説明

水素及び酸素の再結合触媒、再結合装置及び原子力プラント

【課題】有機ケイ素化合物を含むガスと接触した場合でも触媒性能を向上できる再結合装置を提供する。
【解決手段】再結合装置6は沸騰水型原子力プラントのオフガス系に設けられる。復水器3に接続されたオフガス系配管15は、再結合装置6に接続される。水素及び酸素の再結合触媒が充填された触媒層7が、再結合装置6内に配置される。その再結合触媒は、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が、20〜100%の範囲内に存在する。復水器3から排出された、有機ケイ素化合物(例えば、D5)、水素及び酸素を含むガスが、再結合装置6に導かれる。上記の再結合触媒を用いることによって、水素と酸素の再結合性能を従来の触媒よりも向上でき且つ触媒の初期性能をより長い期間にわたって維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素及び酸素の再結合触媒、再結合装置及び原子力プラントに係り、特に、沸騰水型原子力プラントのオフガス系に適用するのに好適な水素及び酸素の再結合触媒、再結合装置及び原子力プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
COなどによる地球温暖化が深刻になる状況化にあって、COを発生しない原子力発電プラントは、将来のエネルギー供給源として、年々、全世界で需要が高まっている。
【0003】
原子力プラントとして、沸騰水型原子力プラントがある。沸騰水型原子力プラントには、原子炉圧力容器内の炉心への冷却水の供給を、原子炉圧力容器に接続された再循環系配管に設けられた再循環系ポンプを駆動して行うタイプと、その冷却水の供給を、原子炉圧力容器の底部に設けられてインペラが原子炉圧力容器内に配置されたインターナルポンプを用いて行うタイプの二種類がある。インターナルポンプを有する後者のタイプの沸騰水型原子力プラントは、改良型沸騰水型原子炉プラントと呼ばれている。
【0004】
沸騰水型原子力プラントでは、原子炉圧力容器内の炉心に装荷された複数の燃料集合体に含まれる核燃料物質の核分裂によって発生する熱により冷却水を加熱して蒸気を発生させる。原子炉圧力容器内で発生したその蒸気がタービンに直接供給される。沸騰水型原子力プラントの運転中、炉心内の冷却水は、核分裂によって発生する中性子及びγ線等の放射線の照射により、放射線分解され、水素及び酸素が発生する。この水素及び酸素は原子炉内で発生する水蒸気とともにタービンに移行し、非凝縮性ガスとなる。この水素及び酸素の気相反応が生じると燃焼する危険性がある。このため、沸騰水型原子力プラントでは、水素と酸素の再結合を促進させる燃焼触媒を充填した再結合器をオフガス系の配管に設け、この再結合器で、放射線分解により発生した水素と酸素を再結合させて水にしている。
【0005】
復水器に接続されたオフガス系配管に再結合器を設け、この再結合器で水素と酸素の再結合を行うことは、特開昭60−86495号公報及び特開昭62−83301号公報に記載されている。
【0006】
水素及び酸素の再結合触媒として、ニッケルクロム合金又はステンレス等の金属担体表面にアルミナの層を設けて白金族貴金属粒子を担持した触媒(特開昭60−86495号公報参照)、目開きが0.5〜6mmの孔径となるように成形したスポンジ状の金属基材を用いて白金族貴金属粒子を担持した触媒(特開昭62−83301号公報参照)が提案されている。また、アルミナの担体にPdを担持した水素及び酸素の再結合触媒も提案されている(特許第2680489号公報参照)。また、水素及び酸素の再結合触媒ではないが、触媒金属として白金、ロジウム及びパラジウム等の貴金属を用いた触媒が、特開2008−55418号公報に記載されている。この触媒は、触媒金属クラスターが、このクラスターの70%が平均直径の0.6nm以内にあり、そして粒子の99%が平均直径の1.5nm以内にあるサイズ分布を有している。
【0007】
オフガス系の配管に設けられた再結合器に充填される再結合触媒が所定量以上の塩化物イオンを含んでいる場合には、沸騰水型原子力プラントの運転停止時などに再結合触媒に凝縮した水分に塩化物イオンが溶け込み、この塩化物イオンを含む水分が再結合触媒の下流に排出される可能性がある。この塩化物イオンが耐食性酸化皮膜を破壊するので、プラント構造部材において応力腐食割れが発生する可能性がある(特開2005−207936号公報参照)。
【0008】
原子炉格納容器内に配置した再結合器の例が、特開平11−94992号公報及び特開2000−88988号公報に記載されている。
【0009】
オフガス系配管が接続された復水器に設置されている低圧タービンでは、パッキング部のシール剤として亜麻仁油を使用していた。しかしながら、最近、タービン効率の低下を改善するために亜麻仁油より気密性を維持し易い有機ケイ素化合物を含む液状パッキンに変更するプラントが増加している。
【0010】
Karl Arnby et al. Applied Catalysis B, Characterization of Pt/Fe-Al2O3 catalysts deactivated by hexamethyldisiloxane, pp.1-7(2004)、Masahiko Matsumiya et al. Sensors and Actuators B, Poisoning of platinum thin film catalyst by hexamethyldisiloxane(HMDS) for thermoelectric hydrogen gas sensor, pp516-522(2003)、及びJean-Jacques Ehrhardt et al. Sensors and Actuators B, Poisoning of platinum surfaces by hexamethyldisiloxane(HMDS): Application to catalytic methane sensors, pp117-124(1997)は、室温でも液状パッキングから微量のヘキサメチルジシロキサン(HMDS)が発生し、このHMDSが可燃式水素センサーの電極に付着して可燃式水素センサーの性能を低下させることを報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭60−86495号公報
