説明

水素源からの水素含有ストリーム中の水素の管理

スチーム改質装置などの水素源からの水素含有ストリーム中の水素濃度を増大するための、サイクル時間30秒未満を有する急速サイクル圧力スイング吸着の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良水素化方法に関する。その際、水素は、サイクル時間1分未満を有する急速サイクル圧力スイング吸着で回収されて、スチーム改質装置などの水素源からの水素含有ストリーム中の水素が管理される。
【背景技術】
【0002】
水素処理は、石油精製業者によって用いられて、多くの製油所ストリームの特性、従ってその価値が向上される。これらの水素処理装置には、水素化、水素化分解、水素異性化、および水素添加処理装置が含まれる。水素処理は、一般に、炭化水素原料を、水素処理反応槽または域において、適切な水素処理触媒と、高い温度および圧力の水素処理条件下で、水素含有処理ガスの存在下に接触させることによって達成されて、所望の生成物特性を有する品質向上された生成物が得られる。硫黄および窒素レベル、沸点、芳香族濃度、流動点、および粘度指数などである。運転条件および用いられる水素処理触媒は、得られる水素処理生成物の品質に影響を及ぼすであろう。
【0003】
これらの水素処理運転は全て、水素を用いることを必要とし、これらの水素処理装置を運転するのに必要な水素の量は、いろいろな理由で顕著に増大している。米国、ヨーロッパ、アジア、およびその他の地域における規制圧力は、ますます、過酷および/または選択的水素処理への傾向をもたらして、非常に低いレベルの硫黄および他の調整された特性(低減された芳香族レベル、向上された流動点および粘度指数など)を有する炭化水素が形成される。より重質の原油を処理する動向、および燃料油に対する減少された市場は、水素化分解の必要性を増大しつあるし、その上より高い水素需要を導きつつある。潤滑油の品質が向上するにつれて、更に多くの硫黄を除去し、芳香族レベルを低減し、流動点および粘度指数を向上する必要性が、水素処理の必要性を増大している。更に、多くの製油所は、多量の水素を、その工場内にある接触改質の副生物として与えられる。しかし、ガソリン中の芳香族を低減する現傾向は、接触改質の使用を制約し、従って水素源を除去しつつある。従って、種々の処理装置に伴う水素管理を向上する必要性が、ますます増大している。
【0004】
水素は、種々の水素処理装置における重要かつ価値ある物資であることから、それは、水素源からの水素含有ストリーム中の水素濃度が、水素含有ストリームの他の成分の少なくとも一部を除去することによって増大されることができる場合には、有益であろう。製油所における水素生成装置は、スチームメタン改質装置、セミリジェンタイプおよび連続再生タイプの接触改質装置、および残油ガス化である。水素はまた、エチレン分解装置、FCC(流動接触分解装置)、および熱分解装置において、製油所および石油化学プラントで製造される。これらの水素源に対する比較製造データを、次の表に示す。
【0005】
【表1】

