説明

水田作業機の指標形成マーカ操作構造

【課題】 次の作業行程における走行基準となる指標を田面に形成する左右一対の指標形成マーカをそれぞれ出退操作可能に備えるとともに、各指標形成マーカの突出作動指令を出すマーカ選択手段を備えた水田作業機のマーカ操作構造において、マーカ選択操作を誤っても速やかに修正操作を行って作業に移行することができるようにする。
【解決手段】 前回のマーカ突出作動方向を記憶する記憶手段と、記憶されている前回のマーカ突出作動方向と今回の突出作動指令によるマーカ突出作動方向との相違を判断する判断手段と、記憶されている前回のマーカ突出作動方向と今回の突出作動指令によるマーカ突出作動方向とが同一であることが判断されると作動する報知手段とを備えてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機や水田直播機などの水田作業機に利用する指標形成マーカ操作構造に係り、特には、次の作業行程における走行基準となる指標を田面に形成する左右一対の指標形成マーカをそれぞれ出退操作可能に備えるとともに、各指標形成マーカの突出作動指令を出すマーカ選択手段を備えた水田作業機の指標形成マーカ操作構造に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な水田作業機である田植機に装備された左右の指標形成マーカは、苗植付け装置(水田作業装置)が上限まで上昇されると自動的に格納姿勢まで引き上げられてロックされ、次に苗植付け装置が下降される際にロック解除された指標形成マーカだけが作用姿勢に突出作動するよう構成されるとともに、マーカ選択スイッチの選択操作によって上記格納ロックが左右各別に解除されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−70618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
田植機の基本的な植付け形態である往復植えにおいては、畦際での機体方向転換の際に指標形成マーカの突出作動方向を左右に順次切換えることになるが、機体後部の苗植付け装置に指標形成マーカが装備されている機種では、前向き姿勢の運転作業者には指標形成マーカが見えないので、マーカ選択スイッチを誤って操作したことに気付かずに植付け走行を行ってしまうおそれがある。例えば、前回の植付け行程で機体左側が未植付け地である場合には左側の指標形成マーカを突出作動させておき、機体方向転換を行った後の植付け行程では次の未植付け地である機体右側に指標形成マーカを突出作動させさせることになるが、マーカ選択スイッチの操作を誤って既植え地となる左側の指標形成マーカを選択操作してしまうことがある。
【0004】
このようにマーカ選択操作の誤りに気付かず植付け走行を行ってしまうと、植付け走行のやり直しがきかないために次行程では田面に指標が形成されない状態で植付け走行を行わねばならないことになり、先の植付け条と平行に走行することが難しくなり、植付け条の平行が崩れた仕上がりの悪い植付けになりがちとなる。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、マーカ選択操作を誤っても速やかに修正操作を行って作業走行に移行することができるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、次の作業行程における走行基準となる指標を田面に形成する左右一対の指標形成マーカをそれぞれ出退操作可能に備えるとともに、各指標形成マーカの突出作動指令を出すマーカ選択手段を備えた水田作業機の指標形成マーカ操作構造において、
前回のマーカ突出作動方向を記憶する記憶手段と、記憶されている前回のマーカ突出作動方向と今回の突出作動指令によるマーカ突出作動方向との相違を判断する判断手段と、記憶されている前回のマーカ突出作動方向と今回の突出作動指令によるマーカ突出作動方向とが同一であることが判断されると作動する報知手段とを備えてあることを特徴とする
【0007】
上記構成によると、例えば田植機において、前回の植付け行程で機体左側が未植付け地である場合には左側の指標形成マーカを突出作動させておき、機体方向転換を行った後の植付け行程では次の未植付け地である機体右側に指標形成マーカを突出作動させさせることになるが、マーカ選択スイッチの操作を誤って既植え地となる左側の指標形成マーカを選択操作してしまうと、記憶されている前回のマーカ突出作動方向と今回の突出作動指令によるマーカ突出作動方向とが同じ左側であることが判断されて左側への突出作動が牽制阻止されるとともに、ブザーやランプなどの報知によってマーカ選択操作が誤っていることが運転作業者に知らされる。
