説明

水系ホース用ゴム組成物およびそれを用いて得られる水系ホース

【課題】単位重量あたりの化石燃料由来の材料の目付量の低減を図り、低コスト、薄肉、軽量で、偏肉(シワコブ)の発生がない水系ホースを得ることができる、水系ホース用ゴム組成物の提供。
【解決手段】下記の(A)成分とともに(B)および(C)成分を含有し、上記(B)成分の、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1.0g/10分であって、密度が0.870〜0.908g/cm3であり、上記(C)成分のpHが5.5以上、平均粒子径が3.5μm以上である水系ホース用ゴム組成物。(A)エチレン−プロピレン系ゴム。(B)エチレン−オクテン樹脂。(C)クレー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両において、エンジンとラジエータとの接続に用いられるラジエータホース等の水系ホースに使用される水系ホース用ゴム組成物、およびそれを用いて得られる水系ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンとラジエータやヒーターコアとの接続に用いられる、車両用の水系ホースには、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)等の合成ゴムを主成分とし、これにカーボンブラックやオイル等を配合したゴム組成物が使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記EPDM等の合成ゴムや、カーボンブラック、オイル等の材料は、化石燃料由来の材料であるため、化石燃料枯渇の観点から、資源量節約を図る必要がある。
【0004】
そこで、単位容積あたりの化石燃料由来の材料の目付量の低減を図るため、天然鉱物の併用が検討されている。また、ホースに用いられる材料の目付け量の低減を図るため、ホースの薄肉化、例えば、ホースの厚みを従来の5mmから、3.5mmに薄肉化する手法も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−293053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単位重量あたりの化石燃料由来の材料の目付量の低減を図るため、カーボンブラック等の化石燃料由来の材料に代えて、天然鉱物を使用すると、未加硫時の加工性(成形性)悪化や、ホース強度が不足するという問題が生じる。
【0007】
また、従来の厚肉(厚み5mm程度)のホースを、薄肉(厚み3.5mm程度)化しようとすると、図1に示すように、ホース1の曲げ部1aの内側が圧縮されやすく、そのため、ホース1の曲げ部1aにおいて、偏肉(シワコブ)2が発生するという問題も生じる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、単位容積あたりの化石燃料由来の材料の目付量の低減を図りながら、かつホース構成材料の目付け量低減のため薄肉化を可能とし、偏肉(シワコブ)の発生がない水系ホースを得ることができる、水系ホース用ゴム組成物および水系ホースの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)成分とともに(B)および(C)成分を含有し、上記(B)成分の、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1.0g/10分であって、密度が0.870〜0.908g/cm3であり、上記(C)成分のpHが5.5以上、平均粒子径が3.5μm以上である水系ホース用ゴム組成物を第1の要旨とする。
(A)エチレン−プロピレン系ゴム。
(B)エチレン−オクテン樹脂。
(C)クレー。
【0010】
また、本発明は、未加硫ホースを曲がり管形状のマンドルに挿入した状態で加硫して得られる、曲がり形状を有する水系ホースであって、上記水系ホースが、上記水系ホース用ゴム組成物を用いて形成されている水系ホースを第2の要旨とする。
【0011】
すなわち、本発明者らは、単位容量あたりの化石燃料由来の材料の目付量の低減を図るため、天然鉱物のなかでも特にクレーに着目し、実験を重ねた。本発明者らは、クレーのなかでも、pHが5.5以上で、平均粒子径が3.5μm以上のものを使用すると、ホース強度が維持されること突き止めた。また、本発明者らは、薄肉化を目的として、有機充填材であるエチレン−オレフィン系樹脂の使用も検討したが、ホース薄肉化による偏肉(シワコブ)の発生を充分に抑制することができなかった。そこで、偏肉(シワコブ)の原因について検討を重ねたところ、未加硫ホースの強度が不足するため、マンドル挿入時に偏肉(シワコブ)が発生しやすくなるという知見を得た。そこで、この問題を解消するため、有機フィラーとして使用されるエチレン−オレフィン系樹脂のなかでも、特にエチレン−オクテン樹脂に着目し、メルトフローレート(MFR)および密度を中心に研究を重ねた。そして、分子量の指標となるメルトフローレート(MFR)が大きい程、分子量も大きくなり、未加硫ゴム強度が向上し、また分子鎖枝分かれの指標となる密度が大きい程、分子鎖の枝分かれが少ないため、エチレン−プロピレン系ゴムとの混ざり性が向上するという知見を得た。そこで、エチレン−オクテン樹脂の、最適なメルトフローレート(MFR)および密度について、実験を重ねた結果、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1.0g/10分であって、密度が0.870〜0.908g/cm3であるエチレン−オクテン樹脂を使用すると、所期の目的を達成できることを見いだし、本発明に到達した。