水性糖ストリームから有機塩又は有機酸を得る方法
1種以上の鉱酸及び有機酸を含む水性糖ストリームから、1種以上の有機酸の塩、又は有機酸を得るための方法を提供する。本方法は、アニオン交換樹脂の1つ以上の床を含む分離システムに水性糖ストリームを供給し、かつ糖を含むストリームを分離システムから得る工程を含む。次に、アニオン交換樹脂の1つ以上の床を1以上の段階で再生させて、有機酸、有機酸の塩、又はその組合せを含む少なくとも1つの生成物ストリームと、鉱酸、鉱酸の塩、又はその組合せを含む別個の出口ストリームとを生成する。次に、生成物ストリームを回収する。2つの分離ユニットで、又は単一のアニオン交換ユニットを用いて分離を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願に対する相互参照〕
この出願は、2006年8月18日提出の米国仮特許出願第60/822,783号に対する優先権、及び該出願の利益を主張する。これにより、該出願の内容全体を参照によって本願明細書に引用したものとする。
〔発明の分野〕
本発明は、水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得る方法を提供する。さらに詳細には、本発明は、1種以上の鉱酸と糖を含む水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
〔関連技術〕
現在、トウモロコシデンプン、サトウキビ及びテンサイ等の原料から燃料エタノールを生産している。しかし、これらの穀物の生産に適したほとんどの農地がヒトの食物源として既に使用されているので、これらの起源からエタノールを生産する潜在力には限界がある。さらに、これらの食物源からのエタノールの生産は、常法で使用される化石燃料が二酸化炭素及び他の副生物を生成することから、環境に負の影響を及ぼす。
近年、セルロース含有原料、例えば農業廃棄物、草、及び林業廃棄物からのエタノールの生産が多くの注目を集めいている。この理由は、これらの原料が広く入手可能かつ安価であり、エタノール生産のためのそれらの使用は、リグノセルロース系廃棄物の焼却又は埋立て処理の代替法をもたらすことである。さらに、セルロース変換の副生物であるリグニンを燃料として用いて、化石燃料の代わりにプロセスを作動させることができる。いくつかの研究は、全体的な生産及び消費サイクルを考慮すると、セルロースから生産されたエタノールの使用は、ほぼゼロの温室効果ガスをもたらすと推論した。
エタノール生産のために最も有望なリグノセルロース系原料として、(1)農業廃棄物、例えばトウモロコシ茎葉、小麦わら、大麦わら、オート麦わら、稲わら、及び大豆茎葉;(2)草、例えばスイッチグラス、ススキ(miscanthus)、カゼグサ(cord grass)、及びクサヨシ(reed canary grass);及び(3)林業廃棄物、例えばアスペンウッド(aspen wood)及びおがくずが挙げられる。
リグノセルロース系原料の3つの主要成分は、ほとんどの重要な原料の30%〜50%を構成するセルロース;ほとんどの原料の15%〜35%を構成するヘミセルロース;及びほとんどの原料の15%から30%を構成するリグニンである。セルロースとヘミセルロースは主に炭水化物で構成され、発酵してエタノールになる可能性のある糖の起源である。リグニンはフェニルプロパンであり、エタノールに変換しない。
セルロースは、β-1,4結合を有するグルコースのポリマーであり、この構造は、問題の原料に共通である。ヘミセルロースは、さらに複雑な構造であり、原料間で変化する。問題の原料では、ヘミセルロースは典型的にβ-1,4結合を有するキシロースの骨格ポリマーと、α-1,3結合を有する1〜5個のアラビノース単位の側鎖、又はアセチル成分、又は他の有機酸成分、例えばグルクロニル基とから成る。
【0003】
リグノセルロース系原料をエタノールに変換するための第1のプロセス工程は、繊維状物質を分解することを含む。2つの主要プロセスは、酸処理の単工程を用いる原料の加水分解を含む酸加水分解と、酸処理後にセルラーゼ酵素による加水分解を含む酵素加水分解である。
酸加水分解プロセスでは、原料を蒸気と鉱酸、例えば硫酸、塩酸、又はリン酸に供する。温度、酸濃度及び加水分解の持続時間は、セルロースとヘミセルロースをそのモノマー成分に加水分解するのに十分な温度、濃度及び時間である。モノマー成分は、セルロース由来のグルコース、並びにヘミセルロース由来のキシロース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、酢酸、ガラクツロン酸、及びグルクロン酸である。このプロセスでは、硫酸が最も一般的な鉱酸である。硫酸を濃縮し(25〜80%w/w)、又は希釈(3〜8%w/w)することができる。結果の水性スラリーは、主にリグニンである未加水分解繊維、並びにグルコース、キシロース、有機酸(主に酢酸であるが、グルクロン酸、ギ酸、乳酸及びガラクツロン酸をも含む)、及び鉱酸の水溶液を含有する。水溶液を繊維状固体から分離して、糖加水分解物ストリームを生成する。
【0004】
酵素加水分解プロセスでは、酸の前処理工程の蒸気温度、鉱酸(典型的に硫酸)濃度及び処理時間を選択して、酸加水分解プロセスより穏やかにする。酸加水分解プロセスと同様に、ヘミセルロースをキシロース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、酢酸、グルクロン酸、ギ酸及びガラクツロン酸に加水分解する。しかし、より穏やかな前処理は大部分のセルロースを加水分解せず、むしろ繊維状原料が泥状テクスチャーに変化するので、セルロースの表面積を増やす。そして、セルラーゼ酵素を利用する次工程で、前処理したセルロースをグルコースに加水分解する。酵素の添加前に、酸性原料のpHを酵素加水分解反応に適した値に調整する。典型的に、この工程は、セルラーゼに最適なpH範囲である約4〜約6のpHまでアルカリを添加するが、好アルカリ性セルラーゼを使用する場合、pHがさらに高くてよい。
あるタイプの前処理プロセスでは、蒸気によって生じた圧力が爆発的減圧で急速に下がる。これは蒸気爆発として知られる。Foody(米国特許第4,461,648号)は、蒸気爆発前処理で使用する設備と条件を開示する。20年間、0.4〜2.0のpHで添加される硫酸による蒸気爆発が標準的な前処理プロセスだった。このプロセスは均一な前処理材料をもたらし、かつセルロースを加水分解するために他の前処理プロセスより少ないセルラーゼ酵素しか必要としない。
酸加水分解又は酵素加水分解のどちらを行うかに関係なく、結果として生じる水性加水分解物ストリームは、グルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、並びに有機酸、例えば酢酸、グルクロン酸、ギ酸及びガラクツロン酸並びに鉱酸、例えば硫酸を含有すると思われる。しかし、鉱酸及び有機酸の塩が存在しうること、かつpHを高くすると該塩形態中のこれらの酸のフラクションが増えることが分かるだろう。このストリーム中のグルコースは容易に発酵させ、通常の酵母でエタノールに、又は微生物でブタノールにすることができる。組換え酵母(米国特許第5,789,210号(Ho et al.)及びWO 03/095627(Boles and Becker)参照)又は微生物によってペントース糖を発酵させてエタノールにすることができる。これとは別に、化学的、微生物的又は酵素的手段を利用する他の高価値製品の生産用の出発原料としてペントース糖を使用することができ、或いはペントース糖を簡単に回収することができる。例えば、キシロースの発酵又は水素添加によってキシリトールを生産でき、或いはキシロースを簡単に回収することができる。
【0005】
加水分解物ストリーム中の有機酸及び無機酸、又は対応する塩の存在は、グルコース又は他の糖をエタノール又は他の高価値製品に変換するためのプロセスの効率を下げる。特に、酵素加水分解又は発酵(両方とも中程度のpH値、例えば約4.0〜約6.0のpH値で起こる)前に行われるいずれの中和の際にも、これらの化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、又は水酸化カリウム等のアルカリを消費するだろう。さらに、鉱酸と有機酸、及びそれらの塩は、酵母、微生物並びに、より少程度に、セルラーゼ酵素に対して阻害性でありうる。このようないずれの阻害も、発酵若しくは酵素加水分解を行うために必要な時間を長くし、必要な酵母若しくは酵素触媒の量を増やし、及び/又は最終収率を下げることによって、発酵及び酵素加水分解操作の効率を低減しうる。従って、加水分解物からこれらの化合物を除去してクリーンな糖ストリームを生成することが望ましいだろう。さらに、環境によっては、加水分解以外から得られた糖ストリームからこれらの化合物を除去することも有利だろう。
【0006】
Pfeiffer(米国特許第4,102,705号)は、二段階イオン交換プロセスを利用することによって、酢酸及び硫酸、塩酸、若しくは硝酸という鉱酸の除去によるキシロースストリームの脱酸を開示している。Pfeifferは、第1のアニオン交換系に水性ストリームを供給して鉱酸と結合させて、キシロースと酢酸を通過させる。樹脂を水酸化ナトリウムで再生させることによって、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、又は硝酸ナトリウム塩を生成する。キシロースと酢酸を含有するストリームをエバポレートして90%の酢酸を除去する。その結果の、酢酸が残存するキシロースストリームを、該酢酸に結合して脱酸キシロースストリームを通過させる第2のイオン交換系に供する。イオン交換樹脂を水酸化ナトリウムで再生させて酢酸ナトリウム塩を生成する。
Pfeifferが教示したエバポレーションは、水性ストリームから90%の酢酸を除去するため非常に大規模だろう。酢酸は水より揮発性が低いので、このエバポレーションは、水蒸気をほぼ乾固するまで脱水するだろう。該エバポレーションを行うことは、沈殿固体の存在がスケールの沈着及び熱交換表面の汚損につながるので非常に困難である。
【0007】
Wooleyらは(In Lignocellulosic Biomass to Ethanol Process Design and Economics Utilizing Co-Current Dilute Acid Prehydrolysis and Enzyme Hydrolysis Current and Future Scenarios, (1999) Technical Report, National Renewable Energy Laboratory pp. 16-17)、連続的なイオン交換分離ユニットを利用することによって、糖加水分解物ストリームから88%の酢酸と100%の硫酸を除去することを報告している。イオン交換媒体は弱塩基性アニオン交換樹脂であり、該樹脂をアンモニアで再生させる。酢酸と硫酸は、該ユニットから同一ストリーム内で排出され、廃水処理ユニット内で処分される。
WO 2006/007691(Foody及びTolan)は、糖の発酵前の糖ストリームから酢酸アンモニウム及び硫酸アンモニウム塩を分離するため、5.0〜10.0のpHでのイオン排除クロマトグラフィーの使用を開示する。この分離方法は、アンモニウム形態でカチオン交換樹脂を使用することに頼る。
Wooleyらは(Ind. Eng. Chem. Res., 1998, 37:3699-3709)、糖加水分解物ストリームから酢酸及び硫酸を分離するため、ヒドロニウム形態でカチオン交換樹脂を利用するイオン排除クロマトグラフィーの使用を開示する。このプロセスでは、まず、硫酸は樹脂から排除されて樹脂を通過し、非イオン性の糖は樹脂を通ってさらにゆっくり移動する。供給ストリームは3.0以下のpHであり、その結果のプロセスがストリームを硫酸、糖、及び酢酸のストリームに分離する。しかし、このプロセスの3つの生成物ストリームの制御と回収は困難かつ費用がかかるだろう。
Andersonらは(Ind. Eng. Chem., 1955, 47:1620-1623)、水溶性有機材料から強い鉱酸を分離する手段として強塩基性アニオン交換樹脂を使用することを開示する。このプロセスでは、まず強塩基性アニオン交換樹脂を硫酸塩形態に変換する。樹脂床によって該鉱酸が保持され、水溶性有機材料は樹脂を通過し、結合しない。この方法は、硫酸及び塩酸などの強酸を結合させて回収するのに有用であり、水溶性有機材料と樹脂床との間に有意な相互作用がないことに頼る。樹脂の硫酸塩形態が利用できる限り、鉱酸が樹脂と結合するだろう。しかし、このプロセスは、水性糖ストリームからの有機酸又はその塩形態の分離をもたらさない。
Barrierらは(Integrated Fuel Alcohol Production Systems for Agricultural Feedstocks, Phase III, Quarterly Technical Report for the Period April-June 1995. Submitted by Tennessee Valley Authority Office of Agricultural and Chemical Development, TVA Contract No. TV-540881, 1985)、加水分解ストリームから硫酸を回収するため、アニオン交換樹脂、例えば弱塩基性アニオン交換樹脂を使用することを開示する。この方法は硫酸の回収には有用であるが、混合型糖-有機酸ストリームをもたらす。混合型糖-有機酸ストリームを直接、酵母発酵に送ってエタノールを生産する。腐食剤を添加して発酵pHを調整し、酵母媒体成分をも添加する。引き続きエタノール含有溶液を蒸留して燃料エタノールを生産する。しかし、エタノール蒸留後に底にまだ有機酸が残存し、回収されていないと解釈されるが、有機酸の回収について何ら開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、水性糖ストリームから有機酸、又はその対応塩を回収するための満足できる方法はない。糖ストリームから有機酸、又はその塩を除去する能力は、糖をエタノール又は他の有益な製品に変換する効率を改善するための決定的な要求のままである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔発明の概要〕
本発明は、水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得るための方法を提供する。さらに詳細には、本発明は、1種以上の鉱酸と糖を含む水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得るための方法に関する。
本発明の目的は、水性糖ストリームから有機酸又は有機塩を得るための改良方法を提供することである。
本発明の第1局面により、鉱酸と、有機酸と、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース及びその組合せから成る群より選択される糖とを含む水性糖ストリームから有機塩又は有機酸を得るための方法(A)であって、以下の工程、
(i) アニオン交換樹脂の1つ以上の床を含む分離システムに前記水性糖ストリームを導入し、かつ前記糖を含む少なくとも1つのストリームを前記分離システムから得る工程、
(ii) 1以上の段階で前記アニオン交換樹脂の1つ以上の床を再生させることによって、前記鉱酸、前記鉱酸の塩、又はその組合せを含む少なくとも1つのストリームと、前記有機酸、前記有機酸の塩、又はその組合せを含む別個の少なくとも1つの生成物ストリームとを生成する工程、及び
(iii) 前記少なくとも1つの生成物ストリームを回収する工程、
を含む方法が提供される。
本発明のこの局面によれば、アニオン交換分離システムは、後述するような別個の第1及び第2アニオン交換ユニットを含みうる。或いは、少なくとも1つの樹脂床を含む単一のアニオン交換ユニットで工程(i)〜(iii)を行ってよい。単一のアニオン交換ユニットで分離を行う場合、鉱酸、有機酸、及び/又はこれらの酸のアニオンがユニットの樹脂床に結合し、引き続き樹脂床を再生させて結合種を置き換える。
【0010】
本発明の第2の局面により、1種以上の鉱酸と、1種以上の有機酸と、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース及びその組合せから成る群より選択される糖とを含む水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得るための方法(B)であって、以下の工程、
(i) アニオン交換樹脂を含む1つ以上の床を含む第1アニオン交換ユニットに前記水性糖ストリームを導入する工程であって、前記鉱酸、前記鉱酸のアニオン又はその組合せが前記樹脂に結合する工程、
(ii) 前記第1アニオン交換ユニットから前記糖と前記有機酸を含む流出ストリームを生成し、かつ1種以上の再生剤で前記アニオン交換樹脂を再生させることによって、前記鉱酸、前記鉱酸の塩又はその組合せを含む1つ以上の出口ストリームを生成する工程、
(iii) 前記糖と前記有機酸を含む前記流出ストリームを、アニオン交換樹脂を含む1つ以上の床を含む第2アニオン交換ユニットに供給する工程(ここで、前記有機酸又は前記有機酸のアニオンは前記樹脂に結合する)、
(iv) 前記第2アニオン交換ユニットから、前記糖を含むストリームであって、該ストリームには、実質的に前記鉱酸及び前記有機酸が無いストリームを得、かつ前記第2アニオン交換ユニットを1種以上の再生剤で再生させることによって、前記有機酸の塩、前記有機酸又はその組合せを含む1つ以上の生成物ストリームを生成する工程、及び
(v) 前記1つ以上の生成物ストリームを回収する工程、
を含む方法が提供される。
【0011】
本発明は、上記定義どおりの方法(B)であって、前記供給工程(工程(iii))において、前記水性ストリーム中に存在する前記有機酸の少なくとも70%を前記第2アニオン交換ユニットに供給する方法にも関係する。
第1アニオン交換ユニット、第2アニオン交換ユニット又は第1及び第2の両アニオン交換ユニット中のアニオン交換樹脂床は、弱塩基性又は強塩基性のアニオン交換樹脂でよい。好ましくは、アニオン交換樹脂は弱塩基性樹脂である。
本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記鉱酸の塩、前記鉱酸又はその組合せを回収する工程をさらに含む方法にも関係する。
本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記鉱酸が、硫酸、亜硫酸、塩酸、リン酸及びその組合せから成る群より選択される方法にも関係する。好ましくは鉱酸は硫酸である。
さらに、本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記有機酸が、酢酸、ギ酸、ガラクツロン酸、グルクロン酸及びその組合せから成る群より選択される方法にも関係する。好ましくは、有機酸は酢酸である。
本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記酢酸を1つ以上の生成物ストリームから回収する方法にも関する。蒸留、液-液抽出又は空気若しくは蒸気によるストリッピングによって、生成物ストリームから酢酸を回収することができる。本発明の一実施形態では、1つ以上の生成物ストリームが酢酸の塩を含み、かつ酢酸を回収する前に酸の添加によって前記生成物ストリームのpHを4以下に調整する。
【0012】
本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記再生剤が、酸溶液、アルカリ溶液又は水から選択される水溶液である方法にも関する。好ましくは、再生剤はアルカリ又は酸溶液である。再生剤がアルカリの場合、再生剤は、好ましくはアンモニア水(水酸化アンモニウムとも称する)、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液から成る群より選択されるアルカリ溶液である。最も好ましくは、塩基はアンモニア水又は水酸化アンモニウムである。
本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記アニオン交換が模擬移動床式(Simulated Moving Bed)(SMB)システム又は改良型模擬移動床式(Improved Simulated Moving Bed)(ISMB)システムである。
本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、リグノセルロース系原料に1種以上の酸を添加することによって、前記リグノセルロース系原料を約4.0〜約5.0のpHで前処理して、前記原料中のヘミセルロースの少なくとも一部を加水分解することによって、前記水性糖ストリームを得る方法にも関する。本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記水性糖ストリームが0.4〜約5.0のpHである方法にも関する。或いは、前記水性糖ストリームは、リグノセルロース系原料に酸を添加して前記リグノセルロース系原料中に存在するヘミセルロースとセルロースの両方をそれらのそれぞれの糖モノマーに加水分解することから生じた加水分解物ストリームである。
【0013】
本発明の別の局面により、リグノセルロース系原料から酢酸塩、酢酸又はその組合せを得るための方法(C)であって、以下の工程、
(i) 前記リグノセルロース系原料の加水分解から生じた水性糖ストリームを得る工程(前記加水分解は硫酸添加の1以上の段階を含み、前記糖ストリームが酢酸、酢酸塩、又はその組合せ、硫酸、並びにキシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース及びその組合せから選択される1種以上の糖を含む)、
