説明

水素生成装置、それを備える燃料電池システム、及び水素生成装置の運転方法

【課題】原料に含まれる硫黄化合物の濃度が地域等によって変更されても、水添脱硫器の容量の増加が緩和することができ、エネルギー効率の低下及び起動時間の長期化も緩和することができる、水素生成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】原料中の硫黄化合物を常温で除去する第1常温脱硫器11と、原料中の硫黄化合物を常温よりも高い温度で除去する水添脱硫器12と、原料を用いて水素含有ガスを生成する水素生成器13と、第1常温脱硫器11及び水添脱硫器12のそれぞれへの原料の供給量を調整するように構成された供給量調整器と、供給量調整器を制御する制御器20と、を備え、制御器20は、水素生成器13から水素利用機器101へ水素含有ガスを供給しているときに、水添脱硫器12よりも第1常温脱硫器11を優先して硫黄化合物の除去に使用するように供給量調整器を制御する、水素生成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素系燃料と水を反応させることにより水素を生成する水素生成装置、それを備える燃料電池システム、及び水素生成装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に供給する水素を生成する方法としては、水蒸気改質反応が一般的に用いられている。この水蒸気改質反応は、例えば、原料となる都市ガス(天然ガス)と水蒸気とをNi系やRu系の改質触媒を用いて600℃〜700℃程度の高温で反応させることにより、水素を主成分とした水素含有ガスを生成するものである。
【0003】
ところで、水素生成装置に供給する原料には、通常、硫黄化合物が含まれている。具体的には、都市ガス(天然ガス)やLPガス中には、原料由来の硫黄分のほかに、サルファイド類、メルカプタン類等の硫黄化合物を漏洩検知の目的で、付臭剤として添加している。一方、こうした硫黄化合物は、水蒸気改質反応に用いられているNi系やRu系等の改質触媒を被毒し、触媒を劣化させることが知られている。
【0004】
このため、都市ガス(天然ガス)やLPガスのような硫黄化合物を含むガスを原料として用いる場合、これらのガスを水素生成装置に供給する前に適切な脱硫処理を行う。脱硫処理の方法としては、ゼオライトの様な吸着剤を用い、常温での吸着によって硫黄化合物を除去する方法と、原料中に含まれる硫黄化合物を、水添触媒を用いて300℃〜400℃程度で水素とともに反応させて硫化水素に変換した後、吸着触媒を用いて200℃〜350℃程度で硫化水素を吸着し、原料中の硫黄分を取り除く方法と、が知られている。
【0005】
また、起動時において、原料中の硫黄化合物を常温脱硫器で除去し、その後、水添脱硫器を使用可能な状態になると、常温脱硫器に代えて水添脱硫器で原料中の硫黄化合物を除去する燃料電池の燃料水素製造用原燃料の脱硫システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−249203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、原料中の硫黄化合物の濃度は、地域によって異なる場合があり、上記硫黄化合物の濃度の相違に対して、上記特許文献1に記載されている脱硫システムにおいて、どのように対応するのか、検討されていない。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、原料に含まれる硫黄化合物の濃度の相違に適切に対応する水素生成装置、それを備える燃料電池システム、及び水素生成装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、硫黄化合物の濃度の相違に対して脱硫器の容量を調整することで対応する場合、水素生成器から水素利用機器に水素含有ガスを供給しているときに、水添脱硫器よりも第1常温脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用することが好ましいという知見を得た。此れは、以下の理由による。水添脱硫器は、水素生成器から水素利用機器に水素含有ガスを供給している期間において、硫黄化合物の除去に使用されるため、通常、起動時のみで使用される常温脱硫器に比べると、容量変化が著しい。
【0010】
また、水添脱硫器は、常温よりも高い温度で使用するために、水添脱硫器の容量変化に伴い水添脱硫器の使用に必要な熱量が変化し、エネルギー効率、及び起動時間等に影響を与える。特に、相対的に高い硫黄化合物の濃度に対応するため、水添脱硫器の容量を増加させると、熱容量が大きくなり、エネルギー効率の低下及び起動時間の長期化を招き好ましくない。
【0011】
そこで、上記課題を解決するために、本発明に係る水素生成装置は、原料中の硫黄化合物を常温で除去する第1常温脱硫器と、前記原料中の硫黄化合物を常温よりも高い温度で除去する水添脱硫器と、原料を用いて水素含有ガスを生成する水素生成器と、前記第1常温脱硫器及び前記水添脱硫器のそれぞれへの前記原料の供給量を調整するように構成された供給量調整器と、前記供給量調整器を制御する制御器と、を備え、前記制御器は、前記水素生成器から前記水素利用機器へ水素含有ガスを供給しているときに、前記水添脱硫器よりも前記第1常温脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用するように供給量調整器を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水素生成装置、それを備える燃料電池システム、及び水素生成装置の運転方法は、水添脱硫器の容量の増加が緩和されるので、エネルギー効率の低下及び起動時間の長期化も緩和されることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施の形態1に係る水素生成装置の概略構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施の形態1に係る水素生成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図3】図3は、図2に示す第1のモードを具体的に示すフローチャートである。
【図4】図4は、図2に示す第2のモードを具体的に示すフローチャートである。
【図5】図5は、本変形例1の水素生成装置における原料供給の切替判断を模式的に示すフローチャートである。
【図6】図6は、本実施の形態2に係る水素生成装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図7】図7は、本実施の形態2に係る水素生成装置における原料供給の切替判断を模式的に示すフローチャートである。
【図8】図8は、図7に示す第3のモードを具体的に示すフローチャートである。
【図9】図9は、本実施の形態3に係る水素生成装置の製造方法における一部の工程を示すフローチャートである。
【図10】図10は、本変形例1の水素生成装置の概略構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【図11】図11は、本変形例2の水素生成装置の概略構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【図12】図12は、本実施の形態4に係る燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、具体的に図面を参照しながら例示する。なお、全ての図面において、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、全ての図面において、本発明を説明するために必要となる構成要素のみを抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略している。さらに、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
(実施の形態1)
実施の形態1に係る水素生成装置は、原料中の硫黄化合物を常温で除去する第1常温脱硫器と、原料中の硫黄化合物を常温よりも高い温度で除去する水添脱硫器と、原料を用いて水素含有ガスを生成する水素生成器と、第1常温脱硫器及び水添脱硫器のそれぞれへの原料の供給量を調整するように構成された供給量調整器と、供給量調整器を制御する制御器と、を備え、制御器は、水素生成器から水素利用機器へ水素含有ガスを供給しているときに、水添脱硫器よりも第1常温脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用するように供給量調整器を制御する。
【0015】
