説明

水素貯蔵システム

いくつかの実施例に係る水素の固体貯蔵システムが本明細書に開示される。システムは複数の水素貯蔵容器を含む。複数の水素貯蔵容器の各水素貯蔵容器は内側チャンバ及び入口を有する。入口は内側チャンバ内に水素ガスを導入する経路を与える。内側チャンバは中に固体水素貯蔵媒体が配置される。システムは、水素受け入れポート、複数の水素出口ポート、及びフローチャネルを有するエンドプレートマニホールドをさらに含む。水素フローチャネルはエンドプレートマニホールドに一体化される。各水素出口ポートは、複数の水素貯蔵容器の1つの入口と流体連通する。水素フローチャネルは、水素受け入れポートと各水素出口ポートとの流体連通を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、宇宙で最も軽く、最も豊富に存在する物質である。また、水素はエネルギー貯蔵の点で効率的である。例えば、水素は、単位質量当たり120.1MJ/kgの燃焼熱を有する。これは、ガソリンの燃焼熱の約3倍の高さである。
【0003】
水素は、例えば水素燃焼エンジン及び燃料電池のような環境に優しい代替エネルギー変換装置での利用が可能である。水素燃焼エンジンでは、水素は酸素存在下で燃焼させて副産物として水のみを生じさせることができる。したがって、ガソリンと異なり水素は、例えば二酸化炭素、一酸化炭素、硫黄含有化合物等のような環境に優しくない副産物を生じさせることなく燃焼させることができる。燃料電池では、当該燃料電池の対向電極にて水素及び酸素に触媒作用を及ぼすことにより、電気化学電池両端の電位差をもたらすことができる。水素燃焼エンジンと同様に、燃料電池も水素及び酸素を反応させてエネルギー変換を行う一方で唯一の生成物としての水をもたらすことができる。
【0004】
水素は非常に軽い気体であり、大気圧において体積密度が非常に低い。水素は、クリーンな方法により製造及び/又は精製ができる。例えば、水素は、光電池水の電力を受けた電気分解により水から製造できる。しかし、効率的に水素を貯蔵するためには多くの課題を解決する必要がある。
【0005】
高密度で効率的に水素を貯蔵するべく、いくつかの異なるストラテジーが用いられる。第1のストラテジーは、例えば68.9MPa(10,000psig)までの圧力のような高圧での水素貯蔵を含む。しかし、水素の高圧貯蔵は特別な構造が必要とする。例えば、非常に厚い壁を有する水素貯蔵容器等である。これは、当該システムの総重量及びコストを増大させる。また、高圧水素貯蔵システムは、水素を高圧レベルに維持するべく及び水素を水素貯蔵用高圧環境とアプリケーション用低圧環境との間で輸送するべく、コストがかかるバルブ、ポンプ、及び制御システムを必要とする。
【0006】
水素貯蔵のための第2のストラテジーは、極低温での水素の液化である。しかし、このストラテジーにもいくつかの欠点がある。例えば、水素を液化するためには極低温(すなわち約20ケルビンの温度)が必要となる。したがって、液体水素を貯蔵することは、極低温貯蔵温度を達成かつ維持するべく高エネルギー(水素燃焼によりもたらされるエネルギーの約3分の1)を必要とする点、及び高価な冷凍システムを必要とする点で非効率である。
【0007】
水素貯蔵のための第3のストラテジーは、例えば水素化金属のような固体水素貯蔵媒体を使用した水素貯蔵である。水素化金属は、容易に達成可能な低圧にて冷凍なしで水素を吸収及び脱離する。したがって、水素化金属は、高圧水素貯蔵システム及び液体水素貯蔵システムに関連する高エネルギー及び高システムコストを有しない。また、水素は、高圧水素貯蔵システム又は液体水素貯蔵システムのいずれと比べてもより高い体積密度で水素化金属貯蔵システムに貯蔵することができる。
【0008】
現在のところ、固体水素貯蔵媒体を使用する水素貯蔵システムを商品化するべく、いくつかの課題に取り組む必要がある。水素分子は非常に小さく、密封容器内に水素を格納することが課題となる。また、水素貯蔵容器は、変形及び破壊を受けないように耐久性を要し、その物理的構造を維持する必要がある。さらに、固体水素貯蔵システムは許容可能な安全マージン内で動作する必要がある。さらに、当該システムは製造が容易でなければならない。なおもさらに、当該システムは所定の性能要求に適合する必要がある。例えば、システムは、当該システム内の特定箇所への水素の経路を定める必要があり、水素の吸収及び脱離のための水素貯蔵媒体の温度を十分に制御かつ維持する必要があり、並びに、選択された高圧に当該水素を十分に維持する必要がある。なおもさらに、車両アプリケーションに対しては、システムは、単位重量及び単位体積当たり大量の水素を貯蔵する必要がある。
