説明

水素化ブロックコポリマーよりなる感圧接着剤及び滑らかな表面及び粗い表面のための、それから製造された保護フィルム

【課題】 従来技術の欠点を有さないか又は従来技術ほどには有さない、水素化ブロックコポリマーよりなる感圧接着剤及びそれを使用して製造された保護フィルムの提供。
【解決手段】 ビニル芳香族化合物で形成されたポリマーブロック(A−ブロック)及び1,3−ジエンを重合することによって形成されたポリマ−ブロック(B−ブロック)を含有する水素化ブロックコポリマー又はそれの混合物よりなる感圧接着剤において、該感圧接着剤が25〜100重量部の、重量平均分子量M>200,000g/molのポリイソブチレン、3〜40phr(100部のブロックコポリマーを基準として)の粘着樹脂並びに100重量部のブロックコポリマーを基準として0.1〜5phrの光安定剤と混合されていることを特徴とする、上記感圧接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化ブロックコポリマーよりなる感圧接着剤並びに滑らかな表面及び粗い表面への確実な貼り付きを達成しそして紫外線照射後に容易にかつ残留物なく剥がすことができる保護フィルムにおいてそれを用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
日常使用品の設計に対しての高まった要求は新規の傷つき易い表面を絶えず生じさせておりそして現代の消費者は購買のときに傷の無い製品を期待している。
【0003】
それ故に多くの消費物質の傷つき易い表面は、該表面を軽い機械的作用に対して有効に保護しそして価値を下げる損傷並びにくすみを防止する表面保護フィルムで保護される。表面保護フィルムは一般に、実際的な保護効果をもたらす支持体フィルムと、保護すべき対象物の上に該支持体フィルムを一方においては確実に固定しそしてもう一方においては容易に、かつ、痕跡なく剥離できることを保証しなければならない感圧接着剤とよりなる。
【0004】
保護された表面及び保護フィルムが曝される条件は対象物及び目的次第で非常に相違し得る。実地においてはこの条件は、通常の雰囲気条件のもとでのほんの二三時間の貼り付け状態の時間から、例えば紫外線暴露又は高い湿気を含めた厳しい条件のもとでの数カ月の間の貼り付き状態の時間までに亙る。
【0005】
保護フィルムに必要な接着力は基体材料及びその表面の特質に左右される。この表面は光沢があっても又は艶消しであっても又は滑らかであっても又は色々に構造化されていることもある。表面保護製品にはあらゆる要求に対応するものはない。このことは市販される多様な表面保護フィルム製品があることが証明している。
【0006】
ポリオレフィンよりなる支持体とアクリル酸エステルポリマーよりなる感圧接着剤を有する保護フィルムは専ら溶液並びに水性分散物で塗布されている。アクリル酸エステルポリマーは色々な接着力に調整されそして多くの使用目的に最適に作用する。しかしながら一般に比較的に極性のアクリル酸エステルポリマーは被接着基体では剥離する傾向がある。すなわち、基体へのそれの接着力が接着初期レベルに比較して経時的に増加する傾向がある。
【0007】
同様に、外側が白色に着色されておりそして下地が黒色である黒色/白色のポリオレフィンフィルムが普及しておりそして大抵は天然ゴム感圧接着剤と組み合わされている。この光不透過性フィルムは光で傷つき易い天然ゴム感圧接着剤を、耐えられない程に接着剤残留物を必然的に残してしまう光起因性分解反応に対して保護している。
【0008】
この種類の保護フィルムは、極性が被接着基体と強い相乗効果をもたらすアクリル酸エステルポリマーが適していない場合に使用するのが特に有利である。これはしばしばPVC、例えば窓用フィルムの場合に当てはまる。
【0009】
一般に天然ゴム感圧接着剤は、非極性でありそしてアクリル酸エステルポリマーよりも剥離する傾向が小さいので、表面保護のための適する感圧接着剤である。それの本質的な欠点は、光に対して不安定であり、光に対し不透過性でありそしてそれ故に興味の持てないフィルムによってしか相殺できない。光学的理由又は実質的な理由から、透明な保護フィルムは、被覆された表面を視認できるので、しばしばより望ましい。
【0010】
それ故に多くの場合には、透明な支持体を非極性の天然ゴム感圧接着剤と組み合わせることが有利である。
【0011】