【0008】
そして、マーカ選択操作が誤っていることを認識して右側の指標形成マーカを選択操作することで適切なマーカ突出作動が行われることになる。
【0009】
従って、第1の発明によると、誤ったマーカ選択操作がなされたとしても、従来のように再度、水田作業装置を上昇させて左右の指標形成マーカを格納ロックしてマーカ選択操作をやり直すような煩わしい操作は必要なく、速やかに修正操作を行って作業に移行することができるようになった。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、
記憶されている前回のマーカ突出作動方向と今回の突出作動指令によるマーカ突出作動方向とが同一であることが判断されると今回の突出作動指令に基づくマーカ突出作動を阻止する突出作動牽制手段を備えてある。
【0011】
上記構成によると、マーカ選択操作を誤ると、そのことが報知されるとともに、今回の誤った突出作動指令に基づく既植地側へのマーカ突出作動が阻止されることになり、修正操作を行えば正しい方向の指標形成マーカだけを使って適正な作業走行に移行することができる。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、
前記報知手段が作動している状態において、記憶されている前回のマーカ突出作動方向と同じマーカ突出作動方向の突出作動指令が再度行われると今回の突出作動指令が実行されるように構成してある。
【0013】
上記構成によると、報知がなされていることを認識した上で、前回のマーカ突出作動方向と同じマーカ突出作動方向の突出作動指令を再度行い、かつ、前回のマーカ突出作動方向と逆の突出作動指令うことで、左右の指標形成マーカを共に突出させての走行が許容されることになる。従って、大きい水田での作業開始前において機体の左右両側の田面に指標をそれぞれ形成しながらの区画形成用の走行を行うことが容易に行える。
【0014】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一つの発明において、
前記報知手段が作動している状態においてマーカ選択手段を操作すると報知手段の作動が停止されるよう構成してあるものである。
【0015】
上記構成によると、誤ったマーカ選択操作を行った後、次にマーカ選択操作を行うことで報知作動は自動的に停止されることになり、報知作動を停止するための特別な操作は不要となる。
【0016】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか一つの発明において、
走行機体の方向転換作動が検知された後のマーカ選択操作に基づいて前記マーカ作動方向判断手段による判別が実行されるよう構成してあるものである。
【0017】
上記構成によると、作業走行中に誤ってマーカ選択操作具に接触する等して、マーカ選択操作が行われたとしてもマーカ作動方向判断手段による判別は行われず、不要なマーカ切換えが未然に回避される。
【0018】
第6の発明は、上記第5の発明において、
走行機体の方向転換作動の検知が、連結した水田作業装置の非作業高さへの上昇検知に基づいて行われるものである。
【0019】
一般に、畦際での機体方向転換時には水田作業装置を田面上で引きずらないよう、あるいは、畦にぶつけないように非作業高さまで大きく上昇するので、この発明の上記構成によって、機体方向転換を容易に判断することができる。
【0020】
第7の発明は、上記第5の発明において、
走行機体の方向転換作動の検知が、走行機体の所定量以上の大きい操向検知に基づいて行われるものである。
【0021】
機体を畦際で方向転換する場合には、作業走行中の方向修正のための操向に比べて大きい操向がなされるので、この発明の上記構成によって、畦際での機体方向転換を的確に検知することができる。
【0022】
第8の発明は、上記第1〜7のいずれか一つの発明において、
前記記憶手段、判断手段、突出作動牽制手段、報知手段の作動をリセットする人為リセット手段を備えてあるものである。
【0023】