【0006】
水素をこれらの水素生成装置から回収するためのプロセスは、必要な水素の量および純度に適合しなければならない。従来の圧力スイング吸着装置は、典型的には、水素をスチームメタン改質装置または残油ガス化装置から回収するのに用いられ、一方接触改質装置は、典型的には分離装置を用いて、水素濃縮物が製造された水素から除去される。熱、接触(即ちFCC)、およびエチレン分解を含む分解で製造された水素は、典型的には、不十分な経済性から回収されない。しかし、水素を回収して、ライトエンドを回収するための留出油回収区域(分解装置の下流で用いられる)がデボトルネックされることは、利点であってよい。前記区域は、典型的には、「ウェットガス」(C−)またはドライガス(C−)回収系として呼ばれる。
【0007】
種々のプロセスが、商業的に、水素をこれらの水素生成装置から回収するのに実施されるものの、精製プロセスで用いられるか、またはそこで生成される種々の水素含有処理ガスストリーム中の水素濃度を増大するための改良技術に対する技術的な必要性が存在する。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,719,720号明細書
【特許文献2】米国特許第4,992,401号明細書
【特許文献3】米国特許第5,368,720号明細書
【特許文献4】米国特許第3,652,231号明細書
【特許文献5】米国特許第3,856,662号明細書
【特許文献6】米国特許第4,167,473号明細書
【特許文献7】米国特許第3,992,465号明細書
【特許文献8】米国特許第4,481,103号明細書
【特許文献9】米国特許第6,607,584号明細書
【特許文献10】米国特許第6,406,523号明細書
【特許文献11】米国特許第6,451,095号明細書
【特許文献12】米国特許第6,488,747号明細書
【特許文献13】米国特許第6,533,846号明細書
【特許文献14】米国特許第6,565,635号明細書
【非特許文献1】「圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption)」、D.M.ルースベン(Ruthven)、S.ファールーク(Farouq)およびK.S.カーベル(Knaebel)著(VCHパブリッシャーズ(VCH Publishers)、1994年)
【非特許文献2】D.M.ルースベン(Ruthven)およびC.タエロン(Thaeron)著「平行通路吸着剤接触装置の性能(Performance of a Parallel Passage Absorbent Contactor)」(分離および精製技術、第12号、第43〜60頁、1997年
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
水素濃度が、水素源から得られる水素含有ストリームにおいて増大され、その際前記水素含有ストリームは、水素以外のガス状成分を含む方法。前記方法は、水素以外のガス状成分の少なくとも一部を、急速サイクル圧力スイング吸着装置において、前記水素含有ストリームから除去する工程を含み、その際前記装置は、複数の吸着剤床を含み、全サイクル時間約30秒未満、および各吸着剤床内の圧力損失約5インチ水超/(床長さ1フィート)を有する。
【0010】
更に他の実施形態においては、急速サイクル圧力スイング吸着工程の全サイクル時間は、約15秒未満である。
【0011】
更に他の実施形態においては、急速サイクル圧力スイング吸着工程について、全サイクル時間は、約10秒未満であり、圧力損失は、約10インチ水超/(床長さ1フィート)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、いかなる水素源からも得られるいかなる水素含有ストリームに対しても実施されることができる。水素源は、水素を、主生成物ストリームとして、または側ストリームとして生成するプロセス装置であることができる。水素を生成する限定しないプロセス装置には、メタンおよび軽質炭化水素のスチーム改質装置、残油ガス化装置、軽質炭化水素の部分酸化装置(POX反応器)、接触改質装置、エチレン分解装置、流動接触分解装置、および熱分解プロセスが含まれる。他の水素生成源からの水素含有ストリームはまた、本発明に従って処理されることができることは、本発明の範囲内である。これらの他の水素生成源の限定しない例には、他の炭素ベース燃料の部分酸化(POX)または改質、石炭ガス化、バイオマスガス化、熱分解、メタノールまたはアンモニアの解離、水の電気分解、生物学的光合成および発酵装置、臭化水素電気分解、光電気分解、並びに可逆的燃料電池技術が含まれる。本発明はまた、水素を種々の水素含有ストリームから回収するが、必ずしも水素を生成しない水素源に適用可能である。これらの水素回収源の限定しない例には、膜装置、低温装置、および従来の圧力スイング吸着装置が含まれる。これらの水素源から得られる水素含有生成物ストリームは、迅速サイクル圧力スイング吸着装置へ送られる。これは、サイクル時間1分未満、好ましくは約30秒未満、より好ましくは約15秒未満、更により好ましくは約10秒未満、最も好ましくは約5秒未満を有する。
【0013】
スチーム改質は、メタン(および天然ガス中の他の炭化水素)の水素および一酸化炭素への転化を含む。これは、適切な触媒(好ましくはニッケルベース触媒)上でスチームと反応させることによる。スチーム改質は、一般に次の工程を含む。これを、メタン転化について例示する。
a.改質は、メタンを、高温、好ましくは約850℃〜約900℃(1560°F〜1740°F)でスチームと反応させて、合成ガス(シンガス)が製造される工程を含む。混合物は、主に、水素および一酸化炭素からなる。
CH+HO→CO+3H
b.シフト反応。これは、典型的には、水性ガスシフト(WGS)反応と呼ばれる。その際、第一の反応で製造される一酸化炭素は、触媒上でスチームと反応されて、水素および二酸化炭素が形成される。この工程は、通常、高温シフトおよび低温シフトからなる二段で行われる。高温シフトは、典型的には、約350℃(662°F)で行われ、低温シフトは、約190℃〜210℃(374°F〜410°F)で行われる。
CO+HO→CO+H
c.スチームメタン改質から製造される水素は、典型的には、少量の一酸化炭素、二酸化炭素、および不純物としての硫化水素を含み、その目的とする用途によって、更なる精製を必要としてもよい。精製の主な工程は、メタン化である。これは、ニッケル担持アルミナ触媒による温度約700°F〜約800°Fでの、COおよびCOと水素との発熱固定床接触反応を含む。
CO+3H→CH+H
CO+4H→CH+2H
【0014】
スチーム改質は、典型的には、水素少なくとも約95体積%を含む生成物ストリームを製造する。この水素含有ストリームの濃度は、本発明を実施することによって、少なくとも約98体積%まで、好ましくは少なくとも約99体積%まで増大されることができる。
【0015】
コークおよびアスファルトなどの重質原料はまた、重質原料の部分酸化により、水素に転化されて、高温の水素および一酸化炭素が形成されてもよい。典型的には、アスファルトおよびコークの部分酸化は、電力を製造する手段としてより好ましい。これは、水素を、副生成物として生じる。
【0016】
精油所ガス〜ナフサ沸点範囲の軽質原料はまた、接触部分酸化(POX)処理において、酸素によって部分酸化されることができる。この処理方式においては、スチーム改質に比較して、より多くのCOが形成される。この処理方式は、石油化学原料材のための合成ガスを生成する際に、または既存のスチーム改質プラントのデボトルネックの選択肢として、用途がある。
【0017】