(ii) アニオン交換樹脂の1つ以上の床を含む模擬移動床式分離システムに前記水性糖ストリームを導入して、該システムから前記1種以上の糖を含む少なくとも1つの生成物ストリームを得る工程、
(iii) 前記アニオン交換樹脂の1つ以上の床を硫酸で再生させることによって、前記酢酸を含む少なくとも1つの有機酸生成物ストリームを生成し、その後、前記アニオン交換樹脂の1つ以上の床を水酸化アンモニウムで再生させて、硫酸アンモニウムを含む少なくとも1つの別個の出口ストリームを生成する工程、及び
(iv) 前記生成物ストリームを回収する工程、
を含んでなる方法が提供される。
本発明は、上記定義どおりの方法(C)であって、前記硫酸添加を行って前記リグノセルロース系原料を前処理することによって、前記リグノセルロース系原料中に存在するヘミセルロースの少なくとも一部を糖モノマーに加水分解する方法にも関する。或いは、前記硫酸添加を行って、前記リグノセルロース系原料中に存在する前記ヘミセルロースとセルロースの両方をそれらのそれぞれの糖モノマーに加水分解する。
【0014】
本発明は先行技術の限界を克服する。本イオン交換法は、イオン排除法と異なり、酸性加水分解物ストリームに適する。さらに、本発明のアニオン交換法は、イオン排除操作に典型的な大量の希釈水を必要とせず、むしろ鉱物塩と有機塩又は鉱酸と有機酸をその濃縮形態で得ることができる。本発明の方法は、有機酸を除去するためのエバポレーションの使用に頼らないので、この費用を回避できる。さらに、本発明の方法は、鉱物塩と有機塩、又は鉱酸と有機酸を、別個のストリーム中、元の供給原料ストリーム中に存在するより高い濃度でもたらすことができる。鉱物塩と有機塩又は鉱酸と有機酸のストリームの別個及び濃縮特性がこれらの化合物の回収及びさらなる処理を容易にする。
従って、本発明は、エタノール又は他の製品の生産のためのリグノセルロース系原料の処理の前の有意な工程を表す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、添付図面を参照する以下の説明からさらに明らかになるだろう。
【図1】弱塩基性アニオン交換カラムからの硫酸、酢酸及びキシロースの溶出プロファイルを示す。小麦わらの前処理から得た水性糖ストリームをカラムに供給した。
【図2】小麦わらの前処理から得た水性糖ストリームを8.7床容積供給後の弱塩基性アニオン交換カラムの再生プロファイルを示す。再生剤としてアンモニア水(5%w/v)を用いた。
【図3】弱塩基性アニオン交換カラムからのキシロースと酢酸の溶出プロファイルを示す。第1の弱塩基性アニオン交換カラムを介した小麦わらの前処理からの水性糖ストリームの処理から得た、キシロースと酢酸を含むストリームをカラムに供給した。
【図4】第1の弱塩基性アニオン交換カラムを介して処理した小麦わらの前処理から得た水性糖原料の12床容積を供給後の弱塩基性アニオン交換カラムの再生プロファイルを示す。再生剤としてアンモニア水(5%w/v)を用いた。
【図5】第1の弱塩基性アニオン交換カラムの伝導率、pH及び酢酸溶出プロファイルを示す。
【図6】2-ユニットアニオン交換システムを介して直接7.32床容積の原料を供給後の第1及び第2の弱塩基性アニオン交換カラムの再生プロファイルを示す。再生剤としてアンモニア水を用いて、結合した硫酸及び酢酸を有機塩として回収する。
【図7】酢酸を含む水性ストリームを1%の漏出点まで供給後の弱塩基性アニオン交換カラムの再生プロファイルを示す。再生剤として硫酸(11.5質量%)を用いた。
【図8A】単一のアニオン交換ユニット内での硫酸、酢酸及びキシロースの分離を示し、キシロース、硫酸及び酢酸を含む水性ストリームを供給後の弱塩基性アニオン交換樹脂床からのキシロースの溶出プロファイルを示す。酢酸の1%漏出点直前まで水性ストリームを供給した。
【図8B】単一のアニオン交換ユニット内での硫酸、酢酸及びキシロースの分離を示し、2回の再生段階(各再生段階がアンモニア水の添加を含む)後のアセテート、スルフェート及びアンモニウムの再生プロファイルを示す。
【図9】強塩基性アニオン交換カラムからの酢酸及びキシロースの溶出プロファイルを示す。
【図10】酢酸とキシロースを含む水性ストリームを酢酸の1%漏出点まで供給後の強塩基性アニオン交換カラムの再生プロファイルを示す。水性ストリームの供給後、カラムをまず2部分床容積の水で洗浄してから8.3質量%の水酸化ナトリウム溶液で処理した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得るための方法を提供する。さらに詳細には、本発明は、1種以上の鉱酸と、例えば、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース又はその組合せから選択される糖モノマーとを含む水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得るための方法に関する。
【0017】
以下、好ましい実施形態について説明する。
本発明の方法は、水性糖ストリームからの鉱酸及び有機酸の分離を達成するためのアニオン交換樹脂の使用を含む。これは、水性ストリーム中のアニオンの、樹脂(強塩基性アニオン交換樹脂)上のアニオンとの交換又は樹脂(弱塩基性アニオン交換樹脂)上への酸の吸着後、結合種を置換するための次の再生工程を含む。糖は樹脂に対して低親和性を有し、最初に樹脂から溶出するが、鉱酸と有機酸又はそれらのアニオンは保持される。本発明の方法は、異なる機構の分離に頼るイオン排除クロマトグラフ分離技術から区別される。イオン排除法は、標的イオン化合物が電荷斥力によって樹脂から排除されるような形態でイオン交換樹脂を使用する。排除された化合物はカラムから迅速に溶出するが、未荷電化合物は樹脂中に同化し、より緩徐にカラムから溶出する。
【0018】
水性ストリームは、リグノセルロース系原料の処理に由来しうる。代表的なリグノセルロース系原料は、(1)農業廃棄物、例えばトウモロコシ茎葉、小麦わら、大麦わら、オート麦わら、稲わら、キャノーラわら、及び大豆茎葉;(2)草、例えばスイッチグラス、ススキ、カゼグサ、及びクサヨシ;及び(3)林業廃棄物、例えばアスペンウッド及びおがくずである。これらの原料は、水性ストリーム中の、糖モノマー、例えばグルコース及びキシロースといった糖の起源である高濃度のセルロース及びヘミセルロースを含む。しかし、本発明の実施は、使用する原料によって制限されない。
本発明の実施で使用する水性糖ストリームは、鉱酸、有機酸、及び糖を含む。好ましくは、水性糖ストリームは、原料を酸加水分解又は使用する酸が鉱酸である場合は前処理に供することによって生成される。酸加水分解又は前処理法は当業者が精通しているいずれの方法でもよい。本発明の一実施形態では、0.4〜5.0の間のいずれかのpHで前処理を行って、原料中のヘミセルロースを加水分解する。例えば、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5若しくは5.0又は0.4〜5.0の間のいずれかのpHで前処理を行える。しかし、本発明の実施は、酸加水分解又は前処理の使用、或いは水性糖ストリームを生成するために使用する特有の方法に限定されない。
糖として、糖モノマー、例えば、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース又はその組合せから選択される糖モノマーが挙げられる。
鉱酸は、好ましくは酸加水分解又は前処理プロセス由来であり、水性糖ストリーム中に運ばれる。その起源と関係なく、鉱酸は、限定するものではないが、硫酸、亜硫酸、塩酸、又はリン酸から選択されうる。好ましくは、鉱酸は硫酸である。本発明で使う糖ストリームは塩酸を含みうるが、この酸は溶液中に塩化物イオンを導入するという欠点を被る。従って、特定用途では、特にシステムの冶金を塩酸の腐食作用から保護しなければらならない場合、水性糖ストリームは塩酸を含まないことが好ましいだろう。
【0019】
有機酸として、酢酸、ガラクツロン酸、ギ酸、乳酸、グルクロン酸又はその組合せが挙げられる。有機酸の群は、好ましくは酢酸を含む。酢酸は、リグノセルロース系原料の酸加水分解又は前処理によって生成される。多くのリグノセルロース系原料は、キシランにアセチル基が結合しているヘミセルロースを含む。酸加水分解又は前処理プロセスがアセチル基から酢酸を遊離させる。しかし、本発明の実施は、アセチル基の加水分解によって形成される酢酸を含む糖加水分解物ストリームの使用に限定されない。
水性糖ストリームをアニオン交換分離システムに供給する前に水性糖ストリームをカチオン交換に供してよい。カチオン交換を利用して、糖ストリーム中に存在するカリウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及び他のカチオンを除去することができる。
これらのカチオンの除去は、低い溶解度の化合物、例えば水酸化カルシウム及び硫酸カルシウムの沈殿の可能性を減らす。カチオンの除去は、その後のアニオン交換にも利益になりうる。
水性糖ストリームは、好ましくは、不溶解又は懸濁固体が実質的に無い。これは、ろ過、遠心分離、又は当業者が精通している水性ストリームから繊維状固体若しくは懸濁固体を除去するための他の方法で達成される。任意に、例えば、エバポレーションによって、又は膜などで水性糖ストリームを濃縮してよい。また、水性糖ストリームをアニオン交換分離システムに供給する前に、例えば、クロマトグラフ分離又は他の手段で水性糖ストリームから鉱酸の一部を除去することも想定される。
鉱酸は、水性糖ストリーム中に約0.5g/L〜約100g/Lの間のいずれの濃度でも存在してよい。さらに好ましい鉱酸濃度は、約1g/L〜約50g/Lの間のいずれかの濃度である。
水性糖ストリーム中の有機酸濃度は、約1g/L〜約60g/Lの間のいずれの濃度でもよい。さらに好ましい実施形態では、有機酸濃度は、約2g/L〜約50g/Lの間のいずれかの濃度である。好ましくは、水性糖ストリームは酢酸と硫酸を含む。酢酸の濃度は、硫酸より低くても高くてもよい。酢酸の濃度対硫酸の濃度の比は、約4.0:1.0未満でよい。
【0020】
水性糖ストリーム中の糖の合計濃度は、約10g/L〜約250g/Lの間のいずれの濃度でもよい。さらに好ましい実施形態では、糖の合計濃度は、約25g/L〜約100g/Lの間のいずれかの濃度である。水性糖ストリーム中のグルコースとキシロースについては、グルコース対キシロースの質量比は、0:100〜100:0の範囲、又はこの間のいずれの比でもよく、例えば、グルコース対キシロースの質量比は、0:100、5:95、10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10若しくは100:0又はこの間のいずれの比でもよい。
水性糖ストリーム中の全溶質濃度は、約20g/L程度と低くても、また約600g/L程度と高くても、或いはこれらの間のいずれの濃度範囲でもよい。例えば、全溶質濃度は約30g/L〜約400g/L、又はこれらの間のいずれの範囲でもよい。
水性ストリームは、アニオン交換で効率的に処理するため酸性pHである。非限定例では、水性ストリームをアニオン交換分離システムに供給するとき、水性ストリームは0.4〜約5.0のpH、又はこの間のいずれかのpH範囲である。このpH範囲では、pHは存在する有機酸のpKaにほぼ等しいか、又はそれ未満である。例えば、酢酸のpKaは4.75である。さらに好ましい実施形態では、水性ストリームは0.4〜約4.0のpH、又はこの間のいずれかのpH範囲である。最も好ましい実施形態では、水性ストリームは、0.4〜約3.0のpH、又はこの間のいずれかのpH範囲である。例えば、pHは、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5若しくは5.0、又はこの間のいずれのpH範囲でもよい。
水性ストリームは、好ましくは約20℃〜約90℃の間のいずれかの温度である。さらに好ましくは、温度は、約45℃〜約75℃、又は約55℃〜約70℃、又はこの間いずれかの温度である。例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85若しくは90℃、又はこの間のいずれの温度でもよい。
【0021】
水性糖ストリームは、鉱酸、有機酸及び糖以外の化合物を含んでもよい。例えば、水性糖ストリームは、限定するものではないが、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、又は硫酸ナトリウムといった他の無機化合物を含んでよい。水性糖ストリームは、限定するものではないが、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、溶解リグニン等といった他の有機化合物をも含有しうる。これらの化合物の濃度は、水性ストリーム中に存在する全溶質の約0%〜約75%、又は水性糖ストリーム中に存在する全溶質の約0%〜約50%でよい。
アニオン交換樹脂は弱塩基性アニオン交換樹脂でよい。弱塩基性アニオン交換樹脂とは、弱塩基性官能基を含むポリマー構造の樹脂を意味する。弱塩基性アニオン交換樹脂で見られる通常の弱塩基性官能基は三級アミンである。一般的にトリアルキルアミン及びピリジン等のアミンが弱塩基性アニオン交換樹脂で見られるが、他の官能基を使用しうることを理解すべきである。
これとは別に、アニオン交換樹脂は強塩基性アニオン交換樹脂である。強塩基性アニオン交換樹脂とは、強塩基性官能基を含むポリマー構造の樹脂を意味する。強塩基性アニオン交換樹脂で見られる通常の強塩基性官能基は四級アミンであるが、他の官能基を使用しうることを理解すべきである。強塩基性アニオン交換樹脂はI型又はII型(Dianion Manual of Ion Exchange Resins and Synthetic Adsorbent, Mitsubishi Chemical Corporation, 2nd edition, 1995)強塩基性アニオン交換樹脂でよい。I型強塩基性アニオン交換樹脂はII型樹脂より強い塩基性の官能基を含む。典型的に、II型樹脂は、四級アンモニウム官能基であって、4つの窒素置換基の1つがアミノエタノール基を含む四級アンモニウム官能基を含む。しかし、四級アンモニウム官能基の塩基性を低減するいずれの官能基もII型強塩基性アニオン交換樹脂に存在しうる。
【0022】
強塩基性又は弱塩基性樹脂に共通のポリマー構造は、ジビニルベンゼン架橋ポリスチレンを用いて形成されるが、当業者に既知のいずれの適切なポリマー又は架橋剤をも使用することができる。例えば、アクリルポリマー支持体を用いてアニオン交換樹脂を形成することもできる。当業者に既知の種々レベルの架橋剤を用いてポリマー骨格を形成して、ポリマー構造の多孔度を制御することもできる。
弱塩基性又は強塩基性アニオン交換樹脂はマクロ多孔性、すなわち、分離した孔を含有し、又はミクロ多孔性(ゲル樹脂)でよく、或いはこれらの両構造の要素を含有しうる。狭い範囲の粒子形状と大きさ又は広い範囲の粒子形状と大きさを含むように、弱塩基性又は強塩基性アニオン交換樹脂を調製しうる。アニオン交換樹脂の全交換容量は、該樹脂を調製するために使用した方法によって変化しうる。さらに、アニオン交換樹脂は、ポリマー構造、供給業者、ロット、合成方法、プロセスパラメーター、又は官能基によって変化しうる。この結果、圧力降下、膨潤及び収縮、保湿容量、直径、多孔度、熱安定性、物理的安定性等の特定パラメーターが異なる樹脂となる。しかし、本発明は、利用する樹脂の特有の物理的及び化学的性質によって制限されないことを理解すべきである。
弱塩基性及び強塩基性樹脂の使用は本発明の範囲内であるが、種々の理由のため強塩基性樹脂より弱塩基性樹脂が好ましい。弱塩基性樹脂は典型的に、再生を行うとき、強塩基性樹脂に比べて少ない量のアルカリを消費する。さらに、水酸化アンモニウム等の弱塩基を用いて弱塩基性樹脂を再生できるので、再生塩から鉱酸及び有機酸を回収するのに有利であろう。さらに、弱塩基性樹脂は樹脂床内の糖ストリームのpHを高いアルカリ性値に上昇させない。このような高いアルカリ性条件は、糖(例えばキシロース)の分解及び糖のイオン化(これは強塩基性アニオン交換樹脂に結合して収率を下げうる)を引き起こしうる。
【0023】
本発明の一実施形態では、本方法は、水性糖ストリームからの鉱酸と有機酸の分離を達成するための2つのアニオン交換ユニットを含む。この実施形態によれば、鉱酸又はそのアニオンと結合する樹脂床を含む第1アニオン交換ユニットに水性糖ストリームを供給する。この第1ユニットから、有機酸と糖を含む低親和性の流出ストリームを得、順次、第2アニオン交換ユニットに供給する。次に、第2アニオン交換ユニットの樹脂を水性再生剤(水でよい)で再生させて、鉱酸、鉱酸塩、又はその組合せを含む出口ストリームを得る。好ましくは、限定するものではないが、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウムといったアルカリで樹脂を再生させて鉱酸塩を生成する。鉱酸塩を回収し、或いは処理して鉱酸として回収することができる。
第2アニオン交換ユニットは、有機酸又は有機酸のアニオンと結合するためのアニオン交換樹脂を使用する。好ましくは、水性糖ストリーム中の約70%より多くの有機酸が第2ユニットに進む。すると、第2アニオン交換ユニットから得られるストリームは、限定するものではないが、糖モノマー、例えば、キシロース、グルコース、又はその組合せを含むストリームであり、本質的に有機酸及び鉱酸が無い。引き続き、水でよい水性再生剤で樹脂を再生させて、有機酸、有機酸塩、又はその組合せを含む生成物ストリームを得る。一実施形態では、限定するものではないが、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウムといったアルカリで樹脂を再生させて有機塩を生成する。次に、有機塩を回収し、又は処理して有機酸として回収する。
【0024】
典型的に垂直カラム、水平床、又はその組合せにアニオン交換樹脂を詰める。第1及び/又は第2のアニオン交換ユニットは複数の床を含んでよく、それらを平行に、又は直列に配置し、或いは直列及び平行に配置した床の組合せを含んでもよい。しかし、本発明の実施は、床の配置によって制限されない。当業者には明らかなように、どの場合も、樹脂床の容積は典型的に流速及び水性ストリーム中の酸又はアニオンの濃度に基づいて選択される。水性糖ストリームに関する研究室、又は他の実験のデータと、当業者が精通している設計原則を組み合わせて、樹脂床のサイジングを行うことができる。
鉱酸、又はそのアニオンは、存在する主要化合物のうち樹脂に対して最高の親和性を有するので、鉱酸、又はそのアニオンが樹脂に結合する。理論に拘泥されたくないが、強塩基性アニオン交換樹脂を使用する場合は鉱酸のアニオンが樹脂に結合し、弱塩基性アニオン交換樹脂を使用する場合は鉱酸が樹脂に結合するだろう。糖並びに他のほとんどの無機及び有機化合物は、樹脂に対して限られた親和性を有し、樹脂床を通過する。有機酸は、樹脂に対して中間レベルの親和性を有し、最初は樹脂に結合するが、鉱酸で置き換えられて脱着する。糖と有機酸を含む、第1アニオン交換ユニットの樹脂床からの流出ストリームを直接第2アニオン交換ユニットに供給してよく、或いは収集かつプールし、その後に第2アニオン交換ユニットに供給してもよい。
好ましくは、鉱酸が流出ストリーム中で検出されるまで水の供給が続く。これは、供給を続けたら、有意な濃度の鉱酸が樹脂床を出るであろう時点である。当業者が精通し、かつ実施例1及び2で示す、床の過負荷実験によって、鉱酸の漏出前に添加できる供給量を決定することができる。非限定例では、鉱酸が流出液中で最初に検出されるまで、第1アニオン交換ユニットの1つ以上の樹脂床に水性糖ストリームを供給する。流出液中の鉱酸の量の直接測定又は当業者に既知の他の指標、例えば、伝導率、pH又は他の手段で検出を行うことができる。鉱酸が検出されたら、供給を停止する。しかし、床を直列に配置している場合、漏出酸は、実際には、直列の最終床から検出されることが分かるだろう。任意に、すすぎ、流し出し、又は吹き飛ばすことによって、床内に停滞している液体を除去してよい。次に、適切な再生剤、例えば、限定するものではないが、水性再生剤、例えば、限定するものではないが、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムといったアルカリで樹脂床を再生させる。アルカリを有する再生剤の供給は、鉱酸の塩及びいずれの残存有機酸の塩をも生じさせる。例えば、水性ストリーム中に硫酸が存在する場合、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの添加後、アンモニウム、ナトリウム、又はカリウムの硫酸塩が生じる。硫酸塩が生じたら、それを収集し、例えば、肥料として使うために回収することができる。或いは、例えばカチオン交換によって硫酸塩を処理して硫酸を生成することができる。
【0025】
本発明は、第1アニオン交換ユニットに適用する再生剤の量又は数によって制限されない。当業者は、1以上の別個の工程で導入される1種以上の再生剤で樹脂を再生しうること、及び所望量の結合した酸又はアニオンを置き換えるために必要な再生剤の最小量を使用するのが有利であることが分かるだろう。従って、酸又はアルカリを含む水溶液は再生の結果、より濃縮されたストリームをもたらすので、酸又はアルカリを含む水溶液を再生剤として使用することが好ましい。
再生剤の濃度は約2g/L〜約250g/L、又はこの間のいずれかの濃度範囲である。結合した硫酸の場合、再生剤がアルカリのとき、高い再生剤濃度は濃縮硫酸塩を生じさせる。従って、操作条件を選択して、硫酸塩の沈殿を回避することができる。さらに好ましくは、再生剤濃度は約10g/L〜約150g/L、又はこの間のいずれかの濃度範囲である。
好ましくは、鉱物酸が樹脂床から完全に脱着されるまで、再生剤を供給する。約80%超え、好ましくは約90%超えの鉱酸が樹脂床から脱着されるまで、再生剤を供給してよい。
