説明

水熱処理装置の閉塞検知方法

【課題】水熱処理装置の閉塞の進行状況を初期の段階から検知する。
【解決手段】水熱管を通過させることにより有機性廃棄物を水熱処理し、冷却管を通過させることにより水熱処理液を冷却する水熱処理装置の閉塞検知方法であって、前記水熱管及び/又は冷却管の伝熱性の変化によって当該管の閉塞の進行状況を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水熱処理装置の閉塞検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃棄物を処理するための手法の一つとして、有機性廃棄物をバイオマス資源とし、有機性廃棄物中の有機成分を原料としてメタン菌等の嫌気性微生物の働きによって消化処理させることにより、各種ボイラや発電設備等のエネルギー源として利用可能なバイオガスを生産してエネルギーの回収を図るものがある。
上記のような有機性廃棄物の処理方法の一つとしては、特許文献1に示す有機性廃棄物のバイオガス化処理方法がある。このバイオガス化処理方法では、嫌気性微生物による消化処理の前段階に、水熱処理装置を用いて有機性廃棄物を液体化している。
【0003】
特許文献1に記載の技術で用いられるような水熱処理装置では、ある程度稼動すると、廃棄物が通過する水熱管や冷却管に閉塞が発生する問題がある。水熱管や冷却管の閉塞を検知する技術としては、特許文献2や特許文献3に示すものがある。特許文献2は、水熱反応装置における閉塞が起こりそうな部分の入側と出側に圧力計を設け、入側と出側の圧力差が大きくなると閉塞したと判断するものである。また、特許文献3は、水熱反応容器内の圧力検知方法に関するもので、水熱反応容器内の冷却水に一端を突入させた圧力検出管の他端に圧力計を取り付けるものである。
【特許文献1】特開2003−117526号公報
【特許文献2】特開2004−148191号公報
【特許文献3】特開2004−108922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水熱管の閉塞は、廃棄物に含まれる油脂分及び無機分が、管内面に付着し高温高圧にさらされて固化し堆積することにより発生する。冷却管の閉塞は、水熱反応で液体化された有機分と油脂分が、冷却されることにより析出し、管内面に付着し固化し堆積することにより発生する。水熱処理装置において、水熱管や冷却管が閉塞すると、水熱処理装置の稼動を停止して分解し、管内面の付着物を除去しなければならないが、このような作業を行うと、水熱処理装置の稼動率が低下する。したがって、稼働率の低下を避けるためには、水熱管や冷却管が閉塞する前に、その兆しを察知して、水熱管や冷却管の内面の付着物を除去する必要がある。
【0005】
しかし、特許文献2や特許文献3に開示された技術では、閉塞の兆候を検知することができない。特許文献2の技術では、入側と出側の圧力差が大きくなると、水熱管内面の付着物堆積が進行して流路が狭まってきたと判断するが、実際には、堆積の初期段階では、圧力計で計測できるほどの圧力差は現れず、圧力計に圧力差が現れた時点では、流路の狭まりがかなり進み、閉塞に近い状態になってしまっている。特許文献3の技術は、水熱反応容器内に圧力計を設けているが、このような圧力計では、特許文献2の技術と同様に、初期段階では圧力計に反応が現れないので、閉塞の兆候を検知することはできない。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、水熱処理装置の閉塞の兆候を検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、水熱処理装置の閉塞検知方法に係る第1の手段として、水熱管を通過させることにより有機性廃棄物を水熱処理し、冷却管を通過させることにより水熱処理液を冷却する水熱処理装置の閉塞検知方法であって、前記水熱管の加熱及び/又は前記冷却管の冷却における伝熱性の変化によって当該管内面の付着物堆積の進行状況を検知する方法を採用した。
【0008】
また、水熱処理装置の閉塞検知方法に係る第2の手段として、上記第1の手段において、前記水熱管及び/又は冷却管は、当該管の周囲の液体との熱交換により加熱又は冷却される方法を採用した。
【0009】