かかる構成により、従来、起動時のみに使用されていた常温脱硫器を水素生成器から水素利用機器へ水素含有ガスが供給されている期間においても使用することで、原料中の硫黄濃度の変化に伴う水添脱硫器の容量変化が緩和され、好ましい。特に、相対的に高い硫黄化合物の濃度に設置する際に、常温脱硫器を起動時のみ使用するよう構成された従来の水素生成装置に比べ、水添脱硫器の容量の増加が緩和されるので、エネルギー効率の低下及び起動時間の長期化も緩和され、好ましい。
【0016】
ここで、上記供給量調整器は、第1常温脱硫器及び水添脱硫器のそれぞれへの原料の供給量を調整するよう構成されていれば、どのような形態であってもよい。例えば、供給量調整器は、原料の流入先を第1常温脱硫器を経由する第1の流路と、第1常温脱硫器をバイパスして、水添脱硫器を経由する第2の流路と、の間で切り替える切替器であってもよい。また、例えば、供給量調整器は、上記第1の流路と第2の流路とのそれぞれを流れる原料の分流比を調整する分流器であっても構わない。
【0017】
また、実施の形態1に係る水素生成装置では、制御器が、水添脱硫器よりも第1常温脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用するよう供給量調製器を制御した後、第1常温脱硫器よりも水添脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用するよう供給量調製器を制御してもよい。
【0018】
ところで、第1常温脱硫器は、物理吸着により硫黄化合物を除去するよう構成されている。物理吸着型の脱硫器は、硫黄化合物以外の物質についても吸着する性質を持つため、硫黄化合物の除去に使用しない期間においても、他の物質(例えば、改質器から逆流した水蒸気)が吸着して使用を開始したときには、吸着容量が低下してしまうおそれがある。
【0019】
そこで、上記構成により、水添脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用する運転を、第1常温脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用する運転よりも先に実行する場合に比べ、第1常温脱硫器の不使用期間における容量低下を緩和することができる。
【0020】
ここで、第1常温脱硫器を優先して脱硫に使用する制御から水添脱硫器を優先して脱硫に使用する制御に切替えるタイミングは、任意に設定されるが、例えば、第1常温脱硫器への硫黄化合物の吸着量に基づき決定されてもよい。ここで、硫黄化合物の吸着量は、硫黄化合物の吸着量を直接的に示す値及び間接的に示す値のいずれかである。硫黄化合物の吸着量を間接的に示す値は、例えば、第1常温脱硫器を通過する原料の累積供給量、並びに水素生成装置の起動回数及び停止回数の少なくともいずれか一方である。
【0021】
また、実施の形態1に係る水素生成装置では、制御器が、第1常温脱硫器で吸着される硫黄化合物の吸着量が所定の吸着量に達するまでは、水添脱硫器よりも第1常温脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用するように供給量調整器を制御し、第1常温脱硫器で吸着される硫黄化合物の吸着量が所定の吸着量に達した後は、第1常温脱硫器よりも水添脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用するように供給量調整器を制御してもよい。
【0022】
また、実施の形態1に係る水素生成装置は、制御器が、第1常温脱硫器で吸着される硫黄化合物の吸着量が所定の吸着量に達した後における、水素生成装置の起動時及び停止時の少なくともいずれか一方において、水添脱硫器よりも第1常温脱硫器を原料中の硫黄化合物の除去に優先して使用するように供給量調整器を制御してもよい。
【0023】
ここで、所定の吸着量は、任意の値で構わないが、例えば、第1常温脱硫器よりも水添脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用するように供給量調整器を制御しているときに、水添脱硫器における硫黄化合物の吸着量が水添脱硫器の飽和吸着量に達する前に、第1常温脱硫器における硫黄化合物の吸着量が第1常温脱硫器の飽和吸着量に達することのない値として設定されていてもよい。
【0024】
また、実施の形態1に係る水素生成装置は、水素生成器が生成した水素含有ガスを水添脱硫器に供給される原料に添加するように構成されたリターン経路と、リターン経路に設けられ、リターン経路を通流する水素含有ガスの流量を調整する流量調整器と、を備え、制御器が、原料中の硫黄化合物の除去に水添脱硫器を優先して使用する前よりも優先して使用した後の方が、水添脱硫器に供給される原料に水素含有ガスを添加する量を増加させるように流量調整器を制御してもよい。
【0025】
ここで、流量調整器は、流量を調整可能であれば、どのような構成であってもよく、例えば、流量調整弁及び開閉弁の少なくともいずれか一方で構成されてもよい。
【0026】
次に、実施の形態1に係る水素生成装置100の一例について、具体的に説明する。
【0027】
[水素生成装置の構成]
図1は、実施の形態1に係る水素生成装置の概略構成の一例を模式的に示すブロック図である。なお、図1においては、後述する第1のモードにおけるガスの流れを示している。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態1に係る水素生成装置100は、第1常温脱硫器11と、水添脱硫器12と、水素生成器13と、第1弁31と、第2弁32と、第3弁33と、制御器20と、を備える。第1常温脱硫器11は、原料中の硫黄化合物を常温で除去する。
【0029】
ここで、原料は、少なくとも炭素及び水素を構成元素とする有機化合物を含む。原料は、天然ガス、LPG、及び都市ガス等の炭化水素、及びメタノール等のアルコールが例示される。また、硫黄化合物は、いずれの硫黄を構成元素とする化合物であれば、いずれの化合物であっても構わないが、例えば、サルファイド類、メルカプタン類等が例示される。
【0030】
第1常温脱硫器11に用いられる脱硫剤は、硫黄化合物自体を常温で吸着除去する常温吸着剤、及び常温で硫黄化合物を水添反応させて除去する常温水添脱硫剤の少なくともいずれか一方を含む。常温吸着剤としては、例えば、活性炭、金属化合物、ゼオライト、又は金属担持のゼオライト(ゼオライトにAg、Cu、Zn、Fe、Co、Ni等の金属を担持したもの)等を使用することができる。常温水添脱硫剤は、常温で硫黄化合物を水添反応により硫化水素に変換する硫化水素生成剤と、常温で硫化水素を吸着除去する硫化水素除去剤とを備える。硫化水素生成剤は、例えば、プロトンをイオン交換サイトにもつゼオライト及び脱アルミニウム処理が行われたゼオライトの少なくともいずれか一方を含み、具体的には、H−ベータ型ゼオライト等が使用される。硫化水素除去剤は、例えば、酸化鉄を含む。
【0031】
水添脱硫器12は、原料中の硫黄化合物を常温よりも高い温度で除去する。水添脱硫器12に用いられる脱硫剤は、原料中の硫黄化合物を常温よりも高い温度(例えば、200℃〜400℃)で水添反応により除去する水添脱硫剤を含む。水添脱硫剤は、水添反応により硫化水素を生成する硫化水素生成剤と硫化水素を吸着する硫化水素吸着剤とを備える。硫化水素生成剤は、例えば、Co−Mo系の触媒が挙げられる。硫化水素吸着剤は、例えば、酸化亜鉛が挙げられる。
【0032】
水素生成器13は、原料を用いて水素含有ガスを生成する。具体的には、原料を改質反応させ、水素含有ガスを生成する。改質反応は、いずれのタイプの改質反応であっても構わず、例えば、水蒸気改質反応、オートサーマル反応及び部分酸化反応等が挙げられる。
【0033】
水添脱硫器12及び水素生成器13は、この順で、原料供給路71に配設されている。原料供給路71の上流端は、原料供給源(例えば、都市ガス等のガスインフラ)に接続されていて、その下流端は、水素生成器13の改質器13Aに接続されている。
【0034】
原料供給路71には、原料が第1常温脱硫器11を経由するように、原料供給路71より分岐した分岐路72が設けられている。また、分岐路72は、第1常温脱硫器11の下流側において、原料供給路71に合流するよう構成されている。
【0035】
分岐路72へ分岐する部位と分岐路72と合流する部位との間の原料供給路71には、第1弁31が設けられている。第1弁31は、原料供給路71内の原料の通流を許可/遮断する開閉弁、及び原料供給路71を通流する原料の流量を調整する流量調整弁の少なくともいずれか一方が用いられる。また、第1常温脱硫器11の上流側の分岐路72と第1常温脱硫器11の下流側の分岐路72のそれぞれには、第2弁32及び第3弁33が設けられている。第2弁32及び第3弁33は、分岐路72内の原料の通流を許可/遮断する電磁弁等の開閉弁、及び分岐路72を通流する原料の流量を調整する流量調整弁の少なくともいずれか一方が用いられる。
【0036】
ここで、本実施の形態1においては、第1弁31と、第2弁32及び第3弁33とが第1常温脱硫器11及び水添脱硫器12のそれぞれへの原料の供給量を調整する供給量調整器を構成する。なお、供給量調整器は、第1弁31と第2弁32及び第3弁33の少なくともいずれか一方とで構成されてもよい。または、第1弁31に代えて、設けられた固定オリフィスと第2弁32及び第3弁33の少なくともいずれか一方とで構成されてもよい。
