説明

水素吸蔵合金粉末の製造方法

【課題】短絡の原因となる不純物を除去することができる、新たな水素吸蔵合金粉の製造方法を提案する。
【解決手段】磁石を用いて磁着物を排除する磁選工程を行うことにより水素吸蔵合金粉末を製造した。すなわち、水素吸蔵合金原料を溶解して溶湯とし、これを冷却して得られた水素吸蔵合金インゴットを粉砕した後、磁石を用いて磁着物を磁力選別することにより、短絡の原因となる不純物を除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素吸蔵合金粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素吸蔵合金は、水素と反応して金属水素化物となる合金であり、室温付近で多量の水素を可逆的に吸蔵・放出し得るため、電気自動車(Electric Vehicle、「EV」とも言う。)、ハイブリッド自動車(Hybrid Electric Vehicle、「HEV」とも言う。)やデジタルスチルカメラに搭載されるニッケル・水素電池や燃料電池の負極材料などとして利用されている。
【0003】
水素吸蔵合金としては、LaNiに代表されるAB型合金、ZrV0.4Ni1.5に代表されるAB型合金、そのほかAB型合金やAB型合金など様々な構成の合金が知られている。その多くは、水素との親和性が高く水素吸蔵量を高める役割を果たす元素グループ(Ca、Mg、希土類元素、Ti、Zr、V、Nb、Pt、Pdなど)と、水素との親和性が比較的低く吸蔵量は少ないが、水素化反応が促進し反応温度を低くする役割を果たす元素グループ(Ni、Mn、Cr、Feなど)との組合せで構成されている。
【0004】
このような水素吸蔵合金は、例えば原料金属を所定の比率で配合して溶解して鋳型へ鋳込んだ後、その鋳塊(インゴット)に熱処理を施し、この鋳塊(インゴット)を粗砕し、次いで所定の粒度に揃えるために微粉砕して製造されている。
【0005】
ところで、水素吸蔵合金粉末中に合金を構成しない不純物が含まれていると、水素吸蔵量が低下する可能性があるばかりか(特許文献1参照)、たとえば通常の条件で充放電を繰り返すうちは問題なくても、過放電のような厳しい条件下で充放電を繰り返すうちに不純物が電解液(アルカリ性溶液)に溶出し、セパレータを貫通して短絡(電圧降下)を生じる可能性がある。
【0006】
そこで従来、水素吸蔵合金中の不純物量を低減する方法が開示されている。例えば特許文献2には、不純物元素を含む合金を溶解するアークまたはプラズマアークを発生する装置にて溶解し、溶湯を回転体に受け、該回転体の回転によって溶湯を飛散させ、その飛散した溶湯を回転する円筒状鋳型の内面で凝固させることにより、水素吸蔵合金の不純物量を低減する製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−272906号公報
【特許文献2】特開2003−1389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、EVやHEVに搭載するような大型の電池では、複数(例えば200〜300個)の電池セルを直列に接続して一つの大きな電池を構成するため、どこか1箇所でも短絡したら全体が短絡することになる。そのため、この種の電池に用いられる負極活物質には高度の信頼性が求められ、短絡の原因となる不純物をできる限り除去することが望まれる。
従来は、ある程度の不純物を含んでいても、水素吸蔵合金粉末をアルカリ処理することによって、不純物の短絡への影響を抑制することができたが、この種の電池において今後さらなる高度の信頼性を得るためには、短絡の原因となる不純物を水素吸蔵合金粉末からできる限り除去することが望まれる。
【0009】
そこで本発明は、短絡の原因となる不純物を除去することができる、新たな水素吸蔵合金粉の製造方法を提案せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、磁石を用いて磁着物を排除する磁選工程を備えた水素吸蔵合金粉末の製造方法、より好ましくは、水素吸蔵合金原料を溶解して溶湯とし、これを冷却して得られた水素吸蔵合金インゴットを粉砕した後、磁石を用いて磁着物を排除する磁選工程を行うことを特徴とする水素吸蔵合金粉末の製造方法を提案するものである。
なお、ここでの「粉砕」とは、後述する粗砕乃至微粉砕を包含する意味である。
【0011】
短絡の原因となる不純物について研究した結果、水素吸蔵合金粉末中に含まれる全ての不純物が短絡の原因になるのではなく、その一部、特に磁力によって磁石に付着する磁着物すなわちFe及びCrが影響することが見出された。そこで本発明は、かかる知見に基づき、磁石を用いてこれらの磁着物を効果的に排除することで、短絡の原因となる不純物を効果的に除去することに成功した。
Ni、Coなどの水素吸蔵合金を構成する元素は磁力を有しており、該磁力によって磁石に付着するため、水素吸蔵合金自体も磁石に付着する。よって、従来は磁石を用いて不純物を選別することは当業者にとって想定外であったが、磁石の強度を制御することにより、磁石による選別が可能であることを見出したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態について詳細に述べるが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本実施形態に係る水素吸蔵合金粉末の製造方法(「本製造方法」という)は、水素吸蔵合金原料を溶解して溶湯とした後冷却して水素吸蔵合金インゴットとし(「鋳造工程」)、必要に応じて熱処理し(「熱処理工程」)、次に水素吸蔵合金インゴットを機械的に粉砕(「粗砕工程」)し、次いで磁石を用いて磁着物を排除する磁力選別を行い(「磁選工程」)、その後、必要に応じてさらに機械的に粉砕(「微粉砕工程」)して水素吸蔵合金粉末(「本水素吸蔵合金粉」という)を得ることを特徴する製造方法である。以下、詳細に説明する。