水熱処理装置の閉塞検知方法に係る第3の手段として、上記第2の手段において、前記管の伝熱性は、当該管が吸収又は放出した熱量を、前記液体の温度と当該管の温度との差で割った伝熱係数で測られるとする方法を採用した。
【0010】
水熱処理装置の閉塞検知方法に係る第4の手段として、上記第3の手段において、前記液体の温度は、前記液体と前記管とが熱交換する区間の上流における温度と下流における温度とを平均した値であって、前記管の温度は、前記区間の上流における温度と下流における温度とを平均した値である方法を採用した。
【0011】
更に、本発明では、水熱処理装置に係る第1の手段として、水熱管を通過させることにより有機性廃棄物を水熱処理し、冷却管を通過させることにより水熱処理液を冷却する水熱処理装置であって、前記水熱管の加熱及び/又は前記冷却管の冷却における伝熱性の変化によって当該管内面の付着物堆積の進行状況を検知する検知手段を備えるものを採用した。
【0012】
水熱処理装置に係る第2の手段として、上記第1の手段において、前記水熱管及び/又は冷却管は、当該管の周囲の液体との熱交換により加熱又は冷却されるものを採用した。
【0013】
水熱処理装置に係る第3の手段として、上記第2の手段において、前記検知手段は、前記液体と前記管とが熱交換する区間の上流及び下流における前記液体及び前記管の温度を検知するセンサを備えるものを採用した。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水熱管の加熱や冷却管の冷却における伝熱性の変化によって管内面の付着物堆積の進行状況を検知するので、管内面に付着した油脂、無機分及び有機分の堆積量が少なく流路の狭まりが軽微なうちから、管内面に付着物が堆積しだしたことを検知できるので、水熱処理装置の閉塞の兆候を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態における水熱処理装置の模式図である。本水熱処理装置は、原料ホッパ1、移送ライン2、原料供給ポンプ3、移送ライン4、分岐管5、分岐管6、水熱液循環路7、移送ライン8、冷却循環路9、移送ライン10、通常運転用ライン11、洗浄運転用ライン12、配管13、配管14、配管15、水熱処理液タンク16、洗浄液貯留タンク17、開閉弁18、開閉弁19、開閉弁20、開閉弁21、アングル弁22、ON/OFF弁23、水酸化ナトリウムタンク24、開閉弁25、クエン酸タンク26、開閉弁27、水タンク28、開閉弁29、シール水供給ポンプ30、シール水タンク31、シール水供給ポンプ32、シール水タンク33、ヒーター34、配管35、クーラー36、配管37を備えている。水熱液循環路7は、配管7a、循環ポンプ7b、水熱反応器7cから構成されている。冷却循環路9は、配管9a、冷却器9b、循環ポンプ9cから構成されている。
【0016】
原料ホッパ1は、固形物(有機性廃棄物)を含有する有機性の排水(以下、有機性排水とする)を貯留するものであり、底部開口から有機性排水を取出可能に構成されている。移送ライン2は、原料ホッパ1と原料供給ポンプ3とを接続するものであって、原料ホッパ1から取り出される有機性排水を原料供給ポンプ3へ供給する。
原料供給ポンプ3は、移送ライン4、分岐管5及び分岐管6により水熱液循環路7に接続されており、移送ライン2から供給される有機性排水を所定圧力(例えば4MPa)まで昇圧させ、移送ライン4へ送り出すものである。移送ライン4は、上流側端部が原料供給ポンプ3に連結され、下流側端部が分岐管5及び分岐管6に連結されている。分岐管5及び分岐管6は、上流側端部が移送ライン4の下流側端部に連結され、下流側端部が配管7aに連結されている。なお、分岐管5及び分岐管6には、弁がそれぞれ設けられており、これら弁が図示しない制御装置によって制御されることにより、分岐管5及び分岐管6の何れかから、有機性排水が配管7aへ送り込まれる。
【0017】
配管7aは、途中部位に循環ポンプ7bと水熱反応器7cとが挿入されたループ状配管であり、循環ポンプ7b及び水熱反応器7cと共に水熱液循環路7を構成している。循環ポンプ7bは、分岐管5或いは分岐管6から配管7aに供給された有機性排水及び水熱反応器7cから排出された処理液を水熱反応器7cに送り出すものである。
