説明

水晶素板洗浄用治具

【課題】第1の外装体と第2の外装体との隙間に水晶素板が入り込み、水晶素板が破損してしまうことを低減すると共に、生産性を向上させる水晶素板洗浄用治具を提供することを課題とする。
【解決手段】 水晶素板洗浄用治具100は、第1及び第2の外装体110及び120を備えている。第1の外装体110は、水晶素板10が設けられる収容部111を有し、収容部111の底面に第1の貫通孔112が設けられ、収容部111を囲むようにして磁石部113が設けられている。第2の外装体120は、第2の貫通孔122を有しており、収容部111を覆うように磁石部113によって第1の外装体110に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄く形成された板状体を洗浄する際に用いる水晶素板洗浄用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶素板は、従来より、その主面に励振用電極が形成されて通信機器や電子機器等に搭載される圧電デバイスに用いられている。
【0003】
水晶素板は、励振用電極を形成する前に洗浄される。水晶素板は小さく割れやすいため、水晶素板の洗浄には、水晶素板洗浄用治具が用いられる。具体的には、水晶素板洗浄用治具は、第1の外装体と第2の外装体とから構成されている。
【0004】
第1の外装体は、第1の基部と第1の枠部により構成されている。第1の枠部は、一枚板の金属板をエッチング加工することによって複数設けられ、第1の枠部で囲まれた部分が第1の収容部となる。つまり、第1の収容部は、第1の基部と第1の枠部により形成される。第1の収容部は、その内部に水晶素板が挿入可能であり、第1の収容部底面となる第1の枠部内の第1の基部に第1の貫通孔が設けられている。
【0005】
第2の外装体は、第2の基部と第2の枠部により構成されている。第2の枠部は、一枚板の金属板をエッチング加工することによって設けられ、第2の枠部で囲まれた部分が第2の収容部となる。つまり、第2の収容部は、第2の基部と第2の枠部により形成される。第2の基部と第2の枠部により第2の収容部が複数形成されており、第2の収容部底面となる第2の枠部内の第2の基部に第2の貫通孔が設けられている。水晶素板が、第1の収容部の水晶素板に対向する底面と第2の収容部の水晶素板に対向する底面にはさまれて第1の外装体から脱落しないようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この従来の水晶素板洗浄用治具を用いた水晶素板の洗浄は、水晶素板を収容し、洗浄用治具を洗浄槽に浸けて、水晶素板洗浄用治具に向かって水流を噴射することによって、水晶素板に付着している研磨粉やごみ等の付着物を落とすシャワー洗浄を行なっている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−240977号公報
【特許文献2】特開2007−28453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の水晶素板洗浄用治具は、第1の外装体及び第2の外装体が四隅に設けられた磁石部によって固定されているものであり、第1の外装体及び第2の外装体のどちらか一方の外側に向いている面に対して水流を噴射することにより、第1の貫通孔内及び第2の貫通孔内から第1の収容部内及び第2の収容部内に入った水流の水圧によって、水流を噴射している側と反対側の面の外装体が撓んで第1の外装体と第2の外装体との間に不要な隙間が生じ、この隙間に水晶素板が入り込み、水晶素板が第1の外装体の第1の枠部と第2の外装体の第2の枠部とで挟まれることによって、水晶素板が割れてしまうといった課題があった。また、水流を噴射している側と反対側の面の外装体が撓んだ状態になることから、水晶素板が固定されなくなるため、第1の外装体の第1の枠部と第2の外装体の第2の枠部との間に生じた隙間に入り込んだ水晶素板を収容部に再整理する工程が必要になるため、生産性が低下してしまうといった課題があった。