水性供給原料と同じ方向に再生剤をカラムに供給することができ、これは並流再生として知られる。或いは、逆流、すなわち、水性供給原料と反対方向に再生剤を供給しうる。再生後、任意に、水性ストリームの供給を再開する前にカラムを水又は他の水性ストリームですすいでよい。
【0026】
樹脂に対して最低の親和性を有するストリーム、つまり糖と有機酸を含む流出ストリームを第2アニオン交換ユニットに供給する。このストリームを任意に、第2ユニットに供給する前に他の手段で濃縮してよい。エバポレーションを利用する場合、有機酸の実質的部分が前進するようにエバポレーションを行うべきである。例えば、第1段階で供給した水性ストリーム中に存在する有機酸の少なくとも約70%、さらに好ましくは酢酸の70%より多くが第2段階の供給原料に存在する。好ましくは、少なくとも90%の有機酸を第2ユニットに供給する。さらに好ましくは、少なくとも約95%の有機酸を第2ユニットに供給する。
アニオン交換の第1ユニットの流出液のエバポレーションは本発明の範囲内であるが、このようなエバポレーション工程を行わないことが好ましい。
好ましくは、第1ユニットへの供給中の糖の少なくとも約90%が第2ユニットを通過する。さらに好ましくは、少なくとも約95%、なおさらに好ましくは約98%の糖が第2ユニットを通過する。
第1アニオン交換ユニットと同様に、第2アニオン交換ユニットは、アニオン交換樹脂を有する樹脂床を含む。第1及び第2のアニオン交換ユニットは、強塩基性又は弱塩基性アニオン交換樹脂のどちらをも使用しうる。例えば、両アニオン交換ユニットが強塩基性又は弱塩基性アニオン交換樹脂を含んでよく、或いは2つのユニットのどちらか一方が強塩基性アニオン交換樹脂を利用し、他方が弱塩基性アニオン交換樹脂を利用してよい。
【0027】
第1ユニットからの流出ストリームを第2アニオン交換ユニットに供給するにつれて、有機酸が樹脂に結合するが、樹脂に対して低親和性のを有する糖及び他の有機物は樹脂床を通過する。理論に拘泥されたくないが、強塩基性アニオン交換樹脂を使用すると、有機酸のアニオンが樹脂に結合し、弱塩基性アニオン交換樹脂を使用すると、有機酸が樹脂に結合する。第2アニオン交換ユニットからの糖ストリームを発酵又は他の処理に供給することができる。このストリームを任意に、発酵又はさらなる処理の前に、膜ろ過又は当業者に既知の他の方法で濃縮してよい。
好ましくは、第1アニオン交換ユニットからの流出ストリームを第2アニオン交換ユニットに、第2ユニットからの流出ストリーム中で有機酸が検出されるまで供給する。流出液中の有機酸の量の直接測定によって、或いは当業者に既知の他の指標、例えば、伝導率、pH又は他の手段で該検出を行うことができる。当業者に精通しており、かつ実施例1及び2に示す床過負荷実験によって、有機酸漏出前に添加できる供給量を決定する。好ましくは、一旦有機酸が検出されたら、供給を停止する。しかし、床を直列に配置している場合、漏出酸は、実際には、直列の最終床から検出されることが分かるだろう。床を平行に配置している場合、漏出酸は、典型的に各カラムからの流出液中で検出される。任意に、すすぎ、流し出し、又は吹き飛ばすことによって、床内に停滞している液体を除去してよい。
次に、1種以上の適切な再生剤(いずれの水性再生剤でもよく、水でよい)で樹脂床を再生させて、有機酸、有機塩、又はその組合せを含むストリームを得る。再生剤がアルカリの場合、再生剤は、好ましくは水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムである。酢酸の場合、再生剤として水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを使用すると、それらのそれぞれの酢酸塩、すなわち酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、又は酢酸カリウムが生じる。次に該酢酸塩を回収する。再生剤の濃度は、約2g/L〜約250g/L、又はこの間のいずれの濃度範囲でもよい。さらに好ましくは、再生剤濃度は、約10g/L〜約150g/L、又はこの間のいずれの濃度範囲でもよい。
【0028】
第1アニオン交換ユニットと同様、個別工程で1以上の再生剤を用いて第2アニオン交換ユニットを再生させることができる。いずれの再生剤も利用できるが、酸又はアルカリを含む水溶液を用いて、所望量の結合酸又はアニオンを置き換えるのに必要な再生剤の量を最小限にするのが有利である。
非限定例では、有機酸が完全又は実質的に樹脂床から脱着するまで再生剤を供給する。有機酸の約80%より多くが樹脂床から脱着されるまで、好ましくは、有機酸の約90%より多くが樹脂床から脱着されるまで、再生剤を供給してよい。
再生中に酢酸塩が生成される場合、この塩を回収するか又はさらに処理する。この塩を酢酸として回収してもよい。好ましくは不揮発性酸、例えば硫酸で約4.0未満のpHに調整後、酢酸塩を蒸留することによって、酢酸塩から酢酸を回収することができる。一実施形態では、不揮発性酸でpHを約3.5、3.0、2.5、2.0又は1.5未満に調整する。或いは、液-液抽出又は空気若しくは蒸気による酢酸のストリッピングによって酢酸塩溶液から酢酸を回収しうる。
【0029】
擬似移動床式(Simulated Moving Bed)(SMB)システムを用いて本発明の方法の方法を実施できる。用語「SMBシステム」とは、固体固定相の流れへの対向流を動かす液体移動相の流れをシミュレートするいずれの連続的なクロマトグラフ技術をも意味する。すなわち、SMBシステムは、液体の流れの方向と反対方向に樹脂床の動きをシミュレートする。典型的に、SMBシステムは、2以上の入口ストリームと2以上の出口ストリームを有する1組の固定床を含む。床全体のいくらかのフラクションによって4以上の流れ位置を周期的にシフトさせることによって、シミュレート移動を遂行しうる。SMBシステムの操作の詳細は、読者に参考文献への道を教え、かつその内容を参照によって本願明細書に引用したものとするWO 2006/007691(Foody及びTolan)で提供されている。改良型SMB(「ISMB」)システム(例えばEurodia Industrie S.A., Wissous, France; Applexion S.A., Epone, France;又はAmalgamated Research Inc., Twin Falls, Idahoから入手可能)をも本発明の実施で使用しうる。
【0030】
2-ユニットアニオン交換分離システムの使用について述べたが、本発明の方法は、二者択一的に、単一のアニオン交換ユニットで分離を行う工程を含みうる。2-ユニットシステムの使用と同様、この実施形態は、糖、有機酸及び鉱酸の、アニオン交換樹脂に対する差次的親和性に頼る。水性原料を樹脂床に通し、糖とほとんどの他の無機及び有機化合物が樹脂床を通過する。有機酸又は有機酸のアニオンは樹脂に対して中間レベルの親和性を有するので、それらが最初に樹脂に結合する。存在する主要化合物のうち樹脂に対して最高の親和性を有する、鉱酸又は鉱酸のアニオンは樹脂に結合し、有機酸を置き換え、引き続き該有機酸は樹脂床の別の領域に結合する。好ましくは、有機酸が生成物ストリーム中で最初に検出されるまで、単一アニオン交換ユニットに原料を通す。これは、供給を続けたら、有意な濃度の有機酸が樹脂床を出るであろう時点である。当業者が精通しており、かつ実施例で述べるような床の過負荷実験によって、有機酸の漏出前に添加できる供給量を決定することができる。任意に、床内に停滞している液体をすすぎ、流し出し、又は吹き出すことによって除去してよい。
【0031】
有機酸と鉱酸(又はこれらの酸のアニオン)の両方で樹脂床を充填後、樹脂床を再生させる。2-アニオン交換ユニットを利用する方法と同様、単一のアニオン交換ユニットを使用する場合、再生を行って2つの別個の出口ストリームを生成する。1つのストリームは有機酸又はその塩を含み、1つのストリームは鉱酸、又はその塩を含む。しかし、この実施形態では、両ストリームが、以前に記載したように別個のユニットではなく、同じアニオン交換ユニットから生じる。
水でよい、水性再生剤で樹脂床を再生させることによって、有機酸又はその塩を含む生成物ストリームを得ることができる。水性再生剤は、有機酸又は有機酸のアニオンを優先的に脱着する。次いで任意に、床内に停滞している液体をすすぎ、流し出し、又は吹き出すことによって除去してよい。引き続き、結合した鉱酸又は鉱酸のアニオンを含むアニオン交換ユニットの樹脂床を、水でよいさらなる水性再生剤で再生させて、鉱酸又は鉱物塩を含む出口ストリームを得る。
単一のアニオン交換ユニット上で分離するために利用する好ましい条件及びプロセス設備は、2つの分離ユニットを利用するアニオン交換システムに関して述べた通りである。2-ユニット法と同様、所望量の結合酸又はアニオンを置き換えるのに必要な再生剤の量を最小限にするため、酸又はアルカリから再生剤を選択することが好ましい。さらに、各再生段階で異なる再生剤を使用しうることが分かるだろう。例えば、樹脂を酸で再生後、アルカリを添加してよい。或いは、同じ再生剤を用いて、有機酸、又はその塩を含有する生成物ストリームと、鉱酸、又はその塩を含む出口ストリームを両方得る。樹脂床は典型的に垂直カラム、水平床、又はその組合せであり、アニオン交換樹脂で満たされる。
本方法は生成物ストリームと出口ストリームの両方を単一のアニオン交換ユニットから得る工程を含むが、本システムは、さらに平行に配置した複数のユニットを含んでよく、各ユニットを有機酸及び鉱酸(又はそれらのアニオン)で充填し、それぞれ引き続き再生させて、別個の生成物ストリームと出口ストリームを得ることができる。直列の複数の樹脂床を含む単一のユニットで本発明を実施してもよい。
【実施例1】
【0032】
〔2-ユニット交換システムの第1ユニットを用いるキシロースからの硫酸の分離〕
Foody(その内容を参照によって本願明細書に引用したものとする米国特許第4,461,648号)に記載されている通りに蒸気及び硫酸の前処理を利用することによって、キシロース、硫酸及び酢酸を含む水性ストリームを小麦わらから調製した。前処理した小麦わらを水で洗浄し、結果として生じた糖ストリームは、表1に示す成分を含んだ。ストリームは1.2のpHを有した。糖ストリームは、他の有機酸、ヘキソース及び他のペントース糖をも含んだ。Chromeleon(登録商標)ソフトウェア(バージョン6.6)、IonPac(登録商標)AS11-HCカラム(4×250mm)、AG11-HCガードカラム(4×50mm)、伝導率検出器及びアニオン自己再生懸濁液ウルトラ-IIシステム(ASRS-Ultra II)を備えたDionex ICS-2500 HPLCを用いて硫酸と酢酸の濃度を測定した。この方法は、1〜15分まで均一溶媒の1mM NaOH移動相、15〜21分まで60mM NaOH勾配移動相及び最後に25〜30分まで均一溶媒の60mM NaOH移動相を用いた。上記HPLCシステムを用い、CarboPacTM PA1カラム(4×250mm)及びガード(4×50mm)カラムを利用してパルス電流測定検出でキシロースを測定した。この方法は、14分間、10mM NaOHの均一溶媒移動相、14.1〜16.7分まで均一溶媒の250mM NaOH移動相後、16.8〜20分まで均一溶媒の10mM NaOH移動相を用いた。
【0033】
表1:2-ユニットアニオン交換システムの第1ユニットへの水性ストリーム供給原料
【0034】
この水性ストリームをアニオン交換システムの第1ユニットに供給した。この第1ユニットは弱塩基性アニオン交換樹脂、DOWEX MARATHON WBA三級アミン官能基とスチレン-ジビニルベンゼンマクロ多孔性マトリックスを含む)を含んだ。この樹脂の平均粒径は525ミクロンである。樹脂を、まず85%メタノールに15分間浸漬してから水ですすいで調製した。最初に樹脂を使用した後は、この湿式手順は必要でなく、全ての弱塩基性アニオン交換樹脂では必要ない。100mLの調製樹脂をd=1.2cmのガラスカラム内で使用した。カラムを通じてストリームを5.0mL/分の速度で供給し、カラム出口で23mLのサンプルを収集した。第1段階の弱塩基性アニオン交換カラムには周囲温度で流した。
カラムからのキシロース、酢酸及び硫酸の溶出プロファイルを図1に示す。ボイドボリュームがカラムから出たほぼ直後に、床からキシロースが溶出した。実験の開始時にはカラム内にボイドボリューム液(38mL)が存在し、供給原料によって押し出される。この点を超えると、流出液中に供給原料濃度の1.4倍までの濃度の酢酸が検出された。
硫酸は、樹脂に対して最も高い親和性を有し、5.9床容積が供給されるまで流出液中で検出されなかった。硫酸について、樹脂の1%の漏出点容量(流出液が、供給ストリーム中の元の硫酸濃度の1%を有する点)を計算すると、0.75当量の硫酸/Lの樹脂(式1)だった。供給を8.7床容積まで続けて、硫酸について十分な溶出プロファイルを得た。流出液を第2ユニットに供給する本発明の方法では、硫酸が検出されたとき供給を停止するだろう。供給を停止する点は、1%の漏出点より大きくても小さくてもよい。用いたMARATHON WBA樹脂の理論容量は1.3当量/Lの樹脂である。
式1:(5.9床容積)(0.1Lの床容積)(12.5g/Lの硫酸)/(98g/当量)(0.1Lの樹脂)=0.75当量/リットル
【0035】
8.7床容積の供給原料ストリームの供給後、カラムを1床容積の水で洗浄した。次に5w/v%のアンモニア水を5mL/分の速度で供給して樹脂を再生させた。使用した塩基の量は、カラムに結合した硫酸当量の量に対して1.2当量だった。塩基を供給後、水を用いてカラムから鉱物塩を洗い流した。図2は、カラムに供給した合計液体の部分床容積の関数として、得られたスルフェートの量をg/Lで示す。1.83床容積のアンモニア水溶液と洗浄水を供給した後、結合したスルフェートをカラムから実質的に除去した。表2は、出口ストリームのサブポーションがプールされた時に得られる結合スルフェートの濃度と収率を示す。このプールは、示される初期(fbvから)及び最終(fbvへ)出口ストリームの部分床容積の間で収集される総容積で構成される。出口ストリームは、元のストリーム中に(硫酸として)存在するより高い濃度のスルフェート(硫酸アンモニウムとして)を含んだ。
【0036】
表2:出口ストリーム中のスルフェートの濃度と収率
【実施例2】
【0037】
〔2-ユニットアニオン交換システムの第2ユニットでのキシロースから酢酸の分離〕
米国特許第4,461,648号でFoodyによって記載されている通りに蒸気及び硫酸前処理を利用して、キシロース、硫酸及び酢酸を含む水性ストリームを小麦わらから生成し、前処理した小麦わらを水で洗浄して糖ストリームを生じさせてから、実施例1で述べた通りの2-ユニットアニオン交換分離システムの第1ユニットに供給した。その結果、第1ユニットのプール流出液から得られた水性糖ストリームは、下表3で報告する成分を含んだ。糖ストリームは、他の有機酸、ヘキソース及び他のペントース糖をも含んだ。このストリームのpHは3.5だった。この糖ストリームを、実施例1と同じ樹脂を含有する2-ユニットシステムの第2ユニットに供給した。このカラムは50mLの床容積と1.2cmの直径を有した。第2の弱塩基性アニオン交換カラムには周囲温度で流した。
【0038】
表3:2-ユニットアニオン交換システムの第2ユニットへの供給原料
*濃度は酢酸として報告し、供給原料中の酢酸とアセテートの総濃度に相当する。
【0039】
アニオン交換システムの第2ユニットからの溶出プロファイルを図3に示す。カラムに酢酸が結合し、約5.9床容積の糖ストリームを供給したとき、酢酸について1%漏出点に達した。5.9床容積までのカラムからの流出液はキシロースを含み、かつ実質的に酢酸が無かった。酢酸について樹脂の1%漏出点容量を計算すると1リットルの樹脂当たり0.65当量の酢酸だった(式2)。典型的に、本発明の方法では、糖を含む第2ユニットからの生成物ストリームを回収又はさらに処理する場合、流出ストリーム中で最初に酢酸が検出された時点でカラムへの供給を停止するだろう。供給を停止する時点は1%の漏出点より大きくても小さくてもよい。使用したMarathon WBA樹脂の理論容量は1.3当量/Lの樹脂である。
式2:(6.57g/Lの酢酸)(5.9床容積)(0.05L/床容積)/60g/当量)(0.05Lの床容積)=0.65当量/1Lの樹脂
【0040】
5%w/vのアンモニア水を5mL/分の速度で添加して樹脂を再生させた。用いた塩基の量は、カラムに結合した酢酸の当量の量に対して1.2当量だった。塩基を供給後、水を用いてカラムから塩を洗い流した。図4は、カラムに供給した合計液体の部分床容積の関数として、得られたアセテートの量をg/Lで示す。1.9床容積の水酸化アンモニウム溶液と洗浄水を供給した後、カラムからアセテートを実質的に除去した。図4は、出口ストリームのサブポーションがプールされた時に得られるアセテートの濃度と収率を示す。再生ストリームは、元のストリーム中の酢酸とアセテートの合計濃度より高い濃度でアセテート(酢酸アンモニウムとして)を含有した。
【0041】
表4:出口ストリーム中のアセテートの濃度と収率
【実施例3】
【0042】
〔2-ユニットアニオン交換システムにおけるキシロースから硫酸と酢酸の分離〕
Foody(その内容を参照によって本願明細書に引用したものとする米国特許第4,461,648号)によって記載されている通りに蒸気及び硫酸前処理を利用して、キシロース、硫酸及び酢酸を含む水性糖ストリームを小麦わらから作製した。前処理した小麦わらを水で洗浄した結果生じた糖ストリームは表5に示す成分を含んだ。糖ストリームは他の有機酸、ヘキソース及び他のペントース糖を含んだ。ストリームは1.2のpHを有した。
【0043】
表5:2-ユニットアニオン交換システムへの供給原料
【0044】
実施例1で述べた通りに調製した2-ユニットアニオン交換システムの第1ユニットにストリームを供給した。第1ユニットからの流出液を分別収集又はプールせずに、第1ユニットからの流出液を直接第2ユニット上に供給した。実施例2で述べた通りに第2ユニットを調製した。カラムを介して5.0mL/分の速度でストリームを供給し、第2カラム出口で10〜13mLのサンプルを収集した。第1カラム流出液から小アリコートを取り出して伝導率及びpHをモニターし、かつキシロース、酢酸及び硫酸を測定した。第1カラム流出液のモニタリングの結果を図5に示す。酢酸が流出ストリームに入ると、伝導率がほぼ1000μSまで上昇し、次に硫酸が流出ストリームに入り始めると、再び伝導率が上昇した。酢酸が流出ストリームに入るにつれてpHが下がり、次に硫酸が流出ストリームに入り始めるとさらにpHが下がった。2回目の伝導率の上昇が検出されるまで供給を続けた。これは、第1カラムを介して3.28床容積の供給原料が通過した後に起こった。2-ユニットアニオン交換システム後、糖ストリームは硫酸と酢酸が実質的に無かった。第2カラム流出液から収集したフラクションは、表6で提供するようにキシロース、酢酸及び硫酸を含んだ。表6に示されるように、上記HPLC手順を用いた検出限界を超える(0.05未満の)酢酸は検出できなかった。
【0045】
表6:第2カラムからのフラクションの組成
【0046】
3.28床容積の供給ストリーム(第1カラムに基づく)の供給後、カラムを分離し、1床容積の水で洗浄した。次に、7%w/vのアンモニア水を5mL/分の速度で供給して各カラムを再生させた。図6は、2.6過剰当量のアンモニア水を使用すると、大部分(>97%)の結合酢酸を酢酸アンモニウムとして第2カラムから回収できることを示す(使用したアンモニア水の当量数を樹脂の理論容量(MATRATHON WBAでは、容量=1.3当量/Lの樹脂)で除して過剰当量を計算する)。3.0過剰当量のアンモニア水を使用すると、大部分(>97%)の結合硫酸を硫酸アンモニウムとして第1カラムから回収できる。
【実施例4】
【0047】
〔水性再生剤による結合酢酸の再生〕
脱イオン水で氷酢酸を希釈することによって、酢酸を含む水性ストリームを調製した。水性ストリームは11.64g/Lの酢酸を含んだ。弱塩基性アニオン交換樹脂、Purolite(登録商標)A103Sを含む樹脂床に水性ストリームを供給した。Purolite(登録商標)A103Sは三級アミン官能基とスチレン-ジビニルベンゼンマクロ多孔性ポリマーマトリックスを含む。この樹脂の典型的な粒径は650〜900ミクロンである。100mLの調製樹脂をd=1.2cmのガラスカラム内で使用した。樹脂をまず85%のメタノールに15分間浸漬し、水ですすぎ、3床容積の7%w/vアンモニア水で調整後、水ですすいで調製した。アンモニア又はさらに強い塩基、例えば水酸化ナトリウムによる前洗浄は、弱塩基性樹脂中の全ての三級アミン官能基を確実に利用できるようにして、主要な三級アミン基の官能性以外の官能基上の、弱塩基性アニオン交換樹脂に結合しうる小割合のアニオンを除去する。
酢酸を含む水性ストリームを、酢酸の1%漏出点(1.21当量/Lの樹脂)直前まで5.0mL/分の速度で供給した。酢酸についてのこの樹脂の1%漏出点容量は以前に1.24当量/Lと測定されている。脱イオン水ですすぐことによって、樹脂床内に停滞している液体を除去した。この実施例では、1床容積の洗浄水を用いた。すすいだ後、別の11.5質量%の硫酸溶液を用いて樹脂床から結合酢酸を脱着した。分析のため、酢酸を含む生成物ストリームを分別収集した。図7は、カラムに供給した合計再生液体の部分床容積の関数として、得られた酢酸の量をg/Lで示す。表7は、出口ストリームのサブポーションがプールされた時に得られる結合酢酸の濃度と収率を示す。生成物ストリームは、元の供給ストリーム中の濃度より高い濃度で酢酸を含んだ。樹脂に結合した鉱酸を、実施例1及び3で概要を述べたように、例えば、アンモニア水のようなさらなる水性再生剤を用いて置き換えることができる。
【0048】
