説明

水素生成システム

【課題】水素生成菌を用いて有機材料を水素発酵させる場合において、単位時間当たりの水素生成量を多くすることが可能な水素生成システムを提供すること。
【解決手段】有機材料を含むと共に流動性を備える未発酵液が投入されると共に、内部に水素生成菌を存在させておき、該水素生成菌によって未発酵液を水素発酵させるための水素発酵槽21と、水素発酵槽21の内部の未発酵液、または水素発酵槽21で水素発酵が行われた排出液を連続的に排出させるための排出手段130と、排出手段130によって排出液が水素発酵槽21の外部に排出されるのに際して、水素生成菌が減少するのを抑制するための減少抑制手段80と、水素発酵槽21、排出手段130および減少抑制手段80を含むいずれかの部位を連結する管路100〜108と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素生成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーの有力候補として、水素が注目されている。水素は、燃焼させても水を生成するのみであり、二酸化炭素を排出することがなく、また各種の有害ガスを発生することもない。そのため、水素は、環境を汚さないクリーンなエネルギーとして、世界的に注目されている。また、水素は、例えば燃料電池のように、直接電気に変換できるという性状も有している。さらに、水素は、比重が軽く、常温ではサラサラしたガス状物質である、という性状も有している。加えて、水素は、生ゴミ等の有機材料(バイオマス)の分解により生成できる性質も備えており、近年、バイオマスからの水素の生成に関して、鋭意、研究が進められている。
【0003】
ここで、バイオマスから水素を生成する手法としては、例えば特許文献1および特許文献2に開示されている手法がある。これら特許文献1および特許文献2においては、発酵槽の内部に一定量の有機材料および微生物(水素生成菌)を含む培養液を投入し、攪拌等を行いながら発酵槽の内部の有機材料がほとんど完全になくなるまで、水素発酵を行う水素生成システムおよび水素生成方法が開示されている。
【0004】
かかる水素生成システムおよび水素生成方法は、従来の種々の水素生成方法(例えば、水の電気分解、メタノールやプロパン、天然ガスの水蒸気改質等)と比較して、水素生成のためのコストを大幅に低減できる。また、近年、新興工業国におけるエネルギ需要の増大等に伴い、化石燃料の高騰・環境汚染等の問題も生じている。このような背景から、上述の水素生成システムおよび水素生成方法は、エネルギ問題を解消する我国の有力技術として、大きな注目を集めるようになってきている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−157595号公報(要約、図2〜図4等参照)
【特許文献2】特開2004−194625号公報(段落番号0045、図1等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、現状用いられている、水素生成システムにおける、反応時間と水素生成量の関係は、例えば特許文献1における図2および図4に示す状態となっている。特許文献1の図2および図4に示すように、有機材料を投入してから一定時間が経過すると、反応が収束して水素発生量が低下する。そして、例えば特許文献1の図4に示すように、反応収束点を経過した後に、再び水素生成菌を投入しつつ攪拌等を行うことにより、再度水素生成量を増加させ、有機材料を完全に分解している。
【0007】
かかる手法を用いれば、所定の水素生成菌を用いて有機材料を水素発酵させることにより、それより以前の手法と比較して、大量の水素を生成させることが可能となる。この場合、有機材料を発酵槽に投入すると共に、所定の水素生成菌を発酵槽に投入すれば、水素生成菌が自然に増殖するため、非常に安価に水素を生成することを可能としている。
【0008】
しかしながら、水素生成システムを実際に実用化させる場合、より一層、水素生成量を多くすることが望まれている。すなわち、単位時間当たりの水素生成量を、一層多くすることが望まれている。
【0009】
そこで、この出願の発明は、以上のような背景から為されたものであって、水素生成菌を用いて有機材料を水素発酵させる場合において、単位時間当たりの水素生成量を多くすることが可能な水素生成システムを提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、有機材料を含むと共に流動性を備える未発酵液が投入されると共に、内部に水素生成菌を存在させておき、該水素生成菌によって未発酵液を水素発酵させるための水素発酵槽と、水素発酵槽の内部の未発酵液、または水素発酵槽で水素発酵が行われた排出液を連続的に排出させるための排出手段と、排出手段によって排出液が水素発酵槽の外部に排出されるのに際して、水素生成菌が減少するのを抑制するための減少抑制手段と、水素発酵槽、排出手段および減少抑制手段を含むいずれかの部位を連結する管路と、を具備するものである。
【0011】
このように構成した場合には、水素発酵槽の内部には、流動性を有する未発酵液および水素生成菌が存在する状態となり、水素発酵槽の内部で水素発酵が進行する。また、排出手段により、水素発酵槽の内部から連続的に排出液が排出される。ここで、排出液には、水素生成菌が含まれているが、減少抑制手段を用いることにより、水素生成菌が減少するのを抑えることが可能となる。
【0012】
このように、水素生成菌の減少を抑えることにより、水素発酵槽内における水素生成菌の数が増え、水素発酵により得られる水素発生速度を増大させることが可能となる。これは、水素生成菌の数が増える(密度が上がる)ことによって、水素生成菌の活動に要するエネルギが、自身の分裂に用いられるよりも、水素発酵によって得られる水素を生成することが主体となるためである。
【0013】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、未発酵液は、固形物を含まずに管路内を流動する流動性を確保している廃飲料水、廃糖液、野菜ジュース、砂糖大根の搾り汁、サトウキビの搾り汁、魚介類の煮汁等の酸性液体、または食塩を数パーセント含ませた液体から構成されるものである。このように構成する場合、水素生成菌によって未発酵液を水素発酵させることができ、確実に水素を発生させることが可能となる。
【0014】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、減少抑制手段は、膜状部材を備えると共に、この膜状部材は、中空糸膜、ろ紙、メッシュ状に設けられる金属膜、限外濾過膜、逆浸透膜、濾過フィルタ、不織布、固液分離膜、荷電体材料のうち、少なくとも1つから構成されていて、該膜状部材は、水素生成菌を通過させない程度の細孔を備え、排出液のうち細孔を通過した後の濾過液は外部に排出されると共に、排出液のうち濾過液が除去された後の再投入液は、管路のうち水素発酵槽に還流される還流管路を介して水素発酵槽に還流されるものである。
【0015】
このように構成した場合には、水素生成菌は、膜状部材に存在する細孔を通過することができない。それにより、排出液を、細孔を通過する濾過液と、細孔を通過できなく水素生成菌を多量に含む再投入液とに分離される。そして、再投入液は、還流管路を介して水素発酵槽に導かれる。そのため、水素発酵槽では、この再投入液と未発酵液とが混在する状態となり、水素発酵が引き続いて行われる。
【0016】
このようにすれば、上述した発明と同様に、水素生成菌の減少を確実に抑え、水素発酵槽内の水素生成菌の量を、より増大させることが可能となり、水素発酵における水素生成速度を増大させることが可能となる。さらに、細孔を通過しない有機材料も回収することができ、限られた有機材料から効率的に水素を得ることが可能となる。
