説明

水素化精製触媒の製造方法

本発明は、水素化精製触媒の製造方法に関し、(1)アンモニア水とポリアミンキレート剤とを混合させて複合溶剤を調製し、(2)複合溶剤にコバルト塩を添加し、コバルト塩を溶解させた後、モリブデン塩、又はモリブデン塩と、その他の活性成分である塩類を添加すると共に溶解させて、含浸液に調製し、(3)担体を含浸させた後、エイジング、乾燥、活性化を行い、水素化精製触媒を生成する。本発明の方法で製造された触媒は、水素化の活性が良好で、選択性が高く、また安定性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化精製触媒の製造方法に関する。当該方法を用いて製造された触媒は、軽中質石油留分の水素化精製に適用される。
【背景技術】
【0002】
現在、Ni−Mo、Co−Mo、Ni−W、Co−W、及び、Co−Mo−Ni、W−Mo−Niを活性成分とする水素化精製触媒の製造方法に関する報告が多く見られる。含浸法でコバルト触媒、モリブデン触媒を製造する過程における主な問題は、活性成分であるCo、Moが難溶であることであり、特に難しいのは、1種類の溶剤において2種類の活性成分を同時に溶解させることである。多段階含浸法で触媒を製造する場合、触媒製造コストが増加してしまうことがある。一方、一段階含浸法で触媒を製造する場合、従来技術に存在する問題は、活性成分の溶解を促進するように有機酸/塩基を添加する必要があり、さらに、必要な活性成分の含有量が比較的多い場合、大量の有機酸/塩基を使用しなければならず、焼成時の温度を制御しにくく、熱暴走しやすいと共に、大量の気体が放出され、触媒の損失も大きい点にある。
【0003】
また、調製した活性成分の含浸液が清澄、均一であるかどうかは、含浸後の触媒中における活性成分の分散度に直接関連するため、触媒の活性及び選択性に影響する。したがって、有効な溶剤及び溶解方法を選択して用いることは、含浸液の調製におけるキーポイントとなっている。
【0004】
特許文献1には、CoMo/NiMo触媒の製造方法が開示されており、当該製造方法では、活性成分及びアンモニウム水を含有する溶液に担体を一段階含浸させることでCoMo/NiMo触媒を調製する。当該方法には、含浸液の調製過程が詳細に紹介されているが、この方法では、含浸液を調製する過程において、活性成分の溶解を促進するために混合物を加熱する必要がある。
【0005】
特許文献2には、選択的水素化脱硫触媒の製造方法が開示されており、該触媒は、活性成分であるコバルト、モリブデン及び担体である酸化アルミニウムからなり、活性成分を含有し、且つクエン酸水溶液を添加した水溶液に、同容積で担体を含浸させることで調製される。当該方法により得られる触媒については、酸化モリブデンの含有量は最多でも10wt%にすぎない。
【0006】
特許文献3には、水素化精製触媒の製造方法が開示されており、酢酸コバルトを水に溶解させた後、エチレンジアミンを添加することで、エチレンジアミンとコバルトの混合溶液を形成し、pH12〜14の溶液にモリブデン酸アンモニウムを添加することで、コバルト・モリブデン金属を含有する共含浸液を調製し、この溶液で多孔担体を含浸させ、触媒を製造する。当該方法の欠点は、触媒製品を得るために無酸素又は微量酸素の雰囲気下で焼成を行う必要があることである。
【0007】
特許文献4には、酸化亜鉛から改質したγ−酸化アルミニウムを担体とし、コバルト、モリブデンを活性成分とする触媒の製造方法が開示されている。当該製造方法では、濃度15〜28%の一定量のアンモニア水に、必要量のコバルト塩を添加し、絶えず撹拌し続けながら、エチレンジアミンの量がコバルト塩重量の1/50〜1/7となるように、一定量のエチレンジアミンを添加する。そして、絶えず撹拌し続けながら、必要量のモリブデン酸アンモニウムを添加する。Co−Mo共含浸液が得られ、当該Co−Mo共含浸液を用いて1〜10時間担体を一回含浸させて製造し、110〜150℃で2〜6時間干燥させ、480〜600℃で3〜8時間焼成を行い、触媒を製造する。製造された触媒の好ましい組成分は、CoOが1〜5wt%、MoOが8〜14wt%、ZnOが1〜15wt%であり、残りはγ−Alである。