上記構成によると、マーカ切換えのための各種の作動が実行されても、簡単にリセットして新規な状態で作業を再開することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1に水田作業機の一例としての施肥装置付きの乗用田植機の全体側面が、また、図2にその全体平面がそれぞれ示されている。この乗用田植機は、操向可能な前輪1および操向不能な後輪2を備えて4輪駆動で走行する走行機体3の後部に、6条植え仕様の苗植付け装置(水田作業装置)4が、油圧シリンダ5によって駆動される平行四連リンク構造の昇降リンク機構6を介して昇降可能に連結されるとともに、走行機体3の後部に施肥装置7が備えられた基本構造を有している。
【0025】
前記走行機体3の前部にはエンジン8が搭載され、その出力が前後進の切り換えが可能な主変速装置である静油圧式無段変速装置(HST)9に伝達され、その変速出力が後部のミッションケース10に入力されてギヤ変速された後、前輪1と後輪2に伝達されるようになっており、静油圧式無段変速装置9を操作する主変速レバー11が、搭乗運転部におけるステアリングハンドル12の左脇に前後揺動可能に配備されるとともに、ミッションケース10内のギヤ変速操作を行う副変速レバー13が、搭乗運転部における運転座席14の左脇に配備されている。なお、搭乗運転部の右前足元には、踏み込みによって主変速レバー11を強的に中立に戻すとともに、走行系に備えたブレーキ(図示せず)を制動操作する停止用ペダル15が配備されている。また、走行機体3の前部左右には予備苗を3枚づつ収容する予備苗のせ台16が立設配備されている。
【0026】
前記苗植付け装置4には、マット状苗を載置して一定ストロークで往復横移動する苗のせ台17と、この苗のせ台17の下端から一株分づつ苗を切り出して植付ける6組の回転式の植付け機構18と、圃場の植付け予定箇所を均平にする3個の整地フロート19が装備されており、前記植付け機構18は、並列配備された3個の植付けケース20の後部左右に2組づつ装着されている。
【0027】
また、苗植付け装置4には、機体前進走行に伴って未植付け田面に次行程の走行基準となる指標を形成する左右一対の指標形成マーカ21が備えられている。この指標形成マーカ21は、図3に示すように、支点a周り起伏揺動可能なマーカアーム21aの先端部に遊転自在な指標形成ホイール21bを装備して構成されたものであり、横外側方に突出して指標形成ホイール21bを接地させる作用姿勢と、起立退入した格納姿勢とに切換え可能に支持されている。また、この指標形成マーカ21はバネ22によって作用姿勢に突出付勢されるとともに、操作ワイヤ23介して前記昇降リンク機構6に連動連結されており、昇降リンク機構6が上昇作動するとこれに連動して操作ワイヤ23が引き操作され、左右の指標形成マーカ21が共に引き上げ操作されるようになっている。
【0028】
また、各指標形成マーカ21の基部には、指標形成マーカ21を係止部材25によって格納姿勢に係止保持する格納ロック機構24が設けられており、苗植付け装置4が上限高さまで上昇されると両指標形成マーカ21がそれぞれ格納ロック機構24によって格納姿勢に保持されるようになっている。
【0029】
前記施肥装置7は、運転座席14と苗植付け装置4との間において走行機体3上に搭載されており、粉粒状の肥料を貯留する肥料ホッパー31、この肥料ホッパー31内の肥料を所定量づつ繰り出す繰出し機構32、繰り出された肥料を供給ホース33を介して苗植付装置4の整地フロート19に備えた作溝器34に空気搬送する電動ブロワ35、などを備えている。
【0030】
また、各植付けケース20の後部には、左右に装着された植付け機構18への動力伝達を断続する畦際クラッチ26が備えられるとともに、苗のせ台17の各条ごとに備えられた苗送りベルト27の苗送り作動を2条単位で停止する3つの苗送りクラッチ28が設けられている。また、施肥装置7における繰出し機構22の駆動系には繰り出し作動を2条単位で休止する繰出しクラッチ(図示せず)が備えられるとともに、運転座席14の後方箇所に、前記畦越えクラッチ26、苗送りクラッチ28、および、繰出しクラッチに2条単位で機械連係された3本の畦越クラッチレバー29が配備されており、この畦越クラッチレバー29を運転部から選択操作することで全条植えと一部の植付けを休止した少数条植えの切換えを任意に行えるよう構成されている。
【0031】