【0017】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、減少抑制手段は、遠心力を利用して水素生成菌が多く含まれる部位と、水素生成菌が少ない部位とを分離する遠心分離手段を備えるものである。このように構成した場合には、排出液は、遠心分離手段によって、水素生成菌を多量に含む部分が存在する状態となる。そのため、水素生成菌を多量に含む部分は、再投入液として再び水素発酵槽に容易に還流させることができる。
【0018】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、減少抑制手段は、多孔質材料から構成されると共に水素生成菌を担持可能な微生物担持担体を有すると共に、この微生物担持担体は、水素発酵槽の内部に配置されるものである。このように構成した場合には、微生物担持担体は、多孔質材料から構成されているため、微生物担持担体の多孔質を構成する微細孔には、多数の水素生成菌が入り込んで、その内部で生息/増殖することが可能となる。かかる微生物担持担体が水素発酵槽の内部に配置されるため、水素生成菌の供給源が水素発酵槽の内部に存在する状態となり、排出液が水素発酵槽から流出する場合でも、水素発酵のための水素生成菌を供給することが可能となっている。
【0019】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、微生物担持担体は、セラミック材、スポンジ材、炭素材、布材、プラスチック材、紙材、木材、寒天、アルギン酸、カラゲナン、コンニャク、コラーゲンのうち少なくとも1つから構成されるものである。微生物担持担体が上述の材料から構成される場合、いずれも多孔質材料であるため、水素生成菌を保持し、微細孔の内部で増殖させることが可能となっている。
【0020】
さらに、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、微生物担持担体は、帯電性を帯びて水素生成菌を吸着する帯電性材質、水素生成菌を吸着する性質を有する化学反応基、または微生物を吸着する免疫抗体のうち少なくとも1つを備えるものである。微生物担持担体が上述の材料から構成される場合、いずれも微生物を吸着して保持可能な材料であるため、水素生成菌を保持/増殖させることが可能となる。
【0021】
さらに、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、水素生成菌は、Clostridium beijerinkii AM21B株、Clostridium sp.No.2株、Clostridium sp.X53株のうちの少なくとも1つを含むものである。このように構成した場合には、有機材料を水素発酵させる際に、水素発生量を多くすることが可能となる。
【0022】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、排出手段の作動を制御する制御手段を具備し、水素発酵槽において発生する気体の発生量を計測するガス発生量計測手段、水素発酵槽または管路における濁度を計測する濁度計測手段、水素発酵槽または管路における水素生成菌の数を計測する菌数計測手段、水素発酵槽または管路における有機酸濃度を計測する有機酸濃度計測手段、アルコール濃度を計測するアルコール濃度計測手段、およびpHを計測するpH計測手段のうち少なくとも1つを具備すると共に、制御手段は、ガス発生量計測手段における気体の発生量の低下、濁度計測手段における濁度の低下、菌数計測手段における水素生成菌の数の低下、有機酸濃度計測手段における水素発酵槽または管路での有機酸濃度、およびアルコール濃度計測手段におけるアルコール濃度およびpH計測手段におけるpHが、設定された値から変動した場合に、未発酵液の供給量を増加させる、または水素生成菌を新たに投入する処理を行うものである。
【0023】
このように構成した場合には、制御手段は、ガス発生量計測手段、濁度計測手段、菌数計測手段、有機酸濃度計測手段、アルコール濃度計測手段、およびpH計測手段のうちの少なくとも1つの計測結果に基づいて、未発酵液の供給量を増大させたり、または水素生成菌を新たに投入する等のような、計測結果に応じた各種の処理が為される。このように、制御手段により、水素の生成に関する、1種類または複数種類のパラメータを監視することにより、一層効率的に水素を生成することが可能となり、水素の発生量を増大させることが可能となる。
【0024】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、制御手段は、排出手段を制御駆動すると共に、この排出手段の制御駆動に際して、管路内で排出液を逆流させる洗浄モードを有するものである。
【0025】
このように構成した場合には、膜状部材を用いる場合における目詰まりが生じるのを防止することが可能となる。すなわち、所定の時間、膜状部材を介して排出液を濾過液と再投入液とに分離する場合、膜状部材の細孔には、微細な粒子が細孔の入口付近に係止して、目詰まりを生じさせる状態となる。かかる目詰まりの度合いは、排出液を流通させる時間が長くなればなるほど、累積的に悪化する。しかしながら、上述のように、制御手段が排出液を逆流させる洗浄モードを有する場合、当該逆流により、細孔の入口付近に係止されている粒子は、流出する状態となる。このようにすれば、膜状部材の目詰まりを解消することができ、装置寿命を延ばすことが可能となる。
【0026】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、水素発酵槽は、排出手段によって未発酵液が送り込まれると共に、この送り込みによって、水素発酵槽の内部は、正圧に保たれると共に、該水素発酵槽の内部が一定の圧力に到達すると、水素発酵槽の内部から排出液が排出されて、水素発酵槽の内部の圧力が平衡状態となるものである。
【0027】
このように構成した場合には、水素発酵槽には、排出手段を介して、未発酵液が送り込まれ、その圧力によって水素発酵槽に存在する発酵液が、排出液として送り出される。それにより、水素発酵槽の内部に存在する発酵液を、一定の分量ずつ入れ替えることが可能となる。
【0028】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、水素生成菌が水素発酵により有機材料を分解する際の栄養源となる培地を水素発酵槽に供給する培地供給手段を有すると共に、制御手段は、水素発酵の開始から一定時間が経過した場合、または水素発酵の開始から連続的に、水素発酵槽の内部に培地を送り込むための指令を培地供給手段に与えるものである。
【0029】
このように構成した場合には、水素発酵槽の内部に培地が供給されるため、かかる培地が水素発酵における水素生成菌の副栄養源として作用して、水素生成菌が活動するのを促進させることが可能となる。
【0030】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、培地は、ポリペプトン、酵母エキスまたは塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウムのうち少なくとも1つを含む無機塩類、または各種の魚のアラ、ホタテのウロ、イカのゴロ、魚の煮汁のうち少なくとも1つを含む水産系廃棄物のうちのいずれか、またはこれらの混合物としたものである。培地が、このような成分から構成される場合、確実に水素を生成することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、水素生成菌を用いて有機材料を水素発酵させる場合において、単位時間当たりの水素生成量を多くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
