説明

水性顔料分散液及びインク組成物

【課題】顔料の分散安定性とpH低下の抑制を両立できる水性顔料分散液を提供する。
【解決手段】(a)顔料、 (b)分散剤及び(c)水性媒体を含む水性顔料分散液であって、該水性顔料分散液中の遊離硫酸イオンの重量が(a)顔料の重量に対して800ppm以下である水性
顔料分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離硫酸イオンが顔料に対して800ppm以下である水性顔料分散液に関する。詳しくは、インクジェットプリンター用の記録液として好適な顔料分散型のインク組成物と、このインク組成物の原料として好適な水性顔料分散液と、このインク組成物を用いたインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは、フルカラーの高解像画像が容易に得られること、消費電力が少ないこと、導入コストやランニングコストが安いこと、更には電子写真印刷同等の高速印字が出来るようになってきたこと、などの理由から、ビジネスユースの利用が急速に広がりつつある。現在、インクジェットプリンターに用いる記録液としては、水性の記録液が主流であり、特に黒色の記録液に関しては、色材に顔料を用いた水性記録液が主流となりつつある。
【0003】
色材に顔料を用いる場合、そのままでは水性媒体になじまないことから、水性媒体中で安定に分散させる必要がある。その方法としては、顔料表面に親水性の官能基を化学的に結合させ、それ自体で水性媒体に分散させる、いわゆる「自己分散」と、顔料を樹脂や界面活性剤といった分散剤を用いて水性媒体中に分散させる「分散剤による分散」がある。中でも「分散剤による分散」は、分散剤の種類や量をコントロールすることで顔料分散体に様々な機能を付与できるため盛んに検討されている。
【0004】
この顔料分散体に求められる基本特性として、まず高い分散安定性が挙げられる。これは印刷物の解像度向上に伴い、インク吐出ノズルからの1回のインク吐出量の低下が著しいことと、インクジェットプリンターの印刷速度向上に対する要求が高まっていることから、目詰まりに対する信頼性がより強く求められているためである。
また、pH低下を引き起こさないことも挙げられる。一般的に水性記録液は、構成部材の耐腐食性防止のためにpHを調整しているが、記録液が顔料分散体の場合には、pHの変化、特に低下を引き起こすという問題があった。pH低下の原因は解明されていない。このpH低下は温度が高いと著しく発生し、輸送時で高温となることを考慮すると、接液部材の耐久性を落とすことが懸念されている。
【0005】
ところで、例えば、表面処理を施した自己分散顔料中の硫酸イオンを一定量以下まで減らしたインクが開示されている(特許文献1、2)。しかし、これらは表面に直接分散性付
与基を導入する処理をする過程で硫酸イオンが大量に発生するという自己分散顔料の調製に特有の問題を解消するための精製であり、反応前の顔料については元々硫酸イオンが少ないため影響は少ないとしている。更に硫酸イオンを減らすことによる、分散安定性改善以外の効果についての示唆は一切無い。
【0006】
顔料の分散安定性を高めながらpH低下を抑制するための方法としては、表面処理を施された顔料の分散液に、特定の緩衝剤を添加する方法が開示されている(特許文献3)。
しかし、この方法に用いられる顔料は、表面に直接分散性付与基を導入された自己分散顔料であるため、緩衝剤のイオン吸着が起こっても分散安定性が保たれるため効果を奏するものの、分散剤による顔料分散の場合は、顔料に緩衝剤のイオン吸着が起こると分散剤の吸着が阻害され、凝集が発生してしまうため、適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-345086号公報
【特許文献2】WO00/75245号公報
【特許文献3】特開2003-201430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、顔料分散剤を用いた水性顔料分散体で、顔料の分散安定性とpH低下の抑制を両立できる方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたもので、鋭意検討を行った結果、顔料、分散剤、水性媒体を含む水性顔料分散液において、顔料分散液中の遊離硫酸イオンの重量を、顔料の重量に対して800ppm以下にすることで、分散安定性とpH低下の抑制が両立できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の第一の要旨は、(a)顔料、 (b)分散剤及び(c)水性媒体を含む水性顔料分散液であって、該水性顔料分散液中の遊離硫酸イオンの重量が(a)顔料の重量に対して800ppm以
下である水性顔料分散液、に存する。
【0010】
本発明の第二の要旨は、前記水性顔料分散液の製造方法であって、(a)顔料を水でろ過
洗浄して、(a)顔料中の遊離硫酸イオンの含有量を800ppm以下に減らした後に、(a)顔料を(b)分散剤及び(c)水性媒体と混合することを特徴とする水性顔料分散液の製造方法、に存する。
本発明の第三の要旨は、(a)顔料、 (b)分散剤及び(c)水性媒体を含むインク組成物であって、該インク組成物中の遊離硫酸イオンの重量が(a)顔料の重量に対して800ppm以下で
あるインク組成物、に存する。
【0011】
本発明の第四の要旨は、前記インク組成物の液滴をインクジェットヘッドから吐出させ、該液滴を記録媒体に付着させることを特徴とするインクジェット記録方法、に存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水性顔料分散液によれば、顔料分散剤を用いた水性顔料分散液で、分散安定性が高く、pH低下が抑制された顔料分散液を提供することが出来る。
特に本発明の水性顔料分散液は、インクジェットプリンター等の記録液に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容には特定されない。
なお、以下において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0014】
〔水性顔料分散液〕
本発明の水性顔料分散液は、(a)顔料、 (b)分散剤及び(c)水性媒体を含む水性顔料分散液であって、 該水性顔料分散液中の遊離硫酸イオンの重量が(a)顔料の重量に対して800ppm以下であることを特徴とする。
本明細書でいう「水性顔料分散液」とは、分散剤で顔料を水中で分散した分散液をいう。
【0015】
[遊離硫酸イオンの量]
水性顔料分散液中の遊離硫酸イオンの量は、水性顔料分散液中の顔料をマイクロフィルター等で濾別したのちに、イオンクロマトグラフィーによって測定する。
遊離硫酸イオンの重量を顔料の重量に対して800ppm以下とすることで、分散安定性が高く、pH低下が抑制された水性顔料分散液を得ることができる。硫酸イオン量をかくなる範囲に収めることで、pH低下が抑制される理由については明らかではないが、特にカーボンブラックを用いた場合のpHの低下が、CB表面の酸化反応に由来していると考えると、硫酸イオンが一定以上含まれると、酸化反応を促進する効果がある可能性がある。顔料に対して遊離硫酸イオンが800ppm以下という極めて微量な範囲に設定することでpH低下を促進する作用が抑えられるようになるものと考えられる。
【0016】
中でも顔料に対する遊離硫酸イオンの量は、600ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましい。遊離硫酸イオンの量は少ない方が好ましいが、精製の負荷の観点から、通常10ppm以上である。
[(a)顔料]
本発明に用いられる顔料としては、各用途において一般的なものを適宜選択すればよく、特に限定されないが、代表的なものを例示すると、炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、マイカなどを代表とする体質顔料;酸化チタン、酸化亜鉛、ゲーサイト、マグネタイト、酸化クロムなどを代表とする金属酸化物系顔料;チタンイエロー、チタンバフ、アンチモンイエロー、バナジウムスズイエロー、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、マンガングリーン、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンブルー、タングステンブルー、エジプトブルー、コバルトブラックなどを代表とする複合酸化物系顔料;リトボン、カドミウムレッドイエロー、カドミウムレッドなどを代表とする硫化物系顔料;ミネラルバイオレット、コバルトバイオレット、リン酸コバルトリチウム、リン酸コバルトナトリウム、リン酸コバルトカリウム、リン酸コバルトアンモニウム、リン酸ニッケル、リン酸銅を代表とするリン酸塩系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジを代表とするクロム酸塩系顔料;群青、プルシアンブルーを代表とする金属錯塩系顔料;アルミニウムペースト、ブロンズ粉、亜鉛末、ステンレスフレーク、ニッケルフレークを代表とする金属粉系顔料;カーボンブラック、オキシ塩化ビスマス、塩基性炭酸塩、二酸化チタン、被覆雲母、ITO、ATOを代表とする真珠光沢顔料・真珠顔導電性顔料等の無機顔料;及びキナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、金属錯体系顔料、アゾメチン系顔料又はアゾ系顔料などの有機顔料が挙げられる。