【特許文献2】特開昭62−83301号公報
【特許文献3】特許第2680489号公報
【特許文献4】特開2008−55418号公報
【特許文献5】特開2005−207936号公報
【特許文献6】特開平11−94992号公報
【特許文献7】特開2000−88988号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Karl Arnby et al. Applied Catalysis B, Characterization of Pt/Fe-Al2O3 catalysts deactivated by hexamethyldisiloxane, pp.1-7(2004)
【非特許文献2】Masahiko Matsumiya et al. Sensors and Actuators B, Poisoning of platinum thin film catalyst by hexamethyldisiloxane(HMDS) for thermoelectric hydrogen gas sensor, pp516-522(2003)
【非特許文献3】Jean-Jacques Ehrhardt et al. Sensors and Actuators B, Poisoning of platinum surfaces by hexamethyldisiloxane(HMDS): Application to catalytic methane sensors, pp117-124(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述したように、オフガス系配管が接続された復水器に設置されている低圧タービンにおいて、パッキング部のシール剤として、気密性を維持し易い液状パッキンを使用するプラントが増加している。しかしながら、Karl Arnby et al.、Masahiko Matsumiya et al.及びJean-Jacques Ehrhardt et al.の各報告事例を踏まえると、有機ケイ素化合物を含む液状パッキングを使用している沸騰水型原子力プラントで用いられる再結合触媒もケイ素の付着により性能が劣化する可能性があると考えられる。
【0014】
本発明の目的は、有機ケイ素化合物を含むガスと接触した場合において触媒性能を向上でき、且つ、触媒の初期性能をより長い期間にわたって維持できる水素及び酸素の再結合触媒、再結合装置及び原子力プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、多孔質担体と、多孔質担体に担持された触媒金属とを備え、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にある触媒金属の粒子数に対する、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にある触媒金属の粒子数の割合が、20〜100%の範囲内に存在することにある。
【0016】
再結合触媒では、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にある触媒金属の粒子数に対する、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にある触媒金属の粒子数の割合が、20〜100%の範囲内に存在するので、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にある触媒金属の粒子数の割合が増大し、再結合触媒が水素、酸素及び有機ケイ素化合物を含むガスに接触する場合において、再結合触媒における水素と酸素を再結合する触媒性能を従来の触媒よりも向上させることができ、且つ、従来の触媒よりも触媒の初期性能をより長い期間にわたって維持することができる。
【0017】
好ましくは、触媒金属として、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir及びAuから選ばれた少なくとも一種であることが望ましい。特に、触媒金属としては、Pt及びPdが最も好ましい。
【0018】
直径が0nmより大きく20nmの範囲内にある触媒金属の粒子数に対する、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にある触媒金属の粒子数の割合が、20〜100%の範囲内に存在する再結合触媒を充填した再結合装置は、復水器に接続されるオフガス配管に設置すること、または原子炉格納容器内に配置することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水素、酸素及び有機ケイ素化合物を含むガスが再結合触媒に接触する場合において、再結合触媒における水素と酸素を再結合する触媒性能を従来の触媒よりも向上させることができ、且つ、従来の触媒よりも触媒の初期性能をより長い期間にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の再結合装置が適用される沸騰水型原子力プラントのオフガス系の構成図である。
