説明

水素製造装置

【課題】 使用済核燃料の崩壊熱を有効に活用することができる水素製造装置を提供する。
【解決手段】 熱回収手段10と、熱供給手段15と、水素生成手段20Aとを備え、熱回収手段10と熱供給手段15とは、流路11(11a,11b)により接続されている。熱回収手段10には、その内部に使用済核燃料が収められた容器2が設けられ、この使用済核燃料から発せられる崩壊熱が熱媒体Sに回収される。熱回収された熱媒体Sは、流路11bを介して熱供給手段15に送られ、反応部21に熱を供給するようになっている。反応部21では、原料供給部22から原料が供給されて、熱媒体Sが有する熱を反応時の熱源として水素が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば原子力発電所から排出される使用済核燃料の崩壊熱を利用して水素を製造する水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所において発生する使用済核燃料は、再処理されてウランやプルトニウム等のリサイクル可能な核燃料物質が前記使用済核燃料から回収される。このリサイクル可能な核燃料物質を回収する前の使用済核燃料は、崩壊熱を放出するため、再処理されるまでの間、使用済核燃料を燃料棒に収めた状態のままで、例えば原子力発電所に設けられた専用の貯蔵プールや中間貯蔵施設などで冷却しながら保管される。保管期間経過後、燃料棒から取り出された使用済核燃料は、再処理されてウランやプルトニウム等が回収されて残りはガラス固化されて、さらに長期間地上で保管された後に地層処分される。
【0003】
従来、このような使用済核燃料から放出される崩壊熱は、有効活用されずにそのまま外部に放出されるだけであった。そこで、資源保護や省エネルギーなどを図る観点から、使用済核燃料から放出される崩壊熱を有効活用するための技術が種々提案されており、例えば、特許文献1ないし3では、使用済核燃料の熱を利用して発電を行う技術が提案されている。
【0004】
また、近年、環境保護の観点から燃料電池自動車など水素を燃料とする燃料電池の開発や普及が進められている。このため、今後水素の需要が一層増えることが予想され、水素を安定して供給することが望まれている。水素を製造する方法としては、天然ガスなどの化石燃料の燃焼熱を反応時の熱源として利用することが一般に行われている。しかし、化石燃料の燃焼熱を熱源にすると、水素とともに地球温暖化現象の原因となる二酸化炭素を大量に発生するという問題を生じる。そこで、二酸化炭素を発生させないで水素を生成する技術として、例えば特許文献4〜6に記載のものが提案されている。
【特許文献1】特開2000−221297号公報(段落0035〜0041、図1)
【特許文献2】特開2004−109013号公報(段落0029,0030)
【特許文献3】特開平5−150099号公報(段落0007)
【特許文献4】特開2002−241101号公報(段落0009〜0010、図1)
【特許文献5】特開2000−327301号公報(段落0004,0005、図1)
【特許文献6】特開2003−54902号公報(段落0010〜0013)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1〜3に記載のように使用済核燃料の崩壊熱を利用して発電するシステムでは、崩壊熱の放出を制御することが困難であり、しかも電気は貯蔵可能な媒体ではないため、電力が必要なときに発電を行うと発電が不要なときに熱が無駄に放出され、崩壊熱を有効に活用することができなくなる。
【0006】
また、特許文献4に記載の原子炉の熱を直接に利用するシステムでは、原子炉の熱を回収する熱媒体が特定の温度に設定されてしまうため、水素生成時に必要な熱源を反応形態に適した温度に設定することが困難になる。また、特許文献4ないし6は、いずれも原子炉を利用して水素を生成する技術については提案されているが、使用済核燃料の崩壊熱を有効活用する技術については何ら検討されていない。