【0008】
特許文献5には、水素化精製触媒及びその製造方法が開示されており、当該触媒は、モリブデン、コバルト、ニッケルである活性成分を含有するアンモニウム共含浸液を用いて、ポリマー及びIVB族金属が添加された酸化アルミニウム担体を含浸させることにより製造される。含浸液の調製過程については、当該方法では詳細に紹介していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4409131号明細書
【特許文献2】米国特許第6013598号明細書
【特許文献3】中国特許第91110935.8号明細書
【特許文献4】中国特許第94114194.2号明細書
【特許文献5】中国特許第00130284.1号明細書
【0010】
現在、アンモニウム水を溶剤としてCo、Moである活性成分を溶解することは、公知の技術であるものの、活性成分の分散度の向上においては、アンモニア水の効果が顕著ではない。如何に、活性成分を含有する含浸液を簡便に調製し、当該含浸液を清澄化・安定化させ、表面張力及び粘度を小さくするか、さらに多成分を一段階同容積で含浸させるという要求を満たしつつ、含浸後活性成分に高度な分散状態を保たせるかは、まだ難問である。コバルト塩を水又はアンモニア水に直接に溶解させる場合、加熱しないという条件下で、溶剤の使用量を制御すると、一般的に、コバルト塩が完全溶解しなくなるので、コバルトの溶解を促進するために有機酸又は有機塩基を更に添加する必要がある。
【0011】
分解ガソリンは、二段階の水素化を経た後、一般的に芳香族炭化水素を抽出するための原料として使用されていることから、触媒は、良好な水素化活性(製品の臭素価<1.0gBr/100g)、脱硫活性(製品中の硫黄<1.0μg/g)を必要とすると共に、良好な水素化選択性(芳香族炭化水素の水素化における損失を防ぐ)及び長時間運転による操業安定性を必要とする。しかしながら、現在の工業用装置に使用される分解ガソリンの二段階水素化触媒については、水素化活性及び脱硫活性が比較的良好であるが、長時間運転による操業安定性が不足し、芳香族炭化水素の水素化損失率が比較的大きく(>2%)、高負荷運転能力が強くならず、触媒製造コストが高いといった欠点が存在しており、装置の経済的利益に影響してしまう。
【0012】
上記問題における主な原因は、下記の幾つかが挙げられる。
【0013】
(1)触媒における活性金属成分の分散性が良好でなく、活性中心が強すぎるため、芳香族炭化水素の水素化、特にベンゼンの水素化の損失率が大きい。
【0014】
(2)触媒において、一定量のブレンステッド酸(B酸)中心が存在しているが、ルイス酸(L酸)において、強ルイス酸中心が多くあることによって、触媒が高温下でコークス化しやすくなり、触媒床層の圧力損失(pressure drop)を増大させ、水素の循環に影響を与え、水素圧縮機の運転が困難になり、グレードの低い水素化製品が生成してしまい、運転を停止させ、再反応させるしかなくなる。
【0015】
(3)触媒の比表面積、孔容積、特に孔径の分布は、触媒の活性に大きく影響し、適切な比表面積及び孔容積、並びに孔径の集中分布は、物質伝達、熱伝達及び拡散にとって、非常に重要である。
【0016】
(4)触媒の活性を向上させるための一つの方法として、活性成分の含有量を増加させることが挙げられる。しかし、活性成分の含有量の増加は、分散性不良という問題をもたらしてしまう。この問題の解決は、触媒を製造する過程において、多段階含浸を用いることにより実現することができ、すなわち、初期段階含浸した後、乾燥、焼成を行ってから、次の段階の含浸を行う。しかし、これにより、製造の過程が複雑となって、エネルギーの無駄が多くなるため、触媒の生産コストが高くなってしまう。
【0017】
