説明

水素製造装置、アンモニア製造装置、水素製造方法およびアンモニア製造方法

【課題】 水素と窒素を用いたアンモニアの合成技術において、水素タンク等の水素貯蔵手段を用いずに、低温・低圧の条件において、アンモニアを合成する。
【解決手段】 パラジウム等の水素吸収・透過作用を有し、水素発生に対して過電圧の低い金属材料からなる陰極101と陽極103との間に電解質物質111が存在している状態において、両電極間に電流を流し、電気分解を行う。陰極101の外側には、触媒材料102が担持されており、その表面には窒素ガスが供給される。電気分解によって発生した水素は陰極101を透過し、触媒材料102に原子状水素の状態で供給される。他方において、触媒材料102においては、窒素ガスが解離吸着され原子状窒素が生成し、この原子状窒素と陰極101から供給される原子状水素とが反応してアンモニアが合成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度で活性な水素を製造する装置およびその方法に関する。また、本発明は、前述した装置の仕組みを利用して高純度で活性な水素アンモニアを製造する装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古典的なアンモニアの合成技術として、ハーバー法が知られている。ハーバー法は、窒素と水素とを原料とし、鉄系の3元触媒を用いてアンモニアを合成する方法である。ハーバー法においては、温度500℃前後、圧力20MPa程度の合成条件が必要とされる。
【0003】
ハーバー法は、高温・高圧の合成条件を必要とするので、小規模な設備で利用するには適していない。例えば、ガソリンエンジンの排気ガス中にアンモニアと水蒸気を混合し、排気ガス中に含まれる窒素酸化物を分解する浄化技術が知られているが、ガソリンエンジンを搭載した乗用車に上記ハーバー法を利用したアンモニア製造装置を搭載することは、寸法や重量の点から困難である。
【0004】
他方で、より温和な条件、すなわちハーバー法において必要とされる500℃および20MPaといった合成条件に比較して、より低温、より低圧(理想的にはより常圧に近い圧力)の合成条件でアンモニアを合成する方法が提案されている。この方法としては、ルテニウム系の触媒を用いた方法が知られている。
【0005】
例えば、非特許文献1には、ルテニウム系の触媒を用いることで、圧力0.9MPa、温度350℃程度の合成条件によって水素と窒素を原料としてアンモニアを合成する技術について記載されている。
【0006】
またルテニウム系の触媒を用いたアンモニアの合成技術の他の一つとして、特許文献1に記載された方法が公知である。特許文献1には、純水の電気分解によって得た高純度の水素を利用することで、触媒材料における被毒と呼ばれる現象を低減する点が記載されている。
【0007】
さらにルテニウム系の触媒を用いたアンモニアの合成技術において、より温和な条件によってアンモニアを合成することができる技術として、特許文献2に記載された方法が公知である。特許文献2には、金属水素化物で構成される水素透過膜の一方の面にルテニウム系の触媒材料を担持させた膜反応構成が記載されている。この技術においては、水素透過膜の触媒を担持した面に窒素を供給し、他方の面からこの水素透過膜を介して水素を触媒材料に供給することで、アンモニアが合成される。
【0008】
【非特許文献1】NKKグループアラカルト、”オンサイト設置式小型アンモニア製造装置“、エヌケーケー総合設計(株)、「online」、[平成15年7月2日検索]、インターネット〈URL:http://www.jfe-holdings.co.jp/archives/nkk_360/No.47/group.html〉
【特許文献1】特開2003−267725号公報
【特許文献2】特開2000−247632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1に記載された技術は、合成圧力がハーバー法において必要とされる20MPa程度から0.9MPa程度に低減されたとはいえ、やはりまだ圧力が高く、また合成温度も350℃と高温であり、満足できるレベルではない。
【0010】
特許文献1に記載された技術も合成圧力として1MPa以上、合成温度として200℃以上を必要としており、温和な合成条件としては満足できるレベルではない。
【0011】
特許文献2に記載された技術は、常圧に近い圧力でしかも200℃以下の温度でアンモニアの合成が可能であるが、アンモニアの合成速度(単位時間あたりの合成量)の制御性について不満がある。
【0012】
すなわち、特許文献2に記載されている技術においては、アンモニアの合成速度を制御する場合に、水素透過膜を透過する水素量を制御する必要がある。この制御を行うためには、水素透過膜の両面間における水素分圧の差を制御する必要がある。
【0013】
しかしながら、水素分圧の変化により水素透過量を制御する方法は、応答が緩慢であり、細かなそして応答性のよい制御は困難である。また、制御の応答性を上げようとして透過膜の両面間における水素分圧の差を急激に変化させることは、膜面に無理な力が加わり、膜が破損することにつながり好ましくない。特に、透過量制御の応答性を改善しようとして、膜を薄くした場合、この点がより顕著になり、耐久性がさらに低下してしまう。
【0014】
また、上述したアンモニア合成速度の制御方法は、原料ガスの流量を電磁バルブ等で調整する必要があり、構成が複雑化する点で不満があった。
【0015】