なお、本発明は、上述の従来までの水素生成システム/水素生成方法に対して、単位時間当たりの水素発生量を増大させるための手法に関するものであり、その詳細については、図1から図4に基づいて、以下に説明する。図1は、本発明の水素生成システム10の概略構成を示す、システム構成図である。
【0033】
この図1に示すように、水素生成システム10は、水素発酵部20、糖廃液タンク30、培地タンク40、中和剤タンク50、中空糸膜ユニット80、回収タンク90、および制御部140を主要な構成要素としている。
【0034】
これらのうち、水素発酵部20は、有機材料を含み水素発酵における原料となる未発酵液と、主として回収後の水素生成菌とが送り込まれる、中空の水素発酵槽21を具備している。この水素発酵槽21には、未発酵液を供給するための供給管路100の一端側が接続されていて、水素発酵槽21の内部に新たな有機材料および水素生成菌を供給可能としている。それにより、水素発酵槽21では、その内部に送り込まれる未発酵液を所定の分量だけ蓄えて、水素発酵処理が為される。
【0035】
なお、水素発酵槽21に供給される未発酵液は、後述する糖廃液と、培地溶液と、中和剤と、その他再利用液とが混合された液体である。
【0036】
また、この水素発酵槽21の周囲には、温度調整手段22が取り付けられている。温度調整手段22は、例えば液体(お湯等)を一定の温度に加熱するための不図示の加熱手段と、この加熱手段に一端側および他端側が接続されると共に、水素発酵槽21の周囲に巻回される管路22aとを具備している。それにより、水素発酵槽21の周囲を、所定の温度の液体が循環し、水素発酵槽21を一定の温度に保つことを可能としている。なお、水素発酵槽21の内部が37℃に保たれる場合、水素発酵の反応速度が最も速くなる。そのため、温度調整手段22は、水素発酵槽21の内部の温度を37℃に保つように、温度制御されている。
【0037】
また、水素発酵槽21のうち、排出側の端部には、微生物担持担体23が設けられている。微生物担持担体23は、例えばセラミック材、スポンジ材、炭素材、布材、プラスチック材、紙材、木材、寒天、アルギン酸、カラゲナン、コンニャク、コラーゲンのように、多孔質材料から構成されている。この微生物担持担体23においては、多孔質を構成する多数の微細孔部分に水素生成菌が入り込み、該水素生成菌を保持すると共に、該水素生成菌が増殖することを可能としている。
【0038】
なお、微生物担持担体23は、上述の多孔質材料には限られず、水素生成菌を吸着可能となるように帯電させたもの、水素生成菌を吸着可能な化学反応基を素材の表面に塗布したもの、または水素生成菌を吸着可能な免疫抗体を素材の表面に塗布したものであっても良い。これらのうち、水素生成菌を吸着可能となるように帯電する場合、電荷は、プラスであることが好ましい。また、陽性の化学反応基を表面に設けている、イオン交換樹脂等の樹脂を用いても良い。さらに、水素生成菌を吸着可能な免疫抗体としては、ウサギなどの動物を免疫して作られる免疫グロブリン(抗体)などがある。
【0039】
また、水素発酵槽21には、その供給側の端部に、窓部24が設けられている。窓部24は、水素発酵槽21の内部を見ることが可能な部分であり、水素発酵の様子を目視することを可能としている。
【0040】
また、水素発酵槽21の上端側(本実施の形態では、窓部側)には、ガス回収管路101の一端側が接続されている。このガス回収管路101の他端側は、不図示の水素ガス回収手段に接続されている。そのため、水素発酵槽21の内部で発生する水素は、ガス回収管路101を介して、水素ガス回収手段側へと導かれ、この水素ガス回収手段にて貯蔵される。なお、水素ガス回収手段としては、単層カーボンナノチューブ(Single-Walled Carbon Nanotubes; SWNT)、グラファイトナノファイバ(Graphite Nanofibers;GNF)のような水素を吸着可能なカーボンナノチューブ、ガスタンク、ガス液化手段、例えばMgH2 といったMg系合金、FeTiH2 といったTi系合金、Ti-V-Mn,Ti-V-CrといったV系合金等の水素吸蔵合金等、種々のものがあり、どのような手段を用いても良い。
【0041】
また、水素生成システム10には、糖廃液タンク30が設けられている。糖廃液タンク30には、液体状の有機材料である、糖廃液が蓄えられている。かかる糖廃液としては、固形物を含まずに、かつpHが6.0以下である廃飲料水、廃糖液、野菜ジュース、砂糖大根の搾り汁、サトウキビの搾り汁、魚介類の煮汁等の酸性液体、または食塩を数パーセント含ませた液体が挙げられる。しかしながら、糖廃液には限られず、固形物を含まずに流動性が高く、かつ有機物を含む種々の液体を用いることが可能である。
【0042】
また、水素生成システム10には、培地タンク40が設けられている。培地タンク40は、水素生成菌の栄養源となる培地を蓄えるためのタンクである。なお、培地タンク40、管路103、およびポンプ131によって、培地供給手段が構成される。
【0043】
ここで、培地は、有機材料の水素発酵を行う場合に必須と考えられているものである。すなわち、培地が存在しない場合、水素生成菌は、有機材料の水素分解を行うことができなく、水素生成量が0になることが、実験等で確認されている。しかしながら、僅かな量でも培地が存在する場合には、水素生成菌は、水素発酵を行うことが可能であることが、実験等を介して確認されている。このため、有機材料を主栄養源とした場合、培地は、水素生成菌を用いた水素発酵(水素分解)において、副栄養源として作用している、と考えられている。しかも、培地は、水素生成菌が活動するために必要な、他の栄養源の供給源となっている、とも考えられる。
【0044】
なお、培地タンク40に存在する培地としては、主にポリペプトンと酵母エキスと微量な無機塩類を含む、いわゆるPY培地が効果的である。しかしながら、培地はPY培地には限られず、PY培地に代わる培地として、例えば各種の魚のアラ、ホタテのウロ、イカのゴロ、魚の煮汁(カツオの内蔵を含む)等のような、水産物の内蔵を主とする水産系廃棄物を用いるようにしても良い。
【0045】
なお、かかる水産系廃棄物を用いると、PY培地の代わりとなることについては、本出願人は、特願2005−136960号において、既に特許出願を行っている。
【0046】
さらに、水素生成システム10には、中和剤タンク50が設けられている。中和剤は、水素発酵槽21の内部における、発酵を行っている未発酵液(以下、水素発酵の中途段階における未発酵液にいても、全く水素発酵を行っていない未発酵液と同様に、未発酵液とする。)のpHを一定に保つために供給されるものである。すなわち、水素発酵槽21の内部で水素発酵を行う場合、反応の進行に伴って、酢酸、酪酸等の有機酸が生成されてゆく。そして、そのままの状態を放置すると、徐々に水素発酵槽21の内部における酸性の度合いが強くなってしまい、水素発酵の速度が低下していく。そこで、水素発酵の速度を一定以上に維持するために、中和剤を、水素発酵槽21に投入するための中和剤タンク50が設けられている。かかる中和剤を水素発酵槽21に投入する場合、pHを7側に近付けることが可能となる。また、かかる中和剤としては、アルカリ性物質であれば、どのようなものでも良いが、代表的なアルカリ性物質としては、例えばNaOH水溶液がある。なお、水素発酵槽21の内部におけるpHは、4.0から8.0の範囲内であれば、水素発酵は良好に進行する。
【0047】
なお、糖廃液タンク30、培地タンク40および中和剤タンク50には、それぞれ管路102,103,104の一端側が接続されている。これらのうち、培地タンク40、および中和剤タンク50に一端が接続されている管路103,104は、糖廃液タンク30に一端が接続されている管路102に合流している。この管路102は、その他端側が混合機60に対して接続されている。混合機60は、供給される糖廃液、培地および中和剤を攪拌等によって混合するためのものである。かかる混合は、例えばフィンを用いたり、内部の混合液(未発酵液)に流体圧を与える等、どのような手法を用いても良い。