【0014】
(水素吸蔵合金の組成)
本製造方法で製造する水素吸蔵合金粉末の組成は、特に限定するものではない。どのような組成の水素吸蔵合金粉末であっても、少なくとも本発明の短絡抑制効果については同様の結果を享受できるものと期待することができる。
【0015】
ただし、EVやHEVに搭載する電池の負極活物質材料としては、CaCu型等の結晶構造の母相を有するABx型水素吸蔵合金が好ましい。
この際、ABx型水素吸蔵合金のAサイトの金属としては、例えばLa、或いはLaを含むMm(希土類系の混合物であるミッシュメタル)を挙げることができ、Bサイトの金属としては、例えばNi、Al、Mn、Co、Fe、Ti、V、Zn及びZrなどのいずれか、或いはこれらの二種類以上の組合せを挙げることができる。
【0016】
ABx組成におけるAサイトを構成する元素の合計モル数に対するBサイトを構成する元素の合計モル数の比率(この比率は「ABx」「B/A」とも称されている)は、5.00≦ABx≦5.50であるのが好ましい。特に5.15≦ABx≦5.45であるのが好ましく、中でも特に5.30≦ABx≦5.40であるのがさらに好ましい。
【0017】
中でも、一般式(1)・・MmNiMnAlCo又はMmNiMnAlCoFeで表すことができる水素吸蔵合金が好ましい。
そこで以下に、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される電池の負極活物質への利用を考慮して、一般式MmNiMnAlCo又はMmNiMnAlCoFeで表すことができる水素吸蔵合金の好ましい母相の元素組成例について説明する。
【0018】
一般式(1)における「Mm」は、少なくともLa及びCeを含む希土類系の混合物(ミッシュメタル)であればよい。通常のMmは、La及びCeのほかにPr、Nd、Sm等の希土類を含んでいる。例えばCe(40〜50%)、La(20〜40%)、Pr、Ndを主要構成元素とする希土類混合物を挙げることができるが、本水素吸蔵合金においては、Mm中のLa、Ce、Nd及びPrの含有割合(質量%)が、56.8≦La(Mm中)≦88.4、8.1≦Ce(Mm中)≦30.4、0≦Nd(Mm中)≦9.7、0≦Pr(Mm中)≦3.1であるものが好ましい。
中でも、Laは、Mm中で63.1〜88.4質量%を占めるのが好ましく、78.9〜88.4質量%を占めるのがより好ましい。 Ceは、Mm中で8.1〜25.9質量%を占めるのが好ましく、8.1〜20.1質量%を占めるのがより好ましい。
Ndは、Mm中で0〜8.3質量%を占めるのが好ましく、0〜4.7質量%を占めるのがより好ましい。
Prは、Mm中で0〜2.7質量%を占めるのが好ましく、0〜1.5質量%を占めるのがより好ましい。
【0019】
Coについては、その量を低減すれば安価に提供できるが、その寿命特性を維持することが難しくなるため、Coの割合(d)は、0<d≦0.80に設定することが好ましく、さらに好ましくは0<d≦0.30、中でも特に0.05≦d≦0.30であることが好ましい。
【0020】
Feの割合(e)は、0<e<0.30であるのが好ましく、中でも0<e<0.25、その中でも0<e≦0.20の範囲内で調整するのが好ましい。
【0021】
Niの割合(a)は、4.0≦a≦4.7、好ましくは4.1≦a≦4.6、特に好ましくは4.3≦a≦4.6、中でも更に好ましくは4.4≦a≦4.6である。4.0≦a≦4.7の範囲内であれば、出力特性を維持し易く、しかも微粉化特性や寿命特性を格別に悪化させることもない。
【0022】
Mnの割合(b)は、0.3≦b≦0.7、好ましくは0.3≦b≦0.6、更に好ましくは0.3≦b≦0.5である。Mnの割合が0.3≦b≦0.7の範囲であれば、微粉化残存率を維持し易くすることができる。
【0023】
Alの割合(c)は、0.20≦c≦0.50、好ましくは0.20≦c≦0.45、更に好ましくは0.25≦c≦0.45である。Alの割合が0.20≦c≦0.50の範囲内であれば、プラトー圧力が必要以上に高くなって充放電のエネルギー効率を悪化させるのを抑えることでき、しかも水素吸蔵量が低下するのを抑えることもできる。
【0024】
なお、本水素吸蔵合金は、Ti,Mo,W,Si,Ca,Pb,Cd,Mgのいずれかの不純物を0.05質量%程度以下であれば含んでいてもよい。
【0025】
(鋳造工程)
本水素吸蔵合金粉の合金原料を秤量し、混合して得られた混合物は、例えば誘導加熱による高周波加熱溶解炉などを用いて溶解して溶湯とする。そして、この溶湯を鋳型、例えば水冷型の鋳型に流し込んで、例えば1350〜1550℃の鋳湯温度で鋳造し、所定の冷却速度(所定の冷却水量)で冷却すればよい。
なお、鋳造方法としては、鋳型鋳造法が好ましいが、その他の鋳造法、例えばツインロール法(具体的には特願2002−299136の段落[0013]〜[0016]参照)、アズキャスト法(具体的には特願2002−299136の段落[0019]〜[0020]参照)などその他の鋳造法を採用することもできる。
【0026】
(熱処理工程)
次に、必要に応じて、すなわち結晶構造や成分の均質化を行う必要に応じて、例えばアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で、例えば1000〜1200℃、3〜6時間置くようにして熱処理すればよい。
【0027】
(粗砕工程)