【図2】図1に示す再結合装置の構成図である。
【図3】図2に示す再結合装置の触媒層に充填した触媒Aの透過電子顕微鏡写真である。
【図4】従来の触媒の透過電子顕微鏡写真である。
【図5】再結合装置に用いる触媒におけるPt粒子の粒径分布を示す説明図である。
【図6】触媒層内でのガス流速と触媒層出口でのガス中の水素残存指数との関係を示す特性図である。
【図7】触媒において直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合を変化させた場合における、有機ケイ素化合物を含むガスと接触した状態での触媒の水素と酸素の再結合性能の変化を示す特性図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例3の再結合装置が適用される沸騰水型原子力プラントの原子炉格納容器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明者らは、沸騰水型原子力プラントのオフガス系の再結合器(再結合装置)入口でガスの定量分析を行った結果、有機ケイ素化合物である環状シロキサン化合物が検出されたので、有機ケイ素化合物を含むガスが、再結合器内で水素及び酸素の再結合触媒に接触した場合でも、触媒性能を向上させることができる再結合触媒を得るために、試行錯誤を繰り返して種々の検討を行った。
【0022】
この結果、発明者らは、担体である多孔質金属酸化物に、触媒金属である貴金属を担持させ、0nmより大きく20nm以下の範囲内の粒子直径を有する担持された全貴金属のうち1nmよりも大きく3nm以下の範囲内の粒子直径を有する貴金属が20〜100%を占める新たな再結合触媒(以下、新再結合触媒という)を製作し、この新再結合触媒では、有機ケイ素化合物を含むガスが接触した場合において、有機ケイ素化合物に対する耐久性が向上して、水素と酸素を再結合する触媒性能が従来の触媒よりも向上し且つ従来の触媒よりも触媒の初期性能をより長い期間にわたって維持できることを新たに見出した。
【0023】
従来の再結合触媒が、塩化白金酸溶液を浸漬させたアルミナを乾燥させて水素還元し、さらに、熱水洗浄により脱塩素処理をした後、焼成し、再度水素還元を実施して製作される。これに対し、発明者らが新たに製作した上記の新再結合触媒は、触媒金属源、例えば、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液を浸漬させたアルミナを乾燥させ、その後、高温で貴金属(例えば、白金)の水素還元を実施し、温水洗浄により脱塩素処理を施して製作される。
【0024】
再結合器に用いられる再結合触媒として、セラミック触媒及び金属触媒などがある。担体を粒状または柱状などに成形したものに活性成分を担持した触媒をセラミック触媒と称する。また、多孔性のスポンジ状金属基材上に担体と活性成分を有する触媒を金属触媒と称する。新再結合触媒は、セラミック触媒及び金属触媒のどちらのタイプでも製作することができる。
【0025】
新再結合触媒の形態としては、例えば、顆粒状または円柱状に整形した多孔質金属酸化物、発泡金属基材上にコーティングされた多孔質金属酸化物、及びコージェライトなどのセラミックス及びNi−Cr−Fe−Alなどの金属材料で作製されたハニカム基材上にコーティングされた多孔質金属酸化物に、活性成分を担持した形態などがある。
【0026】
多孔質金属酸化物に担持される触媒金属は、活性成分であり、ガスに含まれる水素を酸素と反応させてHOを生成する反応、すなわち、再結合反応を行わせるための反応場である。HとOをHOに変換可能な活性成分は、水素分子を解離して活性化する成分である貴金属(Pt、Pd、Rh、Ru及びIr)、及び酸素分子を活性化する成分であるAuから選ばれた少なくとも一種にすることが好ましい。特に、Pt及びPdは、再結合反応に必要な155℃の低温領域においてもHOへの変換性能が高いために、活性成分として好適である。
【0027】
新再結合触媒における触媒金属、例えば、貴金属の含有量は、新再結合触媒1Lに対して、1.5〜2.5gが好ましい。貴金属の含有量が1.5gより少ないと、貴金属含有量の減少により、貴金属の表面露出量の低下が顕著になり再結合性能が低下する。2.5gより多くなると、経済性の観点から好ましくない。
【0028】
新再結合触媒における触媒金属源は、貴金属微粒子及び貴金属化合物のいずれでもよいが、貴金属の水溶性塩が好ましい。新再結合触媒に含まれる塩素濃度を0〜5ppmとするためには、触媒金属源は塩素を含まないことが好ましい。例えば、好ましい触媒金属源として、貴金属の硝酸塩、アンモニウム塩、またはアンミン錯体が挙げられる。具体的には、テトラアンミン白金水酸塩溶液、テトラアンミン白金硝酸塩溶液、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液、ヘキサアンミン白金水酸塩溶液、硝酸パラジウム、ジニトロジアンミンパラジウム、及び金ナノコロイド溶液などが挙げられる。
【0029】
新再結合触媒の製作過程における還元方法としては、水素含有雰囲気中での加熱、またはヒドラジン等の還元剤による液相での反応を適用することができる。
【0030】
多孔質金属酸化物は、再結合反応中に活性成分(触媒金属)を安定に高分散保持する担体としての機能を有する。多孔質金属酸化物の比表面積を140m/g以上とすると、活性成分の多孔質金属酸化物上での分散性が高くなり好適である。その比表面積が140m2/gより小さいと、活性成分の分散性が多孔質金属酸化物上で低下するため、好ましくない。多孔質金属酸化物としては、γアルミナ、αアルミナ、チタニア、シリカ及びゼオライトのいずれかを用いることが望ましい。
【0031】