【0009】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、第1の外装体の第1の枠部と第2の外装体の第2の枠部との隙間に水晶素板が入り込み、水晶素板が破損してしまうことを低減すると共に、生産性を向上させる水晶素板洗浄用治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの態様による水晶素板洗浄用治具は、第1及び第2の外装体を備えている。第1の外装体は、水晶素板が設けられる収容部を有し、収容部の底面に第1の貫通孔が設けられ、収容部を囲むようにして磁石部が設けられている。第2の外装体は、第2の貫通孔を有しており、収容部を覆うように磁石部によって第1の外装体に固定される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一つの態様による水晶素板洗浄用治具において、第1の外装体は、水晶素板が設けられる収容部を有し、収容部の底面に第1の貫通孔が設けられ、収容部を囲むようにして磁石部が設けられている。第2の外装体は、第2の貫通孔を有しており、収容部を覆うように磁石部によって第1の外装体に固定されることによって、洗浄時に収容部内に入った水流の水圧によって、水流を噴射している側と反対側の外装体が浮くことがなくなり、第1の外装体の第1の枠部と第2の外装体の第2の基部との間に隙間が生じず、前記隙間に水晶素板が入り込むことを低減することができるので、第1の外装体の第1の枠部と第2の外装体の第2の基部とで挟まれることがなくなり、水晶素板が破損することを低減することができる。また、第1の外装体の第1の枠部と第2の外装体の第2の基部との間に隙間が生じないため、水晶素板が入り込むことがなくなり、水晶素板を第1の収容部に再整理する工程が必要ないので、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一つの実施形態に係る水晶素板洗浄用治具を第1の外装体側から見た分解斜視図である。
【図2】図1に示された水晶素板洗浄用治具を第2の外装体側から見た分解斜視図である。
【図3】図1に示された水晶素板洗浄用治具に水晶素板が収容された状態を示している部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態における水晶素板洗浄用治具について添付図面を参照して詳細に説明する。図1〜図3に示す水晶素板洗浄用治具100は、水晶素板10を収容し、その水晶素板洗浄用治具100を洗浄槽(図示せず)に浸けて、水晶素板洗浄用治具100に向かって水流を噴射することによって、水晶素板10の表面に水流を当てて、水晶素板10に付着している付着物を落とすことにより洗浄する際に用いるものである。以下、水晶素板10、水晶素板洗浄用治具100の順に説明する。
【0014】
(水晶素板)
水晶素板10は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し外形加工を施された概略平板状で平面形状が例えば四角形となっている。水晶素板10の厚みは、例えば、20μm〜50μmとなっている。このように洗浄された水晶素板10の表裏両主面には励振用電極(図示せず)が被着形成され水晶振動素子(図示せず)となる。水晶振動素子は、外部からの電圧が引き出し電極(図示せず)を介して励振用電極に印加されると、所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。励振用電極は、水晶素板10の表裏両主面に金属膜を積層するようにして被着・形成したものであり、水晶素板10の上面には、クロム(Cr)、チタン(Ti)からなる第1の金属膜が形成され、第1の金属膜の上面に金(Au)からなる第2の金属膜が積層するように形成されている。
【0015】
(水晶素板洗浄用治具)
(第1の実施形態)
図1〜図2に示すように、第1の実施形態に係る水晶素板洗浄用治具100は、第1の外装体110と第2の外装体120とから構成されている。図1〜図2に示す第1の外装体110は、例えば、SUS430及びSUS440等のステンレス鋼によって構成された一枚板の金属板により構成されている。第1の外装体110は、第1の基部110aと第1の枠部110bと磁石部113とにより構成されている。第1の枠部110bは、一枚板の金属板をエッチング加工することによって複数設けられ、第1の枠部110bで囲まれた部分が収容部111となる。つまり、収容部111は、第1の基部110aと第1の枠部110bにより形成される。図3に示されているように、収容部111を囲むようにして溝部114が設けられている。また、磁石部113は、溝部114内に設けられている。
【0016】
