説明

水晶発振回路

【課題】水晶振動子の中央の位置の印刷配線板にトランジスタの放熱板を固着した構造では、トランジスタからの熱が印刷配線基板、熱伝導性コーティング材を介して水晶振動子23に伝達されるため、水晶振動子23に伝達される熱が不十分になり易く、水晶振動子の加熱効率が低い
【解決手段】パワートランジスタ6を、水晶振動子5の基部のほぼ中央の位置であって、同トランジスタ6の放熱ケース10が水晶振動子5基部のベース部材54に密着するように、印刷配線基板7に取り付ける。このとき、前記パワートランジスタ6の放熱ケース10とベース部材54間には、両者の密着度を高めるために熱伝導性シート(あるいは熱伝導性接着剤)10を挿入して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数制御デバイス等として使用される圧電発振器に関し、特に圧電振動子をパワートランジスタにより加熱するとともに、温度制御回路によって加熱温度を制御する構成を備えた圧電発振器であって、薄型化と低消費電力化を図った高安定圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、移動体通信機器や伝送通信機器に用いる周波数制御デバイスである水晶発振器等の圧電発振器として、外部の温度変化に影響されることなく高安定な周波数を出力することができる恒温槽型圧電発振器が知られている。
一般的に、従来の恒温槽型圧電発振器は、高安定な周波数を得る為に金属ブロック等の恒温槽(Oven)内に圧電振動子を収容して恒温槽をヒーターにより所定の温度に加熱する構造であるため、大型になりがちであった。近年になって、これら各分野の機器に対して、小型、軽量であることが求められてきており、この要求に対応して恒温槽型圧電発振器についても小型・薄型化、軽量化が求められている。
【0003】
このような要望に対して薄型化を図った高安定圧電発振器として、例えば本出願人の提案に係る特開2001−16034号公報には、1枚の印刷配線基板の表裏両面上に発振回路、出力回路、ヒーター、パワートランジスタ等の発振回路及び温度制御回路を構成する部品群を搭載し、水晶振動子を収容した第1のオーブンブロックと第2のオーブンブロックとの間でこの印刷配線基板を密着して挟んだ状態でネジ止めし、固定することにより水晶振動子とオーブンブロックと各発熱部品と被加熱部品との間の強い熱結合を確保した例が開示されている。
しかし、上記の例は、複数枚の印刷配線基板に部品を装着して構成した従来の発振器は、構造が複雑であって組立てが困難になりがちであるという問題の解決のためになされたものであるが、1枚の印刷配線基板上に全ての部品を搭載する構造にしたものであるため、オーブンブロックが大型化し易く、消費電力も増大するという欠点を有している。
【0004】
図5は、更に薄型化を図るべく1枚のプリント板で構成する高安定水晶発振器の構造例を示す縦断面図と下面図である。
同図に示されるように、本高安定水晶発振器20は、発振回路・温度制御回路用の部品21を装着した印刷配線基板22に、水晶振動子23を該水晶振動子23のフランジ23a底面が密着するように装着し、水晶振動子23基部中央の位置にパワートランジスタ24を該パワートランジスタ24の放熱板24aが印刷配線基板22に密着するように装着する。さらに、図示しない温度センサを水晶振動子23の基部凹所23bに装着して該凹所23bに熱伝導性コーティング材25を充填する。本高安定水晶発振器20は、前記構成の印刷配線基板22を外部接続端子26を備えた容器27に収容した構造を有している。
【0005】
上記構造の高安定水晶発振器20では、回路が動作したときのパワートランジスタ24の放熱板24aからの放熱によって印刷配線基板22が加熱され、次に、加熱された印刷配線基板22の熱によって水晶振動子基部凹所23bに充填された熱伝導性コーティング材25を介して水晶振動子23が加熱される。そして、基部凹所23bに装着した温度センサーにより温度を検出して、一定温度になるよう温度制御回路によって制御する。
【特許文献1】特開2001−16034公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、高安定圧電発振器において優れた温度特性を得るためには、次の2点が重要である。
(1)圧電振動子の温度を一定に保つこと、特に圧電振動素子に直結している振動子のリード及び振動子基部(ベース部材及びフランジ近傍)を温度一定に保つこと。
(2)発振回路の発振周波数に大きく寄与する部品類、即ち発振ループを構成する発振回路部品を温度一定に保つこと。