この理由は明らかではないが、メルトフローレート(MFR)および密度が特定の範囲に設定されたエチレン−オクテン樹脂を使用すると、エチレン−オクテン樹脂の側鎖が、エチレン−プロピレン系ゴムと絡み合いやすくなり、その結果、未加硫強度が向上し、マンドル挿入時の偏肉(シワコブ)の発生を抑制することができる等の理由によるものと推察される。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の水系ホース用ゴム組成物は、有機フィラーとして使用されるエチレン−オレフィン系樹脂のなかでも、特に所定のメルトフローレート(MFR)および密度のエチレン−オクテン樹脂(B成分)を使用するため、偏肉(シワコブ)が発生することなく、薄肉で軽量のラジエータホース等の水系ホースを得ることができる。また、pHが5.5以上で、平均粒子径が3.5μm以上のクレーを使用するため、ホース強度も低下することが無い。このように、特定のクレーの使用により、化石燃料由来の材料(カーボンブラック等)の使用量を低減することができるため、製品単位当たりの資源量節約を図ることができる。
【0013】
また、上記クレー(C成分)が、ジエチレングリコール(DEG)等の多価アルコールで表面処理された表面処理クレーであると、クレーの表面に加硫系材料(加硫剤や加硫促進剤等)が吸着することによる、加硫系材料の損失を防ぐことができ、シール性や破断強度がさらに向上する。
【0014】
そして、上記クレー(C成分)の含有量が、上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して30〜150重量部であると、ホース強度を許容範囲に留めることができる。また、絶縁性の高いクレー(C成分)を高充填化することにより、体積固有抵抗率が上がり、耐電気化学安定性が向上するため、パイプの電触対策も可能となる。
【0015】
また、上記エチレン−オクテン樹脂(B成分)の含有量が、上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して5〜30重量部であると、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)との絡み合いによる未加硫強度がさらに向上し、またエチレン−プロピレン系ゴム(A成分)との混ざり性もさらに良好となる。
【0016】
本発明の水系ホースは、上記特殊な水系ホース用ゴム組成物を用いて形成されているため、未加硫ホースの強度が向上し、ホースの曲がり部に偏肉(シワコブ)がない、厚み3.5mm以下の均厚で軽量のホースを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】薄肉ホースにおける偏肉(シワコブ)の発生状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0019】
本発明の水系ホース用ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」という場合もある。)は、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)と、エチレン−オクテン樹脂(B成分)と、クレー(C成分)とを用いて得ることができる。
本発明においては、上記エチレン−オクテン樹脂(B成分)の、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1.0g/10分であって、密度が0.870〜0.908g/cm3であり、上記クレー(C成分)のpHが5.5以上、平均粒子径が3.5μm以上である。本発明においては、これらが最大の特徴である。
【0020】
つぎに、これらの成分について説明する。
【0021】
《エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)》
上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)としては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)等があげられ、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0022】
上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)としては、高温高圧化での安定性に優れる点で、ヨウ素価が6〜30の範囲、エチレン比率が48〜70重量%の範囲のものが好ましく、特に好ましくはヨウ素価が10〜24の範囲、エチレン比率が50〜60重量%の範囲のものである。
【0023】
上記EPDMに含まれるジエン系モノマー(第3成分)としては、炭素数5〜20のジエン系モノマーが好ましく、具体的には、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン(DCP)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン等があげられる。これらジエン系モノマー(第3成分)のなかでも、ジシクロペンタジエン(DCP)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が好ましい。
【0024】
《エチレン−オクテン樹脂(B成分)》
上記エチレン−オクテン樹脂(B成分)としては、エチレンと、オクテン−1とを共重合させたもの等があげられる。
【0025】