以上の発明者らによる検討結果を反映した、本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0032】
本発明の好適な一実施例である実施例1の再結合装置が適用される沸騰水型原子力プラントを、図1を用いて説明する。この沸騰水型原子力プラントは、原子炉1、高圧タービン(図示せず)、低圧タービン2、復水器3、オフガス系配管6、再結合装置(再結合器)9を備えている。原子炉は、原子炉圧力容器12及び原子炉圧力容器12内に配置した炉心(図示せず)を有する。核燃料物質を含む複数の燃料集合体が炉心に装荷されている。原子炉圧力容器12には複数の制御棒が設けられ、これらの制御棒が炉心に出し入れされることによって原子炉出力が制御される。
【0033】
高圧タービン(図示せず)及び低圧タービン2が主蒸気配管13によって原子炉圧力容器12に接続される。低圧タービン2は、高圧タービンの下流に配置されて復水器3に設置される。低圧タービン2のパッキング部にシール材として液状パッキングが用いられている。復水器3に接続された給水配管14が原子炉圧力容器12に接続される。給水ポンプ(図示せず)が給水配管14に設けられる。発電機(図示せず)が高圧タービン及び低圧タービン2の回転軸に連結される。
【0034】
オフガス系配管15が復水器3に接続され、空気抽出器4、排ガス予熱器5、再結合装置6、排ガス復水器8、希ガスホールドアップ装置9及び空気抽出器10がこの順番に下流に向ってオフガス系配管6に設けられる。オフガス系配管15は主排気筒11に接続される。
【0035】
本実施例の再結合装置6は、水素及び酸素の再結合触媒である触媒Aが充填されている触媒層7を容器内に設けている。
【0036】
沸騰水型原子力プラントの運転中、原子炉圧力容器12内の冷却水が、図示されていない再循環ポンプ(またはインターナルポンプ)で昇圧されて炉心に供給される。この冷却水は、炉心に装荷されている燃料集合体内の核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、主蒸気配管15を通って、高圧タービン及び低圧タービン2に順次供給され、高圧タービン及び低圧タービン2を回転させる。これらのタービンに連結された発電機も回転し、電力を発生する。
【0037】
低圧タービン2から排気された蒸気は復水器3で凝縮されて水になる。復水器3の底部に溜まっているこの水は、給水として、給水ポンプにより昇圧され、給水配管14を通って原子炉圧力容器1に供給される。
【0038】
復水器3内のガスが、空気抽出器4によって吸引され、オフガス系配管15内に排出される。タービン効率を向上させるために、復水器3内の圧力は、空気抽出器4の作用によって約5kPaの真空になっている。炉心内の冷却水は、核分裂によって発生する放射線(中性子及びγ線等)を照射されることによって水素及び酸素に分解される。この水素及び酸素は、炉心で発生する蒸気に随伴し、高圧タービン及び低圧タービン2を経て復水器3に排出される。復水器3に排出された水素及び酸素も、空気抽出器4の吸引作用により、オフガス系配管15に排出される。
【0039】
復水器3から排出された水素及び酸素を含むガスは、オフガス系配管15を通って流れ、排ガス予熱器5に到達する。そのガスが排ガス予熱器5で所定温度まで加熱される。再結合装置6内の触媒層7の触媒Aによる水素と酸素の結合反応は温度が高いほど促進されるので、排ガス予熱器5でのガスの加熱は再結合装置6内での水素と酸素の結合反応を促進させることになる。温度が上昇して排ガス予熱器5から排出されたガスは、再結合装置6に供給される。ガスに含まれている水素と酸素が、再結合装置6内の触媒層7に充填された触媒Aの作用によって再結合され、水になる。このため、再結合装置6から排出されるガスに含まれる水素の濃度が許容範囲内に低減される。再結合装置6から排出されたガスは、オフガス系配管15に設けられた排ガス復水器8にて冷却され、ガスに含まれている水分が除去される。その後、ガスは、希ガスホールドアップ装置9に供給される。希ガスホールドアップ装置9は、ガスに含まれる半減期の短いクリプトン及びキセノンの放射能を減衰させる。規定値以下の放射能になったガスが、空気抽出器10の作動により主排気筒11から外部環境に放出される。
【0040】
低圧タービン2では、パッキング部のシール剤として高い気密性が得られる、有機ケイ素化合物を含む液状パッキングを使用している。このため、有機ケイ素化合物、例えば、揮発性の環状シロキサン化合物(D類)が負圧の復水器3内に放出される。前述のHMDSはケイ素原子を2個含む鎖状化合物であるが、ケイ素数が3以上になると、環状シロキサン化合物(以下、D類という)になる場合もある。有機ケイ素化合物である直鎖型シロキサンが、復水器3内に放出される場合もある。
【0041】
揮発性のD類(ケイ素原子を含有する有機化合物)も、空気抽出器7の作用により、復水器3からオフガス系配管6に排出される。復水器3からオフガス系配管6へのD類の排出が、沸騰水型原子力プラントの起動時において原子炉出力が75%に到達するまでの期間で生じている。このため、その期間では、復水器3からオフガス系配管15に排出されるガスが、水素及び酸素以外に、D類を含んでいる可能性がある。
【0042】
D類を含むガスが復水器3からオフガス系配管15に排出されたとき、水素、酸素及びD類を含むガスが、再結合装置6の容器内に流入し、さらに、容器内の触媒層7に流入する。触媒層7に充填されている触媒Aは、D類を含むガスと接触しても水素と酸素の結合反応を促進させ、再結合装置6の出口での水素濃度を許容値以下(例えば、ドライガス換算で4%以下)に低減させることができる。
【0043】
本実施例の再結合装置6に用いられる、水素及び酸素の再結合触媒である触媒Aについて、説明する。触媒Aは前述した新再結合触媒の一例である。
