説明

水溶性単量体用中間体含有組成物及びその製造方法、水溶性単量体用中間体、カチオン性基含有単量体及びその製造方法

【課題】重合性の末端二重結合を有し、水溶性重合体の製造に好適に用いられる、水溶性重合体を高収率で製造可能な水溶性のポリアルキレングリコール系単量体の製造に好適に用いることができる水溶性単量体用中間体を含む組成物、その製造方法、及び、それによって得られる水溶性単量体を含む組成物を提供する。また、洗剤添加剤として使用したときに高い染料移行防止能を発現する重合体の製造に用いることができる、カチオン性基含有単量体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】特定の構造を有する化合物(A)を含む水溶性単量体用中間体含有組成物であって、該組成物は、特定の構造を有する化合物(B)を特定量含む水溶性単量体用中間体含有組成物。又は、特定の構造を有するカチオン性基含有単量体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性単量体用中間体含有組成物、その製造方法、及び、それによって得られる水溶性単量体含有組成物に関する。より詳しくは、水溶性重合体の原料単量体となり得る化合物を製造するための中間体として好適に用いることができる水溶性単量体用中間体を含む組成物、その製造方法、及び、それによって得られる水溶性単量体含有組成物に関する。また、本発明は、カチオン性基含有単量体、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性単量体は、通常では重合体原料として重合体に水溶性や水分散性を付与するために用いられ、中でも、ポリアルキレングリコール系単量体が水溶性単量体として工業的に汎用されていて、例えば、分散剤、洗剤組成物、スケール防止剤、セメント添加剤、増粘剤等の原料として好適に用いられている。このような水溶性単量体において、重合性二重結合と共に、特定の官能基を有するポリアルキレングリコール系単量体が注目され、その開発が行われている。これによって得られる重合体に官能基を与え、それによる機能性付与等が活発に検討されているところである。
ところで、特定の官能基を有する水溶性単量体の製造においては、水溶性等の特性を発現するポリアルキレングリコール鎖と共に、特定の官能基を導入するため、その合成スキームを工夫しなければならず、いくつかの合成手法が開示されている。
【0003】
例えば、従来の特定の官能基をもつポリアルキレングリコール系単量体の合成方法としては、カルボキシル基及び/又はカルボキシル基の塩を有し、特定の構造を有するポリアルキレングリコール系化合物の製造方法の一つとして、不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物とエピクロルヒドリンとを反応させ、それによって得られた反応物に、特定の反応性基とカルボキシル基とを有する化合物を反応させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、上述した不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物とエピクロルヒドリンとを反応させることによって得られる反応物と同様の構造を有する化合物としては、例えば、ポリエーテル共重合体の単量体成分の一つとして、特定の構造を有する単量体が開示されている(例えば、特許文献2、3、4参照。)。その他、オリゴオキシエチレン側鎖を有する特定のポリエーテルポリマーを合成するための単量体成分として、特定の構造を有する単量体が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0004】
一方、特定の官能基を有する水溶性単量体の一つであるカチオン性基含有単量体を重合することにより得られるカチオン性重合体は、従来より、凝固剤、凝集剤、印刷インク、接着剤、洗剤用添加剤、土壌調整(改質)剤、難燃剤、シャンプー・ヘアースプレー・石鹸・化粧品用添加剤、アニオン交換樹脂、繊維・写真用フィルムの染料媒染剤や助剤、製紙における顔料展着剤、紙力増強剤、乳化剤、防腐剤、織物・紙の柔軟剤、潤滑油の添加剤など、幅広い分野で用いられている。
例えば、特許文献6には、代表的なカチオン性単量体である、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドと疎水性コモノマーのコポリマーが、繊維からの色流れ及び/又は染料移動を防止するための洗濯用添加剤として使用できることが知られている。
【0005】
しかし、近年の消費者の環境問題への意識の高まりより、洗濯用添加剤(洗剤添加剤)に要求される性能が変化しつつある。すなわち、消費者が節水を図ったり、排水を低減することへの志向により、ドラム型洗濯機を使用する家庭が増加している。節水条件下での洗濯により、これまで以上に、洗濯時に衣料から衣料への染料の移行が問題となるため、従来より優れた染料の移行を抑制する性能(染料移行防止能)が、要求されているのが現状である。更に、ドラム型洗濯機の使用に適していることから、液体洗剤、とりわけ濃縮液体洗剤の需要が増大している。濃縮液体洗剤に配合する為に、界面活性剤との相溶性に優れた洗剤添加剤も要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−132814号公報(第1−2、15−17頁)
【特許文献2】欧州特許公開第0838487号公報(第1−2頁)
【特許文献3】再公表特許WO98/007772号公報(第47頁)
【特許文献4】再公表特許WO97/042251号公報(第50頁)
【特許文献5】特開昭63−241026号公報(第1−2頁)
【特許文献6】国際公開第04/056888号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1のように、水溶性を示すポリアルキレングリコール系単量体の製造方法について検討が行われているが、種々の重合体の重合原料として更に好適に用いるためには、更なる改善の余地があるものであった。
すなわち、水溶性単量体においては、その末端に重合性の二重結合を有することが好ましく、更に特定の官能基を他の末端に有することが好適である。これによって、単量体の重合性を確保しつつ、重合体を形成したときに特定の官能基が重合体側鎖の末端部に位置することになり、特定の官能基に由来する特性を発揮させやすいという利点がある。
従って、そのような構造を有する水溶性単量体を調製することが検討されているが、重合性の末端二重結合を有し、かつ他の末端に官能基を有し、ポリアルキレングリコール鎖によって水溶性を示す水溶性単量体としてのポリアルキレングリコール系単量体を重合して水溶性重合体を製造すると、ゲル化がおこってしまい、水溶性重合体の収率が低くなるということがわかった。
このようなポリアルキレングリコール系単量体を調製するには、その原料となる中間体が必要であり、その中間体が得られる水溶性単量体の重合特性に影響し、そこに水溶性重合体製造時に不具合を生じる課題があることを見いだしたものである。
【0008】
また、上述したように、従来、様々なカチオン性重合体が報告されているにもかかわらず、近年の新たな需要者のニーズ(例えば、洗剤添加剤として使用したときに高い染料移行防止能を発現する重合体)には対応できているとは言えないのが実情である。
【0009】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、重合性の末端二重結合を有し、水溶性重合体の製造に好適に用いられる、水溶性重合体を高収率で製造可能な水溶性のポリアルキレングリコール系単量体の製造に好適に用いることができる水溶性単量体用中間体を含む組成物、その製造方法、及び、それによって得られる水溶性単量体を含む組成物を提供することを目的とするものである。また、上記カチオン性重合体の原料として用いることができる、新規カチオン性基含有単量体及びその製造方法を提供することを目的とするものでもある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、重合性の末端二重結合を有し、かつ特定の官能基を有し、ポリアルキレングリコール鎖によって水溶性を示す水溶性単量体としてのポリアルキレングリコール系単量体を重合して水溶性重合体を製造する場合に、先ず、上述したようにゲル化がおこってしまうために水溶性重合体の収率が低下することを突き止めたものである。そして、ポリアルキレングリコール系単量体を合成するための中間体に着目し、その中間体を製造する際に、構造中に2つの不飽和結合を有する特定の構造の副生物が同時に生成し、この副生物が水溶性重合体の製造時に架橋成分として働くことが、ゲル化の大きな原因であることを見いだした。そして、この特定の副生物の含有量について種々検討し、中間体を含む組成物中における該特定の構造を有する化合物の含有量を特定の範囲とすると、該中間体含有組成物から単量体を誘導し、水溶性重合体を製造した場合に、重合反応時のゲル化反応を充分に抑制することが可能となり、水溶性重合体を収率良く製造することが可能となることを見いだしたものである。そしてまた、該特定の構造を有する化合物の含有量を特定の範囲とすると、水溶性重合体を収率良く製造することができるだけでなく、製造される水溶性重合体に更に泥や布に対する吸着能を付与することや、高分子量の重合体としても粘度の低い重合体とすることが可能となるなどの新たな機能を付与することができることも見いだした。
このように、水溶性単量体用中間体含有組成物において、特定の成分の含有量を特定の範囲とし、中間体を特定量含有するものとすることによって、上記課題を見事に解決し、更にそれらの中間体含有組成物から得られる水溶性重合体に新たな機能を付与することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0011】
本発明者は更に、上記目的を達成するために様々なカチオン性重合体/共重合体の原料となるカチオン性基含有単量体について検討を行った。その結果、特定のカチオン性基含有単量体を原料とする重合体は、例えば洗剤添加剤として使用したときに、優れた染料移行防止能および界面活性剤との相溶性を有することを知得した。上記知見に基づいて、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、下記一般式(1);
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(A)を含む水溶性単量体用中間体含有組成物であって、上記組成物は、下記一般式(2);
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。Rは、同一若しくは異なって、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Xは、−CH−CH(OR)−CH−O−、又は、直接結合を表し、Rは、水素原子又はグリシジル基を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、同一若しくは異なって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(B)を更に含み、上記化合物(B)の含有量が、化合物(A)の含有量に対して0.1〜6.0モル%であり、上記化合物(A)の含有量は、水溶性単量体用中間体含有組成物の不揮発分100質量%に対して、50〜100質量%である水溶性単量体用中間体含有組成物である。
【0017】
本発明はまた、下記一般式(11);
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり、X−はカウンターアニオンを表す。)で表されるカチオン性基含有単量体でもある。
【0020】
また、本発明の別の局面からは、カチオン性基含有単量体の製造方法が提供される。本発明は、(i)下記一般式(12);
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数を表す。)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとアルカリ化合物とを反応させる工程(工程A)と、(ii)工程Aで得られた反応物と三級アミン塩とを反応させる工程(工程B)とを含むカチオン性基含有単量体の製造方法でもある。
【0023】
また、本発明は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとアルカリ化合物とを反応させる工程(工程A)と、(ii)工程Aで得られた反応物と二級アミンとを反応させる工程(工程C)と、(iii)工程Cで得られた反応物と四級化剤とを反応させる工程(工程D)とを含むカチオン性基含有単量体の製造方法でもある。
また、本発明は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとを触媒存在下反応させる工程(工程E)と、(ii)工程Eで得られた反応物と三級アミンとを反応させる工程(工程F)とを含むカオン性基含有単量体の製造方法でもある。
また、本発明は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とグリシジルトリアルキルアンモニウム塩とを反応させる工程(工程G)を含むカチオン性基含有単量体の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0024】
本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物は、下記一般式(1);
【0025】
【化5】

【0026】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(A)、及び、下記一般式(2);
【0027】
【化6】

【0028】
(式中、Rは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。Rは、同一若しくは異なって、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Xは、−CH−CH(OR)−CH−O−、又は、直接結合を表し、Rは、水素原子又はグリシジル基を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、同一若しくは異なって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(B)を含むものであり、それらはそれぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。また、上記中間体含有組成物は、化合物(A)及び化合物(B)を含む限りその他の成分を含んでいてもよい。
【0029】
上記化合物(A)は、下記一般式(1);
【0030】
【化7】

【0031】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。)で表される化合物であるが、該化合物は、末端のグリシジル基を適宜修飾することにより様々な官能基を有する化合物とすることができる。そして、様々な官能基を有する該化合物を重合性の炭素−炭素二重結合により重合することができ、様々な官能基を側鎖の末端に有し、側鎖のオキシアルキレン基によって水溶性を示す重合体を得ることができる。また、例えば、該様々な官能基を有する化合物とアクリル酸エステルとを共重合させた場合には、得られる共重合体中においてアクリル酸エステル由来の官能基と、該様々な官能基を有する化合物由来の側鎖末端の官能基とが、側鎖のオキシアルキレン基によって共重合体の構造中で離れた位置に存在することとなり、そのような官能基の位置関係に起因して得られる共重合体に新たな物性が付与される可能性が期待される。このように、化合物(A)は、側鎖末端に様々な官能基を有する水溶性重合体を合成するために用いられる単量体を合成する際の元となる水溶性単量体用中間体として有用な化合物である。
すなわち、下記一般式(1);
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。)で表される水溶性単量体用中間体もまた、本発明の1つである。
なお、上記水溶性単量体用中間体は、側鎖末端に様々な官能基を有する水溶性重合体を合成するために用いられる単量体を合成する場合には、その単量体を合成するための中間体として用いることができるが、そのものを重合させることで重合体を合成することも可能である。すなわち、上記水溶性単量体用中間体は、重合体を合成するための単量体として用いることも可能なものである。したがって更には、上記水溶性単量体用中間体を含む本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物についても、この組成物を用いて重合体を合成することが可能であり、単量体含有組成物として用いることも可能なものである。
【0034】
上記一般式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。
ここで、本明細書中において、上記Rが直接結合を表すとは、上記一般式(1)中のCH=C(R)−R−O−で表される構造において、CH=C(R)−O−で表される構造であることを表している。すなわち、CH=C(R)−R−は、Rがメチル基、Rがメチレン基の場合にはメタリル基、Rがメチル基、Rがエチレン基の場合にはイソプレニル基、Rがメチル基、Rが直接結合の場合にはイソプロペニル基、Rが水素原子、Rがメチレン基の場合にはアリル基、Rが水素原子、Rがエチレン基の場合にはブテニル基、Rが水素原子、Rが直接結合の場合にはビニル基を意味するものである。
上記一般式(1)において、化合物(A)から誘導される単量体を重合させる際に重合することとなる炭素−炭素二重結合を有する基、すなわち、CH=C(R)−R−としては、重合性の観点から、イソプレニル基、メタリル基、アリル基、ビニル基が好ましい。より好ましくは、イソプレニル基、メタリル基、アリル基であり、重合性が高くなるにつれてゲル化する懸念が高くなることから、本発明のゲル化を抑制する効果が最も高くなるため、イソプレニル基、メタリル基が特に好ましい。
【0035】
上記一般式(1)において、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表すが、化合物(A)から誘導される単量体の水溶性が向上することから、Yは、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であることが好ましく、エチレン基、プロピレン基であることが特に好ましい。
上記アルキレン基としては、1種であってもよいし、2種以上であってもよいが、2種以上である場合には、(−Y−O−)のオキシアルキレン構造は、ランダム状に連続していても、交互に連続していても、ブロック状に連続していてもよい。
【0036】
上記一般式(1)において、nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表すが、nは2以上が好ましい。化合物(A)のオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数がそのような範囲であった場合には、化合物(A)、更には化合物(A)から誘導される単量体は、沸点が高くなってしまうため、蒸留等により化合物(A)、又は、化合物(A)から誘導される単量体を精製することができず、化合物(A)の合成時に同時に生成する副生物と分離することが困難である。そのため、一般式(1)におけるnの数が大きく、化合物(A)の精製が困難であるような場合において、生成する副生物のうちの特定成分の含有量を特定量とした本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物を用いることによって得られる、水溶性重合体を収率よく製造することが可能となる、という本発明の効果がより顕著に表れることとなるためである。上記nとしては5以上であることがより好ましい。また、更には化合物(A)から誘導される単量体の水溶性、流動性に起因する取り扱いやすさという観点からも、nは2以上であることが好ましい。より好ましくは、5以上であり、更に好ましくは、10以上である。また、化合物(A)から誘導される単量体の重合性が良好となることから、nは200以下が好ましく、150以下がより好ましく、100以下が更に好ましい。特に好ましくは、50以下である。
【0037】
本発明において用いられる化合物(A)は、後述するように、下記一般式(I);
【0038】
【化9】

【0039】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(I)とエピハロヒドリンとを反応原料として、合成することが可能であるが、その反応の際に副生物の一種として、下記一般式(2);
【0040】
【化10】

