説明

水素発生装置、水素発生方法及び水素発生システム

【課題】光源から照射される可視光を利用して、可視光応答性光触媒材料により、水素を構成元素として有する化合物を含む水素源から水素を効率良く発生させる、又はプロトン及び電子として蓄積することができる水素発生装置、これを用いた水素発生方法、及び水素発生システムを提供すること。
【解決手段】プロトン生成部、プロトン伝導部、水素生成部、電子蓄積部、プロトン蓄積部、及びスイッチを備える。プロトン伝導部は、プロトン生成部及び水素生成部で狭持され、更に、プロトン蓄積部と接合されている。プロトン生成部と水素生成部とは、電子蓄積部と、スイッチと、をこの順に介して接続されている。プロトン生成部は、第1電気伝導材料、可視光応答性光触媒材料及び電荷分離材料を含有し、水素生成部は、第2電気伝導材料及び金属材料を含有する水素発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素発生装置、水素発生方法及び水素発生システムに係り、更に詳細には、光源から照射される可視光を利用して、水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源から水素(H)を発生させる、又はプロトン及び電子として蓄積することができる水素発生装置、水素発生装置を用いた水素発生方法、及び水素発生装置を備えた水素発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体から排出されるガス問題や燃料資源の枯渇が心配されている。
そこで、近年では、水素(H)と酸素(O)を燃料とする燃料電池の開発研究がなされている。
【0003】
燃料電池は、水素(H)と酸素(O)を燃料として発電する。しかし、水素(H)は、天然には殆ど存在しないため、水素(H)を発生する装置が必要となる。
このような背景から、水(HO)の光触媒による水素(H)発生が研究され、注目されている。
【0004】
例えば、互いに電気的に接続されたカソード及びアノードを、所定の水溶液を含む容器中に備えた水素生成装置が提案されている(特許文献1参照。)。
この装置のアノードは、p型半導体及びn型半導体からなるpn接合を有する太陽電池のp型半導体層の表面に、光照射により電子及び正孔対を励起する光触媒層が形成された構造を有する。そして、このアノードに光エネルギーが照射されることにより、カソード表面から水素ガスを発生することができる。
【0005】
かかる水素生成装置は、1つの素子に水素生成と太陽電池との二つの機能を持たせ、太陽光のみで水素を高効率で生成することを目指している。
具体的には、シリコン(Si)等の太陽電池表面に、酸化チタン(TiO)等の光照射により電子及び正孔対を励起するいわゆる光触媒機能を有する半導体薄膜を堆積させた、TiO/Si等のヘテロ構造を採用する。
これにより、半導体薄膜(TiO等)を透過した長波長の太陽光を太陽電池層(Si等)で吸収して電子−正孔対を生成すると共に、半導体膜の水素生成ポテンシャルに太陽電池の起電力ポテンシャルを加えて持ち上げることにより、太陽光による水素生成効率を大幅に高めるというものである。
【0006】
また、水を貯留する反応槽に、第1作用極と白金電極の第2作用極とを浸漬させて備え、両作用極間に介在させた直流電源により直流電圧を印加する水素生成装置が提案されている(特許文献2参照。)。
【0007】
かかる水素生成装置は、具体的には、第1作用極は、ガラス基板の表面に、酸化インジウムスズ(ITO)を備えた透明電極を有し、この電極面に光触媒電極膜を備える。
この光触媒電極膜としては、二酸化チタン薄膜が採用され、その膜面に可視光吸収色素としてのルテニウム錯体を担持させている。
また、直流電圧は、第1作用極側がプラス、第2作用極側がマイナスとなるようにして2V未満の電圧値で印加する。この印加状況下で、タングステンランプの光を照射する。
【特許文献1】特開2003−238104号公報
【特許文献2】特開2002−356301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の水素生成装置においては、高額な半導体薄膜を使用するため、装置が高額になるという問題点があった。
また、太陽光からの光照射量に対応して、水素の生成量が大きく変動し、特に光が当たらなくなると、水素を生成できなくなるという問題点があった。
【0009】
更に、上記特許文献2に記載の水素生成装置においては、電圧を電極間にかけるため消費電力が大きく、投入したエネルギーに対して水素の発生効率が悪い、また、ルテニウム錯体を使用しているため耐久性に乏しい、という問題点があった。
【0010】
更にまた、上記特許文献1及び2に記載の水素生成装置においては、水素を貯めておくための大きな水素タンクが必要であり、システム自体が大型のものとなる。よって、移動体にかかる水素生成装置を搭載することが容易でないという問題点もある。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光源から照射される可視光を利用して、可視光応答性光触媒材料により、水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源から水素(H)を効率良く発生させる、又はプロトン(H)及び電子(e)として蓄積することができる水素発生装置、水素発生装置を用いた水素発生方法、及び水素発生装置を用いた水素発生システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源と可視光応答性光触媒材料とを接触させ、光源からの可視光を該可視光応答性光触媒材料に照射し、該水素源からプロトン(H)と電子(e)を生成し、得られたプロトン(H)の流れ及び電子(e)の流れを制御して、水素(H)の発生量を制御することなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の水素発生装置は、光源から照射される可視光を利用して、水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源から水素(H)を発生させる装置である。
かかる水素発生装置は、プロトン生成部と、プロトン伝導部と、水素生成部と、電子蓄積部と、プロトン蓄積部と、スイッチとを備え、該プロトン伝導部は、該プロトン生成部及び該水素生成部で狭持され、該プロトン伝導部は、該プロトン蓄積部と接合され、該プロトン生成部と該水素生成部とは、該プロトン生成部側から、該電子蓄積部と、該プロトン生成部及び該水素生成部を電気的に接続し得る該スイッチと、をこの順に介して接続され、該プロトン生成部は、第1電気伝導材料と可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料とを含有し、該水素生成部は、第2電気伝導材料と金属材料とを含有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の水素発生方法は、上記本発明の水素発生装置を用いた水素発生方法であって、水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源と可視光応答性光触媒材料とを接触させ、光源からの可視光を該可視光応答性光触媒材料に照射し、該水素源からプロトン(H)と電子(e)を生成し、得られたプロトン(H)の流れ及び電子(e)の流れを制御して、水素(H)の発生量を制御することを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の水素発生システムは、上記本発明の水素発生装置を用いた水素発生システムであって、該水素発生装置と、該水素発生装置に水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源を供給する水素源供給手段と、該水素発生装置のスイッチを制御する制御手段とを備え、該制御手段が断続的に該スイッチを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源と可視光応答性光触媒材料とを接触させ、光源からの可視光を該可視光応答性光触媒材料に照射し、該水素源からプロトン(H)と電子(e)を生成し、得られたプロトン(H)の流れ及び電子(e)の流れを制御して、水素(H)の発生量を制御することなどとしたため、光源から照射される可視光を利用して、可視光応答性光触媒材料により、水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源から水素(H)を効率良く発生させる、又はプロトン(H)及び電子(e)として蓄積することができる水素発生装置、水素発生装置を用いた水素発生方法、及び水素発生装置を用いた水素発生システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の水素発生装置について詳細に説明する。