一つの解決法は、天然ゴムと違って一部分が水素化された状態、要するに光安定性の状態で得ることができる合成ゴムを用いるものがあり得る。それにもかかわらず天然ゴムは合成ゴムに直接的に交換することはできず、合成ゴム物質は全体として別に製造しなければならない。
【0012】
この様な方向における一つの試みは国際特許出願公開第03/018702A1号明細書に開示されている。そこでは水素化されていてもよいスチレンブロックコポリマーが接着剤樹脂でありそして25℃以下の軟化温度を有していなければならず、室温でも液状である、ポリイソブチレンよりなるポリマー可塑剤と一緒に使用されている。引用された種類の保護フィルムは確かに塗料を塗布した表面に対しては機能する。それにもかかわらず、多くの被接着基体上では、特に熱負荷された後のそれの上には、十分に凝集していない接着残留物が認められる。
【0013】
国際特許出願公開第03/018701A1号明細書は、単層又は多層の特にポリオレフィン支持体層及び感圧接着剤層を持つ表面保護用途の粘着性保護フィルムが開示されている。この感圧接着剤は次の様な構成である:
30〜70重量%の、ビニル芳香族化合物、特にスチレンで形成されたポリマーブロックを含むブロックコポリマー(A−ブロック)及び1,3−ジエン、特にブタジエン及びイソプレンあるいはそれらの水素化生成物の重合によって形成されたポリマーブロック(B−ブロック)をベースとする1種類以上のエラストマー
30〜70重量%の粘着樹脂、その際に粘着樹脂の少なくとも半分は環球法で測定して25℃以下の軟化温度を有する液体樹脂である。
【0014】
ヨーロッパ特許出願公開第1,388,582A1号明細書には、感圧接着剤がポリイソブチレン及び/又はスチレンブロックコポリマーをベースとする粘着性保護フィルムが開示されている。ポリイソブチレンの種類又はそれの分子量並びに混合比については正確に記載されていない。このことは、考えられるあらゆる混合比又はあらゆるポリイソブチレンが表面保護フィルムに適する感圧接着剤を形成することを示唆している。このことからは、実際には接着が強過ぎるか又は弱過ぎる混合比を知ることができる。室温で液状のポリイソブチレンでは、既に前述した通り、凝集が弱過ぎ得る。スチレンブロックコポリマーの割合が多過ぎると、塗料の様な傷つき易い被接着基体ではしわ、気泡又はフィルムの縁部の不可逆的なインプリントが認められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、従来技術の欠点を有さないか又は従来技術ほどには有さない、水素化ブロックコポリマーよりなる感圧接着剤及びそれを使用して製造された保護フィルムを提供することにある。特に水素化されたブロックコポリマーよりなるここに提案する感圧接着剤は、透明な支持体フィルムの上で使用される程に光安定性を有しており、その結果滑らかな基体のための支持体フィルムが透明な支持体フィルム及び本発明の感圧接着剤で製造することができ、前述の光起因による接着剤の分解の危険がもたらされずそして同時に非極性のゴム様感圧接着剤の長所を発揮する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、請求項1に記載した種類の感圧接着剤によって解決される。請求項1を引用する請求項にかかる発明は該感圧接着剤の有利な実施形態並びにこれを用いて製造された保護フィルムに関する。
【0017】
従って本発明は、ビニル芳香族化合物、特にスチレンで形成されたポリマーブロック(A−ブロック)及び1,3−ジエン、特にブタジエン及びイソプレン或いはそれの水素化生成物を重合することによって形成されたポリマ−ブロック(B−ブロック)を含有する水素化ブロックコポリマー又はそれの混合物よりなる感圧接着剤に関する。この感圧接着剤は25〜100重量部の重量平均分子量M>200,000g/molのポリイソブチレン、3〜40phr(100部のブロックコポリマーを基準として)の粘着樹脂並びに100重量部のブロックコポリマーを基準として0.1〜5phrの光安定剤と混合される。
【0018】