接触改質またはハイドロホーミングは、十分確立された工業プロセスであり、ナフサまたは直留ガソリンのオクタン品質を向上するために石油工業によって用いられる。改質においては、多機能触媒が用いられる。これは、金属水素添加/脱水素(水素移動)成分を含み、多孔質の無機酸化物担体(特にはアルミナ)と複合化される。白金金属触媒、即ち白金を含む触媒(これに、一種以上の更なる金属助触媒が添加されて、多金属触媒が形成される)は、従来、改質運転を行う際に用いられる。改質運転においては、一つの反応器、または一連の反応器が、改質装置を構成する。これは、一連の反応域を提供する。改質は、分子の変化、または炭化水素反応をもたらす。これは、芳香族を得るためのシクロヘキサンの脱水素およびアルキルシクロペンタンの脱水素異性化、オレフィンを得るためのパラフィンの脱水素、芳香族を得るためのパラフィンおよびオレフィンの脱水素環化、n−パラフィンの異性化、シクロヘキサンを得るためのアルキルシクロパラフィンの異性化、置換芳香族の異性化、およびパラフィンの水素化分解によって示される。これは、ガス、および必然的にコークを製造し、後者は触媒上に沈積される。リサイクル水素は、コークの蓄積を抑制するが、それを防止することはできない。ナフサストリームの接触改質のための典型的なプロセス条件には、温度約425℃〜650℃、好ましくは約425℃〜540℃、圧力約30〜300、好ましくは約50〜200psig、重量空間速度約0.5〜20、好ましくは約0.75〜6が含まれる。
【0018】
改質プロセス装置は、一連の反応器(それぞれ、触媒の固定床を含む)からなるか、または移動床反応器であるかのいずれかであることができる。一連の固定床反応器を含むプロセス装置における各改質反応器は、一般に、触媒の固定床を備える。その際、それぞれは、ダウンフロー原料を受け入れ、それぞれは、起こる反応が吸熱性であることから、予熱器または段間加熱器を備える。ナフサ原料は、水素と共に並流で、予熱加熱炉および反応器を通り、次いで順に、系のその後の段間加熱器および反応器を通って送られる。最後の反応器からの生成物は、C液体留分(回収される)、および揮発性流出物に分離される。揮発性流出物は、水素リッチガスであり、通常、少量の標準状態でガス状の炭化水素を含み、それから水素が分離され、プロセスへリサイクルされる。
【0019】
移動床反応器を用いる改質プロセス装置の運転の一般的な原理は、触媒が、反応器内部の、間隔をおいた円筒形のスクリーンによって形成される環状床内に含まれることである。反応体ストリームは、典型的には外から中への半径流で、触媒床を通って処理される。即ち、それは、頂部で反応器に入り、触媒の環状床(反応器を通って下降している)を通って反応器壁から半径方向に流れ、前記環状床によって生じる円筒形の空間中に送られる。それは、改質域の底部を出て、触媒再生域へ送られ、そこでそれは、改質触媒の再生を実施するのに共通の一つ以上の工程に付される。触媒再生域は、炭素の少なくとも一部を触媒から除去し、それを、移動床改質域で生じる改質反応に必要な状態へ戻すのに必要とされる全ての工程を表す。触媒再生に含まれる特定の工程は、選択される触媒によって異なるであろう。
【0020】
一連の固定床反応器を用いる改質プロセス装置は、技術的に周知であり、しばしば、いかに触媒が再生されるか(例えば、循環タイプかまたはセミリジェンタイプか)に従って引用される。これらのプロセス装値の詳細な記載は、特許文献1、特許文献2および特許文献3に見出されることができる。これは、本明細書に参照により援用される。移動床改質域または反応器は、技術的に周知であり、典型的には、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7に教示されるものである。これはまた、本明細書に参照により援用される。
【0021】
流動接触分解(FCC)プロセスは、周知である。このプロセスの最新の商業的接触分解触媒は、高度に活性であり、かつ炭化水素原料材を液体燃料生成物へ転化するのに選択的である。これらの活性触媒を用いて、接触分解反応を、希薄相移動タイプの反応系において、触媒および炭化水素原料材の間の比較的短時間の接触で行うことが好ましい。最新のプロセスにおいては、再生触媒は、ライザー輸送ライン反応器のより低い部分で流動化され、炭化水素原料材と混合される。液体燃料沸点範囲の生成物を含む炭化水素転化生成物、ガス、およびコーク化触媒は、ライザー反応器の上部端から反応器槽中に排出される。反応器槽においては、コーク化触媒は、サイクロン分離器において分離され、ストリッピング区域へ送られ、そこで炭化水素蒸気は、触媒からスチームストリッピングされる。得られるコーク汚染触媒(廃触媒と呼ばれる)は、廃触媒塔に収集され、垂直に配置された再生器槽へ送られる。これは、流動化稠密相の触媒床を含む。流動化は、流上する酸素含有再生ガスによって維持される。これは、ガス分配器によって、再生器槽の底部に含まれる稠密相の触媒床のより低い部分中に導入される。再生ガスは、コークの完全な酸化に必要とされるものより過剰に供給される。これは、煙道ガス中の酸素分析によって示される。稠密相の触媒床の上に、希薄相床がある。その際、残留炭素は、稠密相床におけるより、高い温度で酸化される。実質的にコークが低減された(0.15重量%以下)再活性化触媒は、垂直に上方へ、流動再生ガスによって希薄相床の上部部分へ、および再生触媒塔中に送られ、そこでそれは、ライザー反応器において再利用するために収集される。FCCはまた、十分に高い水素レベルで、オフガスを製造して、それをオフガスから分離すること、またはオフガス中のその濃度を増大することが保証される。そのために、それは、プロセス装置への水素含有処理ガスストリームの少なくとも一部として、用いられることができる。水素が反応体である水素処理装置などである。
【0022】
特許文献8(F.J.クランベック(Krambeck)ら)は、硫黄含有炭化水素原料を転化するための流動接触分解(FCC)プロセスを開示している。廃触媒は、温度500℃〜700℃で1〜10分間、酸素の不在下にスチームストリッピングに付される。結果として、コークおよび硫黄は、触媒から除去される。
【0023】
炭化水素の熱分解は、所謂エチレン分解装置におけるエチレンの工業的製造(遊離基メカニズムによる)の主な方法である。商業的には、分解は、加熱炉の放射域における管状反応器(熱分解コイルとして知られる)中で行われる。スチームが、原料へ添加されて、熱分解管内のコークの形成が低減される。原料の温度は、典型的には、500〜700℃(930〜1300°F)であり、より低い温度が、常圧および減圧ガス油などのより重質の原料に対して用いられ、より高い温度が、エタンおよびプロパンなどの軽質ガスに対して用いられる。滞留時間および必要な過酷度により、出口温度は、典型的には、775〜950℃(1430〜1740°F)に維持され、全滞留時間は、0.1〜1秒の範囲であることができる。熱分解反応は、吸熱性であることから、熱は、加熱炉によって、熱分解管へ供給される。
【0024】
エチレン分解装置からの水素の収率は、様々であり、顕著に、用いられる原料による。エタンなどのより軽質の原料については、殆ど4%の水素収率(原料を基準とする)が実現されることができ、一方ブタンおよび減圧ガス油などのより重質の原料は、より少ない水素を製造する(それぞれ、1および0.7%)。生成物の分離および回収は、典型的には、いくつかの段において達成される。これには、重質燃料油カットを除去するためのガソリン分留器、クエンチ塔、圧縮、塩基性溶液による酸性ガスの除去(HS、CO)、水を除去するためのモレキュラーシーブによる乾燥、並びにCおよびより重質の生成物を除去するためのストリッパーが含まれる。生成物精製の最終段においては、水素は、低温蒸留で回収される。即ち、Cストリームを−16℃へ冷却することによって、水素は、Hがその温度での唯一のガスであることから、回収される。
【0025】
水素をこれらの水素生成装置から回収するプロセスは、必要とされる水素の容量および純度に適合しなければならない。従来の圧力スイング吸着装置は、典型的には、水素をスチームメタン改質装置または残油ガス化装置から回収するのに用いられ、一方接触改質装置は、典型的には、分離器を用いて、炭化水素凝縮物が、製造された水素から除去される。熱、接触(即ちFCC)、およびエチレン分解を含む分解で製造される水素は、典型的には、不十分な経済性から回収されない。しかし、水素を回収して、ライトエンドを回収するための分解装置の下流で用いられる蒸留回収区域が、デボトルトルネックされることは利点であってもよい。前記区域は、典型的には、「湿性ガス」(C)または「乾性ガス」(C)回収系と呼ばれる。
