4−実施例5である。
【0098】
実施例6:粘着付与剤分散液の製造−3.5kgスケール
リボン型の攪拌機及び反対方向に移動するスクレーパーを取り付けた、4リットルの電気加熱したステンレススチール反応器内で、100部のプリカーサー105樹脂(イーストマン・ケミカル社、オランダ国、Middelburg)を、約100℃まで加熱した。この溶融した樹脂に、7部の界面活性剤(実施例4から得た)及び20%水酸化ナトリウムを添加した。界面活性剤と水酸化ナトリウムとの重量比は、最終分散液のpHが6〜7であるような方式で選択した。この混合物を、150rpmの攪拌速度で1分間均質化した。撹拌速度を250rpmまで増加させた。熱水を、50g/分の速度でゆっくり添加した。システムが油中水滴型分散液に反転するまで、温度は約90℃に低下した。一般的に、(樹脂の重量基準で)10〜20%の水を添加したとき、反転が起こる。この分散液を、100g/分の速度で、所望の固体含有量にまで更に希釈した。次いで、この分散液を、環境まで冷却し、反応器から取り出した。得られた分散液は、6〜7のpH及び200〜300nmの平均粒子サイズを有している。
【0099】
異なった分散液の特性を、表I中に要約する(実施例5参照)。
【0100】
実施例7:感圧接着剤の製造
アクリルラテックス(アクロナル(Acronal)V215、BASF AG、ドイツ国、Ludwigshafenから得た)及び実施例5及び6からの粘着付与剤分散液をブレンドし、一夜放置した。得られた湿潤接着配合物は、(乾燥重量基準で)25%のレジネーション(resination)レベルを有していた。この湿潤接着配合物をシリコン剥離紙(90gsm)上に被覆し、予熱したオーブン内で60秒間110℃の温度で乾燥した。次いで、接着剤皮膜を紙バッキング(78gsm;クラウン・ファン・ゲルダー(Crown van Gelder))上に移し、一夜(23℃及び50%RHで)貯蔵した。ループタック、剥離強度及び剪断凝集のような接着特性を測定した。この測定は、FINAT標準方法に従って実施した。
【0101】
接着特性を表Iに要約する。
【0102】
【表1】

【0103】
0)それぞれの分散液の製造の詳細について実施例5参照。
1)疎水性単位と親水性単位との間の化学結合
2)レーザー散乱によって決定した(Horiba LA−900)
3)「実施例部分」に記載したような方法によって決定した(Labwave9000)
4)ブルックフィールドLVT粘度:全ての測定は、60rpm及びスピンドル2で実施した。
5)+ =適度の発泡挙動(24時間以内で空気無し)
++ =良好な発泡挙動(16時間以内で空気無し)
+++=優れた発泡挙動(8時間以内で空気無し)
6)FINAT試験方法9;PE=ポリエチレン基体
7)FINAT試験方法1;CB=厚紙
8)FINAT試験方法8
9)分散液は、55%の固形分含量にまで希釈したとき、優れた発泡挙動を示す。
10)分散液を製造するための先行技術の乳化剤は、ノニルフェノールエトキシラートのリン酸エステルである。
【0104】
粘着付与剤分散液中の粘着付与剤の固形分含量を測定するための試験方法
本発明の説明に関連して使用したときの樹脂分散液の全固形分含量を測定する方法はLab Wave 9000 Microwaveを使用する。
【0105】
この試験方法に従って、コンスタントウエイト(Constant Weight)の方法を使用することによって、サンプルを分析する。サンプルを、一定重量が達成されるまで乾燥する。乾固は、最大許容重量損失÷特定された時間間隔を定義することによって特定される。特定された時間間隔の間に、損失が、特定された損失以下であるとき、分析を停止し、結果を計算する。コンスタントウエイト手順によって、必要な乾燥時間を前もって知っていなくても、サンプルの分析が可能である。
【0106】
コンスタントウエイトのパラメーター
マイクロ波出力:75%(487.5ワット;100%は、650ワット最大出力に等しい)
時間間隔:10秒間
重量損失差:0.1mg
最長運転時間:10分間
残りの設定点
最小重量:1グラム
最大重量:2グラム
【0107】
図面及び明細書に於いて、本発明の典型的な好ましい態様が開示されており、特定の用語が使用されているが、これらは一般的で説明的意味でのみ使用され、特許請求の範囲に記載されている発明の範囲を限定する目的のためではない。本発明をその好ましい態様を特に参照して詳細に説明したが、その変更及び修正を、本発明の精神及び範囲内で実施できることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】粘着付与剤分散液中に存在する乳化剤分子の平衡を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1個のロジン酸部分又は少なくとも1個のロジン酸誘導体部分、
