説明

水素吸蔵合金粉末とその表面処理方法、アルカリ蓄電池用負極、およびアルカリ蓄電池

【課題】水素吸蔵合金の表面に析出した酸化物および水酸化物を簡易な手段で、かつ短時間に除去し、好適に活性化された表面状態を有する水素吸蔵合金粉末を提供すること。
【解決手段】本発明の水素吸蔵合金粉末の表面処理方法では、まず、NiおよびMgを含み、Ni含有量が35〜60重量%である水素吸蔵合金粉末を水酸化リチウム水溶液中で攪拌する(第1工程)。次いで、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの少なくともいずれかの水酸化アルカリ金属水溶液中で上記水素吸蔵合金粉末を攪拌する(第2工程)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的に水素を吸蔵および放出することが可能な水素吸蔵合金粉末の表面処理方法に関し、より詳しくは、水素吸蔵合金粉末の表面処理条件の改良に関する。本発明は、さらに、水素吸蔵合金粉末を含むアルカリ蓄電池用負極、およびこれを備えるアルカリ蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
水素吸蔵合金粉末は、電気化学的に水素を吸蔵および放出することができる金属間化合物であり、主にアルカリ蓄電池の負極用材料として利用されている。水素吸蔵合金粉末は、電池作製後の充放電によって、アルカリ電解液中で膨張および収縮を繰り返す。そして、この膨張および収縮の繰返しによって水素吸蔵合金粉末が活性化され、水素吸蔵合金粉末の表面における水素の吸蔵および放出が容易となる。
【0003】
特許文献1には、組立て後の電池を一定の温度に保った状態で、充放電を行うことにより、Mgを含む水素吸蔵合金粉末の表面を電池反応に適した状態とすることが提案されている。しかしながら、電池の組立て後に活性化のための充放電を行うには、それなりの時間を要する。しかも、品質のバラツキが生じやすく、生産性の低下を招く。
【0004】
そこで、電池特性を初期から優れたものとすることを目的として、電池の組立て前に水素吸蔵合金粉末を活性化させ、水素の吸蔵および放出を容易化する試みがなされている。
【0005】
水素吸蔵合金粉末の活性化には、一般に、アルカリ水溶液、酸性水溶液、高温水などを用いることが有効とされている。具体的に、水素吸蔵合金粉末の表面を活性化させる方法としては、水酸化カリウム(KOH)や水酸化ナトリウム(NaOH)などを高濃度で含む水溶液を用いて、ニッケル(Ni)を含む水素吸蔵合金粉末からNiや希土類元素などの構成元素の一部を溶出させ、これにより、水素吸蔵合金粉末の表面にNi凝縮層を生成させる方法が挙げられる。
【0006】
しかしながら、この方法では、水素吸蔵合金粉末の表面に希土類元素の酸化物および水酸化物が生成する。希土類元素の酸化物および水酸化物は電気絶縁性であることから、電池反応の阻害要因となる。
【0007】
そこで、特許文献2には、水素吸蔵合金粉末を高温アルカリ水溶液中に浸漬し、これにより水素吸蔵合金粉末の表面にNiリッチ層を形成する方法が記載されている。この方法では、アルカリ水溶液として、pHが14以上に調整された強アルカリ水溶液が用いられており、具体的には、KOHと、水酸化リチウム(LiOH)およびNaOHの少なくともいずれかと、の混合溶液が用いられている。
また、特許文献3には、LiOHを含むKOH水溶液、またはLiOHを含むNaOH水溶液であって、煮沸しているものに対し、水素吸蔵合金粉末を浸漬し、これにより水素吸蔵合金粉末の表面を改質する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−87886号公報
【特許文献2】特開2000−021400号公報
【特許文献3】特開平7−029568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2および3の方法によれば、水素吸蔵合金粉末の活性化だけでなく、腐食や粒子割れも誘発される。腐食や粒子割れは、水素吸蔵合金粉末の劣化要因であって、電池の寿命が短くなる原因となる。また、電気化学反応を伴わない活性化方法では、溶出元素を制御できない場合が生じやすい。特に、マグネシウム(Mg)を含む水素吸蔵合金粉末は、所望の活性化された表面状態に達しない場合が多い。さらに、合金表面に堆積した希土類元素の酸化物および水酸化物が完全に除去されないため、電池反応の阻害要因が残る。それゆえ、アルカリ蓄電池の放電特性が十分に向上しない。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、水素吸蔵合金粉末の表面に析出した酸化物および水酸化物を簡易な手段で、かつ短時間に除去し、好適に活性化された表面状態を有する水素吸蔵合金粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(i)NiおよびMgを含有し、Ni含有量が35〜60重量%である水素吸蔵合金粉末と、水酸化リチウム水溶液と、を含む第1混合物を攪拌する第1工程と、(ii)上記第1工程を経た水素吸蔵合金粉末と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの少なくともいずれかの水酸化アルカリ金属水溶液と、を含む第2混合物を攪拌する第2工程と、を有する水素吸蔵合金粉末の表面処理方法に関する。
【0012】
上記水素吸蔵合金粉末の表面処理方法は、特に、NiやMgを含む水素吸蔵合金粉末を用いる場合に有効であり、優れた特性のアルカリ蓄電池を提供することが可能となる。
【0013】
上記水素吸蔵合金粉末の表面処理方法において、第1工程に用いられる水酸化リチウム水溶液の水酸化リチウム濃度は、0.1〜8mol/Lであることが好適である。
【0014】
上記水素吸蔵合金粉末の表面処理方法において、第2工程に用いられる水酸化アルカリ金属水溶液は、水酸化ナトリウムを含み、かつ水酸化ナトリウムの濃度が7〜20mol/Lであることが好適である。
また、第2工程に用いられる水酸化アルカリ金属水溶液は、水酸化カリウムを含み、かつ水酸化カリウムの濃度が5〜13mol/Lであることが好適である。
【0015】
上記水素吸蔵合金粉末の表面処理方法において、第1工程における第1混合物の温度は、50〜150℃が好適である。
また、上記水素吸蔵合金粉末の表面処理方法において、第2工程における第2混合物の温度は、50〜150℃が好適である。
【0016】
本発明は、水素吸蔵合金が、Ce2Ni7型またはCeNi3型の結晶構造を有する場合において、特に有効である。
【0017】
本発明は、また、上記水素吸蔵合金粉末の表面処理方法で処理された水素吸蔵合金粉末に関する。
本発明は、また、上記水素吸蔵合金粉末を含むアルカリ蓄電池用の負極に関する。