【0041】
(式中、Rは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。Rは、同一若しくは異なって、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Xは、−CH−CH(OR)−CH−O−、又は、直接結合を表し、Rは、水素原子又はグリシジル基を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、同一若しくは異なって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(B)が生成することとなる。化合物(B)は、反応原料である化合物(I)が一般式(2)中のXで表される基を介して二量化した構造を有するものであり、したがって、一般式(2)において、R、R、Y、nは、一般式(1)におけるR、R、Y、nと同様である。
【0042】
上記一般式(2)において、Xは、−CH−CH(OR)−CH−O−、又は、直接結合を表し、Rは、水素原子又はグリシジル基を表すが、化合物(B)に含まれる副生物としては、Xが−CH−CH(OH)−CH−O−である下記一般式(3);
【0043】
【化11】

【0044】
(式中、R、R、Y、nは、一般式(2)と同様である。)で表される化合物(B−1)、Xが−CH−CH(OR2´)−CH−O−(ただし、R2´は、グリシジル基を表す。)である下記一般式(4);
【0045】
【化12】

【0046】
(式中、R、R、Y、nは、一般式(2)と同様である。)で表される化合物(B−2)、及び、Xが直接結合である下記一般式(5);
【0047】
【化13】

【0048】
(式中、R、R、Y、nは、一般式(2)と同様である。)で表される化合物(B−3)が挙げられる。上記化合物(B−1)は、化合物(I)とエピハロヒドリンとから化合物(A)を合成する際に、反応原料である化合物(I)と反応生成物である化合物(A)とが反応することで生成する化合物であり、上記化合物(B−2)は、副生物として生成した化合物(B−1)とエピハロヒドリンとが反応することで生成する化合物であり、また、上記化合物(B−3)は、反応原料である化合物(I)が二量化することで生成する化合物である。
【0049】
本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物は、上記化合物(B)の含有量が、化合物(A)の含有量に対して0.1〜6.0モル%であり、上記化合物(A)の含有量が、水溶性単量体用中間体含有組成物の不揮発分100質量%に対して、50〜100質量%であるものである。ここで、水溶性単量体用中間体含有組成物の不揮発分とは、130℃、1気圧の条件下において揮発しない成分を表しており、したがって、該組成物に溶媒が含まれるような形態においては、当該条件下において揮発する水等の溶媒は含まれないこととなる。これは、化合物(A)が充分に含まれる組成物中において、化合物(A)の合成工程において同時に生成する副生物のうちの一種である化合物(B)の含有量を特定量とした組成物を表している。本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物を用いて水溶性単量体を誘導し、重合させることで重合体を得る場合において、該組成物中に含まれる化合物(B)の含有量を特定量に制御することによって、水溶性重合体が重合反応時にゲル化することを充分に抑制することが可能となる。そして更には製造される水溶性重合体に泥や布に対する吸着能を付与することが可能となったり、高分子量の重合体としても粘度の低い重合体とすることが可能となるように、水溶性重合体に新たな機能を付与することができる。これは、構造中に2つの不飽和結合を有するために水溶性重合体の製造時に架橋成分として働き得る化合物(B)を、該組成物は最適量含むことによって、製造される水溶性重合体が一部架橋されたグラフトポリマーとなるためであると推察される。例えば、このように製造される水溶性重合体に泥に対する吸着能を付与することによって、該水溶性重合体を洗剤組成物等に含有させることとした場合に、分散した泥汚れに重合体成分が吸着して、再度衣類等へ泥汚れが付着するのを効果的に防止することが可能な洗剤組成物とすることができる。このように、水溶性単量体用中間体含有組成物において、化合物(B)の含有量を特定の範囲とすることにより、高機能を有する水溶性重合体を高収率に製造することが可能となる。化合物(B)の含有量としては、化合物(A)の含有量に対して0.3〜4.5モル%であることが好ましく、0.5〜3.0モル%であることがより好ましく、製造される水溶性重合体に機能を付与することのできる効果が最も高いため、0.7〜2.5モル%が特に好ましい。
また、化合物(A)の含有量としては、水溶性単量体用中間体含有組成物の不揮発分100質量%に対して、50〜100質量%であれば、水溶性単量体用中間体含有組成物として充分に化合物(A)を含んでおり、本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物を用いて水溶性単量体を誘導するのに充分なものということができる。化合物(A)の含有量としては、好ましくは、55〜95質量%であり、より好ましくは、60〜90質量%である。
【0050】
本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物においては、化合物(B)の含有量が、化合物(A)及び化合物(A)を合成する際の反応原料である化合物(I)の合計の含有量に対して、0.1〜5.0モル%であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。すなわち、化合物(A)が、下記一般式(I);
【0051】
【化14】

【0052】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(I)とエピハロヒドリンとを反応させて得られ、水溶性単量体中間体含有組成物は、化合物(B)の含有量が、化合物(A)及び化合物(I)の合計の含有量に対して0.1〜5.0モル%であり、上記化合物(A)及び化合物(I)の合計の含有量は、水溶性単量体用中間体含有組成物の不揮発分100質量%に対して、50〜100質量%であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。そして更には、化合物(B)の含有量としては、化合物(A)及び化合物(I)の合計の含有量に対して0.25〜4.0モル%であることが好ましく、0.35〜3.0モル%であることがより好ましく、製造される水溶性重合体に機能を付与することのできる効果が最も高いため、0.5〜2.0モル%が特に好ましい。
また、化合物(A)及び化合物(I)の合計の含有量としては、水溶性単量体用中間体含有組成物の不揮発分100質量%に対して、50〜100質量%であれば、水溶性単量体用中間体含有組成物として充分に化合物(A)及び化合物(I)を含んでおり、本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物を用いて水溶性単量体を誘導するのに充分なものということができる。化合物(A)及び化合物(I)の合計の含有量としては、好ましくは、60〜98質量%であり、より好ましくは、70〜96質量%である。
【0053】
次に、化合物(A)を含む水溶性単量体用中間体含有組成物の製造方法について説明する。
化合物(A)を含む水溶性単量体用中間体含有組成物は、化合物(I)とエピハロヒドリンとを1/2〜1/15(化合物(I)の有する水酸基(水酸基価換算)/エピハロヒドリン)のモル比で反応させることによって得ることができる。すなわち、下記一般式(1);
【0054】
【化15】

【0055】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(A)を含む水溶性単量体用中間体含有組成物を製造する方法であって、上記製造方法は、下記一般式(I);
【0056】
【化16】

【0057】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(I)とエピハロヒドリンとを1/2〜1/15(化合物(I)の有する水酸基/エピハロヒドリン)のモル比で反応させる工程を含む水溶性単量体用中間体含有組成物の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0058】
上記反応工程は、化合物(I)とエピハロヒドリンとを反応させる際に通常用いられる反応方法により行うことができるが、次の(i)又は(ii)の反応工程により行うことが好ましい。(i)化合物(I)とエピハロヒドリンとをアルカリ化合物の存在下で反応させる工程、(ii)化合物(I)にエピハロヒドリンとルイス酸触媒とを加え反応させ、次に、アルカリ化合物を加えて反応させる工程。すなわち、上記反応工程が、化合物(I)とエピハロヒドリンとをアルカリ化合物の存在下で反応させる工程を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。また、上記反応工程が、化合物(I)にエピハロヒドリンとルイス酸触媒とを加え反応させ、次に、アルカリ化合物を加えて反応させる工程を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。上記反応工程の中でも、反応工程中に触媒などの影響による化合物(I)の分解反応などの副反応が起こりにくい点から、反応工程(i)の方法により化合物(A)を含む水溶性単量体用中間体含有組成物を製造することが好ましい。
【0059】
上記一般式(I)で表される化合物(I)において、R、R、Y、nは、合成される化合物(A)におけるR、R、Y、nと同様である。化合物(I)としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、上記化合物(I)は、アルキレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール又はそれらのアルキレンオキシド付加構造を有するアルコールに、アルキレンオキシドを通常用いられる方法で付加させることにより、製造することができる。製造された化合物(I)は上記反応工程前に前処理などの工程を行って、化合物(I)を製造する際に使用した触媒や含有する酸およびアルカリなどを除去してもよいし、しなくてもよい。
上記化合物(I)の反応系への添加方法は特に制限されず、反応前又は反応中に一度に添加してもよく、反応前及び/又は反応中に複数回に渡って断続的に添加してもよい。
【0060】
上記エピハロヒドリンとしては、下記一般式(II);
【0061】
【化17】

【0062】
(式中、Zは、ハロゲン原子を表す。)で表されるものが好ましく、具体的には、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン等が挙げられる。これらの中でも、工業的に安価なことから、エピクロルヒドリンが特に好ましい。
これらエピハロヒドリンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
上記化合物(I)及びエピハロヒドリンの使用量は、それらのモル比が1/2〜1/15(化合物(I)の有する水酸基(水酸基価換算)/エピハロヒドリン)であるものであるが、このようなモル比で化合物(I)とエピハロヒドリンとを反応させることによって、上記化合物(B)や化合物(C)といった副生物の生成を抑制することが可能となる。上記化合物(I)及びエピハロヒドリンの使用量として好ましくは、それらのモル比が1/2.5〜1/12(化合物(I)の有する水酸基/エピハロヒドリン)であることであり、より好ましくは、1/3〜1/10であり、更に好ましくは、1/4〜1/7である。
上記エピハロヒドリンの反応系への添加方法は特に制限されず、反応前又は反応中に一度に添加してもよく、反応前及び/又は反応中に複数回に渡って断続的に添加してもよい。
【0064】
上記反応工程(i)は、化合物(I)とエピハロヒドリンとをアルカリ化合物の存在下で反応させる工程を含むものである。上記反応工程(i)における反応の反応式を図1に示す。図1から、反応工程(i)においては、生成物である化合物(A)と共に、上記化合物(B−1)及び上記化合物(B−2)が副生物として生成してくることが分かる。
上記アルカリ化合物としては、特に制限されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。これらアルカリ化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記アルカリ化合物の使用量としては、アルカリ化合物が反応系中に多く存在し過ぎると、反応の進行が速くなり、化合物(A)の生成とともに、副生物である化合物(B)が多く生成してしまう恐れがあり、一方、アルカリ化合物が反応系中に少なく存在し過ぎると、アルカリ化合物を添加した効果が充分に得られない恐れがあることから、化合物(I)の有する水酸基(水酸基価換算)とアルカリ化合物とのモル比が、15/1〜1/15(化合物(I)の有する水酸基/アルカリ化合物)であることが好ましい。より好ましくは、5/1〜1/5であり、更に好ましくは、3/1〜1/3である。
【0065】
上記アルカリ化合物の反応系への添加方法は特に制限されず、反応前又は反応中に一度に添加してもよく、反応前及び/又は反応中に複数回に渡って断続的に添加してもよい。添加する際の形態としては、水溶液の状態であってもよく、溶媒に溶かさずにフレーク状であってもよい。ただし、反応系中のアルカリ化合物の濃度が一度に高くなりすぎずに、反応全般に渡って存在することとなるようにすることにより、化合物(A)の合成反応をゆっくり進行させることが可能となり、副生する架橋成分の量を特定の範囲に制御することが可能となることから、上述した添加方法の中でも、複数回に渡って添加する方法が好ましい。より好ましくは、水溶液の状態で滴下して加えることである。
なお、水溶液の状態で加える場合には、水(反応の進行に伴い副生する水を含む)を通常用いられる方法により除去しながら反応を行ってもよい。
【0066】
上記反応工程(i)においては、エピハロヒドリンの使用量としては、上述した中でも、化合物(I)の有する水酸基(水酸基価換算)とエピハロヒドリンとのモル比が、1/2.5〜1/12(化合物(I)の有する水酸基/エピハロヒドリン)であることが好ましい。より好ましくは、1/3〜1/10であり、更に好ましくは、1/4〜1/7である。
【0067】
上記反応工程(i)は、必要に応じて相間移動触媒を用いて行うことが好ましい。上記相間移動触媒としては、特に制限されないが、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド等の塩化四級アンモニウム塩;トリメチルアンモニウムクロリド、トリエチルアンモニウムクロリド等の塩化3級アンモニウム塩;テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等の臭化四級アンモニウム塩;トリメチルアンモニウムブロミド、トリエチルアンモニウムブロミド等の臭化三級アンモニウム塩;テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド等のホスホニウム塩;15−クラウン−5、18−クラウン−6等のクラウンエーテル類;等が挙げられる。これらの中でも、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミドが好ましく、より好ましくは、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミドであり、更に好ましくは、テトラブチルアンモニウムブロミドである。これら相間移動触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
上記相間移動触媒を用いる場合における、相間移動触媒の使用量としては、少なすぎると充分な触媒効果が得られない恐れがあり、多すぎても、使用量に見合うだけの効果が得られず経済的に不利となる恐れがあることから、化合物(I)の有する水酸基(水酸基価換算)と相間移動触媒とのモル比が、1/0.0001〜1/0.3(化合物(I)の有する水酸基/相間移動触媒)であることが好ましい。より好ましくは、1/0.001〜1/0.2であり、更に好ましくは、1/0.005〜1/0.1である。
【0069】
上記反応工程(i)における各反応材料の添加方法としては、上述したような各成分における好ましい添加方法を適宜組み合わせて用いることが可能である。それらの中でも、化合物(I)及びエピハロヒドリンを反応前に一括して投入し、アルカリ化合物を反応中に水溶液の状態で滴下する方法、又は、反応中にフレーク状で複数回に渡って断続的に添加する方法により行うことが好適である。
【0070】
上記反応工程(ii)は、化合物(I)にエピハロヒドリンとルイス酸触媒とを加え反応させ、次に、アルカリ化合物を加えて反応させる工程を含むものである。上記反応工程(ii)における反応の反応式を図2に示す。図2中、Zは、エピハロヒドリンに由来するハロゲン原子を表している。図2から、反応工程(ii)においては、生成物である化合物(A)と共に、上記化合物(B−3)が副生物として生成してくることが分かる。
上記ルイス酸としては、通常ルイス酸として用いられるものであれば、特に制限されないが、例えば、三フッ化ホウ素、四塩化錫、二塩化錫、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、四塩化チタン、塩化マグネシウム、五塩化アンチモン等が挙げられる。これらの中でも、三フッ化ホウ素、四塩化錫、二塩化錫が好ましい。これらルイス酸触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記ルイス酸触媒の使用量としては、少なすぎると充分な触媒効果が得られない恐れがあり、多すぎても、使用量に見合うだけの効果が得られず経済的に不利となる恐れがあることから、化合物(I)の有する水酸基(水酸基価換算)とルイス酸触媒とのモル比が、1/0.0001〜1/0.1(化合物(I)の有する水酸基/ルイス酸触媒)であることが好ましい。より好ましくは、1/0.0005〜1/0.05であり、更に好ましくは、1/0.001〜1/0.03である。
【0071】
上記反応工程(ii)におけるエピハロヒドリンの使用量は、上記反応工程(i)におけるエピハロヒドリンの使用量と同様である。また、上記反応工程(ii)において加えるアルカリ化合物も、上記反応工程(i)におけるアルカリ化合物と同様である。
【0072】
上記反応工程(i)及び(ii)は、溶媒の非存在下に実施することで効率よく反応が進行するため、容積効率の観点から溶媒を用いずに行うことが好ましいが、溶媒の存在下においても実施することができる。上記溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に制限されないが、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルメチルケトン等のケトン類;ジクロロメタン、ジクロロエタン等の塩素系炭化水素類;水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの等のアルコール類が挙げられる。これら溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
上記溶媒を用いる場合における、溶媒の使用量としては、特に制限されないが、化合物(I)に対して、0.005〜5倍質量であることが好ましく、0.01〜3倍質量であることがより好ましい。
【0074】
上記反応工程(i)及び(ii)は、空気雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。また、減圧下、大気圧下、加圧下いずれの圧力下で行ってもよい。反応温度としては、0〜200℃であることが好ましく、15〜150℃であることがより好ましく、30〜100℃であることが更に好ましい。反応原料である化合物(I)の流動性の観点から、攪拌に問題が生じない温度で反応を行うことが好ましい。また、反応時間としては、0.1〜50時間であることが好ましく、0.5〜30時間であることがより好ましく、1〜15時間であることが更に好ましい。
【0075】
上記反応工程は、いわゆるスラリー反応を含み、通常用いられる攪拌装置を有する反応装置を用いて反応を実施することができる。例えば、攪拌槽式反応装置を用いて、回分型、半回分型、連続槽型のいずれの反応装置も用いることができる。
【0076】
上記反応工程を行った後、脱塩や、過剰なエピハロヒドリンの除去等を行った後に化合物(A)からの各種単量体の誘導化反応工程を行うことが好ましい。上記脱塩工程は、沈降分離、遠心分離、ろ過等の通常脱塩に用いられる方法により行うことができ、塩が充分に取り除かれるように適宜設定して実施することができるが、充分な分離速度を得るため、15〜100℃の温度で行うことが好ましい。また、過剰なエピハロヒドリンを除去する方法としては、除去することができれば、特に制限されず、例えば、蒸留や蒸発操作等を行うことにより容易に取り除くことができる。
【0077】
次に、本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物を用いて誘導される水溶性単量体含有組成物について説明する。
本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物は、化合物(A)を含んでおり、該化合物(A)の末端グリシジル基を適宜修飾することにより様々な官能基を有する化合物を含有する組成物を得ることができる。そのような様々な官能基を有する該化合物は、重合性の末端二重結合により重合することができることから、様々な官能基を側鎖の末端に有し、側鎖のオキシアルキレン基によって水溶性を示す重合体を得ることが可能となる。このことから該化合物は、水溶性単量体として有用なものである。
上記様々な官能基を有する化合物としては、化合物(A)の末端グリシジル基を修飾することにより得られるものであれば、最終的に合成する水溶性重合体に付与したい物性に応じて適宜その官能基を選択して用いることができる。そのような様々な官能基を有する化合物を含む組成物としては、例えば、本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物と、官能基含有化合物とを反応させて得られる水溶性単量体含有組成物であって、上記水溶性単量体が、上記官能基含有化合物として3級アミン塩を用いて得られるカチオン性基含有単量体である水溶性単量体含有組成物、本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物と、官能基含有化合物とを反応させて得られる水溶性単量体含有組成物であって、上記水溶性単量体が、上記官能基含有化合物として2級アミンを用いて得られるアミノ基含有単量体である水溶性単量体含有組成物、本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物と、官能基含有化合物とを反応させて得られる水溶性単量体含有組成物であって、上記水溶性単量体が、上記官能基含有化合物として亜硫酸化合物を用いて得られるスルホン酸基含有単量体である水溶性単量体含有組成物、本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物と、官能基含有化合物とを反応させて得られる水溶性単量体含有組成物であって、上記水溶性単量体が、上記官能基含有化合物として水酸基含有化合物を用いて得られるアルキルエーテル基含有単量体である水溶性単量体含有組成物等が挙げられ、これらの水溶性単量体含有組成物、及び、これらの水溶性単量体もまた、本発明の1つである。
【0078】
上記官能基含有化合物として、3級アミン塩を用いた場合には、上記水溶性単量体含有組成物としてカチオン性基含有単量体が得られることとなる。この合成反応は、3級アミン塩と化合物(A)のグリシジル基とを反応させて、化合物(A)の末端を4級アンモニウム塩化し、カチオン性基含有単量体を得る反応であり、そのような反応に通常用いられる反応方法を適宜用いて合成することが可能である。
【0079】
上記官能基含有化合物として、2級アミンを用いた場合には、上記水溶性単量体含有組成物としてアミノ基含有単量体が得られることとなる。この合成反応は、2級アミンと化合物(A)のグリシジル基とを反応させて、化合物(A)の末端を3級アミン化し、アミノ基含有単量体を得る反応であり、そのような反応に通常用いられる反応方法を適宜用いて合成することが可能である。
なお、上記アミノ基含有単量体は、アミノ基含有単量体の末端にアミノ基を含有するものであるが、該アミノ基の窒素原子に結合する置換基としては、アルキル基や、水酸基、カルボキシル基等の官能基を有する基等が挙げられる。
【0080】
上記官能基含有化合物として、亜硫酸化合物を用いた場合には、上記水溶性単量体含有組成物としてスルホン酸基含有単量体が得られることとなる。この合成反応は、亜硫酸化合物と化合物(A)のグリシジル基とを反応させて、化合物(A)の末端をスルホン化し、スルホン酸基含有単量体を得る反応であり、そのような反応に通常用いられる反応方法を適宜用いて合成することが可能である。
【0081】
上記官能基含有化合物として、水酸基含有化合物を用いた場合には、上記水溶性単量体含有組成物としてアルキルエーテル基含有単量体が得られることとなる。この合成反応は、該水酸基含有化合物の水酸基と化合物(A)のグリシジル基とを反応させて、末端にアルキルエーテル基を含有するアルキルエーテル基含有単量体を合成する反応であり、そのような反応に通常用いられる反応方法を適宜用いて合成することが可能である。
なお、上記アルキルエーテル基含有単量体は、アルキルエーテル基含有単量体の末端にアルキルエーテル基を含有する形態の他に、該アルキルエーテル基中の炭素原子にカルボキシル基等の官能基が結合している形態も含むものである。
【0082】
上記水溶性単量体含有組成物は、得られた後、必要に応じて精製を行ってもよい。該精製工程としては、抽出や洗浄等の通常精製工程として行われる手法により行うことが可能である。
【0083】
〔本発明のカチオン性基含有単量体〕
上述したように、特定の官能基を有する水溶性単量体の1つとしてカチオン性基含有単量体が挙げられるが、下記一般式(11);
【0084】
【化18】