【0026】
水素を、石油精油所または石油化学プラントにおける他のストリームから回収する装置からの水素含有ストリームはまた、本発明に従って処理されて、水素濃度が増大されることができる。これらの源の限定しない例には、低温装置、膜装置、および従来の圧力スイング吸着装置が含まれる。湿式洗浄は、通常、HSおよびCOなどの酸性ガスを除去するのに用いられる。前記プロセスには、ガス状ストリームを、アミンまたは炭酸カリウム系を通して送る工程が含まれる。水素の回収のための膜装置は、膜を通る異なる拡散率(水素/他の汚染物)を利用する。水素(膜を通る透過物)は、低圧で製造される。低温分離は、ガス原料ストリームを冷却し、そのために原料の留分が凝縮され、続いてフラッシングまたは蒸留のいずれかにより分離されることによって機能する。このタイプの分離は、典型的には、軽質オレフィンをFCCオフガスから回収するのに用いられ、更にエチレン分離装置に用途がある。低温蒸留からの水素回収率は、典型的には95%であり、純度は98%である。明らかに、これらのプロセスのいかなるものも、またはその組合せも、水素を回収するのに用いられることができる。
【0027】
従来の圧力スイング吸着(「従来のPSA」)においては、ガス状混合物が、固形吸着剤の第一の床で、圧力下に一定時間作動される。前記吸着材は、ガスストリームから除去されるべき汚染物と通常考えられる一種以上の成分に対して選択的、または比較的選択的である。二種以上の汚染物を同時に除去することは、可能である。しかし便宜上、除去されるべき成分は、単一であるとされ、汚染物として引用されるであろう。ガス状混合物は、第一の槽中の第一の吸着床を通過し、汚染物が除去されて床から出てくる。これは、床に吸着されたままである。予め決定された時間の後、または別に、汚染物の破過が認められた際に、ガス状混合物の流れは、第二の槽中の第二の吸着床に切替えられ、精製が継続される。第二の床が、吸着運転にある間、吸着された汚染物は、圧力が減少されることによって、第一の吸着床から除去される。これは、通常、ガスの逆流を伴って、汚染物が脱着される。槽内の圧力が低減されると、床に先に吸着された汚染物は、徐々に、テールガス系中へ脱着される。これは、典型的には、大きなテールガスドラムを、下流の系に対して圧力変動を最小にするように設計された制御系と共に含む。汚染物は、いかなる適切な方法にもよって、テールガス系から収集され、更に処理されるか、または適切に廃棄されることができる。脱着が完了すると、吸着材床は、不活性ガスストリーム(例えば窒素)、または処理ガスの精製されたストリームと共に排出されてもよい。排出は、より高温の排出ガスストリームを用いることによって、促進されてもよい。
【0028】
例えば、第二の床における破過の後、および第一の床が再生され、再度吸着運転に対して準備された後、ガス状混合物の流れは、第二の床から第一の床へ切替えられ、第二の床が再生される。全サイクル時間は、ガス状混合物が、第一のサイクルにおいて、第一の床へ最初に導かれる時から、ガス状混合物が、直後のサイクルにおいて、第一の床へ最初に導かれる時間(即ち、第一の床の一回の再生の後)までの時間長である。第二の槽に加えて、第三、第四、第五等の槽の使用は、吸着時間が短いが脱着時間が長い場合に必要とされてもよいことから、サイクル時を増大するのに資するであろう。
【0029】
従って、一形態においては、圧力スイングサイクルには、原料供給工程、少なくとも一つの減圧工程、排出工程、および最終的に再加圧工程(吸着剤物質を、原料供給工程の再導入のために調製する)が含まれるであろう。汚染物の収着は、通常、吸収剤上への物理収着によって生じる。これは、通常、汚染物に親和性のある多孔質固体(活性炭、アルミナ、シリカ、またはシリカ−アルミナなど)である。ゼオライトは、それらが、その制御され、かつ予測されうる細孔サイズの理由から、ある汚染物に対して実質的な程度の選択性を示すことから、しばしば多くの用途に用いられる。通常、吸収剤との化学反応は、吸収剤に化学的に結合した種の脱着を達成する困難性が増大することから好ましくない。しかし、化学収着は、収着された物質が、例えばより高い温度を圧力の低減と結びつけて用いることによって、サイクルの脱着部分で効果的に脱着されてもよい場合には、決して排除されるものではない。圧力スイング吸着処理は、非特許文献1により詳細に記載されている。
【0030】
従来のPSAは、種々の理由で、実質的に本質的な欠点を有する。例えば、従来のPSA装置は、建設および運転するのに高価であり、また水素含有ガスストリームから回収されるのに必要な水素の同じ量に対して、RCPSAに比較して実質的にサイズが大きい。また、従来の圧力スイング吸着装置は、一般に、成分を、より大きな床(従来のPSAで用いられる)を通って拡散可能にするのに必要とされる時間の制限、並びに設備の形態および付随するバルブ調節により、1分超、典型的には2〜4分超のサイクル時間を有するであろう。代わって、急速サイクル圧力スイング吸着が用いられる。これは、1分未満の全サイクル時間を有する。RCPSAの全サイクル時間は、30秒未満、好ましくは15秒未満、より好ましくは10秒未満、更により好ましくは5秒未満、いっそうにより好ましくは2秒未満であってもよい。更に、用いられる急速サイクル圧力スイング吸着装置は、実質的に異なる吸収剤を利用することができる。限定されることなく、モノリスなどの構造化物質などである。
【0031】
吸着処理の全吸着速度は、従来のPSAであろうがRCPSAであろうが、ガス相中の物質移動速度定数(τ)および固体相中の物質移動速度定数(τ)によって特徴付けられる。物質の物質物質移動速度は、吸着剤、吸着化合物、圧力、および温度による。ガス相中の物質移動速度定数は、次式のように定義される。
τ=D/R(cm/秒) (1)
[式中、Dは、ガス相中の拡散係数であり、Rは、ガス媒体の特性寸法である]ここで、ガス相中のガス拡散Dは、技術的に周知であり(即ち、従来の値を使用可能である)、ガス媒体の特性寸法Rは、構造化吸着剤物質の二つの層の間の通路幅として定義される。
【0032】
物質の固体相中の物質移動速度定数は、次式のように定義される。
τ=D/R(cm/秒) (2)
[式中、Dは、固体相中の拡散係数であり、Rは、固体媒体の特性寸法である。]ここで、固体相中のガス拡散係数Dは、技術的に周知であり(即ち、従来の値を使用可能である)、固体媒体の特性寸法Rは、吸着剤層の幅として定義される。
【0033】
非特許文献2(参照により援用される)は、モノリスまたは構造化吸着剤を通る流れに対して、通路幅は、ガス媒体の良好な特性寸法Rであることを明白にする。特許文献9(Moreauら)(参照により援用される)はまた、これらの移動速度および所望の吸着剤に付随する係数、並びに従来のPSAで用いられる試験標準組成を計算するための詳細を記載している。これらの物質移動速度定数の計算は、当業者にとって周知であり、また、当業者によって、標準的な試験データから導かれてもよい。
【0034】
従来のPSAは、微粒子吸着剤の吸着床を用いることに基づく。加えて、構造的制約により、従来のPSAは、通常、二つ以上の異なる床からなる。これは、少なくとも一つ以上の床が、いつでも、完全にまたは少なくとも部分的に、サイクルの原料供給部分にあって、処理される処理流の中断または激しい変動が制限されるように循環する。しかし、比較的大きなサイズの従来のPSA装置により、吸着剤物質の粒度は、約1mm以上の一般的な制限された粒度である。さもなければ、過度の圧力損失、サイクル時間の増大、脱着の制限、および原料物質のチャネリングが、生じるであろう。
【0035】