上記エチレン−オクテン樹脂(B成分)は、メルトフローレート(MFR)(190℃、2.16kg荷重)が1.0g/10分の範囲である。すなわち、B成分のMFRが小さすぎると、分子量が小さすぎて、未加硫強度が劣るため、マンドル挿入時に偏肉(シワコブ)が発生するからであり、逆にB成分のMFRが大きすぎると、分子量が大きすぎて、未加硫強度が高すぎるため、マンドル挿入性が悪化するからである。
【0026】
なお、本明細書において「メルトフローレート(MFR)」とあるのは、断りのない限り、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)を意味する。メルトフローレート(MFR)は、メルトインデックスと同義である。
【0027】
また、上記エチレン−オクテン樹脂(B成分)は、密度が0.870〜0.908g/cm3の範囲である。すなわち、B成分の密度が小さすぎると、分子鎖枝分かれが多いため、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)との相溶性が悪化し、逆にB成分の密度が高すぎると、分子鎖枝分かれが少なすぎるため、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)との絡み合い効果が小さく、未加硫強度が不足し、マンドル挿入時に偏肉(シワコブ)が発生するからである。
【0028】
上記エチレン−オクテン樹脂(B成分)の含有量は、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、5〜30重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは10〜20重量部の範囲である。すなわち、B成分が少なすぎると、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)との絡み合いによる未加硫強度の向上効果等が乏しく、逆にB成分が多すぎると、加工性が悪化する傾向がみられるからである。
【0029】
《クレー(C成分)》
上記クレー(C成分)は、pHが5.5以上であり、好ましくはpHが5.8以上、特に好ましくはpHが5.8〜8.2である。すなわち、クレー(C成分)のpHが5.5未満であると、圧縮永久歪性や、破断強度が劣るからである。また、上記クレー(C成分)は、平均粒子径が3.5μm以上であり、好ましくは3.8μm以上、特に好ましくは3.8〜8.7μmである。すなわち、クレー(C成分)の平均粒子径が小さすぎると、圧縮永久歪性や、破断強度が劣るからである。
【0030】
なお、上記クレー(C成分)のpHは、例えば、クレー2.5gをガラス共せん三角フラスコに入れ、水50mlを加えて加熱し、沸騰すれば直ちに室温まで冷却させ、これをガラス電極pH計で測定することより求めることができる。
【0031】
また、上記クレー(C成分)の平均粒子径は、例えば、粒度分布測定により算出することができる。本発明において、上記クレー(C成分)の平均粒子径(以下、単に「粒子径」と略す場合もある。)は、一次粒子径を意味する。
【0032】
本発明におけるクレー(C成分)としては、クレーの表面を、ジエチレングリコール(DEG)等の多価アルコールで表面処理した表面処理クレーを使用しても差し支えない。なお、本発明においては、表面処理していないクレーと、表面処理クレーとを併用することも可能である。
【0033】
上記表面処理クレーは、A練り時に、ジエチレングリコール(DEG)等の多価アルコールと、クレーとをバンバリーミキサーやニーダーで混練りすることにより作製することができる。
【0034】
上記クレー(C成分)の含有量は、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、30〜150重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは40〜100重量部の範囲である。すなわち、C成分が少なすぎると、単位重量あたりの化石燃料由来の材料の目付量の低減による低コスト化を図ることが困難となり、逆にC成分が多すぎると、未加硫時の加工性(成形性)が悪化し、ホース強度も低下する傾向がみられるからである。
【0035】
本発明のゴム組成物には、上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)、エチレン−オクテン樹脂(B成分)およびクレー(C成分)に加えて、カーボンブラック、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、プロセスオイル、共架橋剤、老化防止剤、増粘剤、炭酸カルシウム、タルクなど白色充填材等を、必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0036】
《カーボンブラック》
上記カーボンブラックとしては、押出加工性や補強性に優れたものが好ましく、例えば、SAF級、ISAF級、HAF級、MAF級、FEF級、GPF級、SRF級、FT級、MT級等のものがあげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0037】
上記カーボンブラックの含有量は、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、20〜150重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは60〜120重量部の範囲である。すなわち、カーボンブラックの含有量が少なすぎると、補強性の効果が乏しく、高硬さ化が困難となり、逆にカーボンブラックの含有量が多すぎると、体積固有抵抗率が低くなり、電気絶縁性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0038】