水素吸蔵合金インゴットの粗砕は、例えば500μmの篩目を通過する粒子サイズ(−500μm)まで粉砕するのが好ましい。但し、粗砕の程度は、必要に応じて1000μmの篩目を通過する粒子サイズ(−1000μm)までの粉砕であっても、また、850μmの篩目を通過する粒子サイズ(−850μm)までの粉砕であってもよい。
見方を変えると、水素吸蔵合金インゴットの粗砕は、粉砕後の粉体の安息角が24〜44°になるように、特に26〜42°になるように、中でも特に29〜39°になるように粉砕するのが好ましい。
なお、この段階で細かく粉砕し過ぎると磁選効率が低下するため、ある程度微粉化してもよいが、150μmオーバーの粗粉が50質量%以上含まれるように粗砕するのが好ましい。
【0028】
水素吸蔵合金インゴットの粗砕は、粉体と接触する粉砕部分、すなわち粉砕手段が鉄或いは鉄合金からなる解砕装置乃至粉砕装置を用いて行うことができる。このような解砕装置乃至粉砕装置としては、例えばロールクラッシャー、ダブルロールクラッシャー、ジョークラッシャーなどを挙げることができる。
鉄或いは鉄合金を含有する粉砕手段を備えた装置で粗砕すれば、当該鉄或いは鉄合金が粗砕された中に混入することになるが、次の磁選工程において少なくとも短絡に影響する磁着物を除去することができるから、このような粉砕装置で粗砕することができる。但し、ここでの意味は、鉄或いは鉄合金を含有する粉砕手段を備えた装置で粗砕するのが好ましいという意味ではなく、本発明の効果をより享受できるという意味である。
水素吸蔵合金インゴットの粗砕は、乾式で行うものであっても、湿式で行うものであってもよい。
【0029】
(磁選工程)
粗砕された水素吸蔵合金は、次に磁選工程に送る。この際、粉砕直後は応力があって磁石に磁着物が付着し易くて好ましくないため、粗砕後20秒以上、より好ましくは30秒以上、中でも好ましくは40秒以上の時間を置いて磁選装置に投入するのが好ましい。
但し、粗砕後あまりに長時間置くと、変質する可能性があるため、48時間以内、中でも24時間以内、その中でも特に12時間以内とするのが好ましい。
【0030】
磁選工程では、磁石を用いて磁着物を磁石に付着させ、付着した磁着物を除去し、すなわち非磁着物を回収して水素吸蔵合金粉末を得るようにする。
なお、磁選は、乾式でも、湿式でも行うことができる。
【0031】
この際、用いる磁石は、磁力が100mT±10%〜600mT±10%であるのが好ましい。
水素吸蔵合金は磁力を有するため、強力な磁石を使用すると短絡に影響のない水素吸蔵合金も除去されることになり、歩留まりが悪くなってしまう。従来、水素吸蔵合金の製造工程で磁力による選別が行われなかったのは、このためである。これに対し、磁力が100mT±10%〜600mT±10%の磁石を使用すると、水素吸蔵合金の歩留を維持しつつ、短絡の原因となる物質を除去することができる。
かかる観点から、用いる磁石の磁力は100mT±10%〜500mT±10%であるのがより好ましく、特に150mT±10%〜450mT±10%がさらに好ましく、その中でも特に150mT±10%〜400mT±10%がさらに好ましい。
なお、同じ磁力100mTの磁石であっても、その磁力は環境によって20%程度は変化するため、「±10%」と表記している。
【0032】
用いる磁石は、永久磁石でも電磁石でも構わない。また、磁石の形状、大きさ、表面積、磁石間距離などは適宜選択が可能であり、最適なもの選択すればよい。
目安としては、磁石の表面積(複数個の場合はその合計表面積)は50cm2〜3000cm2が好ましく、特に50cm2〜2000cm2が好ましい。
また、磁石の大きさは、磁選する粉体の粘性等により決定するのが好ましいが、目安としてはφ1mm〜100mmの径を有するものが好ましく、特にφ10mm〜80mmの径、その中でも特にさらにφ20mm〜50mmを有するものが好ましい。
【0033】
水素吸蔵合金を磁選装置に投入する速度は、150g/分〜15000g/分が好ましく、特に200g/分〜10000g/分、さらに200g/分〜8500g/分が好ましい。
また、磁石の表面積(複数個の場合はその合計表面積)に対する投入速度が、300((g/分)/cm2)以下となるように、その中でも150((g/分)/cm2)以下、特に75((g/分)/cm2)以下となるように調整するのが好ましい。また、棒状の磁石において、長さ方向位置によって磁力と向き(N・S)が変化する場合、磁力の最大絶対値を示すことが通常である。
【0034】
好ましい磁力選別機の一例として、所定の磁力を有する棒状の磁石を間隔を置いて並設し、且つそれを上下に複数段重ねた構成を備えた磁力選別機を挙げることができる。このような装置において、上下に磁石を複数段重ねる場合、磁石の方向を上下で互い違いとなるように配置することもできる。
また、好ましい磁力選別機の他例として、所定の磁力を有する棒状の磁石、特に丸棒状の磁石を円周上に間隔を置いて配置して円筒状を構成し、当該円筒が水平軸を中心に回転し、かつ円筒の上から水素吸蔵合金を落下させる構成の磁力選別機を挙げることができる。この場合の磁石(円筒体)の回転数は、回転を速めると、磁着した磁着物が遠心力により剥がれてしまうため、100回転/分以下、特に60回転/分以下、中でも40回転/分以下に調整するのが好ましい。
【0035】
磁選装置に関しては、投入速度に対する磁選槽体積(:水素吸蔵合金を投入して磁選を行う空間の体積)の比率が、0.5〜100(cm3/(g/分))であるのが好ましい。この範囲に規定される磁選装置であれば、有効に磁着物を除去できるからである。
かかる観点から、投入速度に対する磁選槽体積の比率は0.5〜90(cm3/(g/分))であるのが特に好ましく、中でも0.5〜80(cm3/(g/分))であるのがさらに好ましい。
【0036】
(微粉砕工程)
