説明

水素発生油泥の混合方法、固体燃料の製造方法、および固体燃料の貯留方法

【課題】シリコン粒子を含有した廃ワイヤソーオイル、アルミ粒子や金属粒子を含有した
廃切削油等の水素発生油泥を、安価に、しかも安全に混合する方法を提案すること。
【解決手段】水素発生油泥の混合に際して、空気を該水素発生油泥の混合機内に導入し、
発生した水素を爆発下限濃度である4%未満まで希釈した状態で、水素発生油泥の混合を
行うこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素発生油泥の混合方法に関し、特に、安価に、しかも安全に水素発生油泥
を混合する方法、及び該混合方法を用いた固体燃料の製造方法、更にはその固体燃料の貯
留方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハーは、半導体デバイスや太陽光電池等の部材として有用であり、その需要は年々増大しつつある。かかるシリコンウエハーは、高純度シリコンの結晶体からウエハー状に切り出すことにより製造されるが、切断機の性能等の観点から、近年においてはワイヤソーによる切り出しが主流になりつつある。
【0003】
このワイヤソーによる切り出しにおいては、切削用媒体として、通常平均粒径10μm
〜50μmの炭化珪素研削粒と鉱油又は水溶液とを含有するワイヤソーオイルが用いられ
る。このワイヤソーオイルは、使用を繰り返すことにより研削粒の摩耗、シリコン削分の
増加等により、切削能力が低下し、使用できなくなる。
そして、このように使用できなくなった廃ワイヤソーオイルは、現在においては、その
大部分が焼却され、産業廃棄物として処理されている。
【0004】
また、機械加工工場では、多数台の切削、研削若しくは研磨を行う装置を運転して金属
加工を行っているが、該金属加工の工程ではワークを冷却、潤滑するために多量の切削油
、研削油、研磨油を使用している。そして、これらの切削油等も循環使用され、劣化した
ものは抜き出され、廃切削油、廃研削油、廃研磨油としてその大部分はやはり焼却処分さ
れているのが現状である。
【0005】
ここで、上記した廃ワイヤソーオイル、廃切削油等の油泥は、高いエネルギーを有する
ため、産業廃棄物として焼却処分せずに、燃料として有効利用することが期待される。
しかし、油泥は、高い粘稠性を有しているものや、常温で流動性がないものや、固形分
が沈降分離し固着するものなどがあるため、管路を介した輸送時等におけるハンドリング
性が悪く、燃料としての取り扱いが困難である。
【0006】
そこで、近年欧州では、原油スラッジ等の油泥を単独で用いるのではなく、該油泥とお
が屑とを混合して固体燃料とし、セメントキルンで代替燃料として使用することが提案さ
れ、また我が国でも、同様な固体燃料の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1
,2,3等)。
【0007】
【特許文献1】特開昭54−39401号公報
【特許文献2】特開2002−323213号公報
【特許文献3】特開2006−169376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、シリコンウエハーの切り出しに使用された廃ワイヤソーオイルは、多量
のシリコン粒子を含有していると共に、ワイヤソーの磨滅等に起因する鉄等の金属粒子も
含有していることから、これらのシリコン粒子及び/又は鉄等の金属粒子が水と反応して
例えば下記の反応式によって多量の水素が発生する憂いがある。

Si+2OH-+H2O → SiO32-+2H2
金属 + 酸 → 金属化合物 + 水素↑
また、廃切削油、廃研削油、廃研磨油も、多量のアルミ粒子や鉄等の金属粒子を含有し
ていることから、同じく水素の発生が懸念される。
【0009】
上記のような水素の発生が懸念される廃ワイヤソーオイル、廃切削油等の油泥(本明細