エラストマーとしては、ビニル芳香族化合物、特にスチレンで形成されたポリマーブロック(A−ブロック)及び1,3−ジエン、特にブタジエン及びイソプレンを重合することによって形成されたポリマ−ブロック(B−ブロック)、特にそれらの水素化誘導体を含有するブロックコポリマーをベースとするものである。ホモ並びにコポリマーブロックが本発明に従って利用できる。残りのブロックコポリマーは同じか又は異なるB−ブロックを含有していてもよい。ブロックコポリマーは線状のA−B−A構造を有していてもよく、同様に放射状構造並びに星型及び線状多重ブロックコポリマーも使用することができる。他の成分としてはA−B二成分ブロックコポリマーが存在していてもよい。ビニル芳香族化合物及びイソブチレンのブロックコポリマーも同様に本発明に従って使用できる。上述のポリマーの全ては単独でも又は互いの混合物の状態でも利用することができる。
【0019】
ポリスチレンブロックの代わりに、>約75℃のガラス転位温度を持つ他の芳香族化合物含有ホモー及びコポリマー(特にC〜C12−芳香族化合物)、例えばα−メチルスチレン含有芳香族化合物ブロックも利用することができる。
【0020】
スチレン−エチレン/ブチレン−ブロックコポリマー及びスチレン−エチレン/プロピレン−ブロックコポリマーを含めたスチレン−ブタジエン−ブロックコポリマー及びスチレン−イソプレン−ブロックコポリマー及びそれらの水素化生成物の代わりに、本発明に従って同様に、例えば複数の異なる1,3−ジエンのコポリマーの様な別のポリジエン含有エラストマーブロックを利用するブロックコポリマー及びそれらの水素化生成物を使用することができる。本発明によれば別の官能化ブロックコポリマー、例えば無水マレイン酸変性された又はシラン変性されたスチレンブロックコポリマーが利用できる。
【0021】
本発明の有利な一つの実施形態によれば、エラストマーは中位のブロックの状態で専ら水素化されており、特に中位のブロックの状態で完全に水素化されている。
【0022】
ポリイソブチレンはイソブテンのホモポリマーであり、不飽和結合を有していないので光の影響に対して比較的に鈍感な性質である。ポリイソブチレンは一般に色々な分子量で市販されており、代表的には重量平均分子量Mwが30,000g/mol〜4,000,000g/mol以上までのポリイソブチレンが提供されている。約200,000g/mol以下の平均分子量ではポリイソブチレンは室温で液状であり、それより大きいとゴム状である。後者の場合には、顆粒化することによって良好に加工可能な状態にされる。
【0023】
約200,000g/mol以上の重量平均分子量を持つポリイソブチレンだけが本発明の意味での水素化ブロックコポリマーへの添加物として実証されている。何故ならば、この場合にだけ、要求される条件のもとでも凝集性が十分であるからである。
【0024】
重量平均分子量M>200,000g/molのポリイソブチレンの使用量は100重量部のブロックコポリマーを基準としてポリイソブチレン25〜100重量部である。
【0025】
上記のブロックコポリマーはポリイソブチレンとの混合状態でも本質的に粘着性が弱いので、比較的に粗い表面の被接着基体及び/又は小さい表面応力の被接着基体(例えばポリプロピレン)に粘着樹脂の添加によって、成功裏に接合するためにより粘着性に調製しなければならない。
【0026】
本発明の感圧接着剤のための粘着性化剤としては粘着樹脂、特に水素化された粘着樹脂が適している。特に適するのは、
− ジシクロペンタジエンの水素化重合体(例えばExxon Chemicals社のEscorez 5300シリーズ)
− 特にC−及びC−芳香族化合物の水素化重合体(例えばHercules Inc.社のRegalite 及びRegalrezシリーズ;Arakawa株式会社のArkon Pシリーズ);これらは純粋の芳香族化合物の重合体を水素化することによって生じるか又は種々の芳香族化合物の混合物をベースとする重合体を水素化することによっても生じる
− C−及びC−芳香族化合物の部分水素化重合体(例えばHercules Inc社のRegalite 及びRegalrezシリーズ;Arakawa株式会社のArkon Mシリーズ);
− 水素化ポリテルペン樹脂(例えばYasuhara株式会社のClearon M);
− 水素化C/C−重合体(Exxon Chemicals社のECR-373);
− 芳香族変性された選択的水素化ジシクロペンタジエン誘導体(例えばExxon Chemicals社のEscorez 5600シリーズ);及び/又は
− 水素化及び部分水素化コロホニウムベース樹脂(例えばHercules社のForalyn、Foral,;DRT社の Hydrogral)。
【0027】