【0017】
上記顔料の具体例としては下記に示すピグメントナンバーの顔料及び一般に色材分野で用いられている公知のカーボンブラックを挙げることができる。なお、以下に挙げる「C.I.ピグメントレッド2」等の用語は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0018】
赤色色剤:C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、54、57、57:1、57:2、58、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、2
08、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276;
【0019】
青色色剤:C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79;
緑色色剤:C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55;
【0020】
黄色色剤:C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、23、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208、215;
【0021】
オレンジ色剤:C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79;
バイオレット色剤:C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50;
ブラウン色剤:C.I.ピグメントブラウン1、6、11、22、23、24、25、27、29、30、31、33、34、35、37、39、40、41、42、43、44、45;
黒色色剤:C.I.ピグメントブラック1、31、32
【0022】
上記顔料のうち、赤色顔料として好ましくは、キナクリドン系顔料、キサンテン系顔料、ペリレン系顔料、アンタントロン系顔料及びモノアゾ系顔料が挙げられ、その具体例としては、C.I.ピグメントレッド−5,−7,−12,−112,−81,−122,−123,146,−147,−168,−173,−202,−206,−207,−209、C.I.ピグメントバイオレット−19等が挙げられる。このうち、顔料の安定性や色合いの面から、キナクリドン系顔料、及び、2種類以上のキナクリドン系顔料からなる固溶体がより好ましい。
【0023】
上記顔料のうち、黄色顔料としてモノアゾ系顔料及びジスアゾ系顔料が印字物としての発色が他の顔料に対して良好である事から好ましい。その中でも、C.I.Pigment―1、−3、−16,−17、−74、−120、−128、−151、−175、−215は、その色合いの面から特に好ましく、更にその中でもC.I.Pigment
Yellow−74、−155がノンハロゲン化合物であり環境に与える影響が小さいことや色合いの面から特に好ましい。
【0024】
先述の顔料のうち、青色顔料として好ましくは、銅フタロシアニン顔料が印字物としての発色が他の顔料に対して良好である事から好ましい。その中でも、C.I.Pigment Blue−15:3が、安定性や色合いの面から好ましい。
また、本発明において用いられるカーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等の各種のカーボンブラックが使用できる。これらの中では、チャンネルブラック又はファーネスブラックが好ましく、特にファーネスブラックが好ましい。
【0025】
上記カーボンブラックの具体例としては、次の(1)〜(4)に示す商品が挙げられる。
(1)#2700B,#2650,#2650B,#2600,#2600B,2450B,2400B,#2350,#2300,#2300B,#2200B,#1000,#1000B,#995B,#990,#990B,#980,#980B,#970
,#960,#960B,#950,#950B,#900,#900B,#850,#850B,MCF88,MCF88B,MA600,MA600B,#750B,#650B,#52,#52B,#50,#47,#47B,#45,#45B,#45L,#44,#44B,#40,#40B,#33,#33B,#32,#32B,#30,#30B,#25,#25B,#20,#20B,#10,#10B,#5,#5B,CF9,CF9B,#95,#260,MA77,MA77B,MA7,MA7B,MA8,MA8B,MA11,MA11B,MA100,MA100B,MA100R,MA100RB,MA100S,MA230,MA220,MA200RB,MA14,#3030B,#3040B,#3050B,#3230B,#3350B(以上、三菱化学社製品)。
【0026】
(2)Monarch 1400,Black Pearls 1400,Monarch 1300,Black Pearls 1300,Monarch 1100,Black Pearls 1100,Monarch 1000,Black Pearls 1000,Monarch 900,Black Pearls 900,Monarch 880,Black Pearls 880,Monarch 800,Black Pearls 800,Monarch 700,Black Pearls 700,Black Pearls 2000,VulcanXC72R,Vulcan
XC72,Vulcan PA90,Vulcan 9A32,Mogul L,Black Pearls L,Regal 660R,Regal 660,Black Pearls 570,Black Pearls 520,Regal 400R,Regal 400,Regal 330R,Regal 330,Regal 300R,Black Pearls 490,Black Pearls 480,Black
Pearls 470,Black Pearls 460,Black Pearls 450,Black Pearls 430,Black Pearls 420,Black Pearls 410,Regal 350R,Regal 350,Regal250R,Regal 250,Regal 99R,Regal 99I,Elftex Pellets 115,Elftex 8, Elftex 5,Elftex 12,Monarch 280,Black Pearls 280,Black
Pearls 170,Black Pearls 160,Black Pearls130,Monarch 120,Black Pearls 120(以上、キャボット社製品)。
【0027】
(3)Color Black FW1,Color Black FW2,Colo
r Black FW2V,Color Black FW18,Color Black FW200,Special Black 4,Special Black 4A,Special Black5,Special Black 6,Color Black S160,Color Black S170,Printex U,Printex V,Printex 150T,Printex 140U,Printex 140V,Printex 95,Printex 90,Printex 85,Printex 80,Printex 75,Printex 55,Printex 45,Printex 40,Printex P,Printex 60,Printex XE,Printex L6,Printex L,Printex 300,Printex 30,Printex 3,Printex 35,Printex 25,Printex 200,Printex A,Printex G,Special
Black 550,Special Black 350,Special Black 250,Special Black 100(以上、デグッサ製品)。
【0028】
(4)Raven 7000,Raven 5750,Raven 5250,Raven 5000 ULTRA,Raven 3500,Raven 2000,Raven 1500,Raven 1255,Raven 1250,Raven 1200,Raven 1170,Raven 1060 ULTRA,Raven 1040,Raven 1035,Raven 1020,Raven 1000,Raven890H,Raven 890,Raven 850,Raven 790 ULTRA,Raven 760 ULTRA,Raven 520,Raven 500,Raven 450,Raven 430,Raven 420,Raven 410,CONDUCTEX 975 ULTRA,CONDUCTEX SC ULTRA,Raven H2O,Raven C ULTRA(以上、コロンビア社製品)。