【0037】
ここで、第1弁31、第2弁32及び第3弁33が、いずれも開閉弁である場合、これらが、上記切替器を構成する。なお、切替器は、第1弁31と第2弁32及び第3弁33の少なくともいずれか一方とで構成される形態であっても構わない。
【0038】
ここで、第1弁31、第2弁32、及び第3弁33の少なくともいずれか一方が、流量調整弁である場合、この流量調整弁が、上記分流器を構成する。なお、第1弁31、第2弁32、及び第3弁33のうち、流量調整弁で構成されない弁を、省略する形態を採用しても構わない。
【0039】
第1常温脱硫器11としては、原料である、都市ガス、ガソリン、又は灯油等に含まれるメルカプタン類、サルファイド類、あるいはチオフェン類等の硫黄化合物を吸着除去(脱硫)することができればどのような形態であってもよい。脱硫剤としては、例えば、活性炭、金属化合物、ゼオライト、又は金属担持のゼオライト(ゼオライトにAg、Cu、Zn、Fe、Co、及びNiの少なくともいずれか一つの金属元素を担持したもの)等を使用することができる。
【0040】
また、原料供給路71には、原料供給器14が設けられている。原料供給器14は、原料供給源から、水素生成器13の改質器13Aにその流量を調整しながら原料を供給するように構成されている。原料供給器14は、例えば、昇圧器と流量調整弁との少なくともいずれか一方により構成される。昇圧器としては、ブースターポンプ等が例示される。
【0041】
さらに、原料供給路71の原料供給器14よりも上流側には、リターン経路73が接続されていて、水添脱硫器12に原料とともに水素が供給されるように構成されている。また、リターン経路73には、第4弁34が設けられている。第4弁34としては、リターン経路73内の原料の通流を許可/遮断する電磁弁等の開閉弁を用いてもよく、また、リターン経路73を通流する原料の流量を調整する流量調整弁を用いてもよく、開閉弁と流量調製弁の両方を用いてもよい。そして、第4弁34が、上記流量調整器を構成する。
【0042】
なお、本実施の形態1においては、リターン経路73の上流端を原料供給路71の原料供給器14よりも上流側に接続したが、これに限定されず、分岐路72に接続してもよい。また、リターン経路73には、改質器13Aで生成された水素含有ガス中の水蒸気を除去するための水分除去器(図示せず)が設けられていてもよい。水分除去器は、リターン経路73を通流する水素含有ガス中の水蒸気を除去することができれば、どの様な態様であってもよく、例えば、シリカゲル等で水蒸気を吸着して除去してもよく、また、水蒸気を凝縮して除去してもよい。
【0043】
水添脱硫器12としては、原料に含まれる硫黄化合物を硫化水素に変換し、変換した硫化水素を吸着する(以下、水添脱硫という)ことができれば、どのような形態であってもよい。なお、本実施の形態1においては、水添脱硫器12には、該水添脱硫器12のみを通過した後の原料に含まれる硫黄化合物が10ppb以下にまで低減できる触媒量が充填されている。
【0044】
水素生成器13は、改質器13Aと燃焼器13Bを有している。改質器13Aでは、第1常温脱硫器11(及び水添脱硫器12)で脱硫された原料と別途、供給された水(水蒸気)との改質反応により、水素含有ガスが生成される。生成された水素含有ガスは、水素含有ガス供給路74を介して、水素利用機器101に供給される。なお、水素含有ガス供給路74には、リターン経路73の上流端が接続されている。水素利用機器101は、水素生成器13で生成された水素含有ガスを利用する機器であり、例えば、燃料電池又は水素貯蔵タンク等が用いられる。
【0045】
燃焼器13Bは、水素含有ガス排出路75を介して、水素利用機器101が接続されている。燃焼器13Bでは、燃焼用燃料(例えば、原料、及び改質器13Aから排出された水素含有ガスや水素利用機器101で使用されなかった水素含有ガスの少なくともいずれか一方)と燃焼用空気が供給され、これらが燃焼して、燃焼排ガスが生成される。生成された燃焼排ガスは、改質器13A等を加熱した後、燃焼排ガス経路76を通流して水素生成装置100外に排出される。
【0046】
制御器20は、水素生成装置100を構成する機器の制御機能を有するものであれば、どのような形態であってもよく、演算処理部(図示せず)と、制御プログラムを記憶した記憶部(図示せず)と、を備えている。演算処理部としては、MPU、CPUが例示される。記憶部としては、メモリが例示される。なお、制御器20は、単独の制御器で構成される形態だけでなく、複数の制御器が協働して水素生成装置100の制御を実行する制御器群で構成される形態であっても構わない。
【0047】
なお、本実施の形態1に係る水素生成装置100では、改質器13Aで生成された水素含有ガス(改質ガス)が、水素利用機器101に送出される構成としたが、これに限定されず、水素生成器13内に改質器13Aより送出された水素含有ガス中の一酸化炭素を低減するためのCO低減器(図示せず)を備える形態を採用しても構わない。CO低減器(図示せず)は、一酸化炭素をシフト反応により低減する変成器(図示せず)と、一酸化炭素を酸化反応及びメタン化反応の少なくともいずれか一方により低減するCO除去器(図示せず)との少なくともいずれか一方を備える。変成器は、銅−亜鉛系触媒に例示されるような変成触媒を備える。CO除去器は、ルテニウム系触媒に例示されるような酸化触媒及びメタン化触媒の少なくともいずれか一方を備える。
【0048】
なお、本実施の形態1においては、水素生成器13の出口から水素利用機器101へ向かって流れる水素含有ガスの一部を水添脱硫器12に供給する形態を採用した。しかしながら、本実施の形態の水素生成装置100は、これに限定されず、水素含有ガスが、水添脱硫器12に供給するよう構成されていれば、いずれの形態であっても構わない。
【0049】
例えば、水素生成器13の出口に至る前の水素含有ガスの一部が水添脱硫器12に供給される形態であっても構わない。例えば、水素生成装置100は、改質器13Aで生成された水素含有ガスが直接、水添脱硫器12に供給するよう構成されてもよい。または、水素生成装置100は、水素含有ガス中の一酸化炭素を低減する変成器及びCO除去器が設けられ、変成器を通過し、CO除去器に流入する前の水素含有ガスを水添脱硫器12に供給する形態を採用してもよい。または、水素生成装置100は、水素含有ガス排出路75を通流する水素利用機器101で使用されなかった水素含有ガスを供給する形態を採用してもよい。この場合、リターン経路73の上流端は、水素含有ガス排出路75に接続される。
【0050】
[水素生成装置の動作]
次に、本実施の形態1に係る水素生成装置100の動作の一例について、詳細に説明する。
【0051】
図2は、本実施の形態1に係る水素生成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0052】
図2に示すように、制御器20は、水素生成装置100の設置した後又は第1常温脱硫器11を取り替えた後から起動した回数Nを取得する(ステップS201)。ついで、制御器20は、ステップS201で取得した起動回数Nが、所定の回数N1未満であるか否かを判断する(ステップS202)。ここで、所定の回数N1は、任意に設定することができ、例えば、以下の式から求めてもよい。
【0053】
所定の回数N1=水素生成装置100の想定されている総起動(停止)回数−{第1常温脱硫器11の硫黄の総吸着量−第1常温脱硫器11を通流させた原料の通流量×原料の単位体積当たりの硫黄(硫黄化合物)の含有量}÷{起動(及び/又は停止)時に使用する原料の通流量×原料の単位体積当たりの硫黄(硫黄化合物)の含有量}
制御器20は、起動回数Nが所定の回数N1未満の場合(ステップS202でYes)には、常温脱硫器の使用が優先される第1のモードを実行し(ステップS203)、起動回数Nが所定の回数N1以上の場合(ステップS202でNo)には、水添脱硫器の使用が優先される第2のモードが実行される(ステップS204)。
【0054】
なお、上記動作例においては、制御器20は、第1常温脱硫器11を優先して脱硫に使用する制御から水添脱硫器12を優先して脱硫に使用する制御に切替えるタイミングを、水素生成装置100の起動回数に基づき決定しているが、上述の通り、本例に限定されるものではない。制御器20は、例えば、水素生成装置100の停止回数に基づき決定してもよいし、水素生成装置100の起動回数及び停止回数に基づき決定してもよい。または、制御器20は、例えば、水素生成装置100を設置してからの累積通電時間、第1常温脱硫器11を取り替えてからの累積通電時間、並びに水素生成装置100の累積運転時間及び第1常温脱硫器11への原料の累積供給量のいずれかに基づき上記タイミングを決定してもよい。
【0055】
次に、第1のモードについて、図3を参照しながら説明する。