本発明は、また、ニッケルを含む正極と、上記アルカリ蓄電池用負極と、アルカリ電解液と、を含むアルカリ蓄電池に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、短時間で十分な活性化を水素吸蔵合金粉末に施すことができる。本発明の方法で表面処理された水素吸蔵合金粉末を用いることにより、放電特性(特に低温放電特性)に優れたアルカリ蓄電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例に係るニッケル−水素蓄電池の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の水素吸蔵合金粉末の表面処理方法は、(i)NiおよびMgを含有し、Ni含有量が35〜60重量%である水素吸蔵合金粉末と、LiOH水溶液と、を含む第1混合物を攪拌する第1工程、ならびに、(ii)この第1工程を経た水素吸蔵合金粉末と、NaOHおよびKOHの少なくともいずれかの水酸化アルカリ金属水溶液と、を含む第2混合物を攪拌する第2工程を有している。
【0021】
上記方法による表面処理に適した水素吸蔵合金としては、例えば、いわゆるAB3型合金であって、NiおよびMgを含有し、Ni含有量が35〜60重量%のものが挙げられる。
【0022】
AB3型合金は、Ce2Ni7型またはCeNi3型の結晶構造を有する。AB3型合金は、常温で高い水素化反応性を有するため、高容量の負極材料となる点で好ましい。
AB3型合金であって、NiおよびMgを含有し、Ni含有量が35〜60重量%であるものの具体例としては、例えば、La0.7Mg0.3Ni2.75Co0.5Al0.05、La0.6Mg0.4Ni2.75Co0.5Al0.05、La0.7Mg0.3Ni2.75Co0.4Al0.05などが挙げられる。
【0023】
本発明の表面処理方法に適する水素吸蔵合金において、Ni含有量は、上記のとおり、35〜60重量%であって、この範囲のなかでも特に、40〜55重量%であることが好ましい。水素吸蔵合金中のNi含有量を上記範囲に設定することで、水素吸蔵合金粉末の水素化反応性を顕著に向上させることができる。このため、水素吸蔵合金粉末の水素吸蔵量を向上させることができ、ひいては、電池の容量を向上させることができる。
一方、Ni含有量が35重量%を下回ると、水素吸蔵反応の起点が減少し、水素の授受が進行しにくくなる。逆に、Ni含有量が60重量%を上回ると、理想的組成からのずれが大きくなり、水素吸蔵合金粉末の水素吸蔵量が著しく低下する。
【0024】
水素吸蔵合金中のMg含有量は、0.01〜6重量%であることが好ましく、0.05〜3重量%であることがさらに好ましい。Mg含有量を上記範囲に設定することによって、水素吸蔵量をより向上させることができる。一方、Mg含有量が6重量%を上回ると、水素吸蔵合金中でMgの偏析が生じやすくなり、アルカリ電解液による水素吸蔵合金粉末の腐食が促進されやすくなる。
【0025】
水素吸蔵合金は、NiおよびMgのほかに、例えば、希土類金属元素、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)などを含んでいることが好ましい。Coは、水素吸蔵合金粉末の耐食性を高める効果を有する。AlおよびMnは、いずれも水素吸蔵反応における水素平衡圧を低下させる効果がある。
【0026】
水素吸蔵合金粉末の水素化反応性を向上させる観点から、Niサイトの量を化学量論組成より多くすることが効果的である。例えば、Ce2Ni7型の結晶構造を有する水素吸蔵合金粉末の場合、Ce:Ni=2:x(7<x)のモル比とすることが効果的である。
【0027】
水素吸蔵合金粉末の平均粒径(体積基準のメディアン径、測定法:レーザ回折式粒度測定方法、以下同じ。)は、特に限定されないが、例えば、5〜30μmであることが好ましい。平均粒径が小さすぎるときは、水素吸蔵合金粉末の表面積が大きくなりすぎて、耐食性が低下するおそれがある。逆に、平均粒径が大きすぎるときは、水素吸蔵合金粉末の表面積が小さくなりすぎて、水素吸蔵反応が生じにくくなるおそれがある。
【0028】
上記表面処理方法の第1工程において、水素吸蔵合金粉末の攪拌には、LiOH水溶液が用いられる。イオン化傾向が高いリチウムを含むLiOHは、水溶液中で容易に電離する。しかも、LiOH水溶液は、Mgを溶解しやすく、詳細は明らかでないが、水素吸蔵合金中で偏析しているMgを溶出させ、水素合金粉末から除去する能力に優れている。
【0029】
このため、水素吸蔵合金粉末に対する表面処理として、最初に、LiOH水溶液中での攪拌を施すことによって、水素吸蔵合金粉末中で偏析されている(すなわち、水素吸蔵合金粉末の表面近傍に偏在している)Mgを、水素吸蔵合金粉末から除去することができる。そして、このことにより、水素吸蔵合金粉末の表面近傍におけるMgの含有割合を低下させることができる。
【0030】
第1工程における溶出物としては、例えば、Mgイオン(Mg2+)、軽希土類金属イオン、錯陰イオンなどが挙げられ、これらは、具体的には、水素吸蔵合金の組成によって異なる。例えば、水素吸蔵合金が、一般式:Mm1-yMgyNi5-xx(Mmはミッシュメタルを示す、以下同じ)で表される場合には、第1工程において、ランタン(III)イオン(La3+)、ネオジム(III)イオン(Nd3+)、セリウム(III)イオン(Ce3+)、2〜7価のMnイオン、錯陰イオン(例えばCoO2、AlO2など)が溶出する。
【0031】
第1工程では、水素吸蔵合金の構成元素が溶出することによって、水素吸蔵合金粉末の比表面積が増加し、活性化が進む。一方、溶出反応により、上記構成元素の溶出物を含む廃液が生成する。この廃液から、主としてCe(OH)3、La(OH)3などの軽希土類金属の水酸化物や、Mnを含む複合酸化物などが、水素吸蔵合金粉末の表面に再析出する。そして、これら再析出物が堆積することにより、第1工程における金属元素の溶出速度は急激に低下する。
【0032】
第1工程に用いられるLiOH水溶液のLiOH濃度は、0.1〜8mol/Lであることが好ましく、1〜6mol/Lであることがさらに好ましい。LiOH濃度が上記範囲を下回ると、水素吸蔵合金粉末に対する表面処理が十分に進行しなくなるおそれがある。一方、LiOH濃度が上記範囲を上回ると、LiOHが析出しやすくなり、たとえ水溶液が高温であっても、LiOHの一部が析出するおそれがある。このため、表面処理の効率が低下するおそれや、第1工程を経ることにより得られる作用効果の再現性が損なわれるおそれがある。
【0033】
第1工程に用いられるLiOH水溶液は、NaOHやKOHを含まないことが好ましい。また、上記LiOH水溶液が、たとえNaOHやKOHを含んでいたとしても、その含有量は微量であり、不純物として含有する程度であること、すなわち、実質的にNaOHやKOHを含まないことが好ましい。すなわち、第1工程に用いられるLiOH水溶液において、NaOHやKOHの含有割合は、好ましくは、0.03ppm以下である。
【0034】
第1工程における処理温度は、50〜150℃であることが好ましい。また、表面処理に用いられる設備(例えば、攪拌槽など)の材質および構造などを鑑みると、80〜120℃であることがさらに好ましい。処理温度が上記範囲を下回る場合、所望の反応が起こりにくくなる場合がある。逆に、処理温度が上記範囲を上回ると、LiOH水溶液のOH-イオン濃度に関わらず、LiOH水溶液の温度が沸点近くとなる。このため、突沸などによる不具合が起こりやすくなるおそれがある。
【0035】
第1工程における処理時間は、表面処理をする水素吸蔵合金粉末の量に応じて、適宜設定される。それゆえ、第1工程の処理時間は、これに限定されないが、一般に、10〜120分間であることが好ましい。