書では、このような油泥を『水素発生油泥』と言う。)と、例えばおが屑等のバイオマス
とを混合すると、密閉の混合機内において水素が発生することとなり、爆発或いは火災等
の危険がある。
この際、窒素、二酸化炭素等の不活性なガスを混合機内に吹き込み、酸素濃度を低減(
8%以下)することにより爆発或いは火災等を防ぐ方法も考えられるが、このような方法
では、窒素、二酸化炭素等の不活性なガスの製造設備、またはこれらの不活性なガスを購
入する必要があり、安価に行えるものではなく、また水素を含む混合機排ガスの後処理の
問題も生じる。
【0010】
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑み成されたものであって、その目的は、
廃ワイヤソーオイル、廃切削油等の水素発生油泥を、安価にしかも安全に混合する方法、
及び該混合方法を用いた固体燃料の製造方法、更にはその固体燃料の貯留方法を提案する
ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するため、本発明は、水素発生油泥の混合に際して、空気を該水素
発生油泥の混合機内に導入し、発生した水素を爆発下限濃度未満まで希釈した状態で、水
素発生油泥の混合を行うこととした。
また、本発明は、上記した混合方法によって水素発生油泥とバイオマスとを混合し、固
体燃料を製造することとした。
さらに、本発明は、上記製造方法によって得られた固体燃料の貯留に際して、空気を該
固体燃料の貯留タンクに導入し、発生した水素を爆発下限濃度未満まで希釈した状態で、
固体燃料の貯留を行うこととした。
【発明の効果】
【0012】
上記した本発明によれば、製造或いは購入が必要な窒素、二酸化炭素等の不活性なガス
を用いることなく、空気によって水素を爆発を起こさない濃度、即ち、爆発下限濃度未満
まで希釈する方法を採っているため、水素発生油泥を、安価に、しかも安全に混合するこ
とが可能となる。
また、上記した本発明によれば、従来においてはその大部分が廃棄されていた水素発生
油泥を、安全にバイオマスと混合することにより固体燃料を製造でき、資源の有効活用が
図れる。
さらに、上記した本発明によれば、水素の発生が懸念される固体燃料を、安価に、しか
も安全に貯留することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、上記した本発明を、水素発生油泥とバイオマスとを混合して固体燃料を製造し、
該固体燃料を一旦貯留した後、セメントキルンで代替燃料として使用する場合の実施の形
態を例に挙げて、詳細に説明する。
【0014】
〔水素発生油泥〕
本発明において水素発生油泥とは、水又は水素原子含有化合物の還元によって水素を発
生する、液状又はスラッジ状の油泥をいう。具体的には、シリコンウエハーの切り出しに
使用されたシリコン粒子を含有する廃ワイヤソーオイル、各種金属工作機械においてワー
クの冷却、潤滑等に使用されたアルミ粒子や金属粒子を含有する廃切削油、廃研削油、廃
研磨油等が挙げられ、これらを単独でも、またこれらの二種以上を混ぜた物でも、更には
これらと他の油泥、例えば再生重油、廃溶剤、原油スラッジ、軽油残渣等を混ぜた物であ
ってもよい。
上記の中でも、シリコン粒子を含有した廃ワイヤソーオイルは、近年の半導体デイバイ
スや太陽光電池等の部材として有用であるシリコンウエハーの需要の増大から、大量に発
生しており、その処理が急務になっていると共に、アルカリ性、酸性の両状態において水
素の発生が懸念される取扱いの困難な油泥であることから、特に本発明において、水素発
生油泥として好適に用いられる。
【0015】
〔バイオマス〕
バイオマスの例としては、畳(使用済みの廃畳)の破砕物、木材チップ(例えば、建設
廃木材の破砕物)、木粉、おが屑、紙屑等が挙げられる。
なお、本発明においてバイオマスとは、燃料等として利用可能な、生物由来の有機質資
