説明

水晶発振回路

【目的】 水晶振動子が外部から大きな制動を受ける環境においても良好な発振を維持することができる水晶発振回路を提供する。
【構成】 本発明の請求項1はコレクタとエミッタとの間に第1の水晶振動子を接続したベース接地の水晶発振回路において、ベースと接地電位との間に発振周波数に等しい共振周波数を有する第2の水晶振動子を直列に介挿したことを特徴とする水晶発振回路であり、請求項2は請求項1に記載のものにおいて、ベースと第2の水晶振動子との接続点から発振出力を取り出すことを特徴とする水晶発振回路であり、請求項3は請求項1に記載のものにおいて、エミッタと第1の水晶振動子の接続点から発振出力を取り出すことを特徴とする水晶発振回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子を用いた発振回路に係わり、特に大きな制動を受ける環境でも発振を維持できる水晶発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、たとえば環境問題に対する関心から水溶液中の有害成分のような対象物質を短時間に、安価に検出することのできる測定装置が望まれている。
【0003】
従来このような対象物質を検出するためには、ガスクロマトグラフィー等の高価で大型の装置が用いられている。
しかしながらこのような装置は、取り扱いも面倒で、熟練のオペレータを必要とし、このため検出に要するコストも高騰する傾向があった。
【0004】
そこで水晶振動子の電極の質量の変化による、共振周波数の変化を利用することが考えられている。
すなわち、水晶振動子の電極の上に検出すべき対象物質と反応する反応物質を形成する。
そして対象物質を含む水溶液中に水晶振動子を投入して、反応物質が対象物質と反応したことによる質量の変化を発振周波数の変化から検出する。
【0005】
このような水晶振動子の電極部分の質量変化による周波数の変化は、極めて感度が高く、しかも反復再現性も良好である。
したがって対象物質を短時間に精密に検出することができ、熟練作業者の必要もなく、検出作業に要するコストも安価である。
【0006】
しかしながら水晶振動子を液体中に投入した場合、液体の粘性によって大きな制動を受け、水晶振動子の電気的なQ値は著しく低下する。
このため発振が停止したり、かろうじて発振していても周波数安定度が低下することは避けられない。
一方、発振周波数の変化から対象物質を検出する場合、検出感度および検出精度は発振周波数の安定度に依存する。したがって周波数安定度の低下は、検出能力の低下となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、水晶振動子が外部から大きな制動を受ける環境においても良好な発振を維持することができる水晶発振回路を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1はコレクタとエミッタとの間に第1の水晶振動子を接続したベース接地の水晶発振回路において、ベースと接地電位との間に発振周波数に等しい共振周波数を有する第2の水晶振動子を直列に介挿したことを特徴とする水晶発振回路であり、請求項2は請求項1に記載のものにおいて、ベースと第2の水晶振動子との接続点から発振出力を取り出すことを特徴とする水晶発振回路であり、請求項3は請求項1に記載のものにおいて、エミッタと第1の水晶振動子の接続点から発振出力を取り出すことを特徴とする水晶発振回路である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、水晶振動子が外部から大きな制動力を受ける環境でも確実に発振動作する水晶発振回路を提供することができる。
【実施例】
【0010】
以下本発明の一実施態様を図1に示すベース接地の水晶発振回路を参照して詳細に説明する。
このようなベース接地の水晶発振回路は周知のコルピッツ水晶発振回路に比して大きな水晶電流を流すことができ、水晶振動子を強勢に励振できる特徴がある。
【0011】
図中1はトランジスタでコレクタを同調コイル2の一次側を介して電源3に接続している。同調コイル2の二次側は、一端を接地4し、他端をコンデンサ5を介して出力6に接続している。
なお同調コイル2の一次側および二次側にはそれぞれ抵抗7、8を並列に接続している。
【0012】
またエミッタを抵抗9及びコンデンサ10の並列接続回路を介して接地している。
そしてコレクタと接地との間に直列に接続した2個のコンデンサ11、12を介挿し、この直列接続点とエミッタとの間に第1の水晶振動子13を介挿している。この第1の水晶振動子13に並列にインダクタ14を接続している。
【0013】
そしてベースと接地との間に第1の水晶振動子13による発振周波数に等しい共振周波数を有する第2の水晶振動子15を直列に介挿している。
さらに電源3とベースとの間、およびベースと接地4との間にそれぞれバイアス抵抗16、17を介挿している。
そして電源3と接地4との間にバイパスコンデンサ18を介挿している。
【0014】
このような構成であれば、トランジスタ1による発振ループに第2の水晶振動子15を介挿しているので第1の水晶振動子13の実質的なQ値を高めることができる。
このためたとえば第1の水晶振動子13を液体中に投入して、液体の粘性で大きな制動力を受けても確実に振動させることができる。さらにベース接地水晶発振回路は適切な回路定数の設定により比較的大きな水晶電流を流すことができ、すなわち大きな電力で駆動することが可能なため第1の水晶振動子3をより確実に発振させることができる。
【0015】
したがって第1の水晶振動子13の励振電極に反応物質を形成して液体中に投入して対象物質との反応による質量変化によって生じた発振周波数の変化も確実に測定可能である。
なお本発明は上記の実施の態様に限定されるものではなく、発振出力のC/N比を高めるためには、たとえば図2に示すようにトランジスタ1のエミッタから発振出力を取り出すようにすればよい。
このようにすれば第2の水晶振動子15の電極端子から出力を導出することになり雑音が少なく純度の高い発振出力を得られる。
【0016】
したがって発振周波数の微細な変化を検出でき検出分解能を向上することができる。
また図3に示すようにトランジスタ1のエミッタから発振出力を得るようにしてもよい。この場合も第1の水晶振動子13の電極端子から発振出力を導出しているのでC/N比の良好な発振出力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施態様の回路図である。
【図2】本発明の他の実施態様の回路図である。
【図3】本発明のさらに他の実施態様の回路図である。
【符号の説明】
【0018】
1 トランジスタ
13 第1の水晶振動子
15 第2の水晶振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレクタとエミッタとの間に第1の水晶振動子を接続したベース接地の水晶発振回路において、ベースと接地電位との間に発振周波数に等しい共振周波数を有する第2の水晶振動子を直列に介挿したことを特徴とする水晶発振回路。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、ベースと第2の水晶振動子との接続点から発振出力を取り出すことを特徴とする水晶発振回路。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、エミッタと第1の水晶振動子の接続点から発振出力を取り出すことを特徴とする水晶発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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