【0044】
触媒Aは、以下に示す製造方法により製作された。すなわち、Ni−Cr合金製のスポンジ状の金属基材表面にアルミナをコーティングし、このアルミナを、貴金属源、例えば、ジニトロジアミン白金硝酸溶液に浸漬させてジニトロジアンミン白金硝酸溶液をアルミナに浸透させ、その後、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液が浸透したアルミナを乾燥させた。さらに、その後、500℃の雰囲気中においてアルミナに担持された白金の水素還元を実施し、温水洗後に触媒Aを得た。スポンジ状の金属基材は、目開き部1個あたりの
幅が2〜3mmである多数の孔を有している。また、金属基材は25mmの直径及び11mmの厚さを有する。製作された触媒Aの1L(リットル)あたりのPt含有量は、金属換算で2gである。
【0045】
触媒Aとの性能を比較するために、比較例としての触媒B及びCをそれぞれ製作した。触媒B及びCの製造方法を以下に説明する。
【0046】
まず、触媒Bの製造方法について説明する。Ni−Cr合金製のスポンジ状の金属基材表面にアルミナをコーティングし、このアルミナを塩化白金酸溶液に浸漬させて塩化白金酸溶液をアルミナに浸透させた。その後、塩化白金酸溶液が浸透したアルミナを乾燥させてアルミナに対して還元処理を行い、そして、熱水洗浄による脱塩素処理を、還元処理を行ったアルミナに対して施した。脱塩素処理を行ったアルミナを400℃で焼成し、その後、500℃で再度水素還元を実施して触媒Bを製作した。スポンジ状の金属基材は、目開きとして1個が2〜3mmである多数の孔を有している。また、触媒Bの金属基材の形状は、触媒Aの金属基材と同様に、25mmの直径及び11mmの厚さを有する。製作された触媒Bの1LあたりのPt含有量は、金属換算で2gである。
【0047】
触媒Cの製造方法を以下に説明する。Ni−Cr合金製のスポンジ状の金属基材表面にアルミナをコーティングし、このアルミナを塩化白金酸溶液に浸漬させて塩化白金酸溶液をアルミナに浸透させた。塩化白金酸溶液が浸透したアルミナを乾燥させてアルミナに対して還元処理を行い、熱水洗浄による脱塩素処理を、還元処理を行ったアルミナに対して施した。脱塩素処理を行ったアルミナを400℃で焼成し、さらに、350℃で再度水素還元を実施し触媒Cを製作した。スポンジ状の金属基材は、目開きとして1個が2〜3mmである多数の孔を有している。また、触媒Cの金属基材の形状は、触媒Aの金属基材と同様に、25mmの直径及び11mmの厚さを有する。製作された触媒Cの1LあたりのPt含有量は、金属換算で2gである。
【0048】
発明者らは、製作された触媒A、触媒B及び触媒Cのそれぞれを対象に、発泡金属を除いた触媒層部分(担体及び活性成分)におけるPt粒子を、透過電子顕微鏡により観察した。触媒Aの透過電子顕微鏡写真の一例を図3に示し、触媒Bの透過電子顕微鏡写真の一例を図4に示す。担体であるスポンジ状の金属基材の表面に担持されたPt粒子の直径は、透過電子顕微鏡で観察された各粒子の最大直径である。図3及び図4の各透過電子顕微鏡写真に基づけば、触媒Aでは、触媒Bよりも小さなPt粒子が分散していることが明らかである。
【0049】
発明者らは、触媒A、触媒B及び触媒Cのそれぞれの透過電子顕微鏡写真を用いて、それぞれの触媒ごとに、金属基材の表面に担持されたPt粒子を、この直径が0nmより大きく20nm以下の範囲内でカウントした。Pt粒子の直径ごとに粒子数を整理し、各触媒について、Pt粒子の粒径分布を求めた。触媒A、触媒B及び触媒CのそれぞれにおけるPt粒子の粒径分布を図5に示す。図5の横軸はPt粒子の直径の範囲を示している。横軸において、例えば、1−2はPt粒子の直径が1nmより大きく2nm以下であることを示し、7−8はPt粒子の直径が7nmより大きく8nm以下であることを示している。
【0050】
触媒Aでは、Pt粒子の数は、直径が1nmより大きく2nm以下の範囲でピークになり、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する割合が約76%である。
【0051】
触媒Bでは、Pt粒子の数は、直径が7nmより大きく8nm以下の範囲でピークになり、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する割合が2%である。
【0052】
触媒Cでは、Pt粒子の数は、直径が3nmより大きく4nm以下の範囲でピークになり、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する割合が10%である。
【0053】
触媒Aは、触媒B及び触媒Cよりも、微細なPt粒子、特に、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子を多く形成している。
【0054】
発明者らは、触媒A,触媒B及び触媒Cにおけるそれぞれの触媒層部分(発泡金属を除いた、担体及び活性成分(触媒金属)の部分)の比表面積を、液体窒素温度での窒素吸着によるBET法により調べた。この結果、触媒Aの比表面積が140〜180m2/gであり、触媒Bの比表面積が80〜120m2/gであり、触媒3の比表面積が20〜60m2/gであることが分かった。これらの結果によれば、触媒Aの製造方法によって、比表面積の大きな触媒が得られることが明らかである。
【0055】
触媒Aの製造方法により、触媒層部分の比表面積が140m/g以上になる触媒を得ることができ、得られた触媒において、Pt粒子の分散性が向上し、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する、直径が1nmより大きく3nmの範囲内にあるPt粒子の数の割合を極めて高くすることができる。一方、触媒B及び触媒Cのそれぞれの製造方法では、比表面積が140m/gよりも小さくなってPt粒子の分散性が低下し、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する、直径が1nmより大きく3nmの範囲内にあるPt粒子の数の割合が大幅に減少する。