【0085】
(式中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、RとRは結合して環状構造を形成しても良く、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり、X−はカウンターアニオンを表す。)で表される構造を有するカチオン性基含有単量体もまた、本発明の1つである。
【0086】
上記一般式(11)において、Rが単結合である場合とは、上記一般式(11)のHC=C(R)−R−O−において、HC=C(R)−O−で表されることを意味する。すなわちHC=C(R)−R−は、RがCH基、RがCH基の場合はメタリル基、RがCH基、RがCHCH基の場合はイソプレニル基、RがCH基、Rが単結合の場合はイソプロペニル基、Rが水素原子、RがCH基の場合はアリル基、Rが水素原子、RがCHCH基の場合はブテニル基、Rが水素原子、Rが単結合の場合はビニル基を意味する。
【0087】
上記一般式(11)におけるR、R、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜20の有機基である。炭素数1〜20の有機基は全体として炭素数が1〜20であれば、制限はないが、アルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。当該アルキル基、アリール基、アルケニル基は、無置換の基であっても、水素原子の1または2以上が他の有機基によって置換されていても良い。この場合の他の置換基としては、アルキル基(上記有機基がアルキル基の場合は全体としてアルキル基となるので、有機基は無置換のアルキル基に該当する。)、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、水酸基、アシル基、エーテル基、アミド基、エステル基、ケトン基等が挙げられる。
、R、Rは、炭素数が1〜8であることがより好ましく、炭素数が1〜5であることが更に好ましく、炭素数が1〜2であることが特に好ましい。上記範囲にあれば、高い収率で本発明のカチオン性基含有単量体を製造することができる。
【0088】
上記R、R、Rとして具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基;ブチレン基、オクチレン基、ノニレン基等のアルケニル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基、又はこれらの水素原子の一部が、アルコキシ基、カルボキシエステル基、アミノ基、アミド基、水酸基等で置換された基、例えばヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。高い収率で本発明のカチオン性基含有単量体を製造することができることから、メチル基、エチル基であることが好ましい。
上記一般式(11)において、R、Rが結合して環状構造を形成していても構わないが、この場合、環状構造が安定することから、N原子、R、Rで形成される環状構造は3〜7員環であること、すなわちRとRの合計の炭素数が2〜6であることが好ましい。
【0089】
上記一般式(11)において、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基であるが、本発明のカチオン性基含有単量体の重合性が良好となることから、Yは炭素数2〜4のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基であることが特に好ましい。具体的にはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素数2〜4のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基、プロピレン基等の炭素数2〜3のアルキレン基であることが特に好ましい。アルキレン基は、1種でも2種以上でも構わないが、2種以上の場合は、−Y−O−の構造はランダムに連続していても、交互に連続していても、ブロック状に連続していても良い。
上記一般式(1)において、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であるが、重合体にポリアルキレングリコール鎖を多く導入できるという観点から、nは5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。また、本発明のカチオン性基含有単量体の重合性が良好になるという観点から、nは200以下が好ましく、150以下がより好ましく、120以下が更に好ましい。
【0090】
本発明のカチオン性基含有単量体は、四級化した窒素原子近傍に、カウンターアニオンX−が存在することになる。カウンターアニオンX−の種類に特に限定はないが、ハロゲン原子のイオン、アルキル硫酸イオンが好ましい。ハロゲン原子のイオンとしては、具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子のイオン等が挙げられる。中でも、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のイオンが好ましく、塩素原子のイオンが特に好ましい。アルキル硫酸イオンとしては、具体的には、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等が挙げられる。中でも、メチル硫酸イオンが好ましい。
【0091】
本発明のカチオン性基含有単量体を重合することにより、得られる重合体は、本発明のカチオン性基含有単量体由来の構造を有することになる。カチオン性基含有単量体由来の構造は、本発明のカチオン性基含有単量体の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造であり、下記一般式(13);
【0092】
【化19】

【0093】
(式中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、RとRは結合して環状構造を形成しても良く、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり、X−はカウンターアニオンを表す。)で表すことができる。
本発明のカチオン性基含有単量体の重合する炭素−炭素二重結合を有する基、すなわちHC=C(R)−R−としては、イソプレニル基、メタリル基、アリル基、ビニル基が好ましい。重合性の観点から、イソプレニル基、メタリル基、アリル基がより好ましく、イソプレニル基、メタリル基が特に好ましい。
【0094】
次に、本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法について説明する。
〔本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法〕
本発明のカチオン性基含有単量体は、上述した方法により製造することができ、通常知られている製造方法によっても製造することができるが、下記製造方法(1)〜(6)の方法で製造することが好ましい。当該方法によれば、高い収率で本発明のカチオン性基含有単量体を製造することができる。
すなわち、本発明のカチオン性基含有単量体の好ましい製造方法(1)は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとアルカリ化合物とを反応させる工程(工程A)と、(ii)工程Aで得られた反応物と三級アミン塩とを反応させる工程(工程B)とを含むカチオン性基含有単量体の製造方法である。
【0095】
本発明のカチオン性基含有単量体の好ましい製造方法(2)は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとアルカリ化合物とを反応させる工程(工程A)と、(ii)工程Aで得られた反応物と二級アミンとを反応させる工程(工程C)と、(iii)工程Cで得られた反応物と四級化剤とを反応させる工程(工程D)とを含むカチオン性基含有単量体の製造方法である。
【0096】
本発明のカチオン性基含有単量体の好ましい製造方法(3)は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとを触媒存在下反応させる工程(工程E)と、(ii)工程Eで得られた反応物と三級アミンとを反応させる工程(工程F)とを含むカチオン性基含有単量体の製造方法である。
【0097】
本発明のカチオン性基含有単量体の好ましい製造方法(4)は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とグリシジルトリアルキルアンモニウム塩とを反応させる工程(工程G)を含むカチオン性基含有単量体の製造方法である。
【0098】
本発明のカチオン性基含有単量体の好ましい製造方法(5)は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとを触媒存在下反応させる工程(工程E)と、(ii)工程Eで得られた反応物とアルカリ化合物とを反応させる工程(工程H)と、(iii)工程Hで得られた反応物と三級アミン塩とを反応させる工程(工程B)とを含むカチオン性基含有単量体の製造方法である。
【0099】
本発明のカチオン性基含有単量体の好ましい製造方法(6)は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとを触媒存在下反応させる工程(工程E)と、(ii)工程Eで得られた反応物とアルカリ化合物とを反応させる工程(工程H)と、(iii)工程Hで得られた反応物と二級アミンとを反応させる工程(工程C)と、(iv)工程Cで得られた反応物と四級化剤とを反応させる工程(工程D)とを含むカチオン性基含有単量体の製造方法である。
【0100】
製造方法(1)〜(6)における、上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体において、Yの好ましい態様は、上記一般式(11)におけるYの好ましい態様と同様である。
【0101】
上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体は、アルキレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール又はそれらのアルキレンオキシド付加構造を有するアルコールに、アルキレンオキシドを通常用いられる方法により付加させて製造したものを使用することができ、単量体の純度を高くすることができることから好ましい。
【0102】
製造方法(1)〜(3)、(5)及び(6)における、エピハロヒドリンとしては、下記一般式(14);
【0103】
【化20】

【0104】
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)で表されるものが好ましい。
エピハロヒドリンとして、具体的には、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン等が挙げられる。中でも、工業的に安価なことから、エピクロルヒドリンが好ましい。
【0105】
上記製造方法(1)及び(5)における、三級アミン塩としては、下記一般式(15);
【0106】
【化21】

【0107】
(式中、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、RとRは結合して環状構造を形成しても良く、X−はカウンターイオンを表す。)で表されるものが好ましい。
【0108】
一般式(15)中、R、R、R、X−の好ましい態様は、上記一般式(11)におけるR、R、R、X−の好ましい態様と同じである。
三級アミン塩として、具体的には、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチル−n−プロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリラウリルアミン、トリステアリルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン等の三級アミンの塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、酢酸塩、過塩素酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等が挙げられる。中でも高い収率で本発明のカチオン性基含有単量体を製造することができることからトリメチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルエチルアミン塩酸塩が好ましい。
【0109】
上記製造方法(2)及び(6)における、二級アミンとしては、下記一般式(16);
【0110】
【化22】

【0111】
(式中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、RとRは結合して環状構造を形成しても良い。)で表されるものが好ましい。
【0112】
一般式(16)中、R、Rの好ましい態様は、上記一般式(11)におけるR、Rの好ましい態様と同じである。
二級アミンとして、具体的には、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン等のジアルキルアミン類;ジエタノールアミン、ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミン等のジアルカノールアミン類;モルホリン、ピロール等の環状アミン類が挙げられる。中でも高い収率で本発明のカチオン性基含有単量体を製造することができることから、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミンが好ましい。
【0113】
上記製造方法(2)及び(6)における四級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、臭化エチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等のハロゲン化アルキル;塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル等のハロゲン化ベンジル;ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸;パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル等のスルホン酸アルキルが挙げられる。中でも工業的に入手が容易なことから、塩化メチル、塩化ベンジル、ジメチル硫酸が好ましい。
【0114】
上記製造方法(3)における三級アミンとしては、下記一般式(17);
【0115】
【化23】

【0116】
(式中、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、RとRは結合して環状構造を形成しても良い。)で表されるものが好ましい。
【0117】
一般式(17)中、R、R、Rの好ましい態様は、上記一般式(11)におけるR、R、Rの好ましい態様と同じである。
三級アミンとして、具体的には、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチル−n−プロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリラウリルアミン、トリステアリルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン等のトリアルキルアミン類;トリエタノールアミン、トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン等のトリアルカノールアミン類が挙げられる。中でも、高い収率で本発明のカチオン性基含有単量体を製造することができることから、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0118】
上記製造方法(4)におけるグリシジルトリアルキルアンモニウム塩としては、下記一般式(18);
【0119】
【化24】

【0120】
(式中、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、RとRは結合して環状構造を形成しても良く、X−はハロゲン原子のイオンを表す。)で表されるものが好ましい。
【0121】
一般式(18)中、R、R、Rの好ましい態様は、上記一般式(11)におけるR、R、Rの好ましい態様と同じである。
グリシジルトリアルキルアンモニウム塩としては、具体的には、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリエチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリメチルアンモニウムブロミド、グリシジルトリエチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。中でも工業的に入手が容易なことから、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
【0122】
つまり、製造方法(1)〜(6)は下記反応式で表される。
【0123】
【化25】