以上述べたように、水素と窒素とを原料としたアンモニアの合成技術においては、より温和な合成条件の追求、より効果的な合成速度の制御技術、よりシンプルな構成が求められている。
【0016】
また、上述した従来の技術全般に関して指摘できることであるが、水素源を別途必要とする点に技術的な課題がある。例えば、上述したような自動車の排気ガス浄化のためにアンモニアの利用が有効であることが分かっているが、自動車の車体内でどのようにして水素を確保するかが問題となる。水素の供給を行う方法として、ガソリンやアルコールの改質、あるいは水素貯蔵合金を利用する技術があるが、実用性やコストの点からより簡便な方法が求められている。
【0017】
本発明は、水素と窒素とを原料としたアンモニアの合成技術において、より温和な合成条件を追求できる技術を提供することを目的とする。また本発明は、アンモニアの合成速度の調整をより精密にそして応答性よく行うことができる技術を提供することを他の目的とする。また本発明は、このアンモニアの合成技術に利用するのに好適な水素の供給手段を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の水素製造装置は、電解質物質に接する陽極と、この電解質物質に接し、金属水素化物を含む水素透過膜で構成される陰極と、前記陽極と前記陰極との間に電流を流す電流供給手段とを備え、前記電解質物質の電気分解によって生じた水素が前記陰極における前記電解質物質に接する面の反対側の面から得られることを特徴とする。
【0019】
電解質物質とは、電圧を加えることで電気分解が起こり、陰極側に水素を発生する材料のことをいう。電解質物質としては、水、リン酸水溶液、硫酸水溶液、過塩素酸水溶液等の各種酸性電解液に加え、苛性ソーダ、苛性カリ水溶液等の各種の電解液を挙げることができる。電解質物質は、液状のものに限定されず、イオン交換樹脂等のゲル状電解質あるいは固体電解質であってもよい。
【0020】
金属水素化物は、パラジウムに代表される水素を透過する性質を有する金属材料、さらには無機物や有機物などと水素吸収能力を有する金属との複合材料のことをいう。水素透過膜は、この水素を吸蔵するメカニズムに基づいて水素を選択的に透過させる膜であり、流体状の電解質物質をシール・隔絶する機能を有する。金属水素化物への水素の吸収は、水素を原子状態で捕獲し、内部に保持する作用として理解される。金属水素化物としては、水素を吸収または貯蔵する性質を有する金属や合金(水素透過金属、水素吸蔵合金)が知られている。
【0021】
電流供給手段は、陽極と陰極との間に直流電流を流すための電源である。電流供給手段は、陽極と陰極との間に流れる電流値を制御する機能を有することが好ましい。電流の供給は、定電流電源または定電圧電源、さらには両者の組み合わせのいずれであってもよいが、適切に両電極間に流れる電流の値を制御できる定電流電源方式が望ましい。
【0022】
本発明の水素製造装置においては、金属水素化物などの水素透過膜により陰極を構成することで、電解質物質の電気分解によって生じた水素を、直接かつ連続的に陰極を透過させることによって得る。すなわち、陰極の電解質物質側において発生した水素を、直接かつ連続的に陰極を介してその反対側の面へ供給し、発生させる。
【0023】
水素透過膜における水素の透過は、膜内への水素の吸収が進行し、その吸収能力が飽和した段階において、取り込み量に応じた水素を取り込み面と反対側の面から放出する現象として理解することができる。また、この現象は、水素透過膜中に水素が吸収されることで濃度の違いが生じ、この濃度差に起因して取り込みが行われた面と反対の面から水素の放出が行われる現象として理解することもできる。
【0024】
この現象においては、膜中に貯蔵された水素は、原子状であるので、水素透過膜から原子状水素として放出される。また、当然のことながら、水素以外の元素の透過は抑制される。したがって、水素以外の元素に対して、水素透過膜はフィルタとして機能する。
【0025】
水素透過膜における水素の透過は、吸蔵が飽和の状態において、一方の面から流入した分の水素を他方の面から放出する現象であるから、陰極に流れ込む水素イオンの流入量を制御することで、陰極の反対面から放出される水素の放出量を制御することができる。したがって、電気分解時における陽極と陰極との間に流れる電流値を制御することで、陰極表面上での水素発生量を増減することができ、この結果、膜の反対側からの水素の発生量も制御することができる。
【0026】
以下、水素透過膜を利用した陰極における水素の透過メカニズムについて、具体的な例を挙げてより詳細に説明する。図2は、水素透過膜を水素が透過する様子を説明するための概念図である。図2には、電解液としてリン酸水溶液201を用い、陰極202(水素透過膜としても機能)として銀とパラジウムの合金膜(Ag−Pd膜と表記)を用いた例が記載されている。
【0027】
図2に例示する構成において、陰極202に、図示しない陽極(当然この陽極もリン酸水溶液に接して配置されている)に対して負の電位を加えると、リン酸水溶液の電気分解が起こり、陰極202の界面1(204)に水素イオン(H)が引き寄せられる。この水素イオンは、陰極202から電子(e)を受け取り、原子状水素として陰極202(Ag−Pd膜)の表面に吸着した後に格子内に捕獲される。この原子状水素が陰極202内に吸収され、水素の濃度勾配に沿って移動することで、水素の透過が進行する。

【0028】
ここで、膜内に吸収された原子状水素をH、吸着水素原子をH(a)と表記し、膜表面における原子状水素の吸着点をsiteと表記すると、上記の現象は、下記「化1」により表される。