なお、LiOH水溶液を用いた処理(第1工程)は、初期処理速度が大きい。しかも、上述の理由により、比較的早期に金属元素の溶出速度が低下し、Mgを溶解させる効果が低下する。それゆえ、第1工程の処理時間は、上記範囲を超えないように設定することが特に好ましい。
【0036】
上記表面処理方法の第2工程において、水素吸蔵合金粉末の攪拌には、NaOH水溶液またはKOH水溶液が用いられる。NaOHやKOHも、水溶液中で容易に電離する。しかも、NaOH水溶液やKOH水溶液は、水素吸蔵合金粉末から酸化物および水酸化物を除去する効果が高い。それゆえ、NaOH水溶液やKOH水溶液を用いて、第1工程を経た水素吸蔵合金粉末を攪拌し、表面処理を施すことによって、水素吸蔵合金粉末の表面に析出した酸化物および水酸化物のほとんどを効率よく除去することができる。
【0037】
第2工程は、第1工程に引続いて行われる。すなわち、第1工程においてLiOH水溶液による表面処理を施した後で、水素吸蔵合金粉末とLiOH水溶液との混合物を静置することにより、水素吸蔵合金粉末を沈殿させ、上澄みのLiOH水溶液を除去する。次いで、第2工程において、上澄み除去後の残渣(LiOH水溶液による表面処理が施された水素吸蔵合金粉末)を、NaOH水溶液またはKOH水溶液中で攪拌し、表面処理を施す。その後、水素吸蔵合金粉末と、NaOH水溶液またはKOH水溶液との混合物を静置することにより、水素吸蔵合金粉末を沈殿させ、上澄みのNaOH水溶液またはKOH水溶液を除去する。
【0038】
第2工程に用いられるNaOHやKOHは、LiOHと比べると電離度が低いため、水素吸蔵合金粉末の構成元素を溶出させる能力がLiOHと比べて低い。
しかしながら、その一方で、NaOHやKOHは、水素吸蔵合金粉末の表面に堆積した再析出物を溶解させたり、表面から除去したりする能力がLiOHと比べて高い。また、NaOH水溶液やKOH水溶液は、LiOH水溶液と比べて、OH-イオン濃度を高濃度にすることができる。それゆえ、第2工程を経ることによって、短時間の処理であっても、水素吸蔵合金粉末に対して高い活性度を付与することができる。
【0039】
第2工程において、水素吸蔵合金粉末をNaOH水溶液やKOH水溶液中で攪拌し、表面処理を施す際には、水素吸蔵合金粉末と、NaOHおよびKOHの少なくともいずれかの水溶液と、を含む混合物(第2混合物)中に、第1工程で用いたLiOHが混入していてもよい。
【0040】
第2工程にNaOH水溶液を用いる場合において、NaOH水溶液のNaOH濃度は、7〜20mol/Lであることが好ましく、10〜18mol/Lであることがさらに好ましい。NaOH濃度が上記範囲を下回ると、再析出物の除去が十分に進まず、表面処理の効率が低下する場合がある。一方、NaOH濃度が上記範囲を上回ると、NaOHが析出しやすくなるおそれがある。このため、表面処理の生産性が低下するおそれや、第2工程を経ることにより得られる作用効果の再現性が損なわれるおそれがある。
【0041】
第2工程にKOH水溶液を用いる場合において、KOH水溶液のKOH濃度は、5〜13mol/Lであることが好ましく、8〜10mol/Lであることがさらに好ましい。KOH濃度が上記範囲を下回ると、再析出物の除去が十分に進まず、表面処理の効率が低下する場合がある。一方、KOH濃度が上記範囲を上回ると、KOHが析出しやすくなるおそれがある。このため、表面処理の生産性が低下するおそれや、第2工程を経ることにより得られる作用効果の再現性が損なわれるおそれがある。
【0042】
第2工程における処理温度は、第2工程にNaOH水溶液を用いる場合と、KOH水溶液を用いる場合とのいずれにおいても、50〜150℃であることが好ましい。また、表面処理に用いられる設備(例えば、攪拌槽など)の材質および構造などを鑑みると、80〜120℃であることがさらに好ましい。処理温度が上記範囲を下回る場合、所望の反応が起こりにくくなる場合がある。逆に、処理温度が上記範囲を上回ると、NaOH水溶液やKOH水溶液のOH-イオン濃度に関わらず、これらの水溶液の温度が沸点近くとなる。このため、突沸などによる不具合が起こりやすくなるおそれがある。
【0043】
第2工程における処理時間は、表面処理をする水素吸蔵合金粉末の量や、NaOH水溶液またはKOH水溶液の温度および濃度に応じて、適宜設定される。それゆえ、第2工程の処理時間は、これに限定されないが、一般に、10〜120分間であることが好ましい。
【0044】
なお、第2工程における表面処理は、第1工程における表面処理よりも早く進む。また、第2工程における表面処理の速度は、NaOH水溶液またはKOH水溶液の温度および濃度との相関性が高い。具体的には、NaOH水溶液またはKOH水溶液の温度および濃度が高いほど、第2工程における表面処理の速度が速くなり、処理時間を短く設定することができる。
【0045】
上記表面処理方法によれば、上述の第1工程と第2工程とを経ることによって、水素吸蔵合金中に偏析したMgの除去と、水素吸蔵合金粉末の表面に析出した酸化物および水酸化物の除去とを、簡易な方法によって達成することができる。しかも、所望の活性度を、短時間の処理によって得ることができる。すなわち、短時間で十分な活性化を水素吸蔵合金粉末に施すことができる。
【0046】
上記のとおり、第1工程の後に第2工程を行うことによって、LiOH水溶液と、NaOH水溶液またはKOH水溶液との、それぞれの優れた性質を利用することができ、かつ、互いの欠点を補うことができる。その結果、水素吸蔵合金粉末の活性化と再析出物の除去とを並行して進めることができる。
【0047】
上記水素吸蔵合金粉末の表面処理方法では、まず、上述の第1工程を実行し、その上で、引き続き上述の第2工程を実行しているが、このように2つの工程を段階的に実行することで、全体的に表面処理の工程管理が簡易になるという効果も得られる。
【0048】
本発明の水素吸蔵合金粉末は、上記第1工程による表面処理が施され、次いで、上記第2工程による表面処理が施されたものである。
【0049】
このような表面処理を施すことによって、水素吸蔵合金粉末の酸素濃度が、1.10重量%以下に低減される。そして、このように酸素濃度が低減された水素吸蔵合金粉末を用いることで、優れた放電特性を有するアルカリ蓄電池を得ることが可能となる。
酸素濃度とは、JIS Z 2613に記載の酸素濃度測定法(赤外線吸収法)で求められる酸素濃度であって、水素吸蔵合金粉末の表面に析出した酸化物または水酸化物の量に対応している。
【0050】
水素吸蔵合金粉末の酸素濃度は、上記範囲の中でも特に、1.10重量%以下であることが好ましく、0.95重量%以下であることがさらに好ましい。
酸素濃度が上記範囲を上回ると、上記水素吸蔵合金粉末を用いたアルカリ蓄電池の放電特性が損なわれるおそれがある。なお、酸素濃度の下限は、特に限定されないが、通常、0.8重量%程度である。
【0051】
また、上記の表面処理を施すことによって、水素吸蔵合金粉末中の磁性体の含有量が、好ましくは、1.30重量%以上の範囲に調整される。そして、このように磁性体の含有量が調整された水素吸蔵合金粉末を用いることで、優れた放電特性を有するアルカリ蓄電池を得ることが可能となる。
【0052】