源(ただし、化石燃料を除く。)の総称をいう。
【0016】
上記畳の破砕物の材料となる廃畳は、植物性の材料を少なくとも部分的に含むものであ
ればよく、具体的には、稲藁を畳床の材料とする本畳のみならず、ポリスチレンフォーム
板(ポリスチレン樹脂組成物に発泡剤を添加して膨張させて形成した板状の成形体)およ
びインシュレーションボード(例えば、湿式法では、木材を水中で解砕し、接着剤等を加
えて抄造した後、乾燥して形成された軟質繊維板)を畳床の材料とする建材畳や、稲藁、
ポリスチレンフォーム板を畳床の材料とする藁サンド畳も含む。
上記木材チップは、最大粒径(篩の残分が5質量%以内となる目開き寸法)が5mmを
超え、10mm以下である木材の破砕物または粉砕物をいう。
上記木粉とは、最大粒径(篩の残分が5質量%以内となる目開き寸法)が5mm以下で
ある木材の粉砕物をいう。
また、上記おが屑は、通常、0.5〜5mm程度の粒度分布を有するものである。上記
紙屑としては、例えばシュレッダー切断物等が用いられる。
【0017】
上記バイオマスの平均粒径(篩の残分が50質量%以内となる目開き寸法)は、0.5
mm以上であることが好ましい。これは、該平均粒径が0.5mm未満では、粒子系全体
が微細化するため流動性、分散性が低下し、ハンドリング性の向上等の効果を得ることが
困難となる。
また、上記バイオマスの最大粒径(篩の残分が5質量%以内となる目開き寸法)は、1
0mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。これは、該最大
粒径が10mmを超えると、例えばセメントキルンのバーナーで使用する場合、火炎(フ
レーム)を形成しにくく、燃料が着地した後も燃焼を継続するため、セメントクリンカー
の品質を低下させるおそれがある。該最大粒径を5mm以下とすれば、着地燃焼する粒体
の割合が少なくなり、固体燃料の使用割合を大きくすることができるので好ましい。
【0018】
〔他の材料〕
水素発生油泥の吸収材として、上記バイオマスの他、有機質粉体が好適に用いられ、さ
らに品質を損なわない限度において、その他の材料をも配合することができる。
有機質粉体の例としては、トナー、重油灰、微粉炭、活性炭粉末、肉骨粉、廃プラスチ
ック粉末、紙粉、有機蒸留残渣粉末等が挙げられる。これらの有機質粉体は、一種を単独
で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0019】
上記トナーは、コピー機、ファクシミリ機、プリンター等の事務機器における乾式現像
剤であり、7〜11μm程度の粒径を有する粉体であり、通常、廃棄物である廃トナーが
用いられる。トナーは、非常に小さな粒径を有し、かつ粒度分布が狭いため、製造される
固体燃料の比重の増大、および水素発生油泥の使用可能量の増大に大きく寄与することが
でき、好ましく用いられる。
上記重油灰は、1〜30μm程度の粒径を有する粉体であり、小さな粒径を有するため
、やはり、製造される固体燃料の比重の増大、および水素発生油泥の使用可能量の増大に
寄与することができるため、好ましく用いられる。
上記微粉炭は、10〜100μm程度の粒径を有する粉体であり、セメントキルン等の
焼成炉における固体燃料として知られている。
上記活性炭粉末および肉骨粉としては、通常、1mm以下の平均粒径を有するものが用
いられる。上記廃プラスチック粉末としては、例えば、廃ペレット等が用いられる。上記
紙粉としては、例えば、サンダーダスト等が用いられる。上記有機蒸留残渣粉末としては
、例えば、フタル酸蒸留残渣等が用いられる。
【0020】
上記有機質粉体の平均粒径は、上記バイオマスの平均粒径に対し、1/2以下、好まし
くは1/3以下である。これは、該比が1/2を超えると、バイオマスと有機質粉体との
粒径の差が小さくなり、ハンドリング性の向上等の効果を得ることが困難となる。
上記有機質粉体の中で、固定炭素で構成される活性炭粉末などでは、平均粒径が300