【0029】
[化1] H+e → H(a)+1site → H
【0030】
上記「化1」は、リン酸水溶液201の電気分解により水素陽イオン(H)が生成され、それが陰極202において電子の供給を受けて適当な吸着点に原子状水素として吸着し、それにより水素(H)の陰極202(Ag−Pd膜)への吸蔵、拡散が行われる現象を表している。
【0031】
陰極202への水素の吸蔵がある程度進行し、吸蔵作用が飽和状態に達すると、陰極202を水素が透過する現象が現れる。すなわち、取り込まれた原子状の水素が陰極202内を界面1(204)から界面2(205)に向かって移動し、空間203に放出される現象が現れる。
【0032】
この水素の透過現象は、水素の吸蔵能力が飽和した段階において、陰極202を構成する膜の両面間における水素分圧の差を駆動力として、一方の面からの水素の吸蔵と他方の面からの水素の放出とがバランスする現象として理解することができる。
【0033】
また、水素は陰極202中において原子状水素Hとして移動しているので、陰極202を透過する水素Hは、原子状水素H(a)として陰極202の表面から放出される。
【0034】
放出された原子状の水素H(a)は、放出直後に膜表面において同じく放出された他の原子状の水素H(a)と結合し、分子状の水素Hとなる。この現象は、下記「化2」により表される。
【0035】
[化2] 2H → 2H(a)+2site → H
【0036】
上記の反応において、陰極202は、図示しない陽極に対して負の電位におかれ、水素陽イオン(H)を吸引する作用が働いている。したがって、その水素透過作用は、この負の電位の影響により助長される。したがって、Ag−Pd膜を単なる水素透過膜として利用する場合に比較して、水素の透過効率を高めることができる。
【0037】
電気分解時にリン酸水溶液201から陰極202に流れ込む電流値は、リン酸水溶液201から陰極202に流れ込む水素陽イオン(H)によって運ばれる電荷量に対応する。したがって、上記電流値を調整することは、陰極202に流れ込む水素陽イオン(H)の流量を調整することであり、これは、陰極202を透過する水素の流量を調整することと同じである。つまり、図示しない陽極と陰極202との間に流れる電流の値を調整することで、陰極202を透過する水素の流量を制御することができる。
【0038】
このように、陰極202を水素透過膜としても機能させることで、陰極202を透過する水素の透過量を陰極202に流れる電流を調整することで制御することができる。つまり、水素の製造量を電気的に調整することができる。
【0039】
上記水素製造装置において、金属材料が水電解に対し水素過電圧の小さいパラジウム系合金であることは好ましい。また、上記の金属材料に水素過電圧の大きな材料を使用する場合には、白金、イリジウム、ルテニウム等の水素過電圧の小さな金属粒子を担持することで、電解電圧を低減することも可能である。また、電解質物質が、酸性の電解質溶液であることは好ましい。アルカリ性の電解質溶液は、水素過電圧が大きく、電気分解の効率が悪くなるので好ましくない。また、アルカリ性の電解質溶液は、沸点が低い傾向があり、効率の確保や動作温度の安全性のマージンの点から見ても好ましくない。
【0040】
なお、酸性の電解質溶液としては、リン酸溶液が好ましい。リン酸溶液は電気分解の効率が高く、また電気分解による溶液の減少分を水分の補給のみで補うことができる点で好ましい。すなわち、リン酸水溶液は、電気分解により水を放出し、オルトリン酸からメタリン酸へと順次変化するが、消費された水を補給するだけでオルトリン酸へと再生される。よって、リン酸溶液の場合、電解液の消費は水の補給で対処することができる。
【0041】
また、リン酸溶液としては、リン酸の濃度が90重量%程度であるリン酸溶液を用いることが好ましい。また陰極の温度を150℃〜200℃に加熱する加熱手段をさらに備えることは好ましい。
【0042】
陰極を150℃以上に加熱するのは、150℃以上の温度で水素透過膜としての機能が効果的に作用するからである。また、加熱の上限が200℃なのは、リン酸溶液の沸点が210℃であるので、安全をみて200℃を加熱の上限とすることが適当だからである。
【0043】
上記水素製造装置において、陽極と陰極との間に流れる電流値を制御する電流調整手段をさらに備えることは好ましい。この態様によれば、電気分解時に電解質物質に流す電流を調整でき、それにより生成する水素量を調整することができる。
【0044】
本発明は、水素製造方法として把握することもできる。すなわち、本発明の水素製造方法は、金属水素化物を含んだ水素透過膜で構成される陰極を用いて電解質物質に電流を流し、この電流を流すことで前記電解質物質を電気分解して前記陰極の前記電解質物質に接する面に水素を発生させ、前記陰極の前記電解質物質に接する面と反対側の面から、前記発生させた水素を得ることを特徴とする。
【0045】
上記水素製造方法においても、電解質物質に流す電流の値により水素の発生量を制御することは好ましい。
【0046】
本発明の他の形態は、上記水素の製造技術を利用したアンモニア製造装置に関する。すなわち、本発明のアンモニア製造装置は、電解質物質に接する陽極と、前記電解質物質に接し、金属水素化物を含んだ水素透過膜で構成される陰極と、前記陽極と前記陰極との間に電流を流す電流供給手段と、前記陰極の前記電解質物質に接した面と反対側の表面に担持された触媒材料と、前記触媒材料に窒素を供給する窒素供給手段とを備えていることを特徴とする。