上述の如く、本発明の水素発生装置は、光源から照射される可視光を利用して、水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源から水素(H)を発生させる装置であって、プロトン生成部と、プロトン伝導部と、水素生成部と、電子蓄積部と、プロトン蓄積部と、スイッチとを備え、該プロトン伝導部は、該プロトン生成部及び該水素生成部で狭持され、該プロトン伝導部は、該プロトン蓄積部と接合され、該プロトン生成部と該水素生成部とが、該プロトン生成部側から、該電子蓄積部と、該プロトン生成部及び該水素生成部を電気的に接続し得る該スイッチと、をこの順に介して接続されるものである。
【0018】
そして、かかるプロトン生成部は、第1電気伝導材料と可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料とを含有し、かかる水素生成部は、第2電気伝導材料と金属材料とを含有する。
【0019】
このような構成とすることにより、可視光応答性光触媒材料を光源から照射される可視光により活性化させながら、水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源を当該可視光応答性光触媒材料に接触させ得るので、スイッチがオンの状態である場合には、水素(H)を効率良く発生させることができ、スイッチがオフの状態である場合には、電子(e)を電子蓄積部に、またプロトン(H)をプロトン蓄積部に、それぞれ蓄積することができる。
【0020】
また、蓄積した状態からスイッチをオンの状態とすると、光源から光が照射されていない場合であっても水素(H)を発生させることができる。
【0021】
更に、上記したように、水素(H)ではなく、電子(e)とプロトン(H)の状態で蓄積することができるため、システムを構築した際に、必ずしも水素タンクを必要とせず、また、水素タンクを配設する場合にもその水素タンクを小型化することができる。
【0022】
また、水素源から水素(H)を得る際に利用するエネルギー源が従来より縮小化される。
具体的には、水素(H)を発生させるために外部電源によって印加を行うことを必ずしも必要とせず、水素発生装置を更に小型化することができる。
更にまた、高価な半導体薄膜を必ずしも利用する必要がないことやルテニウム錯体を必ずしも利用する必要がないことも相俟って、安価且つ耐久性を有するように設計することができるため、自動車などの移動体へ搭載することが容易になる。
【0023】
また、本発明においては、プロトン生成部と電子蓄積部との間に、電流検出器を備えていてもよい。
このような電流検出器は、スイッチがオンの状態の場合には、水素(H)の発生量を測定することができ、また、スイッチがオフの状態の場合には、電子蓄積部における大体の電子蓄積量を推測することができる。
そして、このような測定値や推測値に基づいて、水素発生装置の制御を実行することにより、より効率良く水素(H)を発生させることができる。
【0024】
更に、本発明においては、光検出器を備えていてもよい。
ここで、光検出器とは、いわゆる光センサーであって、光源から水素発生装置、より望ましくはプロトン生成部、更に望ましくは可視光応答性光触媒材料に照射される可視光を検出し、その照射量を測定することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、フォトダイオードなどを用いることができる。
そして、このような光検出器の測定値に基づいて、水素発生装置の制御を実行することにより、より効率良く水素(H)を発生させることができる。
【0025】
ここで、本発明の水素発生装置を図面を用いてより詳細に説明する。
図1は、本発明の水素発生装置の一例を示す概略図である。同図に示すように、水素発生装置1は、プロトン生成部10と、プロトン伝導部20と、水素生成部30と、電子蓄積部40と、プロトン蓄積部50と、スイッチ60と、電流検出器70と、光検出器80とを備える。
また、プロトン伝導部20は、プロトン生成部10及び水素生成部30に狭持され、更にプロトン蓄積部50と接合されている。
更に、プロトン生成部10と水素生成部30とが、プロトン生成部10側から電流検出器70と、電子蓄積部40と、プロトン生成部10及び水素生成部30を電気的に接続し得るスイッチ60と、を介して配線wにより接続されている。
なお、図1は、スイッチ60がオフの状態である場合を示している。
【0026】
そして、光源から矢印aで示すように可視光を照射させることにより、プロトン生成部10に含有される可視光応答性光触媒材料(図示せず。)を光源から照射される可視光により活性化させながら、水素源の一例である水(HO)を矢印bで示すように該可視光応答性光触媒材料に供給し接触させることによって、プロトン生成部10において電子(e)(図示せず。)とプロトン(H)(図示せず。)と矢印cで示すように酸素(O)を生成し、得られた電子(e)は電流検出器70を通り、電子蓄積部40に蓄積される一方、得られたプロトン(H)はプロトン伝導部20を通り、プロトン蓄積部50に蓄積される。
また、図1には、スイッチ60がオンの状態である場合を示さないが、その場合には、破線の矢印dで示すように、水素生成部30から水素(H)が発生する。なお、詳細については後述する。
【0027】
また、本発明においては、備える電子蓄積部は、電子(e)を蓄積することができればその材料や形状について特に限定されるものではないが、ポリマー、金属又は金属酸化物、及びこれらの任意の組合わせに係る電子蓄積材料と、絶縁性材料とから成り、該電子蓄積材料が、該絶縁性材料に覆われた構造を有することが望ましい。
【0028】
上記電子蓄積材料であるポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えばポリアニリンやポリピロール、ポリチオフェンなどを挙げることができる。
また、電子蓄積材料である金属としては、特に限定されるものではないが、例えば鉄(Fe)やマンガン(Mn)、ニッケル(Ni)などを挙げることができる。
更に、電子蓄積材料である金属酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば三酸化タングステン(WO)や酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)などを挙げることができ、耐久性や電子蓄積能力などの観点からWOを用いることが望ましい。
【0029】
上記絶縁性材料としては、特に限定されるものではないが、軽量であり、形状を自由に設計することができる、更に透明であるという観点から、例えばポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどの絶縁性ポリマーを好適に用いることができる。
【0030】
図2に、本発明の水素発生装置が備える電子蓄積部の一例の概略的な断面形状を示す。同図に示すように、電子蓄積部40は、電子蓄積材料42の一例であるWOを例えばポリカーボネートのような絶縁性材料44の一例である絶縁ポリマーで覆われた構造を有している。
なお、電子蓄積材料42は配線wにより、図示しないプロトン生成部やスイッチと電気的に接続されている。
【0031】
更に、本発明においては、備えるプロトン蓄積部は、プロトン(H)を蓄積することができればその材料や形状について特に限定されるものではないが、固体高分子、ガラス又は金属酸化物、及びこれらの任意の組合せに係るプロトン蓄積材料と、プロトン流出防止材料とから成り、該プロトン蓄積材料が、該プロトン流出防止材料に覆われた構造を有することが望ましい。