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、使用済核燃料などから放出される崩壊熱を有効に活用することができ、また水素製造時の反応形態に適した温度に調整することが可能な水素製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、使用済核燃料または崩壊熱を発する核廃棄物から放出される熱を所定の熱媒体を介して回収する熱回収手段と、前記熱回収手段で回収された熱を利用して水素を生成する水素生成手段と、前記水素生成手段に前記熱回収手段で回収された熱を供給する熱供給手段と、前記熱回収手段と前記熱供給手段との間で前記熱媒体を循環させる流路とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用済核燃料から発せられる崩壊熱を利用して貯蔵可能な水素を製造することで崩壊熱を有効に活用できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態の水素製造装置を示す全体構成図、図2は、熱回収手段の内部構造を示す断面図である。なお、以下の各実施形態では、使用済核燃料の崩壊熱を利用して水素を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示すように、この水素製造装置1Aは、熱回収手段10と、流路11(第1の流路11a,第2の流路11b)と、循環ポンプ12と、熱供給手段15と、水素生成手段20Aとを備えて構成されている。
【0012】
図2に示すように、熱回収手段10は、筒型の収納部10aを有し、この収納部10a内に複数の容器2を収めたものである。容器2は、金属材料で形成された筒体3を有し、この筒体3内に使用済核燃料Wを収めて密閉したものである。本実施形態での使用済核燃料Wとは、所定期間発電を行った後に原子炉から取り出された使用済核燃料の集合体を構成する各燃料棒に収められたペレットを意味している。なお、筒体3は、使用済核燃料Wから熱を取り出し易い形状および材質となっている。ここで、熱を取り出しやすい形状とは、例えば筒体3が細長いなど、単位体積当りの表面積が大きな形状である。熱を取り出しやすい形状にすることにより、熱回収手段10をコンパクトにしつつ、大きな熱を水素生成手段20Aを構成する後記の反応部21に供給することができるようになる。また、容器2としては、原子炉から取り出した使用済核燃料Wが収められた燃料棒であってもよい。
【0013】
図1に示すように、熱供給手段15は、例えば金属製で、反応部21が収められる筒型の形状をしている。熱回収手段10と熱供給手段15とは、その下部同士が、加熱前の流体が流れる第1の流路11aで接続されている。また、熱回収手段10と熱供給手段15とは、その上部同士が、加熱後の流体が流れる第2の流路11bで接続されている。第1の流路11aの途中には循環ポンプ12が設けられており、熱回収手段10で容器2が発する熱により加熱された熱媒体Sは、第2の流路11bを経由して熱供給手段15に供給され、熱供給手段15で反応部21に熱を供給した熱媒体Sは、第1の流路11aを経由して熱回収手段10に戻るようになっている。つまり、熱媒体Sは、第1の流路11aと第2の流路11bを経由して、熱回収手段10と熱供給手段15とを循環するようになっている。なお、熱回収手段10、流路11、及び熱供給手段15は、熱を有効利用できるように、それぞれ断熱材で保温されている。また、熱供給手段15は、筒型に限定されるものではなく、反応部に熱を供給できるものであれば特に限定されるものではない。
本実施形態では、循環ポンプ12は、第1の流路11a側に設けられているが、第2の流路11b側に設けられていてもよい。
【0014】
なお、使用済核燃料Wから発せられる熱は、使用済核燃料Wに含まれる核分裂生成物質(FP;Fission Products)が崩壊して軽い元素に変換される際に発生するものである。
【0015】
本実施形態では、図2に示すように、熱回収手段10は、複数の容器2が互いに所定の間隔をあけた状態で収納部10a内部の空間内に配置されている。図2では、縦長の容器2が熱媒体Sの流れに沿う方向に置かれているが、容器2が流れに直角な方向に置かれていてもよい。本実施形態では、収納部10a内に容器2を複数配置しているので、各容器2と熱媒体Sとの接触面積を広く設定できるので、使用済核燃料Wの崩壊熱の回収率を高めることができる。
【0016】
熱媒体Sとしては、熱の回収が可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス、水、炭酸ガスなどから選択することができる。なお、熱媒体Sは、原子炉の冷却材と同様、放射化されないこと、比熱が大きいこと、取扱が容易なことなどの特性があることが望ましい。