水素吸蔵合金粉末中の磁性体としては、例えば、Ni、Coなどが挙げられる。
磁性体の含有量は、例えば、振動試料磁気測定装置により求めることができる。
【0053】
水素吸蔵合金粉末における磁性体の含有量は、上記範囲の中でも特に、1.30重量%以上2.30重量%以下であることが好ましく、1.55重量%以上2.30重量%以下であることがさらに好ましく、1.75重量%2.30重量%であることが特に好ましい。
磁性体の含有量が上記範囲を下回ると、上記水素吸蔵合金粉末を用いたアルカリ蓄電池の放電特性が損なわれるおそれがある。なお、磁性体の含有量の上限は特に限定されないが、上記範囲を上回ると、水素吸蔵合金部分の減少により容量が低下する傾向がある。
【0054】
本発明のアルカリ蓄電池用負極は、上記表面処理方法で処理された水素吸蔵合金粉末を必須成分として含み、さらに、導電剤、増粘剤、結着剤などを任意成分として含む。負極は、上記水素吸蔵合金粉末を含む負極合剤を所定形状に成形することによって作製されるか、あるいは、上記水素吸蔵合金粉末を含む負極合剤ペーストを調製し、これを集電体(芯材)に塗布し、乾燥することによって作製される。
【0055】
導電剤としては、電子伝導性を有する材料であること以外は特に限定されず、各種の電子伝導性材料を用いることができる。具体的には、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、例えば、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、例えば、銅粉などの金属粉末類、例えば、ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などが挙げられ、なかでも、人造黒鉛、ケッチェンブラック、炭素繊維が好ましい。上記例示の電子伝導性材料は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記例示の電子伝導性材料は、水素吸蔵合金粉末の表面に被覆させて用いてもよい。
導電剤の添加量は、特に限定されないが、例えば、水素吸蔵合金粉末100重量部に対し、0.1〜50重量部が好ましく、0.1〜30重量部がさらに好ましい。
【0056】
増粘剤は、負極合剤ペーストに対して粘性を付与する。例えば、負極合剤ペーストの分散媒として水を用いる場合には、増粘剤として、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその変性体、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリエチレンオキシドなどを用いることができる。
【0057】
結着剤は、水素吸蔵合金粉末や導電剤を集電体に結着させる役割を果たす。結着剤は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。結着剤の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体Na+イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体Na+イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体Na+イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体Na+イオン架橋体などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
本発明のアルカリ蓄電池は、正極と、上記アルカリ蓄電池用負極と、アルカリ電解質とを含んでいる。また、一般に、正極と負極との間には、セパレータが配置されている。
上記アルカリ蓄電池用負極を用いることによって、特に放電性能に優れたアルカリ蓄電池を提供することが可能である。
【0059】
また、本発明のアルカリ蓄電池の具体例としては、例えば、ニッケル−水素蓄電池などが挙げられる。
【0060】
正極には、本発明の分野で公知の各種正極を用いることができる。具体的には、公知の焼結式ニッケル正極などが挙げられる。
【0061】
アルカリ電解液には、本発明の分野で公知の各種アルカリ電解液を用いることができる。具体的には、40g/Lの濃度の水酸化リチウムを含む、比重1.30の水酸化カリウム水溶液などが挙げられる。
【0062】
セパレータには、本発明の分野で公知の各種セパレータを用いることができる。具体的には、ポリプロピレン製の不織布などが挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下、ニッケル−水素蓄電池の作製例を挙げて、本発明を詳細に説明する。
【0064】
<水素吸蔵合金粉末の表面処理およびニッケル−水素蓄電池の作製>
実施例1
組成式Mm0.7Mg0.3Ni2.75Co0.5Al0.05で表される水素吸蔵合金を湿式ボールミルに投入し、水中で粉砕することにより、平均粒径(測定法:レーザ回折法、以下同じ)が30μmの粉末を得た。この原料水素吸蔵合金粉末は、CeNi3型の結晶構造を備えており、Niの含有割合は53重量%、Mgの含有割合は2重量%であった。
【0065】
(i)第1工程
攪拌槽に上記原料水素吸蔵合金粉末10kgを投入し、次いで、濃度5mol/LのLiOH水溶液3kgを投入した。そして、攪拌槽の攪拌翼を回転させて、水素吸蔵合金粉末とLiOH水溶液との混合物(以下、「第1混合物」という。)を10分間攪拌した(第1工程)。この第1工程においては、攪拌槽内の温度を加熱手段で適宜制御し、第1混合物の温度を90℃で一定となるように調整した。
第1工程の完了後、第1混合物を静置し、水素吸蔵合金粉末を沈殿させて、上澄みのLiOH水溶液を攪拌槽から除去した。
【0066】
(ii)第2工程
上澄み(LiOH水溶液)を除去後、攪拌槽に18mol/LのNaOH水溶液6kgを投入した。そして、攪拌翼を回転させて、水素吸蔵合金粉末と、NaOH水溶液と、撹拌槽内に残留したLiOH水溶液との混合物(この実施例、および後述する実施例2〜17において「第2混合物」という)を10分間攪拌した(第2工程)。この第2工程においては、攪拌槽内の温度を加熱手段で適宜制御し、第2混合物の温度を90℃で一定となるように調整した。第2混合物に含まれるLiOHは、第2混合物の単位重量あたりの含有量として、0.03μg/g以下であった。
【0067】
第2工程の完了後、第2混合物を加圧濾過槽に導入して、5kgf/cm2で加圧しながら濾過することにより、NaOH水溶液を除去した。次いで、残渣を多量の水で洗浄することにより、表面処理後の水素吸蔵合金粉末を得た。
【0068】
(iii)負極の作製
第2工程で得られた水素吸蔵合金粉末10kgに対し、1.5重量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液1kgと、ケッチェンブラック40gとを加えて、混合物を混練した。次いで、固形分比40重量%のスチレン−ブタジエンゴム(SBR)分散液175gを加えて、攪拌することにより、負極合剤ペーストを調製した。
【0069】