【0032】
上記プロトン蓄積材料である固体高分子としては、特に限定されるものではないが、例えばナフィオン(登録商標、デュポン社製)などのプロトン伝導膜を挙げることができる。
また、プロトン蓄積材料であるガラスとしては、特に限定されるものではないが、例えばリン酸塩ガラスなどのプロトン伝導ガラスを挙げることができる。
更に、プロトン蓄積材料である金属酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば三酸化タングステン(WO)や酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)などを挙げることができ、耐久性やプロトン蓄積能力などの観点からWOを用いることが望ましい。
【0033】
上記プロトン流出防止材料としては、特に限定されるものではないが、軽量であり、形状を自由に設計すること、更に透明であることという観点から、例えばポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどのプロトン流出防止ポリマーを好適に用いることができる。
【0034】
ここで、備える電子蓄積部やプロトン蓄積部は、キャパシタ構造を有していることが電子(e)及びプロトン(H)の蓄積量を増加させることができるという観点から望ましい。
例えば、水素発生装置自体の構造によって、キャパシタ構造を構築してもよく、水素発生システムを構築する際に、複数の水素発生装置の配置によって、キャパシタ構造を構築してもよい。
【0035】
次に、本発明の水素発生装置における電子状態及び電子(e)の流れを説明する。
図3は、本発明の水素発生装置における電子状態及び電子(e)の流れを模式的に示す説明図である。同図に示すように、プロトン生成部10において生成した電子(e)は、電子蓄積部40に移動し、更に水素生成部30に移動する一方、図示しないが、プロトン生成部において生成したプロトン(H)は、プロトン伝導部に移動し、更に水素生成部に移動する。
なお、図示した電子蓄積部40における電子状態は、電子蓄積部を構成する電子蓄積材料として半導体の性質を持つ金属酸化物を用いた場合のものである。
【0036】
また、上述のように電子(e)とプロトン(H)の流れ、特に電子(e)の流れをスムーズなものとし、水素(H)を効率良く発生するためには、プロトン生成部、電子蓄積部及び水素生成部における電子状態は、各部における構成要素間のエネルギー準位の高さを比較した場合に、下記の[1]〜[4]の関係が成立していることが望ましい。
【0037】
[1](可視光応答性光触媒材料の価電子帯の上端)<(電荷分離材料の価電子帯の上端)
[2](電荷分離材料の価電子帯の上端)<(可視光応答性光触媒材料の伝導帯の下端)<(電荷分離材料の伝導帯の下端)
[3](電荷分離材料の伝導帯の下端)>(電子蓄積部の電子占有状態の最高エネルギー準位)>(水素生成部の金属材料のフェルミ準位)
[4](可視光応答性光触媒材料の伝導帯の下端)>(電子蓄積部の電子占有状態の最高エネルギー準位)>(水素生成部の金属材料のフェルミ準位)
【0038】
上述のような関係が成立する場合には、大きく分けて電子(e)は次のような2つの流れ方をする。
即ち、可視光応答性光触媒材料で生成した電子(e)が電荷分離材料を介してから第1電気伝導材料に流れる場合と可視光応答性光触媒材料で生成した電子(e)が第1電気伝導材料に直接流れる場合がある。
【0039】
まず、前述の場合に、可視光応答性光触媒材料への可視光の照射により、当該可視光応答性光触媒材料において生じたホール(正孔)、更に電子(e)とプロトン(H)の流れにより、水素(H)が発生するメカニズムを説明する。
【0040】
なお、上記可視光応答性光触媒材料と上記電荷分離材料のそれぞれは、1種又は複数種を適宜混合して使用することができる。
このとき、可視光応答性光触媒材料における光吸収で生成された電子(e)とホール(正孔)が再結合しないようにするため、可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料のバンドギャップを調整することが望ましい。
言い換えれば、可視光応答性光触媒材料における電子(e)を放出する電位(伝導帯のエネルギー準位)が、電荷分離材料のホール(正孔)に当該電子(e)が入る電位(価電子帯のエネルギー準位)より低く、電荷分離材料の伝導帯のエネルギー準位は、可視光応答性光触媒材料の伝導帯のエネルギー準位より高く、更に、電荷分離材料のバンドギャップは、可視光応答性光触媒材料のバンドギャップより小さいことが望ましい。
【0041】
図4は、上述の如き、好適な関係を有する可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料の吸収スペクトルの一例を示すグラフである。
なお、図4に示すにように、電荷分離材料はそれ自体でプラズモン吸収を示している。
【0042】
また、図5は、上述の如き、好適な関係を有する可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料とを含むプロトン生成部における電子状態及び電子流れの一例を示す説明図である。
図5に示すように、プロトン生成部において、可視光応答性光触媒材料に可視光が照射され、電子(e)が励起され、励起電子(e)とホール(正孔)が生成する。
また、同時に電荷分離材料にも可視光が照射され、電子(e)が励起され、励起電子(e)とホール(正孔)が生成する。
【0043】
このとき、例えば水素源の一例である水(HO)(図示せず。)が可視光応答性光触媒に接触すると、水(HO)はホールを受け取って、酸素(O)が発生する。
また、可視光応答性光触媒材料に生成した電子(e)は、電荷分離材料の価電子帯に入ることによって、ホール(正孔)が消失し、電荷分離材料に生成した電子(e)は、第1電気伝導材料(図示せず。)に移動する。更に、この第1電気伝導材料に移動した電子(e)は、電子蓄積部(図示せず。)に移動する。
そして、スイッチがオンの状態である場合には、この電子(e)は水素生成部へ移動する。一方、スイッチがオフの状態である場合には、電子蓄積部に電子(e)が蓄積される。
【0044】
更に、水(HO)から生成したプロトン(H)はプロトン伝導部に移動する。
そして、スイッチがオンの状態である場合には、このプロトン(H)は水素生成部へ移動する。一方、スイッチがオフの状態である場合には、プロトン蓄積部にプロトン(H)が蓄積される。
【0045】
この結果、プロトン生成部では、次式(1)に示す反応が起こる。
【0046】
2HO→O+4H+4e…(1)
【0047】
また、水素生成部では、次式(2)に示す反応が起こり、水素(H)が発生する。
【0048】
4H+4e→2H…(2)
【0049】
以上の結果、水素発生装置によって水素(H)を発生することができる。
【0050】
なお、後述の場合には、含有させた電荷分離材料が利用されていないが、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。具体的には、上述したように、プロトン生成部において、可視光応答性光触媒材料に可視光が照射され、電子(e)が励起され、励起電子(e)とホール(正孔)が生成する。
このとき、例えば水素源の一例である水(HO)が可視光応答性光触媒に接触すると、水(HO)はホール(正孔)を受け取って、酸素(O)が発生する。
また、可視光応答性光触媒材料に生成した電子(e)は、第1電気伝導材料に移動する。以降は上述した場合と同様の電子(e)及びプロトン(H)の流れ方よって、電子(e)及びプロトン(H)が蓄積され、水素発生装置から水素(H)が発生する。
【0051】
次に、プロトン生成部の構造について説明する。
プロトン生成部においては、上記式(1)の反応が進行する限り、第1電気伝導材料、可視光応答性光触媒材料、電荷分離材料の3成分を種々の態様で含有できる。
【0052】
例えば、図6に示すように、第1電気伝導材料、可視光応答性光触媒材料及び電荷分離材料を混合分散させた単層11から構成できる。
このときは、上記3成分を均一分散させることができる。また、プロトン伝導部側に第1電気伝導材料を多く含め、表層側(水素源に接する層)に可視光応答性光触媒材料を多く含めることもできる。