また、含浸液を調製する時、有機酸又はアンモニア、エチレンジアミンなどといったキレート剤を添加することにより、一段階含浸を行うことが報告されている。しかし、大分子の有機酸・塩基を添加することは、後続の焼成過程における困難度を高めてしまい、アンモンニアの揮発性が強いことから、アンモニアの添加は含浸液の調製過程においてより多くのトラブルをもたらすとともに、活性成分の分散度を向上させる効果も顕著ではない。
【0018】
本発明の目的は、簡便に製造でき、活性成分の分散度が高く、触媒の活性及び選択性が良好で、安定性が高い水素化精製触媒及びその製造方法を提供することにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、複合溶剤で調製した塩基性含浸液を用いて、一段階含浸で触媒を製造する方法を提供するものである。
【0020】
本発明は、担体上に活性成分が担持され、活性成分には、コバルト、モリブデンが含まれる水素化精製触媒の製造方法において、アンモニア水とポリアミンキレート剤とを混合させて複合溶剤を調製し、複合溶剤に活性成分であるコバルトを含有する塩を添加し、コバルト塩を溶解させた後、モリブデン塩、又はモリブデン塩と、その他の活性成分、添加剤である塩類を添加すると共に溶解させて含浸液を調製し、担体を含浸させた後、エイジング(aging)、乾燥、活性化を行い、触媒を生成することを特徴とする。
【0021】
アンモニア水にポリアミンキレート剤を添加して調製した複合溶剤に、コバルト塩を溶解させる時、コバルトを予めアンモニア水に溶解させてからコバルトとキレート剤とを錯体形成させる必要がなく、コバルトと複合溶剤とが直接コバルト配位錯体を形成することから、触媒活性成分の溶解により有利である。
【0022】
本方法は、含浸液を調製する時、必要に応じて、ニッケル塩、タングステン塩及び/又はIA族の可溶性塩基又は炭酸塩化合物を添加してもよく、一般に、pH10以上であるように調整されることが最も好ましい。調製した含浸液は、清澄で、安定化しており、表面張力及び粘度が小さくて、また、アルカリ金属と担体とが相互作用することにより、担体の表面における酸性を低下させることができる。
【0023】
含浸液は、20〜30℃において調製可能であって、加熱過程を必要としない。本発明は、特に、多種類の活性成分、高含有量の活性成分の製造に好適であり、特に、コバルト・モリブデン含有量の多い触媒の製造に好適である。とりわけ、一段階同容積含浸を行うことにより活性成分を担体上に担持させる触媒の製造方法によれば、触媒において活性成分が高度に分散されると共に、触媒におけるB酸中心が有効に解消され、強L酸中心が弱められる。本発明に係る同容積含浸とは、含浸液の添加量が触媒担体の孔容積の70〜130%であることを意味する。
【0024】
本発明において、ポリアミンキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンのうちの1種類又は多種類であり、エチレンジアミンであることが好ましい。ポリアミンキレート剤の添加量は、コバルトの添加量に従い増減し、本発明では特に限定されないが、含浸液量の5〜10%(体積含有量)であることが最も好ましい。これより多いと、焼成過程において大量の有機物が分解してしまい、一方、これより少ないと、活性成分の溶解を促進し、活性成分の分散度を向上させる効果が得られない。含浸液を調製する時、アンモニア水の濃度は、本発明では特に限定されないが、各活性成分が完全に溶解され、活性成分とポリアミンキレート剤とが安定した錯体を形成するように、活性成分の添加量に基づいて調整すればよい。一般的には、活性成分が完全に溶解した後、含浸液の使用量が同容積含浸の基準を満たすように一定量のアンモニア水を添加してもよい。触媒を熱活性処理した後、一部のアンモニア分子は依然、強L酸部位に吸着している。これにより、触媒の酸性が弱められ、触媒の水素化選択性及び安定性が向上し、特に、反応過程における触媒のコークス化率が低下する。本発明の方法で担体の含浸を完了させた後、エイジング、乾燥、活性化して、触媒を生成する。熱活性化過程において、触媒は毒性ガスを生じず、一段階法の環境に優しい製造を実現する。エイジング、乾燥、活性化は、本発明では特に要求せず、いずれも従来技術中の反応条件を採用しており、活性化温度は350〜600℃であることが最も好ましい。