しかしながら、上記構造による温度制御の方法では、トランジスタ24の放熱板24aからの熱によって加熱された印刷配線基板22の熱が、熱伝導性コーティング材25を介して水晶振動子23に伝達されるため、印刷配線基板22から加熱対象である水晶振動子23に伝達される熱が不十分になり易く、水晶振動子23の加熱効率が低いという欠点があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、1枚の印刷配線基板に全ての回路部品を装着し、構造が簡単で、そのため組立てが容易であり、且つトランジスタの放熱板からの熱を確実に水晶振動子に伝達することができる加熱効率の高い特性を有する高安定圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1においては、発振回路を構成する電子部品及び温度制御回路を構成する電子部品を装着した印刷配線基板と、開口した基部に一体化されて設けられたフランジを有する金属製円筒型容器に圧電振動素子を内蔵し開口基部で前記圧電振動素子を密封したベース部材を貫通する圧電振動素子と接続された端子を備えた圧電振動子とで構成される高安定圧電発振器であって、前記圧電振動子のフランジ底面が印刷配線基板に密着するよう固定すると共に、前記温度制御回路を構成するパワートランジスタの放熱部が前記圧電振動子基部ベース部材に密着するよう該パワートランジスタを印刷配線基板に装着したことを特徴とする。
【0008】
請求項2においては、請求項1に記載の高安定圧電発振器であって、前記圧電振動子の放熱部が前記基部ベース部材に密着するよう該放熱部と基部ベース部材との間に熱伝導性部材を挿入したことを特徴とする。
また、請求項3においては、請求項1または請求項2のいずれかに記載の高安定圧電発振器であって、前記圧電振動子の基部ベース部材底面に熱伝導性部材を嵌着して、パワートランジスタ放熱部から基部ベース部材への熱伝導性を高めたことを特徴とする。
さらに、請求項4においては、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高安定圧電発振器であって、前記圧電振動子のフランジ底面と印刷配線基板との間に熱伝導性部材を挿入して、圧電振動子の基部ベース部材と印刷配線基板との間の間隔を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、パワートランジスタを水晶振動子の基部のほぼ中央の位置であって、同トランジスタの放熱部が水晶振動子基部のベース部材に密着するように、印刷配線基板に取り付ける。このとき、前記パワートランジスタの放熱部とベース部材間には、両者の密着度を高めるために熱伝導性シート(あるいは熱伝導性接着剤)を挿入して固定する。
また、水晶振動子基部のベース部材が非熱伝導性モールドあるいはガラス材等の熱伝導度が低い材質で構成されている場合は、基部のベース部材と放熱部との間に金属シート等の底板を挿入して密着させ、固定する。
また、印刷配線基板と水晶振動子基部ベース部材との間の空隙が不足する場合は、水晶振動子のフランジ底面と印刷配線基板間に金属板(あるいは熱伝導性シート)を挿入して適切な空隙に調整する。
上記構造とすることによって、構造が簡単であり、且つトランジスタの放熱部からの熱を確実に振動子に伝達することができる加熱効率の高い特性を有する高安定圧電発振器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を図面に示した実施の形態に基づいて説明する。
図1は、本発明に係わる高安定圧電発振器としての水晶発振器の実施の一形態例を示す構造図で、(a)は縦断面図、(b)は下面図(透視図)である。
同図に示すように、本発振器1は、発振回路部品2、温度制御回路部品3、ヒーター4、水晶振動子5及びパワートランジスタ6を図示しないパターン電極に装着した印刷配線基板7を外側金属ケース8に収容し、印刷配線基板7のパターン電極に固定されハーメチックガラス8aを貫通する外部接続端子9を備えている。
【0011】
図2は前記水晶振動子5とパワートランジスタ6それぞれの形状を示す縦断面図と底面図である。
水晶振動子5は、同図(a)に示されるように、フランジ51を有する円筒形ケース52に水晶振動素子53を収容し、ベース部材54で円筒形ケース52の基部を密封し、ベース部材54を貫通した外部リード端子55を前記水晶振動素子53に接続した構造を有する。
また、パワートランジスタ6は、同図(b)に示すように、上面に放熱ケース61を、下面にゲートG、ドレインD、ソースSそれぞれのパッド電極を備えた厚さ寸法が、例えば0.58mm(max)の極めて薄型のMOS型FETである。
【0012】
図1に示されるように、前記パワートランジスタ6は水晶振動子5の基部のほぼ中央の位置であって、同トランジスタ6が水晶振動子5基部のベース部材54に密着するように印刷配線基板7に取り付けられる。
このとき、前記パワートランジスタ6の放熱ケース61とベース部材54間には、両者の密着度を高めるために熱伝導性シート(あるいは熱伝導性接着剤)10が挿入され固定される。
【0013】
図3は、図1に示す本発明に係わる高安定圧電発振器としての水晶発振器の水晶振動子とパワートランジスタの部分の変形実施例を示す構造図であって、(a)は縦断面図、(b)は下面図(透視図)である。
図1における水晶振動子5基部のベース部材54が非熱伝導性モールドあるいはガラス材等の熱伝導度が低い材質で構成されている場合、図3に示すように、水晶振動子5基部のベース部材54底面に金属シート等の底板11を嵌合、装着し、この底板11を介して水晶振動子5基部のベース部材54を熱伝導性シート10、パワートランジスタ6の放熱ケース61に密着させ、固定する。