前記苗植付け装置4は、人為的に昇降できる他に自動的に昇降制御可能となっている。つまり、図4の制御ブロック図に示すように、運転座席14の右脇に配備された植付けレバー36の操作位置がポテンショメータ37で検出されるとともに、中央の整地フロート19を利用したセンサフロートSFの上下揺動変位がポテンショメータ38で検出され、これらポテンショメータ37,38と油圧シリンダ5の作動を司る電磁式の制御弁39が制御装置40に接続されている。
【0032】
また、前記ミッションケース10内には苗植付け装置4への動力を断続する植付けクラッチ41が備えられるとともに、この植付けクラッチ41を入り切り操作する電動モータ42が前記制御装置40に接続されている。また、ステアリングハンドル12の右側には、中立復帰付勢された十字操作式の優先昇降用レバー43が上下および前後に揺動操作可能に装備されており、その上下への操作を検出するスイッチSu,Sdおよび前後への操作を検出するスイッチSl,Srが前記制御装置40に接続されている。
【0033】
前記植付けレバー36は「上昇」、「中立」、「下降」、「植付」、および、「自動」の各操作位置を選択可能であり、各操作位置で次のような作動が行われる。
【0034】
「上昇」
制御弁39が上昇位置に切換えられ、油圧シリンダ5が短縮駆動されて、苗植付け装置4は上昇する。なお、苗植付け装置4が上限高さまで上昇されるとこれが上限スイッチS0で検知されて制御弁39が中立に切換えられ上昇が自動的に停止する
【0035】
「中立」
制御弁39が中立に切換えられ昇降が停止する。
【0036】
「下降」
苗植付け装置4がセンサフロートSFの上下変位に基づいて自動昇降される昇降制御モードであり、苗植付け装置4が田面より浮上している状態から「下降」位置に切り換えると、先ず、センサフロートSFのぶら下がりがポテンショメータ38で検知されて制御弁39が下降に切換えられ、苗植付け装置4が下降する。そして、苗植付け装置4が圃場面に到達してセンサフロートSFが所定の接地圧になると、制御弁39が中立に切換えられ下降が停止する。以後、センサフロートSFが接地圧の増大に基づいて上方変位すると上昇制御がなされるとともに、接地圧の減少に基づいて下方変位すると下降制御がなされ、所定の接地圧が維持されるように昇降制御が行われる。ただし、この「下降」位置では、植付けクラッチ41は切り状態に維持され、苗植付け装置4の自動昇降だけが行われる。
【0037】
「植付」
上記「下降」位置と同様に苗植付け装置4の自動昇降が行われるとともに、電動モータ42を介しての植付けクラッチ41の入り操作が行われるものであり、植付け走行を行う時に選択利用される。
【0038】
「自動」
上記「植付」位置と同様のセンサフロートSFに基づく苗植付け装置4の自動昇降制御の機能をもたらすとともに、優先昇降用レバー43による任意の昇降制御(優先昇降制御)と、主変速レバー11の後進位置への切り換え検知に基づく苗植付け装置4の自動上昇制御(バックアップ制御)とが以下のように実行される。
【0039】
「優先昇降制御」
植付け装置4が所定の接地圧を維持するよう昇降制御される状態で植付け走行を行って畦際に到達すると、優先昇降用レバー43を上げ位置「U」にワンショット操作することで、苗植付け装置4は上限まで上昇制御されるとともに植付けクラッチ41が切り制御される。畦際での機体方向転換を終えると、優先昇降用レバー43を下げ位置「D」に1回ワンショット操作することで元の自動昇降制御モードに復帰して、苗植付け装置4は接地するまで下降制御される。但し、この下降においては植付けクラッチ41は切り状態に維持される。また、苗植付け装置4を下降作動させた後、優先昇降用レバー43を下げ位置「D」に再度ワンショット操作することで、植付けクラッチ41が入り制御されて植付けを再開することができる。
【0040】
「バックアップ制御」
畦際などで苗植付け装置4が下降している状態のまま、主変速レバー11を後進に切り換えると、これが後進検出スイッチSbで検出されて苗植付け装置4は上限まで自動的に上昇する。このとき、植付けクラッチ41が入っておれば上昇作動とともに切り制御され、後進によって苗植付け装置4の後部が畦などにぶつかることが未然に回避される。
【0041】
次に、前記指標形成マーカ21の作動について説明する。
【0042】
前記指標形成マーカ21を格納姿勢に係止保持する左右の前記格納ロック機構24の係止部材25はそれぞれ電磁ソレノイド45の通電作動によって係止解除操作されるようになっており、これら電磁ソレノイド45が前記優先昇降レバー43によって操作される前記スイッチSl,Srで以下のように作動制御される。