【0025】
本発明において、活性成分を溶解するための溶剤は、ポリアミンキレート剤を添加したアンモニア水であり、このような複合溶剤は、アンモニア水における活性成分の溶解性を向上させ、アンモニア水の使用量を減少させる他、ポリアミンキレート剤の添加は、触媒活性成分の分散度を明らかに向上させた。
【0026】
本発明において、含浸液は、塩基性含浸液であり、活性成分を溶解させた後、pH値が10以上であるように、好ましくは10〜12であるように含浸液を調整する。このように調製した含浸液は、清澄で、安定化しており、粘度が小さく、活性金属の分散性が良好である。
【0027】
本発明において、活性成分であるモリブデンは、モリブデン酸アンモニウムとして添加され、活性成分であるコバルトは、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩又は酢酸塩として添加されてよく、好ましくは硝酸塩又は/及び酢酸塩として添加される。それは、硝酸塩、酢酸塩の溶解性が良好であり、担体における活性成分の分布に利するためである。アルカリ金属添加剤は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの可溶性塩基から選ばれてもよく、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの可溶性炭酸塩から選ばれてもよい。本発明では、好ましくはカリウム添加剤であり、また、好ましくは水酸化物である。水酸化物の添加は、含浸液の塩基性を増強させることで、金属活性成分とポリアミンキレート剤とをよりよく錯体形成させ、含浸溶液の安定性を向上させ、また、アルカリ金属添加剤の添加は、触媒酸性を調整し、触媒の耐コークス化性を向上させる役割を果たしている。
【0028】
本発明において、触媒製造の温度条件は、特に限定されず、好ましくは20〜40℃であり、上述した含浸液で、形成された触媒を一段階含浸させ、80〜120℃で4〜5時間乾燥し、350〜600℃で3〜8時間焼成して、触媒を生成する。
【0029】
本発明において、触媒の担体は、特に限定されず、通常の担持型水素化精製触媒、特に、コバルト系、モリブデン系の担持型水素化精製触媒に使用される担体であれば、いずれも適用できる。例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム―酸化ケイ素のような高温無機酸化物である。担体は、改質されたものであってもよく、酸化アルミニウム系担体であることが最も好ましい。
【0030】
本発明の方法において、触媒の具体的な組成は、特に限定されず、必要に応じて、触媒の組成分を調整してよい。本発明の複合溶剤を用いて含浸液を調製したため、活性成分においてコバルト、モリブデンが含まれる時、生成された触媒は、他の方法で生成された触媒と比較して、より優れた効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】は本発明の触媒Aを使用した場合の透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】は比較用触媒Eの透過型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面は、具体的な実施形態における触媒AおよびEの活性成分の分散度の比較図である。図1は本発明の触媒Aを使用した場合の透過型電子顕微鏡写真であり、図2は比較用触媒Eの透過型電子顕微鏡写真である。図面において、黒い線状物は、活性成分の板状結晶に対応しており、縞の長さは板状結晶の長さであり、縞の積み重なる数は板状結晶の層数を表す。触媒のTEM写真により、MoS板状結晶の担体の表面における分散及び積層状況を統計するために、触媒表面の異なる領域を観察し、大量の電子顕微鏡写真を撮ったが、図1、2は代表的な透過型電子顕微鏡図である。図面より、触媒Aの活性成分の板状結晶は、長さ及び分布が均一であって、触媒Eの活性成分の板状結晶は、長さのばらつきが大きくて、分布が不均一であることがわかった。