実施形態においては、RCPSAは、回転バルブ系を用いて、ガス流れが回転収着剤モジュールを通して導かれる。これは、多数の異なる吸着剤床区画または「管」を含み、そのそれぞれは、回転モジュールが運転サイクルを完了した場合に、収着および脱着工程を通して連続的に循環される。回転収着剤モジュールは、通常、回転収着剤モジュールのどちらかの端部の二枚のシール板の間に保持された多数の管からなる。その際、シール板は、異なるマニホールドからなるステーターと接触し、入口ガスは、RCPSA管へ導かれ、RCPSA管を出る処理精製生成物ガスおよびテールガスは、回転収着剤モジュールから外へ導かれる。シール板およびマニホールドを適切に配置することによって、多数の個々の区画または管は、いつでも、完全なサイクルの特徴的な工程を通過してもよい。従来のPSAとは対照的に、RCPSA収着/脱着サイクルに必要な流れおよび圧力の変動は、秒/(1サイクル)の程度の多数の個々のきざみで変化する。この形態においては、RCPSAモジュールには、円形の通路周りに角度的に間隔をおいたバルブ要素が含まれる。これは、各区画が、適切な方向おとび圧力にあるガス流路へ連続的に送られて、完全なRCPSAサイクルの増分圧力/流れ方向工程のうちの一つが達成されるように、回転収着モジュールによってとられる。RCPSA技術の一つのキーと成る利点は、吸着剤物質の大幅により効率的な使用である。RCPSA技術に必要とされる吸着剤の量は、従来のPSA技術が、同じ分離の量および品質を達成するのに必要なものの一部のみであることができる。結果として、RCPSAに必要な設置面積、投資、および活性吸着剤の量は、実質的に、等量のガスを処理する従来のPSA装置に対するものより低い。
【0036】
実施形態においては、RCPSAの床長さの単位圧力損失、必要な吸着活性、および機械的制約(RCPSAにおける回転床の遠心加速度による)は、多くの従来のPSA吸着剤床物質の使用を妨げる。特に、緩いペレット、微粒子、ビード、または押出し成形物の形態にある特定の吸着剤である。好ましい実施形態においては、吸着剤物質は、RCPSA回転装置で用いるための支持下部構造物質に固定される。例えば、回転RCPSA装置の一実施形態は、構造化補強物質に結合された吸着剤物質を含む吸着剤シートの形態にあることができる。適切な結合剤が、吸着剤物質を補強物質に接着するのに用いられてもよい。補強物質の限定しない例には、モノリス、鉱物繊維母材(ガラスファイバー母材など)、金属ワイヤー母材(ワイヤーメッシュスクリーンなど)、または金属フォイル(アルミニウムフォイルなど)が含まれる。これは、陽極処理されることができる。ガラスファイバー母材の例には、織物および不織ガラスファイバースクリムが含まれる。吸着剤シートは、適切な吸着剤成分(ゼオライト結晶など)のスラリーを、結合剤成分を用いて補強物質、不織繊維ガラススクリム、金属織物、および発泡アルミニウムフォイル上に被覆することによって作製されることができる。特定の実施形態においては、吸着剤シートまたは物質は、セラミック基体上に被覆される。
【0037】
RCPSA装置における吸着装置は、典型的には、一種以上の吸着剤物質から形成される吸着剤固体相、および浸透性のガス相を含み、そこを通って、分離されるべきガスが、吸着装置の入口から出口へ流れ、ストリームから除去されることが望まれる成分の実質的な一部が、吸着剤の固体相上に吸着する。このガス相は、「循環ガス相」、しかしより簡単には「ガス相」と呼ばれてもよい。固体相には、細孔の網状組織が含まれ、その平均サイズは、通常、約0.02μm〜20μmである。更により小さな細孔の網状組織(「微細孔」と呼ばれる)があってもよい。これは、例えば、微細孔炭素吸着剤またはゼオライトに見られる。固体相は、非吸着剤の基体上に沈積されてもよい。その主な機能は、機械的強度を活性吸着剤物質に提供することか、および/または熱伝導の機能を提供すること、または熱を蓄えることである。吸着現象は、二つの主な工程を含む。即ち、循環ガス相から固体相の表面上への吸着質の移動、引続いて、表面から固体相の容積の吸着点中への吸着質の移動である。
【0038】
実施形態においては、RCPSAは、RSPCA装置で用いられる管中に組み込まれる構造化吸着剤を用いる。これらの構造化吸着剤は、ガス流が、吸着剤の構造化シートによって、形成される通路を流れることから、予想外に、高い物質移動速度を有する。これは、従来のPSAで用いられる伝統的な充填固定床に比較して、物質移動を実質的に向上する。現発明のガス相の移動速度(τ)/固体相の物質移動速度(τ)比は、10超、好ましくは25超、より好ましくは50超である。これらの並外れて高い物質移動速度比は、RCPSAが、高純度水素ストリームを、従来のPSAの装置サイズ、吸着剤容量、およびコストの単に一画分を用いて、高い回収率で製造することを可能にする。
【0039】
構造化吸着剤の実施形態はまた、微粒子床の技術に伴う有害な影響なしに、従来のPSAより実質的に大きな圧力損失(吸着剤により達成される)をもたらす。吸着剤床は、5インチ水超/(床長さ1フィート)、より好ましくは10インチHO超/フィート、更により好ましくは20インチHO超/フィートの吸着剤床の単位長圧力損失を有して、設計されることができる。これは、従来のPSA装置とは対照的である。その際、吸着剤床の単位長圧力損失は、一般に、用いられる吸着剤によって約5インチHO未満/フィートに制限され、最も従来的なPSA装置は、圧力損失が、約1インチHO/フィート以下で設計されて、従来のPSA装置のより大きな床、長いサイクル時間、および微粒子吸着剤に伴う議論問題が最小にされる。従来のPSAの吸着剤床は、床の流動化という危険性から、より高い圧力損失を提供することができない。これは、装置の問題、および/または消費された吸着剤物質を添加または交換する必要性を伴うことにより、過度の磨耗および早期の装置停止をもたらす。これらの顕著により高い吸着剤床の単位長さ圧力損失は、RCPSAの吸着剤床が、従来のPSAで用いられるものより実質的に小型で、短く、かつ効率的であることを可能にする。
【0040】
実施形態においては、高い単位長さ圧力損失は、高い蒸気速度が、構造化吸着剤床を横切って達成されることを可能にする。これは、従来のPSAによって達成されることができるより大きな、処理流体と吸着剤物質との間の単位時間当たりの質量接触速度をもたらす。これは、より短い床長さ、より高いガス相移動速度(τ)、および向上された水素回収率をもたらす。これらの実質的により短い床長さにより、本発明のRSCPA適用における全圧力損失は、原料供給サイクルにおける全床の圧力差約0.5〜50psig、好ましくは30psig未満で維持されることができ、一方活性な吸着剤床の長さを、通常、長さ5フィート未満、好ましくは長さ2フィート未満、および長さ1フィート未満の短さに最小化することができる。
【0041】
RCPSAプロセスにおいて用いられる絶対圧力のレベルは、重要ではない。実際には、吸着および脱着工程の間の圧力差は、吸着剤上への吸着質画分の充填の変化をもたらし、それによりRCPSA装置によって処理されるストリーム成分を分離するのに効果的な増分充填をもたらす。典型的な絶対運転圧力のレベルは、約50〜2000psiaの範囲である。しかし、原料供給、脱圧、排出、および再加圧段において用いられる実際の圧力は、顕著に、多くの要因によることが特記されるべきである。これには、限定されることなく、分離されるべき全ストリームの実際の運転圧力および温度、ストリームの組成、並びにRCPSA生成物ストリームの所望の回収率および純度が含まれる。RCPSAプロセスは、実質的には、いかなる絶対圧力にも限定されず、その小型サイズにより、より高い運転圧力においては、増分的に、従来のPSAプロセスより経済的になる。特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13および特許文献14(全て、本明細書に参照により援用される)は、RCPSA技術の種々の態様を開示する。
【0042】
実施形態および実施例においては、急速サイクル圧力スイング吸着系は、原料ガスを、生成物ガス(この場合、水素富化ストリーム)およびテール(排気)ガスへ分離する全サイクル時間tTOTを有する。前記方法には、一般に、水素純度F%を有する原料ガスを、時間tで吸着剤床中に導く工程が含まれる。これは、テールガスを選択的に吸着して、水素生成物ガスを床の外へ送る。ここで、Fは、弱く吸着可能な(水素)成分である原料ガスの%である。一方、水素生成物ガスは、純度P%および回収率R%を有する。回収R%は、(生成物中に保持される水素の量)/(原料中の利用可能な水素の量)の比である。次いで、床は、時間tCOの間、並流して脱圧され、続いて時間tCNで床を向流して脱圧される。その際、脱着質(テールガスまたは排出ガス)は、1psig以上の圧力で、床から放出される。床は、水素生成物ガスの一部を典型的に用いて、時間tで排出される。その後、床は、水素生成物ガスまたは原料ガスの一部を典型的に用いて、時間tRPで再加圧される。その際、サイクル時間tTOTは、個々のサイクル時間の合計に等しい。これは、全サイクル時間を構成する。即ち、