収容部111は、その内部に水晶素板10を収容することが可能であり、収容部111底面となる第1の枠部110b内の第1の基部110aに第1の貫通孔112が設けられている。第1の貫通孔112は、金属板をエッチング加工等をすることにより設けられている。第1の貫通孔112は、水晶素板10の主面に設けられる励振用電極及び引き出し電極の形状を成している。本実施形態の治具100は、洗浄工程の後に行われる励振用電極及び引き出し電極の形成工程においてマスクとして用いられる。したがって、本実施形態の水晶素板洗浄用治具100は、洗浄工程から励振用電極及び引き出し電極の形成工程までの共通治具として用いられる。
【0017】
また、第1の外装体110の厚みは、第1の基部110aと第1の枠部110bの厚みを足して、例えば、70〜140μmになっている。
【0018】
溝部114は、収容部111を囲むようにして、第1の枠部110bの主面に設けられている。
【0019】
磁石部113は、例えばフェライト等から形成され、第1の外装体110の第1の枠部110bの主面の溝部114内に設けられている。磁石部113は、向かい合う位置にある後述する第2の外装体120の第2の基部120aと固定することができるようになっている。収容部111を囲むようにして磁石部113が設けられていることにより磁石部113で第1の外装体110と第2の外装体120とを固定されているため、洗浄時に収容部111内に入った水流の水圧によって水流を噴射している側と反対側の外装体が浮くことがなくなり、第1の外装体110の第1の枠部110bと第2の外装体120の第2の基部120aとの間に隙間を生じることがなくなる。よって、第1の外装体110の第1の枠部110bと第2の外装体120の第2の基部120aとの間に水晶素板10が入り込むことを低減する。
【0020】
図1〜図2に示す第2の外装体120は、第1の外装体110と同様に、例えば、SUS430及びSUS440等のステンレス鋼によって構成された一枚板の金属板により構成されている。第2の外装体120は、第2の基部120aと凸部120bにより構成されている。凸部120bは、一枚板の金属板をエッチング加工することによって形成されている。
【0021】
凸部120bは、第2の基部120aに複数形成されており、凸部120bの主面には、第2の貫通孔122が設けられている。第2の貫通孔122は、金属板をエッチング加工等をすることにより設けられている。第2の貫通孔122は、水晶素板10の主面に設けられる励振用電極の形状を成している。
【0022】
また、凸部120bの主面の外周サイズは、第1の外装体110の収容部111の外周サイズよりも小さくなっており、この収容部111内に第2の外装体120の凸部120bが嵌め込むことができるようになっている。このように収容部111に凸部120bを嵌め込むことによって、収容部111の底面と凸部120bの主面が水晶素板10と向かい合うようになっている。
【0023】
この水晶素板10と対向する収容部111の底面の中央と凸部120bの主面の中央には、第1の外装体110と第2の外装体120の一方の主面から他方に主面に貫通された第1の貫通孔112、第2の貫通孔122が設けられている。尚、収容部111の開口サイズは、内部に収容する水晶素板10の主面サイズより大きくなっている。また、第2の外装体120の厚みは、第2の基部120aと凸部120bの厚みを足して、例えば、70〜140μmになっている。また、第1の外装体110の収容部111の底面と第2の外装体120の凸部120bの主面との間隔は、収容される水晶素板10の厚み程度となっている。
【0024】
このような水晶素板洗浄用治具100は、第1の外装体110の収容部111内に水晶素板10を収容し、第2の外装体120の凸部120bを第1の外装体110の収容部111内に嵌め込むようにして、第1の外装体110と第2の外装体120を重ね合わせ、第1の外装体110に前記収容部111を囲むようにして設けられている磁石部113は、向かい合う位置にある第2の外装体120の基板部120aと接合固定状態になることで使用される。水晶素板10が収容された水晶素板洗浄用治具100の第1の貫通孔112及び第2の貫通孔122の開口に向けて水流を噴射させる。第1の外装体110に設けられた第1の貫通孔112と第2の外装体120に設けられた第2の貫通孔122を通して、水流が水晶素板10にあたることによって、水晶素板10に付着している付着物が落とされ、水晶素板10の洗浄を行なっている。
【0025】