【0056】
図3は、図2に示す第1のモードを具体的に示すフローチャートである。
【0057】
図3に示すように、制御器20は、第1弁31を閉止し(ステップS301)、第2弁32を開放し(ステップS302)、第3弁33を開放し(ステップS303)、第4弁34を閉止する(ステップS304)。次に、制御器20は、原料供給器14を作動させる(ステップS305)。なお、ステップS301〜S305の各ステップを行う順番は任意である。また、ステップS301〜S305の各ステップを同時に行ってもよい。
【0058】
これにより、原料が、分岐路72を通流して、第1常温脱硫器11に供給される。第1常温脱硫器11では、原料に含まれる硫黄化合物が、第1常温脱硫器11に吸着される。第1常温脱硫器11で硫黄化合物が吸着された原料は、原料供給路71を通流して、水添脱硫器12を通過する。
【0059】
水添脱硫器12を通過した原料は、水素生成器13の改質器13Aに供給される。改質器13Aに供給された原料は、改質器13Aに別途供給された水(水蒸気)と水蒸気改質反応して、水素を含有する水素含有ガスが生成される。生成された水素含有ガスは、水素含有ガス供給路74を通流して水素利用機器101に供給される。水素利用機器101で使用されなかった水素含有ガスは、水素含有ガス排出路75を通流して、燃焼器13Bに供給され、燃焼用燃料として使用される。
【0060】
すなわち、水素生成器13から水素利用機器101へ水素含有ガスが供給されているときに、原料は、水添脱硫器12よりも第1常温脱硫器11の方が優先して供給され、原料中の硫黄化合物の除去には、水添脱硫器12よりも第1常温脱硫器11の方が優先して使用される。
【0061】
なお、上記第1のモードの実行時に、第1弁31及び第4弁34の閉止を維持してもよいが、改質器13Aで水素含有ガスが生成されると、制御器20は、第1弁31及び第4弁34を開放してもよい。つまり、水素生成装置100は、水素生成器13から水素利用機器101へ水素含有ガスを供給しているときに、原料が第1常温脱硫器11を経由する第1の流路のみを流れるだけでなく、原料の一部が第1常温脱硫器11をバイパスして、水添脱硫器12を経由する第2の流路を流れるように構成されていてもよい。
【0062】
これにより、第1常温脱硫器11をバイパスして、水添脱硫器12に供給される原料に、リターン経路73を介して添加され、水添脱硫器12に供給される。そして、水添脱硫器12では、原料に含まれる硫黄化合物が水添脱硫される。
【0063】
この場合、水添脱硫器12よりも第1常温脱硫器11の方が、原料中の硫黄化合物の除去に優先して使用されるように、原料供給路71よりも分岐路72の方が、流路抵抗が低くなるよう設計されていてもよい。または、上記分流器を備え、制御器20が、水添脱硫器12よりも第1常温脱硫器11の方が、原料中の硫黄化合物の除去に優先して使用されるよう、分流器を制御してもよい。
【0064】
ここで、第1常温脱硫器11が、原料中の硫黄化合物の除去に優先して使用されるとは、水添脱硫器12よりも第1常温脱硫器11の方がより多くの硫黄化合物を吸着することを意味する。具体的には、水素生成装置100が、第1常温脱硫器11をバイパスして、水添脱硫器12を経由する第2の流路よりも第1常温脱硫器11を経由する第1の流路を流れる原料の量を多くするように構成されていることをいう。
【0065】
次に、第2のモードについて、図4を参照しながら説明する。
【0066】
図4は、図2に示す第2のモードを具体的に示すフローチャートである。
【0067】
図4に示すように、制御器20は、第1弁31を開放し(ステップS401)、第2弁32を閉止し(ステップS402)、第3弁33を閉止し(ステップS403)、第4弁34を開放する(ステップS404)。なお、ステップS401〜S404の各ステップを行う順番は任意である。また、ステップS401〜S404の各ステップを同時に行ってもよい。
【0068】
次に、制御器20は、原料供給器14を作動させる(ステップS405)。これにより、原料が、第1常温脱硫器11をバイパスして、水添脱硫器12に供給される。また、水添脱硫器12に供給される原料にリターン経路73を介して水素含有ガスが添加される。すなわち、原料は、第1常温脱硫器11よりも水添脱硫器12の方が優先して供給され、原料中の硫黄化合物の除去には、第1常温脱硫器11よりも水添脱硫器12の方が優先して使用される。
【0069】
水添脱硫器12では、供給された水素を用いて、原料に含まれる硫黄化合物を水添脱硫する。水添脱硫された後の原料は、改質器13Aに供給され、別途供給された水(水蒸気)と水蒸気改質反応して、水素を含有する水素含有ガスが生成される。生成された水素含有ガスは、水素含有ガス供給路74を通流して水素利用機器101に供給される。水素利用機器101で使用されなかった水素含有ガスは、水素含有ガス排出路75を通流して、燃焼器13Bに供給され、燃焼用燃料として使用される。
【0070】
ここで、水素生成装置100が、第1のモードでは、第4弁34の閉止を維持し、第2のモードでは、第4弁34を開放する形態である場合、第1のモードよりも第2のモードの方が水添脱硫器12に供給される原料への水素含有ガスの添加量が増加する。つまり、本実施の形態1に係る水素生成装置100では、原料中の硫黄化合物の除去に水添脱硫器を優先して使用する前よりも優先して使用した後の方が、水添脱硫器12に供給される原料に水素含有ガスを添加する量が増加されるように第4弁34が調整される。
【0071】
なお、上記第2のモードの実行時に、第2弁32及び第3弁33の閉止を維持してもよいが、改質器13Aで水素含有ガスが生成されると、制御器20は、第2弁32及び第3弁33を開放してもよい。つまり、水素生成装置100は、水素生成器13から水素利用機器101へ水素含有ガスを供給しているときに、原料が分岐路72を経由する第2の流路のみを流れるだけでなく、原料の一部が、第1常温脱硫器11を経由する第1の流路を流れるように構成されていてもよい。
【0072】
この場合、第1常温脱硫器11よりも水添脱硫器12の方が、原料中の硫黄化合物の除去に優先して使用されるように、分岐路72よりも原料供給路71の方が、流路抵抗が低くなるよう設計されていてもよい。または、上記分流器を備え、制御器20が、第1常温脱硫器11よりも水添脱硫器12の方が、原料中の硫黄化合物の除去に優先して使用されるように、分流器を制御してもよい。
【0073】
また、第2のモードにおいても、原料に含まれる硫黄化合物を充分に脱硫する観点から、水素生成装置100の起動時及び停止時の少なくとも一方において、水添脱硫器12よりも第1常温脱硫器11の方が原料の供給を優先させるように、制御器20は、第1弁31〜第3弁33(供給量調整器)を制御することが好ましい。
【0074】
[変形例1]
次に、実施の形態1に係る水素生成装置100の変形例1について説明する。
【0075】
実施の形態1における変形例1の水素生成装置では、実施の形態1に係る水素生成装置において、制御器が第1常温脱硫器を優先して脱硫に使用する制御から水添脱硫器を優先して脱硫に使用する制御に切替えるタイミングを、第1常温脱硫器を通過する原料の累積供給量に基づき決定する。
【0076】
なお、上記特徴以外は、実施の形態1と同様に構成されてもよい。
【0077】
次に、本変形例1の水素生成装置の一例について、具体的に説明する。
【0078】
本変形例1の水素生成装置100は、実施の形態1と同様に構成されているので、その説明を省略する。
【0079】
[水素生成装置の動作]
次に、本変形例1の水素生成装置100の動作の一例について、詳細に説明する。
【0080】
図5は、本変形例1の水素生成装置における原料供給の切替判断を模式的に示すフローチャートである。
【0081】
図5に示すように、制御器20は、第1常温脱硫器11に供給された原料の累積値(以下、累積供給量)を算定する(ステップS501)。なお、上記算定の方法は、任意であるが、例えば、制御器20が、原料供給器14を制御する際の目標原料流量を記憶部に記憶させて、この目標原料流量の積算値を累積供給量として算出してもよい。あるいは、第1常温脱硫器11を通過する原料の流量を取得する流量検出器(図示せず)を原料供給路71に設けておき、該流量検出器(図示せず)が検出した原料の流量を記憶部に記憶させ、その積算値を累積原料供給量として算出してもよい。
【0082】
次に、制御器20は、ステップS501で取得した原料の供給積算量から第1常温脱硫器11における硫黄(硫黄化合物)の吸着量Aを算出する(ステップS502)。具体的には、制御器20は、原料の累積供給量と、原料に含まれる硫黄化合物の濃度との積を吸着量Aとして算出する。そして、制御器20は、ステップS502で算出した吸着量Aが、所定の吸着量A1未満であるか否かを判断する(ステップS503)。
【0083】