【0124】
<製造方法(1)の反応条件>
(工程Aの反応条件)
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(1)は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとアルカリ化合物とを反応させる工程(工程A)を必須の工程にしている。
工程Aの反応はアルカリ化合物と、必要に応じて相間移動触媒及び/又は溶媒の存在下行われる。アルカリ化合物としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。アルカリ化合物の使用量は上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体の水酸基(水酸基価換算)に対するモル比で、通常は(水酸基)/(アルカリ化合物)=15/1〜1/15であり、好ましくは5/1〜1/5であり、より好ましくは3/1〜1/3である。アルカリ化合物は水溶液の状態で使用しても良い。この場合、水(反応の進行に伴い副生する水も含む)を除去しながら反応を行っても良い。また、相間移動触媒の種類に特に限定はないが、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムクロリド、トリエチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、トリメチルアンモニウムブロミド、トリエチルアンモニウムブロミド等の四級アンモニウム塩;テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド等のホスホニウム塩;15−クラウン−5、18−クラウン−6等のクラウンエーテル類が挙げられる。相間移動触媒を使用する場合は、その使用量は上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体の水酸基(水酸基価換算)に対して、モル比で、通常は(水酸基)/(相間移動触媒)=1/0.0001〜1/0.3であり、好ましくは1/0.001〜1/0.2であり、より好ましくは1/0.005〜1/0.1である。触媒量が少なすぎると十分な触媒効果は得られず、多過ぎても、それ以上の効果はなく、経済的に不利である。
【0125】
工程Aの反応に用いるエピハロヒドリンの使用量としては、上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体の水酸基(水酸基価換算)に対するモル比で、通常は(水酸基)/(エピハロヒドリン)=1/1〜1/15であり、好ましくは1/1〜1/10であり、より好ましくは1/1〜1/5である。範囲外では架橋成分が生じる場合があり、重合時にゲル化してしまう恐れがある。
【0126】
工程Aの反応は、溶媒非存在下に実施することが、効率よく反応が進行し、容積効率の観点からより好ましいが、溶媒の存在下でも実施できる。使用できる溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に制限はなく、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジクロロメタン、ジクロロエタン等の塩素系炭化水素類を挙げることができる。これらは一種のみを単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。その使用量に特に制限はないが、上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体に対して、通常は0.005〜5倍質量の範囲であり、好ましくは0.01〜3倍質量の範囲である。
工程Aの反応は、空気雰囲気下で行っても良いし、不活性ガス雰囲気下で行っても良い。また、減圧下、大気圧下、加圧下いずれでも実施できる。反応温度としては、通常は0〜200℃であり、好ましくは15〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃である。原料である、上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体の流動性の観点から、攪拌に問題が生じない温度で実施することが好ましい。また、反応時間としては、通常は0.1〜50時間であり、好ましくは0.5〜30時間であり、より好ましくは1〜15時間である。
【0127】
(工程Bの反応条件)
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(1)は、(ii)工程Aで得られた反応物と三級アミン塩とを反応させる工程(工程B)、を必須の工程にしている。
工程Bの反応は、溶媒非存在下に実施することが、効率よく反応が進行し、容積効率の観点からより好ましいが、溶媒の存在下でも実施できる。使用できる溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に制限はなく、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を挙げることができる。これらは一種のみを単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。その使用量に特に制限はないが、工程Aで得られた反応物に対して、通常は0.005〜5倍質量の範囲であり、好ましくは0.01〜3倍質量の範囲である。
【0128】
三級アミン塩の使用量としては、工程Aで得られた反応物のグリシジル基のモル数に対して、モル比で、通常は(グリシジル基)/(三級アミン塩)=2/1〜1/2であり、好ましくは1.5/1〜1/1.5であり、より好ましくは1.3/1〜1/1.3である。三級アミン塩は水溶液の状態で使用しても良いが、通常は三級アミン塩が30質量%以上含有する水溶液であり、好ましくは40質量%以上含有する水溶液であり、より好ましくは50質量%以上含有する水溶液である。30質量%未満の場合は反応で得られるカチオン性基含有単量体の選択率が低下する場合がある。
上記工程Aで触媒を使用した場合は、そのまま残存触媒下で反応しても良い。工程Bの反応は、空気雰囲気下で行っても良いし、不活性ガス雰囲気下で行っても良い。また、減圧下、大気圧下、加圧下いずれでも実施できる。反応温度としては、通常は0〜200℃であり、好ましくは15〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃である。原料である工程Aで得られた反応物の流動性の観点から、攪拌に問題が生じない温度で実施することが好ましい。また、反応時間としては、通常は0.1〜50時間であり、好ましくは0.5〜30時間であり、より好ましくは1〜15時間である。
【0129】
工程Aはいわゆるスラリー反応であり、一般的な攪拌装置を有する反応装置で実施することができる。例えば、攪拌槽式反応装置を用いて、回分、半回分、連続槽型反応器のいずれの装置でも実施することができる。工程Aの反応後、脱塩や過剰なエピハロヒドリンの除去などの工程を行ってから工程Bを実施することが好ましい。脱塩工程は沈降分離、遠心分離、ろ過などにより実施することができ、特に限定されるものではない。脱塩工程の実施条件は、塩が充分に取り除かれるように適宜実施すれば良く、充分な分離速度が得られる点で、15℃〜100℃の温度で実施することが好ましい。過剰なエピハロヒドリンは蒸留、蒸発操作などによって容易に取り除くことができる。工程Bの反応はバッチで行っても、連続で行っても良く、例えば、槽型、管型反応器のいずれの装置でも実施することができる。
【0130】
<製造方法(2)の反応条件>
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(2)は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとアルカリ化合物とを反応させる工程(工程A)、を必須の工程にしている。工程Aの好ましい条件は、上記(工程Aの反応条件)記載の通りである。
【0131】
(工程Cの反応条件)
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(2)は、(ii)工程Aで得られた反応物と二級アミンとを反応させる工程(工程C)、を必須の工程としている。
工程Cの反応は、溶媒非存在下に実施することが、効率よく反応が進行し、容積効率の観点からより好ましいが、溶媒の存在下でも実施できる。使用できる溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に制限はなく、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を挙げることができる。これらは一種のみを単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。その使用量に特に制限はないが、工程Aで得られた反応物に対して、通常は0.005〜5倍質量の範囲であり、好ましくは0.01〜3倍質量の範囲である。
【0132】
二級アミンの使用量としては、工程Aで得られた反応物のグリシジル基のモル数に対して、モル比で、通常は(グリシジル基)/(二級アミン)=2/1〜1/2であり、好ましくは1.5/1〜1/1.5であり、より好ましくは1.3/1〜1/1.3である。
上記工程Aで触媒を使用した場合は、そのまま残存触媒下で反応しても良い。工程Cの反応は、空気雰囲気下で行っても良いし、不活性ガス雰囲気下で行っても良い。また、減圧下、大気圧下、加圧下いずれでも実施できる。反応温度としては、通常は0〜200℃であり、好ましくは15〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃である。原料である工程Aで得られた反応物の流動性の観点から、攪拌に問題が生じない温度で実施することが好ましい。また、反応時間としては、通常は0.1〜50時間であり、好ましくは0.5〜30時間であり、より好ましくは1〜15時間である。
【0133】
(工程Dの反応条件)
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(2)は、(iii)工程Cで得られた反応物と四級化剤を反応させる工程(工程D)、を必須の工程としている。
工程Dの反応は、溶媒非存在下に実施することが、効率よく反応が進行し、容積効率の観点からより好ましいが、溶媒の存在下でも実施できる。使用できる溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に制限はなく、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を挙げることができる。これらは一種のみを単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。その使用量に特に制限はないが、工程Aで得られた反応物に対して、通常は0.005〜5倍質量の範囲であり、好ましくは0.01〜3倍質量の範囲である。
【0134】
工程Dの反応に用いる四級化剤の使用量としては、工程Cで得られた反応物のアミノ基のモル数に対して、モル比で、通常は(アミノ基)/(四級化剤)=2/1〜1/2であり、好ましくは1.5/1〜1/1.5であり、より好ましくは1.3/1〜1/1.3である。
上記工程Aで触媒を使用した場合は、そのまま残存触媒下で反応しても良い。工程Dの反応は、空気雰囲気下で行っても良いし、不活性ガス雰囲気下で行っても良い。また、減圧下、大気圧下、加圧下いずれでも実施できる。反応温度としては、通常は0〜200℃であり、好ましくは15〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃である。原料である工程Cで得られた反応物の流動性の観点から、攪拌に問題が生じない温度で実施することが好ましい。また、反応時間としては、通常は0.1〜50時間であり、好ましくは0.5〜30時間であり、より好ましくは1〜15時間である。
工程Aの好ましい実施形態は上記記載の通りである。工程Aの反応後、脱塩や過剰なエピハロヒドリンの除去などの工程を行ってから工程Cを実施し、その後、続いて工程Dを実施することが好ましい。脱塩工程は沈降分離、遠心分離、ろ過などにより実施することができ、特に限定されるものではない。脱塩工程の実施条件は、塩が充分に取り除かれるように適宜実施すれば良く、充分な分離速度が得られる点で、15℃〜100℃の温度で実施することが好ましい。過剰なエピハロヒドリンは蒸留、蒸発操作などによって容易に取り除くことができる。工程Cの反応はバッチで行っても、連続で行っても良く、例えば、槽型、管型反応器のいずれの装置でも実施することができる。工程Dの反応はバッチで行っても、連続で行っても良く、例えば、槽型、管型反応器のいずれの装置でも実施することができる。
【0135】
なお、上記工程Cで得られた反応物(三級のアミノ基を有する単量体)は、そのままノニオン性重合体等の原料として用いることも可能である。但し、重合体の染料移行防止能を向上する上で、本発明のカチオン性基含有単量体を原料とすることが好ましい。
【0136】
<製造方法(3)の反応条件>
(工程Eの反応条件)
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(3)は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとを触媒存在下反応させる工程(工程E)を必須の工程にしている。
工程Eの反応は触媒としては、酸でも塩基でも構わないが、酸が好ましい。酸としては、ルイス酸でもブレンステッド酸でも構わないが、ルイス酸が好ましい。ルイス酸としては、一般的にルイス酸と呼ばれるものは使用できるが、例えば、三フッ化ホウ素、四塩化錫、二塩化錫、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、四塩化チタン、塩化マグネシウム、五塩化アンチモンなどが挙げられる。その使用量は上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体の水酸基(水酸基価換算)に対して、モル比で、通常は(水酸基)/(触媒)=1/0.0001〜1/0.1であり、好ましくは1/0.0005〜1/0.05であり、より好ましくは1/0.001〜1/0.03である。触媒量が少なすぎると十分な触媒効果は得られず、多過ぎても、それ以上の効果はなく、経済的に不利である。
【0137】
工程Eの反応に用いるエピハロヒドリンの使用量としては、上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体の水酸基(水酸基価換算)に対して、モル比で、通常は(水酸基)/(エピハロヒドリン)=1/1〜1/30であり、好ましくは1/1〜1/10であり、より好ましくは1/1〜1/5である。範囲外では架橋成分が生じる場合があり、重合時にゲル化してしまう恐れがある。
工程Eの反応は、溶媒非存在下に実施することが、効率よく反応が進行し、容積効率の観点からより好ましいが、溶媒の存在下でも実施できる。使用できる溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に制限はなく、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジクロロメタン、ジクロロエタン等の塩素系炭化水素類を挙げることができる。これらは一種のみを単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。その使用量に特に制限はないが、上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体に対して、通常は0.005〜5倍質量の範囲であり、好ましくは0.01〜3倍質量の範囲である。
工程Eの反応は、空気雰囲気下で行っても良いし、不活性ガス雰囲気下で行っても良い。また、減圧下、大気圧下、加圧下いずれでも実施できる。反応温度としては、通常は0〜200℃であり、好ましくは15〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃である。原料である、上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体の流動性の観点から、攪拌に問題が生じない温度で実施することが好ましい。また、反応時間としては、通常は0.1〜50時間であり、好ましくは0.5〜30時間であり、より好ましくは1〜15時間である。
【0138】
(工程Fの反応条件)
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(3)は、(ii)工程Eで得られた反応物と三級アミンを反応させる工程(工程F)、を必須の工程にしている。
工程Fの反応は、溶媒非存在下に実施することが、効率よく反応が進行し、容積効率の観点からより好ましいが、溶媒の存在下でも実施できる。使用できる溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に制限はなく、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を挙げることができる。これらは一種のみを単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。その使用量に特に制限はないが、工程Aで得られた反応物に対して、通常は0.005〜5倍質量の範囲であり、好ましくは0.01〜3倍質量の範囲である。
【0139】
三級アミンの使用量としては、工程Eで得られた反応物のハロゲン基のモル数に対して、モル比で、通常は(ハロゲン基)/(三級アミン)=2/1〜1/2であり、好ましくは1.5/1〜1/1.5であり、より好ましくは1.3/1〜1/1.3である。
上記工程Eで触媒を使用した場合は、そのまま残存触媒下で反応しても良い。工程Fの反応は、空気雰囲気下で行っても良いし、不活性ガス雰囲気下で行っても良い。また、減圧下、大気圧下、加圧下いずれでも実施できる。反応温度としては、通常は0〜200℃であり、好ましくは15〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃である。原料である工程Eで得られた反応物の流動性の観点から、攪拌に問題が生じない温度で実施することが好ましい。また、反応時間としては、通常は0.1〜50時間であり、好ましくは0.5〜30時間であり、より好ましくは1〜15時間である。
工程Eの反応はバッチで行っても、連続で行っても良く、例えば、槽型、管型反応器のいずれの装置でも実施することができる。工程Eの反応後、洗浄などの工程を行ってから工程Fを実施しても良い。工程Fの反応はバッチで行っても、連続で行っても良く、例えば、槽型、管型反応器のいずれの装置でも実施することができる。
【0140】
<製造方法(4)の反応条件>
(工程Gの反応条件)
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(4)は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とグリシジルトリアルキルアンモニウム塩を反応させる工程(工程G)、を必須の工程にしている。
工程Gの反応は必要に応じて触媒の存在下行われる。反応に用いる触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属塩;テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムクロリド、トリエチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、トリメチルアンモニウムブロミド、トリエチルアンモニウムブロミド等の四級アンモニウム塩などが挙げることができる。その使用量は上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体の水酸基(水酸基価換算)に対して、モル比で、通常は(水酸基)/(触媒)=1/0.0001〜1/0.3であり、好ましくは1/0.001〜1/0.2であり、より好ましくは1/0.005〜1/0.1である。触媒量が少なすぎると十分な触媒効果は得られず、多過ぎても、それ以上の効果はなく、経済的に不利である。
【0141】
工程Gの反応は、溶媒非存在下に実施することが、効率よく反応が進行し、容積効率の観点からより好ましいが、溶媒の存在下でも実施できる。使用できる溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に制限はなく、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジクロロメタン、ジクロロエタン等の塩素系炭化水素を挙げることができる。これらは一種のみを単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。その使用量に特に制限はないが、上記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体に対して、通常は0.005〜5倍質量の範囲であり、好ましくは0.01〜3倍質量の範囲である。
【0142】
工程Gの反応に用いるグリシジルトリアルキルアンモニウム塩の使用量としては、上記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体の水酸基(水酸基価換算)に対して、モル比で、通常は(水酸基)/(グリシジルトリアルキルアンモニウム塩)=5/1〜1/5であり、好ましくは3/1〜1/3であり、より好ましくは1.5/1〜1/1.5である。
工程Gの反応は、空気雰囲気下で行っても良いし、不活性ガス雰囲気下で行っても良い。また、減圧下、大気圧下、加圧下いずれでも実施できる。反応温度としては、通常は0〜200℃であり、好ましくは15〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃である。原料である、上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体の流動性の観点から、攪拌に問題が生じない温度で実施することが好ましい。また、反応時間としては、通常は0.1〜50時間であり、好ましくは0.5〜30時間であり、より好ましくは1〜15時間である。