【0047】
以下、上記アンモニア製造装置の原理について説明する。図3は、アンモニアの合成反応の様子を説明するための概念図である。図3には、電解液301としてリン酸水溶液を用い、陰極302(水素透過膜としても機能)として銀とパラジウムの合金膜(Ag−Pd膜と表記)を用い、触媒材料303としてルテニウム金属粒子の層を用いた場合の例が記載されている。
【0048】
この場合、陰極302を透過した原子状水素H(a)は、再結合せずに原子状の吸着状態となり触媒材料303に供給される。陰極302から触媒材料303に供給された原子状水素が容易に再結合しないのは、触媒材料303自体が水素の解離状態を維持させる能力を備えているからである。なお、H(a)は原子状の吸着状態を維持したまま触媒材料303の表面上を移動する。
【0049】
他方において、界面3(305)に空間304側から供給される窒素ガス(N)は、触媒材料303の機能により界面3(305)において解離吸着し、分子状の吸着窒素N(a)となる。この反応は、下記「化3」によって表される。なお、N(a)は、吸着状態にある窒素分子を表す。
【0050】
[化3] N+2site → N(a)
【0051】
触媒材料303の表面に吸着した分子状の窒素N(a)は、触媒材料303が有する活性化機能により解離し、原子状の窒素N(a)となる。すなわち、触媒材料303の触媒機能によって分子状の窒素N(a)は活性化され、2つ原子状窒素N(a)に分解された状態となる。この反応は、下記「化4」によって表される。
【0052】
[化4] N(a) → 2N(a)
【0053】
この触媒材料303の表面に解離吸着した原子状窒素N(a)と、陰極302から供給される原子状水素H(a)との間で会合反応が進み、分子状の吸着アンモニアNH(a)が生成される。この反応は、下記「化5」によって表される。
【0054】
[化5] N(a)+3H(a) → NH(a)+3site
【0055】
この吸着したアンモニアは触媒材料303から脱離し、空間304に放出される。こうして、アンモニア(NH)の合成が行われる。
【0056】
上記アンモニアの合成反応は、陰極302から供給される原子状水素の供給量(供給流量)に依存する。例えば、窒素ガスの供給量を固定して、陰極302を透過する水素の流量を変化させた場合、その変化に応じてアンモニアの合成量も変化する。
【0057】
一方、陰極302を透過する水素の流量は、電気分解時に陰極302に流れる電流値を調整することで制御することができる。したがって、上記の反応によって合成されるアンモニアの単位時間あたりの合成量は、電気分解時に、陰極302に流れる電流の値を調整することで、制御することができる。
【0058】
以下、本発明のアンモニア製造装置がアンモニアの合成をより温和な条件(より低温・低圧な条件)で行うことができる要因について説明する。
【0059】
第1の要因として、触媒材料に原子状水素を直接供給できる点が挙げられる。またこれに関連して、触媒材料に供給される前の段階において水素は原子状になっているので、触媒材料は、水素を原子状水素にするための解離吸着に要する負荷が減少され、そのため大きな解離エネルギーが必要な窒素分子(N)の解離に触媒材料を利用することができる点を挙げることができる。
【0060】
また、他の要因として、上記の触媒材料では水素の吸着解離に対する負荷が低減されているために、通常のバッチ式合成のような水素、窒素共存下において発生する水素被毒の影響を抑えることができる点を挙げることができる。
【0061】
すなわち、触媒材料には既に解離状態にある水素が供給されるので、水素、窒素共存下での合成において、触媒材料への水素の吸着が優先的に進み、触媒の利用効率が低下してしまう所謂水素被毒の影響を抑えることができる点を上記優位な効果を得ることができる要因として挙げることができる。
【0062】
さらに他の要因として、触媒材料が陰極に接しているので、電気分解時に触媒材料が陰極から電子の供給を受け、それにより触媒材料の触媒機能が助長される点を挙げることができる。
【0063】
次に、本発明のアンモニア合成装置がアンモニア合成量の制御性に関して優れている点について説明する。
【0064】
本発明のアンモニア合成装置の動作においては、陰極の触媒材料担持面側からの水素の放出流量を変化させることで、アンモニアの合成速度を制御することができる。一方、水素の放出量は、電気分解時における陽極と陰極との間に流れる電流値を調整することで制御することができる。したがって、電気分解時に陰極に流れる電流の値を調整することで、電気的にアンモニアの合成速度を調整することができる。
【0065】
水素の放出量は、陽極・陰極間に流れる電流値の変化に応答良く反応するので、上記電気的なアンモニアの合成速度の調整は、精密にしかも高い応答性でもって行うことができる。
【0066】
さらに、このアンモニアの合成速度を精密に制御できるが故に、アンモニアの合成効率を追求できる点も本発明の優位性として挙げることができる。すなわち、触媒材料への水素の供給を少なくした場合、水素被毒を抑えることができるが、それではアンモニアの合成効率が低下してしまう。他方で、触媒材料への水素の供給を多くした場合、水素被毒の影響が大きくなるので、窒素分子の吸着が阻害されてやはりアンモニアの合成効率は低下してしまう。このような理由により、触媒材料への水素の供給量には適当な範囲がある。
【0067】