制御器20は、ステップS502で算出した吸着量Aが、所定の吸着量A1未満である場合(ステップS503でYes)には、第1のモード(ステップS504)を選択する。一方、ステップS502で算出した吸着量Aが、所定の吸着量A1以上である場合(ステップS503でNo)には、第2のモード(ステップS505)を選択する。なお、ステップS504の第1のモード及びステップS505の第2のモードは、実施の形態1で説明した第1のモード及び第2のモードと同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0084】
ここで、所定の吸着量A1は、第2のモードで水素生成装置100の運転を実行しているときに、水添脱硫器12における硫黄化合物の吸着量が該水添脱硫器12の飽和吸着量に達する前に、第1常温脱硫器11における硫黄化合物の吸着量が該第1常温脱硫器11の飽和吸着量に達することのない値として設定され、原料に含まれる硫黄化合物の濃度と第1常温脱硫器11の吸着容量から適宜設定することができる。なお、飽和吸着量とは、第1常温脱硫器11及び水添脱硫器12のそれぞれにおける硫黄化合物の吸着量の上限値をいう。
【0085】
なお、上記図5では示していないが、制御器20が、第1常温脱硫器11で吸着される硫黄化合物の吸着量が所定の吸着量A1に達した後における、水素生成装置100の起動時及び停止時の少なくともいずれか一方において、水添脱硫器12よりも第1常温脱硫器11を原料中の硫黄化合物の除去に優先して使用するように供給量調整器としての第1弁31〜第3弁33を制御してもよい。
【0086】
[変形例2]
実施の形態1における変形例2の水素生成装置は、実施の形態1の水素生成装置において、制御器が、原料中の硫黄化合物の除去に水添脱硫器を優先して使用する前よりも優先して使用した後の方が、水添脱硫器に供給される原料に水素含有ガスを添加する量を増加させるように流量調整器を制御する。ここで、流量調整器は、流量調整弁であることを特徴とする。
【0087】
本変形例2の水素生成装置は、上記特徴以外は、実施の形態1及び変形例1のいずれかと同様であってもよい。
【0088】
次に、本変形例2の水素生成装置100の一例について、具体的に説明する。
【0089】
本変形例2の水素生成装置100は、実施の形態1に係る水素生成装置100と基本的構成は同じであるが、第4弁34が、リターン経路73を通流する水素含有ガスの流量を調整する流量調整弁で構成されている点が異なる。ここで、第4弁34が、上記流量調整器に相当する。
【0090】
本変形例2の水素生成装置100は、実施の形態1に係る水素生成装置100と同様に、制御器20は、第1常温脱硫器11における硫黄化合物の吸着量が、所定の吸着量に達するまでには、第1常温脱硫器11の方が水添脱硫器12よりも原料の供給を優先し、所定の吸着量に達した後は、水添脱硫器12の方が第1常温脱硫器11よりも原料の供給を優先するように、供給量調整器を制御する。
【0091】
ここで、本変形例2の水素生成装置100では、第1常温脱硫器11における硫黄化合物の吸着量が、所定の吸着量に達した後は、所定の吸着量に達する前よりも、水添脱硫器12に供給される水素含有ガスを添加する量を増加するように、制御器20がその開度を大きくするように、第4弁34を制御する。
【0092】
なお、水素生成装置100が、第1のモードで運転され、水素生成器13から水素利用機器101へ水素含有ガスを供給しているときに、原料が第1常温脱硫器11を経由する第1の流路のみを流れるだけでなく、原料の一部が第1常温脱硫器11をバイパスして、水添脱硫器12を経由する第2の流路を流れてもよい。
【0093】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る水素生成装置は、実施の形態1及び後述する実施の形態3、並びにこれらの変形例のいずれかの水素生成装置において、第2常温脱硫器をさらに備え、供給調整器は、さらに、第2常温脱硫器に供給される原料の供給を調整するように構成され、制御器は、第1常温脱硫器における硫黄化合物の吸着量が飽和吸着量に達するまでは、水素生成器から水素利用機器へ水素含有ガスを供給しているときに、水添脱硫器及び第2常温脱硫器よりも第1常温脱硫器を優先して原料中の硫黄化合物の脱硫に使用するように供給調整器を制御し、第1常温脱硫器における硫黄化合物の吸着量が飽和吸着量に達した後は、水素生成器から水素利用機器へ水素含有ガスを供給しているときに、第2常温脱硫器よりも水添脱硫器を原料中の硫黄化合物の除去に優先して使用するとともに、水素生成装置の起動時及び停止時の少なくとも一方において、第2常温脱硫器を使用して、硫黄化合物を除去するよう供給調整器を制御する。
【0094】
本実施の形態2に係る水素生成装置は、上記特徴以外は、実施の形態1及び後述する実施の形態3、並びにこれらの変形例のいずれかの水素生成装置と同様に構成されてもよい。
【0095】
次に、本実施の形態2に係る水素生成装置の一例について、具体的に説明する。
【0096】
[水素生成装置の構成]
図6は、本実施の形態2に係る水素生成装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0097】
図6に示すように、本実施の形態2に係る水素生成装置100は、実施の形態2に係る水素生成装置100と基本的構成は同じであるが、分岐路72の第1弁31よりも下流側に第2常温脱硫器16が設けられている点が異なる。第2常温脱硫器16は、第1常温脱硫器11と同様に構成されていてもよく、第1常温脱硫器11と異なるように構成されていてもよい。
【0098】
また、第2常温脱硫器16の吸着容量は、第1常温脱硫器11と同じであってもよく、第1常温脱硫器11と異なってもよい。具体的には、例えば、第2常温脱硫器16の吸着容量の下限値は、以下の式から求めてもよい。
【0099】
第2常温脱硫器16の容量={水素生成装置100の起動耐久回数−所定の回数N1}×{起動時に第2常温脱硫器16へ供給される原料量×原料の単位体積当たりの硫黄(硫黄化合物)の含有量}
所定の回数N1は、第1常温脱硫器11が飽和吸着量に達する起動回数として定義される。
【0100】
なお、本実施の形態2に係る水素生成装置100の製造方法は、後述する実施の形態3に係る水素生成装置100の製造方法と基本的には同じであり、第2常温脱硫器16は、原料中の硫黄(硫黄化合物)の濃度に応じて、その吸着容量が変更される。
【0101】
[水素生成装置の動作]
図7は、本実施の形態2に係る水素生成装置100における原料供給の切替判断を模式的に示すフローチャートである。
【0102】
図7に示すように、本実施の形態2に係る水素生成装置100における原料供給の切替判断は、実施の形態1に係る水素生成装置100における原料供給の切替判断と基本的には同じであるが、原料供給の切替判断の基準が第1常温脱硫器11の飽和吸着量A2である点(ステップS603)と、第1常温脱硫器11における硫黄(硫黄化合物)の吸着量Aが、飽和吸着量A2以上である場合(ステップS603でNo)に、起動時及び停止時の少なくともいずれか一方において、第3のモードが行われる点(ステップS605)と、が異なる。
【0103】
次に、第3のモードについて、図8を参照しながら説明する。
【0104】
図8は、図7に示す第3のモードを具体的に示すフローチャートである。
【0105】
図8に示すように、制御器20は、第1弁31を開放し(ステップS701)、第2弁32を閉止し(ステップS702)、第3弁33を閉止し(ステップS703)、第4弁34を閉止する(ステップS704)。次に、制御器20は、原料供給器14を作動させる(ステップS705)。なお、ステップS701〜S705の各ステップを行う順番は任意である。また、ステップS701〜S705の各ステップを同時に行ってもよい。なお、第1のモードから第3のモードに変更する前に原料供給器14が既に作動している状態であれば、ステップS705は省略してもよい。
【0106】
これにより、原料が、第1常温脱硫器11をバイパスして、第2常温脱硫器16に供給される。第2常温脱硫器16では、供給された原料に含まれる硫黄化合物が吸着除去される。そして、吸着除去後の原料は、原料供給路71を通流して、水添脱硫器12を通過する。すなわち、制御器20は、起動時及び停止時の少なくともいずれか一方においては、第2常温脱硫器16を使用して、原料中の硫黄化合物の除去するように、供給調整器を制御する。
【0107】
水添脱硫器12を通過した原料は、水素生成器13に供給される。水素生成器13の内部を通過した原料は、図示されない水素利用機器101をバイパスするガス流路を介して、燃焼器13Bに供給され、燃焼処理及び希釈処理のいずれかが実行される。
【0108】
なお、起動時において上記第3モード実行により、改質器13Aの昇温動作が完了し、改質器13Aで水素含有ガスの生成が開始されると、制御器20は、第1弁31を閉止し、第2弁32〜第4弁34を開放して、原料を第2常温脱硫器16よりも水添脱硫器12に優先して供給する。すなわち、制御器20は、上記実施の形態1で説明した第2のモードを実行する。
【0109】