紫外線暴露することなく、保護フィルムにおいて本発明の感圧接着剤を用いるためには、未水素化の粘着樹脂を単独で又は水素化粘着樹脂との混合成分として使用することができる。紫外線に暴露される表面保護フィルムとしては専ら水素化された炭化水素樹脂が使用される。
【0028】
光安定性をさらに改善するためには、粘着性樹脂には、樹脂が水素化されている場合ですら該樹脂が傷つき易いので、光安定剤又は他の安定剤を添加しなければならない。これらは、放射線又は熱に起因するラジカル分解行程を特にエラストマー並びに粘着樹脂に作用し得る空気酸素への暴露下に中断することを保証する。
【0029】
この種類の光安定剤はGaechter 及びMullerの場合“合成樹脂添加物のポケットブック(Taschenbuch der Kunststoff-Additive)”、ミュンフェン、1979;キルクオスマ(Kirk-Othmer)(3版)23巻、第615〜627頁;“Encycl. Polym. Sci. Technol.”14巻、第125〜148頁;“Ullmann ”(4版)、第8巻、第21頁;第15巻、第529頁及び第676頁に記載されている。特にHALS光安定剤は本発明の感圧接着剤に適している。光安定剤の量はエラストマーを基準として0.1〜5phrである。
【0030】
光安定性は酸化防止剤(例えばIrganox 1010又はトリス−ノニルフェニル−ホスフィット)の使用によってさらに高められるが、必ずしも必要ない。
【0031】
水素化ブロックコポリマー及びポリイソブチレンは適当な溶剤、例えばトルエン又はトルエン/ベンジン混合物中に、本発明に従うあらゆる混合比において均一に溶解される。これらの溶液は支持体材料上に任意の厚さで塗布されそして流動する加熱空気の作用によって溶剤が除かれる。
【0032】
本発明の感圧接着剤の各成分は、溶剤なしでも例えば内部ミキサー中で又は適当な装置、例えば押出機又は配合装置中で溶融状態で混合することができる。該各成分は溶剤を用いずに、例えばカレンダー装置又は狭く幅広のダイを持つ押出機でフィルムに成形しそして支持体ウエブに適用することができる。
【0033】
本発明の感圧接着剤は、多重押出法で支持体と同時に成形して完成表面保護フィルムに成形するのにも適している。
【0034】
これらの性質はそれだけで、本発明の接着剤を、究極的には表面を保護するために使用される支持体フィルム上に使用できることを明らかにしている。一般的な表現の“保護フィルム”は本発明の意味では二次元に広がるフィルム又はフィルム片、長手方向に延び広がりそして幅が制限されたテープ、テープ片、打ち抜き物、ラベル等のようなシート状のあらゆる構造物を包含する。
【0035】
延伸によって基体の輪郭に容易に適合される柔軟性のある保護フィルムが最もしばしば要求されている。この場合には、本発明の接着剤から製造される保護フィルムは有利にはポリオレフィンよりなる支持体を有している。この支持体には例えばポリエチレン、ポリプロピレン並びにそれらの混合物又はコポリマー(例えばランダムコポリマー又はポリプロピレンブロックコポリマー)が可能である。特別な機械的性質、例えば強靱性、柔軟性、接着剤への接着性、押出成形挙動又は特に滑らかな表面構造を調整するためにはフィルムに色々な量の他のポリオレフィンコポリマー、例えばエチレンとα−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンとのコポリマー(割合及び製造法次第でLLDPE、VLDPE又はULDPE又はメタロセンPEと称する)を含有していてもよいが、エチレン−スチレンコポリマー、エチレンと極性コモノマー、例えばアクリル酸又は酢酸ビニルとのコポリマー、及びプロピレンとα−オレフィン、例えばエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンとのコポリマーを含有していてもよい。
【0036】
同様にPVC−フィルム、特に軟質PVCフィルムも適する。
【0037】
幾つかの場合には、適用又は剥離するときに延伸のない寸法安定性の保護フィルムが望ましい。その場合には、一軸又は二軸延伸されたポリオレフィン又は高いE−モジュールのポリマー、例えばポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)又はポリメチルメタクリレートよりなるフィルムが使用される。本発明のコンセプトによれば異なる材料層よりなるフィルム複合体も包含される。
【0038】
本発明の有利な一つの実施形態においては支持体フィルムの厚さは20〜80μmである。
