説明

水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法

公知技術に残された生産工程の複雑性と溶剤汚染の欠点を克服する、水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法を提案する。本発明の水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法は、油料植物の準備、洗浄、皮を剥いて砕く、浸漬、浸漬後の油料植物をポンプによって遠心機に運び、遠心機で分離すると共に、植物油脂、植物粗蛋白、及び植物繊維の三種類の産物に分離させる。本発明は、主に大豆、落花生、ゴマ、お茶の実、紫蘇の実、シーベリースナジグミ、紅花の実等の良質の油料植物を原料とし、効果的に、植物油脂の得油率と得油品質を向上させ、更に、油脂と蛋白を分離させ、生産工程においては化学溶剤による汚染と溶剤非安全性等の危害性問題を避け、人々の健康な飲食環境を保障するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油料植物の総合開発利用に関するものであり、特に大豆、又は、落花生、ゴマ、お茶の実、紫蘇の実、シーベリースナジグミ、紅花の実等良質の油料植物を原料とし、水浸出法によって植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維を抽出する方法である。
【背景技術】
【0002】
長期に渡り、わが国の糧食を含む農産品は進歩の遅れた状態にあったが、改革以後、わが国糧食部門の先進的な糧食加工技術設備導入により、糧食加工業の水準は向上した。しかし、全国糧食産品加工業は全体的にみてやはり遅れており、加工企業の規模は小さく、分散し、設備にも落差があり、多数が一次加工段階なのが現状である。このような遅れた状況は、農産品資源を合理的に十分に開発することができないばかりか、品質も高くないので市場競争力も低い。
【0003】
わが国は、豊富な油料植物資源を持っており、大豆、落花生等の生産量は世界でもトップクラスであり、天から授かった恵みを十分に利用して、科学技術農業振興の道を歩み、糧食油産品の潜在能力を引き出し、製品の二次加工、三次加工を行うことにより、国産の糧食油製品の競争力を高めなければならない。
【0004】
大豆を例にとると、これは重要な良質油源であるばかりでなく、極めて重要な良質蛋白源でもある。現代新工学技術を用いてのみ、大豆蛋白を破壊しないで十分に大豆油を抽出できる。言い換えれば、出油率を高め、完全な大豆蛋白を利用することができる。『全身が宝』である大豆と同様に、落花生等その他種種の油料植物には全て、二次加工、三次加工を経て合理的に開発を行い、その内の各種主要成分を利用する、現代工程技術を応用することが可能である。
【0005】
わが国は、現在、製油工場を多く持つが、生産工程技法の制約により油料植物の利用、特に蛋白の利用は思いのままではない。
【0006】
国内においては落花生を原料とする油脂生産メーカーの多くは、“圧搾法”による製油を採用しており、その“圧搾法”とは、物理的圧力によって油脂を直接、油料から分離させるものであり、全工程はいかなる化学添加剤も用いず、安全、衛生、無汚染の長所を持つ。しかし、圧搾法による製油は、出油率が低く、油質が良好でないだけでなく、落花生中の蛋白質を変性させ、搾油後のカスは再加工意義を失い、飼料や肥料になるだけであり、蛋白質資源の巨大な浪費を招いている。
【0007】
また、大豆を原料とする油脂生産メーカーの多くは、“化学溶剤浸出法”による製油を採用している。その原理は、化学溶剤が各物質に対して持つ異なる溶解度の性質を利用して、固体物中の関連成分を分離させる工程であり、それを“採取”とも呼ぶ。生産においては、“六号抽出溶剤油”(俗称:六号軽ガソリン)有機溶剤と粉砕後の油料植物を十分に混合した後、更に油脂の抽出を行う。溶剤は、細胞壁を経て細胞内に浸入、油は細胞内から溶剤に進入、途切れることなく新鮮な溶剤を送り込む状況の下、油料植物中の油は、ほとんど全部が細胞内から拡散し、油と蛋白を分離させることができる。この工程技法において生産された大豆油脂は、カス中に残る油率が低く(出油率が高い)、労働力が低くてよく、作業環境は良好で、カスの品質が良いという特徴を持つ。
【0008】
“化学溶剤浸出法”は、“圧搾法”と比較して、出油率を高め、蛋白熱変性を低下させるが、それ自身の技術に弊害があり、生産過程において溶剤の大部分を除去できず、また、工程ステップも多く、技術過程の流れも長く、コスト高である(脱ガム、脱酸、脱臭、脱色、ウインタリング等の“五脱処理”を行う必要あり)ので、油脂中の残留溶剤が高くなりすぎて、食品衛生と安全に影響し、生産コストの増加を招く。溶剤の油脂及び豆カスへの残留を避けられない為、油脂及び豆カスの品質に影響し、また、食品の安全と衛生、環境汚染、生産における安全は、解決し難い問題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明が解決しようとする技術問題は、公知技術に残された生産工程の複雑性と溶剤汚染の欠点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