【0029】
また、安全性の観点から、600〜1500℃での焼成により、多環芳香族成分を低減させたカーボンブラックを使用することが好ましい。特に高温での焼成処理は、カーボンブラック表面の官能基が除去されることにより、分散剤がカーボンブラック表面により効率よく、より堅固に吸着されるため、より好ましい。
本発明に係る顔料としては、前記の顔料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、他の色材と組み合わせて用いることもできる。
【0030】
また、顔料の形状は、ペースト、パウダー、固溶体等のいずれの形態であっても良い。
これら顔料の平均1次粒子径は、目的に応じて任意に設定すればよいが、通常10nm以上であり、通常800nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下、特に好ましくは100nm以下である。ここで顔料の平均一次粒子径は電子顕微鏡による算術平均径(数平均)である。
【0031】
なお、上記顔料としては、化学修飾がされておらず、また、顔料の小粒径化を促進するための結晶化抑止剤等の、顔料以外の不純物を含まないものが、ポリマーの顔料への吸着を阻害しないことから好ましい。ただし、顔料に自己分散性を持たせるために、予め公知の化学修飾を行った自己分散性を有する顔料も使用できる。即ち、本発明の水性顔料分散液において用いる顔料は、先述したような、未処理の顔料でも、また表面を化学修飾した顔料でも、任意の顔料を使用できる。
【0032】
上記顔料の中でも、カーボンブラックが好ましく、以下の特徴を有するカーボンブラックがより好ましい。
すなわち、カーボンブラックの平均一次粒子径は、20nm以下が好ましく、より好ましくは18nm以下である。平均一次粒子径が大きすぎると、保存安定性が悪くなり、また沈降しやすく、また比表面積が小さくなりすぎて印字濃度が低下する傾向がある。ここでカ
ーボンブラックの平均一次粒子径は電子顕微鏡による算術平均径(数平均)である。
【0033】
また、カーボンブラックのDBP吸収量は、50cm3/100g以上、200cm3/100g以下が好ましく、さらに80cm3/100g以上、150cm3/100g以下が好ましい。DBP吸収量が小さすぎるカーボンブラックは、普通紙で裏抜けしやすく、紙上面
に留まりにくく、印字濃度が低くなる傾向がある。DBP吸収量が大きすぎるカーボンブラ
ックは、難分散性であり、更には保存安定性、吐出安定性が低下する傾向がある。
なお、ここでのDBP吸収量は、JISk6221で定められたカーボンブラック100gが吸収するジブチルフタレート(DBP)量である。
【0034】
[(b)分散剤]
分散剤としては、界面活性剤や高分子分散剤などの従来公知のものから任意に選択することができるが、中でも顔料の分散性の観点から少なくとも1種類以上の疎水性基及び、少なくとも1種類以上のアニオン性基を含有するポリマー(疎水性基含有アニオン性ポリマー、以下単に「ポリマー」と呼称)であることが好ましい。
【0035】
疎水性基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基などの脂肪族系疎水性基、シクロヘキシル基、イソボルニル基などの脂環式系疎水性基、フェニル基、ナフチル基などの芳香族系疎水性基が挙げられる。またこれらの芳香族系疎水基は無置換でも更に置換基を有していてもよい。芳香族炭化水素基の置換基としては、前述したような脂肪族系疎水性基、脂環式系疎水性基、芳香族系疎水性基が挙げられる。ポリマー中の疎水性基の含有量は、顔料吸着性の観点から通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、分散
性確保の観点から通常95重量%以下、好ましくは90重量%以下である。
【0036】
アニオン性基とは、水中でアニオン電荷を有することができるpKaが8以下の官能基
であり、例えばカルボン酸、スルホン酸、リン酸等の酸由来の酸性基あるいはそれらの有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。中でもカルボン酸等の弱酸性の酸性基由来の構造が好ましい。ポリマー中のアニオン性基の含有量は、分散性確保の観点から通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、顔料吸着性の観点から通常95
重量%以下、好ましくは90重量%以下である。
これらの基は、モノマー構成単位でポリマー中に含まれることが好ましい。
【0037】
<ポリマーの構造>
該ポリマーの一次構造に制限はなく、具体的な例としては、直鎖型、星型、櫛型、分岐、ブロック型ポリマーなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。また、このポリマーは、例えば、合成ポリマー又は天然高分子でもよく、またそれらの誘導体や変性体であってもよいが、構造の制御の観点から、合成ポリマー及びその誘導体や変性体が好ましい。
【0038】
<ポリマーの合成法>
本発明で用いるポリマーは、ラジカル重合、イオン重合、重付加、重縮合などの公知の重合方法を選択でき、またこれらの公知の方法で合成したポリマーの誘導体や変性体であってもよい。なかでも合成手法が簡便であることから、重合性モノマーをラジカル重合して合成されるポリマーが好ましい。
【0039】
<疎水性モノマー>
疎水性モノマーとしては、特に限定されるものではなく、従来公知の疎水性モノマーが使用できるが、特に、疎水性モノマーの少なくとも1つが以下に記載するような芳香環含有モノマー及び/又は脂肪族炭化水素基を含有するモノマーであることが好ましい。
芳香環含有モノマーとは、芳香族複素環含有モノマー又は芳香族炭化水素環含有モノマ
ーであり、例えばベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、9−アントラセニル(メタ)アクリレート、1−ピレニルメチル(メタ)アクリレートスチレン、ビニルナフタレン、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、4−ビニルビフェニル、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルフェノール、安息香酸ビニル、ビニルナフタレン、ベンジルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0040】
脂肪族炭化水素基含有モノマーに含まれる脂肪族炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよい。
直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基を有するモノマーとしては、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0041】
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、i−デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、i−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、i−ステアリル(メタ)アクリレート、ベへニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートエステル類; メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類; アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類; 酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸エステル、イタコン酸エステル等のジカルボン酸エステル誘導体;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニルエステル類:
環状の脂肪族炭化水素基を有するモノマーとしては、例えばシクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートエステル類、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエン、シクロペンタジエン、1,5,9−シクロドデカトリエン、1−クロロ−1,5−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン2,3−ジカルボン酸ジメチル等の環状オレフィン類などが挙げられる。
【0042】
これらの疎水性モノマーは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
<アニオン性モノマー>
アニオン性モノマーとしては以下に例示されるものを用いることができるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが使用できる。
【0043】