磁選して得られた水素吸蔵合金粉末は、用途に応じて、例えば150μmの篩目を通過する粒子サイズ(−150μm)まで微粉砕するのが好ましい。
但し、粉砕の程度は、必要に応じて250μmの篩目を通過する粒子サイズ(−250μm)までの粉砕であっても、150μmの篩目を通過する粒子サイズ(−150μm)までの粉砕であっても、70μmの篩目を通過する粒子サイズ(−70μm)までの粉砕であっても、35μmの篩目を通過する粒子サイズ(−35μm)までの粉砕であってもよい。
歩留りの点からは、150μmの篩目を通過する粒子サイズ(−150μm)まで粉砕するのが好ましい。
【0037】
微粉砕は、粉体と接触する粉砕部分、すなわち粉砕手段が鉄或いは鉄合金からなる解砕装置乃至粉砕装置を用いて行うことができる。このような解砕装置乃至粉砕装置としては、例えばピンミルやハンマーミルなどを挙げることができる。
なお、鉄或いは鉄合金を含有する粉砕手段を備えた装置で微粉砕すれば、当該鉄或いは鉄合金が粗砕された中に混入することになるが、微粉砕では、短絡の原因となる磁着物量がほとんど増えないことを本発明者は確認している(後述する比較例1及び比較例2参照)。その原因としては、微粉砕の粉砕機の中は水素吸蔵合金が固着して接粉部分が被覆されているために、磁着物がほとんど増えないものと考えることができる。
【0038】
なお、磁力選別は、微粉砕後ではなく、粗砕後に行うのが好ましい。その理由は、粉砕機起因の磁着物量は、微粉砕の粉砕機の中は水素吸蔵合金が固着して接粉部分が被覆されているために混入割合としては微粉砕工程よりも大きな塊を粗砕する工程の方が多く、さらには微粉砕後に磁選すると、粉末粒子の表面積が大きいため、磁選装置内部に微粉が詰まって閉塞を生じやすいためである。
【0039】
(その他の処理)
その後、必要に応じて、金属材料や高分子樹脂等により合金表面を被覆したり、酸やアルカリで表面を処理したりするなど適宜表面処理を施し、各種の電池の負極活物質として用いることができる。
【0040】
(評価)
短絡の原因となる不純物について研究した結果、粉砕時など製造過程で混入してくる鉄(Fe)やNi、Cr、SUSなど、比較的粒度が大きくて磁力も大きな金属化合物(磁着物)が短絡に影響していることが分かってきた。そのため、本発明のように磁選を行うことにより、このような短絡に影響する磁着物を除去することが可能である。しかも、磁選条件(主に磁石の磁力)を適宜調整することにより、水素吸蔵合金粉末の歩留まりを維持しつつ、短絡の原因となる不純物を選択的に除去することができる。
【0041】
本製造方法によって製造される水素吸蔵合金は、下記実施例で行った測定方法による磁着物量が0.15ppm未満、より好ましくは0.12ppm未満、特に好ましくは測定限界未満とすることができる。
これに対し、本製造方法のような磁選を行わないと、磁着物量を0.15ppmより下げることができないため、磁着物量が0.15ppm未満である水素吸蔵合金は、磁選を行っているものと推定することができる。
【0042】
(本水素吸蔵合金粉の利用)
本水素吸蔵合金粉は、公知の方法により、電池用負極を調製することができる。すなわち、公知の方法により結着剤、導電助剤などを混合、成形すれば水素吸蔵合金負極を製造することができる。
【0043】
このようにして得られる水素吸蔵合金負極は、二次電池のほか一次電池(燃料電池含む)にも利用することができる。例えば、水酸化ニッケルを活物質とする正極と、アルカリ水溶液よりなる電解液と、セパレータからニッケル―MH(Metal Hydride)二次電池を構成することができ、小型又は携帯型の各種電気機器、電動工具、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池(リチウム電池など他の電池と組み合わせて使用するハイブリッド型の燃料電池も含む)などの電源用途に好適に利用することができる。
本水素吸蔵合金粉は、短絡の原因となる不純物ができる限り除去されており、高度の信頼性に応えられるという点から、特に電気自動車やハイブリッド自動車に搭載するような大型の電池用の負極活物質として特に好適に利用することができる。
なお、「ハイブリッド自動車」とは、電気モータと内燃エンジンという2つの動力源を併用した自動車の意味であり、この際「内燃エンジン」にはガソリンエンジンばかりでなく、ディ−ゼルエンジン、その他のエンジンも含まれる。
また、ヒートポンプ、太陽・風力などの自然エネルギーの貯蔵、水素貯蔵、アクチュエータなどに使用される水素吸蔵合金への利用も可能である。
【0044】
(語句の説明)
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であるのが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0046】
<過放電短絡試験>
本発明者らは、これまでの様々な試験の結果から、過放電状態における短絡の原因物質は鉄及びCrであることを確認している。ここでは、水素吸蔵合金にFe又はSUSを添加して、過放電状態における短絡の原因物質が鉄及びCrを示す。
【0047】
(電極セルの作製)
1−1)水素吸蔵合金のみ(標準):
水素吸蔵合金1gに、導電材としてのニッケル粉末3g、及び結着材としてのポリエチレン粉末0.12gを混合し、得られた粉1.24g(水素吸蔵合金0.3g含有)を発泡Ni上に加圧成形して直径18mm、厚さ1.8mmのペレット型とし、150℃×1時間真空焼成を行ってペレット電極を作製し、このペレット電極を負極とし、これを計算負極容量の2倍以上の容量をもつ正極(焼結式水酸化ニッケル)でセパレータを介して挟み込み、30wt%のKOH水溶液中に浸漬させて開放型試験セルを作製した。