【0039】
本発明は特に光安定性の保護フィルムを目的としている。支持体フィルムに必要とされる紫外線安定性を付与するために、光安定剤を添加するのが有利である。これに関する従来技術は既に感圧接着剤のための光安定剤のところで挙げたのと同じ文献に記載されている。光安定剤の量は支持体フィルムを基準として少なくとも0.15重量%、好ましくは少なくとも0.30重量%であるべきである。
【0040】
フィルムのために酸化防止剤(例えばIrganox 1010 又はトリスノニルフェニル−ホスフィット)を用いるのが有利であるが、必ずしも使用する必要はない。他の適する紫外線吸収剤、光安定剤及び老化防止剤はヨーロッパ特許出願公開第0,763,584A1号明細書に記載されている。
【0041】
透明性がしばしば望まれる場合でも、光の視認又は遮蔽の理由から不透明又は光に全く鈍感であることが要求される場合もある。このような場合には、支持体に二酸化チタン又はカーボンブラックの様な被覆用充填剤を充填してもよい。これらは不透明性及び支持体フィルムの光安定性の更なる改善を保証する。
【0042】
分解で触媒作用する金属を取り除くために、支持体中に組み入れられている金属不活性化剤、なかでもヒドラジン及びヒドラジドが有利である。
【0043】
光学的設計のために、有色透明、半透明又は不透明色とするべく、着色剤又は着色顔料を、充填剤と組合せて使用してもよい。
【0044】
滑剤及びブロッキング防止剤、例えばエルカミド、オレアミド及びグリセリルモノステアレート、及び酸除去剤、例えばステアリン酸カルシウム及び他の金属セッケンは、支持体フィルムの裏側から感圧接着剤に移動又は運搬されることによって感圧接着剤の粘着性に悪影響を及ぼさない限り、使用してもよい。フィルムの価格を低下させるために又は特別な性質を達成するために、他の充填剤、例えばチョーク又はタルクを使用してもよい。
【0045】
特に有利なポリオレフィンフィルムの製造は、関連する公知の方法、例えば狭く幅広のダイから出る溶融物を冷却ロール上に吐き出し、該ロール上で溶融物をフィルムに固化させるチルロール法で行う。さらに、溶融物を環状ダイからパリソンとして押し出しそして所望の寸法(厚み及び直径)のパリソンを得るために多かれ少なかれ著しく膨張させるブロー成形法が普及している。
【0046】
必要な場合には、支持体フィルム上への感圧接着剤の固定は、固定助剤としてのプライマー又は粘着性化剤層の塗布によって改善することができる。この目的のために被覆すべきフィルム面をコロナ放電前処理又は火炎前処理することも役立つ。
【0047】
保護フィルムの裏面には、必要な場合には、アルキメデス螺旋状に巻かれた保護フィルムの巻き解き性に有利に作用するために、裏面塗料を塗布してもよい。この裏面塗料は不粘着作用物質としてシリコーン化合物又はフルオロシリコーン化合物並びにポリビニルステアリルカルバマート、ポリエチレンイミンステアリルカルバミド又はフッ素系有機化合物を含有していてもよい。
【0048】
多層押し出し成形の場合には、剥離剤を含有する層を別の全部の層と一緒に押し出し成形するのが有利である。
【0049】
本発明の感圧接着剤は、滑らかな又は光沢のある、特に粗面の及び構造化された基体への良好な初期接着力を有することに特徴がある。この場合、この接着力は長時間にわたって保存する過程で、高温のもとでも僅かな程度しか増加しない。
【0050】
これから製造された保護フィルムは光透過性の支持体と組合せた場合ですら良好な光安定性を数ケ月にわたって発揮する。この保護フィルムは熱及び太陽光の作用後でも残留物なしに容易に被接着基体から剥がせる。この場合、被接着基体は黄変のような外観の変化、光沢の変化又は膨張現象を被らない。
【0051】
予期し得なかったこれらのプラスの性質のために感圧接着剤は、乗物、例えば自動車又は自動車部材の新たに塗装した表面に組立保護手段又は運搬保護手段として使用することができるか又は滑らかな及び粗面の塗装面、金属面、合成樹脂面又はガラス面を保護するために使用できる保護フィルムにおいて使用される。
【0052】
本発明の感圧接着剤及びそれから製造される表面保護フィルムを、以下の通り、沢山の実施例による特に有利な実施形態において更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
さらに、不適当な感圧接着剤及びそれから製造された保護フィルムを説明する比較例も記載する。