また、印刷配線基板7と水晶振動子5基部のベース部材54との間の空隙が不足する場合は、水晶振動子5のフランジ51底面と印刷配線基板7間に金属板(あるいは熱伝導性シート)12を挿入して適切な空隙に調整する。
【0014】
上記構造とすることによって、本発明においては水晶振動子5の基部の外部リード端子55の中央部のベース部材54とパワートランジスタ6の放熱ケース61とを熱的に強く密着させる構造として、前記パワートランジスタ6の発熱によって直接水晶振動子基部及び振動子のリード55を素早く加熱すると共に、水晶振動子5近傍にヒーター4と発振回路部品2を集中させる発振器の構造とする。
【0015】
図4に、本発明に係わる構造を有する水晶発振器の電気回路例を示す。同図において、
トランジスタQ1は、図2に示すパワートランジスタ(POW MOS FET)IRF6608とし、同トランジスタQ1のソースSと接地間に抵抗ヒーターH1を挿入し、トランジスタQ2のゲートGと前記トランジスタQ1のソースSとを接続してトランジスタQ1のソース電位を検出する。前記トランジスタQ2のドレインDをトランジスタQ1のゲートGに接続し、トランジスタQ1のソース電位の増加によりトランジスタQ1のゲート電位を低下させて定電流動作を行う。
【0016】
温度センサーTH1、TH2は前記トランジスタQ1のドレインDに直結させてドレインDからの発熱を効率的に検出する。
差動増幅器IC1の(−)入力は、コンデンサC4を介して前記トランジスタQ1のソースSに接続されて積分回路を構成して電流急変を抑え、温度コントロールループにおけるハンチング動作を抑圧する。
また、トランジスタQ1のソースSより抵抗R8、R6を介して前記差動増幅器IC1の(−)入力に接続し、温度制御利得を安定させて安定した温度特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係わる高安定圧電発振器としての水晶発振器の実施の一形態例を示す構造図で、(a)は縦断面図、(b)は下面図(透視図)。
【図2】水晶振動子とパワートランジスタそれぞれの形状を示す縦断面図と底面図。
【図3】図1に示す本発明に係わる高安定圧電発振器としての水晶発振器の水晶振動子とパワートランジスタの部分の変形実施例を示す構造図で、(a)は縦断面図、(b)は下面図(透視図)。
【図4】本発明に係わる構造を有する水晶発振器の電気回路例。
【図5】従来の1枚プリント板で構成する高安定圧電発振器の構造例を示す縦断面図と下面図。
【符号の説明】
【0018】
1・・高安定水晶発振器、2・・発振回路部品、3・・温度制御回路部品、
4・・ヒーター、5・・水晶振動子、6・・パワートランジスタ、
7・・印刷配線基板、8・・金属ケース、8a・・ハーメチックガラス、
9・・外部接続端子、10・・熱伝導性シート(あるいは熱伝導性接着剤)、
11・・底板、12・・金属板(あるいは熱伝導性シート)、
20・・高安定水晶発振器、21・・発振回路・温度制御回路用の部品、
22・・印刷配線基板、23・・水晶振動子、23a・・フランジ、23b・・凹所、
24・・パワートランジスタ、24a・・放熱板、
25・・熱伝導性コーティング材、26・・外部接続端子、27・・容器、
51・・フランジ、52・・円筒形ケース、53・・水晶振動素子、
54・・ベース部材、55・・外部リード端子、61・・放熱ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振回路を構成する電子部品及び温度制御回路を構成する電子部品を装着した印刷配線基板と、
開口した基部に一体化されて設けられたフランジを有する金属製円筒型容器に圧電振動素子を内蔵し開口基部で前記圧電振動素子を密封したベース部材を貫通する圧電振動素子と接続された端子を備えた圧電振動子とで構成される高安定圧電発振器であって、
前記圧電振動子のフランジ底面が印刷配線基板に密着するよう固定すると共に、前記温度制御回路を構成するパワートランジスタの放熱部が前記圧電振動子基部ベース部材に密着するよう該パワートランジスタを印刷配線基板に装着したことを特徴とする高安定圧電発振器。
【請求項2】
前記パワートランジスタの放熱部が前記基部ベース部材に密着するよう該放熱部と基部ベース部材との間に熱伝導性部材を挿入したことを特徴とする請求項1に記載の高安定圧電発振器。
【請求項3】
前記圧電振動子の基部ベース部材底面に熱伝導性部材を嵌着して、パワートランジスタ放熱部から基部ベース部材への熱伝導性を高めたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の高安定圧電発振器。
【請求項4】
前記圧電振動子のフランジ底面と印刷配線基板との間に熱伝導性部材を挿入して、圧電振動子の基部ベース部材と印刷配線基板との間の間隔を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高安定圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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