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、或いはこれらの塩等のカルボン酸系モノマー;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−メタクリロイルオキシブタンスルホン酸、或いはこれらの塩等のスルホン酸系モノマー;ビニルホスホン酸、メタアクリロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート或いはこれらの塩等のリン酸系モノマー:
中でも、カルボン酸基及びカルボン酸のアルカリ(土類)金属塩がpH安定性の観点から好ましい。この場合のカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸がより好ましい。
【0044】
また、アニオン性モノマーは塩であることが好ましく、中でも有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることがより好ましい。
これらのアニオン性モノマーは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0045】
<その他のモノマー>
本発明に関わるポリマーには、疎水性モノマー、アニオン性モノマー以外の重合性モノマー由来の構成単位を含んでいても良い。その他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく従来公知のものが使用できる。例えば、その他のモノマーとしては、以下に例示するようなカチオン性モノマー、ノニオン性モノマーが挙げられる。
【0046】
<カチオン性モノマー>
カチオン性モノマーとしては以下に例示されるものを用いることができるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが使用できる。
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートなどのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのような3級アミノ基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルオクチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルオクチルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルドデシルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルドデシルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルヘキサデシルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルオクチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルオクチルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルドデシルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルドデシルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルヘキサデシルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルオクチルアンモニムク
ロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルオクチルアンモニムブロマイド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルドデシルアンモニムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルドデシルアンモニムブロマイド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルヘキサデシルアンモニムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルヘキサデシルアンモニムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチルスルフェー卜、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホネート、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエチルスルフェー卜、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホネートのような4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマー;その他、ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン等のジアルキルアミノ基を有するスチレン類;4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン等のビニルピリジン類;又はこれらをハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、アルキル若しくはアリルスルホン酸又は硫酸ジアルキル等の公知の四級化剤を用いて四級化したもの、重合後に加水分解することによってアミノ基を生成するN−ビニルホルムアミド及びN−ビニルアセトアミド、アリルアミン塩酸塩など:
【0047】
中でも、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有重合性不飽和モノマー、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチルスルフェー卜等の4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマーが好ましく、その中でも4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマーが更に好ましい。その中でも、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドが最も好ましい。
【0048】
<ノニオン性モノマー>
ノニオン性モノマーとしては、以下のものが挙げられるが、以下の例示に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピルなどの第1級アミノ基を有するモノマー;(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸エチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルアミノプロピル、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどの第2級アミノ基を有するモノマー; (メタ)アクリルアミド、アルキル基の炭素数が1〜6のN−アルキル(メタ)アクリルアミド、アルキル基の炭素数が1〜3のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエタノール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−(2−(ポリエチレングリコール)エチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−(2,2’−(ポリエチレングリコール)ジエチル)(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、N−ビニルオキサゾリドン、2−N−ピロリドンエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロ
ラクタム、9−ビニルカルバゾール、N−ビニルフタルイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、アジリジン環含有モノマーなどのヘテロ環を有するモノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸エステル、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルなどの水酸基を含有するモノマー;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)(メタ)アクリレート、プロピレングリコールポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)(メタ)アクリレートなどの含オキシアルキレン鎖モノマー;
【0049】