【0048】
なお、この混合機60の周囲にも、温度調整手段70が取り付けられている。かかる温度調整手段70は、上述の温度調整手段22と同様の構成であり、加熱手段および管路71を具備しているため、その説明は省略する。
【0049】
また、水素発酵槽21の流出側には、循環管路105が接続されているが、この循環管路105を介して、減少抑制手段として機能する中空糸膜ユニット80が接続されている。図2に示すように、中空糸膜ユニット80は、例えば筒状のケース体81を具備していて、このケース体81の内部には、筒状の流路82が設けられている。かかる流路82を囲むように、ケース体81の内部には、膜状部材としての中空糸膜83が充填されている。また、流路82には、その外周に位置する中空糸膜83側に向かう多数の小径孔82aが設けられていて、この小径孔82aを通過した排出液のうち、中空糸膜83の細孔(図示省略)を通過可能な液体(濾過液)のみが、中空糸膜83のうち流路82とは反対側に浸透していく。なお、ケース体81の内部に充填される中空糸膜83としては、水素生成菌を濾過側(回収タンク90側)には通過させずに、水素発酵槽21側に戻す程度の細孔を有するものとなっている。
【0050】
また、ケース体81には、供給口84、排出口85および濾過口86が設けられている。これらのうち、供給口84には、循環管路105の他端側が接続されており、ケース体81の内部に、水素発酵槽21から流出する排出液を供給可能としている。また、排出口85には、還流管路106の一端側が接続されている。還流管路106の他端側は、水素発酵槽21の流入側に接続されている。かかる排出口85からは、中空糸膜83の細孔を通過できない、水素生成菌を含む分離液(再利用原料液)が、水素発酵槽21側に還流される。
【0051】
さらに、濾過口86には、回収管路107の一端側が接続されていて、この回収管路107の他端側は、回収タンク90に接続されている。濾過口86からは、中空糸膜83の細孔を通過し、流路82とは反対側に浸透した濾過液が、回収管路107に流入する。そして、濾過液は、回収タンク90に蓄えられ、該回収された濾過液に対してメタン発酵を施す等、別途の処理が為される。
【0052】
また、回収タンク90には、ガス回収管路108の一端側が接続されている。このガス回収管路108の他端側は、ガス回収管路101に接続されている。そのため、回収タンク90内で水素が発生した場合でも、ガス回収管路101,108を介して、水素ガス回収手段にて水素を回収することを可能としている。
【0053】
また、上述の各管路100〜108のうち、適宜の部位には、各種の測定手段が設けられている。各種の測定手段としては、温度センサ、pHセンサ(pH計測手段に対応)、水素の発生量を計測するガス発生量計測センサ(ガス発生量計測手段に対応)、各管路100〜108のうちいずれかを流れる、未発酵液/排出液/再投入液/濾過液の流量を計測する液体流量計測センサ、未発酵液等の濁度を計測する濁度計測センサ、水素生成菌等の微生物の数を測定するための菌数計測手段、圧力計測センサ、有機酸濃度を計測する有機酸濃度計測手段、アルコール濃度を計測するアルコール濃度計測手段等、種々のものがある。また、上述の各管路100〜108のうち、適宜の部位には、流量調整弁およびポンプが設けられている。流量調整弁は、各管路100〜108を流通する未発酵液等の流量を調整するための弁部材である。また、ポンプは、排出手段に対応し、水素生成システム10の上流側から下流側に向けて、未発酵液等を流すための手段である。
【0054】
また、上述の測定手段のうち、濁度計測センサは、未発酵液等の濁度を計測することにより、微生物数/発酵の進行度合いを類推するための、濁度計測手段に対応するものである。
【0055】
なお、本実施の形態において、測定手段が設けられる具体的な部位を、以下に述べる。測定手段のうち、温度センサとしては、水素発酵槽21の内部の温度を測定する温度センサ110、供給管路100を流通する未発酵液の温度を測定する温度センサ111がある。また、pHセンサとしては、水素発酵槽21の内部のpHを測定するpHセンサ112、および供給管路100を流通する未発酵液のpHを測定するpHセンサ113がある。さらに、液体流量計測センサとしては、供給管路100を流通する未発酵液の流量を計測する液体流量計測センサ114、循環管路105を流通する排出液の流量を計測する液体流量計側センサ115、および回収管路107を流通する濾過液の流量を計測する液体流量計測センサ116がある。また、水素の発生量を計測するガス発生量計測センサとしては、ガス回収管路101を流通する水素の流量を計測するガス発生量計測センサ117がある。
【0056】
また、濁度計測センサとしては、水素発酵槽21の流入側における未発酵液の濁度を計測する濁度計測センサ118、循環管路105を流通する排出液の濁度を計測する濁度計側センサ119、回収管路107を流通する濾過液の濁度を計測する濁度計測センサ120、還流管路106を流通する再投入液の濁度を計測する濁度計測センサ121がある。
【0057】
さらに、流量調整弁は、各管路100〜108に適宜設けられており(本実施の形態では、管路102のみ設けられていない。以下、流量調整弁122とする。)、各管路100〜108における流量を適宜調整可能としている。なお、流量調整弁122は、モータにより駆動される電動弁、ソレノイド等により駆動される電磁弁、手動調整が為される弁等、どのような手段にて流量調整を行っても良い。
【0058】
また、ポンプとしては、管路102〜104に設けられているポンプ130〜132、および循環管路105に設けられているポンプ133がある。これらのポンプ130〜133は、後述する制御部140での制御駆動により、原則として連続的に駆動される。また、ポンプ130〜132は、それぞれ糖廃液タンク30、培地タンク40または中和剤タンク50から、糖廃液、培地または中和剤を混合機60に向けて供給可能としている。なお、かかるポンプ130〜132の作動により、水素発酵槽21の内部は、若干正圧となる。また、正圧となる水素発酵槽21における液圧により、循環管路105に排出液が連続的に送り出される。
【0059】
さらに、本実施の形態では、ポンプ133は、逆回転可能であることが望ましい。ポンプ133が逆回転可能な場合、中空糸膜ユニット80の内部を、排出液/濾過液等が逆向きに流通する。それにより、中空糸膜83において、目詰まり等が生じていても、濾過液が逆流することにより、目詰まりを解消可能としている。なお、ポンプ133が逆回転しない場合であっても、別途、管路と流量調整弁を組み合わせる等により、中空糸膜ユニット80の内部を排出液/濾過液等が逆向きに流通可能な構成を実現しても良い。
【0060】
ここで、上述の温度センサ110,111を用いて温度制御を行う場合、水素発酵槽21の内部の温度は、37℃に保たれるのが、最も好ましい。しかしながら、25℃〜45℃の範囲内であれば、水素発酵反応は良好に進行するため、水素発酵槽21の内部における温度が、かかる範囲内となるように温度制御しても良い。
【0061】
また、水素生成システム10は、制御手段に対応する制御部140を有している。制御部140は、上述した温度センサ110,111、pHセンサ112,113、液体流量計測センサ114〜116、ガス発生量計測センサ117、濁度計測センサ118〜121からの計測信号が入力されると共に、この計測信号に基づいて、上述した温度調整手段22,70、各種のポンプ130〜133、種々の流量調整弁122の作動を制御可能としている。ここで、本実施の形態では、制御部140は、水素発酵槽21の内部における未発酵液が、発酵の進行に伴って、所定の割合ずつ連続的に入れ替わるように設けられている。かかる入れ替わりの一例としては、1時間当たりの置換率を20%とするものがある。しかしながら、置換率はこれには限られず、種々の値に設定することを可能としている。