こうして得られた負極合剤ペーストを、パンチングメタル(芯材)の両面に塗布し、次いで、乾燥させ、加圧することによって、幅35mm、厚さ0.4mmの負極(水素吸蔵合金負極)を作製した。パンチングメタルは、ニッケルめっきが施された鉄製のものであって、厚さが60μm、パンチング孔の孔径が1mm、開孔率が42%であった。また、負極の長手方向に沿う一端部には、芯材の露出部を形成した。
こうして得られた負極の理論容量は、2200mAhであった。
【0070】
(iv)ニッケル−水素蓄電池の作製
図1に、この実施例で作製したニッケル−水素蓄電池の縦断面図を示す。
負極12には、上記水素吸蔵合金負極を用いた。正極11には、公知の焼結式ニッケル正極であって、長手方向に沿う一端部に芯材の露出部を有するものを用いた。正極11の理論容量は、1500mAhであった。セパレータ13には、ポリプロピレン製の不織布を用いた。また、アルカリ電解液には、比重1.30の水酸化カリウム水溶液に、40g/Lの濃度で水酸化リチウムを溶解させたものを用いた。
【0071】
ニッケル−水素蓄電池の作製方法は、次のとおりである。まず、正極11と負極12とを、セパレータ13を介して捲回し、円柱状の極板群20を作製した。極板群20の作製時には、正極11のうち正極合剤11aが塗布されずに正極芯材11bが露出している露出部と、負極12のうち負極合剤12aが塗布されずに負極芯材12bが露出している露出部とを、極板群20の軸方向で互いに反対側の端面に露出されるように配置した。そして、正極芯材11bが露出する側の極板群20の端面21に、正極集電板18を溶接し、負極芯材12bが露出する側の極板群20の端面22に、負極集電板19を溶接した。
【0072】
次いで、極板群20を、その負極集電板19側から、有底円筒形の電池ケース15に収容した。この電池ケース15は、負極端子と兼用される部材である。電池ケース15の底部には、あらかじめ負極リード19aが溶接されており、この負極リード19aを介して、負極集電板19と電池ケース15とを電気的に接続させた。
【0073】
次に、電池ケース15内に電解液を注液し、周縁にガスケット17を備える封口板6によって、電池ケース15の開口部を封口した。この封口板6は、正極端子と兼用される部材である。封口板6の電池ケース15内部側表面には、あらかじめ正極リード18aが溶接されており、この正極リード18aを介して、正極集電板18と封口板6とを電気的に接続させた。
こうして、4/5Aサイズ(直径約17mm、長さ約43mm)で、公称容量1500mAhのニッケル−水素蓄電池を得た。
【0074】
実施例2〜7
第1工程におけるLiOH水溶液のLiOH濃度を、実施例2で0.05mol/L、実施例3で0.1mol/L、実施例4で1mol/L、実施例5で6mol/L、実施例6で8mol/L、および、実施例7で10mol/Lとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0075】
実施例8〜12
第2工程におけるNaOH水溶液のNaOH濃度を、実施例8で5mol/L、実施例9で7mol/L、実施例10で10mol/L、実施例11で20mol/L、および実施例12で25mol/Lとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0076】
実施例13〜17
第1工程における第1混合物および第2工程における第2混合物の温度を、それぞれ40℃(実施例13)、50℃(実施例14)、80℃(実施例15)、120℃(煮沸状態、実施例16)、または150℃(煮沸状態、実施例17)とした以外は、実施例1と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0077】
比較例1
攪拌槽に実施例1で得られたものと同じ原料水素吸蔵合金粉末10kgを投入し、次いで、濃度18mol/LのNaOH水溶液6kgを投入した。そして、攪拌槽の攪拌翼を回転させて、水素吸蔵合金粉末とNaOH水溶液との混合物を20分間攪拌した。攪拌時には、攪拌槽内の温度を加熱手段で適宜制御し、上記混合物の温度を90℃で一定となるように調整した。
【0078】
攪拌後、攪拌槽内の混合物を静置し、水素吸蔵合金粉末を沈殿させて、上澄みのNaOH水溶液を攪拌槽から除去した。次いで、沈殿物を多量の水で洗浄することによって、表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を得た。すなわち、比較例1においては、実施例1における第1工程(LiOH水溶液による処理)を行わず、第2工程(NaOH水溶液による処理)のみを行い、その処理時間を20分とした。
こうして表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0079】
比較例2
攪拌槽に実施例1で得られたものと同じ原料水素吸蔵合金粉末10kgを投入した。次いで、攪拌槽に、濃度5mol/LのLiOH水溶液1.5kgと、濃度18mol/LのNaOH水溶液3kgとの混合水溶液を投入した。そして、攪拌槽の攪拌翼を回転させて、水素吸蔵合金粉末と上記混合水溶液との混合物を20分間攪拌した。攪拌時には、攪拌槽内の温度を加熱手段で適宜制御し、上記混合物の温度を90℃で一定となるように調整した。
【0080】
攪拌後、攪拌槽内の混合物を静置し、水素吸蔵合金粉末を沈殿させて、上澄みのLiOHおよびNaOHの混合水溶液を攪拌槽から除去した。次いで、沈殿物を多量の水で洗浄することによって、表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を得た。
そして、こうして表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0081】
比較例3
攪拌槽に実施例1で得られたものと同じ原料水素吸蔵合金粉末10kgを投入した。次いで、攪拌槽に、濃度5mol/LのLiOH水溶液1kgと、濃度18mol/LのNaOH水溶液2kgと、濃度10mol/LのKOH水溶液2kgとの混合水溶液を投入した。そして、攪拌槽の攪拌翼を回転させて、水素吸蔵合金粉末と上記混合水溶液との混合物を20分間攪拌した。攪拌時には、攪拌槽内の温度を加熱手段で適宜制御し、上記混合物の温度を90℃で一定となるように調整した。
【0082】
攪拌後、攪拌槽内の混合物を静置し、水素吸蔵合金粉末を沈殿させて、上澄みのLiOH、NaOHおよびKOHの混合水溶液を攪拌槽から除去した。次いで、沈殿物を多量の水で洗浄することによって、表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を得た。
そして、こうして表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0083】
比較例4
攪拌槽に実施例1で得られたものと同じ原料水素吸蔵合金粉末10kgを投入し、次いで、濃度5mol/LのLiOH水溶液3kgを投入した。そして、攪拌槽の攪拌翼を回転させて、水素吸蔵合金粉末とLiOH水溶液との混合物(第1混合物)を20分間攪拌した。攪拌時には、攪拌槽内の温度を加熱手段で適宜制御し、第1混合物の温度を90℃で一定となるように調整した。
【0084】