【0017】
図1に示すように、水素生成手段20Aは、反応部21と、原料供給部22と、水素回収部23とで構成されている。
【0018】
反応部21は、原料供給部22から供給された原料を用いて水素を製造する装置であり、反応部21での反応形態としては、熱の存在下で水素生成反応が進行するものであれば熱に限定されるものではないが、熱分解法、改質法、熱化学法のうちの1種の方法から選択することができる。熱分解法としては、例えば、水の熱分解法、メタンの熱分解法、メタノールの熱分解法などから選択できる。改質法としては、例えば、天然ガスの水蒸気改質法、石灰ガス化法、メタノールの水蒸気改質法、天然ガスのCO2改質法などから選択できる。熱化学法としては、例えば、IS(Iodine−Sulfur)プロセスなどから選択できる。なお、熱分解法、改質法および熱化学法は、いずれも公知の原理である。
【0019】
例えば、改質法の一例として、天然ガスの水蒸気改質法について述べると、この方法は、メタン(CH4)と水(H2O)を原料供給部22からそれぞれ供給して、所定の温度の熱を与えながら互いに反応させることにより水素(H2)を生成する方法である。ただし、この反応形態を利用すると二酸化炭素を発生することになるが、水素反応時に必要な熱源は、使用済核燃料Wから放出される崩壊熱を利用するので、化石燃料の燃焼熱を利用する場合と比べて二酸化炭素の排出量を少なくできる。よって、地球温暖化現象の原因となる二酸化炭素の発生量を低く抑えた状態で水素を製造できるようになる。
【0020】
また、熱化学法の一例として、ISプロセスについて述べると、この方法は、水を原料供給部22から供給し、ブンゼン反応、ヨウ化水素分解反応および硫酸分解反応を組み合わせて所定の熱を与えながら反応させることにより、水素を生成する方法である。この反応形態を利用すると、二酸化炭素を排出せずに水素を製造することできるようになる。
【0021】
なお、本実施形態では、前記したすべての反応形態を常に選択することができるわけではなく、熱回収手段10により設定可能な温度に応じて反応部21での反応形態を選択する必要がある。つまり、熱回収手段10で設定可能な温度が低い場合には、それに合った反応形態を選択する必要があり、また熱回収手段10で設定可能な温度を高く設定できる場合には、高温の熱源が必要な反応形態を選択することができる。
【0022】
反応部21では、水素のみが捕集されて水素回収部23に集められる。この水素回収部23は、例えば高圧ボンベや大型のタンクであり、これらボンベやタンクに水素を回収することにより水素を長期間保管しておくことができる。このように、本実施形態では、使用済核燃料Wからの崩壊熱を利用して貯蔵可能な水素を製造できるので、崩壊熱を無駄に外部に排出することがなくなり、崩壊熱の有効利用が可能になる。また、崩壊熱は、長期間連続して排出されるので、水素を安定的に連続供給できるようになる。なお、反応形態によって異なるが、前記したように水素生成時の副生成物として二酸化炭素が生成される反応形態の場合には、二酸化炭素を処理する装置(図示せず)を設けて二酸化炭素を大気中に放出しない処理をすることが好ましい。
【0023】
次に、本実施形態の水素製造装置1Aにおいて、水素が生産されるまでの流れについて説明する。
循環ポンプ12を作動すると熱媒体Sが熱回収手段10と熱供給手段15との間で循環を開始し、使用済核燃料Wから筒体3を通して放出される崩壊熱は、熱媒体Sによって回収される。崩壊熱によって加熱され高温状態になった熱媒体Sは、第2の流路11bを通って熱供給手段15に送られる。熱供給手段15は、詳しく図示していないが、反応部21に対して水素生成反応時に必要な熱を供給できる構成となっている。反応部21では、熱供給手段15から熱を受け取り、この熱を反応時の熱源として利用して、水素が生成される。そして、熱供給手段15から排出された熱媒体Sは、反応部21で熱の一部が吸収されているので、熱供給手段15に導入する前よりも低い温度で第1の流路11aから排出されて熱回収手段10に戻る。そして、熱媒体Sは、容器2から発せられる崩壊熱によって再び加熱されて、第2の流路11bを介して反応部21へ送られる。このようにして熱媒体Sは、熱回収手段10と熱供給手段15との間を循環して、反応部21に連続的に熱を供給できるようになっている。