表7:出口ストリーム中の酢酸の濃度と収率
【実施例5】
【0049】
〔単一のアニオン交換ユニットにおける硫酸と酢酸の分離〕
キシロース、硫酸、及び酢酸を含む水性ストリームを純粋な化学薬品から、該化学薬品を脱イオン水に溶解させることによって調製した。
【0050】
表8:単一のアニオン交換ユニットへの供給原料
【0051】
弱塩基性アニオン交換樹脂Dowex Marathon WBAを含む樹脂床に水性ストリームを供給した。100mLの調製樹脂をd=1.2cmのガラスカラム内で用いた。樹脂をまず5〜10床容積の7%w/vアンモニア水で前処理後、水ですすいで調製した。
酢酸の1%漏出点(1.03当量/Lの樹脂)直前まで、水性ストリームを6〜7mL/分の速度で供給した。樹脂内に停滞している液体を脱イオン水ですすいで除去した。この実施例では、1床容積の水を用いた。すすいだ後、別の9.1mLパルスの7%のアンモニア水を床のトップに添加し、次いで「ウォータープッシュ(water push)」後、1床容積の水をカラムに通して洗浄した。このアンモニア水の量は、酢酸を完全に遊離させるには十分であり、かつ硫酸の完全な遊離には不十分である。この後、追加床容積の水を加えて、再生中に床内に停滞した全ての液体を確実に溶出させた。最後に、1全床容積の7%アンモニア水を用いて第2の再生工程を行った。この過剰量のアンモニア水は、硫酸の完全な遊離に十分だった。全ての供給、洗浄、及び再生工程中の樹脂流出液を分析用に分別収集した。これらのフラクションをスルフェート、アンモニウム、アセテート、及び/又はキシロース含量について分析した。
キシロースの溶出プロファイルを図8Aに示す。キシロースは、ボイドボリュームがカラムを出たほとんど直後に床から溶出し、かつ約2〜5の部分床容積の間のほぼその供給原料濃度で溶出する。供給を停止したすぐ後に、第1の水洗でいずれの残存キシロースをも完全に除去する。
【0052】
酢酸と硫酸の再生プロファイルを図8Bに示す。最初のアンモニアアリコートをカラムに供給してすぐ後に、アセテートとアンモニウムが同時にカラムから溶出し、約6.5床容積で開始する。これは、酢酸アンモニウムの形成を示唆しており、別個のフラクションで収集できる。ウォータープッシュの間に全ての酢酸アンモニウムを収集する。約1:1のモル比でアンモニウムとアセテートが溶出し、酢酸アンモニウムの形成を確証する。第1の再生工程中に、カラムからほんの少しの硫酸が除去される。
アンモニア水で2回目に床を再生してすぐ後に、スルフェートとアンモニウムが同時に溶出し、約8.5床容積で開始する。これは、硫酸アンモニウムの形成を示唆しており、別個のフラクションで収集できる。この2回目の再生工程中に全てのスルフェートを硫酸アンモニウムとして収集することができる。約2:1のモル比でアンモニウムとスルフェートが溶出し、硫酸アンモニウムの形成を確証する。
【実施例6】
【0053】
〔強塩基性アニオン交換樹脂を含む2-ユニットアニオン交換システムの第2ユニットにおけるキシロースから酢酸の分離〕
純粋な化学薬品を脱イオン水に溶解させることによって、キシロースと酢酸を含む水性ストリームを該化学薬品から調製した(表9)。
【0054】
表9:2-ユニットアニオン交換システムの第2ユニットへの供給原料
【0055】
強塩基性アニオン交換樹脂LEWATIT MonoPlusTM MP500を含むアニオン交換システムの第2ユニットに水性ストリームを供給した。この樹脂は四級アミン官能基とスチレン-ジビニルベンゼンマクロ多孔性マトリックスを含む。該樹脂の平均粒径は600ミクロンである。d=1.2cmのガラスカラム内で100mLの調製樹脂を使用した。樹脂をまず水ですすぎ、2Lの8.3質量%の水酸化ナトリウムで5mL/分にて調整して、確実に全ての四級アミン官能基が水酸化物形態になるようにした。この樹脂は、製造業者からCl-形態で供給される。
カラムが完全にアセテートイオンで飽和するまで、水性ストリームを5ml/分の速度で供給した。この飽和は0.99当量/Lの樹脂で起こった。図9はキシロースと酢酸の溶出プロファイルを示す。キシロースの1%漏出は、2だけの部分床容積後に起こり、3だけの部分床容積後のほぼ供給原料濃度でキシロースが溶出する。3〜8.33の部分床容積で、キシロースが溶出するが、アセテートイオンは樹脂で保持される。酢酸の1%漏出は、8.33の部分床容積(0.89当量/Lの樹脂)の水性ストリームを供給した後に起こる。
【0056】
実施例6で上述した通りに100mLのLEWATIT MonoPlusTM MP500樹脂を含む第2カラムを調製した。1%の酢酸漏出点まで、上表9で示した水性供給原料ストリームをカラムに供給した。樹脂内に停滞している液体を脱イオン水ですすいで除去した。この実施例では、2床容積の水を用いた。リンス後、別の8.3質量%の水酸化ナトリウム溶液を用いてカラムから結合アセテートを回収した。アセテートを含む出口ストリームを分析用に分別収集した。図10は、カラムに供給したリンス液と再生液の合計の部分床容積の関数として、得られたキシロースとアセテートの量をg/Lで示す。最初の水リンスでは、ボイド液(最初〜38mL又は0.38fbv)は、保持されないいくらかのキシロースを含む。小量(〜14%)の非常に弱く結合しているキシロースが、カラムを通じて供給される最初の1.2fbvのリンス水で溶出する。表10は、出口ストリームのサブポーションがプールされた時に得られる結合アセテートの濃度と収率を示す。出口ストリームは、元の供給原料ストリーム中より高い濃度でアセテートを含んだ。
【0057】
表10:強塩基性アニオン交換樹脂を含むアニオン交換システムのユニット2からの出口ストリーム内のアセテートの濃度と収率
【0058】
全ての引用文献を参照によって本願明細書に組み込んだものとする。
本発明を1以上の実施形態について述べた。しかし、当業者には、特許請求の範囲で定義される通りの本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変更及び修正を為しうることが明白だろう。
【技術分野】
【0001】
〔関連出願に対する相互参照〕
この出願は、2006年8月18日提出の米国仮特許出願第60/822,783号に対する優先権、及び該出願の利益を主張する。これにより、該出願の内容全体を参照によって本願明細書に引用したものとする。
〔発明の分野〕
本発明は、水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得る方法を提供する。さらに詳細には、本発明は、1種以上の鉱酸と糖を含む水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
〔関連技術〕
現在、トウモロコシデンプン、サトウキビ及びテンサイ等の原料から燃料エタノールを生産している。しかし、これらの穀物の生産に適したほとんどの農地がヒトの食物源として既に使用されているので、これらの起源からエタノールを生産する潜在力には限界がある。さらに、これらの食物源からのエタノールの生産は、常法で使用される化石燃料が二酸化炭素及び他の副生物を生成することから、環境に負の影響を及ぼす。
近年、セルロース含有原料、例えば農業廃棄物、草、及び林業廃棄物からのエタノールの生産が多くの注目を集めいている。この理由は、これらの原料が広く入手可能かつ安価であり、エタノール生産のためのそれらの使用は、リグノセルロース系廃棄物の焼却又は埋立て処理の代替法をもたらすことである。さらに、セルロース変換の副生物であるリグニンを燃料として用いて、化石燃料の代わりにプロセスを作動させることができる。いくつかの研究は、全体的な生産及び消費サイクルを考慮すると、セルロースから生産されたエタノールの使用は、ほぼゼロの温室効果ガスをもたらすと推論した。
エタノール生産のために最も有望なリグノセルロース系原料として、(1)農業廃棄物、例えばトウモロコシ茎葉、小麦わら、大麦わら、オート麦わら、稲わら、及び大豆茎葉;(2)草、例えばスイッチグラス、ススキ(miscanthus)、カゼグサ(cord grass)、及びクサヨシ(reed canary grass);及び(3)林業廃棄物、例えばアスペンウッド(aspen wood)及びおがくずが挙げられる。
リグノセルロース系原料の3つの主要成分は、ほとんどの重要な原料の30%〜50%を構成するセルロース;ほとんどの原料の15%〜35%を構成するヘミセルロース;及びほとんどの原料の15%から30%を構成するリグニンである。セルロースとヘミセルロースは主に炭水化物で構成され、発酵してエタノールになる可能性のある糖の起源である。リグニンはフェニルプロパンであり、エタノールに変換しない。
セルロースは、β-1,4結合を有するグルコースのポリマーであり、この構造は、問題の原料に共通である。ヘミセルロースは、さらに複雑な構造であり、原料間で変化する。問題の原料では、ヘミセルロースは典型的にβ-1,4結合を有するキシロースの骨格ポリマーと、α-1,3結合を有する1〜5個のアラビノース単位の側鎖、又はアセチル成分、又は他の有機酸成分、例えばグルクロニル基とから成る。
【0003】
リグノセルロース系原料をエタノールに変換するための第1のプロセス工程は、繊維状物質を分解することを含む。2つの主要プロセスは、酸処理の単工程を用いる原料の加水分解を含む酸加水分解と、酸処理後にセルラーゼ酵素による加水分解を含む酵素加水分解である。
酸加水分解プロセスでは、原料を蒸気と鉱酸、例えば硫酸、塩酸、又はリン酸に供する。温度、酸濃度及び加水分解の持続時間は、セルロースとヘミセルロースをそのモノマー成分に加水分解するのに十分な温度、濃度及び時間である。モノマー成分は、セルロース由来のグルコース、並びにヘミセルロース由来のキシロース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、酢酸、ガラクツロン酸、及びグルクロン酸である。このプロセスでは、硫酸が最も一般的な鉱酸である。硫酸を濃縮し(25〜80%w/w)、又は希釈(3〜8%w/w)することができる。結果の水性スラリーは、主にリグニンである未加水分解繊維、並びにグルコース、キシロース、有機酸(主に酢酸であるが、グルクロン酸、ギ酸、乳酸及びガラクツロン酸をも含む)、及び鉱酸の水溶液を含有する。水溶液を繊維状固体から分離して、糖加水分解物ストリームを生成する。
【0004】
酵素加水分解プロセスでは、酸の前処理工程の蒸気温度、鉱酸(典型的に硫酸)濃度及び処理時間を選択して、酸加水分解プロセスより穏やかにする。酸加水分解プロセスと同様に、ヘミセルロースをキシロース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、酢酸、グルクロン酸、ギ酸及びガラクツロン酸に加水分解する。しかし、より穏やかな前処理は大部分のセルロースを加水分解せず、むしろ繊維状原料が泥状テクスチャーに変化するので、セルロースの表面積を増やす。そして、セルラーゼ酵素を利用する次工程で、前処理したセルロースをグルコースに加水分解する。酵素の添加前に、酸性原料のpHを酵素加水分解反応に適した値に調整する。典型的に、この工程は、セルラーゼに最適なpH範囲である約4〜約6のpHまでアルカリを添加するが、好アルカリ性セルラーゼを使用する場合、pHがさらに高くてよい。
あるタイプの前処理プロセスでは、蒸気によって生じた圧力が爆発的減圧で急速に下がる。これは蒸気爆発として知られる。Foody(米国特許第4,461,648号)は、蒸気爆発前処理で使用する設備と条件を開示する。20年間、0.4〜2.0のpHで添加される硫酸による蒸気爆発が標準的な前処理プロセスだった。このプロセスは均一な前処理材料をもたらし、かつセルロースを加水分解するために他の前処理プロセスより少ないセルラーゼ酵素しか必要としない。
酸加水分解又は酵素加水分解のどちらを行うかに関係なく、結果として生じる水性加水分解物ストリームは、グルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、並びに有機酸、例えば酢酸、グルクロン酸、ギ酸及びガラクツロン酸並びに鉱酸、例えば硫酸を含有すると思われる。しかし、鉱酸及び有機酸の塩が存在しうること、かつpHを高くすると該塩形態中のこれらの酸のフラクションが増えることが分かるだろう。このストリーム中のグルコースは容易に発酵させ、通常の酵母でエタノールに、又は微生物でブタノールにすることができる。組換え酵母(米国特許第5,789,210号(Ho et al.)及びWO 03/095627(Boles and Becker)参照)又は微生物によってペントース糖を発酵させてエタノールにすることができる。これとは別に、化学的、微生物的又は酵素的手段を利用する他の高価値製品の生産用の出発原料としてペントース糖を使用することができ、或いはペントース糖を簡単に回収することができる。例えば、キシロースの発酵又は水素添加によってキシリトールを生産でき、或いはキシロースを簡単に回収することができる。
【0005】
加水分解物ストリーム中の有機酸及び無機酸、又は対応する塩の存在は、グルコース又は他の糖をエタノール又は他の高価値製品に変換するためのプロセスの効率を下げる。特に、酵素加水分解又は発酵(両方とも中程度のpH値、例えば約4.0〜約6.0のpH値で起こる)前に行われるいずれの中和の際にも、これらの化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、又は水酸化カリウム等のアルカリを消費するだろう。さらに、鉱酸と有機酸、及びそれらの塩は、酵母、微生物並びに、より少程度に、セルラーゼ酵素に対して阻害性でありうる。このようないずれの阻害も、発酵若しくは酵素加水分解を行うために必要な時間を長くし、必要な酵母若しくは酵素触媒の量を増やし、及び/又は最終収率を下げることによって、発酵及び酵素加水分解操作の効率を低減しうる。従って、加水分解物からこれらの化合物を除去してクリーンな糖ストリームを生成することが望ましいだろう。さらに、環境によっては、加水分解以外から得られた糖ストリームからこれらの化合物を除去することも有利だろう。
【0006】
Pfeiffer(米国特許第4,102,705号)は、二段階イオン交換プロセスを利用することによって、酢酸及び硫酸、塩酸、若しくは硝酸という鉱酸の除去によるキシロースストリームの脱酸を開示している。Pfeifferは、第1のアニオン交換系に水性ストリームを供給して鉱酸と結合させて、キシロースと酢酸を通過させる。樹脂を水酸化ナトリウムで再生させることによって、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、又は硝酸ナトリウム塩を生成する。キシロースと酢酸を含有するストリームをエバポレートして90%の酢酸を除去する。その結果の、酢酸が残存するキシロースストリームを、該酢酸に結合して脱酸キシロースストリームを通過させる第2のイオン交換系に供する。イオン交換樹脂を水酸化ナトリウムで再生させて酢酸ナトリウム塩を生成する。
Pfeifferが教示したエバポレーションは、水性ストリームから90%の酢酸を除去するため非常に大規模だろう。酢酸は水より揮発性が低いので、このエバポレーションは、水蒸気をほぼ乾固するまで脱水するだろう。該エバポレーションを行うことは、沈殿固体の存在がスケールの沈着及び熱交換表面の汚損につながるので非常に困難である。
【0007】
Wooleyらは(In Lignocellulosic Biomass to Ethanol Process Design and Economics Utilizing Co-Current Dilute Acid Prehydrolysis and Enzyme Hydrolysis Current and Future Scenarios, (1999) Technical Report, National Renewable Energy Laboratory pp. 16-17)、連続的なイオン交換分離ユニットを利用することによって、糖加水分解物ストリームから88%の酢酸と100%の硫酸を除去することを報告している。イオン交換媒体は弱塩基性アニオン交換樹脂であり、該樹脂をアンモニアで再生させる。酢酸と硫酸は、該ユニットから同一ストリーム内で排出され、廃水処理ユニット内で処分される。
WO 2006/007691(Foody及びTolan)は、糖の発酵前の糖ストリームから酢酸アンモニウム及び硫酸アンモニウム塩を分離するため、5.0〜10.0のpHでのイオン排除クロマトグラフィーの使用を開示する。この分離方法は、アンモニウム形態でカチオン交換樹脂を使用することに頼る。
Wooleyらは(Ind. Eng. Chem. Res., 1998, 37:3699-3709)、糖加水分解物ストリームから酢酸及び硫酸を分離するため、ヒドロニウム形態でカチオン交換樹脂を利用するイオン排除クロマトグラフィーの使用を開示する。このプロセスでは、まず、硫酸は樹脂から排除されて樹脂を通過し、非イオン性の糖は樹脂を通ってさらにゆっくり移動する。供給ストリームは3.0以下のpHであり、その結果のプロセスがストリームを硫酸、糖、及び酢酸のストリームに分離する。しかし、このプロセスの3つの生成物ストリームの制御と回収は困難かつ費用がかかるだろう。
Andersonらは(Ind. Eng. Chem., 1955, 47:1620-1623)、水溶性有機材料から強い鉱酸を分離する手段として強塩基性アニオン交換樹脂を使用することを開示する。このプロセスでは、まず強塩基性アニオン交換樹脂を硫酸塩形態に変換する。樹脂床によって該鉱酸が保持され、水溶性有機材料は樹脂を通過し、結合しない。この方法は、硫酸及び塩酸などの強酸を結合させて回収するのに有用であり、水溶性有機材料と樹脂床との間に有意な相互作用がないことに頼る。樹脂の硫酸塩形態が利用できる限り、鉱酸が樹脂と結合するだろう。しかし、このプロセスは、水性糖ストリームからの有機酸又はその塩形態の分離をもたらさない。
Barrierらは(Integrated Fuel Alcohol Production Systems for Agricultural Feedstocks, Phase III, Quarterly Technical Report for the Period April-June 1995. Submitted by Tennessee Valley Authority Office of Agricultural and Chemical Development, TVA Contract No. TV-540881, 1985)、加水分解ストリームから硫酸を回収するため、アニオン交換樹脂、例えば弱塩基性アニオン交換樹脂を使用することを開示する。この方法は硫酸の回収には有用であるが、混合型糖-有機酸ストリームをもたらす。混合型糖-有機酸ストリームを直接、酵母発酵に送ってエタノールを生産する。腐食剤を添加して発酵pHを調整し、酵母媒体成分をも添加する。引き続きエタノール含有溶液を蒸留して燃料エタノールを生産する。しかし、エタノール蒸留後に底にまだ有機酸が残存し、回収されていないと解釈されるが、有機酸の回収について何ら開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、水性糖ストリームから有機酸、又はその対応塩を回収するための満足できる方法はない。糖ストリームから有機酸、又はその塩を除去する能力は、糖をエタノール又は他の有益な製品に変換する効率を改善するための決定的な要求のままである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔発明の概要〕
本発明は、水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得るための方法を提供する。さらに詳細には、本発明は、1種以上の鉱酸と糖を含む水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得るための方法に関する。
本発明の目的は、水性糖ストリームから有機酸又は有機塩を得るための改良方法を提供することである。
本発明の第1局面により、鉱酸と、有機酸と、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース及びその組合せから成る群より選択される糖とを含む水性糖ストリームから有機塩又は有機酸を得るための方法(A)であって、以下の工程、
(i) アニオン交換樹脂の1つ以上の床を含む分離システムに前記水性糖ストリームを導入し、かつ前記糖を含む少なくとも1つのストリームを前記分離システムから得る工程、
(ii) 1以上の段階で前記アニオン交換樹脂の1つ以上の床を再生させることによって、前記鉱酸、前記鉱酸の塩、又はその組合せを含む少なくとも1つのストリームと、前記有機酸、前記有機酸の塩、又はその組合せを含む別個の少なくとも1つの生成物ストリームとを生成する工程、及び
(iii) 前記少なくとも1つの生成物ストリームを回収する工程、
を含む方法が提供される。
本発明のこの局面によれば、アニオン交換分離システムは、後述するような別個の第1及び第2アニオン交換ユニットを含みうる。或いは、少なくとも1つの樹脂床を含む単一のアニオン交換ユニットで工程(i)〜(iii)を行ってよい。単一のアニオン交換ユニットで分離を行う場合、鉱酸、有機酸、及び/又はこれらの酸のアニオンがユニットの樹脂床に結合し、引き続き樹脂床を再生させて結合種を置き換える。
【0010】
本発明の第2の局面により、1種以上の鉱酸と、1種以上の有機酸と、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース及びその組合せから成る群より選択される糖とを含む水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得るための方法(B)であって、以下の工程、