攪拌後、第1混合物を静置し、水素吸蔵合金粉末を沈殿させて、上澄みのLiOH水溶液を攪拌槽から除去した。次いで、沈殿物を多量の水で洗浄することによって、表面処理後の水素吸蔵合金粉末を得た。すなわち、比較例4においては、第1工程(LiOH水溶液による処理)における処理時間を20分とし、第2工程(NaOH水溶液による処理)を行わなかった。
こうして表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0085】
比較例5
攪拌時に、攪拌槽内の混合物の温度を120℃(煮沸状態)で一定となるように調整したこと以外は、比較例2と同様にして、表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を得た。そして、こうして表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0086】
<物性評価>
上記実施例1〜17および比較例1〜5に対して、以下に示す測定を行い、表面処理が施された水素吸蔵合金粉末と、それを用いたニッケル−水素蓄電池の物性を評価した。
【0087】
磁性体量
表面処理後の水素吸蔵合金粉末を乾燥させて、振動試料型磁力計(VSM、東英工業株式会社製)を用いて、水素吸蔵合金粉末内での金属状態の磁性体の濃度を測定した。その測定値を、水素吸蔵合金粉末中の磁性体の重量割合(重量%)として、下記の表1〜3に示す。
【0088】
酸素濃度
表面処理後の水素吸蔵合金粉末の酸素濃度を、JIS Z 2613に記載の酸素濃度測定法(赤外線吸収法)に従って測定した。すなわち、試料(表面処理後の水素吸蔵合金粉末)から抽出されたガスを赤外線吸収セルに送り、赤外線の吸収量の変化を測定することにより、酸素量を求めた。その測定値を、水素吸蔵合金粉末中の酸素の重量割合(重量%)として、下記の表1〜3に示す。
【0089】
初期放電容量および低温放電特性
ニッケル−水素蓄電池を、20℃の環境下、電流値1.5Aで、理論容量の120%まで充電した。次いで、充電後のニッケル−水素蓄電池を、20℃の環境下、電流値3.0Aで、電池電圧が1.0Vに低下するまで放電し、その際の放電容量(初期放電容量、単位:mAh)を測定した。
【0090】
さらに、初期放電容量測定後のニッケル−水素蓄電池を、20℃の環境下、電流値1.5Aで、理論容量の120%まで充電した。次いで、充電後のニッケル−水素蓄電池を、0℃の環境下、電流値3.0Aで、電池電圧が1.0Vに低下するまで放電し、その際の放電容量(低温放電容量、単位:mAh)を測定した。そして、低温放電容量の初期放電容量に対する比率(%)を低温放電特性の指標とした。
以上の測定結果を、下記の表1〜3に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
表1〜3において、磁性体含有量の評価基準は、1.75重量%以上をA+(極めて良好)とし、1.55重量%以上1.75重量%未満をA(良好)とし、1.30重量%以上1.55重量%未満をB(実用上許容)とし、1.30重量%未満をC(不良)とした。酸素濃度の評価基準は、0.95重量%以下をA+(極めて良好)とし、0.95重量%を上回り1.00重量%以下をA(良好)とし、1.00重量%を上回り1.10重量%以下をB(実用上許容)とし、1.10重量%を上回る場合をC(不良)とした。
【0095】
また、初期放電容量は、1450mAh以上の場合をA+(極めて良好)とし、1300mAh以上1450mAh未満の場合をA(良好)とし、1250mAh以上1300mAh未満の場合をB(実用上許容)とし、1250mAh未満の場合をC(不良)とした。低温放電特性は、80%以上の場合をA+(極めて良好)とし、75%以上80%未満の場合をA(良好)とし、70%以上75%未満の場合をB(実用上許容)とし、70%未満の場合をC(不良)とした。
【0096】
表1および2に示すように、比較例1および4は、実施例1と比べて、水素吸蔵合金粉末中の磁性体量が少なかった。また、これとは逆に、比較例1および4は、実施例1と比べて、水素吸蔵合金粉末中の酸素濃度が高かった。なお、水素吸蔵合金粉末中の酸素濃度は、水素吸蔵合金粉末の表面に堆積した酸化物および水酸化物の量に比例する。
【0097】
また、表1および2に示すように、比較例1および4は、実施例1と比べて、初期放電容量が低かった。この結果は、水素吸蔵合金粉末の磁性体量と比例した。さらに、比較例1および4は、実施例1と比べて、低温放電特性が低かった。この結果は、水素吸蔵合金粉末の酸素濃度と反比例した。
【0098】
上述のとおり、LiOH水溶液を用いた処理(第1工程)は、初期処理速度が大きく、この処理を経ることによって、Mgの偏析を抑制することができる。一方、NaOH水溶液を用いた処理(第2工程)は、LiOH水溶液を用いた処理と比べて、処理量が飽和することを抑制できる。
それゆえ、LiOH水溶液を用いた処理と、NaOH水溶液を用いた処理とを併用することで、実施例1〜12に示すように、短い処理時間で酸素濃度を小さく(磁性体量を多く)し、低温放電特性に優れたアルカリ蓄電池を効率よく得ることができた。
【0099】
また、表1に示した結果より明らかなように、第1工程におけるLiOH水溶液のLiOH濃度を、好ましくは、0.1mol/L以上、さらに好ましくは、1mol/L以上とすることで、水素吸蔵合金粉末中での磁性体含有量を高く維持し、かつ、酸素含有量を低く抑制することができた。
【0100】
一方、第1工程のLiOH水溶液について、LiOHの濃度を8mol/Lを超えて高くしても、磁性体含有量や酸素濃度の評価を向上させる観点において有意な差は観察されなかった。なお、極めて高濃度のLiOHを用いる場合には、攪拌装置の劣化やコストの増加のおそれがある。また、LiOHの濃度が8mol/Lであるときには、第1工程後の攪拌槽の内壁面でLiOHの結晶の析出がわずかに観察された(実施例6)。LiOHの濃度が10mol/Lであるときには、結晶の析出の程度が顕著であった(実施例7)。
【0101】
また、表2に示した結果より明らかなように、第2工程におけるNaOH水溶液のNaOH濃度を、好ましくは、5mol/L以上、さらに好ましくは、8mol/L以上とすることで、水素吸蔵合金粉末中での磁性体含有量を高く維持し、かつ、酸素含有量を低く抑制することができた。
【0102】
一方、第2工程のNaOH水溶液について、NaOHの濃度を20mol/Lを超えて高くしても、磁性体含有量や酸素濃度の評価を向上させる観点において有意な差は観察されなかった。なお、極めて高濃度のNaOHを用いる場合には、攪拌装置の劣化やコストの増加のおそれがある。また、NaOHの濃度が20mol/Lであるときには、第2工程後の攪拌槽の内壁面でNaOHの結晶の析出がわずかに観察された(実施例11)。NaOHの濃度が25mol/Lであるときには、結晶の析出の程度が顕著であった(実施例12)。
【0103】
また、表3に示した結果(実施例13〜17、比較例2および5)より明らかなように、第1工程および第2工程における処理温度を、好ましくは、50〜150℃、さらに好ましくは、80〜120℃の範囲に設定することで、水素吸蔵合金粉末中での磁性体含有量を高く維持し、かつ、酸素含有量を低く抑制することができた。
【0104】
