説明

水系エポキシ樹脂組成物及び塗床

【解決手段】主剤が無溶剤エポキシ樹脂であり、硬化剤が自己乳化型アミンと非自己乳化エマルジョン型アミンからなることを特徴とする水系エポキシ樹脂組成物とすること、また無溶剤であり、成膜助剤を含まない水系エポキシ樹脂組成物とすることである。
【効果】、低温での成膜性が良く、硬度が高く、耐摩耗性が高く、顔料の色別れがない塗材となる。また、成膜助剤、溶剤を含まないことから作業環境が改善でき、環境負荷が少ない、また住環境のシックハウスを防げる効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、塗床塗材の分野において、仕上がりが良く、塗膜物性に優れる水系エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来水系エポキシ樹脂塗材は成膜助剤或いは溶剤を含むものが多く、自己乳化タイプの硬化剤を用いたものは塗膜物性が劣るものであった。
【0003】
塗り床用下塗塗料組成物において、(A)ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、(B)無溶剤型ポリアミンおよび/または無溶剤型ポリアミドアミン、(C)溶解性パラメーター10以上で、沸点130℃以下のアルコール系溶剤、を主成分とし、旧塗膜を溶解、膨潤軟化させることなしに簡便かつ円滑に塗装補修することができる塗り床用下塗塗料組成物とそれを用いる塗り床材の補修施工方法が開示されている。(特許文献1)
【0004】
【特許文献1】特開平5−302059号公報
【特許文献2】特開平10−130372号公報
【特許文献3】特開平6−179801号公報
【特許文献4】特開平6−212059号公報
【特許文献5】特開平6−228272号公報
【特許文献6】特開平9−176292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、溶剤、成膜助剤を含まず、塗膜物性、発色性の良い水系塗材エポキシ樹脂組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、主剤が無溶剤エポキシ樹脂であり、硬化剤が自己乳化型アミンと非自己乳化エマルジョン型アミンからなることを特徴とする水系エポキシ樹脂組成物で低温でも成膜性が良く、塗膜物性が良い。
【0007】
請求項2の発明は、上記水系エポキシ樹脂組成物が無溶剤であり、成膜助剤を含まないことを特徴とする請求項1に記載の水系塗材エポキシ樹脂組成物で、作業環境がよく、環境負荷が少ない。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1乃至2のいずれか記載の水系エポキシ樹脂組成物を塗工してなる塗床で、環境負荷が少なく、作業性がよく、仕上がりが良く、塗膜物性も良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水系エポキシ樹脂組成物とすることで、低温での成膜性が良く、硬度が高く、耐摩耗性が高く、顔料の色別れがない塗材となる。また、成膜助剤、溶剤を含まないことから作業環境が改善でき、環境負荷が少ない、また住環境のシックハウスを防げる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の組成物は主剤として無溶剤エポキシ樹脂、硬化剤としては自己乳化型アミン、非自己乳化エマルジョン型アミンからなること特徴とするもので、アミンの改質過程に由来する性質から、前者アミンは親水性が後者アミンより高く、後者常温以上のガラス転移温度と限度ある親水性を特徴とするものであり、両者の特徴が各課題解消に寄与したものと考えられる。成膜助剤不要は前者アミン、塗膜硬度は後者、色別れのない発色は両者の改質過程によるものと考えられる。
【0011】
非自己乳化エマルジョン型アミンは特許文献2等に示される親水性基、疎水性基を導入されたエマルジョン型アミンで、具体的には富士化成工業(株)フジキュアーFXS−918−FA(商品名)等があげられる。
【0012】
自己乳化型アミンは、特許文献3〜6等で示されるポリエーテル等の親水性主鎖をエポキシ樹脂に導入し、過剰のアミンを反応させた自己乳化型アミンで、具体的には旭電化工業(株)製アデカハードナーEH4227(商品名)等があげられる。
【0013】
主剤のエポキシ樹脂は主剤として粘度1000〜12000mPa・sの液状であれば良く、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、脂環型、グリシジルアミン型、水添ビスフェノールA型などのエポキシ樹脂、また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなどのグリシジルエーテルである反応性希釈剤を前記エポキシ樹脂と混合して用いることもできる。また、着色を目的とする場合、トナー中のメジュームとして、反応性希釈剤を用いても良い。この他、充填剤としてシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、タルク、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化チタン等があり単独もしくは2種以上併用して用いることができる。また塗膜密着性向上、平滑性等の向上、液の脱泡、性状安定に添加剤を加えることもできる。
【0014】
硬化剤は前記2種のアミンの他、硬化速度を調整するために三級アミン等の液状硬化剤、促進剤として、アルキルフェノール類を添加することもできる。
【0015】
本組成物は主剤、硬化剤混合後、そのまま或いは水で希釈して使用することができ、塗床材として好適である。
【0016】
実施例・比較例を示し、詳細に説明する。結果を表1に記した。
【実施例1】
【0017】
主剤として、jER828(ジャパンエポキシレジン(株)、商品名、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂)300重量部に希釈剤としてカージュラE(ヘキシオン・スペシャルティ・ケミカルズ社、商品名、ネオデカン酸グリシジルエステル)を15重量部、BM−200(堺化学工業、沈降性硫酸バリウム)100重量部を配合し、混合撹拌し、硬化剤として自己乳化型アミンであるアデカEH−4227(旭電化工業、商品名)400重量部、非自己乳化型アミンであるフジキュアFXS−918−FA(富士化成工業(株)、樹脂分60%)200重量部、水550重量部を混合撹拌し、それぞれ1:1で混合撹拌し、実施例1の水系塗材エポキシ樹脂組成物とした。
【0018】
比較例1
実施例1の硬化剤についてフジキュアFXS−918−FAをアデカEH−4227に置き換え、その他は同じく行い比較例1の水系塗材エポキシ樹脂組成物とした。
【0019】
比較例2
実施例1の硬化剤についてアデカEH−4227をフジキュアFXS−918−FAに置き換え、その他は同じく行い比較例2の水系塗材エポキシ樹脂組成物とした。
【0020】
【表1】