【0056】
発明者らは、触媒Aに含まれる塩素濃度を調べた。約100℃の温水中に触媒Aを浸漬した後、温水中の塩素イオン濃度をイオンクロマトグラフ法により測定した。測定の結果、触媒Aに含まれた塩素濃度は5ppm以下であった。再結合触媒に含まれる塩素濃度が5ppmより多くなると、沸騰水型原子力プラント停止時などの、再結合触媒を充填した再結合装置内の温度が低下したときに生じる水分に、再結合触媒に含まれる塩化物が溶解する可能性がある。この塩素イオンを含む水が沸騰水型原子力プラントの構成部材に接すると、塩化物イオンによる、構成部材表面に形成された耐食性酸化皮膜の破壊、及びその構成部材に応力腐食割れを発生させる可能性が高まる。従って、再結合触媒に含まれる塩素濃度は5ppm以下にすることが望まれる。
【0057】
発明者らは、さらに、触媒A及び触媒Bの水素と酸素の再結合性能(触媒性能)を調べた。触媒A及びBを、内径28mmの2つの石英製反応管内に別々に5個充填した。触媒Aを充填した石英製反応管を便宜的に石英製反応管Aと称し、触媒Bを充填した石英製反応管を便宜的に石英製反応管Bと称する。再結合性能を調べる試験条件を以下に示す。石英製反応管A及び触媒B内にそれぞれ供給する反応ガスは、1.17%の水素、2.22%の酸素、0.21%の窒素、及び96.40%の蒸気を含んでいる。
【0058】
0℃、1気圧換算で0.58〜5.8Nm/sの流速で反応ガスを石英製反応管A及びBにそれぞれ供給した。石英製反応管A及びB内での触媒の入口温度は155℃である。石英製反応管A内に供給された反応ガスに含まれる水素及び酸素が触媒Aの作用によって再結合され、水素及び酸素の含有量が減少した反応ガスが石英製反応管Aから排出される。石英製反応管B内に供給された反応ガスに含まれる水素及び酸素が触媒Bの作用によって再結合され、水素及び酸素の含有量が減少した反応ガスが石英製反応管Bから排出される。石英製反応管A及びBから排出されたそれぞれの反応ガスから水分を除去した。水分が除去された後のドライベースにおけるそれぞれの反応ガスの水素濃度(実質的に触媒出口での水素濃度)を、ガスクロマトグラフ法で測定した。
【0059】
水素濃度の測定結果を図6に示す。図6に示す反応ガスの水素残存指標は、(1)式より求めた。水素残存指標は正に大きい程、未反応水素濃度が低い、すなわち、再結合触媒の触媒性能が高いことを意味している。
【0060】
水素残存指標=−Ln(触媒出口の水素濃度/触媒入口の水素濃度) …(1)
触媒Aの水素残存指標は、触媒Bよりも、0.58〜5.8Nm/sのガス流速の範囲において、触媒Bの水素残存指標よりも優れている(図6参照)。したがって、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が著しく大きい触媒Aは、触媒Bよりも水素と酸素の再結合性能に優れていることは明らかである。特に、沸騰水型原子力プラントでの再結合装置6内での通常のガス線速である3.0Nm/sでは、触媒Aの再結合性能が、触媒Bに比べて著しく向上している。さらに、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が触媒Cよりも大きい触媒Aは、触媒Cよりも水素と酸素の再結合性能が向上する。
【0061】
発明者らは、次に、触媒A,触媒B及び触媒Cのそれぞれについて有機ケイ素化合物に対する耐久性について調べた。有機ケイ素化合物に対する耐久性を調べるにあたって、発明者らは、触媒Aについては、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が異なる2種類の触媒Aを準備した。すなわち、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が、41%及び76%である各触媒Aである。直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合は、前述した触媒Aの製造方法において、アルミナに担持された貴金属の水素還元を実施する際の温度を変えることによって変えることができる。水素還元を実施する際の温度を、前述した触媒Aの製造方法における水素還元を実施する温度、すなわち500℃よりも高くした場合には直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が減少し、500℃よりも低くした場合には直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が増加する。
【0062】
上記したように、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合を変えることは、水素還元温度を変える以外に、白金のナノコロイド溶液を用いる方法を適用することによっても可能である。白金のナノコロイド溶液を用いた場合も、アルミナにPtを担持した後の水素還元温度を制御することにより、Ptナノ粒子の熱凝集程度を制御することが可能であり、結果、Ptの粒子径を適切に制御することが可能である。
【0063】