【0009】
固体水素貯蔵媒体を使用する水素貯蔵システムは、加圧下で水素を貯蔵することに起因する応力に加え、水素貯蔵媒体の膨張及び収縮に起因する付加的な応力を受ける。例えば、ある水素貯蔵媒体は、水素貯蔵フェーズ中に25%まで膨張した後、水素放出フェーズ中にその元の体積まで収縮する。圧縮気体の貯蔵に関連する応力とは異なり、固体水素貯蔵媒体を使用するシステムは、水素貯蔵容器の外壁に局所的な応力をもたらす。かかる局所的な応力は水素貯蔵媒体の膨張に起因し、当該材料と外壁との接触領域に応力をもたらす。したがって、かかる局所的な圧力は、当該貯蔵チャンバ内の水素ガスの静圧よりも相当に大きくなり得る。
【0010】
取り組むべき他の課題は、効率的な熱伝達及び効率的な水素吸収及び脱離速度に関連する。この吸収プロセスを生じさせるべく、反応プロセス中に熱が取り除かれる必要がある。また、脱離プロセス中には熱が供給される必要がある。したがって、システムは、水素の脱離及び吸収の間当該水素化金属を効率的に加熱及び冷却する設備が整っている必要がある。さらに、水素を当該システム内へ及び当該システム外へ移送するべく、水素ガスは効率的に供給されて当該水素貯蔵容器の各々へ均一に分散される必要がある。
【0011】
水素貯蔵システムの例は、特許文献1、2、3、4、5、及び6に記載されている。上記特許文献に開示されるシステムはそれぞれ、水素貯蔵媒体が貯蔵される単一チャンバ内の伝熱要素を使用する。かかるシステムは、重く、かさばり、製造が困難である。当該課題のいくつかは、特許文献7において本発明者により解決された。しかし、特許文献7はいくつかの点で本願の開示とは異なる。例えば、本願は、特許文献7の空冷装置よりも改良された熱伝達システムを教示する。また、特許文献7は、好都合な水素貯蔵媒体交換手段を有する水素貯蔵システムを教示しない。さらに、特許文献7のシステムは、複雑かつコストのかかるパイプ及びフィッティングの外部ネットワークを介して接続される直線管状水素貯蔵モジュールを有する。なおもさらに、特許文献7は、力分散手段を有しない。本願に係るシステムのさらなる相違点が本開示全体に記載される。
【0012】
上述の課題に加え、運輸アプリケーションに使用される水素貯蔵システムは、行政機関が定める基準に適合する必要がある。例えば米国では、米国運輸省が車両での水素ガス輸送システムに対する要件を導入している。固体水素貯蔵システムは、商品化を達成するべく、この基準に適合しなければならない。
【0013】
したがって、上述の課題を解決し、車両又は据え置きの水素貯蔵アプリケーションに使用でき、及び、大規模な製造過程によって作られる水素貯蔵システムの必要性が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,318,453号明細書
【特許文献2】米国特許第6,709,497号明細書
【特許文献3】米国特許第6,833,118号明細書
【特許文献4】米国特許第6,969,545号明細書
【特許文献5】米国特許第6,991,770号明細書
【特許文献6】米国特許第7,241,331号明細書
【特許文献7】米国特許第6,918,382号明細書
【特許文献8】米国特許第6,015,041号明細書
【特許文献9】特開2007−170670号公報
【特許文献10】特開2001−248795号公報
【特許文献11】特開2003−21298号公報
【特許文献12】特開2000−205496号公報
【発明の概要】
【0015】
いくつかの実施例に係る水素の固体貯蔵システムが本明細書に開示される。当該システムは複数の水素貯蔵容器を含む。当該複数の水素貯蔵容器の各水素貯蔵容器は、内側チャンバ及び入口を有する。入口は、水素ガスを内側チャンバ内に導入する経路を与える。内側チャンバは、固体水素貯蔵媒体が中に配置される。システムは、一の水素受け入れポート、複数の水素出口ポート、及びフローチャネルを有するエンドプレートマニホールドをさらに含む。水素フローチャネルはエンドプレートマニホールドに一体化される。各水素出口ポートは、複数の水素貯蔵容器の1つの入口に流体連通される。水素フローチャネルは、水素受け入れポートと各水素出口ポートとの流体連通を与える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本開示の一実施例に係るシステムの斜視図である。
【図2】図1のシステムの入口エンドプレートの斜視図である。
【図3】図1のシステムの第2平面沿いの断面図である。