水熱反応器7cは、内部に水熱管Sを備え、当該水熱管Sに循環ポンプ7bから送り込まれた有機性排水と処理液との混合液を通過させることによって水熱処理するものであり、水熱処理による処理物である処理液を配管7aに排出する。この水熱反応器7cの内部には上記水熱管Sに隣接して熱媒管Hが設けられており、当該熱媒管Hにはヒーター34から配管35を介して加熱液が供給されるようになっている。水熱反応器7cは、このような加熱液によって有機性排水及び処理液を高温(例えば220°C)に加熱することにより水熱処理する。
【0018】
上記配管7aにおいて水熱反応器7cの受入口近傍には上記混合液の温度を計測する温度計TM1が、また排出口近傍には処理液の温度を計測する温度計TM2がそれぞれ設けられる一方、上記配管35において水熱反応器7cの受入口近傍には上記加熱液の温度を計測する温度計TM3が、また排出口近傍には加熱液の温度を計測する温度計TM4がそれぞれ設けられている。各温度計TM1〜TM4は、本実施形態におけるセンサである。
各温度計TM1〜TM4は、各々の計測値を演算装置CUに供給する。演算装置CUは、上記各々の計測値つまり水熱管Sに供給される混合液の温度、水熱管Sから排出される処理液の温度、熱媒管Hに供給される加熱液の温度及び熱媒管Hから排出される加熱液の温度に基づいて、水熱管Sの伝熱係数を演算し、その演算結果を出力装置OUTに出力する。
【0019】
移送ライン8は、上流側端部が配管7aにおいて水熱反応器7cの排出口近傍に連結される一方、下流側端部が配管9aにおいて冷却器9bの受入口近傍に連結されている。
配管9aは、途中部位に冷却器9bと循環ポンプ9cとが挿入されたループ状配管であり、冷却器9b及び循環ポンプ9cと共に冷却循環路9を構成している。冷却器9bは、移送ライン8及び配管9aを介して水熱反応器7cから供給された処理液が通過する冷却管Rを内部に備えており、当該冷却管Rに隣接して設けられた冷媒管Cに流れる冷媒との熱交換によって、処理液を冷却する。
上記冷媒管Cには、配管37を介してクーラー36が接続されており、当該クーラー36によって冷却された冷媒が配管37を介して供給されると共に、冷却器9bによる熱交換によって加温された冷媒が配管37を介してクーラー36に回収されるようになっている。
循環ポンプ9cは、上記冷却器9bの排出口から排出された処理液(冷却されたもの)を受け入れて冷却器9bの受入口に向けて吐出することにより冷却循環路9において処理液を循環させる。
【0020】
上記配管9aにおいて冷却器9bの受入口近傍には上記処理液の温度を計測する温度計tm1が、また排出口近傍には処理液の温度を計測する温度計tm2がそれぞれ設けられる一方、上記配管37において冷却器9bの受入口近傍には上記冷媒の温度を計測する温度計tm3が、また排出口近傍には冷媒の温度を計測する温度計tm4がそれぞれ設けられている。各温度計tm1〜tm4は、本実施形態におけるセンサである。
各温度計tm1〜tm4は、各々の計測値を演算装置CUに供給する。演算装置CUは、上記各々の計測値つまり冷却管Rに供給される処理液の温度、冷却管Rから排出される処理液(冷却されたもの)の温度、冷媒管Cに供給される冷媒の温度及び冷媒管Cから排出される冷媒の温度に基づいて、冷却管Rの伝熱係数を演算し、その演算結果を出力装置OUTに出力する。
ここで、各温度計TM1〜TM4及びtm1〜tm4、演算装置CU及び出力装置OUTは、本実施形態における検知手段である。
【0021】
なお、本実施形態では、水熱管S内を流れる有機性排水の流れ方向と、熱媒管H内を流れる加熱液の流れ方向とを逆にして有機性排水と加熱液との相対速度を速くし、熱交換効果を高めている。同様に、冷却管R内を流れる処理液の流れ方向と、冷媒管C内を流れる冷媒の流れ方向とを逆にして処理液と冷媒との相対速度を速くし、熱交換効果を高めている。
そして、このように、加熱液によって水熱管Sを加熱し、冷媒によって冷却管Rを冷却するようにすることによって、水熱管Sを加熱しすぎたり冷却管Rを冷却しすぎたりすることなく、水熱管S及び冷却管Rの温度を安定させることを可能にしている。
【0022】
移送ライン10は、上流側端部が配管9aに連結され、下流側端部が通常運転用ライン11及び洗浄運転用ライン12の上流側端部に連結されている。通常運転用ライン11及び洗浄運転用ライン12の下流側端部は、配管13の上流側端部に連結されている。配管13の下流側端部は、配管14及び配管15の上流側端部に連結されている。配管14の下流側端部は、水熱処理液タンク16に連結されている。配管15の下流側端部は、洗浄液貯留タンク17に連結されている。