【0062】
また、上述の制御部140は、ポンプ133を正転駆動させる通常運転モードと、ポンプ133を逆転駆動させる洗浄モードとを備えている。洗浄モードは、中空糸膜83における目詰まりを防止するための運転モードであり、循環管路105等における排出液等を、中空糸膜ユニット80から水素発酵槽21に向けて送り込むための圧力を与えることを可能としている。
【0063】
なお、制御部140は、CPU、RAM、ROM、およびこれらを接続するバス、情報表示手段などの外部機器を接続するためのインターフェース、ROMに記憶されているpHコントロール、温度コントロール、通常運転モード、洗浄モード等の各種の制御に関するデータおよびプログラム等を備えている。しかしながら、ROMに代えて、またはROMと共に不揮発性メモリを用いるようにしても良い。
【0064】
また、本実施の形態において、水素発酵を行うための水素生成菌としては、例えば、Clostridium beijerinkii AM21B 株(Journal of Fermentation and Bioengineering 73:244-245, 1992参照)、Clostridium sp.No.2株(Canadian Journal of Microbiology 40:228-233, 1994参照)、Clostridium sp.X53株(Journal of Fermentation and Bioengineering 81:178-180, 1996参照)等の本発明者によって分離されたクロストリジウム属(Clostridium)に属する水素生成菌がある。しかしながら、水素生成菌は、未発酵液を効率良く水素発酵させて、水素を良好に生産するものであれば、各種の水素生成菌を利用することができ、上述の水素生成菌に限定されるものではない。
【0065】
かかる水素生成菌を用いる場合、水素生成において優れた性質を備える水素生成菌を用いて水素発酵を行うことになり、他の手法により水素発酵処理を行う場合と比較して、水素生産量を多くすることができる。
【0066】
以上のような水素生成システム10を用いて、水素を生成する水素生成方法について、以下に説明する。
【0067】
まず、ポンプ130〜132を作動させて、水素発酵槽21に向けて、糖廃液タンク30から所定量の糖廃液、培地タンク40から所定量の培地、および中和剤タンク50から所定量の中和剤の供給を開始する。この場合、水素発酵槽21までの中途部分に存在する、混合機60によって、糖廃液、培地および中和剤が攪拌され、均一な未発酵液が得られるようにする。なお、制御部140は、温度調整手段70を作動させて、混合機60の内部温度が37度に保たれるように、温度制御する。
【0068】
かかる混合機60を経た未発酵液は、水素発酵槽21の内部に入り込む。ここで、水素発酵槽21の内部には、予め水素生成菌が投入されているか、または未発酵液の投入と共に水素生成菌が投入される状態となっている。このため、水素発酵槽21の内部に未発酵液が貯留されると、該未発酵液を原料として、水素発酵が開始される。そして、この水素発酵槽21の内部で発生する水素は、ガス回収管路101を介して、不図示の水素ガス回収手段に送り込まれる。なお、かかる水素発酵の開始に際しては、制御部140からの制御指令により、温度調整手段22の作動が開始され、水素発酵槽21の内部温度が37℃に保たれるように、温度制御する。
【0069】
なお、この水素発酵槽21の内部の底部側には、微生物担持担体23が設けられている。そのため、水素発酵中においては、この微生物担持担体23から水素生成菌が供給される状態となっている。しかしながら、水素発酵槽21から流出する水素生成菌は、後述するようにして回収された後に、再び水素発酵槽21の内部に供給される。
【0070】
また、制御部140は、ポンプ130〜132を作動させて、水素発酵槽21に十分な分量の未発酵液を送り込んだ後も、ポンプ130〜132の作動を継続する。それにより、水素発酵槽21からは、所定量ずつ連続的に、排出液が流出していく。なお、反応当初の段階においては、流出する排出液は、ほとんど水素発酵が為されていない、未発酵液に近い状態となっている。しかしながら、本実施の形態では、かかる状態の未発酵液も含めて、排出液とする。
【0071】
また、水素発酵槽21から流出する排出液は、循環管路105を介して中空糸膜ユニット80に流入される。中空糸膜ユニット80では、排出液が細孔を通過するか否かに応じて、分離される。すなわち、細孔の直径よりも大きな粒径の水素生成菌/有機成分は、この細孔を通過することができない。そのため、流路82を通過した後に、排出口85から還流管路106内に送り込まれ、再び水素発酵槽21の内部に流入される。なお、排出口85から排出される液体は、排出液のうち、細孔を通過できない水素生成菌/有機成分が、濃縮された状態で含まれる、再投入液となる。この再投入液は、還流管路106を介して再び水素発酵槽21に流入される。
【0072】
一方、細孔の直径よりも小さな粒径の粒子、または所定の液圧で押し出される液体は、細孔を通過して、回収管路107内に導かれる。この場合、細孔を通過する液体は、排出液のうち、水素生成菌/有機成分をほとんど含まない、流動性の高い濾過液となる。この濾過液は、回収管路107を介して、回収タンク90に流入される。
【0073】
以上のようにして、糖廃液タンク30等から、未発酵液が連続的に水素発酵槽21の内部に供給される。そして、水素発酵槽21の内部では、供給される未発酵液の圧力に応じて、該供給される分だけの排出液が排出されるが、排出液中に含まれる、水素生成菌および有機成分は、中空糸膜ユニット80を介して回収され、再び水素発酵槽21に供給することが可能となっている。
【0074】
以上のような水素生成システム10では、水素発酵槽21内における水素生成菌の数が増え、水素発酵により得られる水素発生速度を増大させることが可能となる。これは、水素生成菌の数が増える(密度が上がる)ことによって、水素生成菌の活動に要するエネルギが、自身の分裂に用いられるよりも、水素発酵によって得られる水素を生成することが主体となるためである。このように、水素生成菌の活動に要するエネルギが、自身の分裂に用いられるのよりも、水素発酵に向けられるようにする、という新たな着想を本発明では具現化しており、それによって、短時間当たりに得られる水素生成量を、飛躍的に増大させることが可能となっている。
【0075】
特に、上述の水素生成システム10においては、中空糸膜ユニット80を具備しているため、水素生成菌は、中空糸膜83が備える細孔を通過できず、還流管路106を介して、再び水素発酵槽21の内部に戻すことが可能となる。それにより、水素生成菌の数が減少するのを抑えることが可能となり、水素生成量を増大させることが可能となっている。
【0076】
加えて、本発明では、微生物担持担体23が、水素発酵槽21の内部に設けられている。それにより、水素発酵槽21から一定の流量ずつ、排出液が流出する場合でも、微生物担持担体23が水素生成菌を保持し、水素発酵槽21の内部に常に水素生成菌が存在する状態とすることが可能となる。すなわち、微生物担持担体23が存在しない場合には、水素発酵槽21の内部に水素生成菌を保持する部位がなく、一定流量ずつ排出液が流出する場合には、それに伴って、多くの水素生成菌が流出する状態となっている。しかしながら、微生物担持担体23を設ける場合、該微生物担持担体23が備える多数の微細孔部分の内部では、未発酵液の流れは極めて遅くなる。そのため、水素生成菌が微細孔から流出せず、多くの水素生成菌を保持することが可能となる。
【0077】