【0033】
触媒を製造するために使用される主な原料の入手先及び主な物性パラメータは、以下の通りである。
【0034】
γ−Al
▲し▼博万霖化工科技有限公司により提供され、孔容積が0.90〜0.95ml/g、比表面積が300〜320m/gである。
【0035】
改質γ−Al
▲し▼博万霖化工科技有限公司により提供され、二酸化ケイ素の含有量が3.5%、孔容積が0.90〜0.95ml/g、比表面積が300〜320m/gである。
【0036】
α−Al
▲し▼博万霖化工科技有限公司により提供され、孔容積が0.85〜0.90ml/g、比表面積が280〜300m/gである。
【0037】
アンモニア水:
白銀良友化学試剤有限公司により提供され、濃度が25〜30wt%である。
【0038】
分析方法及び基準:
触媒の金属含有量の測定方法:原子吸収法を用いて触媒中の金属含有量を測定した。
【0039】
臭素価:SH/T 0630−1996石油製品の臭素価、臭素指数の測定法(電量分析)
【0040】
ジオレフィン:UOP326−07無水マレイン酸法
【0041】
触媒の炭素析出量/%:元素分析器で触媒中の炭素を測定する。
【0042】
窒素含有量:SH/T 0657、ASTM D4629 液体石油炭化水素中の痕跡量の窒素測定法
【0043】
硫黄含有量:SH/T 0253−92 軽質石油製品中の硫黄総含有量の測定法(電量法)
【0044】
水素化原料:蘭州石化により提供され、油製品の性質は表1に示す。
【表1】

【0045】
実施例1
30℃で、14.21gの酢酸コバルトを60mlのアンモニア水及び5mlのエチレンジアミンの混合溶液に添加し、撹拌して溶解させた。そして、モリブデン酸アンモニウム31.97g、硝酸ニッケル9.32gを更に添加し、撹拌して溶解させた後、水酸化カリウム3.49gを添加し、溶液の体積が80mlとなるようにアンモニア水を入れて調整した。100gのγ−Al担体を含浸させ、12時間エイジング化し、120℃で4時間乾燥させ、580℃で4時間焼成し、触媒Aが得られた。
【0046】
実施例2
25℃で、28.01gの酢酸コバルトを50mlのアンモニア水及び7mlエチレンジアミンの混合溶液中に添加し、撹拌して溶解させた。そして、モリブテンモリブデン酸アンモニウム14.21g、メタタングステン酸アンモニウム18.8gを添加し、撹拌して溶解させた後、水酸化リチウム2.38gを添加し、溶液の体積が100mlとなるようにアンモニア水を加えて調整した。100gのα−Al担体を含浸させ、12時間エイジング化し、100℃で5時間乾燥させ、350℃で5時間焼成し、触媒Bが得られた。
【0047】
実施例3
20℃で、7.1gの硝酸コバルトを55mlのアンモニア水及び5mlのエチレンジアミン四酢酸の混合溶液中に添加し、撹拌して溶解させた。そして、モリブデン酸アンモニウム42.67g、酢酸ニッケル7.8g、硝酸ストロンチウム6.60gを添加し、撹拌して溶解させた後、炭酸リチウム6.84gを添加し、溶液の体積が110mlとなるようにアンモニア水を加えて調整した。100gの改質γ−Al担体を含浸させ、12時間エイジング化し、200℃で4時間乾燥させ、400℃で3.5時間焼成し、触媒Cが得られた。
【0048】
実施例4
改質γ−Al粉末300gに、リン酸8.4mlを添加し、水140mlを加え、混練押出成形を行い、空気中120℃で乾燥させ、560℃で6時間焼成して、リン素含有の改質γ−Al担体が得られた。
【0049】
25℃で、28.01gの酢酸コバルトを50mlのアンモニア水及び9mlのトリエチレンテトラアミンの混合溶液中に添加し、撹拌して溶解させた。モリブデン酸アンモニウム14.21g、メタタングステン酸アンモニウム18.8gを更に添加し、撹拌して溶解させた後、溶液の体積が95mlとなるようにアンモニア水を加えて調整した。100gのリン素含有のγ−Al担体に含浸させ、12時間エイジング化し、100℃で5時間乾燥させ、350℃で5時間焼成し、触媒Dが得られた。