μmを超えると着地燃焼する粒子が増大し、セメントクリンカーの品質が低下することが
あるので、好ましくは平均粒径が300μm以下、より好ましくは100μm以下のもの
を使用する。有機質粉体の粒径の下限値は、特には限定されないが、通常、1μm以上で
ある。
【0021】
〔配合割合〕
上記各材料の配合割合は、先ず吸収材であるバイオマスと有機質粉体については、バイ
オマスと有機質粉体の質量比は、40/60〜95/5、好ましくは50/50〜80/
20である。これは、該質量比が40/60未満では、バイオマスの配合量が小さいため
、バイオマスの粒体の間隙を有機質粉体が埋めてしまい、燃料の流動性が著しく低下する
ことがある。逆に該質量比が95/5を超えると、有機質粉体の配合量が小さいため、燃
料の比重の増大等の効果を十分に得ることができない。
【0022】
水素発生油泥の配合量は、上記バイオマスと有機質粉体の合計量100質量部に対して
、30〜300質量部、好ましくは50〜200質量部、より好ましくは80〜150質
量部、特に好ましくは100〜140質量部である。これは、該配合量が30質量部未満
では、水素発生油泥を有効に利用しようとする趣旨に合致しなくなる。該配合量が300
質量部を超えると、製造される固体燃料の粒子表面に油が残留して、粒子表面に光沢およ
び付着性が生じ、ハンドリング性が低下することがある。
【0023】
〔混 合〕
混合は、上記各材料を、上記配合割合で混合機に投入し、本発明に係る方法、即ち、空
気を混合機内に導入し、混合物から発生する水素を爆発を起こさない濃度まで希釈させな
がら行われる。
上記した水素発生油泥とバイオマス等を混合すると、水素発生油泥から水素が発生し、
該水素に混合機の回転部等で発生した火花が引火し、爆発を起こす危険がある。即ち、水
素の爆発下限濃度は4%であるため、それ以上の水素が混合機内に存在すると、上記爆発
を起こす危険がある。
そこで、本発明においては、空気を混合機内に導入し、発生した水素の濃度を爆発を起
こさない濃度、即ち爆発下限濃度である4%未満まで希釈させる。具体的な空気の混合機
内への導入量は、発生する水素の量、さらには混合機の容積、混合物の量等によって適宜
決定されるが、本発明において使用する希釈ガスは、無料の空気であることから、必要十
分な量の空気を、混合機内に導入することとすればよい。
【0024】
また、混合機は、単に攪拌羽根が設けられているものではなく、その混合容器自体をも
回転する構造のものを使用することが好ましい。これは、水素発生油泥のように粘稠性の
高い材料とバイオマス等のかさ密度の低い材料とを良好に混合できると共に、容器が回転
することにより発生した水素が流動し、容器の一部に溜まることがなく、導入された空気
によって容易かつ確実に希釈させられるためである。
このような容器自体をも回転する構造の混合機としては、アイリッヒ社製のインテンシ
ブミキサー等が挙げられる。
【0025】
また、混合機には、常時水素の濃度を検知する水素検出器を設け、万一所定以上の濃度
の水素が検出された場合には、直ちに混合操作を停止し、混合機内への空気導入量を増加
する構成、或いは場合によっては二酸化炭素等の不活性なガスを混合機内へ導入する構成
を更に設けることが、爆発等の事故を確実に防止できるために好ましい。
【0026】
〔製造された固体燃料の貯留方法〕
上記水素発生油泥とバイオマスとの混合操作により、水素発生油泥がバイオマスに吸収
され、ハンドリング性が良好な固体燃料が製造できる。
この固体燃料の貯留に際しては、空気を固体燃料を貯留するタンク内に導入し、固体燃
料から発生する水素を、爆発を起こさない濃度まで希釈させた状態で行われる。
上記固体燃料は、水素発生油泥とバイオマスとの混合物であるため、該混合物から水素
が発生し、該水素に何らかの火花が引火し、爆発を起こす危険がある。
そこで、本発明においては、空気を貯留タンク内に導入し、発生した水素の濃度を爆発を