ここで、本発明の手法を用いて、水素を生成する実験を行っているが、その実験結果を図3に示す。なお、この図3における実験においては、砂糖を水に溶かしたものを、未発酵液として用いている。この場合の砂糖の濃度は、3重量%であり、また、そのときの水溶液のpHは7.0、単位時間(1時間)当たりの水素発酵槽21における置換率は、20%となっている。
【0078】
ここで、図3に示す実験結果より、一定の分量の未発酵液から得られる水素の総量は、従来の手法と本発明に係る手法とでは、ほとんど差異はなく、同程度となっている。すなわち、従来の手法を用いる場合、水素発生の総量は、320mlとなっている。これに対して、上述の実験により得られる、水素発生の総量は、330mlとなっている。このことから、水素発生の総量は、従来の手法を用いた場合でも、本発明の手法を用いても同様となっている。
【0079】
しかしながら、本発明に係る手法では、単位時間当たりに生成される水素の分量は、従来の手法と比較すると、断然多くなっている。すなわち、従来の手法と、図3に示す実験結果とを比較すると、単位時間当たりに得られる水素の分量は、従来の手法においては、460ml/hであったのに対して、本発明に係る手法では、1440ml/hとなっている。このことから、図3における実験結果との対比では、本発明の手法では、単位時間当たりの水素発生量は、約3倍となっている。なお、この実験において用いられた水素生成菌は、Clostridium beijerinkii AM21B 株の水素生成菌となっている。
【0080】
また、別の実験結果を図4に示す。図4における実験においては、図3におけるものと同様に、砂糖を水に溶かしたものを、未発酵液として用いている。この場合の砂糖の濃度は、3重量%であり、また、そのときの水溶液のpHは7.0、単位時間(1時間)当たりの水素発酵槽21における置換率は、10%となっている。なお、この実験においても、Clostridium beijerinkii AM21B 株の水素生成菌が用いられている。
【0081】
図4に示す実験結果においても、水素発生の総量は、300mlとなっており、従来の手法とほとんど同様となっている。また、図4に示す実験結果においては、単位時間当たりに得られる水素の分量は、従来の手法においては、460ml/hであったのに対して、本発明に係る手法では、710ml/hとなっている。このことから、図4における実験結果との対比では、本発明の手法では、単位時間当たりの水素発生量は、約1.5倍となっている。
【0082】
以上の実験結果から、従来の手法と比較して、単位時間あたりの水素生成量が増大している、と言える。
【0083】
なお、上述のように、水素の生成効率が飛躍的に増大するため、単位時間当たりの水素発生量を従来と同程度とする場合、水素発酵槽21の小型化を図ることが可能となる。また、上述の手法を用いる場合、未発酵液中の有機材料を水素発酵させて分解し、中空糸膜83の細孔を通過可能なもののみが濾過口86から流出する。このため、この濾過口86を通過する濾過液における生物化学的酸素要求量(BOD;Biochemical Oxygen Demand)の値を低減することが可能となる。
【0084】
また、上述のように、未発酵液の連続供給方式を用いる手法は、従来のような、一定量の未発酵液を、水素発酵の終了を見計らって供給する、いわばバッチ処理方式とは異なり、反応収束時における反応速度の低下の影響が少なくなる。それにより、水素の生成効率が良好となり、一定時間における水素の発生量を増大させることが可能となる。また、上述のような連続供給方式では、反応開始時における反応速度の低下の影響は、水素生成システム10の起動時のみであり、水素発酵槽21の内部容積に対する比率で見ると、バッチ式と比較して、はるかに小さい状態となっている。このため、水素の生成効率を、一層良好にすることが可能となっている。
【0085】
また、上述の未発酵液は、管路100等の内部を流れ易い、固形物を含まずに流動性の高い状態となっている。そのため、水素発酵槽21の内部では、新たな未発酵液を常時投入することが可能となる。また、かかる流動性の高い未発酵液が常時投入されることにより、水素発酵中に生成される有機酸を、発酵液中から連続的に除去することが可能となる。かかる有機酸は、水素発酵の妨げとなっているが、有機酸を連続的に除去することにより、水素発酵の速度が低下するのを抑えることが可能となる。
【0086】
また、未発酵液は、pHが6.0以下である廃飲料水、廃糖液、野菜ジュース、砂糖大根の搾り汁、サトウキビの搾り汁、魚介類の煮汁等の酸性液体、またはこれらに食塩を数パーセント含む液体から構成されている。未発酵液がこれらを含む場合、水素発酵を良好に行わせることが可能となる。
【0087】
また、本実施の形態では、水素生成菌を排出液中から除去するために、中空糸膜83を用いている。かかる中空糸膜83を用いる場合、水素生成菌は、該中空糸膜83に存在する細孔を通過することができない。それにより、排出液を、細孔を通過する濾過液と、細孔を通過できなく水素生成菌を多量に含む再投入液とに、良好に分離することが可能となる。そして、再投入液は、還流管路106を介して水素発酵槽21に導かれる。そのため、水素発酵槽21では、この再投入液と未発酵液とが混在する状態となり、水素発酵が引き続いて行われる。
【0088】
このため、水素生成菌の減少を確実に抑えることができ、水素生成菌が十分に増殖するまでの待ち時間を低減することができ、一層効率的に水素発酵を行うことが可能となる。
【0089】
さらに、本実施の形態では、水素発酵槽21の内部には、微生物担持担体23が配置されている。かかる微生物担持担体23は、多孔質材料から構成されているため、微生物担持担体23の多孔質を構成する微細孔には、多数の水素生成菌が入り込んで、その内部で生息/増殖することが可能となる。それにより、排出液が水素発酵槽21から流出する場合でも、水素発酵槽21の内部から、水素発酵のための水素生成菌を供給することが可能となる。
【0090】
なお、本実施の形態の微生物担持担体23は、セラミック材、スポンジ材、炭素材、布材、プラスチック材、紙材、木材、寒天、アルギン酸、カラゲナン、コンニャク、コラーゲンのうち少なくとも1つから構成されている。これらは、いずれも多孔質材料であるため、水素生成菌を良好に保持し、微細孔の内部で増殖させることが可能となる。
【0091】
さらに、本実施の形態では、水素生成菌としては、Clostridium beijerinkii AM21B株、Clostridium sp.No.2株、Clostridium sp.X53株のうちの少なくとも1つを含んでいる。このため、有機材料の水素発酵による、水素の発生量を一層多くすることが可能となる。
【0092】
また、本実施の形態では、ポンプ130〜133、流量調整弁122、温度調整手段22,70等、各種の部分の作動制御を行う制御部140を備えている。しかも、この制御部140は、温度センサ110,111、pHセンサ112,113、液体流量計測センサ114〜116、ガス発生量計測センサ117、濁度計測センサ118〜121等の計測結果に基づいて、ポンプ130〜133、流量調整弁122、温度調整手段22,70等の作動を制御している。このため、温度センサ110,111、pHセンサ112,113、液体流量計測センサ114〜116、ガス発生量計測センサ117、濁度計測センサ118〜121が適宜の値を取るように、各部位を制御すれば、安定的に水素の発生量を増大させることが可能となる。
【0093】
特に、濁度計測センサ118〜121での計測/流量計測センサでの計測により、未発酵液/発酵液/排出液/再投入液中の水素生成菌の数および有機材料の分量を計測することができ、新たな糖廃液、培地および中和剤の供給量を適切に監理することが可能となる。
【0094】