【0050】
比較例1
30℃で、14.21gの酢酸コバルトを60mlのアンモニア水に添加し、大半の酢酸コバルトが溶解するまでに撹拌し、5mlのエチレンジアミンを更に添加し、酢酸コバルトが完全溶解するまで撹拌し続けた。モリブデン酸アンモニウム31.97g、硝酸ニッケル9.32gを更に添加して、撹拌して溶解させた後、水酸化カリウム3.49gを添加し、溶液の体積が80mlとなるようにアンモニア水を加えて調整した。100gのγ−Al担体を含浸させ、12時間エイジング化し、120℃で4時間乾燥させ、580℃で4時間焼成し、触媒Eが得られた。
【0051】
触媒A及びEの活性成分の分散度比較を、図1及び図2に示す。
【0052】
比較例2
25℃で、28.01gの酢酸コバルトを20mlのエチレンジアミン及び80mlの水の混合溶液中に添加し、撹拌して溶解させた。モリブデン酸アンモニウム14.21g、メタタングステン酸アンモニウム18.8gを更に添加し、撹拌して溶解させた後、水酸化リチウム2.38gを添加し、100gのα−Al担体に含浸させ、12時間エイジング化し、100℃で5時間乾燥させ、350℃で5時間焼成し、触媒Fが作られた。
【0053】
比較例3
20℃で、7.1gの硝酸コバルトを110mlのアンモニア水に添加し、撹拌して溶解させ、100gの改質γ−Al担体に含浸させ、12時間エイジング化し、200℃で4時間干燥させ、400℃で3.5時間焼成した。モリブデン酸アンモニウム42.67g、醋酸ニッケル7.8g、硝酸ストロンチウム6.60gを110mlのアンモニア水に添加し、撹拌して溶解させた後、炭酸リチウム6.84gを添加した。100gの改質γ−Al担体を含浸させ、12時間エイジング化し、200℃で4時間乾燥させ、400℃で3.5時間焼成し、触媒Gが得られた。
【0054】
触媒B及びDの酸性比較結果を、表2に示す。
【表2】

【0055】
実施例5
上記の方法で得られた触媒A及びEに対して、それぞれ200時間の評価を行った。分解ガソリンの一段階水素化製品を原料として用い、原料の性質は表1に示した。触媒の評価は、100mlの断熱床水素化反応装置において行われた。6時間ごとにサンプリングし、製品のヨウ素価、硫黄含有量を分析した。触媒の200時間評価の平均値データを、表4に示す。
【0056】
触媒前硫化条件:シクロヘキサンに二硫化炭素を添加して、硫化油(硫黄含有量が1000μg/g)を調製した。2.8MPaの圧力で、水素ガスを通気し、触媒床の温度が240℃に昇温したところで、硫化油を加え、更に325℃に昇温させて、30時間保持した後、240℃に降温させ、硫化を終了した。
【0057】
評価条件:反応圧力が2.6MPa、入口温度が240℃、新鮮な原料油の体積空間速度が3.0h−1、新鮮な油換算で水素と油体積との比が300:1である。
【0058】
実施例6
触媒B、D及びFに対して1000時間評価を行った。評価原料、触媒前硫化条件、評価条件及び原料は、実施例4と同様とした。触媒評価における製品のヨウ素価、硫黄含有量の平均値データを、表5に示す。
【0059】
実施例7
上記の方法で得られた触媒C及びGに対して、それぞれ1000時間の水素化評価を行った。ディーゼルオイルを原料として用いた。原料の性質は表1に示した。触媒の評価は、100mlの断熱床水素化反応装置において行われた。6時間ごとにサンプリングして、製品の窒素、硫黄の含有量を分析した。触媒の1000時間評価の平均値のデータを、表6に示す。
【0060】
触媒前硫化条件:シクロヘキサンに二硫化炭素を添加して硫化油(硫黄含有量1000μg/g)を調製した。2.8MPaの圧力で、水素ガスを通気させ、触媒床の温度が240℃にしたところで、硫化油を加え、更に、325℃に昇温させて、30時間保持した後、240℃に降温させ、硫化を終了した。
【0061】
評価条件:反応圧力が2.8MPa、入口温度が280℃、新鮮な原料油の体積空間速度が3.0h−1、新鮮な油で換算して水素と油との体積比が300:1である。
【0062】