【0053】
また、図7に示すように、第1層12と第2層13を順にプロトン伝導部に積層して構成することができる。
このときは、第1層12が第1電気伝導材料から成り、第2層13が可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料とを混合分散して成ることが好適である。
なお、配線(図示せず。)の一端は、プロトン伝導部に接する層(第1層)に接続するのが望ましい。
【0054】
更に、図8に示すように、第1〜第3層(12〜14)を順にプロトン伝導部に積層して構成することもできる。
【0055】
例えば、第1〜第3層(12〜14)の全てが、第1電気伝導材料、可視光応答性光触媒材料及び電荷分離材料から成り、第1層12の主成分を第1電気伝導材料とし、第2層13の主成分を電荷分離材料とし、第3層14の主成分を可視光応答性光触媒材料とすることができる。
なお、「主成分」とは、第1電気伝導材料、可視光応答性光触媒材料及び電荷分離材料の3成分を含む層であればそれらの総含有量の1/3以上、2成分を含む層であればそれらの総含有量の1/2以上を占めることをいう。
【0056】
また、第1層12が第1電気伝導材料、可視光応答性光触媒材料及び電荷分離材料から成り、主成分が第1電気伝導材料であり、第2層13が可視光応答性光触媒材料と電解分離材料から成り、主成分が電荷分離材料であり、第3層14が可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料から成り、主成分が可視光応答性光触媒材料である、ようにすることもできる。
【0057】
更に、第1層12が第1電気伝導材料から成り、第2層13が電荷分離材料から成り、第3層14が可視光応答性光触媒材料から成る、ようにすることもできる。
可視光応答性光触媒材料を水素源に接触させるように、第1電気伝導材料をプロトン伝導部に接触させるように、電荷分離材料を可視光応答性光触媒材料と第1電気伝導材料の中間部にあるように配置することが、水素発生効率の観点から望ましく、このような観点から、特に第1層12が第1電気伝導材料から成り、第2層13が電荷分離材料から成り、第3層14が可視光応答性光触媒材料から成る、ようにすることが望ましい。
【0058】
ここで、上記単層のプロトン生成部を製造する際には、例えば、第1電気伝導材料と可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料とを混合したスラリーを乾燥して、単層のプロトン生成部を得ることができるが、これに限定されるものではない。
【0059】
また、上記2層構造のプロトン生成部を製造する際には、特に限定されるものではないが、例えば、導電性カーボンクロスに導電性カーボン粒子又は導電性カーボン多孔体のスラリーを塗布し、乾燥し、プレスして第1層を形成し、この上に、可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料を含んだスラリーを塗布し、乾燥し、第2層を形成して、2層構造のプロトン生成部を得ることができる。
このとき、可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料は均一に又は不均一に塗布することができる。
【0060】
更に、上記3層構造のプロトン生成部を製造する際には、特に限定されるものではないが、以下のように各材料の塗布後に、乾燥処理、プレス処理、熱処理を適宜行なえばよい。
例えば、導電性カーボンクロスに導電性カーボン粒子又は導電性カーボン多孔体のスラリーを塗布し、乾燥して第1層を形成し、この上に、電荷分離材料を含むスラリーを塗布して、第2層を形成し、更にこの上に、可視光応答性光触媒材料を含むスラリーを塗布して、第3層を形成し、全体を加熱して、3層構造のプロトン生成部を得ることができる。
【0061】
また、導電性カーボンクロスに導電性カーボン粒子又は導電性カーボン多孔体のスラリーを塗布し、乾燥し、プレスして第1層を形成し、この上に、電荷分離材料を含むスラリーを塗布し、乾燥して、第2層を形成し、更にこの上に、可視光応答性光触媒材料を含むスラリーを塗布し、乾燥し、熱処理して第3層を形成し、3層構造のプロトン生成部を得ることができる。
【0062】
更に、導電性カーボンクロスに導電性カーボン粒子又は導電性カーボン多孔体のスラリーを塗布し、乾燥し、プレスして第1層を形成し、この上に電荷分離材料を含むスラリーを塗布し、乾燥して、第2層を形成し、更にこの上に、可視光応答性光触媒材料を含むスラリーを塗布し、乾燥して第3層を形成し、3層構造のプロトン生成部を得ることができる。
【0063】
なお、上記乾燥処理は、特に限定されるものではないが、例えば120〜200℃、1〜2時間程度で行なうことができる。また、上記プレス処理は、特に限定されるものではないが、例えば、0.1〜40MPa程度で行なうことができる。更に、上記熱処理は、特に限定されるものではないが、例えば、400〜1200℃、2〜20時間程度で行なうことができる。
【0064】
次に、水素生成部の構造について説明する。
水素生成部においては、上記式(2)の反応が進行する限り、第2電気伝導材料と金属材料の2成分を種々の態様で含有できる。
【0065】
例えば、図9に示すように、第2電気伝導材料と金属材料を混合分散させた単層31から構成できる。
このときは、上記2成分を均一分散することができる。また、プロトン伝導部側に第2電気伝導材料を多く含め、裏層側(水素と接する層)に金属材料を多く含めることもできる。
【0066】
また、図10に示すように、第1層32と第2層33を順にプロトン伝導部に積層して構成することもできる。
例えば、第1層32の主成分を第2電気伝導材料とし、第2層33の主成分を金属材料とすることができる。
なお、配線(図示せず。)の一端は、プロトン伝導部に接する層(第1層)に接続するのが望ましい。
【0067】
更に、第1層32が第2電気伝導材料から成り、第2層33が金属材料から成る、ようにすることもできる。
第2電気伝導材料をプロトン伝導部に接触させるように、金属材料をプロトン伝導部から離すように、配置することが水素発生効率の観点から望ましく、このような観点から、特に第1層32が第2電気伝導材料から成り、第2層33が金属材料から成る、ようにすることが望ましい。
【0068】
ここで、上記単層の水素生成部を製造する際には、特に限定されるものではないが、例えば、金属材料と第2電気伝導材料を含むスラリーを乾燥させて、単層の水素生成部を得ることができる。
【0069】
また、上記2層構造の水素生成部を製造する際には、特に限定されるものではないが、例えば、導電性カーボンクロスに導電性カーボン粒子又は導電性カーボン多孔体のスラリーを塗布し、乾燥し、プレスして第1層を形成し、この上に金属微粒子を含むスラリーを塗布し、乾燥して、第2層を形成し、全体を熱処理して、2層構造の水素生成部を得ることができる。
【0070】
更に、導電性カーボンクロスに導電性カーボン粒子又は導電性カーボン多孔体のスラリーを塗布し、乾燥し、プレスして、第1層を形成し、この上に金属微粒子を塗布し、乾燥して、第2層を形成し、2層構造の水素生成部を得ることもできる。
【0071】
他方、プロトン生成部、プロトン伝導部及び水素生成部の接合は、例えば、上記プロトン生成部と上記水素生成部との間に、プロトン伝導部を配設し、プレスで圧着することにより行なうことができる。このときは、例えば0.1〜40MPa程度で行なうことができる。
【0072】
次に、プロトン生成部の成分について説明する。
上述の如く、本発明においては、備えるプロトン生成部は、第1電気伝導材料と可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料とを含有する。
【0073】
上記可視光応答性光触媒材料としては、可視光の照射によって、水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源からプロトン(H)を生成する機能を備え、好ましくは、水素源としての水(HO)からプロトン(H)を生成し、結果として酸素(O)を生成する機能を備えれば特に限定されるものではないが、例えば、五窒化三タンタル(Ta)光触媒、窒酸化タンタル(TaON)光触媒や酸化チタン(TiO)にクロム(Cr)とアンチモン(Sb)をドープした光触媒などが挙げられる。
