説明

水素吸蔵合金容器用水素充填設備、水素吸蔵合金容器用水素充填装置、水素吸蔵合金容器への水素充填方法

【課題】水素吸蔵合金容器に水素を充填する際に、効率良く容器を冷却することを可能にする水素充填設備を提供する。
【解決手段】水素吸蔵合金容器1に水素を供給する配管14と、水素吸蔵合金容器1を冷却するための冷却媒を通す通路11から成り、この通路11で水素吸蔵合金容器1を配置するための空間を取り囲むように形成された冷却部とを少なくとも備えて、水素充填設備を構成する。さらに、冷却媒を通す通路11と水素吸蔵合金容器1との間に熱伝導が良好な金属球12等の熱伝導材を介在させて、水素吸蔵合金容器1の冷却を行うように、水素充填設備を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させて使用する水素吸蔵合金容器に対して、水素を充填させるための水素充填設備及び水素充填装置に係わる。また本発明は、水素吸蔵合金容器への水素充填方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
水素吸蔵合金は、自己の体積よりも遥かに大容量の水素ガス(例えば、常温常圧で100倍以上の体積)を、繰り返し吸収/放出させることが可能な合金である。
水素の吸収/放出を利用した製品には、ヒートポンプや冷凍機等の他、特に期待されている装置として、水素貯蔵装置や水素精製装置等が挙げられる。
【0003】
水素吸蔵合金は、容易に水素化し吸蔵量の多い金属(発熱型合金)と、水素放出能力の高い金属(吸熱型金属)とを混合した合金である。水素吸蔵時には発熱反応が生じ、水素放出時には吸熱反応が生じる。
従って、水素吸蔵合金に対して、連続的に水素を吸収/放出させようとした場合、合金の温度変化が進行することによって、充分な量の水素を吸収/放出させる前に、反応の進行が停滞してしまう虞がある。
使用に適した温度範囲は、合金の種類によって異なるが、水素吸蔵時は熱の放出を、水素放出時には熱の供給を、周囲との熱交換によって補うことが必要と考えられている。
【0004】
このため、前述した各種装置において、水素吸蔵合金は、合金の温度を制御するための部材を備えた容器(水素吸蔵合金容器)の内部に配置される。
【0005】
前述したように、水素吸蔵合金が水素を吸蔵する際には発熱反応が生じるので、水素吸蔵合金容器に水素を充填するときには、発熱に対応して、水素吸蔵合金容器を冷却する必要がある。
【0006】
従来は、例えば、ファンを用いて、水素吸蔵合金容器を空冷している(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開2007−187174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ファンを用いた空冷では、冷気が直接水素吸蔵合金容器に当たる他に、冷気の一部が水素吸蔵合金容器に当たらずに拡散するため、冷却効率が充分ではない。
そして、冷却効率が充分ではないため、水素吸蔵速度が遅くなり、充填に長い時間がかかってしまう。
【0009】
一方、水素吸蔵合金容器を冷却水等の液体で直接冷却することも考えられるが、水等の液体では、水素吸蔵合金容器が腐食する虞がある。
【0010】
上述した問題の解決のために、本発明においては、水素吸蔵合金容器に水素を充填する際に、効率良く容器を冷却することを可能にする水素充填設備及び水素充填装置、並びに、水素充填方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の水素充填設備は、水素吸蔵合金容器に水素を充填するための設備であって、水素吸蔵合金容器に水素を供給する配管と、水素吸蔵合金容器を冷却する冷却部とを少なくとも備え、この冷却部は、水素吸蔵合金容器を冷却するための冷却媒を通す通路(以下、冷却媒通路という。)から成り、水素吸蔵合金容器を配置するための空間を通路で取り囲むように形成されており、通路を水素吸蔵合金容器に直接接触させて、或いは、通路と水素吸蔵合金容器との間に熱伝導が良好な熱伝導材を介在させて、水素吸蔵合金容器の冷却がなされるものである。