公知技術に残された生産工程の複雑性と溶剤汚染の欠点を克服する為に、水浸出法によって植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維を抽出する新生産工程技法を提供する。
【0011】
本発明は、以下の技術案を経て上述した技術問題を解決するものであり、水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維を抽出する方法には、次のステップを含む。
(1)原料の準備:良質油料植物を植物油脂抽出の原料とする。
(2)洗浄の選択:手で洗浄するか機械洗浄するかを選択、使用する油料植物も選択。
(3)皮を剥き砕く:専門設備により洗浄選択後の油料植物の皮を剥き砕く。
(4)浸漬:皮を剥いて砕いた油料植物を完全に浸す。
(5)分離:浸漬した後の油料植物を、ポンプを使って遠心機に運び、遠心機で分離、同時に、植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の三種類の産物に分離させる。
【0012】
該発明を更に具体的に説明すると、
ステップ(4)浸漬するのと同時に超音波を使用する。
ステップ(4)浸漬過程では物質温度が30℃〜55.5℃になるようコントロールする。
ステップ(4)浸漬過程では時間が2時間〜8時間になるようコントロールする。
該水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法は、次のステップも含む。
(6)分離した植物粗蛋白は、逆浸透と超濾過の工程を経て乾燥させ、生じた水は直接、改めて浸漬過程の浸漬器内に注入しリサイクルされて、再利用する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法の特徴は、次のとおりである。
生産工程は、化学溶剤による汚染や非安全等の危害性問題を避け、人々の飲食を健康にする。水を溶剤とすることも生産工程を簡略化し、生産ステップを減少させ、生産コストダウンを図るものであり、産業としての生産を実現すると共に、生産における安全を確保する。継続発展させる為に、環境保護を強化、また、本発明は原料の充分な利用が明白であり、現有する逆浸透と超濾過的工程を使って、蛋白、糖、繊維を完全回收するので、清潔な生産が保証され、最終的に排出汚染ゼロを実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照とした本発明の水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法は、次のステップに分類される。
(1)原料の準備:大豆や落花生等良質油料植物を植物油脂抽出の原料としており、油料植物を使用することにより、植物油脂抽出の人体に対する完全無害を保証、人々の飲食を健康なものとする。
(2)洗浄の選択:手で洗浄するか機械洗浄するかを選択、使用する大豆や落花生等油料植物は、現有する各種洗浄機器を使用できる。
(3)皮を剥き砕く:専門の皮を剥いて砕く設備により洗浄選択後の油料植物の皮を剥き砕く。
(4)浸漬:皮を剥いて砕いた大豆や落花生等油料植物を完全に浸すのと同時に、超音波を使用、植物の細胞壁を開き、油脂を放出させ、並びに、元来の活性を保持している蛋白を分離する。該大豆や落花生の浸漬過程においては恒温を保たせなければならず、多数回のテスト分析により、浸漬温度は30℃〜55.5℃間の効果が比較的良好であり、特に、50℃時の効果は最良である。温度が高すぎると、大豆や落花生中の蛋白が容易に変性し、蛋白資源の巨大な浪費を招き、また、温度が低すぎると、大豆や落花生の出油率が低くなるので、該浸漬過程においては、温度コントロール装置によって恒温制御を行う。浸漬時間は、2時間〜8時間の間に制御されなければならず、時間が長すぎると、作業効率が低くなり、時間が短すぎると、出油率が低くなり、時間は6時間の浸漬効果が最良である。
(5)分離:浸漬した後の大豆、落花生等の油料植物をポンプを使って遠心機に運び、遠心機の遠心力で分離、同時に、植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の三種類の産物に分離する。分離した植物油脂は精煉後すぐに食用油となり、植物粗蛋白、及び植物繊維もまた、他の副産品となることができる。例えば、植物粗蛋白は、現有の逆浸透と超濾過の技法を使って糖を抽出でき、植物繊維は、繊維素等に加工可能である。