グルコース、マンノース、ガラクトース、グルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミン等の六炭糖類、アラビノース、キシロース、リボース等の五炭糖類、マルトース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラミナリビオース、キトビオース、キシロビオース、マンノビオース、ソホロース等の2糖類、その他、マルトトリオース、イソマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マンノトリオース、マンニノトリオース等のオリゴ糖、セルロース、変性セルロース等の多糖類に由来するような構造を持ちグリコシル基を有するモノマー、例えばグルコシルエチルメタクリレート等のようなモノマー;
ポリビニルアルコール構造を側鎖に有するマクロモノマー:
ノニオン性モノマー構造単位としては、中でも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドンアルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0050】
これらのノニオン性モノマー構造単位は、ポリマー中に1種類含有されてもよく、2種類以上含有されていてもよい。
<ポリマー中の各モノマー構成単位の割合>
本発明に係るポリマー中の疎水性モノマー構成単位/アニオン性モノマー構成単位の重量比は、通常5/95〜97/3、好ましくは20/80〜90/10である。
【0051】
この範囲よりも疎水性モノマー構成単位が少なく、アニオン性モノマー構成単位が多いと、ポリマーが顔料表面から脱離し、分散安定性が低下したり増粘したりする場合がある。逆に、この範囲より疎水性モノマー構成単位が多く、アニオン性モノマー構成単位が少ないと、顔料表面の解離したアニオン性基数が所望の割合よりも少なくなってしまい、分散安定性や吐出性が低下し、かつ保存安定性も低下する場合がある。
【0052】
また、本発明に係るポリマーが、更にノニオン性モノマー構成単位を含む場合、その含有割合は、通常90重量%以下であり、より好ましくは80重量%以下である。ポリマーがノニオン性モノマー構成単位を含有することにより、分散性や吐出性が向上するという効果が得られる。しかし、この上限値よりノニオン性モノマー構成単位が多いと、ポリマ
ー全体に占める疎水性モノマー構成単位、およびアニオン性モノマー構成単位の含有量が少なくなってしまい、分散安定性が低下する場合がある。
本発明に係るポリマーが、カチオン性モノマー構成単位を含む場合、その含有割合は他の構成単位とのバランスの観点から通常1重量%以上90重量%以下、好ましくは5重量%以上80重量%以下である。
【0053】
<ポリマーの分子量および分子量分布>
本発明で用いるポリマーの数平均分子量は好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは6000以上で、上限は好ましくは50000以下、より好ましくは40000以下、更に好ましくは25000以下である。分子量がこの範囲より大きいと得られる水性顔料分散液の粘度が増大する傾向があり、小さいとポリマーが顔料表面からはがれ易くなり、分散が不安定化する場合がある。
なお、ここでいう分子量の値は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されるポリスチレン換算の値である。
【0054】
[(c)水性媒体]
本発明の水性顔料分散液における水性媒体としては、水及び/又は水溶性の有機溶媒が挙げられる。水溶性の有機溶媒としては、この用途に一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、具体的には、水よりも蒸気圧の小さいものであり、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、イソブチレングリコール、チオジグリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、グリセリン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールイソプロピレンエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等の多価アルコールエーテル類;アセトニルアセトン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、ジアセチン、リン酸トリエチル等のエステル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等の低級アルコキシアルコール類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタメチルジエチレントリアミン等のアミン類;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、モルホリン、N−
エチルモルホリン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、イミダゾール、メチルイミダゾール、ヒドロキシイミダゾール、ジメチルアミノピリジン、1,3−プロパンスルトン、ヒドロキシエチルピペラジン、ピペラジン等の複素環類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホン類等が挙げられる。上述の水性媒体としては、環境負荷の低さや製造の容易さの観点から、水又は水と水溶性有機溶媒との混合物であることが好ましい。中でも、安全性の観点から、水または水の割合が90重量%以上である水と水溶性有機溶媒との混合物がより好ましい。この中でも水がさらに好ましい。水の割合が90%未満であると、ポリマーの顔料表面への吸着が弱くなり、分散安定性が低下する傾向がある。
【0055】
[水性顔料分散液の性質]
本発明の水性顔料分散液中の顔料濃度としては、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。ここで、顔料濃度が高過ぎると、顔料が分散不良となり、また、分散液の粘度が増大し、分散液がゲル化したり、また分散破壊により分散液が使用できなったりする場合がある。あまり顔料濃度が低すぎるとインク化時に濃縮の手間がかかる場合があるので、通常、0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
【0056】
本発明の水性顔料分散液中の分散剤濃度は、粘度の観点から、顔料に対して好ましくは100重量%以下、より好ましくは50重量%以下、特に好ましくは30重量%以下であり、分散安定性の観点から通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上である。
本発明の水性顔料分散液のpHは、通常7以上12以下であり、好ましくは7以上11以下である。pHがこの範囲から外れると、接液部材の耐久性を落とす場合がある。
【0057】
〔水性顔料分散液の製造方法〕
本発明の水性顔料分散液の製造方法において、顔料、分散剤、及び水性媒体の混合方法や添加順序は任意であるが、例えば、(a)顔料、(b)分散剤、(c) 水性媒体を一度に混合したものに、一般的な分散機を用いて分散処理を施せばよい。
[顔料]
顔料は、顔料中に含まれる遊離硫酸イオンの量が800ppm以下であるものを使用することが好ましい。
【0058】
顔料中の遊離硫酸イオンの量が800ppmを超える場合は、遊離硫酸イオンの量が800ppm以下となるように、洗浄及び/又は精製を行って、遊離硫酸イオンを減らしてから用いることが好ましい。特に顔料がカーボンブラックの場合は、遊離硫酸イオン濃度が高いので、洗浄及び/又は精製を行って、遊離硫酸イオンを減らしてから用いることが好ましい。これは、硫酸イオンの発生原因となる硫黄分が、カーボンブラックの原料であるクレオソート油中に必ず含まれおり、これがカーボンブラックの製造過程で一部酸化されるためである。
【0059】
顔料の洗浄方法・精製方法としては、例えばろ過、遠心分離、分離膜法、イオン交換樹脂処理法、逆浸透法、活性炭法、ゼオライト法等があり、これらを組み合わせても差し支えない。洗浄媒体としては水、酸性水、アルカリ水、各種有機溶媒等、遊離硫酸イオンが除去できるものであれば任意に選択できる。
【0060】
中でも、洗浄方法としては、操作の簡便性からろ過洗浄が好ましい。また、洗浄媒体としては、硫酸イオンの溶解度の観点から水が好ましい。ろ過洗浄を行う場合のろ過前のスラリー濃度は、顔料が十分懸濁される濃度であれば良く、通常25重量%以下である。また
、廃液量の観点から、通常5重量%以上である。スラリーの攪拌強度及び時間は顔料中の遊離硫酸イオンが確実に液に溶出するように適宜設定すれば良い。遊離硫酸イオンが確実に
溶出しているかどうかは、例えばスラリーの導電率の値が一定になることで確認できる。圧力、フィルター材質といったろ過時の条件は、顔料とろ液を確実に分離できれば任意に選択できるが、操作の簡便さから、ろ紙を用いた吸引ろ過が好ましい。
【0061】