【0012】
上述の本発明の水素充填設備において、さらに、通路と水素吸蔵合金容器との間に熱伝導が良好な熱伝導材を介在させており、この熱伝導材が金属球である構成とすることが可能である。
【0013】
上述の本発明の水素充填設備において、さらに、通路がコイル状に巻いた配管である構成とすることが可能である。
【0014】
上述の本発明の水素充填設備において、さらに、冷却媒が水である構成とすることが可能である。
【0015】
本発明の水素充填装置は、水素吸蔵合金容器に水素を充填する充填装置であって、水素吸蔵合金容器に水素を供給する供給部と、水素吸蔵合金容器を冷却する冷却部とを少なくとも備え、この冷却部は、水素吸蔵合金容器を冷却するための冷却媒を通す通路(冷却媒通路)から成り、水素吸蔵合金容器を配置するための空間を通路で取り囲むように形成されており、通路を水素吸蔵合金容器に直接接触させて、或いは、通路と水素吸蔵合金容器との間に熱伝導が良好な熱伝導材を介在させて、水素吸蔵合金容器の冷却がなされるものである。
【0016】
本発明の水素吸蔵合金容器への水素充填方法は、水素吸蔵合金容器を冷却するための冷却媒を通す通路(冷却媒通路)を、水素吸蔵合金容器に直接接触させ、或いは、水素吸蔵合金容器との間に熱伝導が良好な熱伝導材を介在させ、通路に冷却媒を通して水素吸蔵合金容器を冷却すると共に、水素吸蔵合金に水素を供給して、水素を水素吸蔵合金容器に充填させるものである。
【発明の効果】
【0017】
上述の本発明の水素充填設備、水素充填装置、並びに、水素充填方法によれば、冷却媒を通す通路(冷却媒通路)を水素吸蔵合金容器に直接接触させる、或いは、通路と水素吸蔵合金容器との間に熱伝導が良好な熱伝導材を介在させるので、水素吸蔵合金容器を効率良く冷却することができる。
これにより、水素の充填の際に生じた熱を充分に除去することができるので、水素吸蔵合金容器への水素の充填を速くすることが可能になる。
従って、高速で水素の充填を行うことができる、水素充填設備を実現することができる。
【0018】
本発明の水素充填設備において、さらに、通路と水素吸蔵合金容器との間に熱伝導が良好な熱伝導材を介在させており、この熱伝導材が金属球である構成としたときには、金属球を水素吸蔵合金容器の形状に追随させることができる。
これにより、使用する水素吸蔵合金容器の形状を問わずに、効率良く冷却を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面等を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
本発明の一実施の形態として、水素充填設備の概略構成図を、図1に示す。
この水素充填設備は、水素吸蔵合金容器1を冷却するための冷水循環コイル11と、水素吸蔵合金容器1に水素(H)を供給する配管14と、配管14の途中に設けられた圧力センサー13と、配管14の途中に設けられた弁V−1とを有している。
【0021】
水素吸蔵合金容器1に水素(H)を供給する配管14へは、図示しない水素ボンベ等から水素が供給される。
【0022】
冷水循環コイル11は、詳細を後述するように、配管をコイル状に形成して、その配管の内部に冷水を通して循環させる構成である。
そして、この冷水循環コイル11によって、水素吸蔵合金容器1を配置するための空間を取り囲んでいる。
【0023】
冷水循環コイル11には、好ましくは、熱伝導性の高い材料(銅等)を用いる。
【0024】
さらに、本実施の形態においては、冷水循環コイル11と水素吸蔵合金容器1との隙間に、熱伝導性の良好な金属球12を充填している。
これにより、水素吸蔵合金容器1から、効率良く熱を逃がして冷却することが可能になる。
【0025】
金属球12としては、例えば、銅の球を使用することができる。
金属球12の大きさは、例えば、直径5mm程度の小さいものとすると、充填性が良い。
【0026】
金属球12の充填のやり方としては、以下に挙げる態様が考えられる。