この水素供給量の適当な範囲は、触媒材料の組成や反応温度等にも関係するのであるが、本発明のアンモニア製造装置においては、電気的に水素供給量を正確に制御することが可能であるので、この適当な水素の供給量になるようにすることが容易となる。
【0068】
その他、本発明のアンモニア合成装置の優位性の一つとして、不純物の供給による触媒材料の活性能力の低下が防止される点を挙げることができる。すなわち水素透過膜は、その透過メカニズムから明らかなように、水素のみを選択的に透過するフィルタとしての機能を示すので、触媒材料に、その触媒機能を低下あるいは劣化させる要因となる酸素や水蒸気が供給されてしまうことが防止される。
【0069】
また、本発明のアンモニア製造装置は、直接活性状態の水素を生成し、それを直接触媒材料に供給する直接反応であるので、システムがシンプルであり、エネルギーロスのない構成とすることができる。
【0070】
特に本発明のアンモニア製造装置は、水素製造装置における陰極とアンモニア製造装置における水素透過膜を共通の部材により構成した一体構造が実現されるので、構造をシンプルにできる。
【0071】
また本発明のアンモニア製造装置は、水素源として水または水溶液を利用できるので、取り扱いが危険な物質を原料として貯蔵する必要がなく、安全性や取り扱いの容易性の点で有利となる。
【0072】
また本発明のアンモニア製造装置は、別途水素の貯蔵設備や水素発生装置を必要としないので、例えば乗用車の排ガス浄化システムに組み込むアンモニア製造装置としての利用に適したものとなる。
【0073】
本発明は、アンモニア製造方法として把握することもできる。すなわち、本発明のアンモニア製造方法は、金属水素化物を含んだ水素原子透過膜で構成される陰極を用いて電解質物質に電流を流し、この電流を流すことで前記電解質物質を電気分解して前記陰極の前記電解質物質に接する表面に水素を発生させ、前記陰極の前記電解質物質に接触した面と反対側の面上に担持した触媒材料に窒素を供給し、前記陰極を透過した水素と、前記触媒材料に供給された窒素とを反応させてアンモニアを合成することを特徴とする。
【0074】
以上説明した発明の構成において、触媒材料としては、ルテニウム、オスニウム、鉄等が挙げられる。水素透過膜の表面に担持(保持)される触媒は、ルテニウム等の金属微粒子の状態、またはこれら金属の2元系合金微粒子の状態とすることが好ましい。こうすることで、触媒材料の表面積を大きく確保することができ、窒素分子に対する解離活性化作用を高くすることができる。
【0075】
水素透過膜表面への触媒の担持方法は、触媒金属の金属塩水溶液を使用し、電気化学的に水素透過膜の表面に触媒材料を析出させる方法が望ましい。
【0076】
水素透過膜への触媒の担持方法としては、導電性を有するカーボン等の粒子材料に、触媒材料であるルテニウムやオスニウム等の金属粒子を分散状態で担持させ、そしてそれをスラリー状にし、あるいはバインダーと混合して水素透過膜上に塗布する方法を用いても良い。または、導電性を有するコバルト−モリブデン合金窒化物を同様の塗布手法により水素透過膜面に担持することも可能である。
【発明の効果】
【0077】
本発明の水素製造装置においては、水素原子透過膜を電気分解のための陰極として機能させるのと同時に、原子状水素を取り出すための部材としても機能させることで、高活性な原子状水素を効果的に得ることができる。
【0078】
また、本発明のアンモニア製造装置においては、上述した水素製造装置の仕組みに加えて、さらに水素原子透過膜の他方の面に窒素ガスを解離吸着し原子状窒素を生成するための触媒材料を担持させた構造を採用している。こうすることで、上述した効果的な水素原子の供給メカニズムにより原子状水素が触媒に直接供給され、アンモニアの合成効率を高めることができる。
【0079】
この仕組みによれば、触媒を原子状窒素の生成に効率良く使用することができ、また原子状の水素を効果的に供給することができるので、より温和な条件(より低温・低圧)において高いアンモニアの合成効率を得ることができる。
【0080】
また、電気分解の効率を制御することで、水素の供給量を応答性よく制御することができるので、アンモニアの合成量を電気的に制御することができる。この制御は、配管を流れる原料ガスの流量を調整するような必然的に時間遅れが生じ易い方法に比較して、高い応答性でもって行うことができる。
【0081】
また、本発明においては、水素透過膜を陰極とした電気分解を行うことで、高純度で高活性な水素を直接得、この水素を触媒材料で活性化させた窒素と反応させる方法を採用している。このため、生成した水素を別途精製し、高純度化するような仕組みが不要であり、また水素の生成とアンモニアの合成が一体の構成において連続的にしかも直接的に行うことができる。また、構成をシンプル化でき、また動作に必要なエネルギーの利用効率を高くすることができる。
【0082】
このように本発明によれば、水素と窒素とを原料としたアンモニアの合成技術において、より温和な合成条件を追求できる技術を提供することができる。さらに本発明によれば、アンモニアの合成速度の調整をより精密にそして応答性よく行うことができる。さらに本発明によれば、水素と窒素とを原料としたアンモニアの合成技術に利用するのに好適な水素の供給手段を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
(実施形態の構成)
図1は、本発明を利用したアンモニア製造装置の一例を示す概念図である。図1に示すアンモニア製造装置は、反応管101、触媒被覆102、白金線103、反応容器104、シーリング材105、電源106、原料ガス供給管107、排気管108、電気炉109および加熱ヒータ110を備えている。