工程Gの反応はバッチで行っても、連続で行っても良く、例えば、槽型、管型反応器のいずれの装置でも実施することができる。
【0143】
<製造方法(5)の反応条件>
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(5)は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとを触媒存在下反応させる工程(工程E)、を必須の工程にしている。工程Eの好ましい条件は、上記(工程Eの反応条件)記載の通りである。
【0144】
(工程Hの反応条件)
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(5)は、(ii)工程Eで得られた反応物とアルカリ化合物とを反応させる工程(工程H)、を必須の工程にしている。
工程Hの反応に用いるアルカリ化合物としては、上記工程Aにおいて用いられるアルカリ化合物と同様のものを用いることができる。また、その使用量において、工程Aと同様である。
【0145】
工程Hの反応は、溶媒非存在下に実施することが、効率よく反応が進行し、容積効率の観点からより好ましいが、溶媒の存在下でも実施できる。使用できる溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に制限はなく、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を挙げることができる。これらは一種のみを単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。その使用量に特に制限はないが、工程Eで得られた反応物に対して、通常は0.005〜5倍質量の範囲であり、好ましくは0.01〜3倍質量の範囲である。
【0146】
(工程Bの反応条件)
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(5)は、(iii)工程Hで得られた反応物と三級アミン塩とを反応させる工程(工程B)、を必須の工程にしている。工程Bの好ましい条件は、上記(工程Bの反応条件)記載の通りである。
【0147】
<製造方法(6)の反応条件>
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(6)は、(i)上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとを触媒存在下反応させる工程(工程E)、を必須の工程にしている。工程Eの好ましい条件は、上記(工程Eの反応条件)記載の通りである。
【0148】
(工程Hの反応条件)
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(6)は、(ii)工程Eで得られた反応物とアルカリ化合物とを反応させる工程(工程H)、を必須の工程にしている。工程Hの好ましい条件は、上記(工程Hの反応条件)記載の通りである。
【0149】
(工程Cの反応条件)
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(6)は、(iii)工程Hで得られた反応物と二級アミンとを反応させる工程(工程C)、を必須の工程としている。工程Cの好ましい条件は、上記(工程Cの反応条件)記載の通りである。
【0150】
(工程Dの反応条件)
本発明のカチオン性基含有単量体の製造方法(6)は、(iv)工程Cで得られた反応物と四級化剤とを反応させる工程(工程D)、を必須の工程としている。工程Dの好ましい条件は、上記(工程Dの反応条件)記載の通りである。
【0151】
本発明のカチオン性基含有単量体は上記の方法により製造することができるが、必要に応じて精製工程を設けても良い。抽出や洗浄による精製工程を行うことにより重合時にゲル化を引き起こす原因となる架橋成分の量を低減することができる点で好ましい。
上記製造方法(1)〜(6)の内、原料が安価であり、製造面でも簡便であることから、製造方法(1)〜(3)、(5)及び(6)が好ましい。さらに、製造方法(1)は重合時にゲル化を引き起こす原因となる架橋成分の生成を抑えられることから好ましく、製造方法(2)はカチオン性基含有単量体中のカウンターアニオンを選択しやすいことから好ましく、製造方法(3)は反応で出る廃棄物が少ないことから好ましい。中でも、製造方法(1)がより好ましい。
【0152】
本発明のカチオン性基含有単量体中のカウンターアニオンは上記製法で得た後にイオン交換法により所望のアニオン種に変換することができるが、各製法で使用する原料を適宜選択することにより所望のアニオン種を導入することが、簡便であるため好ましい。すなわち、製造方法(1)及び(5)では、工程(B)で使用する三級アミン塩のアニオンが、製造方法(2)及び(6)では、工程(D)の四級化剤により、製造方法(3)では工程(E)のエピハロヒドリンのハロゲン原子が、製造方法(4)では工程(G)のグリシジルトリアルキルアンモニウム塩のカウンターアニオンがカチオン性基含有単量体中のカウンターアニオンとして導入できる。
【0153】
次に本発明のカチオン性基含有単量体を重合して得られるカチオン性重合体について説明する。
〔本発明のカチオン性重合体〕
本発明の重合性単量体を原料とするカチオン性重合体は、(i)上記一般式(13)で表される本発明のカチオン性基含有単量体由来の構造(構造A)及び、(ii)その他のカチオン性基含有単量体由来の構造(構造B)、ノニオン性単量体由来の構造(構造C)から選ばれる1種以上の構造、を有している。
本発明のその他のカチオン性基含有単量体由来の構造(構造B)、ノニオン性単量体由来の構造(構造C)は、それぞれ、本発明のカチオン性基含有単量体以外のカチオン性基含有単量体(その他のカチオン性基含有単量体)が重合することにより形成される構造、ノニオン性単量体が重合することにより形成される構造であり、単量体の重合性炭素炭素不飽和二重結合が単結合になった構造である。例えば、ノニオン性単量体であるアクリル酸メチル(CH=CHCOOCH)の場合、ノニオン性単量体由来の構造(構造C)は、−CH−CH(COOCH)−となる。
【0154】
<その他のカチオン性基含有単量体>
上記の通り、本発明のカチオン性重合体に含まれ得るその他のカチオン性基含有単量体由来の構造(構造B)は、本発明のカチオン性基含有単量体以外のカチオン性基含有単量体(その他のカチオン性基含有単量体)が重合することにより形成される構造であり、その他のカチオン性基含有単量体の重合性炭素炭素不飽和二重結合が単結合になった構造である。
【0155】
その他のカチオン性基含有単量体としては、好ましくは、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環式芳香族炭化水素基を有するビニル芳香族系単量体の四級化物、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、アミノエチルメタクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類の四級化物、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン等のアリルアミン類の四級化物、(メタ)アリルグリシジルエーテル、イソプレニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルのエポキシ環に、三級アミン塩を反応させることにより得られる単量体の四級化物、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン等のアリルアミン類の四級化物、(メタ)アリルグリシジルエーテル、イソプレニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルのエポキシ環に、二級アミンを反応させた単量体を公知の四級化剤で四級化した単量体等が挙げられる。
【0156】
上記二級アミンとしては、好ましくは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン;モルホリン、ピロール等の環状アミン類が挙げられる。公知の四級化剤としては、ハロゲン化アルキルや、ジアルキル硫酸等が挙げられる。
上記三級アミン塩としては、具体的にはトリメチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩等が挙げられる。塩としては、塩酸塩や有機酸塩等が挙げられる。
【0157】
<ノニオン性単量体>
上記の通り、本発明のカチオン性重合体に含まれ得るノニオン性単量体由来の構造(構造C)は、ノニオン性重合体が重合することにより形成される構造であり、ノニオン性単量体の重合性炭素炭素不飽和二重結合が単結合になった構造である。
ノニオン性単量体としては、好ましくは、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環式芳香族炭化水素基を有するビニル芳香族系単量体、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、アミノエチルメタクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン等のアリルアミン類、(メタ)アリルグリシジルエーテル、イソプレニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルのエポキシ環に、上記二級アミンを反応させることにより得られる単量体等の、アミノ基含有単量体;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンにエチレンオキサイドを6〜200モル付加させた化合物(3−アリルオキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン等)、(メタ)アリルアルコール等のアリルエーテル系単量体;イソプレノール、等のイソプレン系単量体;ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシネオペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体;(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル、マレイン酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル、アルキレングリコールのビニルエーテル、アルコキシアルキレングリコールのビニルエーテル、アルキレングリコールの(メタ)アリルエーテル、アルコキシアルキレングリコールの(メタ)アリルエーテル、アルキレングリコールの(メタ)イソプレニルエーテルアルコキシアルキレングリコールの(メタ)イソプレニルエーテル等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体であって、アルコレングリコール単位を3〜300モル有する単量体(但し、末端にアルコキシ基を有する場合はアルコキシ基は炭素数1〜20である)、スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体、イソブチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0158】
<本発明のカチオン性重合体の組成>
本発明のカチオン性重合体は、上記の通り、(i)構造A、および(ii)構造B、Cから選ばれる1種以上を必須として有するが、それぞれの構造の質量割合としては、本発明のカチオン性重合体を構成する全単量体由来の構造(構造Aと構造Bと構造C)100質量%に対し、構造Aが1以上99質量%以下、構造Bが0以上99質量%以下、構造Cが0以上99質量%以下、の割合であることが好ましく、構造Aが5以上95質量%以下、構造Bが0以上95質量%以下、構造Cが0以上95質量%以下、の割合であることが更に好ましく、構造Aが10以上95質量%以下、構造Bが0以上90質量%以下、構造Cが0以上90質量%以下、の割合であることが特に好ましい。
【0159】
なお、本発明において、カチオン性基含有単量体の全単量体由来の構造に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、カウンターアニオンは計算に入れないこととし、アミノ基含有単量体の全単量体由来の構造に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、アミン塩の場合は対応するアミンとして計算することとする。
【0160】
〔本発明のカチオン性重合体組成物〕
本発明のカチオン性重合体組成物は、本発明のカチオン性重合体を必須として含有し、カチオン性重合体のみを含んでいても良いが、通常はその他に、重合開始剤残渣、残存モノマー、重合時の副生成物、水分から選ばれる1以上を含有する。好ましいカチオン性重合体組成物の形態は、カチオン性重合体を40〜60質量%含有し、水を40〜60質量%含有する形態である。
【0161】
次に、本発明のカチオン性基含有単量体を重合して得られるカチオン性重合体の製造方法について説明する。
〔本発明のカチオン性重合体の製造方法〕
本発明のカチオン性重合体の製造方法は、特に断りの無い限りは、公知の重合方法を同様にしてあるいは修飾した方法が使用できる。本発明のカチオン性重合体を製造する方法としては、(i)カチオン性基含有単量体(単量体aとも言う)、及び、(ii)その他のカチオン性基含有単量体(単量体b)、ノニオン性単量体(単量体c)から選ばれる1種以上を必須成分として含む単量体成分を共重合することにより製造することができる。
具体的な重合方法としては、例えば、水中油型乳化重合法、油中水型乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈澱重合法、溶液重合法、水溶液重合法、塊状重合法等を採用することができる。上記例示の重合方法の中でも、安全性が高く、また、生産コスト(重合コスト)を低減化することができることから、水溶液重合法、乳化重合法を採用することが好ましい。
【0162】
このような製造方法においては、重合開始剤を用いて単量体成分を共重合すれば良い。なお、カチオン性重合体を構成する構成単位が上述したようになるように、単量体成分に含まれる単量体の種類や使用量を適宜設定することになる。すなわち、上記カチオン性重合体の重合に使用する各単量体の組成比は、全単量体(単量体a、b、c)100質量%に対して、単量体aが1以上99質量%以下、単量体bが0以上99質量%以下、単量体cが0以上99質量%以下、の割合であることが好ましく、単量体aが5以上95質量%以下、単量体bが0以上95質量%以下、単量体cが0以上95質量%以下、の割合であることが更に好ましく、単量体aが10以上95質量%以下、単量体bが0以上90質量%以下、単量体cが0以上90質量%以下、の割合であることが特に好ましい。
【0163】
<重合開始剤>
上記開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩が好ましく、過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されても良い。例えば、過酸化水素と過硫酸塩の組み合わせは好ましい形態である。
【0164】
<連鎖移動剤>
本発明のカチオン性重合体の製造方法は、必要に応じ、重合に悪影響を及ぼさない範囲内で、重合体の分子量調整剤として連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン際、3−メルカプトプロピオン際、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物およびその塩などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されても良い。連鎖移動剤を使用すると、製造されるカチオン性重合体が必要以上に高分子量化することを抑制し、低分子量のカチオン性重合体を効率よく製造することができるという利点がある。
本発明の製造方法において、上述したように、亜硫酸及び/又は亜硫酸塩(以下、単に「亜硫酸(塩)」と記載する)を連鎖移動剤として使用することは好ましい形態であるが、その場合、亜硫酸(塩)に加えて開始剤を使用する。さらに、反応促進剤として、重金属イオンを併用しても良い。
【0165】
上記亜硫酸(塩)としては、亜硫酸若しくは亜硫酸水素またはこれらの塩をいい、亜硫酸/亜硫酸水素が塩である形態が好適である。亜硫酸/亜硫酸水素が塩である場合、上記した例に加えて、金属原子、アンモニウム又は有機アンモニウムの塩が好適である。上記金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の一価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の二価の金属原子;アルミニウム、鉄等の三価の金属原子等の塩が好ましい。また、有機アンモニウム(有機アミン)としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンや、トリエチルアミン等が好適である。更に、アンモニウムであっても良い。ゆえに、本発明で好ましく使用される亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられ、亜硫酸水素ナトリウムが特に好適である。上記亜硫酸(塩)は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されても良い。
【0166】
<反応促進剤>
本発明のカチオン性重合体の製造方法は、開始剤などの使用量を低減する等の目的で反応促進剤を加えても良い。反応促進剤としては、重金属イオンが例示される。本発明で重金属イオンとは、比重が4g/cm以上の金属を意味する。上記金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe2+であっても、Fe3+であってよく、これらが組み合わされていても良い。
上記重金属イオンは、イオンの形態として含まれるものであれば特に限定されないが、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いる方法を用いると、取り扱い性に優れるため好適である。その際に用いる重金属化合物は、開始剤に含有することを所望する重金属イオンを含むものであれば良く、用いる開始剤に応じて決定することができる。上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH(SO・6HO)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属化合物等を用いることが好ましい。
また、重金属イオンとしてマンガンを用いる場合、塩化マンガン等を好適に用いることができる。これらの重金属化合物を用いる場合においては、いずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取り扱い性に優れることになる。なお、上記重金属化合物を溶解してなる溶液の溶媒としては、水に限定されるものではなく、本発明のカチオン性重合体の製造において、重合反応を妨げるものでなく、かつ、重金属化合物を溶解するものであれば良い。
【0167】
上記重金属イオンの添加方法は特に限定されないが、単量体の滴下終了前までに添加することが好ましく、全量初期仕込することが特に好ましい。また、使用量としては反応液全量に対して100ppm以下であることが好ましいが、より好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、特に好ましくは30ppm以下である。100ppmを越えると添加した効果はもはや見られず、また得られた共重合体の着色が大きく洗剤組成物として用いる場合などには使用できない恐れがあるため好ましくない。
【0168】
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して好ましくは0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しない恐れがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる共重合体の色調の悪化を来たす恐れがある。また、重金属イオンの含有量が多いと、生成物である重合体を洗剤ビルダーとして用いる場合に、着色汚れの原因となる恐れがある。
【0169】
なお、上記重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了し、所望する重合体が得られた時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合された重合体が酸成分で中和される場合には、中和した後の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であれば良い。
【0170】
本発明のカチオン性重合体の製造方法において、重合の際には、上述した化合物等に加えて、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物を反応系に添加しても良い。重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、イソラク酸、安息香酸等のカルボン酸、そのエステル及びその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミン及びその誘導体等が挙げられる。これらの分解触媒は1種のみが単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0171】