(i) アニオン交換樹脂を含む1つ以上の床を含む第1アニオン交換ユニットに前記水性糖ストリームを導入する工程であって、前記鉱酸、前記鉱酸のアニオン又はその組合せが前記樹脂に結合する工程、
(ii) 前記第1アニオン交換ユニットから前記糖と前記有機酸を含む流出ストリームを生成し、かつ1種以上の再生剤で前記アニオン交換樹脂を再生させることによって、前記鉱酸、前記鉱酸の塩又はその組合せを含む1つ以上の出口ストリームを生成する工程、
(iii) 前記糖と前記有機酸を含む前記流出ストリームを、アニオン交換樹脂を含む1つ以上の床を含む第2アニオン交換ユニットに供給する工程(ここで、前記有機酸又は前記有機酸のアニオンは前記樹脂に結合する)、
(iv) 前記第2アニオン交換ユニットから、前記糖を含むストリームであって、該ストリームには、実質的に前記鉱酸及び前記有機酸が無いストリームを得、かつ前記第2アニオン交換ユニットを1種以上の再生剤で再生させることによって、前記有機酸の塩、前記有機酸又はその組合せを含む1つ以上の生成物ストリームを生成する工程、及び
(v) 前記1つ以上の生成物ストリームを回収する工程、
を含む方法が提供される。
【0011】
本発明は、上記定義どおりの方法(B)であって、前記供給工程(工程(iii))において、前記水性ストリーム中に存在する前記有機酸の少なくとも70%を前記第2アニオン交換ユニットに供給する方法にも関係する。
第1アニオン交換ユニット、第2アニオン交換ユニット又は第1及び第2の両アニオン交換ユニット中のアニオン交換樹脂床は、弱塩基性又は強塩基性のアニオン交換樹脂でよい。好ましくは、アニオン交換樹脂は弱塩基性樹脂である。
本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記鉱酸の塩、前記鉱酸又はその組合せを回収する工程をさらに含む方法にも関係する。
本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記鉱酸が、硫酸、亜硫酸、塩酸、リン酸及びその組合せから成る群より選択される方法にも関係する。好ましくは鉱酸は硫酸である。
さらに、本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記有機酸が、酢酸、ギ酸、ガラクツロン酸、グルクロン酸及びその組合せから成る群より選択される方法にも関係する。好ましくは、有機酸は酢酸である。
本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記酢酸を1つ以上の生成物ストリームから回収する方法にも関する。蒸留、液-液抽出又は空気若しくは蒸気によるストリッピングによって、生成物ストリームから酢酸を回収することができる。本発明の一実施形態では、1つ以上の生成物ストリームが酢酸の塩を含み、かつ酢酸を回収する前に酸の添加によって前記生成物ストリームのpHを4以下に調整する。
【0012】
本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記再生剤が、酸溶液、アルカリ溶液又は水から選択される水溶液である方法にも関する。好ましくは、再生剤はアルカリ又は酸溶液である。再生剤がアルカリの場合、再生剤は、好ましくはアンモニア水(水酸化アンモニウムとも称する)、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液から成る群より選択されるアルカリ溶液である。最も好ましくは、塩基はアンモニア水又は水酸化アンモニウムである。
本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記アニオン交換が模擬移動床式(Simulated Moving Bed)(SMB)システム又は改良型模擬移動床式(Improved Simulated Moving Bed)(ISMB)システムである。
本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、リグノセルロース系原料に1種以上の酸を添加することによって、前記リグノセルロース系原料を約4.0〜約5.0のpHで前処理して、前記原料中のヘミセルロースの少なくとも一部を加水分解することによって、前記水性糖ストリームを得る方法にも関する。本発明は、上記定義どおりの方法(A又はB)であって、前記水性糖ストリームが0.4〜約5.0のpHである方法にも関する。或いは、前記水性糖ストリームは、リグノセルロース系原料に酸を添加して前記リグノセルロース系原料中に存在するヘミセルロースとセルロースの両方をそれらのそれぞれの糖モノマーに加水分解することから生じた加水分解物ストリームである。
【0013】
本発明の別の局面により、リグノセルロース系原料から酢酸塩、酢酸又はその組合せを得るための方法(C)であって、以下の工程、
(i) 前記リグノセルロース系原料の加水分解から生じた水性糖ストリームを得る工程(前記加水分解は硫酸添加の1以上の段階を含み、前記糖ストリームが酢酸、酢酸塩、又はその組合せ、硫酸、並びにキシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース及びその組合せから選択される1種以上の糖を含む)、
(ii) アニオン交換樹脂の1つ以上の床を含む模擬移動床式分離システムに前記水性糖ストリームを導入して、該システムから前記1種以上の糖を含む少なくとも1つの生成物ストリームを得る工程、
(iii) 前記アニオン交換樹脂の1つ以上の床を硫酸で再生させることによって、前記酢酸を含む少なくとも1つの有機酸生成物ストリームを生成し、その後、前記アニオン交換樹脂の1つ以上の床を水酸化アンモニウムで再生させて、硫酸アンモニウムを含む少なくとも1つの別個の出口ストリームを生成する工程、及び
(iv) 前記生成物ストリームを回収する工程、
を含んでなる方法が提供される。
本発明は、上記定義どおりの方法(C)であって、前記硫酸添加を行って前記リグノセルロース系原料を前処理することによって、前記リグノセルロース系原料中に存在するヘミセルロースの少なくとも一部を糖モノマーに加水分解する方法にも関する。或いは、前記硫酸添加を行って、前記リグノセルロース系原料中に存在する前記ヘミセルロースとセルロースの両方をそれらのそれぞれの糖モノマーに加水分解する。
【0014】
本発明は先行技術の限界を克服する。本イオン交換法は、イオン排除法と異なり、酸性加水分解物ストリームに適する。さらに、本発明のアニオン交換法は、イオン排除操作に典型的な大量の希釈水を必要とせず、むしろ鉱物塩と有機塩又は鉱酸と有機酸をその濃縮形態で得ることができる。本発明の方法は、有機酸を除去するためのエバポレーションの使用に頼らないので、この費用を回避できる。さらに、本発明の方法は、鉱物塩と有機塩、又は鉱酸と有機酸を、別個のストリーム中、元の供給原料ストリーム中に存在するより高い濃度でもたらすことができる。鉱物塩と有機塩又は鉱酸と有機酸のストリームの別個及び濃縮特性がこれらの化合物の回収及びさらなる処理を容易にする。
従って、本発明は、エタノール又は他の製品の生産のためのリグノセルロース系原料の処理の前の有意な工程を表す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、添付図面を参照する以下の説明からさらに明らかになるだろう。
【図1】弱塩基性アニオン交換カラムからの硫酸、酢酸及びキシロースの溶出プロファイルを示す。小麦わらの前処理から得た水性糖ストリームをカラムに供給した。
【図2】小麦わらの前処理から得た水性糖ストリームを8.7床容積供給後の弱塩基性アニオン交換カラムの再生プロファイルを示す。再生剤としてアンモニア水(5%w/v)を用いた。
【図3】弱塩基性アニオン交換カラムからのキシロースと酢酸の溶出プロファイルを示す。第1の弱塩基性アニオン交換カラムを介した小麦わらの前処理からの水性糖ストリームの処理から得た、キシロースと酢酸を含むストリームをカラムに供給した。
【図4】第1の弱塩基性アニオン交換カラムを介して処理した小麦わらの前処理から得た水性糖原料の12床容積を供給後の弱塩基性アニオン交換カラムの再生プロファイルを示す。再生剤としてアンモニア水(5%w/v)を用いた。
【図5】第1の弱塩基性アニオン交換カラムの伝導率、pH及び酢酸溶出プロファイルを示す。
【図6】2-ユニットアニオン交換システムを介して直接7.32床容積の原料を供給後の第1及び第2の弱塩基性アニオン交換カラムの再生プロファイルを示す。再生剤としてアンモニア水を用いて、結合した硫酸及び酢酸を有機塩として回収する。
【図7】酢酸を含む水性ストリームを1%の漏出点まで供給後の弱塩基性アニオン交換カラムの再生プロファイルを示す。再生剤として硫酸(11.5質量%)を用いた。
【図8A】単一のアニオン交換ユニット内での硫酸、酢酸及びキシロースの分離を示し、キシロース、硫酸及び酢酸を含む水性ストリームを供給後の弱塩基性アニオン交換樹脂床からのキシロースの溶出プロファイルを示す。酢酸の1%漏出点直前まで水性ストリームを供給した。
【図8B】単一のアニオン交換ユニット内での硫酸、酢酸及びキシロースの分離を示し、2回の再生段階(各再生段階がアンモニア水の添加を含む)後のアセテート、スルフェート及びアンモニウムの再生プロファイルを示す。
【図9】強塩基性アニオン交換カラムからの酢酸及びキシロースの溶出プロファイルを示す。
【図10】酢酸とキシロースを含む水性ストリームを酢酸の1%漏出点まで供給後の強塩基性アニオン交換カラムの再生プロファイルを示す。水性ストリームの供給後、カラムをまず2部分床容積の水で洗浄してから8.3質量%の水酸化ナトリウム溶液で処理した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得るための方法を提供する。さらに詳細には、本発明は、1種以上の鉱酸と、例えば、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース又はその組合せから選択される糖モノマーとを含む水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得るための方法に関する。
【0017】
以下、好ましい実施形態について説明する。
本発明の方法は、水性糖ストリームからの鉱酸及び有機酸の分離を達成するためのアニオン交換樹脂の使用を含む。これは、水性ストリーム中のアニオンの、樹脂(強塩基性アニオン交換樹脂)上のアニオンとの交換又は樹脂(弱塩基性アニオン交換樹脂)上への酸の吸着後、結合種を置換するための次の再生工程を含む。糖は樹脂に対して低親和性を有し、最初に樹脂から溶出するが、鉱酸と有機酸又はそれらのアニオンは保持される。本発明の方法は、異なる機構の分離に頼るイオン排除クロマトグラフ分離技術から区別される。イオン排除法は、標的イオン化合物が電荷斥力によって樹脂から排除されるような形態でイオン交換樹脂を使用する。排除された化合物はカラムから迅速に溶出するが、未荷電化合物は樹脂中に同化し、より緩徐にカラムから溶出する。
【0018】
水性ストリームは、リグノセルロース系原料の処理に由来しうる。代表的なリグノセルロース系原料は、(1)農業廃棄物、例えばトウモロコシ茎葉、小麦わら、大麦わら、オート麦わら、稲わら、キャノーラわら、及び大豆茎葉;(2)草、例えばスイッチグラス、ススキ、カゼグサ、及びクサヨシ;及び(3)林業廃棄物、例えばアスペンウッド及びおがくずである。これらの原料は、水性ストリーム中の、糖モノマー、例えばグルコース及びキシロースといった糖の起源である高濃度のセルロース及びヘミセルロースを含む。しかし、本発明の実施は、使用する原料によって制限されない。
本発明の実施で使用する水性糖ストリームは、鉱酸、有機酸、及び糖を含む。好ましくは、水性糖ストリームは、原料を酸加水分解又は使用する酸が鉱酸である場合は前処理に供することによって生成される。酸加水分解又は前処理法は当業者が精通しているいずれの方法でもよい。本発明の一実施形態では、0.4〜5.0の間のいずれかのpHで前処理を行って、原料中のヘミセルロースを加水分解する。例えば、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5若しくは5.0又は0.4〜5.0の間のいずれかのpHで前処理を行える。しかし、本発明の実施は、酸加水分解又は前処理の使用、或いは水性糖ストリームを生成するために使用する特有の方法に限定されない。
糖として、糖モノマー、例えば、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース又はその組合せから選択される糖モノマーが挙げられる。
鉱酸は、好ましくは酸加水分解又は前処理プロセス由来であり、水性糖ストリーム中に運ばれる。その起源と関係なく、鉱酸は、限定するものではないが、硫酸、亜硫酸、塩酸、又はリン酸から選択されうる。好ましくは、鉱酸は硫酸である。本発明で使う糖ストリームは塩酸を含みうるが、この酸は溶液中に塩化物イオンを導入するという欠点を被る。従って、特定用途では、特にシステムの冶金を塩酸の腐食作用から保護しなければらならない場合、水性糖ストリームは塩酸を含まないことが好ましいだろう。
【0019】
有機酸として、酢酸、ガラクツロン酸、ギ酸、乳酸、グルクロン酸又はその組合せが挙げられる。有機酸の群は、好ましくは酢酸を含む。酢酸は、リグノセルロース系原料の酸加水分解又は前処理によって生成される。多くのリグノセルロース系原料は、キシランにアセチル基が結合しているヘミセルロースを含む。酸加水分解又は前処理プロセスがアセチル基から酢酸を遊離させる。しかし、本発明の実施は、アセチル基の加水分解によって形成される酢酸を含む糖加水分解物ストリームの使用に限定されない。
水性糖ストリームをアニオン交換分離システムに供給する前に水性糖ストリームをカチオン交換に供してよい。カチオン交換を利用して、糖ストリーム中に存在するカリウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及び他のカチオンを除去することができる。
これらのカチオンの除去は、低い溶解度の化合物、例えば水酸化カルシウム及び硫酸カルシウムの沈殿の可能性を減らす。カチオンの除去は、その後のアニオン交換にも利益になりうる。
水性糖ストリームは、好ましくは、不溶解又は懸濁固体が実質的に無い。これは、ろ過、遠心分離、又は当業者が精通している水性ストリームから繊維状固体若しくは懸濁固体を除去するための他の方法で達成される。任意に、例えば、エバポレーションによって、又は膜などで水性糖ストリームを濃縮してよい。また、水性糖ストリームをアニオン交換分離システムに供給する前に、例えば、クロマトグラフ分離又は他の手段で水性糖ストリームから鉱酸の一部を除去することも想定される。
鉱酸は、水性糖ストリーム中に約0.5g/L〜約100g/Lの間のいずれの濃度でも存在してよい。さらに好ましい鉱酸濃度は、約1g/L〜約50g/Lの間のいずれかの濃度である。
水性糖ストリーム中の有機酸濃度は、約1g/L〜約60g/Lの間のいずれの濃度でもよい。さらに好ましい実施形態では、有機酸濃度は、約2g/L〜約50g/Lの間のいずれかの濃度である。好ましくは、水性糖ストリームは酢酸と硫酸を含む。酢酸の濃度は、硫酸より低くても高くてもよい。酢酸の濃度対硫酸の濃度の比は、約4.0:1.0未満でよい。
【0020】
水性糖ストリーム中の糖の合計濃度は、約10g/L〜約250g/Lの間のいずれの濃度でもよい。さらに好ましい実施形態では、糖の合計濃度は、約25g/L〜約100g/Lの間のいずれかの濃度である。水性糖ストリーム中のグルコースとキシロースについては、グルコース対キシロースの質量比は、0:100〜100:0の範囲、又はこの間のいずれの比でもよく、例えば、グルコース対キシロースの質量比は、0:100、5:95、10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10若しくは100:0又はこの間のいずれの比でもよい。
水性糖ストリーム中の全溶質濃度は、約20g/L程度と低くても、また約600g/L程度と高くても、或いはこれらの間のいずれの濃度範囲でもよい。例えば、全溶質濃度は約30g/L〜約400g/L、又はこれらの間のいずれの範囲でもよい。
水性ストリームは、アニオン交換で効率的に処理するため酸性pHである。非限定例では、水性ストリームをアニオン交換分離システムに供給するとき、水性ストリームは0.4〜約5.0のpH、又はこの間のいずれかのpH範囲である。このpH範囲では、pHは存在する有機酸のpKaにほぼ等しいか、又はそれ未満である。例えば、酢酸のpKaは4.75である。さらに好ましい実施形態では、水性ストリームは0.4〜約4.0のpH、又はこの間のいずれかのpH範囲である。最も好ましい実施形態では、水性ストリームは、0.4〜約3.0のpH、又はこの間のいずれかのpH範囲である。例えば、pHは、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5若しくは5.0、又はこの間のいずれのpH範囲でもよい。
水性ストリームは、好ましくは約20℃〜約90℃の間のいずれかの温度である。さらに好ましくは、温度は、約45℃〜約75℃、又は約55℃〜約70℃、又はこの間いずれかの温度である。例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85若しくは90℃、又はこの間のいずれの温度でもよい。
【0021】
水性糖ストリームは、鉱酸、有機酸及び糖以外の化合物を含んでもよい。例えば、水性糖ストリームは、限定するものではないが、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、又は硫酸ナトリウムといった他の無機化合物を含んでよい。水性糖ストリームは、限定するものではないが、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、溶解リグニン等といった他の有機化合物をも含有しうる。これらの化合物の濃度は、水性ストリーム中に存在する全溶質の約0%〜約75%、又は水性糖ストリーム中に存在する全溶質の約0%〜約50%でよい。
アニオン交換樹脂は弱塩基性アニオン交換樹脂でよい。弱塩基性アニオン交換樹脂とは、弱塩基性官能基を含むポリマー構造の樹脂を意味する。弱塩基性アニオン交換樹脂で見られる通常の弱塩基性官能基は三級アミンである。一般的にトリアルキルアミン及びピリジン等のアミンが弱塩基性アニオン交換樹脂で見られるが、他の官能基を使用しうることを理解すべきである。
これとは別に、アニオン交換樹脂は強塩基性アニオン交換樹脂である。強塩基性アニオン交換樹脂とは、強塩基性官能基を含むポリマー構造の樹脂を意味する。強塩基性アニオン交換樹脂で見られる通常の強塩基性官能基は四級アミンであるが、他の官能基を使用しうることを理解すべきである。強塩基性アニオン交換樹脂はI型又はII型(Dianion Manual of Ion Exchange Resins and Synthetic Adsorbent, Mitsubishi Chemical Corporation, 2nd edition, 1995)強塩基性アニオン交換樹脂でよい。I型強塩基性アニオン交換樹脂はII型樹脂より強い塩基性の官能基を含む。典型的に、II型樹脂は、四級アンモニウム官能基であって、4つの窒素置換基の1つがアミノエタノール基を含む四級アンモニウム官能基を含む。しかし、四級アンモニウム官能基の塩基性を低減するいずれの官能基もII型強塩基性アニオン交換樹脂に存在しうる。
【0022】
強塩基性又は弱塩基性樹脂に共通のポリマー構造は、ジビニルベンゼン架橋ポリスチレンを用いて形成されるが、当業者に既知のいずれの適切なポリマー又は架橋剤をも使用することができる。例えば、アクリルポリマー支持体を用いてアニオン交換樹脂を形成することもできる。当業者に既知の種々レベルの架橋剤を用いてポリマー骨格を形成して、ポリマー構造の多孔度を制御することもできる。
弱塩基性又は強塩基性アニオン交換樹脂はマクロ多孔性、すなわち、分離した孔を含有し、又はミクロ多孔性(ゲル樹脂)でよく、或いはこれらの両構造の要素を含有しうる。狭い範囲の粒子形状と大きさ又は広い範囲の粒子形状と大きさを含むように、弱塩基性又は強塩基性アニオン交換樹脂を調製しうる。アニオン交換樹脂の全交換容量は、該樹脂を調製するために使用した方法によって変化しうる。さらに、アニオン交換樹脂は、ポリマー構造、供給業者、ロット、合成方法、プロセスパラメーター、又は官能基によって変化しうる。この結果、圧力降下、膨潤及び収縮、保湿容量、直径、多孔度、熱安定性、物理的安定性等の特定パラメーターが異なる樹脂となる。しかし、本発明は、利用する樹脂の特有の物理的及び化学的性質によって制限されないことを理解すべきである。
弱塩基性及び強塩基性樹脂の使用は本発明の範囲内であるが、種々の理由のため強塩基性樹脂より弱塩基性樹脂が好ましい。弱塩基性樹脂は典型的に、再生を行うとき、強塩基性樹脂に比べて少ない量のアルカリを消費する。さらに、水酸化アンモニウム等の弱塩基を用いて弱塩基性樹脂を再生できるので、再生塩から鉱酸及び有機酸を回収するのに有利であろう。さらに、弱塩基性樹脂は樹脂床内の糖ストリームのpHを高いアルカリ性値に上昇させない。このような高いアルカリ性条件は、糖(例えばキシロース)の分解及び糖のイオン化(これは強塩基性アニオン交換樹脂に結合して収率を下げうる)を引き起こしうる。
【0023】
本発明の一実施形態では、本方法は、水性糖ストリームからの鉱酸と有機酸の分離を達成するための2つのアニオン交換ユニットを含む。この実施形態によれば、鉱酸又はそのアニオンと結合する樹脂床を含む第1アニオン交換ユニットに水性糖ストリームを供給する。この第1ユニットから、有機酸と糖を含む低親和性の流出ストリームを得、順次、第2アニオン交換ユニットに供給する。次に、第2アニオン交換ユニットの樹脂を水性再生剤(水でよい)で再生させて、鉱酸、鉱酸塩、又はその組合せを含む出口ストリームを得る。好ましくは、限定するものではないが、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウムといったアルカリで樹脂を再生させて鉱酸塩を生成する。鉱酸塩を回収し、或いは処理して鉱酸として回収することができる。