更に、具体的には、以下の〔1〕〜〔6〕に記載の化合物を単独で又は混合して含有するものを挙げることができる。
【0074】
〔1〕五窒化三タンタル(Ta
〔2〕ストロンチウム−チタン酸化物(SrTiO)、銀−タンタル酸化物(AgTaO)、銀−ニオブ酸化物(AgNbO)、インジウム−タンタル酸化物(InTaO)、インジウム−ニオブ酸化物(InNbO)、ビスマス−バナジウム酸化物(BiVO)、又はこれらに窒素(N)、硫黄(S)、クロム(Cr)若しくはアンチモン(Sb)、及びこれらを任意に組合わせたものをドープした金属酸化物
〔3〕硫化亜鉛(ZnS)、銅(Cu)及び/又はニッケル(Ni)をドープしたZnS
〔4〕ガリウム(Ga)酸化物、インジウム(In)酸化物、亜鉛(Zn)酸化物、銀(Ag)酸化物、ナトリウム(Na)酸化物
〔5〕Ga硫化物、In硫化物、Zn硫化物、Ag硫化物、Na硫化物
〔6〕酸化ガリウム−酸化インジウム固溶体(Ga−In
【0075】
また、上記可視光応答性光触媒材料は、平均径0.01〜50μmの微粒子から構成されることが好ましい。
このときは、光触媒で発生した正孔が水素源(例えば水等)とより反応し易くなるので有効である。
【0076】
更に、上記可視光応答性光触媒材料には、白金(Pt)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ルテニウム(RuO)又は酸化イリジウム(IrO)、及びこれらの任意の組合わせに係る助触媒を担持させることができる。特に、Pt微粒子は多様な光触媒の助触媒となり得る。
【0077】
上記光触媒と助触媒との代表的な組合わせとしては、Taに対してはPt、InTaOに対してはNiOなどを挙げることができる。
なお、上記光触媒と助触媒の使用量は、代表的にはモル比で1000:1〜10:1の範囲で使用できる。例えばTa:Ptのモル比は、現時点においては、100:1〜50:1が好適であることが分かっている。
【0078】
なお、上記可視光応答性光触媒材料と共に、紫外光応答性光触媒材料を使用することもできる。例えば、酸化チタン(TiO)、やタンタル酸アルカリ、タンタル酸アルカリ土類、ニオブ酸アルカリ、ニオブ酸アルカリ土類、ニオブ酸亜鉛などを挙げることができる。
【0079】
上記電荷分離材料としては、上述した可視光応答性光触媒材料で発生する電子(e)とホール(正孔)の分離・移動を行なう機能を備えれば、好ましくは可視光応答性光触媒及び当該電荷分離材料自体で発生する電子(e)とホール(正孔)の分離・移動を行なう機能を備えれば、特に限定されるものではないが、前述の機能を有するものとして、例えばフラーレンを挙げることができ、後述の機能を有するものとして、例えばプラズモン吸収を示す微粒子及び色素の一方又は双方を含有するもの挙げることができる。
現時点における可視光応答性光触媒材料は、吸収できる可視光の波長域380nm〜550nmと限られており、特にプラズモン吸収を示す電荷分離材料は、吸収できる可視光の波長域を拡大できるという観点から好ましく、プラズモン吸収は構成元素や微粒子のサイズによって吸収波長が異なるので、必要に応じて適宜選択することができる。
【0080】
上記フラーレンとしては、例えばC60やC70、C76、C78、C82、C84、C90、C96などを挙げることができ、また、フラーレンの内部に適宜金属原子を内包して使用することもできる。
【0081】
上記プラズモン吸収を示す微粒子としては、例えば金(Au)、銀(Ag)のいずれか一方又は双方を使用することができる。
これらは、ナノサイズのロッド状、球状のいずれか一方又は双方の形状のものを使用できる。特にAuのナノロッドが有効である。
【0082】
また、上記プラズモン吸収を示す色素としては、例えばポルフィリン化合物、その金属錯体、フタロシアニン化合物又はその金属錯体、及びこれらの任意の組合わせに係るものを使用することができる。
【0083】
更に、上述したように電荷分離材料としてはプラズモン吸収を示すものが好ましいが、上述したフラーレンは電子(e)のアクセプターとして有効に機能するため、プラズモン吸収を示すものに更にフラーレンを付加することが望ましい。
【0084】
上記第1電気伝導材料としては、良好な導電性を示せば、特に限定されるものではないが、例えば導電性カーボン粒子、導電性カーボン多孔体又は導電性カーボンクロス、及びこれらを任意に組合わせたものを使用することができる。
また、導電性カーボン粒子や導電性カーボン多孔体は、電気伝導性に優れ、更に微粒子状であるため各種材料を担持し易いという利点がある。具体例としては、例えばカーボンブラックやカーボンナノチューブを挙げることができる。
一方、導電性カーボンクロスは、導電性に優れた繊維状のカーボンファイバーから成るものを好適に使用できる。
更に、後述する水素生成部における第2電気伝導材料としても、第1電気伝導材料と同様のものを使用することができる。
なお、第1電気伝導材料と第2電気伝導材料は同一でも異なってもよいことは言うまでもない。
【0085】
次に、プロトン伝導部の成分について説明する。
上述の如く、本発明においては、備えるプロトン伝導部は、電子伝導性を殆ど示さず、良好なプロトン伝導性を示せば特に限定されるものではないが、例えば高分子及び酸化物のいずれか一方又は双方を含むプロトン伝導膜であることが望ましい。
例えば、高いプロトン伝導性を有するナフィオン(登録商標、デュポン社製)を使用することが望ましい。また、これ以外の高分子のプロトン伝導膜やプロトン伝導ガラスも使用可能である。例えば、プロトン伝導ガラスであるリン酸塩ガラスなどがある。
【0086】
次に、水素生成部の成分について説明する。
上述の如く、本発明においては、備える水素生成部は、第2電気伝導材料と金属材料とを含有する。
【0087】
上記金属材料としては、例えば、Pt、NiO、RuO又はIrO、及びこれらの任意の組合わせたものを使用することができ、特にPtが望ましい。また、これらの形状は微粒子状やチューブ状であることが望ましい。
なお、上記第2電気伝導材料としては、上述したように第1電気伝導材料と同様のものを使用できる。
【0088】
また、本発明においては、上記光源としては、太陽光源、発光ダイオード、半導体レーザー又はこれらと同等の可視光を照射できるランプ、及びこれらを適宜組合わせて利用することができる。
特に、エネルギー変換効率が優れているという観点からは、非常に狭い領域の可視光領域の発光を可能にする発光ダイオードを使用するのが望ましい。
また、太陽が照っている限り、枯渇せず、利用できる太陽光は、直接使用してもよいし、集光して集めたものを使用してもよい。
更に、プリズムにより、可視光を分光して利用してもよい。
【0089】
更に、本発明においては、上記水素を構成元素として有する化合物を含む水素源としては、特に限定されるものではなく、例えばメタノールやエタノールなどのアルコールなどを適宜用いることができるが、水又は犠牲試薬含有水溶液を用いることが特に望ましい。
水を水素源とすることにより、排出するガスの問題を完全に解決できるという利点がある。
【0090】
また、上記犠牲試薬含有水溶液に含まれる犠牲試薬としては、水中で、水酸化物イオン(OH)、亜硫酸イオン(SO2−)、硫化物イオン(S2−)又は銀イオン(Ag)、及びこれらの任意の組合わせに係るイオンを発生させ得る化合物を含むことが好適である。
このような酸化され易い物質が溶液中に存在すると、これらは可視光応答性光触媒材料が励起状態のときに生成する正孔と反応するため、生成した電子(e)が正孔と再結合する確率が小さくなり、水素(H)が発生し易くなる。
代表的には、アルコール、亜硫酸カリウム、硫化ナトリウム、硝酸銀などを犠牲試薬として使用できる。
【0091】
また、本発明においては、当該水素発生装置が光透過性の筐体内に配設されていることが望ましい。
本発明の水素発生装置においては、発生する水素(H)をそのまま取り出すために、少なくとも水素生成部の周りの雰囲気が非酸化性であることを要し、また、プロトン生成部は、含有する可視光応答性光触媒材料に光が照射され得ることを要する。
このような要件を満たすようにするため、例えば水素発生装置自体が光透過性の筐体内に配設されている構造とすることが望ましい。