【0024】
また、本実施形態で調整手段として機能する循環ポンプ12は、出力の調整が可能で、熱回収手段10と熱供給手段15との間を循環する熱媒体Sの流量を制御できるようになっている。これにより、反応部21に供給可能な温度を調整できるようになり、反応部21での反応形態に適した温度に設定できるようになる。
【0025】
なお、前記のように熱媒体Sの流量を変化させて温度を調整できるようにしたとしても、熱が無駄に外部に放出されることはないので、熱の有効利用が損なわれることがない。
【0026】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態の水素製造装置を示す全体構成図である。
この実施形態の水素製造装置1Bは、使用済核燃料Wから放出される崩壊熱が有する熱エネルギーを電気エネルギーに変換して水の電気分解法により水素を製造する水素生成手段20Bを搭載している。その他の構成については、第1実施形態と同様であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。なお、第3実施形態以降の各実施形態についても同様とする。
【0027】
水素生成手段20Bは、熱電変換部25と、電気分解部26とを備えている。熱電変換部25は、熱電素子を有し、この熱電素子は、前記熱供給手段15を介して熱エネルギーを電気エネルギーに直接に変換している。なお、熱電素子としては、熱エネルギーを電気エネルギーに変換できるものであれば特に限定されるものではなく、従来から一般的に使用されている素子から選択することができる。
【0028】
電気分解部26は、水の電気分解法により水素を製造できる装置により構成されている。この水の電気分解法としては、例えば、アルカリ水電解法、高温・高圧アルカリ水電解法、固体高分子電解質水電解法、および高温水蒸気電解法のうちのいずれか1種から選択することができる。なお、いずれの電気分解法も公知の原理である。
【0029】
例えば、電気分解法の一例として、固体高分子電解質水電解法について述べると、この方法は、イオン交換膜を隔膜および電解質として用い、その両側に電極を接合し、純水を電解して水素を生成する方法である。この方法によれば、メンテナンスが容易であるとともに、高純度の水素を高い効率で得ることができるようになる。
【0030】
第2実施形態の水素製造装置1Bでは、使用済核燃料Wの崩壊熱を回収した熱媒体Sは、熱電変換部25によって熱エネルギーが電気エネルギーに直接に変換される。熱電変換部25と接続された電気分解部26は、原料供給部22から供給された水を、熱電変換部25から供給された電気によって電気分解する。この水の電気分解により、電気分解部26に設けられた図示しない電極の陰極側から水素が生成され陽極側から酸素が生成される。
【0031】
第2実施形態では、電気エネルギーを利用して水素を生成するので、電気分解部26での電気分解法としてアルカリ水電解法や固体高分子電解質水電解法を利用すると、比較的に高温度の熱源が不要になるので、熱媒体Sを高温度に設定することが困難な原子炉から取り出される使用済核燃料を利用できるようになる。
【0032】
(第3実施形態)
図4は、第3実施形態の水素製造装置を示す全体構成図である。
この水素製造装置1Cは、前記水素製造装置1Aの反応部21の後段すなわち第1の流路11aにタービン発電部31を備える構成である。このタービン発電部31は、第1の流路11aの途中に設けられ、タービンと発電機とボイラ(いずれも図示せず)などで構成されている。タービンは、例えば蒸気タービンであり、ボイラによって熱媒体Sの熱を利用して水を加熱して蒸気を生成し、この蒸気によって回転駆動される。このときの蒸気タービンの回転トルクによって発電機が回転駆動されて電気が生成される。
【0033】
図4に示す実施形態では、タービン発電部31を搭載することにより、水素の製造とともに発電を行うことができるようになり、使用済核燃料Wの崩壊熱を損なうことなく利用範囲を広げることができる。また、タービン発電部31を反応部21の後段に設けることにより、熱回収手段10から熱回収した高温の熱媒体Sを直接に反応部21に導入することができるので、水素生成反応においてより高温の熱が必要な反応形態の反応部21に好適に利用できる。