(1)金属球12を先に全部入れておいて、水素吸蔵合金容器1を押し込んで埋める。
(2)水素吸蔵合金容器1を入れてから、金属球12を入れて水素吸蔵合金容器1を埋める。ただし、このやり方では、水素吸蔵合金容器1の底面の下には金属球12が入らないので、水素吸蔵合金容器1の底面の下にも金属球12を入れるためには、水素吸蔵合金容器1を置く所を底上げする。
(3)先に途中まで金属球12を入れておく。そして、水素吸蔵合金容器1の一部を金属球12に埋める、或いは、水素吸蔵合金容器12を置く。その後、さらに上方に金属球12を入れて、水素吸蔵合金容器1を埋める。
【0027】
水素吸蔵合金容器1への水素の充填が終了した後に、水素吸蔵合金容器1を配管14から取り外して、水素充填設備から取り出す。
このとき、金属球12が充填されたままであると、水素吸蔵合金容器1を取り出しにくい。従って、好ましくは、水素吸蔵合金容器1を取り出しやすくするために、金属球12を除去してから、水素吸蔵合金容器1を取り出す。
【0028】
なお、水素吸蔵合金容器1を取り出す時には、水素吸蔵合金容器1の定格温度(例えば、〜50℃)を超えることがないように、充填設備を構成する。例えば、直射日光等が水素吸蔵合金容器やその付近に当たらないようにする。
【0029】
また、除去した金属球12は、使い捨てにするのではなく、回収して次回以降の水素充填作業に再利用することが望ましい。
【0030】
金属球12を回収する場合には、例えば、底板の一部又は全体に、開閉するシャッタを設けると良い。
そして、水素吸蔵合金容器1を取り出す前にシャッタを開けて、金属球12を底板から外部に取り出して回収する。これにより、金属球12を回収し、かつ、水素吸蔵合金容器1を容易に取り出すことができる。
次に金属球12を充填する際には、再びシャッタを閉じる。
【0031】
シャッタの開閉や、金属球12の回収や充填等の各動作は、自動制御で行われるように構成することも可能である。
【0032】
図1の水素吸蔵合金容器1付近の拡大断面図を、図2に示す。図2では、冷水循環コイル11を破線で示している。
冷水循環コイル11は、コイル状に隙間なく巻かれた配管から成る。
そして、この冷水循環コイル11の内部の空間に、水素吸蔵合金容器1が配置されており、さらに、冷水循環コイル11と水素吸蔵合金容器1との隙間に、金属球12が充填されている。
【0033】
図1に示す水素充填設備において、水素吸蔵合金容器1に水素を充填するには、水素吸蔵合金容器1を充填ラインの配管14に取り付けて、この配管14に用いられた弁V−1を開にする。これにより、水素吸蔵合金容器1に水素が供給される。
そして、所定の時間が経過し、充填が充分進行したと考えられるタイミングで、弁V−1を閉にし、圧力の降下量で平衡状態に達したこと(満充填)を判断する。
ここで、水素吸蔵の途中であれば、弁V−1を閉にすると、水素吸蔵合金容器1の内部の水素が、水素吸蔵合金に吸収されるため、水素吸蔵合金容器1の内部の圧力が急激に降下する。
一方、水素吸蔵がほぼ終了となると、水素吸蔵合金容器1の内部の水素が、もう水素吸蔵合金には吸収されなくなるため、圧力の降下はほとんどない。
そこで、圧力の変化量の基準を予め決めておき、その基準値を下回れば、満充填と判断する。
【0034】
このようにして満充填を判断する方法のフローチャートを、図3に示す。
図3に示すように、まず、ステップS1において、弁V−1を開いて、水素吸蔵合金容器1への水素の充填を開始する。
【0035】
次に、水素の充填開始から所定の時間が経過した後、ステップS2に進み、弁V−1を閉じる。
続いて、ステップS3に進み、圧力を判定する。ここでは、圧力センサー13で測定される測定圧力変化量ΔPを、基準圧力変化量ΔP1と比較する。
そして、測定圧力変化量ΔP>基準圧力変化量ΔP1である場合には、充填途中であると判断して、ステップS1に戻る。ステップS1において、弁V−1を開いて水素の充填を再開する。
一方、測定圧力変化量ΔP≦基準圧力変化量ΔP1である場合には、満充填であると判断して、ステップS4に進む。ステップS4において、弁V−1は閉じたままで、水素吸蔵合金容器1への水素の充填を終了する。