【0048】
1−2)Fe添加品:
水素吸蔵合金0.95gとFe粉(増田理化工業(株) 鉄粉末60mesh 4N8%)0.05gに、導電材としてのニッケル粉末3g、及び結着材としてのポリエチレン粉末0.12gを混合し、得られた粉1.24g(水素吸蔵合金0.29g含有)を発泡Ni上に加圧成形して直径18mm、厚さ1.8mmのペレット型とし、150℃×1時間真空焼成を行ってペレット電極を作製した。このペレット電極を負極とし、これを計算負極容量の2倍以上の容量をもつ正極(焼結式水酸化ニッケル)でセパレータを介して挟み込み、30wt%のKOH水溶液中に浸漬させて開放型試験セルを作製した。
【0049】
1−3)SUS304添加品:
水素吸蔵合金0.95gとSUS304粉(増田理化工業(株)ステンレスSUS304粉末 −100mesh)0.05gに、導電材としてのニッケル粉末3g、及び結着材としてのポリエチレン粉末0.12gを混合し、得られた粉1.24g(水素吸蔵合金0.29g含有)を発泡Ni上に加圧成形して直径18mm、厚さ1.8mmのペレット型とし、150℃×1時間真空焼成を行ってペレット電極を作製した。このペレット電極を負極とし、これを計算負極容量の2倍以上の容量をもつ正極(焼結式水酸化ニッケル)でセパレータを介して挟み込み、30wt%のKOH水溶液中に浸漬させて開放型試験セルを作製した。
【0050】
(電圧低下測定前充放電条件と過放電短絡試験方法)
上記の開放型試験セルを充放電装置(東洋システム(株)製 充放電試験機:Toscat3000)に接続し、温度調整可能な恒温槽(YAMATO製)中に入れ、温度20℃の条件下で行った。
先ず、充電:0.2C×6時間、放電0.2C、0.7Vカットで10サイクル実施した。その後、CC/CV(定電流/定電圧)モードにて0.2C/0.1Vまで放電し、0.1Vを24時間保持した後、12時間休止(放置)した。その後、充電から開始し、さらに3サイクル充電まで充電:0.2C×6時間、放電0.2C、0.7Vカットで実施した。その後、そのまま休止(放置)し、電圧の観測を行った。
なお、放置時間はいずれも250時間とした。
【0051】
【表1】

【0052】
このような試験結果からも、過放電状態における短絡の原因物質は鉄及びCrであることが確認できた。
【0053】
<実施例・比較例>
次に、本発明に関する実施例及び比較例について説明するが、先ずは、実施例及び比較例の評価方法について説明する。
【0054】
(磁着物量の測定)
実施例及び比較例で得られたサンプル(粉体)をスラリー化すると共に、テトラフルオロエチレンで被覆された磁石をスラリーに投入して磁着物を磁石に付着させた後、JIS G 1258:1999を参酌して、磁石に付着した磁着物を酸溶解して磁着物を定量する方法を採用して行った。次に詳細に説明する。
なお、磁石に付着した磁着物は微量であるため、磁石ごと酸性溶液に浸漬させて磁着物を酸溶解させる必要がある。そこで、磁石には、テトラフルオロエチレンで被覆された磁石を用い、測定前に各磁石の強度を測定した。磁石の強度は、KANETEC社製TESLA METER 型式TM−601を用いて測定した。
【0055】
すなわち、500ccのポリプロピレン製ポットに水素吸蔵合金粉末(サンプル)を100g入れ、イオン交換水100ccとテトラフルオロエチレンで被覆された150mTの磁石1個とを入れて、ボールミル回転架台にのせ、予め調整した回転数60rpmで30分間回転させた。次に、磁石を取り出し、300mLトールビーカーに入れてイオン交換水に浸して超音波洗浄機(型式US-205 株式会社エスエヌディ製)で出力切替2周波の設定にて3分間洗浄し、磁石に付着した余分な粉を除去した。磁石を浸しているイオン交換水の交換と超音波での洗浄を8回繰り返した。その後、磁石を取り出し、100mLのメスシリンダーに入れ、磁石が完全に水没する量の王水(濃塩酸と濃硝酸とを3:1の体積比で混合した液体)に浸し、王水中で80℃で30分間加温して磁着物を溶解させた。
王水から磁石を取り出し、磁着物が溶解している王水をイオン交換水で希釈した。希釈した王水をICP発光分析装置で、La、Fe、Crの元素を分析した。
この磁着物には、水素吸蔵合金も一部含まれているため、分析値中のLa量から水素吸蔵合金中に組成成分として含まれるFe量を計算し、Feの分析値から差し引いて、残ったFe量を算出し、不純物としてのFe量値とした。
上記によって得られた不純物としてのFe量とCr量の合計をサンプル質量当りの磁着物量とし、算出した。
【0056】
(粗砕後の粒度の測定:150μmオーバー(+150μm)の割合の測定)
粗砕後の水素吸蔵合金粉末100gを篩目150μmの篩にて、IIDA SEISAKUSHO(株)製IIDA SIEVE SHAKERを用い、10分間粒度分けを行った。その後、篩上、篩下の質量を測定し、以下の式を用いて+150μmの割合を算出した。
+150μm割合(質量%) = 篩上質量/(篩上質量+篩下質量)×100
【0057】
(安息角の測定)
粗砕後の水素吸蔵合金粉末の流動性の指標として、水素吸蔵合金粉末の安息角を次のようにして測定した。
【0058】
ホソカワミクロン社製パウダーテスターを用いて、粗砕後の水素吸蔵合金粉末の水素吸蔵合金粉の安息角を測定した。すなわち、試料をパウダーテスター付属のロートより投入し、受け皿に十分な山を形成するまで試料の供給を行い、形成した山の角度を測定した。
【0059】
(微粉砕後の水素吸蔵合金粉末の平均粒径の測定)
微粉砕後の水素吸蔵合金粉末の平均粒径(D50)は、マイクロトラック(日機装(株)製、HRA9320−X100)を使用して下記条件設定の下で測定した。
(Transp):Reflec