第2アニオン交換ユニットは、有機酸又は有機酸のアニオンと結合するためのアニオン交換樹脂を使用する。好ましくは、水性糖ストリーム中の約70%より多くの有機酸が第2ユニットに進む。すると、第2アニオン交換ユニットから得られるストリームは、限定するものではないが、糖モノマー、例えば、キシロース、グルコース、又はその組合せを含むストリームであり、本質的に有機酸及び鉱酸が無い。引き続き、水でよい水性再生剤で樹脂を再生させて、有機酸、有機酸塩、又はその組合せを含む生成物ストリームを得る。一実施形態では、限定するものではないが、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウムといったアルカリで樹脂を再生させて有機塩を生成する。次に、有機塩を回収し、又は処理して有機酸として回収する。
【0024】
典型的に垂直カラム、水平床、又はその組合せにアニオン交換樹脂を詰める。第1及び/又は第2のアニオン交換ユニットは複数の床を含んでよく、それらを平行に、又は直列に配置し、或いは直列及び平行に配置した床の組合せを含んでもよい。しかし、本発明の実施は、床の配置によって制限されない。当業者には明らかなように、どの場合も、樹脂床の容積は典型的に流速及び水性ストリーム中の酸又はアニオンの濃度に基づいて選択される。水性糖ストリームに関する研究室、又は他の実験のデータと、当業者が精通している設計原則を組み合わせて、樹脂床のサイジングを行うことができる。
鉱酸、又はそのアニオンは、存在する主要化合物のうち樹脂に対して最高の親和性を有するので、鉱酸、又はそのアニオンが樹脂に結合する。理論に拘泥されたくないが、強塩基性アニオン交換樹脂を使用する場合は鉱酸のアニオンが樹脂に結合し、弱塩基性アニオン交換樹脂を使用する場合は鉱酸が樹脂に結合するだろう。糖並びに他のほとんどの無機及び有機化合物は、樹脂に対して限られた親和性を有し、樹脂床を通過する。有機酸は、樹脂に対して中間レベルの親和性を有し、最初は樹脂に結合するが、鉱酸で置き換えられて脱着する。糖と有機酸を含む、第1アニオン交換ユニットの樹脂床からの流出ストリームを直接第2アニオン交換ユニットに供給してよく、或いは収集かつプールし、その後に第2アニオン交換ユニットに供給してもよい。
好ましくは、鉱酸が流出ストリーム中で検出されるまで水の供給が続く。これは、供給を続けたら、有意な濃度の鉱酸が樹脂床を出るであろう時点である。当業者が精通し、かつ実施例1及び2で示す、床の過負荷実験によって、鉱酸の漏出前に添加できる供給量を決定することができる。非限定例では、鉱酸が流出液中で最初に検出されるまで、第1アニオン交換ユニットの1つ以上の樹脂床に水性糖ストリームを供給する。流出液中の鉱酸の量の直接測定又は当業者に既知の他の指標、例えば、伝導率、pH又は他の手段で検出を行うことができる。鉱酸が検出されたら、供給を停止する。しかし、床を直列に配置している場合、漏出酸は、実際には、直列の最終床から検出されることが分かるだろう。任意に、すすぎ、流し出し、又は吹き飛ばすことによって、床内に停滞している液体を除去してよい。次に、適切な再生剤、例えば、限定するものではないが、水性再生剤、例えば、限定するものではないが、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムといったアルカリで樹脂床を再生させる。アルカリを有する再生剤の供給は、鉱酸の塩及びいずれの残存有機酸の塩をも生じさせる。例えば、水性ストリーム中に硫酸が存在する場合、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの添加後、アンモニウム、ナトリウム、又はカリウムの硫酸塩が生じる。硫酸塩が生じたら、それを収集し、例えば、肥料として使うために回収することができる。或いは、例えばカチオン交換によって硫酸塩を処理して硫酸を生成することができる。
【0025】
本発明は、第1アニオン交換ユニットに適用する再生剤の量又は数によって制限されない。当業者は、1以上の別個の工程で導入される1種以上の再生剤で樹脂を再生しうること、及び所望量の結合した酸又はアニオンを置き換えるために必要な再生剤の最小量を使用するのが有利であることが分かるだろう。従って、酸又はアルカリを含む水溶液は再生の結果、より濃縮されたストリームをもたらすので、酸又はアルカリを含む水溶液を再生剤として使用することが好ましい。
再生剤の濃度は約2g/L〜約250g/L、又はこの間のいずれかの濃度範囲である。結合した硫酸の場合、再生剤がアルカリのとき、高い再生剤濃度は濃縮硫酸塩を生じさせる。従って、操作条件を選択して、硫酸塩の沈殿を回避することができる。さらに好ましくは、再生剤濃度は約10g/L〜約150g/L、又はこの間のいずれかの濃度範囲である。
好ましくは、鉱物酸が樹脂床から完全に脱着されるまで、再生剤を供給する。約80%超え、好ましくは約90%超えの鉱酸が樹脂床から脱着されるまで、再生剤を供給してよい。
水性供給原料と同じ方向に再生剤をカラムに供給することができ、これは並流再生として知られる。或いは、逆流、すなわち、水性供給原料と反対方向に再生剤を供給しうる。再生後、任意に、水性ストリームの供給を再開する前にカラムを水又は他の水性ストリームですすいでよい。
【0026】
樹脂に対して最低の親和性を有するストリーム、つまり糖と有機酸を含む流出ストリームを第2アニオン交換ユニットに供給する。このストリームを任意に、第2ユニットに供給する前に他の手段で濃縮してよい。エバポレーションを利用する場合、有機酸の実質的部分が前進するようにエバポレーションを行うべきである。例えば、第1段階で供給した水性ストリーム中に存在する有機酸の少なくとも約70%、さらに好ましくは酢酸の70%より多くが第2段階の供給原料に存在する。好ましくは、少なくとも90%の有機酸を第2ユニットに供給する。さらに好ましくは、少なくとも約95%の有機酸を第2ユニットに供給する。
アニオン交換の第1ユニットの流出液のエバポレーションは本発明の範囲内であるが、このようなエバポレーション工程を行わないことが好ましい。
好ましくは、第1ユニットへの供給中の糖の少なくとも約90%が第2ユニットを通過する。さらに好ましくは、少なくとも約95%、なおさらに好ましくは約98%の糖が第2ユニットを通過する。
第1アニオン交換ユニットと同様に、第2アニオン交換ユニットは、アニオン交換樹脂を有する樹脂床を含む。第1及び第2のアニオン交換ユニットは、強塩基性又は弱塩基性アニオン交換樹脂のどちらをも使用しうる。例えば、両アニオン交換ユニットが強塩基性又は弱塩基性アニオン交換樹脂を含んでよく、或いは2つのユニットのどちらか一方が強塩基性アニオン交換樹脂を利用し、他方が弱塩基性アニオン交換樹脂を利用してよい。
【0027】
第1ユニットからの流出ストリームを第2アニオン交換ユニットに供給するにつれて、有機酸が樹脂に結合するが、樹脂に対して低親和性のを有する糖及び他の有機物は樹脂床を通過する。理論に拘泥されたくないが、強塩基性アニオン交換樹脂を使用すると、有機酸のアニオンが樹脂に結合し、弱塩基性アニオン交換樹脂を使用すると、有機酸が樹脂に結合する。第2アニオン交換ユニットからの糖ストリームを発酵又は他の処理に供給することができる。このストリームを任意に、発酵又はさらなる処理の前に、膜ろ過又は当業者に既知の他の方法で濃縮してよい。
好ましくは、第1アニオン交換ユニットからの流出ストリームを第2アニオン交換ユニットに、第2ユニットからの流出ストリーム中で有機酸が検出されるまで供給する。流出液中の有機酸の量の直接測定によって、或いは当業者に既知の他の指標、例えば、伝導率、pH又は他の手段で該検出を行うことができる。当業者に精通しており、かつ実施例1及び2に示す床過負荷実験によって、有機酸漏出前に添加できる供給量を決定する。好ましくは、一旦有機酸が検出されたら、供給を停止する。しかし、床を直列に配置している場合、漏出酸は、実際には、直列の最終床から検出されることが分かるだろう。床を平行に配置している場合、漏出酸は、典型的に各カラムからの流出液中で検出される。任意に、すすぎ、流し出し、又は吹き飛ばすことによって、床内に停滞している液体を除去してよい。
次に、1種以上の適切な再生剤(いずれの水性再生剤でもよく、水でよい)で樹脂床を再生させて、有機酸、有機塩、又はその組合せを含むストリームを得る。再生剤がアルカリの場合、再生剤は、好ましくは水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムである。酢酸の場合、再生剤として水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを使用すると、それらのそれぞれの酢酸塩、すなわち酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、又は酢酸カリウムが生じる。次に該酢酸塩を回収する。再生剤の濃度は、約2g/L〜約250g/L、又はこの間のいずれの濃度範囲でもよい。さらに好ましくは、再生剤濃度は、約10g/L〜約150g/L、又はこの間のいずれの濃度範囲でもよい。
【0028】
第1アニオン交換ユニットと同様、個別工程で1以上の再生剤を用いて第2アニオン交換ユニットを再生させることができる。いずれの再生剤も利用できるが、酸又はアルカリを含む水溶液を用いて、所望量の結合酸又はアニオンを置き換えるのに必要な再生剤の量を最小限にするのが有利である。
非限定例では、有機酸が完全又は実質的に樹脂床から脱着するまで再生剤を供給する。有機酸の約80%より多くが樹脂床から脱着されるまで、好ましくは、有機酸の約90%より多くが樹脂床から脱着されるまで、再生剤を供給してよい。
再生中に酢酸塩が生成される場合、この塩を回収するか又はさらに処理する。この塩を酢酸として回収してもよい。好ましくは不揮発性酸、例えば硫酸で約4.0未満のpHに調整後、酢酸塩を蒸留することによって、酢酸塩から酢酸を回収することができる。一実施形態では、不揮発性酸でpHを約3.5、3.0、2.5、2.0又は1.5未満に調整する。或いは、液-液抽出又は空気若しくは蒸気による酢酸のストリッピングによって酢酸塩溶液から酢酸を回収しうる。
【0029】
擬似移動床式(Simulated Moving Bed)(SMB)システムを用いて本発明の方法の方法を実施できる。用語「SMBシステム」とは、固体固定相の流れへの対向流を動かす液体移動相の流れをシミュレートするいずれの連続的なクロマトグラフ技術をも意味する。すなわち、SMBシステムは、液体の流れの方向と反対方向に樹脂床の動きをシミュレートする。典型的に、SMBシステムは、2以上の入口ストリームと2以上の出口ストリームを有する1組の固定床を含む。床全体のいくらかのフラクションによって4以上の流れ位置を周期的にシフトさせることによって、シミュレート移動を遂行しうる。SMBシステムの操作の詳細は、読者に参考文献への道を教え、かつその内容を参照によって本願明細書に引用したものとするWO 2006/007691(Foody及びTolan)で提供されている。改良型SMB(「ISMB」)システム(例えばEurodia Industrie S.A., Wissous, France; Applexion S.A., Epone, France;又はAmalgamated Research Inc., Twin Falls, Idahoから入手可能)をも本発明の実施で使用しうる。
【0030】
2-ユニットアニオン交換分離システムの使用について述べたが、本発明の方法は、二者択一的に、単一のアニオン交換ユニットで分離を行う工程を含みうる。2-ユニットシステムの使用と同様、この実施形態は、糖、有機酸及び鉱酸の、アニオン交換樹脂に対する差次的親和性に頼る。水性原料を樹脂床に通し、糖とほとんどの他の無機及び有機化合物が樹脂床を通過する。有機酸又は有機酸のアニオンは樹脂に対して中間レベルの親和性を有するので、それらが最初に樹脂に結合する。存在する主要化合物のうち樹脂に対して最高の親和性を有する、鉱酸又は鉱酸のアニオンは樹脂に結合し、有機酸を置き換え、引き続き該有機酸は樹脂床の別の領域に結合する。好ましくは、有機酸が生成物ストリーム中で最初に検出されるまで、単一アニオン交換ユニットに原料を通す。これは、供給を続けたら、有意な濃度の有機酸が樹脂床を出るであろう時点である。当業者が精通しており、かつ実施例で述べるような床の過負荷実験によって、有機酸の漏出前に添加できる供給量を決定することができる。任意に、床内に停滞している液体をすすぎ、流し出し、又は吹き出すことによって除去してよい。
【0031】
有機酸と鉱酸(又はこれらの酸のアニオン)の両方で樹脂床を充填後、樹脂床を再生させる。2-アニオン交換ユニットを利用する方法と同様、単一のアニオン交換ユニットを使用する場合、再生を行って2つの別個の出口ストリームを生成する。1つのストリームは有機酸又はその塩を含み、1つのストリームは鉱酸、又はその塩を含む。しかし、この実施形態では、両ストリームが、以前に記載したように別個のユニットではなく、同じアニオン交換ユニットから生じる。
水でよい、水性再生剤で樹脂床を再生させることによって、有機酸又はその塩を含む生成物ストリームを得ることができる。水性再生剤は、有機酸又は有機酸のアニオンを優先的に脱着する。次いで任意に、床内に停滞している液体をすすぎ、流し出し、又は吹き出すことによって除去してよい。引き続き、結合した鉱酸又は鉱酸のアニオンを含むアニオン交換ユニットの樹脂床を、水でよいさらなる水性再生剤で再生させて、鉱酸又は鉱物塩を含む出口ストリームを得る。
単一のアニオン交換ユニット上で分離するために利用する好ましい条件及びプロセス設備は、2つの分離ユニットを利用するアニオン交換システムに関して述べた通りである。2-ユニット法と同様、所望量の結合酸又はアニオンを置き換えるのに必要な再生剤の量を最小限にするため、酸又はアルカリから再生剤を選択することが好ましい。さらに、各再生段階で異なる再生剤を使用しうることが分かるだろう。例えば、樹脂を酸で再生後、アルカリを添加してよい。或いは、同じ再生剤を用いて、有機酸、又はその塩を含有する生成物ストリームと、鉱酸、又はその塩を含む出口ストリームを両方得る。樹脂床は典型的に垂直カラム、水平床、又はその組合せであり、アニオン交換樹脂で満たされる。
本方法は生成物ストリームと出口ストリームの両方を単一のアニオン交換ユニットから得る工程を含むが、本システムは、さらに平行に配置した複数のユニットを含んでよく、各ユニットを有機酸及び鉱酸(又はそれらのアニオン)で充填し、それぞれ引き続き再生させて、別個の生成物ストリームと出口ストリームを得ることができる。直列の複数の樹脂床を含む単一のユニットで本発明を実施してもよい。
【実施例1】
【0032】
〔2-ユニット交換システムの第1ユニットを用いるキシロースからの硫酸の分離〕
Foody(その内容を参照によって本願明細書に引用したものとする米国特許第4,461,648号)に記載されている通りに蒸気及び硫酸の前処理を利用することによって、キシロース、硫酸及び酢酸を含む水性ストリームを小麦わらから調製した。前処理した小麦わらを水で洗浄し、結果として生じた糖ストリームは、表1に示す成分を含んだ。ストリームは1.2のpHを有した。糖ストリームは、他の有機酸、ヘキソース及び他のペントース糖をも含んだ。Chromeleon(登録商標)ソフトウェア(バージョン6.6)、IonPac(登録商標)AS11-HCカラム(4×250mm)、AG11-HCガードカラム(4×50mm)、伝導率検出器及びアニオン自己再生懸濁液ウルトラ-IIシステム(ASRS-Ultra II)を備えたDionex ICS-2500 HPLCを用いて硫酸と酢酸の濃度を測定した。この方法は、1〜15分まで均一溶媒の1mM NaOH移動相、15〜21分まで60mM NaOH勾配移動相及び最後に25〜30分まで均一溶媒の60mM NaOH移動相を用いた。上記HPLCシステムを用い、CarboPacTM PA1カラム(4×250mm)及びガード(4×50mm)カラムを利用してパルス電流測定検出でキシロースを測定した。この方法は、14分間、10mM NaOHの均一溶媒移動相、14.1〜16.7分まで均一溶媒の250mM NaOH移動相後、16.8〜20分まで均一溶媒の10mM NaOH移動相を用いた。
【0033】
表1:2-ユニットアニオン交換システムの第1ユニットへの水性ストリーム供給原料
【0034】
この水性ストリームをアニオン交換システムの第1ユニットに供給した。この第1ユニットは弱塩基性アニオン交換樹脂、DOWEX MARATHON WBA三級アミン官能基とスチレン-ジビニルベンゼンマクロ多孔性マトリックスを含む)を含んだ。この樹脂の平均粒径は525ミクロンである。樹脂を、まず85%メタノールに15分間浸漬してから水ですすいで調製した。最初に樹脂を使用した後は、この湿式手順は必要でなく、全ての弱塩基性アニオン交換樹脂では必要ない。100mLの調製樹脂をd=1.2cmのガラスカラム内で使用した。カラムを通じてストリームを5.0mL/分の速度で供給し、カラム出口で23mLのサンプルを収集した。第1段階の弱塩基性アニオン交換カラムには周囲温度で流した。
カラムからのキシロース、酢酸及び硫酸の溶出プロファイルを図1に示す。ボイドボリュームがカラムから出たほぼ直後に、床からキシロースが溶出した。実験の開始時にはカラム内にボイドボリューム液(38mL)が存在し、供給原料によって押し出される。この点を超えると、流出液中に供給原料濃度の1.4倍までの濃度の酢酸が検出された。
硫酸は、樹脂に対して最も高い親和性を有し、5.9床容積が供給されるまで流出液中で検出されなかった。硫酸について、樹脂の1%の漏出点容量(流出液が、供給ストリーム中の元の硫酸濃度の1%を有する点)を計算すると、0.75当量の硫酸/Lの樹脂(式1)だった。供給を8.7床容積まで続けて、硫酸について十分な溶出プロファイルを得た。流出液を第2ユニットに供給する本発明の方法では、硫酸が検出されたとき供給を停止するだろう。供給を停止する点は、1%の漏出点より大きくても小さくてもよい。用いたMARATHON WBA樹脂の理論容量は1.3当量/Lの樹脂である。
式1:(5.9床容積)(0.1Lの床容積)(12.5g/Lの硫酸)/(98g/当量)(0.1Lの樹脂)=0.75当量/リットル
【0035】
8.7床容積の供給原料ストリームの供給後、カラムを1床容積の水で洗浄した。次に5w/v%のアンモニア水を5mL/分の速度で供給して樹脂を再生させた。使用した塩基の量は、カラムに結合した硫酸当量の量に対して1.2当量だった。塩基を供給後、水を用いてカラムから鉱物塩を洗い流した。図2は、カラムに供給した合計液体の部分床容積の関数として、得られたスルフェートの量をg/Lで示す。1.83床容積のアンモニア水溶液と洗浄水を供給した後、結合したスルフェートをカラムから実質的に除去した。表2は、出口ストリームのサブポーションがプールされた時に得られる結合スルフェートの濃度と収率を示す。このプールは、示される初期(fbvから)及び最終(fbvへ)出口ストリームの部分床容積の間で収集される総容積で構成される。出口ストリームは、元のストリーム中に(硫酸として)存在するより高い濃度のスルフェート(硫酸アンモニウムとして)を含んだ。
【0036】
表2:出口ストリーム中のスルフェートの濃度と収率
【実施例2】
【0037】
〔2-ユニットアニオン交換システムの第2ユニットでのキシロースから酢酸の分離〕
米国特許第4,461,648号でFoodyによって記載されている通りに蒸気及び硫酸前処理を利用して、キシロース、硫酸及び酢酸を含む水性ストリームを小麦わらから生成し、前処理した小麦わらを水で洗浄して糖ストリームを生じさせてから、実施例1で述べた通りの2-ユニットアニオン交換分離システムの第1ユニットに供給した。その結果、第1ユニットのプール流出液から得られた水性糖ストリームは、下表3で報告する成分を含んだ。糖ストリームは、他の有機酸、ヘキソース及び他のペントース糖をも含んだ。このストリームのpHは3.5だった。この糖ストリームを、実施例1と同じ樹脂を含有する2-ユニットシステムの第2ユニットに供給した。このカラムは50mLの床容積と1.2cmの直径を有した。第2の弱塩基性アニオン交換カラムには周囲温度で流した。
【0038】
表3:2-ユニットアニオン交換システムの第2ユニットへの供給原料
*濃度は酢酸として報告し、供給原料中の酢酸とアセテートの総濃度に相当する。
【0039】
アニオン交換システムの第2ユニットからの溶出プロファイルを図3に示す。カラムに酢酸が結合し、約5.9床容積の糖ストリームを供給したとき、酢酸について1%漏出点に達した。5.9床容積までのカラムからの流出液はキシロースを含み、かつ実質的に酢酸が無かった。酢酸について樹脂の1%漏出点容量を計算すると1リットルの樹脂当たり0.65当量の酢酸だった(式2)。典型的に、本発明の方法では、糖を含む第2ユニットからの生成物ストリームを回収又はさらに処理する場合、流出ストリーム中で最初に酢酸が検出された時点でカラムへの供給を停止するだろう。供給を停止する時点は1%の漏出点より大きくても小さくてもよい。使用したMarathon WBA樹脂の理論容量は1.3当量/Lの樹脂である。
式2:(6.57g/Lの酢酸)(5.9床容積)(0.05L/床容積)/60g/当量)(0.05Lの床容積)=0.65当量/1Lの樹脂
【0040】