【0043】
つまり、優先昇降用レバー43が前方の左マーカ選択位置「L」にワンショット操作されてスイッチSlが操作されると、左側の格納ロック機構24における電磁ソレノイド45が通電作動して左側の指標形成マーカ21の格納ロックが解除され、また、優先昇降用レバー43が後方の右マーカ選択位置「R」にワンショット操作されてスイッチSrが操作されると、右側の格納ロック機構24における電磁ソレノイド45が通電作動して右側の指標形成マーカ21の格納ロックが解除されるようになっている。また、優先昇降用レバー43を前方あるいは後方にワンショット操作してマーカ選択操作を行うことによっても植付けクラッチ41が入り制御されるようになっている。
【0044】
上記のように優先昇降用レバー43を用いてマーカ選択操作を行う場合、誤った操作をするおそれがあるが、この誤操作に対応した制御を行うようになっており、そのマーカ作動制御を、図4のブロック図、および、図5のフロー図に基づいて以下に説明する。
【0045】
優先昇降用レバー43の誤操作に対する制御は、3本の畦際クラッチレバー29の全てがクラッチ入り位置に操作されていることが畦際クラッチ検出スイッチSaで検知された状態、つまり、全条植えにおいてのみ実行される(♯01)。
【0046】
全条植えでの一行程の植付け走行においては、未植付け側の指標形成マーカ21だけを突出作動させておき、一行程の植付け走行を終えて畦際に至ると、優先昇降用レバー43を上げ位置「U」にワンショット操作して苗植付け装置4を上限まで上昇させて機体方向転換を行う。この上昇作動によって突出していた一方の指標形成マーカ21は引き上げられ、左右の指標形成マーカ21はそれぞれ格納位置に係止ロックされる。この場合、小回り旋回を行うために前輪1が直進位置から左方あるいは右方に所定の角度(数十°)以上に大きく操向されると、これがポテンショメータを利用した角度検出センサ46で検知されて機体方向転換がなされたと判断され、優先昇降用レバー43を上げ位置「U」に操作した時点において左右いずれの指標形成マーカ21が突出作動していたかが各指標形成マーカ21に基部に備えられた突出検知スイッチStからの情報に基づいて記憶される(♯02,♯03)。
【0047】
機体方向転換の後、優先昇降用レバー43を下げ位置「D」にワンショット操作して苗植付け装置4を田面に設置するまで下降させるとともに、前の行程で植えた苗条に対して条合わせ(左右方向での位置合わせ)を行う。この場合、上記したように、植付けクラッチ41は未だ切り状態のままである。
【0048】
条合わせが済むと、前の行程で植えた苗条の終端株の位置を目視確認した上で優先昇降用レバー43を前方位置「L」あるいは後方位置「R」にワンショット操作して今回の植付け行程の未植付け側となる指標形成マーカ21の突出作動指令を出す。この指令の基づいて所定の側の格納ロック機構24がロック解除され、指標形成マーカ21が未植付け地に突出作動するとともに、植付けクラッチ41が入り制御されて今回の植付け走行が開始される(♯04〜♯06)。
【0049】
ここで、今回のマーカ選択操作に対して以下のような判断処理が行われる。
【0050】
つまり、機体方向転換の後、優先昇降用レバー43の操作を誤って前回突出作動していた側の指標形成マーカ21を選択操作してしまうと、機体方向転換時に記憶されている前回のマーカ突出作動方向と今回の突出作動指令によるマーカ突出作動方向とが同じであると判断され、この判断に基づいて今回の指令による誤った突出作動が牽制阻止されるとともに、運転部に配備された報知手段の一例であるブザー48が作動され、マーカ選択操作が誤っていることが運転作業者に知らされる(♯05,♯07)。
【0051】
そして、運転作業者がマーカ選択操作が誤っていることを認識して正しい方向のマーカ選択操作を行うと、ブザー48の作動が停止されるとともに、正しい方向のマーカ突出作動が行われることになる(♯08〜♯10,♯06)。
【0052】
また、誤操作の報知がなされていることを認識した上で、前回のマーカ突出作動方向と同じマーカ突出作動方向と逆方向の突出作動指令を再度行うと、前回と同じ方向への突出作動がなされる(♯10,♯11)。
【0053】
その後、前回のマーカ突出作動方向と逆の突出作動指令(正しい方向への突出作動指令)を行うことで、左右の指標形成マーカ21を共に突出させることが可能となる(♯10〜♯13,♯06)。従って、大きい水田での作業開始前において機体の左右両側の田面に指標をそれぞれ形成しながらの区画形成用の走行を行うことが行える。