(ii)前記ロジン酸又はロジン酸誘導体に結合した極性鎖及び
(iii)前記極性鎖に結合したアニオン性ヘッド基を含んでなり、前記極性鎖が、少なくとも1個の繰り返し部分中に少なくとも1個の炭素−酸素結合を含む少なくとも2個の繰り返し部分を含む
粘着付与剤分散液中に使用する乳化剤。
【請求項2】
極性鎖中の繰り返し単位の数が3〜20の範囲内である請求項1に記載の乳化剤。
【請求項3】
極性鎖中の繰り返し単位の数が5〜9の範囲内である請求項1に記載の乳化剤。
【請求項4】
繰り返し単位がエチレンオキサイド単位である請求項1に記載の乳化剤。
【請求項5】
極性鎖がエステル結合を介してロジン酸又はロジン酸誘導体部分に結合している請求項1に記載の乳化剤。
【請求項6】
ロジン酸又はロジン酸誘導体がトール油ロジン、ガムロジン若しくは木材ロジン又はこれらの混合物若しくは画分から得られる請求項1に記載の乳化剤。
【請求項7】
アニオン性ヘッド基が、リン酸化、硫酸化又はカルボキシル化の少なくとも一つの方法によって、乳化剤中に導入される請求項1に記載の乳化剤。
【請求項8】
(i)水、
(ii)請求項1〜7のいずれか1項に記載の少なくとも1種の乳化剤及び
(iii)(a)少なくとも1種のロジンエステル又は(b)少なくとも1種の炭化水素樹脂又は(c)ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、インデン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1つ若しくはそれ以上のアルキル基を有するジビニルベンゼンから製造された少なくとも1種の樹脂又は(d)少なくとも1種のテルペン樹脂又は(e)これらの粘着付与剤の少なくとも2種の若しくはこれらの粘着付与剤の1種と少なくとも1種の他の粘着付与剤との混合物、の少なくとも1種の粘着付与剤を含んでなる接着配合物中に使用する粘着付与剤分散液。
【請求項9】
粘着付与剤が25よりも小さい酸価を有するロジンエステルを含む請求項8に記載の粘着付与剤分散液。
【請求項10】
粘着付与剤がC〜Cの範囲内の鎖長を有する炭化水素樹脂を含む請求項8に記載の粘着付与剤分散液。
【請求項11】
粘着付与剤分散液中の粘着付与剤の平均粒子サイズが2μmよりも小さい請求項8に記載の粘着付与剤分散液。
【請求項12】
粘着付与剤分散液中の粘着付与剤の平均粒子サイズが1μmよりも小さい請求項8に記載の粘着付与剤分散液。
【請求項13】
粘着付与剤分散液中の粘着付与剤の平均粒子サイズが500nmよりも小さい請求項8に記載の粘着付与剤分散液。
【請求項14】
粘着付与剤分散液中の粘着付与剤の平均粒子サイズが250nmよりも小さい請求項8に記載の粘着付与剤分散液。
【請求項15】
粘着付与剤分散液の固形分含量が55〜65重量%の範囲内である請求項8に記載の粘着付与剤分散液。
【請求項16】
少なくとも1種の請求項8に記載の粘着付与剤分散液及び少なくとも1種のポリマー成分を含んでなる接着配合物。
【請求項17】
ポリマー成分がエラストマーラテックスである請求項16に記載の接着配合物。
【請求項18】
エラストマーラテックスがアクリルポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、天然ゴム懸濁液、酢酸ビニルから誘導されたポリマー、ポリクロロプレン又はアクリロニトリル−ブタジエンコポリマーからなる群から選択される請求項17に記載の接着配合物。
【請求項19】
接着配合物が、乾燥重量基準で、20%〜40%の粘着付与剤を含む請求項16に記載の接着配合物。
【請求項20】
(a)少なくとも1種のロジン酸をエチレンオキサイドによりエトキシル化する工程、
(b)(a)の中間体生成物を、少なくとも1種の鉱酸及び/又は少なくとも1種のカルボン酸と反応させる工程
を含んでなる請求項1に記載の乳化剤の製造方法。
【請求項21】
請求項16に記載の接着配合物を含んでなる、任意の種類の表面にラベルを付着させるための、包装応用、フローリング適用用、道路マーキング用又は水性テープ、バリヤーコーティング若しくはシーラントの任意の種類用の接着剤。

【図1】
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【公表番号】特表2009−518509(P2009−518509A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544374(P2008−544374)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/045780
【国際公開番号】WO2007/067404
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】