なお、本実施の形態2に係る水素生成装置100は、第2のモード実行時に、実施の形態1の同様に、原料が分岐路72を経由する第2の流路のみを流れるだけでなく、原料の一部が、第2常温脱硫器16を経由する第1の流路を流れるように構成されていてもよい。
【0110】
この場合、第2常温脱硫器16よりも水添脱硫器12の方が、原料中の硫黄化合物の除去に優先して使用されるように、原料供給路71よりも分岐路72の方が、流路抵抗が低くなるよう設計されていてもよい。または、上記分流器を備え、制御器20が、第2常温脱硫器16よりも水添脱硫器12の方が、原料中の硫黄化合物の除去に優先して使用されるように、分流器を制御してもよい。
【0111】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る水素生成装置は、原料中の硫黄化合物を常温で除去する第1常温脱硫器と、原料中の前記硫黄化合物を常温よりも高い温度で除去する水添脱硫器と、原料を用いて水素含有ガスを生成する水素生成器と、を備え、第1常温脱硫器は、原料中の硫黄化合物の濃度に応じてその容量が変更され、水添脱硫器は、原料中の硫黄化合物の濃度に依らず一定の容量である。
【0112】
かかる構成により、原料中の硫黄化合物の濃度の変化に対して、適切に対応することができる。特に、相対的に硫黄化合物の濃度が高い場合であっても、常温脱硫器の容量増加で対応することができる。このため、水添脱硫器の使用に必要な熱量は変化せず、エネルギー効率の低下及び起動時間の長期化を招くことが抑制される。
【0113】
また、実施の形態3に係る水素生成装置では、原料中の硫黄化合物の濃度が予め想定されており、想定された原料中の硫黄化合物の濃度(以下、想定硫黄化合物濃度という)に応じた容量となるように、該想定硫黄化合物濃度に応じて前記容量を変更して第1常温脱硫器が設けられており、想定硫黄化合物濃度に依らずに一定容量の水添脱硫器が設けられていてもよい。
【0114】
上述したように、原料中の硫黄化合物の濃度に変化に対して、水添脱硫器の容量を変化させると、水添脱硫器の熱容量が変化し、水素生成器の熱バランスがくずれ好ましくない。しかしながら、上記構成により、水素生成器の熱バランスを維持したまま、原料中の硫黄濃度の変化に対応することができる。
【0115】
さらに、実施の形態3に係る水素生成装置では、第1常温脱硫器の容量が水添脱硫器の容量の0.034倍以上、かつ、4.2倍以下であることが好ましい。
【0116】
なお、上記特徴以外については、実施の形態1及び実施の形態2並びにこれらの変形例のいずれかの水素生成装置と同様に構成されてもよい。
【0117】
次に、本実施の形態3に係る水素生成装置の一例について、具体的に説明する。
【0118】
本実施の形態3に係る水素生成装置100は、実施の形態1に係る水素生成装置100と基本的構成は同じであるが、第1常温脱硫器11と水添脱硫器12が以下のように構成されている点が異なる。
【0119】
第1常温脱硫器11は、原料中の硫黄化合物の濃度に応じてその容量が変更され、水添脱硫器12は、原料中の硫黄化合物の濃度に依らず一定の容量である。具体的には、原料中の硫黄化合物の濃度が予め想定されており、想定された原料中の硫黄化合物の濃度(以下、想定硫黄化合物濃度という)に応じた容量となるように、該想定硫黄化合物濃度に応じて該容量を変更して、第1常温脱硫器11が設けられており、想定硫黄化合物濃度に依らずに一定容量の水添脱硫器12が設けられている。
【0120】
ここで、原料中の硫黄化合物の濃度が予め想定されるとは、例えば、原料として、都市ガス(天然ガス)やLPガスを使用するような場合、都市ガス等の原料に含まれる硫黄化合物濃度は地域により異なり、都市ガス等を供給する会社(自治体を含む)によって、硫黄化合物の濃度は規定されている。このため、例えば、水素生成装置100を設置する地域が別の地域(基準となる地域)よりも、原料に含まれる硫黄化合物の濃度が高いか、あるいは低いかは予め想定することができる。
【0121】
次に、第1常温脱硫器11の容量の変更方法の一例を説明する。
【0122】
まず、原料の硫黄化合物濃度を、原料の単位体積当りの硫黄化合物含有量(Kg/m)で表し、この単位体積当りの硫黄化合物含有量(Kg/m)で表した硫黄化合物濃度をCSとする。第1常温脱硫器11の吸着容量(Kg)をAfとし、水添脱硫器12の吸着容量(Kg)をAsとする。また、水添脱硫器12の吸着容量Asに対する第1常温脱硫器11の吸着容量Afの倍率をαとする。
【0123】
また、水素生成装置100の想定寿命(使用期間)中における原料の積算供給量(m)をMとする。そして、想定される原料の、単位体積当りの硫黄化合物含有量(Kg/m)で表した硫黄化合物濃度(以下、想定硫黄化合物濃度という)の範囲の基準値をCS0とし、これより大きい任意の想定硫黄化合物濃度をCSnとする。さらに、想定硫黄化合物濃度が基準値CS0のときの常温で動作させる第1常温脱硫器11の吸着容量をAf0とする。
【0124】
そして、想定硫黄化合物濃度が基準値CS0より大きい任意の値CSnであるとき、水添脱硫器12の吸着容量は基準値CS0の時と同じに設計し、第1常温脱硫器11の吸着容量を増加するように設計する。なお、以下では乗算を*の記号で表す。
【0125】
すなわち、水添脱硫器12の吸着容量Asは、
As=M*CS0−Af0となる。
【0126】
また、第1常温脱硫器11の吸着容量Afは、
Af=(M*CSn−As)=M(CSn−CS0)+Af0となる。
【0127】
また、水添脱硫器12の吸着容量Asに対する第1常温脱硫器11の吸着容量Afの倍率αは、
α=Af/As=(M*(CSn−CS0)+Af0)/M*CS0−Af0となる。つまり、αは、想定硫黄化合物濃度CSnに依存して一義的に定まる。
【0128】
ここで、例えば、本実施の形態3に係る水素生成装置100を日本で使用する仕様(以下、日本仕様という)と、欧州で使用する仕様(以下、欧州仕様という)と、に設計する場合を想定する。この場合、欧州における想定硫黄化合物濃度は、例えば天然ガス由来の硫黄成分で最大30mg/m程度であり、付臭成分を考慮して日本における想定硫黄化合物濃度の約5倍程度の値となる場合がある。また、比較的硫黄化合物含有量の少ない地域では、日本における想定硫黄化合物濃度の約2倍程度の値となる場合がある。
【0129】
第1常温脱硫器11の吸着容量の基準値Af0は、例えば、以下のように算定することができる。まず、原料の硫黄化合物濃度CSが、基準値CS0以下のときに、第1常温脱硫器11を起動/停止時にのみ使用し、水添脱硫器12を水素生成運転時に使用すると仮定する。また、1回の運転当りの基準運転時間(例えば、15時間)とし、起動/停止に要する時間が0.5時間であると仮定する。
【0130】
この場合、第1常温脱硫器11の吸着容量Af0は、
Af0=0.5/15M*CS0=0.0333M*CS0(Kg)となる。
【0131】
そして、上記仮定において、本実施の形態3に係る水素生成装置100を日本仕様と欧州仕様とに設計する場合には、欧州における想定硫黄化合物濃度が、日本における想定硫黄化合物濃度の約5倍となることを考慮すると、αは0.034〜4.2となる。すなわち、第1常温脱硫器11の吸着容量が水添脱硫器12の吸着容量の0.034倍〜4.2倍となるように設計することが好ましい。また、欧州仕様に設計する場合、欧州における想定硫黄化合物濃度のバラツキを考慮すると、αは1.1〜4.2となる。すなわち、第1常温脱硫器11の吸着容量が水添脱硫器12の吸着容量の1.1倍〜4.2倍となるように設計することが好ましい。
【0132】
なお、上記の設計方法は例示であり、これに限定されない。例えば、第1常温脱硫器11の吸着容量Af0を、起動/停止時以外にも使用するという前提で適宜設定してもよい。
【0133】
[水素生成装置の製造方法]
次に、本実施の形態3に係る水素生成装置100の製造方法について、図9を参照しながら説明する。
【0134】
図9は、本実施の形態3に係る水素生成装置100の製造方法における一部の工程を示すフローチャートである。
【0135】
図9に示すように、所定の前工程が遂行された後、想定された原料中の想定硫黄化合物濃度に応じた容量となるように、該想定硫黄化合物濃度に応じて該容量を変更して、第1常温脱硫器11を設ける(ステップS101)。ついで、原料中の想定硫黄化合物濃度に依らずに一定の容量の水添脱硫器12を設ける。そして、所定の後工程が追行されて、水素生成装置100が製造される。なお、図9に示すフローは例示であり、各工程が行われる順番は任意である。また、水素生成装置100を構成する各要素は、前工程又は後工程において、適宜設けられる。
【0136】
これにより、原料に含まれる硫黄化合物の濃度が地域等によって変更される場合であっても、水添脱硫器12の容量を変更することがないため、水素生成装置100内の最適な熱バランスを変更せずに、水素生成装置100を製造することができる。
[変形例1]
次に、本実施の形態3に係る水素生成装置100の変形例1について説明する。
【0137】