通常運転用ライン11は、本水熱処理装置の通常運転時に、処理液を水熱処理液タンク16へ移送する際に用いられ、洗浄運転用ライン12は、本水熱処理装置の洗浄運転時に、洗浄液を洗浄液貯留タンク17又は水熱処理液タンク16へ移送する際に用いられる。通常運転用ライン11には、開閉弁18が設けられており、洗浄運転用ライン12には、開閉弁19が設けられている。また、配管14には、開閉弁20が設けられており、配管15には、開閉弁21が設けられている。これらの開閉弁18〜21が図示しない制御装置によって制御されることにより、通常運転用ライン11及び洗浄運転用ライン12の何れかが流路として選択され、配管14及び配管15の何れかが流路として選択される。
【0023】
水熱処理液タンク16は、流路として通常運転用ライン11及び配管14が選択された場合に、冷却循環路9で冷却された処理液が送り込まれるもので、処理液を貯留する。洗浄液貯留タンク17は、流路として洗浄運転用ライン12及び配管15が選択された場合に、洗浄運転において使用された水酸化ナトリウム水溶液が送り込まれるもので、水酸化ナトリウム水溶液を貯留する。
アングル弁22は、通常運転用ライン11に設けられており、図示しない制御装置がアングル弁22の角度を調節することにより、水熱液循環路7及び冷却循環路9の圧力を制御する。ON/OFF弁23は、洗浄運転用ライン12に設けられており、図示しない制御装置がON/OFF弁23を開閉することにより、水熱液循環路7及び冷却循環路9の圧力を急激に変化させる。
【0024】
水酸化ナトリウムタンク24は、洗浄用の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を貯留するものであり、開閉弁25を介して移送ライン2に接続されている。クエン酸タンク26は、洗浄用のクエン酸水溶液を貯留するものであり、開閉弁27を介して移送ライン2に接続されている。水タンク28は、洗浄用の水を貯留するものであり、開閉弁29を介して移送ライン2に接続されている。
なお、上記循環ポンプ7bにはシール水供給ポンプ30によってシール水タンク31に貯留されたシール水が常時供給され、また循環ポンプ9cにはシール水供給ポンプ32によってシール水タンク33に貯留されたシール水が常時供給されている。このシール水の供給によって、循環ポンプ7b,9cのシーリングが確保されている。
【0025】
次に、上記構成の水熱処理装置の動作について説明する。
水熱処理装置の通常運転においては、原料ホッパ1から取り出される有機性排水を原料供給ポンプ3により移送ライン2,4及び分岐管5或いは分岐管6を介して配管7aへ移送し、有機性排水と処理液との混合液を循環ポンプ7bにより水熱反応器7cに供給し水熱処理する。そして、水熱反応器7cで十分に水熱処理された処理液を、移送ライン8を介して配管9aに供給し、循環ポンプ9cにより冷却循環路9にて循環させながら冷却器9bで冷却する。冷却後の処理液は、水熱処理液タンク16に貯留される。
【0026】
ここで、本実施形態では、配管7a及び配管35のそれぞれの温度を、水熱管Sと熱媒管Hとの接触部分の上流及び下流で測り、水熱管Sの伝熱係数を算出している。水熱管Sの上流の温度をT1(℃)、水熱管Sの下流の温度をT2(℃)、熱媒管Hの上流の温度をT3(℃)、熱媒管Hの下流の温度をT4(℃)とし、有機性排水の比熱をCp(Kcal/Kg/℃)、水熱管S内を流れる有機性排水の流量をQ1(Kg/hr)とすると、以下の式(1)により、正規化した水熱管Sの伝熱係数が求められる。
水熱管Sの伝熱係数
=Cp・Q1(T2−T1)/{(T3+T4)/2−(T1+T2)/2} ……(1)
同様に、本実施形態では、配管9a及び配管37のそれぞれの温度を、冷却管Rと冷媒管Cとの接触部分の上流及び下流で測り、冷却管Rの伝熱係数を算出している。冷却管Rの上流の温度をt1(℃)、冷却管Rの下流の温度をt2(℃)、冷媒管Cの上流の温度をt3(℃)、冷媒管Cの下流の温度をt4(℃)とし、処理液の比熱をCq(Kcal/Kg/℃)、冷却管R内を流れる処理液の流量をQ2(Kg/hr)とすると、以下の式(2)により、正規化した冷却管Rの伝熱係数が求められる。
冷却管Rの伝熱係数
=Cq・Q2(t2−t1)/{(t3+t4)/2−(t1+t2)/2} ……(2)