TOT=t+tCO+tCN+t+tRP (3)
である。
【0043】
この実施形態は、限定されることなく、生成物純度/原料純度比P%/F%>1.1に対して回収率R%>80%、および/または生成物純度/原料純度比0<P%/F%<1.1に対して回収率R%>90%のいずれかであるようなRCPSA処理を包含する。これらの高い回収率および純度を裏付ける結果は、本明細書の実施例4〜10に見出されることができる。他の実施形態には、水素回収率が、80%より大幅に低い処理におけるRCPSAの適用が含まれるであろう。RCPSAの実施形態は、いかなる特定の回収率または純度の閾値をも超えることに限定されないし、また特定の適用に望ましいか、または経済的に妥当な程度に低い回収率および/または純度で適用されるものであることができる。
【0044】
また、上記式(3)の工程tCO、tCN、またはtは、一緒に、またはいかなる個々の組合せでも省略されることができることは、本発明の範囲内であることが特記されるべきである。しかし、好ましくは、上記式(3)の全ての工程が実行されるか、または工程tCOまたはtCNの一種のみが全サイクルから省略される。しかし、更なる工程がまた、RCPSAサイクル内に追加されて、水素の純度および回収率の増大が促進されることができる。従って、増大は、事実上、RCPSAにおいて達成されることができるであろう。何故なら、吸着剤の小部分が必要とされ、従来のPSA適用で用いられる多数の固定バルブが排除されるからである。
【0045】
実施形態においては、テールガスはまた、好ましくは、十分に高い圧力で放出され、そのためにテールガスが、テールガスの圧縮を含まない他の装置へ供給されてもよい。より好ましくは、テールガスの圧力は、60psig以上である。最も好ましい実施形態においては、テールガスの圧力は、80psig以上である。より高い圧力では、テールガスは、燃料ヘッダーへ導かれることができる。
【0046】
本発明の実施は、次の利点を有することができる。即ち
【0047】
メークアップガスとして利用可能な水素含有ストリームの、またはそれらがメークアップガスとして適切である前に、より高い純度へグレードアップされなければならないストリームの純度を増大すること。
【0048】
水素含有リサイクルガスストリームの純度を増大すること。その結果、水素処理反応器における全水素処理ガスの純度を増大して、より高い水素化苛酷度または更なる生成物処理が可能になる。
【0049】
硫化水素の実質的な濃度が(ガス洗浄前に)存在するか、またはガス洗浄後に存在するいずれの場合においても(典型的にはHS<100vppm)、水素処理排出ガスからの水素回収に用いること。
【0050】
水素処理においては、増大された水素純度は、水素処理反応器におけるより高い水素分圧につながる。これは、反応の反応速度の増大、および触媒の失活速度の減少の両方である。より高いH分圧の利点は、種々の方法で活用されることができる。より低い反応器温度で運転すること(エネルギーコストを低減し、触媒の失活を減少し、触媒寿命を延ばす);装置の原料速度を増大すること;より酸性の(より高硫黄の)原料材を処理すること;分解原料材のより高い濃度を処理すること;生成物の色相を(特に運転終末近くで)向上すること;既存の圧縮装置および/または処理ガス循環系をデボトルネックすること(一定の全流における高いH scf、またはより低い全流量における同じH scf);および当業者に明らかであろう他の手段などである。
【0051】
増大されたH回収率はまた、実質的な潜在利点をもたらす。そのいくつかを、次に記載する。即ち、
(i)購入、製造、または製油所内の他のH源に対する要求を低減すること。
(ii)増大された水素回収の結果として、一定の(既存の)メークアップガス要求で水素処理原料速度を増大すること。
(iii)水素処理における水素純度を向上して、ヘテロ原子の除去効率を増大すること。
(iv)Hの一部を、製油所燃料ガスから除去すること。これは、水素の低BTU値により燃料ガスにとって有害であり、いくつかの加熱炉バーナーに対して、燃焼の能力限界および困難性をもたらすことができる。
(v)当業者に明らかであろう他の利点。
【0052】
次の実施例は、あくまで例示目的で示され、いかなる意味においても、限定されるものとして引用されるものではない。
【実施例】
【0053】
実施例1
この実施例においては、製油所ストリームは、480psigであり、テールガスは65psigであり、それにより圧力スイングは6.18である。原料組成および圧力は、典型的には、製油所処理装置のものであり、水素処理または水素化の適用に見出されるものなどである。この実施例においては、典型的な炭化水素は、その炭素数によって記載される。即ち、C=メタン、C=エタン等である。RCPSAは、水素を、流速の範囲に亘って純度>99%および回収率>81%で製造することができる。表2aおよび表2bは、この実施例について、RCPSAのコンピューターシミュレーション、並びに異なる成分の入力および出力%の結果を示す。表2aおよび表2bはまた、回収率が、480psigの6 MMSCFDストリームおよび65psigのテールガスに対して89.7%から91.7%へ増大するにつれて、いかに水素純度が減少するかを示す。
【0054】
表2aおよび表2b
精製におけるRCPSA(67立法フィート)の入力および出力の組成(モル%)。原料は480psig、122゜Fであり、テールガスは65psigである。原料速度は約6 MMSCFDである。
【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
本発明に記載されるRCPSAは、異なる工程からなるサイクルを作動する。工程1は、生成物が製造される原料供給であり、工程2は並流脱圧であり、工程3は向流脱圧であり、工程4は排出(通常は向流)であり、工程5は、生成物による再加圧である。本明細書に記載されるRCPSAにおいては、いかなる当該の半分においても、床の全数は、原料供給工程にある。この実施例においては、tTOT=2秒であり、その際原料供給時間tは、全サイクルの半分である。
【0058】
実施例2
この実施例においては、条件は、実施例1におけると同じである。表3aは、並流および向流工程の両方を用いて、水素純度>99%を達成する条件を示す。表3bは、向流脱圧工程が除かれてもよいこと、および水素純度99%が依然として保持されることができることを示す。実際に、これは、排出サイクル時間tを、向流脱圧工程から除去される時間tCNだけ増大することによって、水素回収率が、88%レベルへ増大されることができることを示す。
【0059】
表3aおよび表3b
純度、およびRCPSA(67立方フィート)からの回収率に対する工程時間の効果。表2と同じ条件。原料は480psig、122゜Fであり、テールガスは65psigである。原料速度は約6 MMSCFDである。
【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
実施例3
この実施例は、10 MMSCFD製油所ストリーム(やはり、典型的な成分を含む)を示す。これは、表4の原料列に示される(例えば、原料組成は、H74%を含む)。ストリームは、480psigであり、テールガスは、65psigであり、それにより絶対圧スイングは6.18である。やはり、本発明のRCPSAは、水素純度>99%およびこれらの原料組成からの回収率>85%をもたらすことができる。表4aおよび表4bは、この実施例の結果を示す。
【0063】
表4aおよび表4b
精製におけるRCPSA(53立方フィート)の入力および出力の組成(モル%)。原料は480psig、101゜Fであり、テールガスは65psigである。原料速度は約10 MMSCFDである。
【0064】
【表6】