[実施例]
試験体を製造するための全ての感圧接着剤は、その組成の各成分を秤量しそして溶剤のトルエン中に20%の固形分濃度で溶解することによって製造した。これらの感圧接着剤を実験室用塗装装置によって、0.2%のChimassorb 944 (ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル]−[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−ヘキサメチレン−[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、CIBA社のHALS−光安定剤で光安定化され、コロナ放電前処理した厚さ50μmの無色透明なLDPEフィルムを、乾燥室で95℃で4分間にわたって乾燥した後に10g/mの接着剤塗布量となるような塗膜厚で塗布した。
【0054】
冷やした後にこれら試験体にシリコーン加工された剥離フィルムを被覆しそして48時間より短くない待ち時間の後に、細く切断して幅20cmのテープを作製した。このテープを用いて試験体について、以下に説明する試験を実施した。
【0055】
評価基準:
表面保護フィルムに対する感圧接着剤の用途適合性の評価基準は、
− 十分な瞬間接着性
− 温度負荷後の接着力の穏やかな上昇
− 紫外線照射後の接着力の穏やかな上昇及び残留物なしの剥離性
− 被覆除去後に表面変化が無いこと。
【0056】
これらを以下に詳細に説明する:
瞬間接着性:
保護すべき被接着基体への十分な瞬間接着性が付与されていなければならず、その結果として表面保護フィルムは簡単に貼り付けることができそして始めから確実に貼り付く。これの一つの目安は瞬間接着力であり、要するに表面保護フィルムが適用直後に再び被接着基体から剥がすのに必要とされる力である。
【0057】
剥離挙動:
したがって、保護すべき被接着基体から容易に再び被覆を除去することができ、粘着性表面保護フィルムは剥離力が過度に増加するべきでない。すなわち、長時間の貼り付け時間の後の剥離力と瞬間接着力との間の差が大き過ぎるべきでない。このことは、表面保護フィルムがしばしば大きな寸法で使用されそしてそれ故に被覆の除去のために必要な力が相当なものであるのでますます重要である。
【0058】
表面変化:
表面保護フィルムは被接着基体を損傷又は汚れから保護するが、それ自身は変化するべきでない。
【0059】
貼り付け過程でもたらされるしわ又はフィルム構造のインプリントの形での表面の変色及び不可逆的変形は接着残留物及び付着物と同様に望ましくない。
【0060】
紫外線安定性:
粘着性表面保護フィルムへの紫外線の影響によって支持体は脆弱にならず、かつ、剥離のときに引き裂けず、感圧接着剤の凝集性も被接着基体に残留するような損傷をもたらさない必要がある。
【0061】
試験の実施及び評価体系:
テープ状に切断した試験体を種々の代表的な被接着基体に貼り付けそして貼り付け直後及び色々な負荷をかけた後の接着力を引張り試験機によって測定する。
【0062】
この場合、剥離後の被接着基体を評価することに特に注意する。
【0063】
瞬間接着:
瞬間接着の測定はポリカーボネート(PC)、非可塑化ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、窓ガラス(ガラス)及び一成分系ポリウレタン塗料(一成分系PU塗料)で製造された滑らかな試験板に接着力測定法ASTM D3330によって行った。剥離角度は180°であり、剥離速度は300mm/分であった。測定は貼り付け後5分の間の接着力を測定した。少なくとも0.2N/cmの瞬間接着力は良好と判定した。
【0064】
剥離挙動:
長い貼り付け時間は、非接着基体に貼り付けた試験体を80℃に高めた温度で6日間にわたって熱負荷することによってシュミレーションした。熱負荷した試験体を室温に冷ました後に剥離力を接着力測定法ASTM D3330によって測定した。
【0065】
剥離挙動(ρ)は熱負荷後と瞬間接着の剥離力との相互の差として算出される。最大1N/cmの剥離力の上昇は良好と評価した。
【0066】
2N/cm以上の、熱負荷後の剥離力は剥離挙動に無関係に不合格と評価した。
【0067】
瞬間接着:
熱を負荷した試験体の剥離後にかつて貼り付けた領域を視覚的に評価した。評価は、非接着基体に視認的に変化が認められない場合に合格(満足、OK)とした。
【0068】