直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が異なる2種類の触媒A、及び触媒B及び触媒Cを、5個ずつ、内径28mmの別々の石英製反応管内に充填して、有機ケイ素化合物に対する耐久性を調べる試験を行った。本試験において用いた各石英製反応管において、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が41%である触媒Aを充填した石英製反応管を便宜的に石英製反応管A1、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が76%である触媒Aを充填した石英製反応管を便宜的に石英製反応管A2、触媒Bを充填した石英製反応管を便宜的に石英製反応管B1、及び触媒Cを充填した石英製反応管を便宜的に石英製反応管C1と称する。
【0064】
有機ケイ素化合物に対する耐久性を調べる試験の条件を以下に示す。この試験には、有機ケイ素化合物の代表例としてデカメチルシクロペンタシロキサン(以下、D5という)を用いた。該当する触媒が充填された石英製反応管A1、A2,B1及びC1にそれぞれ供給される反応ガスは、0.57%の水素、0.30%の酸素、0.22%の窒素、及び98.91%の蒸気を含んでいる。この反応ガスにD5を0.48ml/hで供給した。D5を含む反応ガスの各石英製反応管内での反応ガス流速は0℃、1気圧換算で3Nm/sであり、各石英製反応管内での触媒の入口温度は155℃である。それぞれの石英製反応管から排出されたそれぞれの反応ガスから水分を除去したドライベースにおけるそれぞれの反応ガスの水素濃度(実質的に触媒出口での水素濃度)を、ガスクロマトグラフ法で測定した。D5を0.48ml/hで供給する、有機ケイ素化合物に対する耐久性を調べる試験は、D5の触媒への影響を調べる加速試験である。
【0065】
発明者らは、ガスクロマトグラフ法で測定した、石英製反応管A1、A2,B1及びC1から排出されたそれぞれの反応ガスの水素濃度を用いて、各反応ガスにおいて水素濃度が4%に達する経過時間を調べた。この結果を図7に示す。図7の横軸は、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合である。本実施例に用いる触媒Aは、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が20〜100%である場合には、有機ケイ素化合物に対する耐久性が向上して、再結合触媒における水素と酸素を再結合する触媒性能を従来の触媒よりも向上させることができ、且つ、従来の触媒よりも触媒の初期性能をより長い期間にわたって維持することができる。
【0066】
直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合を20〜100%にすることによって、有機ケイ素化合物に対する耐久性が向上する理由は、以下のように推察される。アルミナに担持されたPt粒子の直径が減少することでPtの分散性が上昇し、Ptの表面露出量が増加する。シロキサン、例えば、D5は、担体及びPt上に蓄積して、徐々に、Ptの表面露出量を減少させ、触媒の再結合性能を低下させると考えられる。しかしながら、再結合触媒において直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が20%以上になることによって、再結合触媒でのPt表面露出量が顕著に増加した結果、再結合性能の低下が改善されたと推察される。
【0067】
本実施例の触媒Aは、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が、20〜100%の範囲内での76%であるので、有機ケイ素化合物に対する耐久性が向上し、有機ケイ素化合物を含むガスに接触した状態で水素と酸素の再結合性能を従来の触媒よりも向上させることができ、且つ、従来の触媒よりも触媒の初期性能をより長い期間にわたって維持することができる。このような触媒Aを充填した再結合装置6は、有機ケイ素化合物を含むガスが流れるオフガス系配管15に設置しても、有機ケイ素化合物を含むガスに含まれる水素と酸素の再結合性能を従来の触媒よりも向上させることができ、且つ、従来の触媒よりも触媒の初期性能をより長い期間にわたって維持することができる。
【実施例2】
【0068】
本発明の他の実施例である実施例2の再結合装置が適用される沸騰水型原子力プラントを、以下に説明する。本実施例の再結合装置も、実施例1の再結合装置6と同様に、図1に示す沸騰水型原子力プラントのオフガス系配管15に設けられる。本実施例の再結合装置は、実施例1の再結合装置6において触媒Aを以下に述べる触媒に替えた構成を有する。本実施例の再結合装置の他の構成は、実施例1の再結合装置6と同じである。本実施例の再結合装置に用いられる触媒は、金属触媒である触媒Aと異なり、セラミック触媒である。
【0069】
このセラミック触媒は、以下のようにして製造される。すなわち、担体であるγアルミナ粒子を、貴金属源、例えば、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液に浸漬させてジニトロジアンミン白金硝酸溶液をγアルミナ粒子に浸透させ、その後、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液が浸透したγアルミナ粒子を100〜120℃にて乾燥させる。500℃の雰囲気中においてγアルミナに担持された白金の水素還元を実施し、温水洗浄により脱塩素処理を施して本実施例の再結合装置に用いられる触媒、すなわち、Ptがγアルミナ粒子に担持された触媒が得られる。本実施例の再結合装置に用いられる、Ptがγアルミナ粒子に担持された触媒も、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にあるPt粒子の数に対する、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にあるPt粒子の数の割合が、20〜100%の範囲内での76%になる。