【0092】
次に、本発明の水素発生方法について詳細に説明する。
上述の如く、本発明の水素発生方法は、上記本発明の水素発生装置を用いた水素発生方法であって、水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源と可視光応答性光触媒材料とを接触させ、光源からの可視光を該可視光応答性光触媒材料に照射し、該水素源からプロトン(H)と電子(e)を生成し、得られたプロトン(H)の流れ及び電子(e)の流れを制御して、水素(H)の発生量を制御する方法である。
このような方法によって、可視光応答性光触媒材料を光源から照射される可視光により活性化させながら、水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源を当該可視光応答性光触媒材料に接触させ得るので、水素(H)を効率良く発生させることができ、又は電子(e)及びプロトン(H)をそれぞれ蓄積することができる。
また、蓄積した状態からは、光源から光が照射されていない場合であっても、より具体的には、可視光光源からの照射量に応じて、水素(H)を発生させることができる。
【0093】
次に、本発明の水素発生システムについて詳細に説明する。
上述の如く、本発明の水素発生システムは、上記本発明の水素発生装置を用いた水素発生システムであって、該水素発生装置と、該水素発生装置に水素(H)を構成元素として有する化合物を含む水素源を供給する水素源供給手段と、該水素発生装置のスイッチを制御する制御手段とを備え、該制御手段が断続的に該スイッチを制御するものである。
このような構成とすることにより、非常にコンパクト且つエネルギー消費の少ない水素発生システムが構築可能となる。
また、このようなコンパクトな水素発生システムとすることにより、自動車などの移動体に搭載することが容易となる。
【0094】
上記水素源供給手段としては、例えば、水素源タンク、圧力調整弁、圧力計、配管、コックなどを適宜組合わせて構成できる。
また、上記制御手段としては、水素発生装置のスイッチを制御することができれば特に限定されるものではなく、具体的には、16ビットマイクロコンピュータや従来公知の演算部を備えた電子制御装置を適宜使用することができる。
【0095】
更に、上記制御手段は、水素発生装置が備える光検出器からの検出データと電流検出器からの検出データとが入力されるように、更には、これらの検出データの積算データを算出できるようになっていてもよい。
更にまた、制御手段は、その内部に光検出器からの検出データに対する基準データを予め格納していてもよく、また、電流検出器からの検出データに対する電子蓄積量基準データや電子蓄積部の限界蓄積量を予め格納していてもよい。そのときは、かかる基準データの限界蓄積量を基準にして水素発生装置の制御を適切に実行することができる。
【0096】
また、上記制御手段は、水素源供給手段を制御できるようになっていてもよい。
具体的には、水素源供給手段が供給する水素源の供給量を、例えば備えるコックの開閉を制御手段により制御することができるようになっていてもよい。
【0097】
図11は、本発明の水素発生システムの一例を示す概略図である。
同図に示すように、この水素発生システム100は、水素発生装置1と、水素源供給手段110と、制御手段120とを備える。
水素源供給手段110は、水素源の一例である水を貯留し、その水を水素発生装置1に送り込むコック(図示せず。)を有し、水素発生装置1に水を供給する。
制御手段120は、光源からの可視光照射量を図示しない光検出器によって、更には発生する水素(H)の要否によって、水素発生装置1のスイッチを制御し、水素(H)を必要とする場合には、スイッチをオンの状態にして、水素(H)を発生し、水素(H)を必要としない場合には、スイッチをオフの状態にして、電子(e)及びプロトン(H)をそれぞれ、水素発生装置1の電子蓄積部及びプロトン蓄積部に蓄積する。
【0098】
また、本発明においては、備える制御装置が断続的にスイッチを制御するに際し、該水素発生装置の光検出器からのデータと該水素発生装置の電流検出器からの積算算出データとに基づいて該スイッチの制御を行なうことが望ましい。
このような構成とすることによって、非常にコンパクト且つエネルギー消費の少ない水素発生システムが構築可能となるだけでなく、水素発生効率をより向上させることができる。
【0099】
更に、本発明においては、水素タンクを備えていてもよい。この場合には、備える水素タンクを小型化することができ、非常にコンパクト且つエネルギー消費の少ない水素発生システムが構築可能となる。
更にまた、例えば、電子蓄積部及びプロトン蓄積部における電子及びプロトン蓄積量が限界となった際には、電子及びプロトンから水素を発生させて水素タンクに貯めることにより、より水素発生効率を向上させることができる。
なお、用いる水素タンクは、得られる水素を必要に応じて加圧して水素タンク内に貯めることができれば、特に限定されるものではなく、従来公知の水素タンクを用いることができ、また、加圧する際には、従来公知のポンプを用いることができる。
【0100】
更にまた、本発明においては、可視光光源を備えていてもよい。可視光光源としては、例えば発光ダイオード、半導体レーザー又はこれらと同等の可視光を照射できるランプ、及びこれらを適宜組合わせて使用することができる。
例えば、自動車に水素発生システムを搭載した場合には、通常は他のエネルギーデバイスとして燃料電池を用いるが、例えば太陽光源が利用できない場合に、発光ダイオードなどにより燃料電池が発電する電気を有効に利用して、水素を発生させることもできる。
なお、水回収手段を備えていてもよく、燃料電池と組合わせることにより、具体的には燃料電池から排出される水を回収し、水素源として再利用することにより、備える水素源タンクを小型化又は無くすことができ、更にコンパクトな水素発生システムを構築することが可能となる。
【0101】
図12は、本発明の水素発生装置の制御フローの一例を示すフロー図である。
同図に示すように、STEP1(以下、「S1」のように略記する。)において、制御手段によって、発生させる水素が必要か否か判断する。必要である(YES)場合には、S2に進む。
S2において、光検出器と制御手段によって、太陽光が十分か否か判断する。十分である(YES)場合には、S3に進む。
S3において、水素源供給手段と制御手段によって、水素源の一種である水を供給する。
S4において、制御手段によって、スイッチをオンの状態にする。
S5において、水素発生装置の運転を実施し、水素を発生させる。
【0102】
なお、S2において、十分でない(NO)場合には、S4に進む。そして、S4において、スイッチをオンの状態にすると、プロトン蓄積と電子蓄積部に、それぞれプロトンと電子が蓄積されている場合には、水素発生装置の運転が実施でき、水素を発生させる。
【0103】
また、S1において、必要でない(NO)場合には、S6に進む。
S6において、光検出器と制御手段によって、太陽光が十分か否か判断する。十分である(YES)場合には、S7に進む。
S7において、制御手段によって、スイッチをオフの状態にする。
S8において、水素源供給手段と制御手段によって、水素源の一種である水を供給する。
S9において、電子蓄積部とプロトン蓄積部に、それぞれ電子とプロトンを蓄積する。
なお、S6において、十分でない(NO)場合には、何もしない。
【実施例】
【0104】
以下、本発明を若干の実施例により更に詳細に説明する。
【0105】
(実施例1)
<プロトン生成部の作製>
可視光応答性光触媒材料としてTa、電荷分離材料としてプラズモン吸収を示す微粒子である金のナノロッド(長軸:65±16nm、短軸:20±6nm)、第1電気伝導材料としてカーボンファイバーとカーボンブラックを用意した。
耐熱性のセラミック基板に、第1電気伝導材料を含むスラリーを塗布し、乾燥して第1電気伝導材料から成る第1層を得、この上に電荷分離材料を含むスラリーを塗布し、乾燥して電荷分離材料から成る第2層を得、この上に可視光応答性光触媒材料を含むスラリーを塗布し、乾燥して可視光応答性光触媒から成る第3層を得、基板からこれらを剥離して3層構造のプロトン生成部を得た。
【0106】
<水素生成部の作製>