【0065】
【表7】

【0066】
上記の表4aおよび表4bに示される両ケースにおいては、テールガス圧が65psigで高いものの、本発明は、高純度(99%)は、排出工程tが十分に増大される場合に得られてもよいことを示す。
【0067】
表3a、表3b、および表4aは、6 MMSCFDおよび10 MMSCFDの両流速条件について、回収率〜99%および>85%で非常に高い純度の水素が、RCPSAで達成可能であることを示す。両ケースにおいては、テールガスは65psigである。RCPSAを用いて達成される生成物ガスのこれらの高い純度および回収率(全排気は高圧で製造される)は、以前には発見されておらず、本発明のキーとなる特徴である。
【0068】
表4cは、表4aおよび表4bで議論されたと同じ製油所ストリームについて、高純度(>99%)Hを、高い回収率でもたらすRCPSA(容積=49立方フィート)の結果を示す。表4aに比較すると、表4cは、類似の純度および回収率が、原料供給サイクルtおよび排出サイクルtの時間を同時に減少することによって、達成されることができることを示す。
【0069】
【表8】

【0070】
実施例4
この実施例においては、表5は、更に、本明細書に記載される本発明に従って運転されるRCPSAの性能を示す。この実施例においては、原料は、典型的な製油所ストリームであり、圧力300psigである。本発明のRCPSAは、全テールガスが、40psigで排出される場合には、99%の純水素生成物を、回収率83.6%で製造することができる。この場合には、テールガスは、フラッシュドラムまたは他の分離装置、もしくは他の下流の製油所装置へ、更なる圧縮の必要性なしに送られることができる。本発明の他の重要な態様は、RCPSAはまた、COを<2vppmへ除去することである。これは、生成物水素富化ストリームを用いる製油所装置にとって極めて望ましい。より低いレベルのCOは、下流の装置における触媒が、長時間に亘って活性劣化なしに機能することを保証する。従来のPSAは、このCO規格を満足することができず、同時にまた、全テールガスをより高圧で排出するという条件を満たすことができない。典型的な燃料ヘッダー圧力、またはこれらのRCPSAの排気を処理する他の装置の高圧などである。全テールガスは、40psig以上で入手可能であることから、更なる圧縮は、RCPSAを製油所装置と統合するのに必要でない。
【0071】
【表9】

【0072】
実施例5
表6aおよび表6bは、本明細書に記載される本発明に従って運転されるRCPSAの性能を比較する。精製されるストリームは、より低いH(51モル%)を原料中に有し、典型的な製油所/石油化学ストリームである。両ケース(表6aおよび表6bに対応する)においては、向流脱圧工程は、並流工程の後で適用される。本発明に従って、表6aは、高いH回収率(81%)が、全テールガスが65psig以上で放出される場合においてさえ可能であることを示す。対照的に、あるテールガスが5psig程度で入手可能であるRCPSAは、Hを向流脱圧で失う。例えば、H回収率は、56%へ低下する。加えて、表6aのストリームのより高い圧力は、テールガスの圧縮が全く必要とされないことを示す。
【0073】
表6aおよび表6b
回収率に対するテールガス圧の効果。H濃度(51.3モル%)を有する原料へ適用されるRCPSAの例。H精製におけるRCPSA(31立方フィート)の入力および出力の組成(モル%)。原料は273psig、122゜Fであり、原料速度は約5.1 MMSCFDである。
【0074】
【表10】