ろ過洗浄は、洗浄効果を高める観点から、煮沸した水で行うことが好ましい。水と顔料を混合・攪拌し、スラリー化した状態で煮沸してもよいし、煮佛した水を顔料に混合してもよい。これらの場合のスラリー濃度・攪拌強度は、室温の水で洗浄する場合と同様である。スラリー化した状態で煮沸する場合、煮沸時間は、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましく、6時間以上が更に好ましい。ろ過はスラリーを冷却してから行う。
【0062】
顔料中の遊離硫酸イオンの量は、少ない方が好ましく、好ましくは600ppm以下、より好ましくは500ppm以下であるが、精製の負荷の観点から、通常10ppm以上である。
[分散処理]
分散処理に用いる分散機としては、通常、顔料分散に使用される各種分散機が使用できる。
【0063】
分散機としては、特に限定されるものではないが、ニーダー、ソルトミリング、ロールミル、プラネタリーミキサー、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、アトライター、パールミル、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等を用いることができる。分散機としてメディアを使うものには、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズ等を用いることができる。このうち、好ましい分散処理方法は、超音波ホモジナイザーで分散する方法である。
【0064】
得られた分散液は、粗大粒子の除去等のために、フィルターを使用した加圧濾過や遠心分離を行ってもよい。
超音波ホモジナイザーで分散処理を行う際は、予め上記のニーダー、ソルトミリング、ロールミル、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、高圧ホモジナイザー、ビーズミルなどの各種方法で顔料、ポリマー、及び水を予備分散した後に行うのがよい。
【0065】
超音波ホモジナイザーによる分散処理時の顔料濃度は、通常3〜30重量%であり、好ましくは5〜20重量%、より好ましくは6〜16重量%である。この範囲よりも顔料濃度が低い場合は、顔料粒子が希薄なために分散効率が悪く、更には長時間超音波を照射しても顔料の粒子径が小さくならない傾向がある。逆に、この範囲よりも高い場合は、顔料粒子の濃度が高すぎることにより再凝集しやすく、また溶液粘度が高くなることにより攪拌効率が下がるため、超音波が均一に顔料粒子当りにくくなり、分散が不均一となる傾向がある。
【0066】
また、超音波の照射により著しく発熱するので、氷水などで冷却しながら分散するのが好ましく、その際、分散液温度が60℃以下となるように冷却を行うのがこのましい。分散液の温度が上がりすぎると、分散の進行よりも顔料同士の凝集の方が起こりやすくなるので分散は進まず、更には壁面に凝集した顔料が分散液に混入し、粗大粒子混入の原因となり、吐出性を低下させる場合がある。
【0067】
超音波分散機の出力は、顔料の粒子径が目標とする大きさになれば特に限定しないが、通常50W以上1200W以下である。出力が小さすぎると目標の粒子径まで小粒径化できなかったり、長時間かかり、出力が大きすぎると顔料やポリマー構造が破壊されたり、あるいは振動素子(金属チップ)から微小の金属片が多量に剥離し、不純物として分散液中
に混入し、その結果、吐出性や保存安定性、あるいは、ろ過性を悪化させる原因となる場合がある。
【0068】
分散時間は、顔料の粒子径が目標とする大きさになればよく、特に限定しないが、通常1分/分散液1kg以上800分/分散液1kg以下であり、好ましくは10分/分散液1kg以上である。分散時間が短すぎると、粗大粒子が多く残り、分散剤の顔料表面への吸着が不十分となり、分散安定性や保存安定性が低下する傾向がある。一方で、分散時間が長すぎると、数ナノから数十ナノメートルレベルの顔料微粒子が多く発生し、それらが分散安定性、保存安定性、更には吐出安定性を悪化させ、更には印字濃度を低下させる傾向がある。
得られた水性顔料分散液中の遊離硫酸イオン量が、顔料に対して800ppmを超える場
合には、例えば限外ろ過膜法、イオン交換樹脂処理法、逆浸透法により、水性顔料分散液中の遊離硫酸イオン量を減らすことができる。
【0069】
〔インク組成物(記録液)〕
本発明に係るインク組成物は、(a)顔料、 (b)分散剤及び(c)水性媒体を含むインク組成物であって、該インク組成物中の遊離硫酸イオンの重量が(a)顔料の重量に対して800ppm
以下であるインク組成物である。本発明のインク組成物は、インクジェット用記録液として優れた効果を奏する。
【0070】
本発明のインク組成物中の遊離硫酸イオンの量は、顔料に対して、少ない方が好ましく、好ましくは600ppm以下、より好ましくは500ppm以下であるが、精製の負荷の観点から、通常は10ppm以上である。
インク組成物中の遊離硫酸イオン量は、インク組成物中の顔料をマイクロフィルター等で濾別したのちに、イオンクロマトグラフィーによって測定する。
【0071】
記録液等として用いられる本発明のインク組成物(以下「本発明の記録液」と称す)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の本発明の水性顔料分散液の着色剤濃度を必要に応じて調整し、更には用途に応じて各種添加剤を加えて調製される。もしくは、水性顔料分散液の製造時に、用途に応じて各種添加剤を加えて調製してもよい。
着色剤としては、上述の本発明の水性顔料分散液中の顔料に加え、更に調色等の目的などで表面処理された自己分散性顔料や、染料、界面活性剤、分散剤等で分散された顔料、あるいは、染料等を追加で含んでいても良い。
【0072】
本発明の記録液における全着色剤の濃度は、記録液全量に対する、全着色剤の濃度として、通常0.1重量%以上、中でも0.5重量%以上であることが好ましく、その上限は通常25重量%以下、好ましくは20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。この着色剤濃度が高過ぎると増粘し、かつ吐出性が低下する傾向があり、低すぎると印字濃度が低くなる傾向がある。一方で、水性顔料分散液に追加する着色剤の量は、水性顔料分散液中の顔料100重量部に対して、通常100重量部以下、好ましくは75重量部以下、より好ましくは50重量部以下、特に好ましくは25重量部以下である。この着色剤の追加量が多過ぎると本発明の効果が低下する場合がある。
また、本発明の記録液に用いる溶媒は、水及び水溶性有機溶媒を含むことが好ましく、更に所望により他の成分を含むことができる。
【0073】
水溶性の有機溶媒としては、この用途に一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、具体的には、水よりも蒸気圧の小さいものであり、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ポリプロピレングリコー
ル、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、イソブチレングリコール、チオジグリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、グリセリン等の多価アルコール類;
【0074】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールイソプロピレンエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等の多価アルコールエーテル類;
【0075】
アセトニルアセトン等のケトン類;
γ−ブチロラクトン、ジアセチン、リン酸トリエチル等のエステル類;
2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等の低級アルコキシアルコール類;
エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタメチルジエチレントリアミン等のアミン類;
ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;
【0076】
2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、モルホリン、N−エチルモルホリン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、イミダゾール、メチルイミダゾール、ヒドロキシイミダゾール、ジメチルアミノピリジン、1,3−プロパンスルトン、ヒドロキシエチルピペラジン、ピペラジン等の複素環類;
ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;
スルホラン等のスルホン類
等が挙げられる。
【0077】
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
本発明の記録液中の水溶性有機溶剤濃度は、適宜選択し決定すればよいが、通常、記録液に対して1重量%以上45重量%以下、中でも40重量%以下であることが好ましい。また記録液における水の含有量は、上述の着色剤や水溶性有機溶剤、及び以下に記載される任意の添加成分の濃度を適宜設定できる量であればよい。
【0078】