金属材料としてPt微粒子、第2電気伝導材料としてカーボンファイバーとカーボンブラックを用意した。
耐熱性のセラミック基板に、第2電気伝導材料を含むスラリーを塗布し、乾燥して第2電気伝導材料から成る第1層を得、この上に金属材料を含むスラリーを塗布し、乾燥して金属材料から成る第2層を得、基板からこれらを剥離して2層構造の水素生成部を得た。
【0107】
<電子蓄積部の作製>
電子蓄積材料としてWO、絶縁性ポリマーとしてポリカーボネートを用意した。電子蓄積材料を絶縁性ポリマーを用いて覆い、電子蓄積部を得た。
【0108】
<プロトン蓄積部の作製>
プロトン蓄積材料としてナフィオン(登録商標、デュポン社製)、プロトン流出防止材料としてポリカーボネートからなるプラスチック膜を用意した。プロトン蓄積材料をプラスチック膜を用いて覆い、プロトン蓄積部を得た。
【0109】
<水素発生装置の構築>
上記プロトン生成部、上記水素生成部、上記電子蓄積部、上記プロトン蓄積部、プロトン伝導部としてナフィオン膜、配線として銅線、光検出器としてフォトダイオード、スイッチ、電流検出器、光透過性筐体として無色透明のガラス容器を用意した。
プロトン伝導部20をプロトン生成部10及び水素生成部30とで狭持し、これらを型に入れ、プレスし、圧着接合した。更にプロトン伝導部20とプロトン蓄積部40とを接合し、プロトン生成部10の第1層12と電流検出器(図示せず。)とを配線(図示せず。)で接続し、該電流検出器と電子蓄積部(図示せず。)とを配線(図示せず。)で接続し、該電子蓄積部とスイッチ(図示せず。)を配線で接続し、更に該スイッチと水素生成部30の第1層32を配線で接続し、図13に示すように光透過性筐体内90に収納して、本例の水素発生装置を構築した。
図13は、実施例1の水素発生装置の概略的な構成図である。なお、電流検出器と電子蓄積部とスイッチは図示しないが、光透過性筐体90に収納されている。また、光検出器も図示しないがプロトン生成部10における可視光照射量を測定できるように配置されている。
【0110】
(実施例2)
<プロトン生成部の作製>
耐熱性のセラミック基板に、第1電気伝導材料、電荷分離材料及び可視光応答性光触媒材料を含むスラリーを塗布し、乾燥して第1電気伝導材料、電荷分離材料及び可視光応答性光触媒材料から成る均一分布の単層を得、基板からこれを剥離して単層構造のプロトン生成部を得た。
【0111】
<水素生成部の作製>
耐熱性のセラミック基板に、第2電気伝導材料及び金属材料を含むスラリーを塗布し、乾燥して第2電気伝導材料及び金属材料から成る均一分布の単層を得、基板からこれを剥離して単層構造の水素生成部を得た。
【0112】
<水素発生装置の構築>
3層構造のプロトン生成部に替えて単層構造のプロトン生成部を用い、2層構造の水素生成部に替えて単層構造の水素生成部を用いた以外は、実施例1と同様の構成を採用し、本例の水素発生装置を構築した。
【0113】
(実施例3)
<プロトン生成部の作製>
電荷分離材料として用意したプラズモン吸収を示す微粒子である金のナノロッド(長軸:65±16nm、短軸:20±6nm)にフラーレン(C60)を付加し、フラーレン含有電荷分離材料を作成した。
フラーレン含有電荷分離材料を用いた以外は、実施例1のプロトン生成部の作製と同様の操作を繰り返して、プロトン生成部を得た。
【0114】
<水素発生装置の構築>
上記フラーレン含有電荷分離材料を用いて作製した3層構造のプロトン生成部を用いた以外は、実施例1と同様の構成を採用し、本例の水素発生装置を構築した。
【0115】
(実施例4)
<プロトン蓄積部の作製>
プロトン蓄積材料としてプロトン伝導性ガラスを用いた以外は、実施例1におけるプロトン蓄積部の作製と同様の操作を繰り返して、プロトン蓄積部を得た。
【0116】
<水素発生装置の構築>
上記プロトン伝導性ガラスを用いて作製したプロトン蓄積部を用いた以外は、実施例1と同様の構成を採用し、本例の水素発生装置を構築した。
【0117】
(実施例5)
<プロトン生成部の作製>
電荷分離材料として亜鉛ポルフィリンを用いた以外は、実施例1のプロトン生成部の作製と同様の操作を繰り返して、プロトン生成部を得た。
【0118】
<水素発生装置の構築>
上記亜鉛ポルフィリンを用いて作製したプロトン生成部を用いた以外は、実施例1と同様の構成を採用し、本例の水素発生装置を構築した。
【0119】
(実施例6)
<電子蓄積部の作製>
電子蓄積材料として鉄(Fe)を用いた以外は、実施例1における電子蓄積部の作製と同様の操作を繰り返して、電子蓄積部を得た。
【0120】
<水素生成装置の構築>
上記Feを用いて作製した電子蓄積部を用いた以外は、実施例1と同様の構成を採用し、本例の水素発生装置を構築した。
【0121】
[性能評価1]
上記各例の水素発生装置(図1参照。)を用いて、筐体内に形成された流路に水を流通し、光源として太陽光を利用して、性能評価を実施した。
(評価条件)
・光源 :太陽光源
・水素源 :水
・蓄積時間 :1時間
【0122】
上記性能評価の結果、実施例1の水素発生装置においては、太陽光を照射しないときでも水素を発生することができた。
また、実施例2においては、実施例1と比較して、単位時間当たりの水素発生量が少なかった。
更に、実施例3においては、実施例1と比較して、単位時間当たりの水素発生量が多かった。
また、実施例4においては、実施例1と比較して、単位時間当たりの水素発生量が同等であった。
更に、実施例5及び6においても、実施例1と比較して、単位時間当たりの水素発生量が同等であった。
【0123】
(実施例7)
図14は、自動車用水素発生システムの一例を示す概略図である。
同図に示すように、実施例1において構築した水素発生装置を用いて、自動車用の水素発生システムを構築した。
【0124】
具体的には、自動車用水素発生システム200は、自動車のルーフ210に水素発生装置1を装着した。
水素を構成元素として有する化合物を含む水素源を供給する水素源供給手段としては、ルーフ210に取り付けた水素源タンク220に入った水を水素発生装置1へ流入させるためのコック(図示せず。)と、水素源タンク220と水素発生装置1との間をつなぐ管(図示せず。)を設けた。また、管の途中にポンプ(図示せず。)を設けた。
水素発生装置1のスイッチ等を制御する制御手段として、16ビットマイクロコンピュータ等を使用して、自動車の車体内部に内蔵した。
また、自動車用水素発生システム200では、得られた水素を水素タンク(図示せず。)に戻すようにした。
【0125】
以上、本発明を若干の好適実施例により詳細に説明したが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
例えば、車両の外板に塗装した塗膜やウィンドガラスなどに内蔵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の水素発生装置の一例を示す概略図である。
【図2】電子蓄積部の一例の概略的な断面形状を示す説明図である。
【図3】本発明の水素発生装置における電子状態及び電子(e)の流れを模式的に示す説明図である。
【図4】可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料の吸収スペクトルの一例を示すグラフである。
【図5】可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料とを含むプロトン生成部における電子状態及び電子流れの一例を示す説明図である。
【図6】プロトン生成部の構造の一例を示す概略図である。
【図7】プロトン生成部の構造の他の例を示す概略図である。
【図8】プロトン生成部の構造の更に他の例を示す概略図である。
【図9】水素生成部の構造の一例を示す概略図である。
【図10】水素生成部の構造の他の例を示す概略図である。
【図11】本発明の水素発生システムの一例を示す概略図である。
【図12】本発明の水素発生装置の制御フローの一例を示すフロー図である。
【図13】実施例1の水素発生装置の概略的な構成図である。
【図14】自動車用水素発生システムの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0127】
1 水素発生装置
10 プロトン生成部
11 単層
12 第1層
13 第2層
13a 金のナノロッド