【図4】本開示の一実施例に係る水素貯蔵システムの水素貯蔵容器の断面図である。
【図5】本開示の他実施例に係る水素貯蔵システムの水素貯蔵容器の断面図である。
【図6】本開示の他実施例に係る水素貯蔵システムの水素貯蔵容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示において、いくつかの実施例に従って水素の固体貯蔵システムが説明される。
【0018】
本開示に係る水素の固体貯蔵システムは、従来の水素貯蔵システムと比べていくつかの利点を有する。例えば、本開示に係るシステムは、従来のシステムよりも単位体積当たり大量の水素及び単位質量当たり大量の水素を貯蔵することができる。
【0019】
本開示のシステムは、体積及び質量貯蔵効率が高いので、運輸アプリケーションにおいて効率的に利用することができる。また、本開示のシステムは、高速水素充填及び放出、水素貯蔵媒体の容易な交換、優れた熱管理特性、及び高い耐久性を含む優れた性能特性を有する。なおもさらに、本開示のシステムは、従来のシステムよりも複雑ではなく、コンポーネントコストが低く、製造コスト効率性が高い。
【0020】
本開示のシステムの実施例に説明される一の特徴は、当該システム内で複数の水素貯蔵容器を使用することにある。当該システムの他の特徴は、選択された数の水素貯蔵容器を使用するように当該システムを構成できることにある。水素貯蔵容器は、標準の認可済み水素貯蔵容器であってよい。水素貯蔵容器の数は、所望のアプリケーションの水素要求に基づいて選択することができる。例えば、少量の貯蔵水素を要求するアプリケーションは、少数の水素貯蔵容器(例えば10以下)を有する水素貯蔵システムを使用する。大量の貯蔵水素を要求するアプリケーションは、多数の水素貯蔵容器(例えば10超過)を有する水素貯蔵システムを使用する。それにもかかわらず、大量の貯蔵水素を要求するシステムと少量の貯蔵水素を要求するシステムとの双方が実質的に同等の設計を有する水素貯蔵容器を使用することができる。
【0021】
一実施例では、システムは、一体化水素フローチャネルを有するエンドプレートマニホールドを備える。一体化水素フローチャネルを有するエンドプレートマニホールドは、いくつかのパイプ及びコネクタピースを使用する従来の水素貯蔵システムよりも製造コスト効率が高く、軽量であり、頑丈である。一実施例では、エンドプレートマニホールドの構造体積の50%超過が、単一の金属プレートから形成される。また、一体化フローチャネルは、水素配送ポートと別個の水素貯蔵容器との間に水素の経路を定めることができる。また、当該別個の水素貯蔵容器へ水素を効率的に分散することができる。なおもさらに、一体化水素フローチャネルは、各水素貯蔵容器から水素配送ポートへの水素の均一の配送を可能とする。
【0022】
一実施例では、システムの水素貯蔵容器は取り外し可能プラグ部材を有する。取り外し可能プラグ部材により、当該システム内の水素貯蔵媒体の定期的な交換が可能となる。詳しくは、取り外し可能プラグ部材により、水素貯蔵容器の内側チャンバ内での水素貯蔵媒体の定期的な交換が可能となる。取り外し可能プラグ部材は、当該システムの構造的一体性に影響を与えることなく水素貯蔵容器との取り外し及び再取り付けができる。
【0023】
一実施例では、システムは、政府規制基準に適合する水素貯蔵容器を含む。詳しくは、一実施例において、システムは、車両での水素輸送のための米国運輸省政府規制基準に適合する水素貯蔵容器を含む。
【0024】
図1を参照して、水素の固体貯蔵システム10を説明する。システム10は、エンドプレートマニホールド12、水素貯蔵部14、及び水素貯蔵媒体装荷部16を含む。
【0025】
図1及び2を参照すると、エンドプレート12は、水素貯蔵部14と外部の水素供給又は配送箇所との間で水素の経路を定める。エンドプレートマニホールド12は、冷却材入口20、マニホールド部22、裏当てパネル24、及び水素配送ポート26を含む。
【0026】
冷却材入口20は、外部箇所から当該システムの水素貯蔵部までの冷却材の経路を定めるべく設けられる。冷却材入口20は、エンドプレートマニホールドを通って水素貯蔵部まで冷却材が流れることができるチャネルを画定する。一実施例では、冷却材入口は、マニホールド部22に溶接された別個のカラーを含む。カラーは、当該システム10と冷却材配送システムとの間を密封するべく構成される。具体的には、カラーは、ねじ付きの外周を有する。これにより、当該システム10と流体配送システムとの間の流体密封が与えられる。カラーは、冷却材と適合する任意の材料(すなわち冷却材と接触しても不活性である任意の材料)及び当該システムの動作環境と適合する任意の材料を含むことができる。一実施例では、カラーはマニホールド部22と同じ材料を含む。