【0034】
(第4実施形態)
図5は、第4実施形態の水素製造装置を示す全体構成図である。
この水素製造装置1Dは、タービン発電部32を反応部21の前段すなわち第2の流路11bに設けた構成である。このタービン発電部32は、前記タービン発電部31と同じ構成であり、タービンと発電機とボイラなどで構成されている。
【0035】
図5に示す実施形態では、タービン発電部32を反応部21の前段に設けることにより、熱回収手段10で熱回収した高温の熱媒体Sの熱がタービン発電部32によって奪われてより低い温度の熱媒体Sが反応部21に導入される。よって、低めの温度の熱源で水素を生成する反応形態を有する反応部21に好適に利用できる。
【0036】
第3および第4実施形態に示すように、本実施形態では、タービン発電部31,32を設けることにより、前記した実施形態のように熱媒体Sの流量を調整しなくても反応部21に与える熱の温度を制御できるようになる。その結果、反応部21に導入する熱の温度を制御する機構を設ける必要がないので、水素製造装置1C,1Dの構成を簡略化することができる。
【0037】
また、本実施形態において、第3および第4実施形態に示すように、タービン発電部31,32を設けて発電する場合、反応部21での反応において例えば電気分解を組み合わせると、反応部21における水素の生産効率を上げることができる場合があり、また反応部21で必要な温度を下げることができる可能性がある。また、反応部21で必要な温度を下げることができると、反応部21を構成する材料として高コストな材料を使用する必要がなくなり、また反応部21を構成する装置の劣化を抑制することができる。
【0038】
また、使用済核燃料Wの崩壊熱のみでは熱媒体Sを反応部21に必要な温度まで加熱できない場合に、タービン発電部31の電力を併用して熱媒体Sを反応部21に必要な温度まで上昇させるようにしてもよい。すなわち、本実施形態では、使用する水素製造方式における要求熱量に応じて適宜構成を変えることができる。
【0039】
(第5実施形態)
図6は、第5実施形態の水素製造装置を示す全体構成図である。
この水素製造装置1Eは、第1実施形態の熱回収手段10と熱供給手段15との間に中間熱交換器40を設けたものである。中間熱交換器40は、熱交換部40a及び熱交換部40bと、流路41(第1の流路41a,第2の流路41b,第3の流路41c,第4の流路41d)とを有している。熱回収手段10と熱交換部40aとは、下部同士が、加熱前の熱媒体Sが流れる第1の流路41aで接続され、上部同士が、加熱後の熱媒体Sが流れる第2の流路41bで接続されている。また、熱交換部40bと熱供給手段15とは、下部同士が、熱交換前の前記熱媒体Sとは異なる熱媒体Saが流れる第3の流路41cで接続され、上部同士が、熱交換後の熱媒体Saが流れる第4の流路41dで接続されている。また、第3の流路41cの途中には、循環ポンプ13が設けられており、中間熱交換器40で熱交換された熱媒体Saは、第4の流路41dを経由して熱供給手段15に供給され、熱供給手段15で反応部21に熱を供給した熱媒体Saは、第3の流路41cを経由して熱交換部40bに戻るようになっている。
【0040】
なお、中間熱交換器40では、熱媒体Sと熱媒体Saとが互いに交じり合わないようになっている。また、循環ポンプ13は、前記した循環ポンプ12と同様な出力調整可能な機構が設けられて、熱媒体Saの流量(流速)を変化できるものでもよい。
【0041】
第5実施形態では、使用済核燃料Wから発する崩壊熱によって加熱され、高温状態となった熱媒体Sは、第2の流路41bを通って中間熱交換器40の熱交換部40aに送られる。そして、中間熱交換器40では、熱媒体Sが有する熱が熱交換部40b内を流れる熱媒体Saに伝達されて、熱媒体Saが高温状態となる。高温の熱媒体Saは、循環ポンプ13の動力によって第4の流路41dを通って熱供給手段15に送られる。反応部21では、熱媒体Saが有する熱を熱源として水素生成が行われる。そして、熱供給手段15から排出された熱媒体Saは、第3の流路41cを通って熱交換部40bに戻り、熱交換部40aから再び熱を受け取る。
【0042】
第5実施形態のように中間熱交換器40を設けることにより、放射性物質に汚染された熱媒体Sが直接に反応部21側に供給されることがないので、より安全なシステムとすることができる。