起こさない濃度、即ち爆発下限濃度である4%未満まで希釈させる。具体的な空気の貯留
タンク内への導入量は、上記混合の場合と同様に、発生する水素の量、貯留タンクの容積
等によって適宜決定されるが、必要十分な量の空気を、貯留タンク内に導入することとす
ればよい。
【0027】
上記固体燃料の貯留は、長期的な貯留の場合のみならず、製造した固体燃料をすぐに使
用するため、計量するタンクに一旦製造後の固体燃料を貯留する場合等も含まれる。
また、上記混合機の場合と同様に、貯留タンクに常時水素の濃度を検知する水素検出器を
設け、万一所定以上の濃度の水素が検出された場合には、貯留タンク内への空気導入量を
増加する構成、或いは場合によっては二酸化炭素等の不活性なガスを貯留タンク内へ導入
する構成を更に設けることが、爆発等の事故を確実に防止できるために好ましい。
【0028】
〔固体燃料の使用方法〕
このようにして製造、貯留された固体燃料の使用方法の一例としては、管路を介して焼
成炉内に該固体燃料を投入し、燃料として燃焼させる使用方法が挙げられる。
そして、この際、該固体燃料の製造時及び/又は貯留時、具体的には水素発生油泥とバ
イオマスとの混合時に水素の希釈に使用した空気、或いは固体燃料の貯留時に水素の希釈
に使用した空気を、燃焼用空気として焼成炉内に供給する構成とすることが好ましい。こ
れにより、安全かつ有効に、混合機或いは貯留タンクからの水素を含む排ガスを大量に処
理することが可能となる。
ここで、焼成炉としては、クリンカを製造するためのセメントキルンや、生石灰や軽量
骨材を焼成するためのキルン等が挙げられる。
【実施例】
【0029】
次に、図面を参照しつつ、本発明に係る水素発生油泥の混合方法、該混合方法を用いた
固体燃料の製造方法、更にはその固体燃料の貯留方法の実施例を説明する。
図1は、固体燃料の製造設備、およびその固体燃料を使用するセメントキルンを概念的
に示した図である。
【0030】
図示したように、先ず、所定の方法で計量された1バッチ分の廃畳Aは、破砕機1に投
入され、5cm以下の長さを有する破砕物の割合が80質量%以上の破砕物に破砕される
。そして、得られた廃畳Aの破砕物は、コンベヤー2によって搬送され、その途中におい
て有機質粉体(トナー、重油灰)がその貯留装置3より定量供給され、両者が混合した状
態でホッパー4に貯留される。
【0031】
ホッパー4に貯留された1バッチ分の廃畳Aの破砕物等(約200kg)は、混合機(
アイリッヒ社製のアイリッヒミキサー)5に1バッチ分の水素発生油泥(廃ワイヤソーオ
イル約200kg)Xと共に投入され、所定時間(約4分間)攪拌混合される。この際、
混合機5内には、所定量(最大約20m3/min)の空気が導入され、混合物から発生
する水素を、爆発を起こさない濃度まで希釈させながら混合操作が行われる。また、混合
機5には、水素検出器6が設置され、万一所定以上の濃度の水素が検出された場合には、
直ちに混合操作を停止し、CO2ガスを混合機5内へ導入する等の制御を行う、運転制御
盤7が設けられている。
【0032】
上記混合操作によって、水素発生油泥Xは、混合された廃畳Aの破砕物等の固体材料に
吸収され、固体燃料Yとなる。混合機5より排出された固体燃料Yは、その下流に設置さ
れた、解砕機8で解砕され、コンベヤー9によって上方に搬送され、ドラム磁選機10で
異物が除去され、トロンメル11でその粒度が整えられ、貯留タンク12に貯留される。
【0033】
この貯留タンク12には、所定量(最大約30m3/min)の空気が導入され、固体
燃料Yから発生する水素を、爆発を起こさない濃度まで希釈させながら貯留が行われる。
またこの貯留タンク12には、上記した混合機5の場合と同様に、水素検出器6が設置さ
れ、万一所定以上の濃度の水素が検出された場合には、CO2ガスを貯留タンク12へ導
入する等の制御を行う、上記運転制御盤7に接続されている。このような状態で貯留され