【0027】
水熱処理装置の通常運転の運転性能は、水熱反応器7cの加熱性能を示す水熱反応器7cの伝熱係数と、冷却器9bの冷却性能を示す冷却器9bの伝熱係数とによって、代表される。水熱反応器7cの伝熱係数は、水熱管Sの内面の油脂分及び無機分の固着が進行するにしたがって低下する。冷却器9bの伝熱係数は、冷却管Rの内面の水熱処理液中の液化有機物及び油脂分の固着が進行するにしたがって低下する。
図2は、通常運転及び洗浄運転を交互に行う実験での水熱反応器7cの水熱管S及び冷却器9bの冷却管Rの伝熱係数の変化を示すグラフである。このグラフは、出力装置OUTに入力された伝熱係数により作成したものである。出願人は、この実験により、通常運転を継続すると、水熱管S及び冷却管Rの内面に付着物が堆積することによって、水熱管S及び冷却管Rの伝熱係数が徐々に低下することを確認した。なお、出願人は、通常運転の継続期間が1週間程度であれば半日程度洗浄運転を行うことにより、水熱管S及び冷却管Rの伝熱係数が回復することも、併せて確認した。
図3は、変化の現れの有無の比較のために示すグラフであって、水熱反応器7c及び冷却器9bの差圧の変化を示すグラフである。このグラフにおける所々の突然大きく変化している値は、例外の値である。このグラフに示すように、差圧は概ね安定した値となっており、このグラフから、流路の狭まり即ち水熱管S及び冷却管Rの閉塞の兆候を読み取ることは不可能である。これに対して、図2に示すように、伝熱係数の変化の観測によれば、水熱管S及び冷却管Rの付着物堆積の進行状態が推測できるので、閉塞の兆候を初期の段階から読み取ることができる。
【0028】
以下、洗浄運転について説明する。
洗浄運転を行う際には、洗浄運転に先立って、水タンク28に貯留された水を移送ライン2、移送ライン4、及び、分岐管5又は分岐管6を介して、水熱液循環路7へ注入し、更に、移送ライン8を介して冷却循環路9へ注入して、予洗浄運転を1時間程度行う。予洗浄運転は、後の洗浄運転の効きを良くするために、水熱管S及び冷却管Rに通水して、水熱管S及び冷却管Rから水によって洗い流されるものを除去する。このとき、水熱管S及び冷却管Rに固着した油脂分及び無機分を除去する効果を高めるために、ON/OFF弁23を間欠的に開放し、水熱管S及び冷却管Rを流れる水の圧力を急激に変化させる。
【0029】
予洗浄運転に続いて、洗浄運転を行う。洗浄運転においては、まず、水酸化ナトリウムタンク24に貯留された水酸化ナトリウム水溶液を、移送ライン2、移送ライン4、及び、分岐管5又は分岐管6を介して、水熱液循環路7へ注入する。続いて、水酸化ナトリウム水溶液を循環ポンプ7bにより水熱液循環路7にて循環させる。更に、移送ライン8を介して、水酸化ナトリウム水溶液を冷却循環路9へ注入する。続いて、水酸化ナトリウム水溶液を循環ポンプ9cにより冷却循環路9にて循環させる。このようにして、水熱管S及び冷却管Rに固着した油脂分を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させて除去する。洗浄に用いた後の水酸化ナトリウム水溶液は、洗浄液貯留タンク17に貯留する。
次に、クエン酸タンク26に貯留されたクエン酸水溶液を、移送ライン2、移送ライン4、分岐管5又は分岐管6、水熱液循環路7にて循環させ、水熱管Sに固着した無機分をクエン酸水溶液に溶解させて除去する。更に、移送ライン8を介して、クエン酸水溶液を冷却循環路9へ注入する。続いて、クエン酸水溶液を循環ポンプ9cにより冷却循環路9にて循環させ、冷却管Rを中和する。洗浄に用いた後のクエン酸水溶液は、水熱処理液タンク16に貯留する。
【0030】
このように、本実施形態によれば、伝熱係数の変化を観測して水熱管S及び冷却管Rの閉塞の進行状況を推測するようにしたので、水熱管S及び冷却管Rの閉塞の進行状況を初期の段階から検知することができる。
なお、本実施形態では、伝熱係数の変化を観測しているが、実施にあたっては、伝熱抵抗の変化を観測してもよい。正規化した伝熱抵抗は、下記の式(3)及び(4)によって求められる。
水熱管Sの伝熱抵抗
={(T3+T4)/2−(T1+T2)/2}/{Cp・Q1(T2−T1)} …(3)
冷却管Rの伝熱抵抗
={(t3+t4)/2−(t1+t2)/2}/{Cq・Q2(t2−t1)} …(4)