【0084】
反応管101は、パラジウムと銀の合金によって構成される金属管であり、一端が閉じた構造を有している。パラジウムは、水素を吸収し貯蔵する機能(吸蔵機能)を有する金属材料である。反応管101は、電気分解を行うための陰極および水素透過膜として機能し、内部に電解液であるリン酸溶液111が満たされている。触媒被覆102は、反応管101の閉じられた端部付近の表面に微粒子のルテニウム金属を被覆したものである。
【0085】
白金線103は、陽極として機能する電極である。反応容器104は、内部に反応管101が収納され、その内部においてアンモニアが合成される容器である。シーリング材105は、反応管105および反応容器104の開放部を外部から遮断するシール部材である。
【0086】
電源106は、陽極として機能する白金線103に正の電圧を加え、陰極として機能する反応管101に白金線103に対して負の電圧を加える機能を有する。この機能により、反応管101を陰極として機能させることができる。また、電源106は、電解液を介して白金線103と反応管101との間に流れる電流値を制御することが可能な機能を有する。
【0087】
原料ガス供給管107は、アンモニアの原料となる窒素ガス(N)を反応容器104内に導入するための配管である。排気管108は、反応容器104内において合成されたアンモニア(NH)ガスを反応容器104外に排出するための配管である。排気管108からは、アンモニアガス以外に未反応の窒素ガスと水素ガスも排出される。
【0088】
電気炉109は、内部に備えた加熱ヒータ110の作用によって、反応容器104を加熱、保温する機能を有する。本実施形態においては、電気炉109は、触媒被覆102を必要とする温度に加熱、保持するために利用される。
【0089】
(実施形態の動作)
まず、反応管101内に電解液111を満たした状態において、加熱ヒータ110に図示しないヒータ電源からヒータ電力を供給し、触媒被覆102を所定の温度に加熱する。触媒被覆102の温度の設定は、熱電対等によりその温度を検出し、その温度検出値を監視しながらヒータ電力を調整して行えばよい。
【0090】
次に電源106を動作させ、反応管101に対して白金線103の電位が正になる状態で電解液111に所定の電流値の電流を流す。この際、電源106に備えた図示しない電流検出手段により、白金線103と反応管101との間に流れる電流をモニタし、その電流値が所定の値になるように、電源106の出力を制御する。
【0091】
そして、原料ガス供給管107から窒素ガス(N)を反応容器104内に所定の流量で流し、アンモニアの合成反応を開始する。アンモニアの供給流量の制御は、図示しない流量制御装置を用いて行う。
【0092】
以下、アンモニアが合成される仕組みを説明する。白金線103を正の電位とし、反応管101を負の電位として、両者間に存在する電解液111に電流を流すと、電解液111が電気分解される。この電気分解により、陰極である反応管101の内側表面(電解液111に接触している表面)に水素が生成される。
【0093】
この水素は、水素に対するパラジウムの吸蔵作用により、反応管101を構成する部材中に吸収され、貯蔵されてゆく。この吸蔵作用がある程度進むと、パラジウムの水素吸蔵能力が飽和した段階に達する。
【0094】
水素の吸蔵能力が飽和しても、白金線103と反応管101との間に流す電流をそのまま維持すれば、電気分解は引き続き進行するので、水素は引き続き生成され、反応管101の内面に引き寄せられる。その結果、反応管101の内面における水素の吸収に対応した反応管101の外面(電解液111に接触する面と反対側の面)からの水素の放出が発生する。こうして、電解液111の電気分解によって生じた水素が反応管101を透過する現象が観察される。
【0095】
水素は原子状の状態でパラジウムに捕獲されるので、放出も原子状の水素の放出となる。つまり、反応管101の内部で行われる電気分解により生じた水素が原子状の水素として反応管101を透過する現象が発生する。
【0096】
反応管101先端の外表面には、ルテニウムからなる触媒被覆102が設けられており、この部分において反応管101を内側から透過した原子状の水素は触媒被覆102に供給される。つまり、この構造においては、アンモニア合成触媒被覆102に原子状の水素が直接供給される。
【0097】
他方で、反応容器104内には窒素ガスが供給されているので、この窒素ガスが触媒被覆102の外側表面に接触し、吸着解離され、原子状の窒素が得られる。そして、この原子状の窒素と、前述した反応管101を透過してきた原子状の水素(H)とが反応し、アンモニア(NH)が合成される。
【0098】
本実施形態においては、反応容器104内を加圧状態(大気圧よりも大きな圧力)にする必要はなく、常圧でのアンモニアの合成が可能である。しかしながら、合成効率を高めるために反応容器104内を加圧することも可能である。
【0099】
(実施形態の製造方法)
以下、図1に示すアンモニア製造装置における反応管101の具体的な製造方法の一例を説明する。まず、銀の含有率が25原子%のパラジウムと銀との合金によって構成されるパイプを用意した。パイプの寸法は、長さ200mm、外径5mm、内径4mmとした。パイプを用意したら、同じ材料で構成される直径5mmの円形形状の部材を用意し、これをパイプ一端に溶接した。こうして、パラジウムと銀との合金で構成され、一端が閉じたパイプ構造体を有する反応管101を得た。