【0036】
水素の充填開始から圧力を判定するまでの、所定の時間は、水素を供給する圧力や流量、水素吸蔵合金容器1の入口の径や水素吸蔵合金容器1の内容積、等の条件を考慮して、適切な長さに設定する。例えば、1時間に設定する。
【0037】
なお、図3のフローチャートで説明した手順を、コンピュータのプログラム等によって自動で実行させることにより、充填設備を自動化することが可能である。
【0038】
冷水循環コイル11内を循環させる冷水の温度、並びに、水素の充填圧力は、水素吸蔵合金のPCT線(圧力−組成等温線)から決定する。
好ましくは、冷水の温度を外気よりやや低めにする。例えば、室温25℃に対して、15℃程度とする。
【0039】
本実施の形態の水素充填設備では、熱伝導材として、金属球12を用いているので、水素吸蔵合金容器1の外形に金属球12を追随させることができる。
このため、冷水循環コイル11に取り囲まれた空間に収納可能であれば、水素吸蔵合金容器1の形状は問わない。
例えば、図4Aに示すような矩形の水素吸蔵合金容器1や、図4Bに示すような円筒形の水素吸蔵合金容器1を使用することができる。
【0040】
これらのうち、矩形の水素吸蔵合金容器としては、例えば、本出願人が先に提案した、図5及び図6に概略図を示す水素吸蔵合金容器(特願2007−25778号を参照)を使用することができる。
【0041】
図5は水素吸蔵合金容器の一部を切開した概略斜視図を示し、図6は水素吸蔵合金容器の概略断面図を示している。
図5及び図6に示す水素吸蔵合金容器1は、厚さに対して幅及び長さが大とされた、略扁平型の水素吸蔵合金容器である。
この水素吸蔵合金容器は、扁平型の長手方向(長さ方向)に沿って順に、胴体部2と、肩部3と、接続部4とを有している。
【0042】
胴体部2の内部には、数枚のフィン5が並行して配置されており、これらのフィン5によって胴体部2の内部が複数の区画に仕切られている。そして、フィン5により仕切られたそれぞれの区画が、水素吸蔵合金の配置部6となっている。なお、フィン5は、胴体部2の内部のみに設けられており、肩部3の内部には設けられていない。
また、肩部3は、胴体部2から接続部4に向って傾斜する傾斜領域3aを有する、所謂テーパー状とされている。この傾斜領域3aは、接続部4側が細くなった先細の形状であり、肩部3の先細形状の先端側が、接続部4によって外部(水素を供給する配管等)と通気可能に接続される。
肩部3のうち、主として接続部4との連結部以外の領域が傾斜領域3aとされ、この傾斜領域3aの長手方向に沿って切断した断面が台形となっている。
このような傾斜領域3aを有する肩部3を設けたことにより、胴体部2における水素吸蔵合金の崩れが抑制され、水素吸蔵合金の充填もスムーズに行うことができ、さらに、水素吸蔵合金の交換のための取り出しを、容器を破壊することなく行うことができる。
【0043】
そして、水素吸蔵合金容器1の肩部3の内部は、図6に示すように、例えば、水素吸蔵合金に比して熱伝導率の高い材料による、弾性体(例えば、ウール状の金属繊維)の配置部7とされている。
このように、水素吸蔵合金容器1が扁平型であることにより、水素吸蔵合金容器1を薄くして、熱交換特性の向上を図ることができる。これにより、水素吸蔵合金容器1に、熱交換特性の向上のための他の部材を設ける必要がない。
【0044】
上述の本実施の形態の水素充填設備によれば、冷水循環コイル11が水素吸蔵合金容器1を配置するための空間を取り囲むように形成され、冷水循環コイル11と水素吸蔵合金容器1との間に、熱伝導が良好な金属球12を介在させていることにより、水素吸蔵合金容器1を効率良く冷却することができる。
これにより、水素の充填の際に生じた熱を充分に除去することができるので、水素吸蔵合金容器1への水素の充填を速くすることが可能になる。
従って、高速で水素の充填を行うことができる、水素充填設備を実現することができる。
【0045】