このように、本発明の水晶素板洗浄用治具100によれば、水晶素板10が挿入可能とするように、第1の基部110aと第1の枠部110bにより設けられる収容部111を有し、収容部111底面に第1の貫通孔112が設けられ、収容部111を囲むようにして磁石部113が設けられている第1の外装体110と、第2の基部120aと凸部120bを有し、凸部120bの主面に第2の貫通孔122が設けられている第2の外装体120と、を備え、第1の貫通孔112と第2の貫通孔122が向かい合う位置になるように、凸部120bが収容部111内に嵌め込めるようにして設けられていることによって、磁石部113により第1の外装体110と第2の外装体120とを固定することができるので、洗浄時に収容部111内に入った水流の水圧によって、水流を噴射している側と反対側の外装体が浮くことがなくなり、第1の外装体110の第1の枠部110bと第2の外装体120の第2の基部120aとの間に隙間が生じることがなくなるため、水晶素板10が入り込むことを低減することができる。よって、前記水晶素板10が第1の外装体110の第1の枠部110bと第2の外装体120の第2の基部120bとで挟まれることがなくなるため、水晶素板10が破損することを低減することができる。また、第1の外装体110の第1の枠部110bと第2の外装体120の第2の基部120aとの間に水晶素板10が入り込むことがなくなり、水晶素板10を収容部111に再整理する工程が必要ないので、生産性を向上させることができる。
【0026】
また、第2の外装体120が第1の外装体110の収容部111に嵌め込まれる凸部120bを有しており、前記第2の貫通孔122が前記凸部120bに設けられていることにより、水晶素板10を収容部111底面と第2の外装体120の凸部120bの主面とで挟みながら固定することができ、第2の貫通孔122を通って水流を確実に水晶素板10に当てることで洗浄することができる。また、第2の外装体120が第1の外装体110の収容部111に嵌め込まれる凸部120bを有していることにより、第1の外装体110と第2の外装体120との位置ずれをさらに低減することができる。
【0027】
さらに、前記磁石部113は、前記収容部111を囲むようにして溝部114が設けられ、前記溝部114内に設けられていることにより、磁石部113が位置ずれすることを低減することができるので、精度良く第1の外装体110と第2の外装体120を固定することができる。さらに、磁石部113の主面と第1の外装体110の第1の枠部110bの主面とが面一となるようにした場合は、第1の外装体110の第1の枠部110bと第2の外装体120の第1の基部120aとの隙間に水流が入り込んで外れてしまうことをさらに低減することができる。
【0028】
尚、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。また、実施形態においては、第1の貫通孔112、第2の貫通孔122は、平面形状は四角形で記載されていたが、円形でも構わない。また、水晶素板10も平面形状は四角形で記載されていたが、円形の板であっても構わない。
【符号の説明】
【0029】
10・・・水晶素板
110・・・第1の外装体
110a・・・第1の基部
110b・・・第1の枠部
111・・・収容部
112・・・第1の貫通孔
113・・・磁石部
114・・・溝部
120・・・第2の外装体
120a・・・第2の基部
120b・・・凸部
122・・・第2の貫通孔
100・・・水晶素板洗浄用治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶素板が設けられる収容部を有し、前記収容部の底面に第1の貫通孔が設けられ、前記収容部を囲むようにして磁石部が設けられている第1の外装体と、
第2の貫通孔を有しており、前記収容部を覆うように前記磁石部によって前記第1の外装体に固定される第2の外装体とを備えていることを特徴とする水晶素板洗浄用治具。
【請求項2】
前記第2の外装体が前記収容部に嵌め込まれる凸部を有しており、前記第2の貫通孔が前記凸部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の水晶素板洗浄用治具。
【請求項3】
前記磁石部は、前記収容部を囲むようにして溝部が設けられ、前記溝部内に設けられていることを特徴とする請求項1記載の水晶素板洗浄用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−250139(P2012−250139A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122461(P2011−122461)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)
【Fターム(参考)】