表4の評価結果によれば、本発明で提供した触媒の製造方法を用いることによって、触媒活性成分の分散度が向上し、触媒には、より優れた水素化活性及び水素化選択性が付与される。
【0063】
表5の評価結果によれば、本発明で提供した触媒の製造方法を用いることによって、触媒酸性が低減され、触媒には、優れた耐コークス化性及び水素化安定性が付与される。
【0064】
表6の評価結果によれば、本発明で提供した触媒の製造方法で製造された触媒は、より高い水素化脱硫活性、水素化脱窒素活性を示す。
【0065】
本発明の方法で製造された触媒は、水素化脱硫するとともに、モノオレフィンを最大限水素化し、飽和させることができ、特に硫黄含有量とジオレフィン含有量が変化しやすい油製品、また、高空間速度で運転するという要求に適している。触媒は、水素化の活性が良好で、選択性が高く、運転時間が長く、耐コークス化性が優れている。
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体に活性成分が担持され、活性成分には、コバルト、モリブデンが含まれる水素化精製触媒の製造方法において、
アンモニア水とポリアミンキレート剤とを混合させ、複合溶剤に調製し、
前記複合溶剤に活性成分であるコバルトを含有する塩を添加し、コバルト塩を溶解させ、
モリブデン塩、又はモリブデン塩と、その他の活性成分、添加剤である塩類を添加すると共に溶解させて、含浸液を調製し、
前記含浸液に担体を含浸させた後、エイジング(aging)、乾燥、活性化を行い、触媒を生成することを特徴とする、水素化精製触媒の製造方法。
【請求項2】
前記含浸液を調製する過程において、ニッケル塩、タングステン塩及び/又はIA族の可溶性塩基又は炭酸塩化合物を添加することを特徴とする、請求項1に記載の水素化精製触媒の製造方法。
【請求項3】
前記含浸液のpH値が10以上であることを特徴とする、請求項1に記載の水素化精製触媒の製造方法。
【請求項4】
前記ポリアミンキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンのうちの1種類又は多種類であることを特徴とする、請求項1に記載の水素化精製触媒の製造方法。
【請求項5】
前記ポリアミンキレート剤の添加量は、前記含浸液量の5〜10体積%であることを特徴とする、請求項1に記載の水素化精製触媒の製造方法。
【請求項6】
前記コバルト塩は、コバルトの硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩又は酢酸塩から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の水素化精製触媒の製造方法。
【請求項7】
前記コバルト塩は、コバルトの硝酸塩又は酢酸塩であることを特徴とする、請求項6に記載の水素化精製触媒の製造方法。
【請求項8】
前記担体は、耐高温無機酸化物であることを特徴とする、請求項1に記載の水素化精製触媒の製造方法。
【請求項9】
前記担体は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム―酸化ケイ素、又は、上述物質から改質したものであることを特徴とする、請求項8に記載の水素化精製触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−520302(P2013−520302A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554184(P2012−554184)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000418
【国際公開番号】WO2011/103699
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512221186)ペトロチャイナ カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】