本実施の形態3における変形例1の水素生成装置は、水添脱硫器を覆う断熱材を備える形態を例示する。
【0138】
図10は、本変形例1の水素生成装置の概略構成の一例を模式的に示すブロック図である。なお、図10においては、断熱材15を明確にするため、断熱材15をハッチングで示している。
【0139】
図10に示すように、本変形例1の水素生成装置100は、実施の形態1に係る水素生成装置100と基本的構成は同じであるが、断熱材15が水添脱硫器12を覆うように配設されている点が異なる。
【0140】
具体的には、本変形例1の水素生成装置100では、断熱材15が、水添脱硫器12と水素生成器13を覆うように配設されている。断熱材15としては、例えば、シリカ、チタニア、及びアルミナ、もしくはこれらの混合物を含む断熱材やグラスウールを含む断熱材等が例示される。なお、本変形例1では、断熱材15が、水添脱硫器12及び水素生成器13を覆うように配設したが、水添脱硫器12のみを覆うように配設してもよい。
【0141】
このように構成された本変形例1の水素生成装置100であっても、実施の形態3に係る水素生成装置100と同様の作用効果を奏する。また、本変形例1の水素生成装置100では、断熱材15で水添脱硫器12を覆うことにより、水添脱硫器12から外気への放熱を抑制し、水添脱硫器12を容易に適温に保つことができ、水素生成装置100の熱利用性を向上させることができる。また、本変形例1の水素生成装置100では、断熱材15が水素生成器13を覆うことにより、水素生成器13から外気への放熱を抑制し、水素生成装置100の熱利用性を向上させることができる。
【0142】
さらに、本変形例1の水素生成装置100では、第1常温脱硫器11と水素生成器13とが一体に構成されていないことから、第1常温脱硫器11が断熱材15に覆われていないことから、第1常温脱硫器11の容量変更を容易に行うことができる。
【0143】
[変形例2]
次に、本実施の形態3に係る水素生成装置100の変形例2について説明する。
【0144】
本実施の形態3における変形例2の水素生成装置は、水素生成器と水添脱硫器とは一体に構成されており、水素生成器と常温脱硫器とは一体に構成されていない形態を例示する。
【0145】
ここで、水素生成器と水添脱硫器とは一体に構成されているとは、水素生成器と水添脱硫器とが隣接していることをいい、水素生成器と水添脱硫器とが直接接触する態様だけでなく、水素生成器からの伝熱により、水添脱硫器が加熱することができる程度に空間を挟んで配設されている態様も含む。なお、水素生成装置は、上記空間に、空気しか存在しない形態であってもよいし、上記空間に水素生成器から水添脱硫器への伝熱を緩衝する伝熱緩衝材を配設してもよい。
【0146】
また、水素生成器と常温脱硫器とは一体に構成されていないとは、水素生成器からの伝熱の影響を受けない程度に、常温脱硫器が水素生成器から離れて配設されていることをいう。
【0147】
図11は、本変形例2の水素生成装置の概略構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【0148】
図11に示すように、本変形例2の水素生成装置100は、実施の形態3に係る水素生成装置100と基本的構成は同じであるが、水素生成器13と水添脱硫器12とが一体に構成されている点が異なる。具体的には、本変形例2の水素生成装置100では、水素生成器13と水添脱硫器12とが接触するように配設されている。
【0149】
このように構成された本変形例2の水素生成装置100であっても、実施の形態3に係る水素生成装置100と同様の作用効果を奏する。また、本変形例2の水素生成装置100では、水素生成器13からの伝熱により、水添脱硫器12の昇温をより効率よくすることができ、水素生成装置100の熱利用性を向上させることができる。
【0150】
また、本変形例2の水素生成装置100では、第1常温脱硫器11と水素生成器13とが一体に構成されていないことから、第1常温脱硫器11の容量変更を容易に行うことができる。なお、本変形例2の水素生成装置100においても、変形例1の水素生成装置100と同様に、断熱材15で水添脱硫器12を覆うように構成してもよい。
[変形例3]
次に、実施の形態3に係る水素生成装置100の変形例3について説明する。
【0151】
本変形例3の水素生成装置は、水素生成器に原料を供給する原料供給器を備え、制御器は、第1常温脱硫器の容量に応じて水素含有ガスの目標生成量に対する原料供給器の操作量を制御する。
【0152】
ところで、実施の形態3の水素生成装置のように、原料中の硫黄化合物の濃度に応じて第1常温脱硫器の容量を変更すると、第1常温脱硫器における圧力損失が変化する。第1常温脱硫器に容量の相違に依らず、水素含有ガスの目標生成量に対する原料供給器の操作量を同一にすると、水素含有ガスの目標生成量に対して適切な量の原料が供給されない場合が生じる。そこで、本変形例3の水素生成装置のように構成することで、水素含有ガスの目標生成量に対して適量の原料が水素生成器に供給される。
【0153】
次に、本変形例3の水素生成装置の一例について、具体的に説明する。
【0154】
本変形例3の水素生成装置は、実施の形態3の水素生成装置と基本的構成は同じであるので、その説明を省略する。
【0155】
また、本変形例3の水素生成装置は、制御器20の記憶部に、水素生成器13で生成される水素含有ガスの目標生成量に対する原料供給器14の操作量との対応を示すテーブルが記憶されている。そして、このテーブルデータは、第1常温脱硫器11の容量の変化に応じて設定される。
【0156】
ここで、上記水素含有ガスの目標生成量は、水素含有ガスの目標生成量を直接的に示す値であってもよいし、間接的に示す値であってもよい。上記直接的に示す値は、水素含有ガスの目標生成量そのものであり、上記間接的に示す値は、水素含有ガスの目標生成量に相関する値である。具体的には、水素生成器13に供給する原料の目標流量、水素利用機器101としての燃料電池の目標発電量等が例示される。
【0157】
なお、上記設定の形態は、任意である。具体的には、例えば、水素生成装置100の製造段階で上記設定が実行される形態でもよい。または、第1常温脱硫器11の容量に関するデータと上記テーブルデータとの対応関係が記憶された外部記憶装置(図示せず)から水素生成装置100に設けられた第1常温脱硫器11の容量に対応するテーブルデータを水素生成装置100に設けられたデータ取得器を介して、取得し、制御器20内の記憶器に書き込む形態でもよい。
【0158】
また、外部記憶装置(図示せず)ではなく、制御器20内の記憶部に上記対応関係が予め記憶される形態であってもよい。この場合、上記データ取得器より第1常温脱硫器11の容量に関するデータを取得して、水素生成装置100に設けられた第1常温脱硫器11の容量に対応するテーブルデータを原料供給器14の制御に用いるテーブルデータとして選択する形態であってもよい。
【0159】
ここで、第1常温脱硫器11の容量に関するデータは、第1常温脱硫器11の容量を、直接的に示す値であってもよいし、間接的に示す値であってもよい。上記直接的に示す値は、第1常温脱硫器11の容量そのものであり、上記間接的に示す値は、第1常温脱硫器11の容量に相関する値である。具体的には、水素生成装置100の設置場所に関するデータとして、設置場所の郵便番号、電話番号または住所等が挙げられる。または、水素生成装置100の設置場所に原料を供給するガス会社に関するデータとして、ガス会社名等が例示される。
【0160】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る燃料電池システムは、実施の形態1乃至3及びこれらの変形例のいずれかの水素生成装置と、水素生成装置より供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池と、を備える。
【0161】
図12は、本実施の形態4に係る燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【0162】
図12に示すように、本実施の形態4に係る燃料電池システム200は、実施の形態1に係る水素生成装置100と、水素利用機器101としての燃料電池101Aと、酸化剤ガス供給器102と、を備える。なお、燃料電池101Aは、高分子電解質形燃料電池、リン酸形燃料電池、または固体酸化物形燃料電池等の各燃料電池を用いることができる。酸化剤ガス供給器102としては、例えば、ブロワ又はシロッコファン等のファン類を用いることができる。
【0163】
燃料電池101Aには、水素含有ガス供給路74を介して、水素生成装置100が接続されていて、燃料電池101Aのアノード(図示せず)に水素含有ガス(燃料ガス)が供給される。また、燃料電池101Aには、酸化剤ガス供給路81を介して、酸化剤ガス供給器102が接続されていて、燃料電池101Aのカソード(図示せず)に酸化剤ガス(例えば、空気)が供給される。
【0164】