(Sphere):No
(RefInx):1.51
(Flow):60ml/sec
【0060】
(実施例1)
各元素の質量比率で、Mm:31.70%、Ni:59.45%、Mn:5.20%、Al:2.10%、Co:1.30%、Fe:0.25%となるように原料(Ni、Mn、Al、Co及びFeの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:79.9%、Ce:20.1%となるよう調整したものを原料として用いた。
【0061】
上記で得られた混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10-4〜10-5Torrまで減圧にした後、アルゴンガスを導入し、アルゴンガス雰囲気中で1450℃まで加熱し、次いで総質量200kgの水冷式銅鋳型に10kgの溶湯を4kg/秒で流し込み、水素吸蔵合金インゴットを得た。さらに、得られた水素吸蔵合金インゴットをステンレス鋼製容器に入れて真空熱処理装置にセットし、アルゴンガス雰囲気中、1080℃で3時間の熱処理を行った。
【0062】
次に、Fuji Paudl社製ジョークラッシャー(型式1021−B)と吉田製作所製ブラウンミル(型式1025−HBG)とを用いて、水素吸蔵合金インゴットを500μmの篩目を通過する粒子サイズ(−500μm)まで粗砕し、得られた水素吸蔵合粉を60秒かけて磁選装置まで移送し、磁選工程に供した。
磁選工程では、下記に説明する磁力選別機を使用して、磁石の合計表面積に対する投入速度が35((g/分)/cm2)となるように、水素吸蔵合粉を投入することで磁力選別(投入速度に対する磁選槽体積の比率1.3cm3/(g/分))を行った。
【0063】
次に、磁選工程で回収された非磁着物としての水素吸蔵合粉を、東京アトマイザ製造社製バンタムミル(型式TAP−1WZ型)を用いて、水素吸蔵合金インゴットを106μmの篩目を通過する粒子サイズ(−106μm)まで微粉砕し、水素吸蔵合粉(サンプル)を得た。
【0064】
なお、使用した磁力選別機は、300mT(±30mT)の磁力を有する断面丸型棒状の磁石を並設し、且つそれを上下に2段重ねた構成(磁石の合計表面積200cm2)を備えた磁力選別機を使用した。
【0065】
得られた水素吸蔵合金は、ICP発光分析装置により、MmNi4.46Al0.35Mn0.42Co0.10Fe0.020(ABx=5.35)であることを確認した。
【0066】
(実施例2)
実施例1と同様に粗砕を行った後、得られた水素吸蔵合粉を60秒かけて磁選装置まで移送し、磁選工程に供した。
磁選工程では、下記に説明する磁力選別機を使用して、磁石の合計表面積に対する投入速度が0.75((g/分)/cm2)となるように、水素吸蔵合粉を投入することで磁力選別(投入速度に対する磁選槽体積の比率40cm3/(g/分))を行った。
【0067】
次に、磁選工程で回収された非磁着物としての水素吸蔵合粉を、東京アトマイザ製造社製バンタムミル(型式TAP−1WZ型)を用いて、水素吸蔵合金インゴットを106μmの篩目を通過する粒子サイズ(−106μm)まで微粉砕し、水素吸蔵合粉(サンプル)を得た。
【0068】
なお、使用した磁力選別機は、200mT(±20mT)の磁力を有する断面丸型棒状の磁石を並設し、且つそれを上下に4段重ねた構成(磁石の合計表面積400cm2)を備えた磁力選別機を使用した。
【0069】
(比較例1)
磁選と微粉砕を行わなかった以外は、実施例1と同様にして水素吸蔵合粉(サンプル)を得た。
【0070】
(比較例2)
磁選を行わなかった以外は、実施例1と同様にして水素吸蔵合粉(サンプル)を得た。
【0071】
【表2】

【0072】
(実施例3)
各元素の質量比率で、Mm:31.57%、Ni:58.43%、Mn:5.20%、Al:2.10%、Co:2.70%となるように原料(Ni、Mn、Al及びCoの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:79.2%、Ce:20.8%となるよう調整したものを原料として用いた。
以降は、実施例1と同様に水素吸蔵合金を得た。
【0073】
得られた水素吸蔵合金はICP発光分析装置により、MmNi4.39Al0.34Mn0.42Co0.20(ABx=5.35)であることを確認した。
【0074】
(実施例4)
磁選工程以外は、実施例3と同様に行った。
【0075】
磁選工程では、下記に説明する磁力選別機を使用して、磁石の合計表面積に対する投入速度が54((g/分)/cm2)となるように、水素吸蔵合粉を投入することで磁力選別(投入速度に対する磁選槽体積の比率1.4cm3/(g/分))を行った。
なお、使用した磁力選別機は、450mT(±45mT)の磁力を有する断面丸型丸棒状の磁石を円周上に間隔を置いて5個配置して円筒状とし、当該円筒が水平軸を中心に40(回転/分)で回転する構成(磁石の合計表面積130cm2)を備えた磁力選別機を使用した。
【0076】
(実施例5)
各元素の質量比率で、Mm:31.70%、Ni:59.70%、Mn:5.20%、Al:2.10%、Co:1.30%となるように原料(Ni、Mn、Al、及びCoの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:78.9%、Ce:14.9%、Nd:4.7%、Pr:1.5%となるよう調整したものを原料として用いた。
以降は実施例4と同様に水素吸蔵合金を得た。
【0077】
得られた水素吸蔵合金はICP発光分析装置により、MmNi4.48Al0.35Mn0.42Co0.10(ABx=5.35)であることを確認した。
【0078】
(実施例6)