また、還元性化合物としては、例えば、フェロセン等の有機金属化合物;ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の金属イオンを発生できる無機化合物;三フッ化ホウ素エーテル付加物、過マンガン酸カリウム、過塩素酸等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸とその置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒド等のアルデヒド類;アスコルビン酸等が挙げられる。これらの還元性化合物もまた、1種のみが単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。メルカプト化合物等の還元性化合物は、連鎖移動剤として添加しても良い。
【0172】
上記連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせは、特に制限されず、上記各例示の中から適宜選択できる。例えば、連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせとしては、亜硫酸水素ナトリウム/過酸化水素、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過酸化水素/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/過酸化水素、亜硫酸水素ナトリウム/酸素/Fe等の形態が好ましい。より好ましくは、過硫酸ナトリウム/過酸化水素、過硫酸ナトリウム/過酸化水素/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Feであり、最も好ましくは亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe、過硫酸ナトリウム/過酸化水素/Feである。
【0173】
<重合開始剤等の使用量>
開始剤の使用量は、単量体の共重合を開始できる量であれば特に制限されないが、単量体a、b、cからなる全単量体成分1モルに対して、15g以下、より好ましくは1〜12gであることが好ましい。
【0174】
開始剤として、過酸化水素を使用する場合、過酸化水素の添加量は、単量体1モルに対して1.0〜10.0gであることが好ましく、2.0〜8.0gであることがより好ましい。過酸化水素の添加量が1.0g未満であると、得られる共重合体の重合平均分子量が高くなる傾向にある。一方、添加量が10.0gを超えると過酸化水素の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに残存する過酸化水素量が多くなるなどの悪影響を及ぼす。
【0175】
開始剤として、過硫酸塩を使用する場合、過硫酸塩の添加量は、単量体1モルに対して1.0〜5.0gであることが好ましく、2.0〜4.0gであることがより好ましい。過硫酸塩の添加量がこれより少なすぎると、得られる共重合体の分子量が高くなる傾向がある。一方、添加量が多すぎると、過硫酸塩の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、更に、得られる共重合体の純度が低下するなど悪影響を及ぼすことになる。
【0176】
開始剤として過酸化水素と過硫酸塩を併用する場合、過酸化水素および過硫酸塩の添加比率は、重量比で過酸化水素の重量が1としたときに、過硫酸塩の重量が0.1〜5.0であることが好ましく、0.2〜2.0であることがより好ましい。過硫酸塩の重量比が0.1未満であると、得られる共重合体の重量平均分子量も高くなる傾向がある。一方、過硫酸塩の重量比が5.0を超えると、過硫酸塩の添加による分子量低下の効果が添加に伴うほど得られない状態で、重合反応系において過硫酸塩が無駄に消費されることになる。
【0177】
過酸化水素の添加方法としては、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の85重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは90重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過酸化水素は連続的に滴下するが、その滴下速度は変えても良い。
【0178】
過酸化水素の滴下は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、単量体(初期仕込みする単量体を除く)の滴下開始後、遅らせて開始することが好ましい。好ましくはカチオン性基含有単量体の滴下開始後1分以上経過後、更に好ましくは3分以上経過後、より好ましくは5分以上経過後、最も好ましくは10分以上経過後に過酸化水素の滴下を開始することである。過酸化水素の滴下開始時間を遅らすことにより、初期の重合開始をスムーズにし、分子量分布を狭くすることが可能となる。
過酸化水素の滴下開始時間を遅らす時間は、単量体の滴下開始後60分以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましい。
過酸化水素の滴下を単量体の滴下と同時に開始すること、単量体の滴下前に予め過酸化水素を仕込むことも可能であるが、予め過酸化水素を仕込む場合は、必要所定量の10%以下であることが好ましく、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。
単量体の滴下開始時間までに必要所定量の10%を超える過酸化水素を添加すると、例えば過硫酸塩を併用する場合には過硫酸塩に対する過酸化水素の濃度の比率が大きくなり、重合が停止する恐れがある。一方、単量体の滴下開始時間から60分より遅く開始すると、過酸化水素による連鎖移動反応等が起こらなくなる為、重合初期の分子量が高くなる。
【0179】
過酸化水素の滴下終了時間は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、単量体の滴下終了時間と同時に終了することが好ましく、単量体滴下終了時間よりも10分以上早く終了することがより好ましく、30分以上早く終了することが特に好ましい。なお、単量体の滴下終了時間より遅く終了しても、重合系において特に悪影響を及ぼすものではない。ただ、添加した過酸化水素が重合終了時までに完全には分解しないため、過酸化水素としての効果が得られず無駄となり、また、過酸化水素が多量に残存する恐れがあることから、得られた重合体の熱的安定性に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくはない。
【0180】
また、過硫酸塩の添加方法としては、その分解性等を鑑み、特に限定はされないが、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の50重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは80重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過硫酸塩は連続的に滴下するが、その滴下速度は変えてもよい。
【0181】
滴下時間においても特には限定されないが、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等、比較的分解の早い開始剤においては、単量体の滴下終了時間まで滴下することが好ましく、単量体滴下終了後から30分以内に終了することがより好ましく、単量体滴下後5分〜20分以内に終了することが特に好ましい。これにより、共重合体における単量体の残量を著しく減じることが出来る効果を見出せる。なお、単量体の滴下終了前に、これら開始剤の滴下を終了しても、重合に特に悪影響を及ぼすものではなく、得られた共重合体中における単量体の残存量に応じて設定すれば良いものである。
【0182】
これら比較的分解の早い開始剤について、滴下終了時間についてのみ好ましい範囲を述べたが、滴下開始時間は何ら限定されるものではなく、適宜設定すれば良い。例えば、場合によっては単量体の滴下開始前に開始剤の滴下を開始しても良いし、或は特に併用系の場合においては、一つの開始剤の滴下を開始し、一定の時間が経過してから、或は終了してから別の開始剤の滴下を開始しても良い。何れも、開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜設定すれば良い。
【0183】
添加時のラジカル重合開始剤の濃度は、特には限定されないが、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。開始剤の濃度が5重量%未満であると、結果的に重合中の単量体濃度が非常に低くなるので、単量体の重合性が非常に悪くなり得られる共重合体中における単量体の残存量が非常に多くなる。また輸送等の効率や生産性も低くなり経済的な面からも好ましくない。逆に60重量%を超えると、安全性や滴下の簡便性の面で問題となる。
本発明の方法において、連鎖移動剤の添加量は、単量体a、b、cが良好に重合する量であれば制限されないが、好ましくは単量体a、b、cからなる全単量体成分1モルに対して、1〜20g、より好ましくは2〜15gである。1g未満であると、分子量の制御ができない恐れがあり、逆に、20gを超えると、不純物が多量に生成し、重合体純分が低下する恐れがあり、特に亜硫酸塩を使用する場合には、余剰の亜硫酸塩が反応系中で分解され、亜硫酸ガスが発生する恐れがある。しかも、経済的にも不利となる恐れがある。
上記開始剤と連鎖移動剤との組み合わせとしては、過硫酸塩と亜硫酸塩とをそれぞれ1種以上用いることが最も好ましい。この場合、過硫酸塩と亜硫酸塩との混合比は、特に制限されないが、過硫酸塩1質量部に対して、亜硫酸塩0.5〜5質量部を用いることが好ましい。より好ましくは、過硫酸塩1質量部に対して、亜硫酸塩の下限は、1質量部であり、最も好ましくは2質量部である。また、亜硫酸塩の上限は、過硫酸塩1質量部に対して、より好ましくは4質量部であり、最も好ましくは3質量部である。ここで、亜硫酸塩が0.5質量部未満であると、低分子量化する際に開始剤総量が増加する恐れがあり、逆に5質量部を超えると、副反応が増加し、それによる不純物が増加する恐れがある。
上記連鎖移動剤、開始剤、及び反応促進剤の総使用量は、本発明のカチオン性基含有単量体(単量体a)、その他のカチオン性基含有単量体(単量体b)、ノニオン性単量体(単量体c)からなる全単量体成分1モルに対して、2〜20gであることが好ましい。このような範囲とすることで、本発明のカチオン性重合体を効率よく生産することができ、また、カチオン性重合体の分子量分布を所望のものとすることができる。より好ましくは、4〜18gであり、更に好ましくは、6〜15gである。
上記重合開始剤及び連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することができる。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入しても良く、単量体成分を構成する各単量体a、b、c、溶媒等とあらかじめ混同しておいても良い。
【0184】
<重合溶媒>
本発明において、単量体a、b、cの共重合は、単量体aおよびb若しくはcを溶解可能な溶媒を使用して重合することが好ましく、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いることが好ましい。用途によっては有機溶剤の混入が厳しく制限されることがあるが、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いることによって、重合に使用される有機溶剤の量を抑制できるため、重合終了後の有機溶剤の留去が容易であるという利点がある。
水と混合して使用されうる溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で試用されても良い。上記観点からは、水の量は、使用する溶媒全量に対して、好ましくは80質量%以上であることが好ましく、最も好ましくは水単独(即ち、100質量%)である。上記有機溶媒を添加する場合は、単量体成分及び得られる共重合体の溶解性の点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることが好ましい。
水等の溶媒の使用量としては、単量体成分100質量%に対して40〜200質量%が好ましい。より好ましくは、45質量%以上であり、更に好ましくは、50質量%以上である。また、より好ましくは、180質量%以下であり、更に好ましくは、150質量%以下である。溶媒の使用量が40質量%未満であると、得られる共重合体の分子量が高くなる恐れがあり、200質量%を超えると、得られる共重合体の濃度が低くなり、溶媒除去が必要となる恐れがある。なお、溶媒は、重合初期に一部又は全量を反応容器内に仕込んでおけば良いが、溶媒の一部を重合反応中に反応系内に添加(滴下)しても良いし、単量体成分や開始剤等を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合反応中に反応系内に添加(滴下)しても良い。
上記重合方法において、単量体成分や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を添加する方法;単量体a、b、cのうちの一種の内の一部を反応容器に仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に(好ましくは連続して)添加することによって重合を行う方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる共重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、分散剤等として用いる場合の分散性を向上することができうることから、重合開始剤と単量体成分を反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行うことが好ましい。
上記重合方法は、回分式でも連続式でも行うことができる。
上記重合方法において、重合温度等の重合条件としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤により適宜定められるが、重合温度としては、通常、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、80℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、110℃以下である。特に、亜硫酸(塩)を用いる場合には、重合温度は、通常、60℃〜95℃、好ましくは70℃〜95℃、さらに好ましくは、80℃〜95℃である。この際、60℃未満では、亜硫酸(塩)由来の不純物が多量に生成する恐れがある。逆に、95℃を越えると、有毒な亜硫酸ガスが放出される恐れがある。
上記重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしても良いし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応中に経時的に温度変動(昇温又は降温)させても良い。
【0185】
<重合時間、重合圧力、重合pH>
重合時間は特に制限されないが、好ましくは30〜420分であり、より好ましくは45〜390分であり、さらに好ましくは60〜360分であり、最も好ましくは90〜300分である。なお、本発明において、「重合時間」とは、特に断らない限り、単量体を添加している時間を表す。
上記重合方法における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下の何れであっても良いが、得られる共重合体の分子量の点で、常圧下、又は、反応系内を密閉し、加圧下で行うのが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点で、常圧(大気圧)下で行うのが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
上記重合における重合中のpHは、特に制限されない。酢酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体、N−ビニルピロリドン等のビニルラクタム系単量体を共重合する場合には、中性条件下で重合することが好ましい。上記連鎖移動剤として、過重亜硫酸塩を使用する場合は、酸性条件下で行うことが好ましい。
【0186】
[共重合体、重合体組成物の用途]
本発明のカチオン性基含有重合体(または重合体組成物)は、凝固剤、凝集剤、印刷インク、接着剤、土壌調整(改質)剤、難燃剤、スキンケア剤、ヘアケア剤、シャンプー・ヘアースプレー・石鹸・化粧品用添加剤、アニオン交換樹脂、繊維・写真用フィルムの染料媒染剤や助剤、製紙における顔料展着剤、紙力増強剤、乳化剤、防腐剤、織物・紙の柔軟剤、潤滑油の添加剤、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤用添加剤、スケール防止剤(スケール抑制剤)、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー、乳化剤等として用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
【発明の効果】
【0187】
本発明の水溶性単量体用中間体含有組成物は、上述の構成よりなり、これにより水溶性重合体を収率よく製造することができ、更に製造される水溶性重合体に泥や布に対する吸着能を付与することができることから、水溶性重合体の製造に好適に用いられる重合性の末端二重結合を有し、水溶性を示すポリアルキレングリコール系単量体の製造に好適に用いることができる。
また、本発明のカチオン性基含有単量体は、上述の構成よりなり、各種ノニオン性単量体や他のカチオン性単量体と優れた共重合性を有する。そして、本発明のカチオン性基含有単量体から得られる重合体は、本発明のカチオン性基含有単量体由来の構造に起因して、例えば洗剤添加剤として使用した場合に優れた染料移行防止能および界面活性剤との相溶性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】図1は、反応工程(i)における反応の概略を示した反応式である。
【図2】図2は、反応工程(ii)における反応の概略を示した反応式である。
【図3】図3は、実施例4で得られた単量体(1)の中間生成物[A]のH−NMRチャート図である。
【図4】図4は、実施例4で得られた単量体(1)のH−NMRチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0189】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0190】
下記実施例及び比較例においては、次のようにして分析し、評価を行った。
<中間体組成物の定量>
水溶性単量体用中間体含有組成物におけるイソプレノールのエチレンオキシド平均10モル付加物(IPN10)、及び、IPN10の末端グリシジル化物(IPEG10)の定量は、以下の条件で高速液体クロマトグラフィーにより行った。また、カチオン性基含有単量体(IPEC10)は対応するIPN10の末端グリシジル化物(IPEG10)を定量することにより、その転化率から定量した。
測定装置:日立ハイテクノロジーズ社製
カラム:資生堂社製 CAPCELLPAK C18 MGII(内径:4.6mm×長さ:250mm、粒子径:5μm)
溶離液:0.1質量%ギ酸/アセトニトリル=6/4(体積比)
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI、UV(210nm)
検量線:反応原料アルコールであるイソプレノールのエチレンオキシド平均10モル付加物(IPN10)を用いて作成した。ただし、IPEG10の検出強度がIPN10と同じとして量を算出した。
【0191】
<副生物の定量>
水溶性単量体用中間体含有組成物における副生物の定量は、以下の条件で高速液体クロマトグラフィーにより行った。
測定装置:Waters社製 2695
カラム:資生堂社製 CAPCELLPAK C18 MGII(内径:1.5mm×長さ:150mm、粒子径:5μm)
溶離液:0.1質量%ギ酸/アセトニトリル=6/4
流速:0.2mL/min
カラム温度:30℃
UV検出器:210nm
検量線:反応原料アルコールであるイソプレノールのエチレンオキシド平均10モル付加物(IPN10)を用いて作成し、副生物の検出強度がIPN10の2倍として量を算出した。
【0192】
<重合試験>
IPN10の末端グリシジル化物(IPEG10)を含む中間体含有組成物と、トリメチルアミン塩酸塩とを反応させて、対応するカチオン性基含有単量体(IPEC10)を含む水溶性単量体含有組成物を合成し、重合試験を行った。重合試験はIPEC10とヒドロキシエチルアクリレートとをモル比で1/2の組成比で仕込み、静置重合した。反応開始剤としては、過硫酸ナトリウムを用い、反応温度80℃で重合させ、得られた重合体について泥への吸着能試験を実施した。
【0193】
<泥への吸着能試験>
固形分換算で0.3%の重合体含有水溶液を調製した。(固形分は上記重合試験で得られた重合体水溶液を130度に加熱したオーブンで1時間放置して乾燥処理し、乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と揮発成分(%)を算出した。)重合体含有水溶液にJIS Z 8901試験用粉体1の11種(関東ローム)を5%となるように仕込み、室温で20分間攪拌し、フィルターを用いてクレーをろ過した後、紫外可視分光光度計(測定装置:SHIMADZU社製 UV−1650PC)を用いて210nmでの吸光度を測定した。また、ブランクとして、重合体含有水溶液の代わりに純水を用いて同様の試験を行った。以上の測定結果から、下記式により泥への吸着能を求めた。
泥への吸着能(%)=[(試験後の重合体含有水溶液の吸光度−ブランクの吸光度)/試験前の重合体含有水溶液の吸光度]×100
また、事前に測定波長の210nmにおいて、水溶液中の重合体濃度と吸光度が比例関係にあることを確認した。
【0194】
(実施例1)
攪拌翼、温度計、冷却管を備えた1L四つ口フラスコに、下記化学式(6);
【0195】
【化26】