そして、燃料電池101Aでは、アノードに供給された水素含有ガスと、カソードに供給された酸化剤ガスと、が電気化学的に反応して、水が生成され、電気と熱が発生する。発生した電力は、電力制御器(図示せず)により、外部電力負荷(例えば、家庭で使用される電力機器)に供給される。
【0165】
燃料電池101Aで使用されなかった水素含有ガスは、水素含有ガス排出路75を通流して、燃焼器13Bに供給され、燃焼器13Bの燃焼用燃料として使用される。また、燃料電池101Aで使用されなかった酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出路82を通流して、燃料電池システム200外に排出される。
【0166】
また、制御器20は、本実施の形態4においては、水素生成装置100だけではなく、燃料電池システム200を構成する他の機器を制御するように構成されていてもよい。そして、制御器20が、燃料電池システム200の動作において、水素生成装置100の動作を実施の形態1に記載したように行うように構成されている。
【0167】
このため、本実施の形態4に係る燃料電池システム200は、実施の形態1に係る水素生成装置100と同様の作用効果を奏する。
【0168】
なお、本実施の形態4に係る燃料電池システム200は、実施の形態1に係る水素生成装置100を用いる形態を採用したが、これに限定されず、実施の形態1における変形例1又は変形例2の水素生成装置100、実施の形態2に係る水素生成装置100、実施の形態2における変形例1又は変形例2の水素生成装置100、或いは、実施の形態3に係る水素生成装置100のいずれかの水素生成装置を用いる形態を採用してもよい。
【0169】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の形態を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の要旨を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明に係る水素生成装置、それを備える燃料電池システム、及び水素生成装置の製造方法は、原料に含まれる硫黄化合物の濃度の相違に対して適切に対応することが可能となり、有用である。
【符号の説明】
【0171】
11 第1常温脱硫器
12 水添脱硫器
13 水素生成器
13A 改質器
13B 燃焼器
14 原料供給器
15 断熱材
16 第2常温脱硫器
20 制御器
31 第1弁
32 第2弁
33 第3弁
34 第4弁
71 原料供給路
72 分岐路
73 リターン経路
74 水素含有ガス供給路
75 水素含有ガス排出路
76 燃焼排ガス経路
81 酸化剤ガス供給路
82 酸化剤ガス排出路
100 水素生成装置
101 水素利用機器
101A 燃料電池
102 酸化剤ガス供給器
200 燃料電池システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料中の硫黄化合物を常温で除去する第1常温脱硫器と、
前記原料中の硫黄化合物を常温よりも高い温度で除去する水添脱硫器と、
原料を用いて水素含有ガスを生成する水素生成器と、
前記第1常温脱硫器及び前記水添脱硫器のそれぞれへの前記原料の供給量を調整するように構成された供給量調整器と、
前記供給量調整器を制御する制御器と、を備え、
前記制御器は、前記水素生成器から前記水素利用機器へ水素含有ガスを供給しているときに、前記水添脱硫器よりも前記第1常温脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用するように供給量調整器を制御する、水素生成装置。
【請求項2】
前記制御器は、前記水添脱硫器よりも前記第1常温脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用するよう前記供給量調製器を制御した後、前記第1常温脱硫器よりも前記水添脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用するよう前記供給量調製器を制御する、請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項3】
前記水添脱硫器を覆う断熱材を備える、請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項4】
前記水素生成器と前記水添脱硫器とは一体に構成されており、前記水素生成器と前記常温吸着脱硫器とは一体に構成されていない、請求項1〜3のいずれかに記載の水素生成装置。
【請求項5】
前記制御器は、前記第1常温脱硫器で吸着される硫黄化合物の吸着量が所定の吸着量に達するまでは、前記水添脱硫器よりも前記第1常温脱硫器を優先して硫黄化合物の除去に使用するように前記供給量調整器を制御し、
前記第1常温脱硫器で吸着される硫黄化合物の吸着量が所定の吸着量に達した後は、前記第1常温脱硫器よりも前記水添脱硫器を優先して前記硫黄化合物の除去に使用するように前記供給量調整器を制御する、請求項1〜4のいずれかに記載の水素生成装置。
【請求項6】
前記水素生成器が生成した水素含有ガスを前記水添脱硫器に供給される原料に添加するように構成されたリターン経路と、
前記リターン経路に設けられ、該リターン経路を通流する水素含有ガスの流量を調整する流量調整器と、を備え、
前記制御器は、前記原料中の硫黄化合物の除去に前記水添脱硫器を優先して使用する前よりも優先して使用した後の方が、前記水添脱硫器に供給される原料に水素含有ガスを添加する量を増加させるように前記流量調整器を制御する、請求項1〜5のいずれかに記載の水素生成装置。
【請求項7】
前記制御器は、前記第1常温脱硫器で吸着される硫黄化合物の吸着量が所定の吸着量に達した後における、前記水素生成装置の起動時及び停止時の少なくともいずれか一方において、前記水添脱硫器よりも前記第1常温脱硫器を原料中の硫黄化合物の除去に優先して使用するように前記供給調整器を制御する、請求項5に記載の水素生成装置。
【請求項8】
原料中の硫黄化合物を常温で除去する第2常温脱硫器をさらに備え、
前記供給調整器は、さらに、前記第2常温脱硫器に供給される原料の供給を調整するように構成され、
前記制御器は、前記第1常温脱硫器における硫黄化合物の吸着量が飽和吸着量に達するまでは、前記水素生成器から前記水素利用機器へ水素含有ガスを供給しているときに、前記水添脱硫器及び前記第2常温脱硫器よりも前記第1常温脱硫器を優先して前記原料中の硫黄化合物の脱硫に使用するように前記供給調整器を制御し、
前記第1常温脱硫器における硫黄化合物の吸着量が飽和吸着量に達した後は、前記水素生成器から前記水素利用機器へ水素含有ガスを供給しているときに、前記第2常温脱硫器よりも前記水添脱硫器を原料中の硫黄化合物の除去に優先して使用するとともに、前記水素生成装置の起動時及び停止時の少なくとも一方において、前記第2常温脱硫器を使用して、硫黄化合物を除去するよう前記供給調整器を制御する、請求項1〜6のいずれかに記載の水素生成装置。
【請求項9】
前記原料中の硫黄化合物の濃度が予め想定されており、
前記想定された原料中の硫黄化合物の濃度(以下、想定硫黄化合物濃度という)に応じた容量となるように、該想定硫黄化合物濃度に応じて該容量を変更して前記第1常温脱硫器が設けられており、
前記想定硫黄化合物濃度に依らずに一定容量の前記水添脱硫器が設けられている、請求項1〜8のいずれかに記載の水素生成装置。
【請求項10】
前記水素生成器に前記原料を供給する原料供給器を備え、
前記制御器は、前記第1常温脱硫器の容量に応じて前記水素含有ガスの目標生成量に対する前記原料供給器の操作量を制御する、請求項9記載の水素生成装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の水素生成装置と、
前記水素生成装置より供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池と、を備える、燃料電池システム。
【請求項12】
第1常温脱硫器を用いて原料中の硫黄化合物を常温で除去するステップと、
水添脱硫器を用いて前記原料中の硫黄化合物を常温よりも高い温度で除去するステップと、
原料を用いて水素含有ガスを生成する水素生成器から水素利用機器へ水素含有ガスを供給しているときに、前記水添脱硫器よりも前記第1常温脱硫器を優先して前記原料中の硫黄化合物の除去に使用するステップと、
その後、前記第1常温脱硫器よりも前記水添脱硫器を優先して前記原料中の硫黄化合物の除去に使用するステップと、を備える、水素生成装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−171849(P2012−171849A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37872(P2011−37872)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】