本発明の記録液は、必要に応じて各種添加剤を含んでいても良い。このような添加剤としては例えば、浸透促進剤、表面張力調整剤、ヒドロトロピー剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、粘度調整剤、保湿剤、防黴剤、防錆剤等の記録液用添加剤として公知のもの
が挙げられる。本発明の記録液における、これら添加剤の含有量は、記録液の全量に対して、通常その合計で30重量%以下、中でも15重量%以下であることが好ましい。
【0079】
浸透促進剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール等の低級アルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルグリコールエーテル等のカルビトール類、界面活性剤等の1種又は2種以上が挙げられる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びポリマー系の界面活性剤等、任意のものの1種又は2種以上を使用できる。中でも非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及びポリマー系の界面活性剤が好ましい。
【0080】
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン誘導体類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、アセチレングリコール類、アセチレンアルコール類等が挙げられる。
【0081】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類、アルカンスルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物類、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類、α−オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0082】
また、ポリマー系界面活性剤としては、ポリアクリル酸、スチレン/アクリル酸コポリマー、スチレン/アクリル酸/アクリル酸エステルコポリマー、スチレン/マレイン酸コポリマー、スチレン/マレイン酸/アクリル酸エステル共重合、スチレン/メタクリル酸コポリマー、スチレン/メタクリル酸/アクリル酸エステルコポリマー、スチレン/マレイン酸ハーフエステルコポリマー、スチレン/スチレンスルホン酸コポリマー、ビニルナフタレン/マレイン酸コポリマー、ビニルナフタレン/アクリル酸コポリマーあるいはこれらの塩等が挙げられる。
【0083】
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、ラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等の界面活性剤も使用することができる。
【0084】
これらの様な界面活性剤の含有量は、適宜選択し決定すればよい。通常は記録液に対して0.001重量%以上5重量%以下の範囲で添加することによって、印刷物の速乾性及び印字品位をより一層改良できる。
表面張力調整剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グリセリン、ジエチレングリコール等のアルコール類、ノニオン、カチオン、アニオン、あるいは両性界面活性剤を挙げることができる。
【0085】
ヒドロトロピー剤としては、尿素、アルキル尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、チオ尿素、グアニジン酸塩、ハロゲン価テトラアルキルアンモニウム等の1種又は2種以上が好ましい。
保湿剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の1種又は2種以上を水溶性有機溶媒と兼ねるものとして添加することもできる。
【0086】
更に、固体保湿剤(保水機能を有する25℃で固体の水溶性物質)を添加することもできる。好ましい固体保湿剤としては、糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸塩、トリメチロールプロパン、1,2,6−トリオール等が挙げられる。糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類が挙げられ、具体的には、グルコース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、ソルビット、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース等が挙げられる。糖アルコール類としては、マルチトール、ソルビトール、キシリトール等が挙げられ、これらの固体保湿剤の1種又は2種以上を添加することもできる。
【0087】
キレート剤としては、特に限定されるものではないが、エチレンジアミンテトラアセティックアシッドのナトリウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのジアンモニウム塩等の1種又は2種以上が用いられる。これらは、記録液に対して0.005重量%以上0.5重量%以下の範囲で用いられることが好ましい。
防黴剤としては、特に限定されるものではないが、デヒドロ酢酸ナトリウム、ジクロロフェン、ソルビン酸、安息香酸ナトリウム、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、1,2−Benzisothiazoline−3−one(製品名:プロキセルGXL(アーチ・ケミカルズ社製))等が用いられる。これらは、記録液に対して0.05重量%以上1重量%以下の範囲で含まれることが好ましい。
【0088】
記録液のpHとしては、通常、中性からアルカリ性の範囲であり、中でもpH7〜11程度に調整することが好ましい。pHがこの範囲から外れると、シリコンやガラス部材及び/またはニッケル・SUS等の金属部材からなる液室・供給部を有するヘッドなどの部材に腐食・浸食が発生し、吐出特性等に悪影響を及ぼす場合がある。
また、本発明の記録液においては、必要に応じてエマルジョン粒子、その他の添加剤を加えてもよい。特に、記録媒体への画像の定着性を更に向上させる目的では、エマルジョン粒子や非イオン性水溶性ポリマー及びオリゴマーを添加するのが好ましい。このようなエマルジョン粒子の添加方法に特に限定はないが、例えば分散液調製時に添加してもいいし、記録液調製時に添加してもよい。
【0089】
得られた記録液は、必要に応じ粗大粒子除去を目的として、フィルターを使用した加圧濾過や遠心分離を行ってもよい
本発明の記録液中に含まれる、全てのポリマー含有量は、通常、0.05重量%以上、好ましくは0.25重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、その上限は20重量%以下、中でも10重量%以下であることが好ましい。
本発明の記録液中のポリマー濃度は、粘度の観点から、顔料に対して好ましくは150重
量%以下、より好ましくは100重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。下限は分散安定性の観点から通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上である。
【0090】
〔インク組成物の製造方法〕
本発明のインク組成物は、通常、前述の水性顔料分散液に、必要に応じて着色剤や各種添加剤を加えて同様に混合、分散処理することにより調製される。もしくは、水性顔料分散液の製造時に、必要に応じて着色剤や各種添加剤を加えて分散処理することにより調製してもよい。添加する着色剤や各種添加剤としては、遊離硫酸イオンの含有量が低いものを添加することが好ましい。もし、インク組成物中の遊離硫酸イオンの量が顔料に対して
800ppmを超える場合には、イオン交換樹脂法にて遊離硫酸イオン量を減らすことができる。
【0091】
〔記録方法〕
本発明のインク組成物の液滴をインクジェットヘッドから吐出させ、該液滴を記録媒体に付着させて、インクジェット記録する方法が、好ましい。
【実施例】
【0092】
以下に合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の諸例においては、分散剤(b)1の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用した下記条件で行った。
【0093】
カラム充填剤 :スチレン−ジビニルベンゼン共重合体
溶媒 :テトラヒドロフラン
流速 :0.7ml/min
温度 :40℃
また、キャリブレーションはポリスチレンを用いて行った。
【0094】
尚、今回は、以下の装置、検出器及びカラムを使って測定した。
装置 :日本ウォーターズ(株)製 Waters 2690
検出器 :日本ウォーターズ(株)製 Waters 2410
カラム :昭和電工株式会社製 Shodex KF-604・KF-603・KF-602.5