【0196】
で表されるイソプレノールのエチレンオキシド平均10モル付加物(IPN10、水酸基価:106.5mgKOH/g)200.2g、エピクロルヒドリン(ECH)351.6gを一括で仕込み、攪拌混合しながら、内温50℃となるよう加温した。ここにフレーク状の水酸化ナトリウム15.2gを2時間かけて徐々に添加し、内温50℃を維持しながら、更に6時間攪拌した(処方B)。得られた溶液を室温まで冷却した後、析出した塩をろ過して除去し、更に減圧蒸留で混入しているエピクロルヒドリンと水を除去して、下記化学式(7);
【0197】
【化27】

【0198】
で表されるIPN10の末端グリシジル化物(IPEG10)、未反応のIPN10、下記化学式(8);
【0199】
【化28】

【0200】
で表される化合物(B−1)に相当する副生物1、及び、下記化学式(9);
【0201】
【化29】

【0202】
で表される化合物(B−2)に相当する副生物2を含む中間体含有組成物(1−1)を199.4g得た。
次に、攪拌翼、温度計、冷却管を備えた100mL四つ口フラスコに、中間体含有組成物(1−1)30.1g、30%トリメチルアミン塩酸塩水溶液14.5gを一括で仕込み、内温50℃で6時間攪拌し、カチオン性基含有単量体(IPEC10)を含む水溶性単量体含有組成物(1−2)を44.6g得た。次に、スターラーを備えた100mLサンプル管に、IPEC10を含む水溶性単量体含有組成物(1−2)1.95g、ヒドロキシエチルアクリレート0.49g、純水9.40gを仕込み、攪拌混合しながら、内温80℃となるように加温した。ここに15%過硫酸ナトリウム水溶液0.42gを添加し、内温を80℃に維持しながら1時間攪拌し、重合体(1−3)を12.26g得た。得られた重合体はNMR、及び、ガスクロマトグラフィーを用いて単量体が消費されたことを確認した。得られた重合体を用いて、泥への吸着試験を行った。
中間体含有組成物(1−1)を得るために仕込んだ反応原料の仕込みモル比、処方を表1に、得られた中間体含有組成物(1−1)に含まれるIPN10、IPEG10、副生物1、副生物2の量、水溶性単量体含有組成物(1−2)を用いて行われた重合試験、及び、重合体(1−3)を用いて行われた泥への吸着試験の結果を表2に示す。
【0203】
(実施例2)
攪拌翼、温度計、冷却管を備えた5L四つ口フラスコに、イソプレノールのエチレンオキシド平均10モル付加物(IPN10、水酸基価:106.5mgKOH/g)1679.8g、エピクロルヒドリン(ECH)1406.0gを一括で仕込み、攪拌混合しながら、内温50℃となるよう加温した。ここに48%水酸化ナトリウム水溶液374.3gを2時間かけて滴下し、内温50℃を維持しながら、更に4時間攪拌した。反応中、系中を減圧にし、水を留去しながら反応を行った(処方A)。得られた溶液を室温まで冷却した後、析出した塩を水で洗浄して除去し、更に減圧蒸留で混入しているエピクロルヒドリンと水を除去して、IPN10の末端グリシジル化物(IPEG10)、未反応のIPN10、副生物1及び副生物2を含む中間体含有組成物(2−1)を1732.0g得た。
次に、攪拌翼、温度計、冷却管を備えた2L四つ口フラスコに、中間体含有組成物(2−1)1100.0g、30%トリメチルアミン塩酸塩水溶液532.6gを一括で仕込み、攪拌混合しながら、内温50℃で6時間攪拌し、カチオン性基含有単量体(IPEC10)を含む水溶性単量体含有組成物(2−2)を1632.6g得た。次に、スターラーを備えた100mLサンプル管に、IPEC10を含む水溶性単量体含有組成物(2−2)2.03g、ヒドロキシエチルアクリレート0.51g、純水9.66gを仕込み、攪拌混合しながら、内温80℃となるように加温した。ここに15%過硫酸ナトリウム水溶液0.44gを添加し、内温を80℃に維持しながら1時間攪拌し、重合体(2−3)を12.64g得た。得られた重合体はNMR、及び、ガスクロマトグラフィーを用いて単量体が消費されたことを確認した。得られた重合体を用いて、泥への吸着試験を行った。
中間体含有組成物(2−1)を得るために仕込んだ反応原料の仕込みモル比、処方を表1に、得られた中間体含有組成物(2−1)に含まれるIPN10、IPEG10、副生物1、副生物2の量、水溶性単量体含有組成物(2−2)を用いて行われた重合試験、及び、重合体(2−3)を用いて行われた泥への吸着試験の結果を表2に示す。
【0204】
(実施例3)
攪拌翼、温度計、冷却管を備えた2L四つ口フラスコに、イソプレノールのエチレンオキシド平均10モル付加物(IPN10、水酸基価:106.5mgKOH/g)802.0g、エピクロルヒドリン(ECH)422.1gを一括で仕込み、攪拌混合しながら、内温50℃となるよう加温した。ここにフレーク状の水酸化ナトリウム91.2gを2時間かけて徐々に添加し、内温50℃を維持しながら、更に5時間攪拌した(処方B)。得られた溶液を室温まで冷却した後、析出した塩をろ過して除去し、更に減圧蒸留で混入しているエピクロルヒドリンと水を除去して、IPN10の末端グリシジル化物(IPEG10)、未反応のIPN10、副生物1及び副生物2を含む中間体含有組成物(3−1)を833.3g得た。
次に、攪拌翼、温度計、冷却管を備えた100mL四つ口フラスコに、中間体含有組成物(3−1)30.0g、30%トリメチルアミン塩酸塩水溶液16.5gを一括で仕込み、内温50で6時間攪拌し、カチオン性基含有単量体(IPEC10)を含む水溶性単量体含有組成物(3−2)を46.5g得た。次に、スターラーを備えた100mLサンプル管に、IPEC10を含む水溶性単量体含有組成物(3−2)2.36g、ヒドロキシエチルアクリレート0.53g、純水10.25gを仕込み、攪拌混合しながら、内温80℃となるように加温した。ここに15%過硫酸ナトリウム水溶液0.46gを添加し、内温を80℃に維持しながら1時間攪拌し、重合体(3−3)を13.60g得た。得られた重合体はNMR、及び、ガスクロマトグラフィーを用いて単量体が消費されたことを確認した。得られた重合体を用いて、泥への吸着試験を行った。
中間体含有組成物(3−1)を得るために仕込んだ反応原料の仕込みモル比、処方を表1に、得られた中間体含有組成物(3−1)に含まれるIPN10、IPEG10、副生物1、副生物2の量、水溶性単量体含有組成物(3−2)を用いて行われた重合試験、及び、重合体(3−3)を用いて行われた泥への吸着試験の結果を表2に示す。
【0205】
(比較例1)
攪拌翼、温度計、冷却管を備えた500mL四つ口フラスコに、イソプレノールのエチレンオキシド平均10モル付加物(IPN10、水酸基価:106.5mgKOH/g)300.3g、エピクロルヒドリン(ECH)79.2gを一括で仕込み、攪拌混合しながら、内温50℃となるよう加温した。ここにフレーク状の水酸化ナトリウム22.8gを2時間かけて徐々に添加し、内温50℃を維持しながら、更に4時間攪拌した(処方B)。得られた溶液を室温まで冷却した後、析出した塩をろ過して除去し、更に減圧蒸留で混入しているエピクロルヒドリンと水を除去して、IPN10の末端グリシジル化物(IPEG10)、未反応のIPN10、副生物1及び副生物2を含む中間体含有組成物(4−1)を274.8g得た。
次に、攪拌翼、温度計、冷却管を備えた100mL四つ口フラスコに、中間体含有組成物(4−1)30.0g、30%トリメチルアミン塩酸塩水溶液13.3gを一括で仕込み、内温50℃で6時間攪拌し、カチオン性基含有単量体(IPEC10)を含む水溶性単量体含有組成物(4−2)を43.3g得た。次に、スターラーを備えた100mLサンプル管に、IPEC10を含む水溶性単量体含有組成物(4−2)1.97g、ヒドロキシエチルアクリレート0.48g、純水9.04gを仕込み、攪拌混合しながら、内温80℃となるように加温した。ここに15%過硫酸ナトリウム水溶液0.41gを添加し、内温を80℃に維持しながら1時間攪拌し、重合体(4−3)を11.90g得た。得られた重合体はNMR、及び、ガスクロマトグラフィーを用いて単量体が消費されたことを確認した。得られた重合体を用いて、泥への吸着試験を行った。
中間体含有組成物(4−1)を得るために仕込んだ反応原料の仕込みモル比、処方を表1に、得られた中間体含有組成物(4−1)に含まれるIPN10、IPEG10、副生物1、副生物2の量、水溶性単量体含有組成物(4−2)を用いて行われた重合試験、及び、重合体(4−3)を用いて行われた泥への吸着試験の結果を表2に示す。
なお、表1及び1中の略号は、以下の通りである。
IPN10:イソプレノールのエチレンオキシド平均10モル付加物
ECH:エピクロルヒドリン
NaOH:水酸化ナトリウム
IPEG10:IPN10の末端グリシジル化物
IPEG10含量:中間体含有組成物中に含まれるIPEG10の質量割合
IPN10含量:中間体含有組成物中に含まれるIPN10の質量割合
副生物1:化合物(B−1)に相当する副生物1の、IPEG10に対するモル割合、及び、IPEG10とIPN10との合計量に対するモル割合
副生物2:化合物(B−2)に相当する副生物2の、IPEG10に対するモル割合、及び、IPEG10とIPN10との合計量に対するモル割合
total:中間体含有組成物中に含まれる副生物1と副生物2との合計量の、IPEG10に対するモル割合、及び、IPEG10とIPN10との合計量に対するモル割合
【0206】
【表1】

【0207】
【表2】

【0208】
表1及び表2の結果から、以下のことが分かった。
化合物(A)を含む水溶性単量体用中間体含有組成物において、該組成物中の化合物(B)の含有量が、化合物(A)の含有量に対して0.1〜6.0モル%であるものは、該組成物から誘導される単量体含有組成物を用いて重合体を製造した場合に、顕著にゲル化することを防ぐことが可能であることが実証された。そして更に、そのような組成物から誘導される単量体含有組成物を用いて製造される重合体が、泥に対して優れた吸着能を有することも実証された。
なお、上記実施例においては、化合物(A)の合成の際、化合物(I)として、イソプレノールのエチレンオキシド平均10モル付加物を、エピハロヒドリンとしてエピクロルヒドリンを、アルカリ化合物として水酸化ナトリウムを、それぞれ用いて、相当する化合物(B)に含まれる副生物が生成しているが、化合物(A)の合成時に副生する化合物(B)の含有量を特定の範囲とすることによって、重合反応時のゲル化を防ぐことができる機構は、化合物(B)を特定量含む水溶性単量体用中間体含有組成物から誘導された単量体含有組成物を用いて重合反応を行った場合には全て同様であり、また、化合物(B)の含有量が特定の範囲である組成物から誘導される単量体含有組成物を用いて製造される重合体が泥に対して優れた吸着能を示す機構は、化合物(B)を特定量含む水溶性単量体用中間体含有組成物から誘導された単量体含有組成物を用いて製造された重合体においては全て同様である。従って、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
【0209】
また、カチオン性基含有単量体および反応中間体は、上記の<中間体組成物の定量>に記載した条件の液体クロマトグラフィーにより定量した。重合体の重量平均分子量及び染料移行防止能は、下記方法に従って測定した。
【0210】
<イソプレノールのエチレンオキシド付加物の定量方法>
イソプレノールのエチレンオキシド付加物の定量は、以下の条件の高速クロマトグラフィーで行った。
測定装置:東ソー株式会社製 8020シリーズ
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液
(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=45/55(体積比)
流速:1.0ml/min
検出器:RI、UV(検出波長215nm)。
【0211】
<N−ビニルピロリドンの定量>
N−ビニルピロリドンの測定は、下記条件にて液体クロマトグラフィーを用いて行った。
カラム:資生堂社製 CAPCELL PAK C18 TYPE UG120 5μm、1.5mmΦ×250mm
溶離液:メタノール/水=1/24(1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム0.4質量%含有)
流量:100μL/min
カラムオーブン:20℃
注入量:10μL
UV検出器:235nm。
【0212】
<重量平均分子量の測定条件>
装置:日立社製L−7000シリーズ
検出器:RI
カラム:昭和電工社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ, GF−710−HQ, GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min.
検量線:ジーエルサイエンス株式会社製 POLYETHYLENGLYCOL STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)。
【0213】
<固形分の測定>
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンで、本発明の重合体(本発明の重合体組成物1.0gに水1.0gを加えたもの)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と揮発成分(%)を算出した。
【0214】
<移染防止能の測定方法>
(i)JIS綿布(5cm×5cm、財団法人日本規格協会より入手)を予め日本電色工業社製の測色色差計SE2000型を用いて、白色度を反射率にて測定した(試験前の試験布の白色度という)。
(ii)塩化カルシウム2水和物、塩化マグネシウム6水和物に純水を加えて硬水を調整した(カルシウムイオン150ppm(炭酸カルシウム換算)、マグネシウムイオン(炭酸マグネシウム換算)50ppm)。
(iii)ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム3.2g、ポリオキシエチレン(7)ラウリルエーテル0.4g、ホウ酸ナトリウム0.4g、クエン酸1.0gに、純水を加えて、100.0gとし、界面活性剤水溶液を調製した。pHは、水酸化ナトリウムで8.5に調整した。
(iv)ターゴットメーターを40℃にセットし、硬水500mLとゼオライト0.7g、5質量%の炭酸ナトリウム水溶液7.7g、5質量%のLAS(花王株式会社より入手)水溶液3.5g、固形分換算で1%の重合体水溶液3.5g、染料としてクロラゾールブラックLF(試薬 東京化成工業 株式会社より入手)の0.25質量%水溶液2gをポットに入れ、100rpmで1分間撹拌した。その後、白布10枚を入れ、100rpmで30分間撹拌した。
(v)手で白布の水を切り、40℃にした水道水500mLをポットに入れ、100rpmで2分間撹拌した。これを2回行った。
(vi)白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度、白布の白度を反射率にて測定した(洗浄後の試験布の白色度という)。
(vii)以上の測定結果から、下式により移染防止能を求めた。
(viii)移染防止能(%)=〔(洗浄後の試験布の白色度)/(試験前の試験布の白色度)〕×100
【0215】
<界面活性剤との相溶性の評価方法>
試験サンプル(重合体もしくは重合体組成物)を含む洗剤組成物を下記の配合で調製した。
SFT−70H((株)日本触媒製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル);40g
ネオペレックスF−65(花王(株)製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム);7.7g(有効成分5g)
コータミン86W(花王(株)製、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド);17.9g(有効成分5g)
ジエタノールアミン;5g
エタノール;5g
プロピレングリコール;5g
試験サンプル(固形分換算);1.5g
イオン交換水;バランス(イオン交換水の量は、試験サンプルの量を実際の使用量として、上記全合計が100gとなるように適宜調整する。)
各成分が均一になる様に充分に攪拌し、25℃での濁度値を、濁度計(日本電色工業(株)製「NDH2000」)を用い、Turbidity(カオリン濁度mg/l)で測定した。
【0216】
上記一般式(12)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体として下記化合物を使用した。
イソプレノールのエチレンオキシド平均10モル付加物(以下、「IPN10」とも称する。):水酸基価106.5(mgKOH/g)
イソプレノールのエチレンオキシド平均25モル付加物(以下、「IPN25」とも称する。):水酸基価47.3(mgKOH/g)
イソプレノールのエチレンオキシド平均50モル付加物(以下、「IPN50」とも称する。):水酸基価25.5(mgKOH/g)
【0217】
(実施例4)
攪拌翼、温度計、冷却管を備えた200ml4つ口フラスコに、IPN10を100g、エピクロルヒドリン52.7g(0.57mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド3.1g(0.01mol)を一括で仕込み、撹拌混合しながら、内温40〜50℃となるよう加温した。ここに、ペレット状の水酸化ナトリウム(以下、「NaOH」とも称する。)7.6g(0.19mol)を30分間かけて徐々に添加し、内温45〜50℃を維持しながら、さらに5.5時間撹拌した。得られた溶液を室温まで冷却した後、析出した塩を濾過して除去し、さらに減圧蒸留で混入しているエピクロルヒドリンと水を除去して中間生成物78.5gを含む反応液を102g、収率70モル%で得た。また、H−NMRからも、図3に示した単量体(1)の中間生成物[A]の生成を確認した(すなわち、下記一般式(19)において、nが平均10である構造の化合物)。
【0218】
次に、マグネチックスターラー、温度計、冷却管、滴下漏斗を備えた200ml4つ口フラスコに、トリメチルアミン塩酸塩13.0g(0.14mol)、純水 7.0g(0.39mol)を仕込み、攪拌混合しながら、内温50℃に加温した。ここに、中間生成物[A]65.0gを含む反応液85.0gを内温50℃を維持しながら、3時間かけてゆっくりと滴下し、さらに3時間撹拌した。こうして、単量体(1)の水溶液を得た。高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、収率は95モル%であった。また、H−NMRからも、図4に示した単量体(1)の生成を確認した(すなわち、下記一般式(20)において、nが平均10である構造の化合物)。
【0219】
【化30】