前記特許文献1に記載された設備では、水素吸蔵合金容器を、水素吸蔵合金容器がちょうど納まるラックに収納していたので、任意の形状の水素吸蔵合金容器に対応させることはできない。
これに対して、本実施の形態の水素充填設備では、金属球12によって水素吸蔵合金容器1の形状に追随させることができるため、冷水循環コイル11に入る大きさであれば、水素吸蔵合金容器1の形状は問わない。
【0046】
上述の実施の形態では、冷水循環コイル11が上下に隙間なく配置されているが、本発明は、冷水循環コイル等のコイル状配管の上下に隙間がある場合も含むものである。
なお、コイル状配管の隙間が金属球の直径より大きい場合には、コイル状配管の外側を他の部材で囲って、金属球が外にこぼれ落ちないようにする。
【0047】
上述の実施の形態では、冷水循環コイル11及び金属球12、水素吸蔵合金容器1に水素を充填するための配管14、圧力センサー13、並びに、弁V−1を有する、充填設備を構成していた。
これに対して、水素吸蔵合金容器に水素を充填するための配管のうちの、水素吸蔵合金容器と接続された部分を含む、水素を水素吸蔵合金容器に供給する供給部と、冷水循環コイル等の冷却媒通路から成る冷却部とを少なくとも備えて、一体の水素充填装置を構成することも可能である。
この水素充填装置内に、弁や圧力センサーを設けても構わない。さらにまた、弁や圧力センサーの動作、金属球の回収や充填を、自動制御で行うように、水素充填装置を構成しても構わない。
本発明の水素充填装置は、水素を水素吸蔵合金容器に供給する供給部と、冷却部とを少なくとも備えた一体の装置を構成するものである。そして、冷却部は、水素吸蔵合金容器を冷却するための冷却媒の通路(冷却媒通路)を水素吸蔵合金容器に直接接触させる、或いは、水素吸蔵合金容器との間に熱伝導材を介在させる、構成である。
【0048】
次に、本発明の他の実施の形態として、本発明を適用した急速充填設備の概略構成図を、図7に示す。
【0049】
この急速充填設備では、図1に示した実施の形態と同様に、冷水循環コイル11及び金属球12、水素吸蔵合金容器1に水素を充填するための配管14、圧力センサー13、並びに、弁V−1を、基本構成として有している。
そして、この急速充填設備では、配管14及び冷水循環コイル11の組を4組備えており、これら4組のそれぞれに対して、水素吸蔵合金容器1への水素の充填を同時に並行して行うことが可能になっている。
【0050】
4組の配管の分岐点の手前には、それぞれ弁V−2が設けられ、この弁V−2により、同時に並行して水素の充填を行う配管14を変えることが可能である。水素吸蔵合金容器1が接続されていない配管14の弁V−2は閉にし、水素吸蔵合金容器1が接続されている配管14にのみ水素を供給する。
圧力センサー13は、4組の配管14が分岐する手前に、配置されている。
圧力センサー13と弁V−1との間の配管には、安全弁15が設けられている。
圧力センサー13及び弁V−1は、制御装置16で制御される。弁V−1には、エアー差動弁を用いて、制御装置16の制御により開閉するように構成する。
水素は、2本のH容器21から供給される。
このH容器21と弁V−1との間には、水素の供給を安定させるために、弁や圧力計(PG)等が設けられている。
また、2本のH容器(水素ボンベ)21に近い部分の配管に、弁V−3が接続されている。この弁V−3は、大気に開放された配管17に接続されている。水素ボンベ21の取り替え時等、ライン内部を大気にさらした際は、配管17内に水素を入れる工程と弁V−3を開放する工程とを繰り返すことにより、配管17内を水素で満たすことができる。
【0051】
この急速充填設備において、制御装置16による水素の供給の制御を、コンピュータのプログラム等によって自動で行うことにより、設備を自動化することが可能である。
さらに、金属球の充填や除去、水素吸蔵合金容器の取り付けや取り外しも、必要な構成(金属球供給手段や容器を取り付け取り外すための手段)を設けることにより、自動化することが可能である。
【0052】