紫外線安定性:
紫外線安定性は紫外線の照射によってQ-PANEL社の評価装置QUV/SE で試験した。照射出力は、UVA-340 タイプのランプで達成される0.92W/m/nmであった。この試験のために散水装置は運転しなかった。
【0069】
約24時間の規則的間隔で試験体の被覆を除去しそして基体を初期凝集弱さの目安として残留物について視覚的に試験した。
【0070】
試験体は、少なくとも400時間の紫外線照射後に接着剤残留物が認められない場合に十分な紫外線安定性があると評価した。
【0071】
分子量測定:
重量平均分子量Mの分子量測定はゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)によって行った。溶離液としては0.1容量%のトリフルオロ酢酸を含むTHF(テトラヒドロフラン)を使用した。測定は25℃で行った。使用した予備カラムはPSS−SDV、5μ、10オンク゛ストローム、内径8.0mm×300mmを使用した。分離するために、それぞれ内径8.0mm×50mmのカラムPSS−SDV(5μ、10並びに10及び10)を使用した。試料濃度は4g/Lであり、流量は1.0mm/分である。測定はPMMA標準に対して実施した。
【0072】
実施例及び比較例の処方:
本発明を実証するために選択した感圧接着剤は、本発明に従って、水素化ブロックコポリマー及びポリイソブチレンよりなる。実施例及び比較例の数値は組成物中の各成分の重量部である。Mは重量平均分子量を示す。KW−樹脂は炭化水素樹脂を示している。
実施例:
【0073】
【表1】

【0074】
Septon 2063 は13重量%のスチレン含有量で65,000の平均分子量Mを持つSEPSである。Kraton G-1657 も同様に13重量%のスチレン含有量、30%のジブロック含有量、100,000の平均分子量Mを有するSEBSである。
【0075】
【表2】

【0076】
【表3】




【0077】
実施例B−1、B−2及びB−3は、一部が0.2N/cmを明らかに超える十分な瞬間接着力及び加熱保存後の穏やかな剥離性を示すので用途に適合する性質像を発揮している。2N/cmの値は超えていない。非接着基体の表面は加熱保存によって変化せず、被覆物の剥離は残留物を残すことなく可能である。紫外線安定性は400時間以上を遥かに超えており、安定性の基準点を明らかに超えている。実施例B−2では、完全水素化した炭化水素樹脂及びスチレン−エチレン/ブチレン−ブロック共重合体をベースとするエラストマーを使用することが、紫外線安定性にプラスの影響を及ぼしている。
【0078】
ポリイソブチレンを使用せず、スチレン−エチレン/ブチレン−ブロック共重合体及び樹脂だけを用いた比較例G−1はPEの様な低い表面応力の表面及びエロキシ化されたアルミニウム(アルマイト)の様な艶消し構造化された表面への接着力が低過ぎる。低い瞬間接着力にも係わらず、接着力は熱間保存後にも明らかに高く、試験体は卓越した剥離挙動も示す。さらに、塗料を塗布した傷つき易い非接着基体はこの試験体によると不可逆的に変形した。
【0079】
比較例G−2においてはポリイソブチレンの割合が倍にされそしてそれ故に有利であることが確認されている上限値の外に外れている。ポリイソブチレンの割合が多いことによって凝集性が弱い。多くの被接着基体の上に接着剤残留物が残る。熱間保存後の接着力は2N/cmを遥かに超えており、それ故に要求される容易な被覆物剥離性の規定された限界を超えている。
【0080】
低分子量のポリイソブチレン(Oppanol B10)を用いた比較例G−3は極性の被接着基体において厳しい剥離挙動を示し並びに被覆物剥離後に接着剤残留物が顕著に認められた。低い分子量のこのポリイソブチレンの凝集性は不十分である。このことは低い紫外線安定性に明らかに現れている。さらに、塗料を塗布した被接着基体での付着物も生じた。
【0081】
比較例G−4においては、紫外線安定剤を省いた。瞬間接着及び剥離挙動は満足であった。安定化されていないので紫外線照射下での安定性は限界以下でありそして光安定性の要求は満足していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族化合物で形成されたポリマーブロック(A−ブロック)及び1,3−ジエンを重合することによって形成されたポリマ−ブロック(B−ブロック)を含有する水素化ブロックコポリマー又はそれの混合物よりなる感圧接着剤において、該感圧接着剤が25〜100重量部の、重量平均分子量M>200,000g/molのポリイソブチレン、3〜40phr(100部のブロックコポリマーを基準として)の粘着樹脂並びに100重量部のブロックコポリマーを基準として0.1〜5phrの光安定剤と混合されていることを特徴とする、上記感圧接着剤。