また、本実施の形態では、制御部140は、ポンプ133を逆回転させて、中空糸膜ユニット80の内部において、排出液/濾過液/再投入液を、通常の水素発酵の向きに対して、逆流させるようにする、洗浄モードを実行可能となっている。このため、中空糸膜83において、目詰まりが生じるのを防止可能となる。すなわち、所定の時間、中空糸膜83を介して排出液を濾過液と再投入液とに分離する場合、細孔には、微細な粒子が細孔の入口付近に係止して、目詰まりを生じさせる状態となり、排出液を流通させる時間が長くなればなるほど、目詰まり具合は累積的に悪化する。しかしながら、上述のように、洗浄モードを実行可能な場合、排出液/濾過液/再投入液の逆流により、細孔の入口付近に係止されている粒子は、逆向き(供給口から水素発酵槽21に向かう向き)に流出され、目詰まりを解消することができる。それにより、中空糸膜ユニット80の寿命を延ばすことが可能となる。
【0095】
また、水素発酵槽21は、ポンプ130〜132によって未発酵液が送り込まれると共に、この送り込みによって、水素発酵槽21の内部は、正圧に保たれる。この場合、未発酵液の供給圧力および中空糸膜ユニット80における細孔/排出口85等の開口径に応じて、水素発酵槽21の内部から排出液が徐々に排出させることができ、単位時間当たり一定量ずつ入れ替える、適宜の流量の循環を実現することが可能である。
【0096】
さらに、本実施の形態では、培地タンク40を具備しており、この培地タンク40を介して、水素発酵槽21の内部に、水素生成菌が水素発酵をする際の栄養源となる培地を供給可能となっている。かかる培地は、水素生成菌の副栄養源として作用するため、水素生成菌の活動(水素発酵)を促進可能となり、水素の発生量を増大させることが可能となる。
【0097】
なお、培地としては、ポリペプトンと、酵母エキスと、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウムのうち少なくとも1つを含む無機塩類から構成されるPY培地、または各種の魚のアラ、ホタテのウロ、イカのゴロ、カツオの煮汁のうち少なくとも1つを含む水産系廃棄物のうちのいずれかが好適である。かかる培地を用いる場合、水素の発生量を増大させることが可能となる。
【0098】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形実施可能である。以下、それについて説明する。
【0099】
上述の実施の形態では、水素発酵槽21は、1つのみ設けられる場合について説明している。しかしながら、本発明の水素生成システムで設けられる水素発酵槽21は、1つには限られない。この場合、複数の水素発酵槽21は、図1の水素発酵槽21に対して並列的に設けられる構成を採用してもよく、また水素発酵槽21の下流側に他の水素発酵槽21を設ける等のように直列的に設けられる構成を採用しても良い。
【0100】
また、上述の実施の形態では、減少抑制手段として、中空糸膜ユニット80を用いる場合について説明している。しかしながら、減少抑制手段は、中空糸膜ユニット80には限られない。その他の構成としては、例えば、中空糸膜83以外の膜状部材を備える構成がある。膜状部材としては、ろ紙、メッシュ状に設けられる金属膜、限外濾過膜、逆浸透膜、濾過フィルタ、不織布、固液分離膜、荷電体材料等がある。なお、かかる膜状部材は、単独で用いるようにしても良く、また、他の種類の膜状部材と組み合わせて用いるようにしても良い。なお、いずれの種類の膜状部材においても、水素生成菌を通過させない程度の細孔を備えている必要がある。
【0101】
また、減少抑制手段としては、膜状部材を用いる以外の構成を採用しても良い。膜状部材を用いる以外の構成としては、遠心力を利用して水素生成菌が多く含まれる部位と、水素生成菌が少ない部位とを分離する遠心分離手段を備えるものがある。なお、かかる遠心分離手段を利用する場合、濾過液は、通常は回転中心側に集まり、水素生成菌および有機材料は、遠心力によって回転の外周側に集まる。それにより、水素生成菌および有機材料を含む部分を、簡単に分離することができ、再投入液として再び水素発酵槽21に容易に還流させることができる。
【0102】
さらに、上述の実施の形態において、回収タンク90で回収される濾過液に対して、メタン生成のためのメタン発酵処理を行うように構成しても良い。この場合には、メタン発酵を行うためのメタン発酵槽を新たに備える構成となると共に、このメタン発酵槽の内部にメタン菌を投入される。それによって、濾過液中の成分がメタン菌によって分解され、メタンガスを生成可能となる。
【0103】
さらに、上述の実施の形態においては、有機材料として、pHが6.0以下である廃飲料水、廃糖液、野菜ジュース、砂糖大根の搾り汁、サトウキビの搾り汁、魚介類の煮汁等の酸性液体、またはこれらに食塩を数パーセント含む液体等について述べている。しかしながら、有機材料としては、上述のものには限られず、列記されていない農業系資源、エネルギ植林を用いる林業系資源、畜産系資源、水産系資源等の、種々のバイオマスを用いて、水素を発生させるようにしても良い。
【0104】
また、上述の実施の形態では、混合機60に温度調整手段を設けたものが説明されているが、例えば外部雰囲気が適温に保たれる場合等には、かかる温度調整手段を省略する構成を採用しても良い。また、上述の実施の形態において、水素発酵槽21または各管路100〜108のいずれかの部位に、水素生成菌の数を検出するための菌数計測手段をさらに設けるようにしても良い。また、水素発酵槽21または管路100〜108のいずれかの部位に、有機酸濃度を計測する有機酸濃度計測手段をさらに設けるようにしても良い。さらに、水素発酵槽21または管路100〜108のいずれかの部位に、アルコール濃度を計測するアルコール濃度計測手段を設けるようにしても良い。
【0105】
なお、上述の有機酸濃度計測手段において水素発酵槽21または管路100〜108のいずれかで有機酸濃度が計測され、アルコール濃度計測手段において水素発酵槽21または管路100〜108のいずれかでアルコール濃度が計測され、またpH計測手段に対応するpHセンサ112,113でpHが計測されている。かかる計測に際して、それぞれ有機酸濃度、アルコール濃度、pHのうち、少なくとも1つが、設定された値から変動する場合、未発酵液の供給量を増加させたり、または水素生成菌を新たに投入するように、制御部140がポンプ130〜132を制御駆動させたり、流量調整弁122を制御作動させたり、または水素生成菌を供給するための不図示の菌供給手段(水素生成菌を蓄えている部分から、ポンプ、流量調整弁等を作動させて水素生成菌を供給するための手段)を制御作動させるようにしても良い。このように、設定された値に近づくように制御すれば、水素発酵を最適化させることが可能となり、水素の生成量を一層増大させることが可能となる。
【0106】
また、上述の実施の形態では、未発酵液に対して滅菌処理を施すようにしても良い。滅菌処理を施す場合、未発酵液中で雑菌が繁殖するのを抑えることが可能となる。それにより、未発酵液中の有機成分は、そのほとんどが水素生成菌によって水素発酵が為される。それにより、水素の発生量を、一層増大させることが可能となる。なお、滅菌機構としては、お湯等によって未発酵液を煮沸するものでも良く、その他、マイクロウエーブ波を用いて滅菌する構成を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の水素生成システムは、水素をエネルギとして用いる種々の分野において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の一実施の形態に係る水素生成システムの概略構成を示すシステム図である。
【図2】図1の水素生成システムにおける中空糸膜ユニットの構成を示す断面図である。
【図3】図1の水素生成システムを用いて、未発酵液を水素発酵させる場合のガス生成速度と時間との関係を示すと共に、置換率が20%の状態を示すグラフである。