【0027】
マニホールド部22は、中にくぼみ領域60が配置される。くぼみ領域60は、支持棚部62及び基部64を画定する。支持棚部62、基部64、及び裏当てパネル24が水素フローチャネル66を画定する。くぼみ領域60は、支持棚部の上方に裏当てパネルチャネル68を画定する。ここに裏当てパネル24が配置される。水素貯蔵ポート80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、及び116が基部64を通って延びる。
【0028】
水素フローチャネル66は、水素が各水素貯蔵ポートへ分散され及び各水素貯蔵ポートから受け取ることができるように選択されたパターンを有する。一実施例では、水素フローチャネルは、水素ポートと水素配送ポートとの流体連通を与えるべく画定される。水素貯蔵ポートは、中心に配置された単一の水素ポートに関して外側及び内側の円形経路に配列される。この形状により、水素は、水素貯蔵容器の中へ及び当該容器の外へ迅速かつ均一に流れることができる。また、この形状により、水素貯蔵容器は、コンパクトなシステム設計のための及び水素貯蔵容器の効率的冷却のための望ましいスペーシングをもって構成することができる。代替実施例では、エンドプレートに水素流路を画定するべく、例えば矩形形状経路又は蛇行形状経路のような他のパターンが使用できる。
【0029】
水素フローチャネル66はエンドプレートマニホールド12に一体化される。当該水素フローチャネルは、少なくとも一部がエンドプレートマニホールド12によって画定される。一実施例では、水素フローチャネルは、水素ポートと実質的に直交する。一実施例では、水素流路は、マニホールド部22とエンドプレートマニホールド12の裏当てプレート24とによって完全に画定される。
【0030】
くぼみ領域60は、エンドプレート22から材料を取り除くことによって作られる。一実施例では、くぼみ領域60は、エンドプレート12のマニホールド部22に切削加工される。エンドプレートは、裏当てパネルチャネル68を画定する第1幅及び第1深さまで切削加工される。エンドプレートは、水素フローチャネル66を画定する第2幅(第1幅より狭い)及び第2深さ(第1深さより深い)まで切削加工される。裏当てパネルチャネルは、水素流路に重畳される。第1深さを第2深さより深くし、第1幅を第2幅よりも狭くすることで、支持棚部62が水素フローチャネル66全体にわたって形成される。
【0031】
一実施例では、第1深さはエンドプレート総厚の10から40%であり、第2深さはマニホールド部22総厚の20から80%である。他実施例では、マニホールド部22の総厚は0.76cm(0.3インチ)から1.27cm(0.5インチ)であり、エンドプレートの上面から測定して第1深さは0.25cm(0.1インチ)から0.51cm(0.2インチ)、第2深さは0.51cm(0.2インチ)から1.02cm(0.4インチ)である。水素貯蔵ポートは、マニホールド部22の基部64の総厚を通り抜ける円形孔である。
【0032】
裏当てパネル24は、裏当てパネル24が裏当てパネルチャネル全体を埋めるべく裏当てパネルチャネルと同等の形状、幅、及び厚さに形成される。くぼみ領域60が作られた後、裏当てパネル24が支持棚部62に接触して着座するように配置される。次に、裏当てパネルが、裏当てパネル24の外側境界及びくぼみ領域60の内側境界においてマニホールド部22に溶接されて両者間の水素密封が与えられる。裏当てパネル24は、マニホールド部22と実質的に同等の材料から作ることができる。
【0033】
水素ポートが、システム10の水素貯蔵部14の中へ及び外への水素の経路を定める。各水素貯蔵ポートは、各水素貯蔵ポートと水素配送ポートとの間で水素を移送するべく水素フローチャネル66と流体連通する。
【0034】
水素配送ポート26は、外部箇所と水素フローチャネル66との間で水素の経路を定めるべく設けられる。一実施例では、水素配送ポート26は、裏当てパネル24に溶接された別個のカラーを含む。カラーは、外部コンジットと当該システムとの間を密封するべく構成される。具体的には、カラーは、ねじ付きの外周を有する。これにより、当該外部コンジットと当該システムとの間の密封が与えられる。カラーは、水素と適合する任意の材料(すなわち水素と接触しても不活性である任意の材料)及び当該システムの動作環境と適合する任意の材料を含むことができる。一実施例では、カラーはマニホールド部22と同じ材料を含む。