【0075】
【表11】

【0076】
実施例6
この実施例においては、表7aおよび表7bは、本明細書に記載される本発明に従って運転されるRCPSAの性能を比較する。これらの場合には、原料圧は800psigであり、テールガスは65psigまたは100psigのいずれかで排気される。組成は、硫化水素などの典型的な不純物を示している。これは、これらの製油所における適用の際に存在することができる。分かることができるように、高い回収率(>80%)が、高純度>99%の両ケースで観察される。これらの両ケースにおいては、並流脱圧のみが用いられ、この工程における流出物は、サイクル中の他の床へ送られる。テールガスは、単に、向流排出工程において生じる。表7cは、テールガスのいくらかがまた、並流脱圧に続く向流脱圧工程で排気されるRCPSAの場合を示す。並流脱圧の流出物は、十分な純度および圧力のものであって、それを、本発明の一部であるRCPSA槽の形態の他の床の一つへ戻すことができる。テールガス、即ち排気ガスは、向流脱圧および向流排出工程において生じる。
【0077】
全ての場合においては、テールガスの全量が、高圧で入手可能である。これは、他の高圧の製油所処理と統合することを可能にする。これは、必要な圧縮のいかなる形態をもその必要性を除外し、一方高純度ガスを高回収率で製造する。本発明の広い特許請求の範囲に従って、これらのケースは、単に、例示の実施例とみなされるものであり、製油所、石油化学、または処理場所にも、もしくは分離される特定の分子の性質にさえ、そのいずれにも限定しないものである。
【0078】
表7a、表7b、および表7c
高圧原料へ適用されるRCPSAの例。H精製におけるRCPSA(18立方フィート)の入力および出力の組成(モル%)。原料は800psig、122゜Fであり、原料速度は約10.1 MMSCFDである。
【0079】
【表12】

【0080】
【表13】

【0081】
【表14】

【0082】
実施例7
表8a、表8b、および表8cは、本明細書に記載される本発明に従って運転されるRCPSAの性能を比較する。精製されるストリームは、より高いH(85モル%)を原料中に有し、典型的な製油所/石油化学ストリームである。これらの実施例においては、生成物の純度の増大は、10%未満(即ち、P/F<1.1)である。この制約下に、本発明の方法は、水素を、テールガスの圧縮の必要性なしに、回収率>90%で製造することができる。
【0083】
表8a、表8b、および表8c
濃度(85モル%)で原料へ適用されるRCPSAの例。RCPSA(6.1立方フィート)の入力および出力の組成(モル%)。原料は480psig、135゜Fであり、原料速度は約6 MMSCFDである。
【0084】
【表15】

【0085】
【表16】

【0086】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素以外のガス状成分を含む水素含有ストリームにおける水素濃度を増大させる方法であって、
急速サイクル圧力スイング吸着装置において、前記水素含有ストリームから前記水素以外のガス状成分の少なくとも一部を除去する工程を含み、
前記装置は、複数の吸着剤床を含み、全サイクル時間30秒未満および各吸着剤床内の圧力損失5インチ水超/(床長さ1フィート)を有し、
前記水素を、石油製油所または石油化学プラントで用いる
ことを特徴とする水素濃度の増大方法。
【請求項2】
前記全サイクル時間は、15秒未満であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記全サイクル時間は、10秒未満であり、前記圧力損失は、10インチ水超/(床長さ1フィート)であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記全サイクル時間は、5秒未満であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記圧力損失は、20インチ水超/(床長さ1フィート)であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水素含有ストリームは、化学反応によって水素を生成する水素源から得られ、
軽質炭化水素が、前記水素以外のガス状成分の少なくとも一部である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水素含有ストリームは、スチーム改質、接触分解、重質炭化水素の部分酸化およびガス化または熱分解からの生成物ストリーム、或いは接触改質装置からの正味水素ストリームであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記全サイクル時間は、15秒未満であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記全サイクル時間は、10秒未満であり、前記圧力損失は、10インチ水超/(床長さ1フィート)であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記全サイクル時間は、5秒未満であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記圧力損失は、20インチ水超/(床長さ1フィート)であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水素含有ストリームは、流動接触分解装置からのオフガスストリームであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記全サイクル時間は、15秒未満であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記全サイクル時間は、10秒未満であり、前記圧力損失は、10インチ水超/(床長さ1フィート)であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記全サイクル時間は、5秒未満であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記圧力損失は、20インチ水超/(床長さ1フィート)であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記水素含有ストリームは、一種以上の水素含有ストリームから水素を回収する水素源から得られることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記水素含有ストリームは、低温装置、膜装置または圧力スイング吸着装置から得られることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記全サイクル時間は、15秒未満であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記全サイクル時間は、10秒未満であり、前記圧力損失は、10インチ水超/(床長さ1フィート)であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記全サイクル時間は、5秒未満であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記圧力損失は、20インチ水超/(床長さ1フィート)であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
水素以外のガス状成分を含む、水素源から得られる水素含有ストリームにおける水素濃度を増大させる方法であって、
a)急速サイクル圧力スイング吸着装置において、前記水素含有ストリームから前記水素以外のガス状成分の少なくとも一部を除去する工程であって、
前記装置は、複数の吸着剤床を含み、全サイクル時間30秒未満および各吸着剤床内の圧力損失5インチ水超/(床長さ1フィート)を有する工程;および
b)前記水素含有ストリームを、反応体として水素処理装置へ供給する工程
を含むことを特徴とする水素濃度の増大方法。
【請求項24】
前記水素処理装置は、炭化水素原料からヘテロ原子を除去するための水素化装置、炭化水素原料がより低沸点の液体生成物へ転化される水素化分解装置および炭化水素原料の分子が異性化される水素異性化装置からなる群から選択されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記炭化水素原料は、ナフサ沸点範囲の原料、灯油およびジェット燃料沸点範囲の原料、留出油沸点範囲の原料、残油並びに原油からなる群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記炭化水素原料は、直留ナフサ、キャット分解ナフサ、コーカーナフサ、水素化分解装置ナフサおよび残油水素化装置ナフサからなる群から選択されるナフサ沸点範囲の原料であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記全サイクル時間は、15秒未満であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記全サイクル時間は、10秒未満であり、前記圧力損失は、10インチ水超/(床長さ1フィート)であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記全サイクル時間は、5秒未満であることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記圧力損失は、20インチ水超/(床長さ1フィート)であることを特徴とする請求項29に記載の方法。

【公表番号】特表2008−528418(P2008−528418A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552342(P2007−552342)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/002293
【国際公開番号】WO2006/079025
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】