【0054】
また、制御装置40には人為リセット手段の一例であるリセットスイッチScが接続されており、これを操作することで、それまでの作動および設定はすべて解除され、最初からやり直すことになる。
【0055】
〔他の実施例〕
【0056】
(1)苗植付け装置4が非作業高さである上限まで上昇されたことを上限スイッチS0で検知して畦際での機体方向転換と判断することもできる。また、苗植付け装置4が非作業高さである上限まで上昇され、かつ、前輪1の操向角度が設定以上に大きくなったことが検知されたことで畦際での機体方向転換と判断するようにしてもよい。
【0057】
(2)走行機体3に連結する水田作業装置としては苗植付け装置4の他に水田直播装置を利用したものであってもよい。
【0058】
(3)報知手段としては、上記のようにブザー48を利用する他に警報ランプを利用することもでき、また、ブザー48の鳴動と警報ランプの点滅を同時に行うようにすると、マーカ選択誤操作を一層的確に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】乗用田植機の側面図
【図2】乗用田植機の平面図
【図3】指標形成マーカの出退構造を示す正面図
【図4】制御ブロック図
【図5】マーカ作動制御のフロー図
【符号の説明】
【0060】
3 走行機体
4 水田作業装置
21 指標形成マーカ
48 報知手段
Sc 人為リセット手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の作業行程における走行基準となる指標を田面に形成する左右一対の指標形成マーカをそれぞれ出退操作可能に備えるとともに、各指標形成マーカの突出作動指令を出すマーカ選択手段を備えた水田作業機の指標形成マーカ操作構造において、
前回のマーカ突出作動方向を記憶する記憶手段と、記憶されている前回のマーカ突出作動方向と今回の突出作動指令によるマーカ突出作動方向との相違を判断する判断手段と、記憶されている前回のマーカ突出作動方向と今回の突出作動指令によるマーカ突出作動方向とが同一であることが判断されると作動する報知手段とを備えてあることを特徴とする水田作業機の指標形成マーカ操作構造。
【請求項2】
記憶されている前回のマーカ突出作動方向と今回の突出作動指令によるマーカ突出作動方向とが同一であることが判断されると今回の突出作動指令に基づくマーカ突出作動を阻止する突出作動牽制手段を備えてある請求項1記載の水田作業機の指標形成マーカ操作構造。
【請求項3】
前記報知手段が作動している状態において、記憶されている前回のマーカ突出作動方向と同じマーカ突出作動方向の突出作動指令が再度行われると今回の突出作動指令が実行されるように構成してある請求項2記載の水田作業機の指標形成マーカ操作構造。
【請求項4】
前記報知手段が作動している状態においてマーカ選択手段を操作すると報知手段の作動が停止されるよう構成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の水田作業機の指標形成マーカ操作構造。
【請求項5】
走行機体の方向転換作動が検知された後のマーカ選択操作に基づいて前記マーカ作動方向判断手段による判別が実行されるよう構成してある請求項1〜4のいずれか一項に記載の水田作業機の指標形成マーカ操作構造。
【請求項6】
走行機体の方向転換作動の検知が、連結した水田作業装置の非作業高さへの上昇検知に基づいて行われるものである請求項5記載の水田作業機の指標形成マーカ操作構造。
【請求項7】
走行機体の方向転換作動の検知が、走行機体の所定量以上の大きい操向検知に基づいて行われるものである請求項5記載の水田作業機の指標形成マーカ操作構造。
【請求項8】
前記記憶手段、判断手段、突出作動牽制手段、報知手段の作動をリセットする人為リセット手段を備えてある請求項1〜7のいずれか一項に記載の水田作業機の指標形成マーカ操作構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−271271(P2006−271271A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95929(P2005−95929)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】