【0100】
次に濃度が0.05mmolの塩化ルテニウム水溶液を用意し、この水溶液に前述のパイプ構造体の溶接した方の端を浸した状態とした。この際、塩化ルテニウム水溶液にパイプ構造体は、その先端から50mmの部分を浸した状態とした。
【0101】
この状態において、パイプ構造体を陽極、白金を陰極として、両電極間に直流電位を印可することで、パイプ構造体の表面にルテニウム金属を電気的に析出させた。析出したルテニウム金属の重量は、析出処理の前後における重量変化より、0.5mgと見積もられた。
【0102】
こうして、一端が塞がれ、その部分にルテニウムを析出することで形成した触媒被覆102を備えた反応管101を得た。
【0103】
上述した方法によって得た触媒被覆102の構造の細部を観察するために、反応管101と同じ材質の平板を用意し、その表面に触媒被覆102と同じルテニウムの析出層を形成したものを作製した。
【0104】
この平板状の試料におけるルテニウムの析出層をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察したところ、概略200〜400nmの粒径を有する粒子が多数間隔をおいて析出し、さらにこの粒子間の隙間を無数の微粒子(粒径はおよそ数十nm)が埋めた層状の構造が確認された。このような無数の粒子が層状になった構造は、触媒材料の実質的な表面積を大きくすることができるので好ましい。
【0105】
(実施形態の動作試験結果)
上述した製造条件によって製造した反応管101を用いた実証試験の結果について説明する。この試験では、加熱ヒータ110に流す電力を調整して触媒被覆102の温度を150℃に保ち、この温度をアンモニア合成における合成反応温度とした。この試験では、電源106を制御することで、電解液111に流れる電流の総量を20mA〜55mAの間において段階的に変化させ、また反応時間を85分〜262分の間で段階的に変化させた。また、反応容器104内は特に加圧せず、常圧状態としてアンモニアの合成を行った。
【0106】
またアンモニアの合成速度(合成量)は、1時間に触媒材料(ルテニウム)の単位重量(1g)あたりにおいて生成する量(単位:μmol/h・g)として評価した。このアンモニアの合成速度は、得られたアンモニアを希硫酸にバブリングすることで捕集し、この希硫酸のpHの相対的な値の違いから算出した。試験結果を下記表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
本発明者らの実験によれば、前述した特許文献2に記載された方法を用いた場合、必要な圧力が常圧の1.5倍、反応温度が150℃の条件においてアンモニアの合成速度は約3(μmol/h・g)であった。これに対して、本実施形態においては、最低でも300(μmol/h・g)近くの合成量が得られており、特許文献2に記載されている技術に比較して飛躍的に合成量を増加させることができた。
【0109】
このように本発明を採用することで、150℃・常圧という温和な条件において、十分なアンモニアの合成量を確保できる。また、表1から分かるように、電解液111に流す電流の値に応じて、アンモニアの単位時間あたりの合成量を大きく増減できることが分かる。つまり、陽極―陰極間を流れる電流値を調整することでアンモニアの合成速度を制御できることが分かる。
【0110】
(他の実施形態)
酸性の電解質水溶液を用い、陰極(図1の場合は反応管101)として銀や銅を含む材料を用いた場合における電解質水溶液への銀や銅の成分の溶出を防止するために、陰極表面にパラジウム等の貴金属をコーティングすることは好ましい。この貴金属のコーティングは、蒸着や電気メッキによって行うことができる。こうすることで、陰極の耐久性を向上させることができる。
【0111】
また、陰極の電解液に接する表面に、金属微粒子または糸状粒子を析出させ、表面積を増大させてもよい。こうすることで、水素の透過速度を向上させることができ、同じ投入電力においてアンモニアの合成速度を高めることができる。析出させる金属としては、パララジウム等を選択することができる。
【0112】
次に陰極の表面に触媒を担持させる方法のバリエーションについて説明する。陰極表面にルテニウム金属系の触媒材料を担持させる方法として、ルテニウム―銅の金属塩混合溶液を利用して、ルテニウム―銅の2元系の合金を析出させる方法を挙げることができる。この場合、析出した触媒材料に対して、酸処理や逆電解による処理を加えて微少な凹凸構造を付与し、表面積を大きくすることは好ましい。
【0113】
また、陰極表面に触媒を担持させる方法として、パルス電界あるいは交流電界を用いた微粒子金属の析出を利用することもできる。また、触媒材料としてルテニウム―カーボン系の触媒を利用することもできる。また、導電性を有する金属化合物(例えばコバルト−モリブデン合金窒化物)を担体とし、そこにルテニウム金属を担持させたものを触媒材料として利用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、水素を発生させる技術に利用することができる。また本発明は、水素を必要とするシステムにおける水素の供給源として利用することができる。また本発明は、水素と窒素とを用いてアンモニアを合成する技術に利用することができる。また本発明を利用したアンモニア製造装置は、温和な条件で高効率なアンモニアの合成が行えるので、車両に搭載し、アンモニアを用いてエンジンの排気ガスから窒素酸化物を除去する技術に利用することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明を利用したアンモニア合成装置の一例を示す概念図である。