5%w/vのアンモニア水を5mL/分の速度で添加して樹脂を再生させた。用いた塩基の量は、カラムに結合した酢酸の当量の量に対して1.2当量だった。塩基を供給後、水を用いてカラムから塩を洗い流した。図4は、カラムに供給した合計液体の部分床容積の関数として、得られたアセテートの量をg/Lで示す。1.9床容積の水酸化アンモニウム溶液と洗浄水を供給した後、カラムからアセテートを実質的に除去した。図4は、出口ストリームのサブポーションがプールされた時に得られるアセテートの濃度と収率を示す。再生ストリームは、元のストリーム中の酢酸とアセテートの合計濃度より高い濃度でアセテート(酢酸アンモニウムとして)を含有した。
【0041】
表4:出口ストリーム中のアセテートの濃度と収率
【実施例3】
【0042】
〔2-ユニットアニオン交換システムにおけるキシロースから硫酸と酢酸の分離〕
Foody(その内容を参照によって本願明細書に引用したものとする米国特許第4,461,648号)によって記載されている通りに蒸気及び硫酸前処理を利用して、キシロース、硫酸及び酢酸を含む水性糖ストリームを小麦わらから作製した。前処理した小麦わらを水で洗浄した結果生じた糖ストリームは表5に示す成分を含んだ。糖ストリームは他の有機酸、ヘキソース及び他のペントース糖を含んだ。ストリームは1.2のpHを有した。
【0043】
表5:2-ユニットアニオン交換システムへの供給原料
【0044】
実施例1で述べた通りに調製した2-ユニットアニオン交換システムの第1ユニットにストリームを供給した。第1ユニットからの流出液を分別収集又はプールせずに、第1ユニットからの流出液を直接第2ユニット上に供給した。実施例2で述べた通りに第2ユニットを調製した。カラムを介して5.0mL/分の速度でストリームを供給し、第2カラム出口で10〜13mLのサンプルを収集した。第1カラム流出液から小アリコートを取り出して伝導率及びpHをモニターし、かつキシロース、酢酸及び硫酸を測定した。第1カラム流出液のモニタリングの結果を図5に示す。酢酸が流出ストリームに入ると、伝導率がほぼ1000μSまで上昇し、次に硫酸が流出ストリームに入り始めると、再び伝導率が上昇した。酢酸が流出ストリームに入るにつれてpHが下がり、次に硫酸が流出ストリームに入り始めるとさらにpHが下がった。2回目の伝導率の上昇が検出されるまで供給を続けた。これは、第1カラムを介して3.28床容積の供給原料が通過した後に起こった。2-ユニットアニオン交換システム後、糖ストリームは硫酸と酢酸が実質的に無かった。第2カラム流出液から収集したフラクションは、表6で提供するようにキシロース、酢酸及び硫酸を含んだ。表6に示されるように、上記HPLC手順を用いた検出限界を超える(0.05未満の)酢酸は検出できなかった。
【0045】
表6:第2カラムからのフラクションの組成
【0046】
3.28床容積の供給ストリーム(第1カラムに基づく)の供給後、カラムを分離し、1床容積の水で洗浄した。次に、7%w/vのアンモニア水を5mL/分の速度で供給して各カラムを再生させた。図6は、2.6過剰当量のアンモニア水を使用すると、大部分(>97%)の結合酢酸を酢酸アンモニウムとして第2カラムから回収できることを示す(使用したアンモニア水の当量数を樹脂の理論容量(MATRATHON WBAでは、容量=1.3当量/Lの樹脂)で除して過剰当量を計算する)。3.0過剰当量のアンモニア水を使用すると、大部分(>97%)の結合硫酸を硫酸アンモニウムとして第1カラムから回収できる。
【実施例4】
【0047】
〔水性再生剤による結合酢酸の再生〕
脱イオン水で氷酢酸を希釈することによって、酢酸を含む水性ストリームを調製した。水性ストリームは11.64g/Lの酢酸を含んだ。弱塩基性アニオン交換樹脂、Purolite(登録商標)A103Sを含む樹脂床に水性ストリームを供給した。Purolite(登録商標)A103Sは三級アミン官能基とスチレン-ジビニルベンゼンマクロ多孔性ポリマーマトリックスを含む。この樹脂の典型的な粒径は650〜900ミクロンである。100mLの調製樹脂をd=1.2cmのガラスカラム内で使用した。樹脂をまず85%のメタノールに15分間浸漬し、水ですすぎ、3床容積の7%w/vアンモニア水で調整後、水ですすいで調製した。アンモニア又はさらに強い塩基、例えば水酸化ナトリウムによる前洗浄は、弱塩基性樹脂中の全ての三級アミン官能基を確実に利用できるようにして、主要な三級アミン基の官能性以外の官能基上の、弱塩基性アニオン交換樹脂に結合しうる小割合のアニオンを除去する。
酢酸を含む水性ストリームを、酢酸の1%漏出点(1.21当量/Lの樹脂)直前まで5.0mL/分の速度で供給した。酢酸についてのこの樹脂の1%漏出点容量は以前に1.24当量/Lと測定されている。脱イオン水ですすぐことによって、樹脂床内に停滞している液体を除去した。この実施例では、1床容積の洗浄水を用いた。すすいだ後、別の11.5質量%の硫酸溶液を用いて樹脂床から結合酢酸を脱着した。分析のため、酢酸を含む生成物ストリームを分別収集した。図7は、カラムに供給した合計再生液体の部分床容積の関数として、得られた酢酸の量をg/Lで示す。表7は、出口ストリームのサブポーションがプールされた時に得られる結合酢酸の濃度と収率を示す。生成物ストリームは、元の供給ストリーム中の濃度より高い濃度で酢酸を含んだ。樹脂に結合した鉱酸を、実施例1及び3で概要を述べたように、例えば、アンモニア水のようなさらなる水性再生剤を用いて置き換えることができる。
【0048】
表7:出口ストリーム中の酢酸の濃度と収率
【実施例5】
【0049】
〔単一のアニオン交換ユニットにおける硫酸と酢酸の分離〕
キシロース、硫酸、及び酢酸を含む水性ストリームを純粋な化学薬品から、該化学薬品を脱イオン水に溶解させることによって調製した。
【0050】
表8:単一のアニオン交換ユニットへの供給原料
【0051】
弱塩基性アニオン交換樹脂Dowex Marathon WBAを含む樹脂床に水性ストリームを供給した。100mLの調製樹脂をd=1.2cmのガラスカラム内で用いた。樹脂をまず5〜10床容積の7%w/vアンモニア水で前処理後、水ですすいで調製した。
酢酸の1%漏出点(1.03当量/Lの樹脂)直前まで、水性ストリームを6〜7mL/分の速度で供給した。樹脂内に停滞している液体を脱イオン水ですすいで除去した。この実施例では、1床容積の水を用いた。すすいだ後、別の9.1mLパルスの7%のアンモニア水を床のトップに添加し、次いで「ウォータープッシュ(water push)」後、1床容積の水をカラムに通して洗浄した。このアンモニア水の量は、酢酸を完全に遊離させるには十分であり、かつ硫酸の完全な遊離には不十分である。この後、追加床容積の水を加えて、再生中に床内に停滞した全ての液体を確実に溶出させた。最後に、1全床容積の7%アンモニア水を用いて第2の再生工程を行った。この過剰量のアンモニア水は、硫酸の完全な遊離に十分だった。全ての供給、洗浄、及び再生工程中の樹脂流出液を分析用に分別収集した。これらのフラクションをスルフェート、アンモニウム、アセテート、及び/又はキシロース含量について分析した。
キシロースの溶出プロファイルを図8Aに示す。キシロースは、ボイドボリュームがカラムを出たほとんど直後に床から溶出し、かつ約2〜5の部分床容積の間のほぼその供給原料濃度で溶出する。供給を停止したすぐ後に、第1の水洗でいずれの残存キシロースをも完全に除去する。
【0052】
酢酸と硫酸の再生プロファイルを図8Bに示す。最初のアンモニアアリコートをカラムに供給してすぐ後に、アセテートとアンモニウムが同時にカラムから溶出し、約6.5床容積で開始する。これは、酢酸アンモニウムの形成を示唆しており、別個のフラクションで収集できる。ウォータープッシュの間に全ての酢酸アンモニウムを収集する。約1:1のモル比でアンモニウムとアセテートが溶出し、酢酸アンモニウムの形成を確証する。第1の再生工程中に、カラムからほんの少しの硫酸が除去される。
アンモニア水で2回目に床を再生してすぐ後に、スルフェートとアンモニウムが同時に溶出し、約8.5床容積で開始する。これは、硫酸アンモニウムの形成を示唆しており、別個のフラクションで収集できる。この2回目の再生工程中に全てのスルフェートを硫酸アンモニウムとして収集することができる。約2:1のモル比でアンモニウムとスルフェートが溶出し、硫酸アンモニウムの形成を確証する。
【実施例6】
【0053】
〔強塩基性アニオン交換樹脂を含む2-ユニットアニオン交換システムの第2ユニットにおけるキシロースから酢酸の分離〕
純粋な化学薬品を脱イオン水に溶解させることによって、キシロースと酢酸を含む水性ストリームを該化学薬品から調製した(表9)。
【0054】
表9:2-ユニットアニオン交換システムの第2ユニットへの供給原料
【0055】
強塩基性アニオン交換樹脂LEWATIT MonoPlusTM MP500を含むアニオン交換システムの第2ユニットに水性ストリームを供給した。この樹脂は四級アミン官能基とスチレン-ジビニルベンゼンマクロ多孔性マトリックスを含む。該樹脂の平均粒径は600ミクロンである。d=1.2cmのガラスカラム内で100mLの調製樹脂を使用した。樹脂をまず水ですすぎ、2Lの8.3質量%の水酸化ナトリウムで5mL/分にて調整して、確実に全ての四級アミン官能基が水酸化物形態になるようにした。この樹脂は、製造業者からCl-形態で供給される。
カラムが完全にアセテートイオンで飽和するまで、水性ストリームを5ml/分の速度で供給した。この飽和は0.99当量/Lの樹脂で起こった。図9はキシロースと酢酸の溶出プロファイルを示す。キシロースの1%漏出は、2だけの部分床容積後に起こり、3だけの部分床容積後のほぼ供給原料濃度でキシロースが溶出する。3〜8.33の部分床容積で、キシロースが溶出するが、アセテートイオンは樹脂で保持される。酢酸の1%漏出は、8.33の部分床容積(0.89当量/Lの樹脂)の水性ストリームを供給した後に起こる。
【0056】
実施例6で上述した通りに100mLのLEWATIT MonoPlusTM MP500樹脂を含む第2カラムを調製した。1%の酢酸漏出点まで、上表9で示した水性供給原料ストリームをカラムに供給した。樹脂内に停滞している液体を脱イオン水ですすいで除去した。この実施例では、2床容積の水を用いた。リンス後、別の8.3質量%の水酸化ナトリウム溶液を用いてカラムから結合アセテートを回収した。アセテートを含む出口ストリームを分析用に分別収集した。図10は、カラムに供給したリンス液と再生液の合計の部分床容積の関数として、得られたキシロースとアセテートの量をg/Lで示す。最初の水リンスでは、ボイド液(最初〜38mL又は0.38fbv)は、保持されないいくらかのキシロースを含む。小量(〜14%)の非常に弱く結合しているキシロースが、カラムを通じて供給される最初の1.2fbvのリンス水で溶出する。表10は、出口ストリームのサブポーションがプールされた時に得られる結合アセテートの濃度と収率を示す。出口ストリームは、元の供給原料ストリーム中より高い濃度でアセテートを含んだ。
【0057】
表10:強塩基性アニオン交換樹脂を含むアニオン交換システムのユニット2からの出口ストリーム内のアセテートの濃度と収率
【0058】
全ての引用文献を参照によって本願明細書に組み込んだものとする。
本発明を1以上の実施形態について述べた。しかし、当業者には、特許請求の範囲で定義される通りの本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変更及び修正を為しうることが明白だろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の鉱酸と、1種以上の有機酸と、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース及びその組合せから成る群より選択される糖とを含む水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得るための方法であって、以下の工程、
(i) アニオン交換樹脂を含む1つ以上の床を含む第1アニオン交換ユニットに前記水性糖ストリームを導入する工程であって、前記鉱酸、前記鉱酸のアニオン又はその組合せが前記樹脂に結合するする工程、
(ii) 前記第1アニオン交換ユニットから前記糖と前記有機酸を含む流出ストリームを生成し、かつ1種以上の再生剤で前記アニオン交換樹脂を再生させることによって、前記鉱酸、前記鉱酸の塩又はその組合せを含む1つ以上の出口ストリームを生成する工程、
(iii) 前記糖と前記有機酸を含む前記流出ストリームを、アニオン交換樹脂を含む1つ以上の床を含む第2アニオン交換ユニットに供給する工程(ここで、前記有機酸又は前記有機酸のアニオンは前記樹脂に結合する)、
(iv) 前記第2アニオン交換ユニットから、前記糖を含むストリームであって、該ストリームには、実質的に前記鉱酸及び前記有機酸が無いストリームを得、かつ前記第2アニオン交換ユニットを1種以上の再生剤で再生させることによって、前記有機酸の塩、前記有機酸又はその組合せを含む1つ以上の生成物ストリームを生成する工程、及び
(v) 前記1つ以上の生成物ストリームを回収する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記鉱酸、前記鉱酸の塩又はその組合せを回収する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給工程(工程(iii))において、前記水性糖ストリーム中に存在する前記有機酸の少なくとも約70%を前記第2アニオン交換ユニットに供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1アニオン交換ユニット、前記第2アニオン交換ユニット又は前記第1及び第2の両アニオン交換ユニット中の前記アニオン交換樹脂が、弱塩基性アニオン交換樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1及び第2の両アニオン交換ユニット中の前記アニオン交換樹脂が、弱塩基性アニオン交換樹脂を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1アニオン交換ユニット、前記第2アニオン交換ユニット又は前記第1及び第2の両アニオン交換ユニット中の前記アニオン交換樹脂が強塩基性アニオン交換樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記鉱酸が、硫酸、塩酸、亜硫酸、リン酸及びその組合せから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記鉱酸が、硫酸である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記有機酸が、酢酸、ギ酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸及びその組合せから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有機酸が、酢酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)、工程(iv)又は工程(ii)と工程(iv)の両工程の前記1種以上の再生剤が、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液から成る群より選択されるアルカリ溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アルカリ溶液が、水酸化アンモニウム溶液である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1アニオン交換ユニット、前記第2アニオン交換ユニット又は前記第1及び第2の両アニオン交換ユニットが、擬似移動床式(SMB)システム又は改良型擬似移動床式(ISMB)システムである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記有機酸が、酢酸であり、かつ前記1つ以上の生成物ストリームから前記酢酸を蒸留によって回収する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記有機酸が、酢酸であり、かつ前記1つ以上の生成物ストリームから前記酢酸を液-液抽出によって回収する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記有機酸が、酢酸であり、かつ前記1つ以上の生成物ストリームから前記酢酸を空気又は蒸気でストリッピングすることによって回収する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の生成物ストリームが、酢酸の塩を含み、かつ前記酢酸を回収する前に第2の酸を添加して、前記1つ以上の生成物ストリームのpHを約4以下に調整する工程をさらに含む、請求項14、15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記水性糖ストリームが、約0.4〜約5.0のpHである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
リグノセルロース系原料に1種以上の酸を添加することによって、前記リグノセルロース系原料を約0.4〜約5.0のpHで前処理することによって、前記原料中のヘミセルロースの少なくとも一部を加水分解することによって前記水性糖ストリームを得る、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記水性糖ストリームが、1種以上の酸をリグノセルロース系原料に添加して、前記リグノセルロース系原料中に存在するヘミセルロースとセルロースの両方をそれらのそれぞれの糖モノマーに加水分解することから得た加水分解物ストリームである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
工程(ii)、(iv)又は工程(ii)及び(iv)の両工程中の1種以上の再生剤が、アルカリ溶液、酸溶液又は水から選択される水溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
工程(ii)、(iv)又は工程(ii)及び(iv)の両工程中の1種以上の再生剤が、アルカリ溶液又は酸溶液から選択される水溶液である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
鉱酸と、有機酸と、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース及びその組合せから成る群より選択される糖とを含む水性糖ストリームから有機塩又は有機酸を得るための方法であって、以下の工程、
(i) アニオン交換樹脂の1つ以上の床を含む分離システムに前記水性糖ストリームを導入し、かつ前記糖を含む少なくとも1つのストリームを前記分離システムから得る工程、
(ii) 1以上の段階で前記アニオン交換樹脂の1つ以上の床を再生させることによって、前記鉱酸、前記鉱酸の塩、又はその組合せを含む少なくとも1つのストリームと、前記有機酸、前記有機酸の塩、又はその組合せを含む別個の少なくとも1つの生成物ストリームとを生成する工程、及び
(iii) 前記少なくとも1つの生成物ストリームを回収する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
前記アニオン交換システムが、第1及び第2のアニオン交換ユニットを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記導入工程が、前記第1アニオン交換ユニットに前記水性糖ストリームを供給する工程であって、前記鉱酸、前記鉱酸のアニオン、又はその組合せが、前記第1アニオン交換ユニットの樹脂に結合する工程を含み、
さらに、
前記第1アニオン交換ユニットから、前記糖と、前記有機酸、前記有機酸の塩、又はその組合せとを含む流出ストリームを得てから、前記流出ストリームを前記第2アニオン交換ユニットに供給し、かつ前記有機酸、前記有機酸のアニオン又はその組合せが前記第2アニオン交換ユニットの前記樹脂に結合する工程を含み、かつ