(6)植物粗蛋白中の水のリサイクル利用:分離した植物粗蛋白は、逆浸透と超濾過の工程技法を経て濃縮、乾燥され、それにより生じた水もまた直接、浸漬過程中に改めて注入してリサイクルされ、再利用する。よって、水資源を節約するのと同時に、コスト低下し、並びに、排出ゼロ、汚染ゼロ、環境を保護するものとなる。
【0015】
本発明は、主には、大豆、又は、落花生、ゴマ、お茶の実、紫蘇の実、シーベリースナジグミ、紅花の実等の良質な油料植物を原料とするものである。大豆の抽出工程技法が最も複雑である為、大豆抽出に適用する工程技法は、通常、その他の油料植物に適用可能であり、超音波の破壁技術を結合し、水を浸出溶剤として、低温条件の下、油料植物中の油脂と蛋白を効果的に分離、植物油脂と植物粗蛋白を得、並びに、工業化生産の技術及び生産工程技法に運用する。これにより、現有の油脂生産過程における化学溶剤残留、副産品低価値等の問題を効果的に解決し、産業化生産高得率、高品質の植物油脂及び高活性の植物粗蛋白を実現する。
【0016】
また、植物油脂を抽出するのと同時に、植物粗蛋白の利用問題を十分に考慮してあり、植物油脂と蛋白を水中の低温状態において汚染なく分離させて得られた、良質の汚染なしの植物活性蛋白は、蛋白の高活性(即ちPSI高)を保っている。油料植物資源を十分に利用し、植物油脂生産の産業チェーンを改善する為に、油料植物の三次加工の発展は、新しい道を切り開くことになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の、水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法に関するフローステップ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法であって、
良質油料植物を選択して植物油脂抽出の原料とする原料準備ステップ(1)と、
手で洗浄するか機械洗浄するかを選択、並びに使用する油料植物も選択する洗浄選択ステップ(2)と、
専門設備により洗浄選択後の油料植物の皮を剥き砕くステップ(3)と、
皮を剥いて砕いた油料植物を完全に浸す浸漬ステップ(4)とを含むものであり、
浸漬した後の油料植物をポンプを使って遠心機に運び、遠心機で分離を行い、同時に、植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の三種類の産物に分離させるステップ(5)を含み、
ステップ(4)は、浸漬と同時に超音波を使用することを特徴とする、水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法。
【請求項2】
前記ステップ(4)は、浸漬過程において物質温度を30℃〜55.5℃間にコントロールすることを特徴とする、請求項1記載の水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法。
【請求項3】
前記ステップ(4)は、浸漬過程において物質温度を50℃にコントロールすることを特徴とする、請求項1記載の水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法。
【請求項4】
前記ステップ(4)は、浸漬過程において浸漬時間を2時間〜8時間の間にコントロールすることを特徴とする、請求項1記載の水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法。
【請求項5】
前記ステップ(4)は、浸漬過程において浸漬時間を6時間にコントロールすることを特徴とする、請求項1記載の水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法。
【請求項6】
分離した植物粗蛋白の、逆浸透と超濾過の工程技法による濃縮、乾燥時に生じた水は、冷却後、改めて浸漬過程に直接注入され、リサイクルにより再利用することを特徴とする、請求項1記載の水浸出法による植物油脂、植物粗蛋白及び植物繊維の調製方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−519357(P2009−519357A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544733(P2008−544733)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/CN2005/002174
【国際公開番号】WO2007/068143
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(507344818)
【Fターム(参考)】