【図2】水素透過膜を水素が透過する様子を説明するための概念図である。
【図3】アンモニアの合成反応の様子を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0116】
101…反応管、102…触媒被覆、103…白金線、104…反応容器、105…シーリング材、106…電源、107…原料ガス供給管、108…排気管、109…電気炉、110…加熱ヒータ、111…電解質溶液、201…リン酸水溶液、202…陰極(Ag−Pd膜)、203…水素が放出される空間、204…界面1(陰極のリン酸水溶液側の表面)、205…界面2(陰極の水素が放出される空間側の表面)、301…リン酸水溶液、302…陰極(Ag−Pd膜)、303…触媒材料、304…窒素ガス(N)が供給される空間、305…界面3(触媒材料の表面)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質物質に接する陽極と、
前記電解質物質に接し、金属水素化物を含む水素透過膜で構成される陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に電流を流す電流供給手段と
を備え、
前記電解質物質の電気分解によって生じた水素が前記陰極における前記電解質物質に接する面の反対側の面から得られることを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
前記金属水素化物がパラジウム系合金であることを特徴とする請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記電解質物質は、酸性の電解質溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記酸性の電解質溶液は、リン酸溶液であることを特徴とする請求項3に記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記陰極の温度を150℃〜200℃に加熱する加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の水素製造装置。
【請求項6】
前記陽極と前記陰極との間に流れる電流の値を制御する電流調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水素製造装置。
【請求項7】
金属水素化物を含む水素透過膜で構成される陰極を用いて電解質物質に電流を流し、
前記電流を流すことで前記電解質物質を電気分解して前記陰極の前記電解質物質に接する表面に水素を発生させ、
前記陰極の前記電解質物質に接する面と反対側の面から、前記発生させた水素を得ることを特徴とする水素製造方法。
【請求項8】
前記電流により前記水素の発生量を制御することを特徴とする請求項7に記載の水素製造方法。
【請求項9】
電解質物質に接する陽極と、
前記電解質物質に接し、金属水素化物を含む水素透過膜で構成される陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に電流を流す電流供給手段と、
前記陰極の前記電解質物質に接した面と反対側の表面に担持された触媒材料と、
前記触媒材料に窒素を供給する窒素供給手段と
を備えていることを特徴とするアンモニア製造装置。
【請求項10】
前記金属水素化物がパラジウム系合金であることを特徴とする請求項9に記載のアンモニア製造装置。
【請求項11】
前記電解質物質は、酸性の電解質溶液であることを特徴とする請求項9または10に記載のアンモニア製造装置。
【請求項12】
前記酸性の電解質溶液は、リン酸溶液であることを特徴とする請求項11に記載のアンモニア製造装置。
【請求項13】
前記陰極の温度を150℃〜200℃に加熱する加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載のアンモニア製造装置。
【請求項14】
前記陽極と前記陰極との間に流れる電流値を制御する電流調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載のアンモニア製造装置。
【請求項15】
金属水素化物を含む水素原子透過膜で構成される陰極を用いて電解質物質に電流を流し、
前記電流を流すことで前記電解質物質を電気分解して前記陰極の前記電解質物質に接する表面に水素を発生させ、
前記陰極の前記電解質物質に接触した面と反対側の面上に担持した触媒材料に窒素を供給し、
前記陰極を透過した水素と、前記触媒材料に供給された窒素とを反応させてアンモニアを合成することを特徴とするアンモニア製造方法。
【請求項16】
前記電流の値によりアンモニアの合成量を制御することを特徴とする請求項15に記載のアンモニア製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−45652(P2006−45652A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231890(P2004−231890)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(300011416)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】