また、以下の表記において、「co」はcopolymerの「co」を意味する。
顔料分散液中の遊離硫酸イオン/顔料(重量比)については、試料を純水で100倍希釈
した後、PTFE 0.45μmフィルターでろ過し、ろ液が無色透明であることを目視で確認した後、Dionex社製 イオンクロマト分析装置 DX120型を用いて硫酸イオン量(顔料分散液中の総量)を測定し、顔料に対する値に換算した。
【0095】
<合成例1>
ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)(分散剤(b)1)の合成
内部を窒素置換したコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、重合開始剤として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)30gを仕込み、溶媒としてテトラヒドロフラン3500.0g、モノマーとしてアクリル酸400.0g、n−ブチルアクリレート600.0g、及びスチレン400.0gを仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで1時間かけて上昇させ、70℃で8時間、重合反応を行った。
【0096】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、エバポレーターで溶媒であるTHFの一部を留去した濃縮液を、アセトニトリル中に再沈殿させた。上澄みをデカンテーションし、真空乾燥して溶媒を完全に除去した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和することでポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン):分散剤(b)1の水溶液を得た。
【0097】
真空乾燥することで、ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン):分散剤(b)1とアクリル酸ナトリウムの混合物を得た。このポリマ
ーの数平均分子量(Mn)は11000、重量平均分子量(Mw)は15000、分子量
分布(Mw/Mn)は1.4であった。
上記ランダムコポリマーとアクリル酸ナトリウムの混合物30.0gを水970.0gに溶解した後、限外濾過により、アクリル酸ナトリウムを除去した。アクリル酸ナトリウム除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固することにより、上記分散剤(b)1を得た。
このランダムコポリマーの構造を、重水を溶媒としたH−NMRにより確認したところ、ランダムコポリマーの中のアクリル酸単位、n−ブチルアクリレート単位、スチレン単位の組成比は、40/21/39(モル比)=36/26/39(重量比)であった。
【0098】
実施例1[ブラック顔料分散液A]
カーボンブラック(a)1(S濃度0.28%、DBP吸収量102cm/100g、平均一次粒子径16nm)を、濃度が12%になるよう水に懸濁させ、95℃まで加熱して7
時間スターラー攪拌した。その後、室温に戻したスラリーをろ過し、ろ液の導電率が0.04mS/cmを切るまで、ろ物を数回水で洗浄した。得られた顔料のウェットケーキ(固形分4
0.9%)に対し、分散剤(b)1水溶液(固形分18.3%)、蒸留水を下記割合で混合し、ホモミキサーで10分間予備分散した。
カーボンブラック(a)1 83.11g(固形分34.0g)
分散剤(b)1水溶液 13.92g(固形分 2.55g)
蒸留水 186.30g
上記予備分散液を500mlトールビーカーに入れ、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で90分間分散し、12%顔料分散液Aを得た。
上記顔料分散液A中の遊離硫酸イオン量は、顔料1gに対して500ppmであった。
【0099】
実施例2[ブラック顔料分散液B]
カーボンブラック(a)1(S濃度0.28%、DBP吸収量102cm/100g、平均一次粒子径16nm)を、濃度が12%になるよう水に懸濁させ、1時間攪拌した後にろ過し、ろ液の導電率が0.04mS/cmを切るまで、ろ物を数回水で洗浄した。得られた顔料のウ
ェットケーキ(固形分36.8%)に対し、分散剤(b)1水溶液(固形分18.3%)、蒸留水を下記割合で混合し、ホモミキサーで10分間予備分散した。
カーボンブラック(a)1 97.72g(固形分36.0g)
分散剤(b)1水溶液 14.74g(固形分 2.70g)
蒸留水 187.54g
上記予備分散液を500mlトールビーカーに入れ、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で90分間分散し、12%顔料分散液Bを得た。
上記顔料分散液B中の遊離硫酸イオン量は、顔料1gに対して500ppmであった。
【0100】
比較例1[ブラック顔料分散液C]
カーボンブラック(a)1(S濃度0.28%、DBP吸収量102cm/100g、平均一次粒子径16nm)(固形分100%)、分散剤(b)1水溶液(固形分18.3%)、蒸留水を下記割合で混合し、ホモミキサーで10分間予備分散した。
カーボンブラック(a)1 18.00g
分散剤(b)1水溶液 7.37g(固形分 1.35g)
蒸留水 124.63g
上記予備分散液を500mlトールビーカーに入れ、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で90分間分散し、12%顔料分散液Cを得た。
上記顔料分散液C中の遊離硫酸イオン量は、顔料1gに対して833ppmであった。
【0101】
<評価>
(1)顔料分散液の分散安定性評価
得られた顔料分散液について、70℃で所定時間保持した後の顔料の分散粒径を測定した。保持後の粒径及び粘度の増大が小さいほど分散安定性が高いといえる。
【0102】
顔料の分散粒径は、顔料分散液を脱イオン水で10000倍に希釈し、大塚電子(株)FPAR−1000で希釈用プローブを使用して測定し、平均粒径の値はCumlant法により算出した。
(1)顔料分散液のpH評価
得られた顔料分散液の分散直後のpH及び室温で10日間放置した後のpHを測定した。pHはHORIBA 9611-10D(防水膜電極)で測定した。
【0103】
上記評価結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

以上の結果から、分散液中の遊離硫酸イオンの重量を顔料の重量に対して800ppm以下とすることで、分散安定性に加えてpHの低下が抑制された分散液が得られることは明らかである。
【0105】
また、インク組成物の場合でも、インク組成物中の遊離硫酸イオンの重量を顔料の重量に対して800ppm以下とすることで、分散安定性に加えてpHの低下が抑制されたインク組成物が得られると予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)顔料、(b)分散剤及び(c)水性媒体を含む水性顔料分散液であって、該水性顔料分散
液中の遊離硫酸イオンの重量が(a)顔料の重量に対して800ppm以下である水性顔料分散液

【請求項2】
(a)顔料がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1に記載の水性顔料分散液

【請求項3】
(b)分散剤が疎水性基含有アニオン性ポリマーであることを特徴とする請求項1又は2
に記載の水性顔料分散液。
【請求項4】
該水性顔料分散液中の遊離硫酸イオンの重量が(a)顔料の重量に対して600ppm以下であ
ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性顔料分散液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性顔料分散液の製造方法であって、(a)顔料を
水でろ過洗浄して、(a)顔料中の遊離硫酸イオンの含有量を800ppm以下に減らした後に、(a)顔料を(b)分散剤及び(c)水性媒体と混合することを特徴とする水性顔料分散液の製造方法。
【請求項6】
該ろ過洗浄を煮沸した水で行うことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
(a)顔料、 (b)分散剤及び(c)水性媒体を含むインク組成物であって、該インク組成物中の遊離硫酸イオンの重量が(a)顔料の重量に対して800ppm以下であるインク組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のインク組成物の液滴をインクジェットヘッドから吐出させ、該液滴を記録媒体に付着させることを特徴とするインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2011−184584(P2011−184584A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51814(P2010−51814)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】