【0043】
なお、本発明は、前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変更することができる。例えば、熱源としては、原子炉から取り出した使用済核燃料に限定されるものではなく、使用済核燃料を再処理した後に残るいわゆる高レベル放射性廃棄物と称される核廃棄物であってもよい。または、それ以外の崩壊熱を放出する使用後の核廃棄物であってもよい。
【0044】
また、第3および第4実施形態において、タービン発電部31,32を反応部21の後段と前段に搭載したものについて説明したが、第2実施形態の熱電変換部25の後段や前段にタービン発電部を搭載する構成であってもよい。また、熱回収手段10と熱電変換部25との間に中間熱交換器を設ける構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施形態の水素製造装置を示す全体構成図である。
【図2】熱回収手段の内部構造を示す断面図である。
【図3】第2実施形態の水素製造装置を示す全体構成図である。
【図4】第3実施形態の水素製造装置を示す全体構成図である。
【図5】第4実施形態の水素製造装置を示す全体構成図である。
【図6】第5実施形態の水素製造装置を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0046】
1A〜1E 水素製造装置
2 容器
10 熱回収手段
15 熱供給手段
11a 第1の流路
11b 第2の流路
12,13 循環ポンプ(調整手段)
20A〜20B 水素生成手段
21 反応部
22 原料供給部
23 水素回収部
25 熱電変換部
26 電気分解部
31,32 タービン発電部
40 中間熱交換器
S,Sa 熱媒体
W 使用済核燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済核燃料または崩壊熱を発する核廃棄物から放出される熱を所定の熱媒体を介して回収する熱回収手段と、前記熱回収手段で回収された熱を利用して水素を生成する水素生成手段と、前記水素生成手段に前記熱回収手段で回収された熱を供給する熱供給手段と、前記熱回収手段と前記熱供給手段との間で前記熱媒体を循環させる流路とを備えることを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
前記水素生成手段は、熱分解法、改質法、および熱化学法のいずれか1種の方法により水素を生成する反応部を有することを特徴とする請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記水素生成手段は、前記熱を電気に変換する熱電変換部と、前記熱電変換部で生成された電気を利用して水の電気分解法により水素を生成する電気分解部とを有することを特徴とする請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記流路には、前記熱媒体の流量を調整可能な調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記熱供給手段から前記熱回収手段に至る前記流路には、前記熱供給手段から排出された後の熱を利用して発電を行うタービン発電部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項6】
前記熱回収手段から前記熱供給手段に至る前記流路には、前記熱供給手段に供給する前の熱を利用して発電を行うタービン発電部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項7】
前記熱回収手段と前記熱供給手段との間には、中間熱交換器が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の水素製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−58204(P2006−58204A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242003(P2004−242003)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】