上述の本実施の形態の急速充填設備によれば、図1に示した水素充填設備と同様に、冷水循環コイル11が水素吸蔵合金容器1を配置するための空間を取り囲むように形成され、冷水循環コイル11と水素吸蔵合金容器1との間に金属球12を介在させていることにより、水素吸蔵合金容器1を効率良く冷却することができる。
これにより、水素の充填の際に生じた熱を充分に除去することができるので、水素吸蔵合金容器1への水素の充填を速くすることが可能になる。
従って、高速で水素の充填を行うことができる、水素充填設備を実現することができる。
【0053】
また、本実施の形態の急速充填設備によれば、配管14及び冷水循環コイル11の組を4組備えており、これら4組のそれぞれに対して、水素吸蔵合金容器1への水素の充填を同時に並行して行うことが可能になっている。
これにより、2個〜4個の水素吸蔵合金容器1に、同時に水素を充填することができるため、待ち時間を節約することができる。そして、短時間で複数個の水素吸蔵合金容器1を満充填することが可能になる。
【0054】
本実施の形態の急速充填設備を応用して、H容器や、配管及び冷水循環コイルの組の数をさらに多くして、比較的大きい規模の水素ステーションを構成することも可能である。
【0055】
なお、図7では、設備全体で圧力センサー13を1個のみ設けていたが、それぞれの水素吸蔵合金容器1のライン毎に圧力センサーを設けても構わない。
【0056】
本発明において、水素吸蔵合金容器を冷却するための冷却媒は、水に限らず、液体(不凍液等)又は気体(空気、窒素やその他の気体)のうち、冷却媒として使用することが可能な物質であれば良い。
上述の実施の形態のように、冷却媒として水を使用すると、冷却媒のコストを小さくすることができる。
【0057】
冷却媒は、常時流すことも可能であり、水素の充填時を含む所定の期間に流すことも可能である。コストや冷却効率等を考慮して、冷却媒を流す期間を適切な期間に設定すればよい。
【0058】
冷却媒を所定の期間に流す場合の開始のタイミングとしては、大別して、以下の2通りが考えられる。
(1)水素吸蔵合金容器を取り付けた前後から開始する。なお、早めに流し始めて、予め金属球を冷やしておくことも考えられる。
(2)水素の供給の開始時の前に、又はほぼ同時に開始する。
【0059】
一方、冷却媒を所定の期間に流す場合の停止のタイミングとしては、水素の供給を停止して、水素吸蔵合金容器を取り出す前後が考えられる。
なお、水素吸蔵合金容器の取り出しを、人手で行う場合には、取り出しの前に冷却媒を停止しておくと、手が冷えすぎないので取り出しやすい。
【0060】
本発明において、冷却媒通路から成る冷却部は、図2に示した冷水循環コイル11のような配管に限らない。例えば、水素吸蔵合金容器を取り囲む、円筒状の通路としても良い。ただし、この構成では、円筒状の通路の部分で圧力が低下するので、流れに偏りを生じないように、冷却媒の流量や圧力を設定する。
冷却媒を気体とする場合には、重力の影響が小さく、冷却媒の流れに偏りを生じにくいので、冷却媒通路を円筒状の空間としても効率良く冷却することが可能である。
冷却媒を液体とする場合には、偏りなく流すために、流量を多くしたり、円筒状の空間への供給の仕方を工夫したりする。
【0061】
本発明において、冷却媒通路と水素吸蔵合金容器との間に介在させるための、熱伝導が良好な熱伝導材としては、上述の実施の形態で使用した金属球12以外の形状や材質の熱伝導材を使用することも可能である。
例えば、板状の熱伝導材や、ある程度の厚さを有する熱伝導材や、ウール状の金属繊維のように弾性を有する熱伝導材等が考えられる。板状の熱伝導材やある程度の厚さを有する熱伝導材は、容器形状へ追随させにくくなるが、金属球よりも熱伝導の効率を高くすることが可能になる。ウール状の金属繊維等の弾性を有する熱伝導材は、金属球よりも熱伝導の効率がやや劣るが、容器形状へ追随させやすくなる。
【0062】
上述の実施の形態では、熱伝導材である金属球12を介して、冷却媒通路である冷水循環コイル11と水素吸蔵合金容器1との間の熱伝導を行っていた。
本発明では、冷水循環コイル11等の冷却媒通路を、水素吸蔵合金容器に直接接触させる構成の冷却部をも含むものである。冷却媒通路を水素吸蔵合金容器に直接接触させることにより、熱伝導材を介した構成よりも、さらに効率良く冷却を行うことができる。