一方、第1工程および第2工程における処理温度が上記範囲を下回るときには、表面処理反応が起こりにくくなるため、酸素濃度の上昇と、低温放電特性の低下の傾向が観察された。また、処理温度が150℃であるときには、表面処理が十分になされたが、突沸によって攪拌装置が損傷を受けるおそれがあった(実施例17)。
【0105】
<水素吸蔵合金粉末の表面処理およびニッケル−水素蓄電池の作製>
実施例18
実施例1と同様にして、組成式Mm0.7Mg0.3Ni2.75Co0.5Al0.05で表される原料水素吸蔵合金の粉末(平均粒径30μm、CeNi3型、Niの含有割合53重量%、Mgの含有割合2重量%)を得た。
【0106】
(i)第1工程
実施例1と同様にして、攪拌槽に上記原料水素吸蔵合金粉末10kgを投入し、次いで、濃度5mol/LのLiOH水溶液3kgを投入した。そして、攪拌槽の攪拌翼を回転させて、第1混合物を10分間攪拌した(第1工程)。この第1工程においては、第1混合物の温度を90℃で一定となるように調整した。第1工程の完了後、第1混合物を静置し、水素吸蔵合金粉末を沈殿させて、上澄みのLiOH水溶液を攪拌槽から除去した。
【0107】
(ii)第2工程
上澄みを除去後、攪拌槽に10mol/LのKOH水溶液6kgを投入した。そして、攪拌翼を回転させて、水素吸蔵合金粉末と、KOH水溶液と、撹拌槽内に残留したLiOH水溶液との混合物(この実施例、および後述する実施例19〜34において「第2混合物」という)を10分間攪拌した(第2工程)。この第2工程においては、攪拌槽内の温度を加熱手段で適宜制御し、第2混合物の温度を90℃で一定となるように調整した。第2混合物に含まれるLiOHは、第2混合物の単位重量あたりの含有量として、0.03μg/g以下であった。
【0108】
第2工程の完了後、第2混合物を加圧濾過槽に導入して、5kgf/cm2で加圧しながら濾過することにより、KOH水溶液を除去した。次いで、残渣を多量の水で洗浄することにより、表面処理後の水素吸蔵合金粉末を得た。
【0109】
(iii)負極の作製
LiOH水溶液による第1工程と、KOH水溶液による第2工程とによる表面処理が施された水素吸蔵合金粉末10kgを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、負極合剤ペーストを調製した。そして、こうして得られた負極合剤ペーストを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、負極(水素吸蔵合金負極)を作製した。得られた負極の理論容量は、2200mAhであった。
【0110】
(iv)ニッケル−水素蓄電池の作製
負極12には、上記水素吸蔵合金負極を用いた(図1参照、以下同じ)。その他、正極11、セパレータ13、アルカリ電解液などは、実施例1で使用したものと同じものを用いた。そして、負極12が異なること以外は、実施例1と同様にして、図1に示すニッケル−水素蓄電池を作製した。
【0111】
実施例19〜24
第1工程におけるLiOH水溶液のLiOH濃度を、実施例19で0.05mol/L、実施例20で0.1mol/L、実施例21で1mol/L、実施例22で6mol/L、実施例23で8mol/L、および実施例24で10mol/Lとしたこと以外は、実施例18と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0112】
実施例25〜29
第2工程におけるKOH水溶液のKOH濃度を、実施例25で4mol/L、実施例26で5mol/L、実施例27で8mol/L、実施例28で13mol/L、および、実施例29で15mol/Lとしたこと以外は、実施例18と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0113】
実施例30〜34
第1工程における第1混合物および第2工程における第2混合物の温度を、それぞれ40℃(実施例30)、50℃(実施例31)、80℃(実施例32)、120℃(実施例33)、または150℃(実施例34)としたこと以外は、実施例18と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0114】
比較例6
攪拌槽に実施例1で得られたものと同じ原料水素吸蔵合金粉末10kgを投入し、次いで、濃度10mol/LのKOH水溶液6kgを投入した。そして、攪拌槽の攪拌翼を回転させて、水素吸蔵合金粉末とKOH水溶液との混合物を20分間攪拌した。攪拌時には、攪拌槽内の温度を加熱手段で適宜制御し、上記混合物の温度を90℃で一定となるように調整した。
【0115】
攪拌後、攪拌槽内の混合物を静置し、水素吸蔵合金粉末を沈殿させて、上澄みのKOH水溶液を攪拌槽から除去した。次いで、水素吸蔵合金粉末を多量の水で洗浄することにより、表面処理後の水素吸蔵合金粉末を得た。すなわち、比較例6においては、実施例18における第1工程(LiOH水溶液による処理)を行わず、第2工程(KOH水溶液による処理)のみを行い、その処理時間を20分とした。
そして、こうして表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を用いたこと以外は、実施例18と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0116】
比較例7
攪拌槽に実施例1で得られたものと同じ原料水素吸蔵合金粉末10kgを投入した。次いで、攪拌槽に、濃度5mol/LのLiOH水溶液1.5kgと、濃度10mol/LのKOH水溶液3kgとの混合水溶液を投入した。そして、攪拌槽の攪拌翼を回転させて、水素吸蔵合金粉末と上記混合水溶液との混合物を20分間攪拌した。攪拌時には、攪拌槽内の温度を加熱手段で適宜制御し、上記混合物の温度を90℃で一定となるように調整した。
【0117】
攪拌後、攪拌槽内の混合物を静置し、水素吸蔵合金粉末を沈殿させて、上澄みのLiOHおよびKOHの混合水溶液を攪拌槽から除去した。次いで、沈殿物を多量の水で洗浄することによって、表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を得た。
そして、こうして表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を用いたこと以外は、実施例18と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0118】
比較例8
攪拌時に、攪拌槽内の混合物の温度を120℃で一定となるように調整したこと以外は、比較例7と同様にして、表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を得た。そして、こうして表面処理が施された水素吸蔵合金粉末を用いたこと以外は、実施例18と同様にして、ニッケル−水素蓄電池を得た。
【0119】
<物性評価>
上記実施例18〜34および比較例6〜8に対して、上述の測定を行い、表面処理が施された水素吸蔵合金粉末と、それを用いたニッケル−水素蓄電池の物性を評価した。測定および評価項目は、上述の場合と同じく、磁性体量と、酸素濃度と、初期放電容量と、低温放電特性の4つとした。以上の結果を下記の表4〜6に示す。
【0120】
【表4】

【0121】
【表5】

【0122】
【表6】

【0123】