《加硫剤》
上記加硫剤としては、例えば、硫黄、過酸化物加硫剤(パーオキサイド加硫剤)等が、単独でもしくは併用される。このなかでも、貯蔵安定性、コストの点で、硫黄が好ましい。
【0039】
上記過酸化物加硫剤としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類や、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類や、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類や、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類や、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0040】
上記加硫剤の含有量は、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、0.5〜15.0重量部の範囲が好まし、特に好ましくは1.0〜10.0重量部の範囲である。
【0041】
《加硫促進剤》
上記加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系,スルフェンアミド系,チウラム系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドアミン系,グアニジン系,チオウレア系等の加硫促進剤があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、加硫反応性に優れる点で、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0042】
上記加硫促進剤の含有量は、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、0.1〜10.0重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜5.0重量部の範囲である。
【0043】
上記チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾール(M)、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、加硫反応性に優れる点で、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾール(M)が好ましい。
【0044】
上記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NOBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CM)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(BBS)、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0045】
上記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0046】
《加硫助剤》
上記加硫助剤としては、例えば、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化マグネシウム等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0047】
上記加硫助剤の含有量は、上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、1〜25重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは3〜10重量部の範囲である。
【0048】
《プロセスオイル》
上記プロセスオイルとしては、例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0049】
上記プロセスオイルの含有量は、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、5〜100重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは20〜80重量部の範囲である。
【0050】
《共架橋剤》
上記共架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好適に用いられ、これらとともに、トリアリルシアヌレート、ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、p−キノンジオキシム、p,p−ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0051】
上記共架橋剤の含有量は、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、0.1〜10.0重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜5.0重量部の範囲である。
【0052】
《老化防止剤》
上記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系,フェニレンジアミン系,フェノール系,ジフェニルアミン系,キノリン系等の老化防止剤や、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0053】