【0063】
本発明の水素充填設備によれば、比較的短い時間で水素吸蔵合金容器に水素を充填することができる。
従って、例えば、燃料電池を使用した電動車椅子、電動自転車等の電源に水素吸蔵合金容器を使用する場合のように、小型の水素吸蔵合金容器に短時間で水素を充填する用途に、好適である。
また、その他の各種の用途の水素吸蔵合金容器にも、本発明を適用することができる。
【0064】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施の形態の水素充填設備の概略構成図である。
【図2】図1の水素吸蔵合金容器付近の拡大図である。
【図3】満充填を判断する方法を示すフローチャートである。
【図4】A 矩形の水素吸蔵合金容器を使用した場合の図である。 B 円筒形の水素吸蔵合金容器を使用した場合の図である。
【図5】水素吸蔵合金容器の一部を切開した概略斜視図である。
【図6】図5の水素吸蔵合金容器の概略断面図である。
【図7】本発明を適用した急速充填設備の概略構成図である。
【符号の説明】
【0066】
1 水素吸蔵合金容器、11 冷水循環コイル、12 金属球、13 圧力センサー、15 安全弁、16 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸蔵合金容器に水素を充填するための設備であって、
前記水素吸蔵合金容器に水素を供給する配管と、
前記水素吸蔵合金容器を冷却する冷却部とを少なくとも備え、
前記冷却部は、前記水素吸蔵合金容器を冷却するための冷却媒を通す通路から成り、前記水素吸蔵合金容器を配置するための空間を前記通路で取り囲むように形成されており、
前記通路を前記水素吸蔵合金容器に直接接触させて、或いは、前記通路と前記水素吸蔵合金容器との間に熱伝導が良好な熱伝導材を介在させて、前記水素吸蔵合金容器の冷却がなされる
ことを特徴とする水素吸蔵合金容器用水素充填設備。
【請求項2】
前記通路と前記水素吸蔵合金容器との間に熱伝導が良好な熱伝導材を介在させており、前記熱伝導材が金属球であることを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金容器用水素充填設備。
【請求項3】
前記通路がコイル状に巻いた配管であることを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金容器用水素充填設備。
【請求項4】
前記冷却媒が水であることを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金容器用水素充填設備。
【請求項5】
水素吸蔵合金容器に水素を充填する充填装置であって、
前記水素吸蔵合金容器に水素を供給する供給部と、
前記水素吸蔵合金容器を冷却する冷却部とを少なくとも備え、
前記冷却部は、前記水素吸蔵合金容器を冷却するための冷却媒を通す通路から成り、前記通路の内側に、前記水素吸蔵合金容器を配置するための空間を有し、
前記通路を前記水素吸蔵合金容器に直接接触させて、或いは、前記通路と前記水素吸蔵合金容器との間に熱伝導が良好な熱伝導材を介在させて、前記水素吸蔵合金容器の冷却がなされる
ことを特徴とする水素吸蔵合金容器用水素充填装置。
【請求項6】
水素吸蔵合金容器に水素を充填する方法であって、
前記水素吸蔵合金容器を冷却するための冷却媒を通す通路を、前記水素吸蔵合金容器に直接接触させ、或いは、前記水素吸蔵合金容器との間に熱伝導が良好な熱伝導材を介在させ、
前記通路に前記冷却媒を通して、前記水素吸蔵合金容器を冷却すると共に、前記水素吸蔵合金に水素を供給して、水素を前記水素吸蔵合金容器に充填させる
ことを特徴とする水素吸蔵合金容器への水素充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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