【請求項2】
ビニル芳香族化合物がスチレンであるか又はC〜C12−芳香族化合物をベースとしており、特にα−メチルスチレン含有芳香族化合物ブロックである請求項1に記載の感圧接着剤。
【請求項3】
B−ブロックがブタジエン及びイソプレンあるいはそれらの水素化生成物の重合によって又はイソブチレンの重合によって形成される、請求項1又は2に記載の感圧接着剤。
【請求項4】
ブロックコポリマーが中間ブロック状態で専ら、なかでも完全に水素化されている、請求項1〜3のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
【請求項5】
粘着樹脂を、
− ジシクロペンタジエンの水素化重合体(例えばExxon Chemicals社のEscorez 5300シリーズ)
− 特にC−及びC−芳香族化合物の水素化重合体(例えばHercules Inc.社のRegalite 及びRegalrezシリーズ;Arakawa株式会社のArkon Pシリーズ);これらは純粋の芳香族化合物の重合体を水素化することによって生じるか又は種々の芳香族化合物の混合物をベースとする重合体を水素化することによっても生じる
− C−及びC−芳香族化合物の部分水素化重合体(例えばHercules Inc社のRegalite 及びRegalrezシリーズ;Arakawa株式会社のArkon Mシリーズ);
− 水素化ポリテルペン樹脂(例えばYasuhara株式会社のClearon M);
− 水素化C/C−重合体(Exxon Chemicals社のECR-373);
− 芳香族変性された選択的水素化ジシクロペンタジエン誘導体(例えばExxon Chemicals社のEscorez 5600シリーズ);及び/又は
− 水素化及び部分水素化コロホニウムベース樹脂(例えばHercules社のForalyn、Foral,;DRT社の Hydrogral)
の群から選択する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の感圧接着剤。
【請求項6】
感圧接着剤が少なくとも支持体フィルムの片面に塗布されることによる、請求項1〜4のいずれか一つに記載の感圧接着剤の、保護フィルムにおける用途。
【請求項7】
支持体フィルムがポリオレフィンフィルムである、請求項7に記載の感圧接着剤の用途。
【請求項8】
支持体フィルムの厚さが場合によっては支持体層と感圧接着剤との間に配置された粘着性付与層を含めて、20〜80μmである、請求項6または7に記載の感圧接着剤の用途。
【請求項9】
支持体フィルムが少なくとも0.15重量%の量で少なくとも1種類の光安定剤を含有している、請求項6〜8のいずれか一つに記載の感圧接着剤の用途。
【請求項10】
保護フィルムの290〜360nmの波長範囲の紫外線透過率が1%以下である、請求項6〜9のいずれか一つに記載の感圧接着剤の用途。
【請求項11】
乗物、例えば自動車又は自動車部材の新たに塗装した表面での組立保護又は運搬保護手段としての請求項6〜10のいずれか一つに記載の保護フィルムの用途。
【請求項12】
滑らかな及び粗面の塗装面、金属表面、合成樹脂表面又はガラス表面を保護するための請求項6〜11のいずれか一つに記載の保護フィルムの用途。
【請求項13】
感圧接着剤、支持体層並びに場合によっては別の補助層を同時押し出し成形により請求項6〜12のいずれか一つに記載の粘着性保護フィルムの製造方法。

【公表番号】特表2010−500434(P2010−500434A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523258(P2009−523258)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058059
【国際公開番号】WO2008/017641
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(507249591)テーザ・アクチエンゲゼルシャフト (52)
【Fターム(参考)】