上記老化防止剤の含有量は、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、0.1〜10.0重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜5.0重量部の範囲である。
【0054】
本発明の水系ホース用ゴム組成物は、例えば、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)に、有機フィラーとしてエチレン−オクテン樹脂(B成分)およびクレー(C成分)を配合するとともに、必要に応じて、カーボンブラック、加硫剤、プロセスオイル、加硫促進剤等を配合し、これらをニーダー,バンバリーミキサー,ロール等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。
【0055】
本発明の水系ホースは、上記のようにして調製されたゴム組成物を用い、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、上記のようにして調製したゴムホース組成物を、押し出し成形して、未加硫ホースを作製する。なお、ストレート形状のマンドル上にゴム組成物を押し出し成形して、未加硫ホースを作製することも可能である。つぎに、所定の曲がり管形状のマンドルを準備し、挿入機や作業員の手指等により、このマンドル上に上記未加硫ホースを挿入し、所定の条件(140〜160℃×30〜60分)で加硫した後、マンドルを引き抜くことにより、所望の曲がり形状を有するラジエータホースを作製することができる。このようにして得られる、本発明の水系ホースは、内径が通常5〜50mmであって、厚みが3.5mm以下の均厚であり、ホースの曲がり部に偏肉(シワコブ)がないのが特徴である。
【0056】
本発明の水系ホースは、従来の厚肉(厚み5mm程度)ホースに比べて薄肉であることが特徴であり、厚みは0.5〜3.5mmの範囲が好ましく、特に好ましくは1.5〜3.5mmの範囲である。
【0057】
本発明の水系ホース用ゴム組成物は、例えば、ラジエータホース、ヒータホース、ドレーンホース等の水系ホースに使用することができる。ラジエータホース等の水系ホースは、通常、内層と外層とを備え、内層と外層との界面に必要に応じて補強糸層が形成された構成である。本発明の水系ホース用ゴム組成物は、水系ホースの内層および外層のいずれにも使用することができる。
【実施例】
【0058】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0060】
〔EPDM(A成分)〕
住友化学工業社製、エスプレン505
【0061】
〔EPM(A成分)〕
住友化学工業社製、エスプレン201
【0062】
〔エチレン−オクテン樹脂(B成分)〕
〈エチレン−オクテン樹脂(B1)〉
ダウ・ケミカル社製、エンゲージ8480〔メルトフローインデックス(MFR)1.0g/10分、密度0.902g/cm3
【0063】
〈エチレン−オクテン樹脂(B2)〉
ダウ・ケミカル社製、エンゲージ8110〔メルトフローインデックス(MFR)1.0g/10分、密度0.870g/cm3
【0064】
〈エチレン−オクテン樹脂(B3)〉
ダウ・ケミカル社製、エンゲージ8540〔メルトフローインデックス(MFR)1.0g/10分、密度0.908g/cm3
【0065】
〔エチレン−オクテン樹脂(比較例用)〕
〈エチレン−オクテン樹脂(B′1)〉
ダウ・ケミカル社製、エンゲージ8180〔メルトフローインデックス(MFR)0.5g/10分、密度0.863g/cm3
【0066】
〈エチレン−オクテン樹脂(B′2)〉
ダウ・ケミカル社製、エンゲージ8842〔メルトフローインデックス(MFR)1.0g/10分、密度0.857g/cm3
【0067】
〈エチレン−オクテン樹脂(B′3)〉
ダウ・ケミカル社製、エンゲージ8402〔メルトフローインデックス(MFR)30.0g/10分、密度0.902g/cm3
【0068】
〔クレー(C成分)〕
〈クレー(C1)〉
JIAOZOU TONGXING CHEMICAL社製、M212クレー(pH7.1、粒子径4.5μm)
【0069】
〈クレー(C2)〉
東洋化成株式会社製、CLAY TC−400(pH8.2、粒子径8.7μm)
【0070】
〈クレー(C3)〉
白石カルシウム社製、アイスバーグK(pH5.8、粒子径3.8μm)
【0071】
〔クレー(比較例用)〕
〈クレー(C′1)〉
バーゲス社製、バーゲス♯10(pH5.0、粒子径1.5μm)
【0072】
〈クレー(C′2)〉
東洋化成株式社製、カオリンTC−1000(pH9.3、粒子径1.1μm)
【0073】
〈クレー(C′3)〉
丸尾カルシウム社製、HAカオリンクレー(pH4.1、粒子径5.5μm)
【0074】
〔表面処理剤〕
ジエチレングリコール(DEG)(三菱化学社製、DEG)
【0075】
〔加硫助剤〕
日本油脂社製、ビーズステアリン酸さくら
【0076】
〔加硫助剤〕
酸化亜鉛(三井金属鉱業社製、酸化亜鉛2種)
【0077】
〔カーボンブラック〕
FEF級カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSO)
【0078】
〔パラフィンオイル〕
日本サン石油社製、サンフレックス2280
【0079】
〔老化防止剤〕
2,2,4―トリメチル―1,2―ジヒドロキノリン(TMDQ)(精工化学社製、ノンフレックスRD)
【0080】
〔加硫促進剤〕
三新化学工業社製、サンセラーTT−G
三新化学工業社製、サンセラーTET−G
三新化学工業社製、サンセラーCZ−G
三新化学工業社製、サンセラーBZ−G
【0081】
〔過酸化物架橋剤〕