た固体燃料Yは、計量器13で計量され、セメントキルン14の主燃料である微粉炭に代
えて、或いは微粉炭と併用して、バーナー15に向かって空気圧送され、バーナー15の
燃料噴射口からセメントキルン14内に投入される。
【0034】
セメントキルン14内に投入された固体燃料Yは、バーナー15からの炎によって、炉
底に着地する前に短時間で完全燃焼し、固体燃料Yの燃焼残渣は、クリンカの成分の一部
となる。また、混合機5より排気された水素の希釈に使用された空気、及び貯留タンク1
2より排気された水素の希釈に使用された空気は共に、バッグフィルター16を介してク
リンカークーラー17に導かれ、クリンカーの冷却に使用されると共に、セメントキルン
14において燃焼用空気として利用される。
【0035】
一方、ドラム磁選機10、トロンメル11で排除された固体燃料Y中の異物等は、セメ
ントキルン14の窯尻より投入され、燃料として使用されると共に、その残渣はクリンカ
の成分の一部となる。
【0036】
以上、本発明に係る水素発生油泥の混合方法、該混合方法を用いた固体燃料の製造方法
、更にはその固体燃料の貯留方法の実施例を説明したが、本発明は、何ら既述の実施例に
限定されず、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変
形および変更が可能であることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を実現する固体燃料の製造設備、およびその固体燃料を使用するセメントキルンを概念的に示した図である。
【符号の説明】
【0038】
1 破砕機
2 コンベヤー
3 有機質粉体の貯留装置
4 ホッパー
5 混合機
6 水素検出器
7 運転制御盤
8 解砕機
9 コンベヤー
10 ドラム磁選機
11 トロンメル
12 貯留タンク
13 計量器
14 セメントキルン
15 バーナー
16 バッグフィルター
17 クリンカークーラー
A 廃畳
X 水素発生油泥
Y 固体燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素発生油泥の混合に際して、空気を該水素発生油泥の混合機内に導入し、発生した水
素を爆発下限濃度未満まで希釈した状態で、水素発生油泥の混合を行うことを特徴とする
、水素発生油泥の混合方法。
【請求項2】
上記水素発生油泥が、水または水素原子含有化合物の還元によって水素を発生する、液
状またはスラッジ状の油泥であることを特徴とする、請求項1に記載の水素発生油泥の混
合方法。
【請求項3】
上記水素発生油泥が、シリコン粒子及び/又はアルミ粒子や金属粒子を含有した、廃ワ
イヤソーオイル、廃切削油、廃研削油、廃研磨油のいずれか一種以上であることを特徴と
する、請求項1に記載の水素発生油泥の混合方法。
【請求項4】
上記請求項1〜3のいずれかに記載の混合方法によって、水素発生油泥とバイオマスと
を混合することを特徴とする、固体燃料の製造方法。
【請求項5】
上記バイオマスが、廃畳の破砕物、木材チップ、木粉、おが屑、紙屑のいずれか一種以
上であることを特徴とする、請求項4に記載の固体燃料の製造方法。
【請求項6】
上記請求項4又は5に記載の製造方法によって得られた固体燃料の貯留に際して、空気
を該固体燃料の貯留タンクに導入し、発生した水素を爆発下限濃度未満まで希釈した状態
で、固体燃料の貯留を行うことを特徴とする、固体燃料の貯留方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−86973(P2008−86973A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273957(P2006−273957)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】