前記再生工程が、前記第1アニオン交換ユニットに少なくとも1種の再生剤を添加して、前記鉱酸、前記鉱酸の塩、又はその組合せを含む少なくとも1つのストリームを生成し、かつ前記第2アニオン交換ユニットに少なくとも1種の再生剤を添加して、前記有機酸、前記有機酸の塩、又はその組合せを含む少なくとも1つの生成物ストリームを生成する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記水性糖ストリーム中に存在する前記有機酸の少なくとも約70%を前記第2アニオン交換ユニットに供給する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程(i)〜(iii)を単一のアニオン交換ユニットで行う、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記導入工程において、前記鉱酸、有機酸、又はそれらのアニオンが前記樹脂に結合する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記鉱酸、前記鉱酸の塩、又はその組合せを回収する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記分離システムが、弱塩基性アニオン交換樹脂を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記分離システムが、強塩基性アニオン交換樹脂を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記鉱酸が、硫酸、塩酸、亜硫酸、リン酸及びその組合せから成る群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記鉱酸が、硫酸である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記有機酸が、酢酸、ギ酸、ガラクツロン酸、グルクロン酸及びその組合せから成る群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記有機酸が、酢酸である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記有機酸が、酢酸である、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記再生が、1種以上の再生剤を前記1つ以上の樹脂床に添加して前記アニオン交換樹脂を再生させる工程を含み、前記1種以上の再生剤が、アルカリ溶液、酸溶液、水、又はその組合せから選択される水溶液である、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記1種以上の再生剤が、アルカリ溶液、酸溶液又はその組合せから選択される水溶液である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記アルカリ溶液が、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、及びその組合せから成る群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記アルカリ溶液が、水酸化アンモニウム溶液である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記分離システムが、擬似移動床式(SMB)システム又は改良型擬似移動床式(ISMB)システムである、請求項23に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの生成物ストリームから前記酢酸を蒸留によって回収する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つの生成物ストリームから前記酢酸を液-液抽出蒸留によって回収する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つの生成物ストリームから前記酢酸を空気又は蒸気でストリッピングすることによって回収する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1つの生成物ストリームが酢酸の塩を含み、かつ前記酢酸を回収する前に酸を添加して、前記少なくとも1つの生成物ストリームのpHを約4以下に調整する工程をさらに含む、請求項42、43又は44に記載の方法。
【請求項46】
前記水性糖ストリームが、約0.4〜約5.0のpHである、請求項23に記載の方法。
【請求項47】
前記水性糖ストリームが、リグノセルロース系原料を約0.4〜約5.0のpHで前処理して、前記原料中に存在するヘミセルロースの少なくとも一部を加水分解することから生じた加水分解物ストリームである、請求項23に記載の方法。
【請求項48】
前記水性糖ストリームが、リグノセルロース系原料に酸を添加して、前記リグノセルロース系原料中に存在するヘミセルロースとセルロースの両方をそれらのそれぞれの糖モノマーに加水分解することから生じた加水分解物ストリームである、請求項23に記載の方法。
【請求項49】
リグノセルロース系原料から酢酸塩、酢酸又はその組合せを得るための方法であって、以下の工程、
(i) 前記リグノセルロース系原料の加水分解から生じた水性糖ストリームを得る工程(前記加水分解は硫酸添加の1以上の段階を含み、前記糖ストリームは酢酸、酢酸塩、又はその組合せ、硫酸、並びにキシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース及びその組合せから選択される1種以上の糖を含む)、
(ii) アニオン交換樹脂の1つ以上の床を含む模擬移動床式分離システムに前記水性糖ストリームを導入し、かつ該システムから前記1種以上の糖を含む少なくとも1つのストリームを得る工程、
(iii) 前記アニオン交換樹脂の1つ以上の床を硫酸で再生させることによって、前記酢酸を含む少なくとも1つの有機酸生成物ストリームを生成し、その後、前記アニオン交換樹脂の1つ以上の床を水酸化アンモニウムで再生させて、硫酸アンモニウムを含む少なくとも1つの別個の出口ストリームを生成する工程、及び
(iv) 前記少なくとも1つの生成物ストリームを回収する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項50】
前記硫酸の添加を行って前記リグノセルロース系原料を前処理することによって、前記リグノセルロース系原料中に存在するヘミセルロースの少なくとも一部を糖モノマーに加水分解する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記硫酸の添加を行って、前記リグノセルロース系原料中に存在するヘミセルロースとセルロースの両方をそれらのそれぞれの糖モノマーに加水分解する、請求項49に記載の方法。
【請求項1】
1種以上の鉱酸と、1種以上の有機酸と、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース及びその組合せから成る群より選択される糖とを含む水性糖ストリームから1種以上の有機塩又は有機酸を得るための方法であって、以下の工程、
(i) アニオン交換樹脂を含む1つ以上の床を含む第1アニオン交換ユニットに前記水性糖ストリームを導入する工程であって、前記鉱酸、前記鉱酸のアニオン又はその組合せが前記樹脂に結合するする工程、
(ii) 前記第1アニオン交換ユニットから前記糖と前記有機酸を含む流出ストリームを生成し、かつ1種以上の再生剤で前記アニオン交換樹脂を再生させることによって、前記鉱酸、前記鉱酸の塩又はその組合せを含む1つ以上の出口ストリームを生成する工程、
(iii) 前記糖と前記有機酸を含む前記流出ストリームを、アニオン交換樹脂を含む1つ以上の床を含む第2アニオン交換ユニットに供給する工程(ここで、前記有機酸又は前記有機酸のアニオンは前記樹脂に結合する)、
(iv) 前記第2アニオン交換ユニットから、前記糖を含むストリームであって、該ストリームには、実質的に前記鉱酸及び前記有機酸が無いストリームを得、かつ前記第2アニオン交換ユニットを1種以上の再生剤で再生させることによって、前記有機酸の塩、前記有機酸又はその組合せを含む1つ以上の生成物ストリームを生成する工程、及び
(v) 前記1つ以上の生成物ストリームを回収する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記鉱酸、前記鉱酸の塩又はその組合せを回収する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給工程(工程(iii))において、前記水性糖ストリーム中に存在する前記有機酸の少なくとも約70%を前記第2アニオン交換ユニットに供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1アニオン交換ユニット、前記第2アニオン交換ユニット又は前記第1及び第2の両アニオン交換ユニット中の前記アニオン交換樹脂が、弱塩基性アニオン交換樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1及び第2の両アニオン交換ユニット中の前記アニオン交換樹脂が、弱塩基性アニオン交換樹脂を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1アニオン交換ユニット、前記第2アニオン交換ユニット又は前記第1及び第2の両アニオン交換ユニット中の前記アニオン交換樹脂が強塩基性アニオン交換樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記鉱酸が、硫酸、塩酸、亜硫酸、リン酸及びその組合せから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記鉱酸が、硫酸である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記有機酸が、酢酸、ギ酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸及びその組合せから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有機酸が、酢酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)、工程(iv)又は工程(ii)と工程(iv)の両工程の前記1種以上の再生剤が、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液から成る群より選択されるアルカリ溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アルカリ溶液が、水酸化アンモニウム溶液である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1アニオン交換ユニット、前記第2アニオン交換ユニット又は前記第1及び第2の両アニオン交換ユニットが、擬似移動床式(SMB)システム又は改良型擬似移動床式(ISMB)システムである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記有機酸が、酢酸であり、かつ前記1つ以上の生成物ストリームから前記酢酸を蒸留によって回収する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記有機酸が、酢酸であり、かつ前記1つ以上の生成物ストリームから前記酢酸を液-液抽出によって回収する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記有機酸が、酢酸であり、かつ前記1つ以上の生成物ストリームから前記酢酸を空気又は蒸気でストリッピングすることによって回収する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の生成物ストリームが、酢酸の塩を含み、かつ前記酢酸を回収する前に第2の酸を添加して、前記1つ以上の生成物ストリームのpHを約4以下に調整する工程をさらに含む、請求項14、15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記水性糖ストリームが、約0.4〜約5.0のpHである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
リグノセルロース系原料に1種以上の酸を添加することによって、前記リグノセルロース系原料を約0.4〜約5.0のpHで前処理することによって、前記原料中のヘミセルロースの少なくとも一部を加水分解することによって前記水性糖ストリームを得る、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記水性糖ストリームが、1種以上の酸をリグノセルロース系原料に添加して、前記リグノセルロース系原料中に存在するヘミセルロースとセルロースの両方をそれらのそれぞれの糖モノマーに加水分解することから得た加水分解物ストリームである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
工程(ii)、(iv)又は工程(ii)及び(iv)の両工程中の1種以上の再生剤が、アルカリ溶液、酸溶液又は水から選択される水溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
工程(ii)、(iv)又は工程(ii)及び(iv)の両工程中の1種以上の再生剤が、アルカリ溶液又は酸溶液から選択される水溶液である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
鉱酸と、有機酸と、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース及びその組合せから成る群より選択される糖とを含む水性糖ストリームから有機塩又は有機酸を得るための方法であって、以下の工程、
(i) アニオン交換樹脂の1つ以上の床を含む分離システムに前記水性糖ストリームを導入し、かつ前記糖を含む少なくとも1つのストリームを前記分離システムから得る工程、
(ii) 1以上の段階で前記アニオン交換樹脂の1つ以上の床を再生させることによって、前記鉱酸、前記鉱酸の塩、又はその組合せを含む少なくとも1つのストリームと、前記有機酸、前記有機酸の塩、又はその組合せを含む別個の少なくとも1つの生成物ストリームとを生成する工程、及び
(iii) 前記少なくとも1つの生成物ストリームを回収する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
前記アニオン交換システムが、第1及び第2のアニオン交換ユニットを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記導入工程が、前記第1アニオン交換ユニットに前記水性糖ストリームを供給する工程であって、前記鉱酸、前記鉱酸のアニオン、又はその組合せが、前記第1アニオン交換ユニットの樹脂に結合する工程を含み、
さらに、
前記第1アニオン交換ユニットから、前記糖と、前記有機酸、前記有機酸の塩、又はその組合せとを含む流出ストリームを得てから、前記流出ストリームを前記第2アニオン交換ユニットに供給し、かつ前記有機酸、前記有機酸のアニオン又はその組合せが前記第2アニオン交換ユニットの前記樹脂に結合する工程を含み、かつ
前記再生工程が、前記第1アニオン交換ユニットに少なくとも1種の再生剤を添加して、前記鉱酸、前記鉱酸の塩、又はその組合せを含む少なくとも1つのストリームを生成し、かつ前記第2アニオン交換ユニットに少なくとも1種の再生剤を添加して、前記有機酸、前記有機酸の塩、又はその組合せを含む少なくとも1つの生成物ストリームを生成する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記水性糖ストリーム中に存在する前記有機酸の少なくとも約70%を前記第2アニオン交換ユニットに供給する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程(i)〜(iii)を単一のアニオン交換ユニットで行う、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記導入工程において、前記鉱酸、有機酸、又はそれらのアニオンが前記樹脂に結合する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記鉱酸、前記鉱酸の塩、又はその組合せを回収する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記分離システムが、弱塩基性アニオン交換樹脂を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記分離システムが、強塩基性アニオン交換樹脂を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記鉱酸が、硫酸、塩酸、亜硫酸、リン酸及びその組合せから成る群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記鉱酸が、硫酸である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記有機酸が、酢酸、ギ酸、ガラクツロン酸、グルクロン酸及びその組合せから成る群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記有機酸が、酢酸である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記有機酸が、酢酸である、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記再生が、1種以上の再生剤を前記1つ以上の樹脂床に添加して前記アニオン交換樹脂を再生させる工程を含み、前記1種以上の再生剤が、アルカリ溶液、酸溶液、水、又はその組合せから選択される水溶液である、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記1種以上の再生剤が、アルカリ溶液、酸溶液又はその組合せから選択される水溶液である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記アルカリ溶液が、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、及びその組合せから成る群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記アルカリ溶液が、水酸化アンモニウム溶液である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記分離システムが、擬似移動床式(SMB)システム又は改良型擬似移動床式(ISMB)システムである、請求項23に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの生成物ストリームから前記酢酸を蒸留によって回収する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つの生成物ストリームから前記酢酸を液-液抽出蒸留によって回収する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つの生成物ストリームから前記酢酸を空気又は蒸気でストリッピングすることによって回収する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1つの生成物ストリームが酢酸の塩を含み、かつ前記酢酸を回収する前に酸を添加して、前記少なくとも1つの生成物ストリームのpHを約4以下に調整する工程をさらに含む、請求項42、43又は44に記載の方法。
【請求項46】
前記水性糖ストリームが、約0.4〜約5.0のpHである、請求項23に記載の方法。
【請求項47】
前記水性糖ストリームが、リグノセルロース系原料を約0.4〜約5.0のpHで前処理して、前記原料中に存在するヘミセルロースの少なくとも一部を加水分解することから生じた加水分解物ストリームである、請求項23に記載の方法。
【請求項48】
前記水性糖ストリームが、リグノセルロース系原料に酸を添加して、前記リグノセルロース系原料中に存在するヘミセルロースとセルロースの両方をそれらのそれぞれの糖モノマーに加水分解することから生じた加水分解物ストリームである、請求項23に記載の方法。
【請求項49】
リグノセルロース系原料から酢酸塩、酢酸又はその組合せを得るための方法であって、以下の工程、
(i) 前記リグノセルロース系原料の加水分解から生じた水性糖ストリームを得る工程(前記加水分解は硫酸添加の1以上の段階を含み、前記糖ストリームは酢酸、酢酸塩、又はその組合せ、硫酸、並びにキシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マンノース及びその組合せから選択される1種以上の糖を含む)、
(ii) アニオン交換樹脂の1つ以上の床を含む模擬移動床式分離システムに前記水性糖ストリームを導入し、かつ該システムから前記1種以上の糖を含む少なくとも1つのストリームを得る工程、
(iii) 前記アニオン交換樹脂の1つ以上の床を硫酸で再生させることによって、前記酢酸を含む少なくとも1つの有機酸生成物ストリームを生成し、その後、前記アニオン交換樹脂の1つ以上の床を水酸化アンモニウムで再生させて、硫酸アンモニウムを含む少なくとも1つの別個の出口ストリームを生成する工程、及び
(iv) 前記少なくとも1つの生成物ストリームを回収する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項50】
前記硫酸の添加を行って前記リグノセルロース系原料を前処理することによって、前記リグノセルロース系原料中に存在するヘミセルロースの少なくとも一部を糖モノマーに加水分解する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記硫酸の添加を行って、前記リグノセルロース系原料中に存在するヘミセルロースとセルロースの両方をそれらのそれぞれの糖モノマーに加水分解する、請求項49に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−501013(P2010−501013A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524850(P2009−524850)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001204
【国際公開番号】WO2008/019468
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(509047409)アイオジェン エナジー コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001204
【国際公開番号】WO2008/019468
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(509047409)アイオジェン エナジー コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】
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