ジクミルぺルオキサイド(日油社製、パークミルD−40)
【0082】
〔共架橋剤〕
エチレングリコールジメタクリレート(精工化学社製、ハイクロスED)
【0083】
〔加硫剤(硫黄)〕
鶴見化学工業社製、サルファックスT−10
【0084】
〔実施例1〜11、比較例1〜8〕
後記の表1および表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、バンバリーミキサーおよびロールを用いて混練して、ゴム組成物を調製した。
【0085】
このようにして得られた実施例および比較例のゴム組成物を用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表1〜表3に併せて示した。
【0086】
〔加工性〕
各ゴム組成物を用い、マンドルに挿入した場合に、編肉(シワコブ)の発生の有無等により、加工性の評価を行った。
〈評価〉
○:編肉(シワコブ)が全く発生しなかった
△:編肉(シワコブ)が発生したが、許容できる範囲であった
×:編肉(シワコブ)が許容範囲を超えて発生した
【0087】
〔非化石燃料由来材料の使用量〕
各ゴム組成物について、下記の基準に従い、材料容積あたりの非化石燃料由来材料の使用量の評価を行った。
〈評価〉
×:容積あたりの非化学石燃料由来材料の使用量が5vol%未満のもの
○:容積あたりの非化学石燃料由来材料の使用量が5vol%以上のもの
【0088】
〔圧縮永久歪性〕
JIS K 6262に準拠して、125℃で168時間熱負荷後の圧縮永久歪性を評価した。
〈評価〉
○:75%以下のもの
△:75%より大きく、85%以下のもの
×:85%より大きいもの
【0089】
〔引張り強さ(TS)〕
各ゴム組成物を150℃で30分間プレス加硫して、厚み2mmの加硫ゴムシートを作製した。ついで、JIS 5号ダンベルを打ち抜き、JIS K 6251に準じて、引張り強さ(TS)を評価した。
〈評価〉
○:12.0MPa以上のもの
△:12.0MPa未満で、10.0MPa以下のもの
×:10.0MPa未満のもの
【0090】
〔体積固有抵抗率〕
各ゴム組成物を150℃で30分間プレス加硫して、厚み2mmの加硫ゴムシートを作製した。ついで、JIS K 6271に準じて、体積固有抵抗率を測定した。
〈評価〉
○:1×105Ω・cm以上のもの
△:1×104Ω・cm以上で、1×105Ω・cm未満のもの
×:1×104Ω・cm未満のもの
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
上記表の結果より、実施例品は、いずれも加工性、非化石燃料由来材料の使用量、圧縮永久歪性、引張り強さ、体積固有抵抗率が良好であった。
【0094】
これに対して、比較例品は、エチレン−プロピレン系ゴムとともに、特定のエチレン−オクテン樹脂および特定のクレーを併用していないため、加工性、非化石燃料由来材料の使用量、圧縮永久歪性、引張り強さ、体積固有抵抗率のいずれかが劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の水系ホース用ゴム組成物は、例えば、ラジエータホース、ヒータホース、ドレーンホース等の水系ホース用のゴム組成物として使用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 ホース
1a 曲げ部
2 偏肉(シワコブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分とともに(B)および(C)成分を含有し、上記(B)成分の、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1.0g/10分であって、密度が0.870〜0.908g/cm3であり、上記(C)成分のpHが5.5以上、平均粒子径が3.5μm以上であることを特徴とする水系ホース用ゴム組成物。
(A)エチレン−プロピレン系ゴム。
(B)エチレン−オクテン樹脂。
(C)クレー。
【請求項2】
上記(C)成分が、多価アルコールで表面処理された表面処理クレーである請求項1記載の水系ホース用ゴム組成物。
【請求項3】
上記(C)成分の含有量が、上記(A)成分100重量部に対して30〜150重量部である請求項1または2記載の水系ホース用ゴム組成物。
【請求項4】
上記(B)成分の含有量が、上記(A)成分100重量部に対して5〜30重量部である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水系ホース用ゴム組成物。
【請求項5】
未加硫ホースを曲がり管形状のマンドルに挿入した状態で加硫して得られる、曲がり形状を有する水系ホースであって、上記水系ホースが、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水系ホース用ゴム組成物を用いて形成されていることを特徴とする水系ホース。
【請求項6】
厚みが3.5mm以下の均厚であり、ホースの曲がり部に偏肉(シワコブ)がない請求項5記載の水系ホース。
【請求項7】
水系ホースが、ラジエータホース、ヒータホースおよびドレーンホースからなる群から選ばれたいずれか一つである請求項5または6記載の水系ホース。

【図1】
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【公開番号】特開2012−72291(P2012−72291A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218675(P2010−218675)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】