【0021】
鉛筆硬度:JISK5600−5−4に準拠して評価した。
【0022】
摩耗性:実施例・比較例の塗材組成物に30重量%の水を加え、撹拌したものを使用し、JISA5430に規定されるフレキシブルボードに150g/mで2回塗りし、7日間静置したものを試験体とし、JISK7204に準拠してCS−17 1kg荷重1000回転の摩耗質量を求めた。
【0023】
乾燥性:23℃、10℃湿度50%の環境下、実施例・比較例の塗材組成物に30重量%の水を加え、10分撹拌し、ガラス板に150g/m塗り、30分ごとに表面状態を確認し、塗膜を指で触り、引っ掛かりがなくなる時間を測定した。
【0024】
成膜性:上記乾燥性評価時に均一な膜が得られたものを〇、不均一或いはクラック等の欠点が生じたものを×とした。
【0025】
水との希釈性:23℃において実施例・比較例の塗材組成物に30重量%の水を加え、10分撹拌し、1時間静置後水と樹脂が分離していないものを〇とし、分離したものを×とした。
【0026】
色差・外観: 実施例・比較例の主剤配合にカーボンブラックと酸化チタンを原料とするトナー(混合直後塗布硬化LabがL=41.78、a=0.16、b=−2.17)を混合したものとし、主剤、硬化剤を混合し、水を主剤・硬化剤の合計に対して30重量%し、JISA5430に規定されるフレキシブルボードに主剤で吸い込みを無くした状態で、前記混合物を150g/m塗り、撹拌直後に塗布したものと30分静置後塗布したものとの色差ΔEを測定した。なお、測定はミノルタ(株)製色彩色差計 CR-410で、JISK5600-4-5に準拠し、色差の計算はJISK5600-4-6に従い計算した。また、直後と30分静置後の試験体を並べ、塗り継外観の評価とし、差が判らないものを〇、判るものを×とした

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤が無溶剤エポキシ樹脂であり、硬化剤が自己乳化型アミンと非自己乳化エマルジョン型アミンからなることを特徴とする水系エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
上記水系塗材エポキシ樹脂組成物が無溶剤であり、成膜助剤を含まないことを特徴とする請求項1に記載の水系エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれか記載の水系エポキシ樹脂組成物を塗工してなる塗床。

【公開番号】特開2009−73879(P2009−73879A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242051(P2007−242051)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】