【図4】図1の水素生成システムを用いて、未発酵液を水素発酵させる場合のガス生成速度と時間との関係を示すと共に、置換率が10%の状態を示すグラフである。
【符号の説明】
【0109】
10…水素生成システム
20…水素発酵部
21…水素発酵槽
22,70…温度調整手段
30…糖廃液タンク
40…培地タンク(培地供給手段の一部)
50…中和剤タンク
60…混合機
80…中空糸膜ユニット(減少抑制手段に対応)
83…中空糸膜(膜状部材に対応)
90…回収タンク
100〜108…管路
110,111…温度センサ
112,113…pHセンサ(pH計測手段に対応)
114〜116…液体流量計測センサ
117…ガス流量計測センサ(ガス発生量計測手段に対応)
118〜121…濁度計測センサ(濁度計測手段に対応)
130〜133…ポンプ(排出手段に対応)
140…制御部(制御手段に対応)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料を含むと共に流動性を備える未発酵液が投入されると共に、内部に水素生成菌を存在させておき、該水素生成菌によって上記未発酵液を水素発酵させるための水素発酵槽と、
上記水素発酵槽の内部の上記未発酵液、または上記水素発酵槽で水素発酵が行われた排出液を連続的に排出させるための排出手段と、
上記排出手段によって上記排出液が上記水素発酵槽の外部に排出されるのに際して、上記水素生成菌が減少するのを抑制するための減少抑制手段と、
上記水素発酵槽、排出手段および減少抑制手段を含むいずれかの部位を連結する管路と、
を具備することを特徴とする水素生成システム。
【請求項2】
前記未発酵液は、固形物を含まずに前記管路内を流動する流動性を確保している廃飲料水、廃糖液、野菜ジュース、砂糖大根の搾り汁、サトウキビの搾り汁、魚介類の煮汁等の酸性液体、または食塩を数パーセント含ませた液体から構成されることを特徴とする請求項1記載の水素生成システム。
【請求項3】
前記減少抑制手段は、膜状部材を備えると共に、この膜状部材は、中空糸膜、ろ紙、メッシュ状に設けられる金属膜、限外濾過膜、逆浸透膜、濾過フィルタ、不織布、固液分離膜、荷電体材料のうち、少なくとも1つから構成されていて、該膜状部材は、前記水素生成菌を通過させない程度の細孔を備え、
前記排出液のうち上記細孔を通過した後の濾過液は外部に排出されると共に、前記排出液のうち上記濾過液が除去された後の再投入液は、前記管路のうち前記水素発酵槽に還流される還流管路を介して前記水素発酵槽に還流される、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の水素生成システム。
【請求項4】
前記減少抑制手段は、遠心力を利用して前記水素生成菌が多く含まれる部位と、前記水素生成菌が少ない部位とを分離する遠心分離手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の水素生成システム。
【請求項5】
前記減少抑制手段は、多孔質材料から構成されると共に前記水素生成菌を担持可能な微生物担持担体を有すると共に、この微生物担持担体は、前記水素発酵槽の内部に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の水素生成システム。
【請求項6】
前記微生物担持担体は、セラミック材、スポンジ材、炭素材、布材、プラスチック材、紙材、木材、寒天、アルギン酸、カラゲナン、コンニャク、コラーゲンのうち少なくとも1つから構成されることを特徴とする請求項5記載の水素生成システム。
【請求項7】
前記微生物担持担体は、帯電性を帯びて前記水素生成菌を吸着する帯電性材質、前記水素生成菌を吸着する性質を有する化学反応基、または微生物を吸着する免疫抗体のうち少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項5記載の水素生成システム。
【請求項8】
前記水素生成菌は、Clostridium beijerinkii AM21B株、Clostridium sp.No.2株、Clostridium sp.X53株のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の水素生成システム。
【請求項9】
前記排出手段の作動を制御する制御手段を具備し、
前記水素発酵槽において発生する気体の発生量を計測するガス発生量計測手段、前記水素発酵槽または前記管路における濁度を計測する濁度計測手段、前記水素発酵槽または前記管路における前記水素生成菌の数を計測する菌数計測手段、前記水素発酵槽または前記管路における有機酸濃度を計測する有機酸濃度計測手段、アルコール濃度を計測するアルコール濃度計測手段、およびpHを計測するpH計測手段のうち少なくとも1つを具備すると共に、
上記制御手段は、
前記ガス発生量計測手段における上記気体の発生量の低下、前記濁度計測手段における上記濁度の低下、前記菌数計測手段における前記水素生成菌の数の低下、上記有機酸濃度計測手段における前記水素発酵槽または前記管路での有機酸濃度、および上記アルコール濃度計測手段におけるアルコール濃度および上記pH計測手段におけるpHが、設定された値から変動した場合に、前記未発酵液の供給量を増加させる、または前記水素生成菌を新たに投入する処理を行う、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の水素生成システム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記排出手段を制御駆動すると共に、この排出手段の制御駆動に際して、前記管路内で前記排出液を逆流させる洗浄モードを有することを特徴とする請求項9記載の水素生成システム。
【請求項11】
前記水素発酵槽は、前記排出手段によって前記未発酵液が送り込まれると共に、この送り込みによって、前記水素発酵槽の内部は、正圧に保たれると共に、該水素発酵槽の内部が一定の圧力に到達すると、前記水素発酵槽の内部から排出液が排出されて、前記水素発酵槽の内部の圧力が平衡状態となる、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の水素生成システム。
【請求項12】
前記水素生成菌が水素発酵により前記有機材料を分解する際の栄養源となる培地を前記水素発酵槽に供給する培地供給手段を有すると共に、
前記制御手段は、水素発酵の開始から一定時間が経過した場合、または水素発酵の開始から連続的に、前記水素発酵槽の内部に上記培地を送り込むための指令を上記培地供給手段に与える、
ことを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の水素生成システム。
【請求項13】
前記培地は、ポリペプトン、酵母エキスまたは塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウムのうち少なくとも1つを含む無機塩類、または各種の魚のアラ、ホタテのウロ、イカのゴロ、魚の煮汁のうち少なくとも1つを含む水産系廃棄物のうちのいずれか、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項12記載の水素生成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−159457(P2007−159457A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358596(P2005−358596)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(301035851)株式会社フレイン・エナジー (11)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】