表4〜6において、磁性体含有量および酸素濃度の評価基準(A+〜C)は、表1〜3の場合と同様とした。また、初期放電容量および低温放電特性の評価基準(A+〜C)も、表1〜3の場合と同様とした。
【0124】
表4および5に示すように、比較例6および4は、実施例18と比べて、水素吸蔵合金粉末中の磁性体量が少なかった。また、これとは逆に、比較例6および4は、実施例18と比べて、水素吸蔵合金粉末中の酸素濃度が高かった。
【0125】
また、表4および5に示すように、比較例6および4は、実施例18と比べて、初期放電容量が低かった。この結果は、水素吸蔵合金粉末の磁性体量と比例した。さらに、比較例6および4は、実施例18と比べて、低温放電特性が低かった。この結果は、水素吸蔵合金粉末の酸素濃度と反比例した。
【0126】
上述のとおり、LiOH水溶液を用いた処理(第1工程)は、初期処理速度が大きく、この処理を経ることによって、Mgの偏析を抑制することができる。一方、KOH水溶液を用いた処理(第2工程)は、LiOH水溶液を用いた処理と比べて、処理量が飽和することを抑制できる。
それゆえ、LiOH水溶液を用いた処理と、KOH水溶液を用いた処理とを併用することで、実施例18〜29に示すように、短い処理時間で酸素濃度を小さく(磁性体量を多く)し、低温放電特性に優れたアルカリ蓄電池を効率よく得ることができた。
【0127】
また、表4に示した結果より明らかなように、第1工程におけるLiOH水溶液のLiOH濃度を、好ましくは、0.1mol/L以上、さらに好ましくは、1mol/L以上とすることで、水素吸蔵合金粉末中での磁性体含有量を高く維持し、かつ、酸素含有量を低く抑制することができた。
【0128】
一方、第1工程のLiOH水溶液について、LiOHの濃度を8mol/Lを超えて高くしても、磁性体含有量や酸素濃度の評価を向上させる観点において有意な差は観察されなかった。また、LiOHの濃度が8mol/Lであるときには、第1工程後の攪拌槽の内壁面でLiOHの結晶の析出がわずかに観察された(実施例23)。LiOHの濃度が10mol/Lであるときには、結晶の析出の程度が顕著であった(実施例24)。
【0129】
また、表5に示した結果より明らかなように、第2工程におけるKOH水溶液のKOH濃度を、好ましくは、7mol/L以上、さらに好ましくは、10mol/L以上とすることで、水素吸蔵合金粉末中での磁性体含有量を高く維持し、かつ、酸素含有量を低く抑制することができた。
【0130】
一方、第2工程のNaOH水溶液について、KOHの濃度を13mol/Lを超えて高くしても、磁性体含有量や酸素濃度の評価を向上させる観点において有意な差は観察されなかった。なお、極めて高濃度のKOHを用いる場合には、攪拌装置の劣化やコストの増加のおそれがある。また、KOHの濃度が13mol/Lであるときには、第2工程後の攪拌槽の内壁面でKOHの結晶の析出がわずかに観察された(実施例28)。NaOHの濃度が15mol/Lであるときには、結晶の析出の程度が顕著であった(実施例29)。
【0131】
また、表6に示した結果(実施例30〜34、比較例7および8)より明らかなように、第1工程および第2工程における処理温度を、好ましくは、50〜150℃、さらに好ましくは、80〜120℃の範囲に設定することで、水素吸蔵合金粉末中での磁性体含有量を高く維持し、かつ、酸素含有量を低く抑制することができた。
【0132】
一方、第1工程および第2工程における処理温度が上記範囲を下回るときには、表面処理反応が起こりにくくなるため、酸素濃度の上昇と、低温放電特性の低下の傾向が観察された。また、処理温度が150℃であるときには、表面処理が十分になされたが、突沸によって攪拌装置が損傷を受けるおそれがあった(実施例34)。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明により、低温放電特性に優れたアルカリ蓄電池を効率的に生産できる。よって、本発明は、パワーツールや電気自動車用途など、高出力タイプのアルカリ蓄電池の電極製造技術として利用可能性が高く、かつ有用性も高い。
【符号の説明】
【0134】
6 封口板、 11 正極、 11a 正極合剤、 11b 正極芯材、 12 負極、 12a 負極合剤、 12b 負極芯材、 13 セパレータ、 15 電池ケース、 17 ガスケット、 18 正極集電板、 18a 正極リード、 19 負極集電板、 19a 負極リード、 20 極板群、 21、22 極板群の端面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NiおよびMgを含有し、Ni含有量が35〜60重量%である水素吸蔵合金粉末と、水酸化リチウム水溶液と、を含む第1混合物を攪拌する第1工程と、
前記第1工程を経た水素吸蔵合金粉末と、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの少なくともいずれかの水酸化アルカリ金属水溶液と、を含む第2混合物を攪拌する第2工程と、を有する、水素吸蔵合金粉末の表面処理方法。
【請求項2】
前記水酸化リチウム水溶液の水酸化リチウム濃度が0.1〜8mol/Lである、請求項1に記載の水素吸蔵合金粉末の表面処理方法。
【請求項3】
前記水酸化アルカリ金属水溶液は、水酸化ナトリウムを含み、かつ水酸化ナトリウムの濃度が7〜20mol/Lである、請求項1または2に記載の水素吸蔵合金粉末の表面処理方法。
【請求項4】
前記水酸化アルカリ金属水溶液は、水酸化カリウムを含み、かつ水酸化カリウムの濃度が5〜13mol/Lである、請求項1または2に記載の水素吸蔵合金粉末の表面処理方法。
【請求項5】
前記第1混合物の温度が50〜150℃である、請求項1〜4のいずれかに記載の水素吸蔵合金粉末の表面処理方法。
【請求項6】
前記第2混合物の温度が50〜150℃である、請求項1〜5のいずれかに記載の水素吸蔵合金粉末の表面処理方法。
【請求項7】
前記水素吸蔵合金が、Ce2Ni7型またはCeNi3型の結晶構造を有している、請求項1〜6のいずれかに記載の水素吸蔵合金粉末の表面処理方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の表面処理方法で処理された水素吸蔵合金粉末。
【請求項9】
酸素濃度が1.10重量%以下である、請求項8に記載の水素吸蔵合金粉末。
【請求項10】
磁性体の含有量が1.30重量%以上である、請求項8または9に記載の水素吸蔵合金粉末。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載の水素吸蔵合金粉末を含む、アルカリ蓄電池用負極。
【請求項12】
ニッケルを含む正極と、請求項11に記載のアルカリ蓄電池用負極と、アルカリ電解液と、を備える、アルカリ蓄電池。

【図1】
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【公開番号】特開2010−7177(P2010−7177A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111148(P2009−111148)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】