【0220】
【化31】

【0221】
(実施例5)
攪拌翼、温度計、冷却管を備えた200ml4つ口フラスコに、IPN25を100g、エピクロルヒドリン23.3g(0.25mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド1.4g(4.4mmol)を一括で仕込み、撹拌混合しながら、内温45〜50℃となるよう加温した。ここに、ペレット状のNaOH3.4g(0.084mol)を30分間かけて徐々に添加し、内温40〜50℃を維持しながら、さらに5.5時間撹拌した。得られた溶液を室温まで冷却した後、析出した塩を濾過して除去し、さらに減圧蒸留で混入しているエピクロルヒドリンと水を除去して中間生成物[B]73.4gを含む反応液を95.3g、収率70モル%で得た。実施例1と同様にH−NMRからも、その生成を確認した(すなわち、上記一般式(19)において、nが平均25である構造の化合物)。
【0222】
次に、マグネチックスターラー、温度計、冷却管、滴下漏斗を備えた200ml4つ口フラスコに、トリメチルアミン塩酸塩5.6g(0.060mol)、純水3.1g(0.17mol)を仕込み、攪拌混合しながら、内温50℃に加温した。ここに、中間生成物[B]66gを含む反応液85.0gを内温50℃を維持しながら、3時間かけてゆっくりと滴下し、さらに3時間撹拌した。こうして、単量体(2)の水溶液を得た。高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、反応は定量的に進行しており、収率は95モル%であった。実施例1と同様にH−NMRからも、その生成を確認した(すなわち、上記一般式(20)において、nが平均25である構造の化合物)。
【0223】
(実施例6)
攪拌翼、温度計、冷却管を備えた200ml4つ口フラスコに、IPN50を100g、エピクロルヒドリン12.3g(0.13mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド0.72g(2.3mmol)を一括で仕込み、撹拌混合しながら、内温40〜50℃となるよう加温した。ここに、ペレット状のNaOH1.8g(0.044mol)を30分間かけて徐々に添加し、内温40〜50℃を維持しながら、さらに5.5時間撹拌した。得られた溶液を室温まで冷却した後、析出した塩を濾過して除去し、さらに減圧蒸留で混入しているエピクロルヒドリンと水を除去して中間生成物[C]72.5gを含む反応液を94.1g、収率70モル%で得た。実施例1と同様にH−NMRからも、その生成を確認した(すなわち、上記一般式(19)において、nが平均50である構造の化合物)。
【0224】
次に、マグネチックスターラー、温度計、冷却管、滴下漏斗を備えた200ml4つ口フラスコに、トリメチルアミン塩酸塩3.0g(0.032mol)、純水1.6g(0.089mol)を仕込み、攪拌混合しながら、内温50℃に加温した。ここに、中間生成物[C]65.9gを含む反応液85.0gを内温50℃を維持しながら、3時間かけてゆっくりと滴下し、さらに3時間撹拌した。こうして、単量体(3)の水溶液を得た。高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、反応は定量的に進行しており、収率は95モル%であった。実施例1と同様にH−NMRからも、その生成を確認した(すなわち、上記一般式(20)において、nが平均50である構造の化合物)。
【0225】
(実施例7)
マグネチックスターラー、温度計、冷却管、滴下漏斗を備えた200ml4つ口フラスコに、IPN10を100g、46%三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体0.306g(0.002mol)を入れ、窒素雰囲気下、内温80℃で撹拌しながら、エピクロルヒドリン18.2g(0.19mol)を2時間で滴下後、さらに4時間撹拌した。こうして、単量体(1)の中間生成物[D]を得た。高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、収率は60モル%であった。
【0226】
次に、マグネチックスターラー、温度計、冷却管、滴下漏斗を備えた200ml4つ口フラスコに、単量体(1)の中間生成物[D]108.0gを仕込み、内温70℃で撹拌しながら30%トリメチルアミン水溶液35.5g(0.18mol)を1時間で滴下後、さらに6時間撹拌した。こうして、単量体(1)の水溶液を得た。高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、収率は62%であった。実施例1と同様にH−NMRからも、その生成を確認した(すなわち、上記一般式(20)において、nが平均10である構造の化合物)。
【0227】
(重合例1)
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 1040.5g、単量体(1) 158.8g、IPN10 15.9gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、N−ビニルピロリドン(以下、「NVP」とも称する。)333.4g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリドの15%水溶液(以下、「15%V50」とも称する。)112.9gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、NVPについては180分間、15%V50については190分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。NVPの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷した。このようにして、重合体(1)の水溶液を得た。
重合体(1)の重量平均分子量は18,500、数平均分子量は8,800であった。
【0228】
(重合例2)
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 972.3g、単量体(1) 111.1g、IPN10 22.2gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、NVP 333.4g、15%V50 109.7gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、NVPについては180分間、15%V50については190分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。NVPの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷した。このようにして、重合体(2)の水溶液を得た。
重合体(2)の重量平均分子量は19,800、数平均分子量は7,400であった。
【0229】
(重合例3)
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 906.9g、単量体(2) 69.5g、IPN25 27.8gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、NVP 333.4g、15%V50 103.3gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、NVPについては180分間、15%V50については190分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。NVPの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷した。このようにして、重合体(3)の水溶液を得た。
重合体(3)の重量平均分子量は16,400、数平均分子量は6,800であった。
【0230】
(重合例4)
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 909.7g、単量体(3) 69.5g、IPN50 27.8gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、NVP 333.4g、15%V50 101.8gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、NVPについては180分間、15%V50については190分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。NVPの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷した。このようにして、重合体(4)の水溶液を得た。
重合体(4)の重量平均分子量は15,100、数平均分子量は6,200であった。
【0231】
(重合例5)
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量3000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 1081.6g、単量体(3) 555.7g、IPN50 55.6gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、NVP 333.4g、15%V50 111.7gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、NVPについては180分間、15%V50については190分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。NVPの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷した。このようにして、重合体(5)の水溶液を得た。
重合体(1)の重量平均分子量は8,300、数平均分子量は3,500であった。
【0232】
(重合例6)
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 448.5gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温させた。次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら、アクリル酸メチル(以下、AMとも称する。) 258.0g、単量体(1) 143.3g、IPN10 57.3g、15%過硫酸ナトリウム(以下、NaPSとも称する) 68.6g、および、35%亜硫酸水素ナトリウム(以下、SBSとも称する) 58.8gを、別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、AMについては180分間、単量体(1)については120分間、IPN10については120分間、15%NaPS、および、35%SBSについては190分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。AMの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷した。このようにして、重合体(6)の水溶液を得た。
【0233】
(重合例7)
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 219.6gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温させた。次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら、60%アクリルアミド水溶液(以下、60%AAmと称する。) 355.3g、単量体(1) 118.5g、IPN10 47.4g、15%NaPS 67.1g、および、35%SBS 57.5gを、別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、60%AAmについては180分間、単量体(1)については120分間、IPN10については120分間、15%NaPS、および、35%SBSについては190分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。60%AAmの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷した。このようにして、重合体(7)の水溶液を得た。
【0234】
(重合例8)
還流冷却器、攪拌機を備えた容量3000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 900.9gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温させた。次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、HEAとも称する) 348.0g、単量体(3) 580.0g、IPN50 58.0g、15%NaPS 67.3g、および、35%SBS 57.7gを、別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、HEAについては180分間、単量体(3)については150分間、IPN50については150分間、15%NaPS、および、35%SBSについては190分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。HEAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷した。このようにして、重合体(8)の水溶液を得た。
【0235】
(重合例9)
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 623.6gを仕込み、攪拌しながら、65℃まで昇温させた。次に、65℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら、酢酸ビニル(以下、VAcとも称する。) 333.4g、単量体(2) 55.6g、IPN25 22.2g、および、15%V50 102.6gを、別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、VAcについては180分間、単量体(2)については150分間、IPN25については150分間、15%V50については190分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。VAcの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を65℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷した。このようにして、重合体(9)の水溶液を得た。
【0236】
(比較重合例1)
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 10.0g、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドの60%水溶液(以下、60%DADMACとも称する。) 475.0g、メタクリル酸メチル(以下、MMAとも称する。) 15.0gを仕込み、攪拌しながら、沸点まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、沸点に保持された重合反応系中に、15%NaPS 38.3g、35%二亜硫酸二ナトリウム水溶液(以下、35%MBSとも称する。) 16.4gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、15%NaPSについては190分間、35%MBSについては、15%NaPSの滴下終了後、95℃に調整した後、30分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。35%MBSの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を95℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、純水 335.3gを加えて希釈した。このようにして、比較重合体(1)の水溶液を得た。
【0237】
(実施例8)
重合体(1)〜(5)、及び比較重合体(1)、比較重合体(2)としての、N−ビニルピロリドン(VPという)のホモポリマーである、ポリビニルピロリドンK30(和光純薬製)、について、上記方法に従って染料移行防止能について評価を行った。結果を表3にまとめた。
【0238】
【表3】

【0239】
表3から明らかなように、本発明における重合体は、従来の比較重合体に比して、有意に優れた染料移行防止能および界面活性剤との相溶性を有している。本発明のカチオン性基含有単量体は、これらの重合体の原料として、好ましく使用できることが明らかとなった。
なお、上記実施例においては、重合体の合成の際、特定の構造を有するカチオン性基含有単量体を単量体成分の1種として用いているが、上記一般式(11)で表されるカチオン性基含有単量体を単量体成分として合成される重合体が優れた染料移行防止能および界面活性剤との相溶性を示す機構は、上記一般式(11)で表されるカチオン性基含有単量体を単量体成分として合成される重合体においては全て同様である。従って、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
【化1】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(A)を含む水溶性単量体用中間体含有組成物であって、
該組成物は、下記一般式(2);
【化2】

(式中、Rは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。Rは、同一若しくは異なって、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Xは、−CH−CH(OR)−CH−O−、又は、直接結合を表し、Rは、水素原子又はグリシジル基を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、同一若しくは異なって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(B)を更に含み、該化合物(B)の含有量が、化合物(A)の含有量に対して0.1〜6.0モル%であり、
該化合物(A)の含有量は、水溶性単量体用中間体含有組成物の不揮発分100質量%に対して、50〜100質量%であることを特徴とする水溶性単量体用中間体含有組成物。
【請求項2】
前記化合物(A)は、下記一般式(I);
【化3】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(I)とエピハロヒドリンとを反応させて得られ、
前記水溶性単量体中間体含有組成物は、前記化合物(B)の含有量が、化合物(A)及び化合物(I)の合計の含有量に対して0.1〜5.0モル%であり、
該化合物(A)及び化合物(I)の合計の含有量は、水溶性単量体用中間体含有組成物の不揮発分100質量%に対して、50〜100質量%であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性単量体用中間体含有組成物。
【請求項3】
下記一般式(1);
【化4】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(A)を含む水溶性単量体用中間体含有組成物を製造する方法であって、
該製造方法は、下記一般式(I);
【化5】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。)で表される化合物(I)とエピハロヒドリンとを1/2〜1/15(化合物(I)の有する水酸基/エピハロヒドリン)のモル比で反応させる工程を含むことを特徴とする水溶性単量体用中間体含有組成物の製造方法。
【請求項4】
前記反応工程は、化合物(I)とエピハロヒドリンとをアルカリ化合物の存在下で反応させる工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の水溶性単量体用中間体含有組成物の製造方法。
【請求項5】
前記反応工程は、化合物(I)にエピハロヒドリンとルイス酸触媒とを加え、次に、アルカリ化合物を加えて反応させる工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の水溶性単量体用中間体含有組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の水溶性単量体用中間体含有組成物と、官能基含有化合物とを反応させて得られる水溶性単量体含有組成物であって、
該水溶性単量体は、該官能基含有化合物として3級アミン塩を用いて得られるカチオン性基含有単量体であることを特徴とする水溶性単量体含有組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の水溶性単量体用中間体含有組成物と、官能基含有化合物とを反応させて得られる水溶性単量体含有組成物であって、
該水溶性単量体は、該官能基含有化合物として2級アミンを用いて得られるアミノ基含有単量体であることを特徴とする水溶性単量体含有組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の水溶性単量体用中間体含有組成物と、官能基含有化合物とを反応させて得られる水溶性単量体含有組成物であって、
該水溶性単量体は、該官能基含有化合物として亜硫酸化合物を用いて得られるスルホン酸基含有単量体であることを特徴とする水溶性単量体含有組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の水溶性単量体用中間体含有組成物と、官能基含有化合物とを反応させて得られる水溶性単量体含有組成物であって、
該水溶性単量体は、該官能基含有化合物として水酸基含有化合物を用いて得られるアルキルエーテル基含有単量体であることを特徴とする水溶性単量体含有組成物。
【請求項10】
下記一般式(1);
【化6】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。)で表されることを特徴とする水溶性単量体用中間体。
【請求項11】
下記一般式(11);
【化7】

(式中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり、X−はカウンターアニオンを表す。)で表されることを特徴とするカチオン性基含有単量体。
【請求項12】
(i)下記一般式(12);
【化8】

(式中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数を表す。)で表されるポリエチレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとアルカリ化合物とを反応させる工程(工程A)と、
(ii)該工程Aで得られた反応物と三級アミン塩とを反応させる工程(工程B)とを含むことを特徴とするカチオン性基含有単量体の製造方法。
【請求項13】
(i)下記一般式(12);
【化9】

(式中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数を表す。)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとアルカリ化合物とを反応させる工程(工程A)と、
(ii)該工程Aで得られた反応物と二級アミンとを反応させる工程(工程C)と、
(iii)該工程Cで得られた反応物と四級化剤とを反応させる工程(工程D)とを含むことを特徴とするカチオン性基含有単量体の製造方法。
【請求項14】
(i)下記一般式(12);
【化10】

(式中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数を表す。)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとを触媒存在下反応させる工程(工程E)と、
(ii)該工程Eで得られた反応物と三級アミンとを反応させる工程(工程F)とを含むことを特徴とするカチオン性基含有単量体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−137135(P2011−137135A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203769(P2010−203769)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】