各元素の質量比率で、Mm:31.70%、Ni:59.60%、Mn:5.20%、Al:2.10%、Co:1.30%、Fe:0.10%となるように原料(Ni、Mn、Al、Co及びFeの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:88.4%、Ce:8.1%、Nd:2.6%、Pr:0.9%となるよう調整したものを原料として用いた。
以降は実施例4と同様に水素吸蔵合金を得た。
【0079】
得られた水素吸蔵合金はICP発光分析装置により、MmNi4.47Al0.35Mn0.42Co0.10Fe0.008(ABx=5.35)であることを確認した。
【0080】
(実施例7)
各元素の質量比率で、Mm:31.70%、Ni:59.30%、Mn:5.20%、Al:2.10%、Co:1.30%、Fe:0.40%となるように原料(Ni、Mn、Al、Co及びFeの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:56.8%、Ce:30.4%、Nd:9.7%、Pr:3.1%となるよう調整したものを原料として用いた。
以降は実施例4と同様に水素吸蔵合金を得た。
【0081】
得られた水素吸蔵合金はICP発光分析装置により、MmNi4.45Al0.35Mn0.42Co0.10Fe0.032(ABx=5.35)であることを確認した。
【0082】
(実施例8)
各元素の質量比率で、Mm:31.44%、Ni:60.68%、Mn:4.94%、Al:1.98%、Co:0.66%、Fe:0.30%となるように原料(Ni、Mn、Al、Co及びFeの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:63.6%、Ce:25.7%、Nd:8.0%、Pr:2.7%となるよう調整したものを原料として用いた。
以降は実施例4と同様に水素吸蔵合金を得た。
【0083】
得られた水素吸蔵合金はICP発光分析装置により、MmNi4.60Al0.33Mn0.40Co0.05Fe0.024(ABx=5.40)であることを確認した。
【0084】
(実施例9)
各元素の質量比率で、Mm:31.78%、Ni:57.32%、Mn:4.74%、Al:1.84%、Co:4.02%、Fe:0.30%となるように原料(Ni、Mn、Al、Co及びFeの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:63.0%、Ce:26.2%、Nd:8.1%、Pr:2.7%となるよう調整したものを原料として用いた。
以降は実施例4と同様に水素吸蔵合金を得た。
【0085】
得られた水素吸蔵合金はICP発光分析装置により、MmNi4.30Al0.30Mn0.38Co0.30Fe0.020(ABx=5.30)であることを確認した。
【0086】
(実施例10)
各元素の質量比率で、Mm:31.51%、Ni:59.82%、Mn:6.19%、Al:1.52%、Co:0.66%、Fe:0.30%となるように原料(Ni、Mn、Al、Co及びFeの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:63.5%、Ce:25.8%、Nd:8.0%、Pr:2.7%となるよう調整したものを原料として用いた。
以降は実施例4と同様に水素吸蔵合金を得た。
【0087】
得られた水素吸蔵合金はICP発光分析装置により、MmNi4.53Al0.25Mn0.50Co0.05Fe0.024(ABx=5.35)であることを確認した。
【0088】
(実施例11)
各元素の質量比率で、Mm:31.91%、Ni:60.59%、Mn:3.76%、Al:2.77%、Co:0.67%、Fe:0.30%となるように原料(Ni、Mn、Al、Co及びFeの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:62.7%、Ce:26.4%、Nd:8.2%、Pr:2.7%となるよう調整したものを原料として用いた。
以降は実施例4と同様に水素吸蔵合金を得た。
【0089】
得られた水素吸蔵合金はICP発光分析装置により、MmNi4.53Al0.45Mn0.30Co0.05Fe0.024(ABx=5.35)であることを確認した。
【0090】
(実施例12)
各元素の質量比率で、Mm:31.53%、Ni:58.21%、Mn:4.95%、Al:2.13%、Co:0.66%、Fe:2.52%となるように原料(Ni、Mn、Al、Co及びFeの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:63.5%、Ce:25.9%、Nd:8.0%、Pr:2.6%となるよう調整したものを原料として用いた。
以降は実施例4と同様に水素吸蔵合金を得た。
【0091】
得られた水素吸蔵合金はICP発光分析装置により、MmNi4.40Al0.35Mn0.40Co0.05Fe0.200(ABx=5.40)であることを確認した。
【0092】
(実施例13)
各元素の質量比率で、Mm:31.45%、Ni:52.78%、Mn:8.65%、Al:1.82%、Co:5.30%となるように原料(Ni、Mn、Al、及びCoの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:79.5%、Ce:14.5%、Nd:4.5%、Pr:1.5%となるよう調整したものを原料として用いた。
以降は実施例4と同様に水素吸蔵合金を得た。
【0093】
得られた水素吸蔵合金はICP発光分析装置により、MmNi4.00Al0.30Mn0.70Co0.40(ABx=5.40)であることを確認した。
【0094】