【0070】
本実施例も、実施例1で生じる効果を得ることができる。
【実施例3】
【0071】
本発明の他の実施例である実施例3の再結合装置は、沸騰水型原子力プラントの原子炉格納容器内に設置される。本実施例の再結合装置は、特開2000−88988号公報と同様に、原子炉格納容器内に配置され、触媒を充填した複数のカートリッジを有している。これらのカートリッジに充填される触媒は、実施例1で用いる触媒Aである。
【0072】
本実施例の再結合装置27,28は、図8に示すように、原子炉格納容器20内に配置される。再結合装置27,28は、それぞれ、触媒Aを充填した複数のカートリッジを有する。
【0073】
原子炉格納容器20の構成を、図8を用いて説明する。沸騰水型原子力プラントの原子炉1を構成する原子炉圧力容器12が、原子炉格納容器20内でドライウェル22に配置される。主蒸気配管13及び給水配管14が原子炉圧力容器12に接続される。制御棒駆動機構(図示せず)が収納される複数の制御棒駆動機構21が、原子炉圧力容器12の底部に設けられる。仕切り床29がドライウェル22内に設置される。
【0074】
原子炉格納容器20内は、ダイヤフロムフロア24によってドライウェル22と圧力抑制室23に区分される。プール水が充填された圧力抑制プール26が、圧力抑制室23内に形成される。ダイヤフロムフロア24に取り付けられた複数のベント管25は、一端がドライウェル22に解放され、他端が圧力抑制プール26のプール水に浸漬される。
【0075】
再結合装置27がドライウェル22内に配置され、再結合装置28が圧力抑制室23内でプール水の液面よりも上方に形成される空間内に配置される。再結合装置27,28は、原子炉格納容器20内で水素を含む流体が流れまたは滞留する位置に配置することが好ましい。
【0076】
原子炉格納容器20内、すなわち、ドライウェル22、及び圧力抑制室23内でプール水の液面よりも上方に形成される空間に水素が存在するのは、主蒸気配管13等の破断により冷却材喪失事故が発生したときである。冷却材喪失事故時において主蒸気配管13等の破断個所から噴出する蒸気に水素及び酸素が含まれている。この水素及び酸素が、再結合装置27,28内の触媒Aによって再結合されて水になり、ドライウェル22内、及び圧力抑制室23内でプール水の液面よりも上方に形成される空間内の水素濃度が低減される。
【0077】
ドライウェル22内、及び圧力抑制室23内でプール水の液面よりも上方に形成される空間内においても、有機ケイ素化合物が放出される可能性がある。原子炉格納容器20内に配置され、触媒Aを用いた再結合装置27,28も、実施例1における再結合装置6で生じる各効果を得ることができる。
【0078】
再結合装置27,28のそれぞれに充填する触媒として、触媒Aの替りに、実施例2で用いられる触媒を用いてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…原子炉、2…タービン、3…復水器、4,19…空気抽出器、6,27,28…再結合装置、7…触媒層、12…原子炉圧力容器、13…主蒸気配管、20…原子炉格納容器、22…ドライウェル、23…圧力抑制室、24…ダイヤフロムフロア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質担体と、前記多孔質担体に担持された触媒金属とを備え、直径が0nmより大きく20nmの範囲内にある前記触媒金属の粒子数に対する、直径が1nmより大きく3nm以下の範囲内にある前記触媒金属の粒子数の割合が、20〜100%の範囲内に存在することを特徴とする水素及び酸素の再結合触媒。
【請求項2】
前記多孔質担体が、多孔質金属酸化物である請求項1に記載の水素及び酸素の再結合触媒。
【請求項3】
前記多孔質金属酸化物が、γアルミナ、αアルミナ、チタニア、シリカ及びゼオライトのいずれかである請求項2に記載の水素及び酸素の再結合触媒。
【請求項4】
前記触媒金属がPt、Pd、Rh、Ru、Ir及びAuから選ばれた少なくとも一種である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水素及び酸素の再結合触媒。
【請求項5】
ケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、再結合触媒が充填された触媒層とを備え、前記再結合触媒が、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された再結合触媒であることを特徴とする再結合装置。
【請求項6】
原子炉圧力容器から排出された蒸気を凝縮する復水器と、前記復水器に接続されて前記復水器から排出されたガスを導くオフガス系配管と、前記オフガス系配管に設けられた再結合装置とを備え、
前記再結合装置が請求項5に記載された再結合装置であることを特徴とする原子力プラント。
【請求項7】
原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器を取り囲む原子炉格納容器と、前記原子炉格納容器内に配置された再結合装置とを備え、
前記再結合装置が請求項5に記載された再結合装置であることを特徴とする原子力プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−230064(P2011−230064A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103115(P2010−103115)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【出願人】(000226219)日揮ユニバーサル株式会社 (12)
【Fターム(参考)】