14 第3層
14a Ta
20 プロトン伝導部
30 水素生成部
31 単層
32 第1層
33 第2層
40 電子蓄積部
42 電子蓄積材料
44 絶縁性材料
50 プロトン蓄積部
52 プロトン蓄積材料
54 プロトン流出防止材料
60 スイッチ
70 電流検出器
80 光検出器
90 光透過性筐体
100 水素発生システム
110 水素源供給手段
120 制御手段
200 自動車用水素発生システム
210 ルーフ
220 水素源タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射される可視光を利用して、水素を構成元素として有する化合物を含む水素源から水素を発生させる装置であって、
プロトン生成部と、プロトン伝導部と、水素生成部と、電子蓄積部と、プロトン蓄積部と、スイッチとを備え、
上記プロトン伝導部は、上記プロトン生成部及び上記水素生成部で狭持され、
上記プロトン伝導部は、上記プロトン蓄積部と接合され、
上記プロトン生成部と上記水素生成部とは、該プロトン生成部側から、上記電子蓄積部と、該プロトン生成部及び該水素生成部を電気的に接続し得る該スイッチと、をこの順に介して接続され、
上記プロトン生成部は、第1電気伝導材料と可視光応答性光触媒材料と電荷分離材料とを含有し、
上記水素生成部は、第2電気伝導材料と金属材料とを含有する、ことを特徴とする水素発生装置。
【請求項2】
上記プロトン生成部と上記電子蓄積部との間に、電流検出器を備えることを特徴とする請求項1に記載の水素発生装置。
【請求項3】
光検出器を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素発生装置。
【請求項4】
上記電子蓄積部が、ポリマー、金属及び金属酸化物から成る群より選ばれた少なくとも1種の電子蓄積材料と、絶縁性材料とから成り、
上記電子蓄積材料が、上記絶縁性材料に覆われた構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の水素発生装置。
【請求項5】
上記金属酸化物が、三酸化タングステンであることを特徴とする請求項4に記載の水素発生装置。
【請求項6】
上記プロトン蓄積部が、固体高分子、ガラス及び金属酸化物から成る群より選ばれた少なくとも1種のプロトン蓄積材料と、プロトン流出防止材料とから成り、
上記プロトン蓄積材料が、上記プロトン流出防止材料に覆われた構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の水素発生装置。
【請求項7】
上記固体高分子が、プロトン伝導膜であることを特徴とする請求項6に記載の水素発生装置。
【請求項8】
上記ガラスが、プロトン伝導ガラスであることを特徴とする請求項6又は7に記載の水素発生装置。
【請求項9】
上記金属酸化物が、三酸化タングステンであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つの項に記載の水素発生装置。
【請求項10】
上記可視光応答性光触媒材料が、可視光の照射によって、水素を構成元素として有する化合物を含む水素源からプロトンを生成する機能を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の水素発生装置。
【請求項11】
上記電荷分離材料が、上記可視光応答性光触媒材料又は上記可視光応答性光触媒材料及び当該電荷分離材料自体で発生する電子とホールの分離・移動を行なう機能を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つの項に記載の水素発生装置。
【請求項12】
上記電荷分離材料が、プラズモン吸収を示す微粒子及び/又は色素を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つの項に記載の水素発生装置。
【請求項13】
上記プラスモン吸収を示す微粒子が、金及び/又は銀であり、ナノサイズのロッド状及び/又は球状であることを特徴とする請求項12に記載の水素発生装置。
【請求項14】
上記プラズモン吸収を示す色素が、ポルフィリン化合物、その金属錯体、フタロシアニン化合物及びその金属錯体から成る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項12に記載の水素発生装置。
【請求項15】
上記電荷分離材料が、フラーレンを含有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つの項に記載の水素発生装置。
【請求項16】
上記第1電気伝導材料及び/又は上記第2電気伝導材料が、導電性カーボン粒子、導電性カーボン多孔体及び導電性カーボンクロスから成る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つの項に記載の水素発生装置。
【請求項17】
上記プロトン伝導部が、高分子及び/又は酸化物を含むプロトン伝導膜であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1つの項に記載の水素発生装置。
【請求項18】
上記金属材料が、白金であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1つの項に記載の水素発生装置。
【請求項19】
上記光源が、太陽光源、発光ダイオード、半導体レーザ及びこれらと同等の可視光を照射できるランプ、から成る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1つの項に記載の水素発生装置。
【請求項20】
上記水素を構成元素として有する化合物を含む水素源が、水又は犠牲試薬含有水溶液であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1つの項に記載の水素発生装置。
【請求項21】
当該水素発生装置が光透過性の筐体内に配設されていることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1つの項に記載の水素発生装置。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1つの項に記載の水素発生装置を用いた水素発生方法であって、
水素を構成元素として有する化合物を含む水素源と可視光応答性光触媒材料とを接触させ、光源からの可視光を該可視光応答性光触媒材料に照射し、該水素源からプロトンと電子を生成し、得られたプロトンの流れ及び電子の流れを制御して、水素の発生量を制御することを特徴とする水素発生方法。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか1つの項に記載の水素発生装置を用いた水素発生システムであって、
上記水素発生装置と、該水素発生装置に水素を構成元素として有する化合物を含む水素源を供給する水素源供給手段と、該水素発生装置のスイッチを制御する制御手段と、を備え、
上記制御手段が断続的に上記スイッチを制御することを特徴とする水素発生システム。
【請求項24】
上記制御装置が断続的に上記スイッチを制御するに際し、該水素発生装置の光検出器からのデータと該水素発生装置の電流検出器からの積算算出データとに基づいて該スイッチの制御を行なうことを特徴とする請求項23に記載の水素発生システム。
【請求項25】
水素タンクを備えることを特徴とする請求項23又は24に記載の水素発生システム。
【請求項26】
可視光光源を備え、該光源が発光ダイオード、半導体レーザ及びこれらと同等の可視光を照射できるランプ、から成る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項23〜25のいずれか1つの項に記載の水素発生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−39298(P2007−39298A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227802(P2005−227802)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】