(実施例14)
各元素の質量比率で、Mm:33.60%、Ni:56.37%、Mn:3.96%、Al:3.24%、Co:2.83%となるように原料(Ni、Mn、Al、及びCoの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:59.6%、Ce:28.7%、Nd:8.8%、Pr:2.9%となるよう調整したものを原料として用いた。
以降は実施例4と同様に水素吸蔵合金を得た。
【0095】
得られた水素吸蔵合金はICP発光分析装置により、MmNi4.00Al0.50Mn0.30Co0.20(ABx=5.00)であることを確認した。
【0096】
(実施例15)
各元素の質量比率で、Mm:31.53%、Ni:52.91%、Mn:3.71%、Al:1.22%、Co:10.63%となるように原料(Ni、Mn、Al、及びCoの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:63.5%、Ce:25.9%、Nd:8.0%、Pr:2.6%となるよう調整したものを原料として用いた。
以降は実施例4と同様に水素吸蔵合金を得た。
【0097】
得られた水素吸蔵合金はICP発光分析装置により、MmNi4.00Al0.20Mn0.30Co0.80(ABx=5.30)であることを確認した。
【0098】
(実施例16)
各元素の質量比率で、Mm:30.79%、Ni:60.70%、Mn:3.63%、Al:1.19%、Fe:3.69%となるように原料(Ni、Mn、Al、及びFeの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:81.2%、Ce:13.3%、Nd:4.1%、Pr:1.4%となるよう調整したものを原料として用いた。
以降は実施例4と同様に水素吸蔵合金を得た。
【0099】
得られた水素吸蔵合金はICP発光分析装置により、MmNi4.70Al0.20Mn0.20Fe0.30(ABx=5.50)であることを確認した。
【0100】
【表3】

【0101】
(考察)
この結果より、磁石を用いて磁着物を排除する磁選工程を行うことにより、好ましくは、水素吸蔵合金原料を溶解して溶湯とし、これを冷却して得られた水素吸蔵合金インゴットを粉砕した後、磁石を用いて磁着物を排除する磁選工程を行うことにより、歩留りを低下させることなく、短絡の原因となる不純物(鉄及びCr)を効果的に除去できることが判明した。
また、比較例1と比較例2を比較すると、鉄或いは鉄合金を含有する粉砕手段を備えた装置で微粉砕しても、磁着物量は増えないことが認められる。
【0102】
磁選を行わないと、磁着物量は0.15ppmより下がらないため、逆に磁着物量が0.15ppm未満である水素吸蔵合金は、磁選を行っているものと推定することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石を用いて磁着物を排除する磁選工程を備えた水素吸蔵合金粉末の製造方法。
【請求項2】
水素吸蔵合金原料を溶解して溶湯とし、これを冷却して得られた水素吸蔵合金インゴットを粉砕した後、磁石を用いて磁着物を排除する磁選工程を行うことを特徴とする水素吸蔵合金粉末の製造方法。
【請求項3】
磁力が100mT±10%〜600mT±10%である磁石を用いて磁選工程を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の水素吸蔵合金粉末の製造方法。
【請求項4】
磁力が100mT±10%〜600mT±10%であって、表面積が50cm2〜3000cm2である磁石を用いて磁選工程を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の水素吸蔵合金粉末の製造方法。
【請求項5】
水素吸蔵合金インゴットを、500μmの篩目を通過する粒子サイズまで粉砕した後、磁選工程を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の水素吸蔵合金粉末の製造方法。
【請求項6】
水素吸蔵合金インゴットの粉砕は、鉄或いは鉄合金を含有する粗砕手段を備えた装置を用いて行うことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の水素吸蔵合金粉末の製造方法。
【請求項7】
磁石の表面積に対する水素吸蔵合金粉末の投入速度が300((g/分)/cm2)以下となるように磁選工程を行うことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の水素吸蔵合金粉末の製造方法。
【請求項8】
粉砕後、20秒以上48時間以内の時間を置いて磁選工程を行うことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の水素吸蔵合金粉末の製造方法。
【請求項9】
電気自動車或いはハイブリッド自動車に搭載する電池の負極活物質として用いる水素吸蔵合金粉末の製造方法であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の水素吸蔵合金粉末の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の製造方法によって製造された水素吸蔵合金粉末。

【公開番号】特開2010−255104(P2010−255104A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69676(P2010−69676)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】