上記の伝熱抵抗は、通常運転を継続すると、水熱管S及び冷却管Rの内面に付着物が堆積することによって、図4に示すように、値が徐々に上昇する。この上昇を観測して水熱管S及び冷却管Rの付着物堆積の進行状況を推測し、閉塞の兆候を検知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態における水熱処理装置の模式図である。
【図2】本発明の一実施形態における水熱管及び冷却管の伝熱係数の変化を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態における水熱反応器及び冷却器の差圧の変化を示すグラフである。
【図4】本発明の他の実施形態における水熱管及び冷却管の伝熱抵抗の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1…原料ホッパ、 2…移送ライン、 3…原料供給ポンプ、 4…移送ライン、 5…分岐管、 6…分岐管、 7…水熱液循環路、 7a…配管、 7b…循環ポンプ、 7c…水熱反応器、 8…移送ライン、 9…冷却循環路、 9a…配管、 9b…冷却器、 9c…循環ポンプ、 10…移送ライン、 11…通常運転用ライン、 12…洗浄運転用ライン、 13…配管、 14…配管、 15…配管、 16…水熱処理液タンク、 17…洗浄液貯留タンク、 18…開閉弁、 19…開閉弁、 20…開閉弁、 21…開閉弁、 22…アングル弁、 23…ON/OFF弁、 24…水酸化ナトリウムタンク、 25…開閉弁、 26…クエン酸タンク、 27…開閉弁、 28…水タンク、 29…開閉弁、 30…シール水供給ポンプ、 31…シール水タンク、 32…シール水供給ポンプ、 33…シール水タンク、 34…ヒーター、 35…配管、 36…クーラー、 37…配管、 H…熱媒管、 S…水熱管、 C…冷媒管、 R…冷却管、 TM1〜TM4…温度計(センサ、検知手段の一部)、 tm1〜tm4…温度計(センサ、検知手段の一部)、 CU…演算装置(検知手段の一部)、 OUT…出力装置(検知手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水熱管を通過させることにより有機性廃棄物を水熱処理し、冷却管を通過させることにより水熱処理液を冷却する水熱処理装置の閉塞検知方法であって、
前記水熱管の加熱及び/又は前記冷却管の冷却における伝熱性の変化によって当該管内面の付着物堆積の進行状況を検知することを特徴とする水熱処理装置の閉塞検知方法。
【請求項2】
前記水熱管及び/又は冷却管は、当該管の周囲の液体との熱交換により加熱又は冷却されることを特徴とする請求項1記載の水熱処理装置の閉塞検知方法。
【請求項3】
前記管の伝熱性は、当該管が吸収又は放出した熱量を、前記液体の温度と当該管の温度との差で割った伝熱係数で測られるとすることを特徴とする請求項2に記載の水熱処理装置の閉塞検知方法。
【請求項4】
前記液体の温度は、前記液体と前記管とが熱交換する区間の上流における温度と下流における温度とを平均した値であって、前記管の温度は、前記区間の上流における温度と下流における温度とを平均した値であるとすることを特徴とする請求項3記載の水熱処理装置の閉塞検知方法。
【請求項5】
水熱管を通過させることにより有機性廃棄物を水熱処理し、冷却管を通過させることにより水熱処理液を冷却する水熱処理装置であって、
前記水熱管の加熱及び/又は前記冷却管の冷却における伝熱性の変化によって当該管内面の付着物堆積の進行状況を検知する検知手段を備えることを特徴とする水熱処理装置。
【請求項6】
前記水熱管及び/又は冷却管は、当該管の周囲の液体との熱交換により加熱又は冷却されることを特徴とする請求項5記載の水熱処理装置。
【請求項7】
前記検知手段は、前記液体と前記管とが熱交換する区間の上流及び下流における前記液体及び前記管の温度を検知するセンサを備えることを特徴とする請求項6記載の水熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−2875(P2008−2875A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171195(P2006−171195)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】