【0035】
マニホールド部22は、水素貯蔵容器を支持するのに十分な強度を有する剛体材料から作られる。一実施例では、マニホールド部22はステンレス鋼材料を含む。代替実施例では、マニホールド部22は、アルミニウム等の金属又は金属合金のような他の金属材料から作ることができる。
【0036】
マニホールド部22が一体化水素ガスマニホールドを有するので、エンドプレートは、外部配管及びフィッティングを使用するシステムよりも製造が容易であり、コスト効率が高く、頑丈である。また、一体化水素マニホールドにより、エンドプレートは軽量かつコンパクトとなる。
【0037】
図1及び3−7を参照して、システム10の貯蔵部14を説明する。貯蔵部14は、水素貯蔵容器180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、外側ケーシング218、並びにスペーシング部材220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244、246、248、250、252、256、及び258を含む。
【0038】
図3を参照しながら、水素貯蔵容器180に関連して水素貯蔵容器を説明する。しかし、システム10の他の水素貯蔵容器も水素貯蔵容器180と実質的に同等の設計にすることができる。
【0039】
水素貯蔵容器180は、ケーシング260、水素貯蔵媒体262、ガス分散器264、及び力分散コンポーネント266を含む。ケーシング260は、水素入口部270、内側チャンバ272、及び端部274を画定する。入口部270及び端部274の外径及び内径は、内側チャンバ272よりも小さい。入口部270及び端部274は、ねじ付内周を有する。水素貯蔵媒体264及び力分散コンポーネント266は内側チャンバ272内に配置される。
【0040】
ケーシング260は、高圧において当該容器内に気体を維持することができる金属材料を含む。一実施例では、ケーシング260は、スピニング加工プロセスを使用してステンレス鋼から形成される。他実施例では、ケーシング260は、スピニング加工プロセスを使用してアルミニウム合金から形成される。他実施例では、当該システムは、他の金属のような他の材料から作られる容器、又は例えば他のスタンピング若しくは鋳造プロセスのような他のプロセスによって作られた容器を含んでよい。一実施例では、水素貯蔵容器は運輸アプリケーションでの気体貯蔵に対する一般的要件に適合する。
【0041】
運輸アプリケーションのための一般的要件に適合するべく、ケーシング260は、内面上に配置された電食バリア層を有する。一実施例では、電食層はポリマーコーティングを含む。代替実施例では、電食層は、ガラス繊維/エポキシ複合層を含む。
【0042】
一実施例では、水素貯蔵容器180は、1.72MPa(250psig)を超える圧力で水素を閉じ込めることができる。一実施例では、水素貯蔵容器180は、3.45MPa(500psig)を超える圧力で水素を閉じ込めることができる。また、水素貯蔵容器180は、米国運輸省により定められた基準及び規制に従って認可される。
【0043】
ガス分散器264は、水素貯蔵容器の内側チャンバを通して水素を分散するべく設けられる。ガス分散器264は、水素貯蔵容器の水素入口部、内側チャンバ、及び端部の中心軸沿いに長手方向に延びて配置される。当該分散器は、ねじ付接続部材282及び分散器マニホールド部284を含む。
【0044】
ねじ付接続部材282は、分散器264をケーシング260に固定するべく設けられる。詳しくは、ねじ付接続部材282は、ケーシング260を分散器264に固定するべくケーシング260の水素入口部270のねじ付内周と結合する。
【0045】
分散器マニホールド部284は、内側チャンバのキャビティ内に水素貯蔵媒体のためのスペースを与えるべく薄壁及び小径を有する。くぼみ領域284は、外部にステンレス鋼ワイヤ布フィルタが配置されている。当該布フィルタにより、水素は分散器の内部へ及び当該内部から通過することができる一方で、水素貯蔵媒体262が当該分散器の内部に入ることを防止する。分散器マニホールド部284は、ガス分散管を収容する1つ以上の孔を有する熱伝導性セグメントプレートをさらに備える。分散管は、水素化金属微粉(微粒子)が、くぼみ領域内でガス流をふさぐこと又は内側チャンバから逃げることをさらに防止するフィルタを有する。分散管は、内側チャンバ272内の特定箇所への水素の経路を定める。
【0046】
代替実施例では、分散器マニホールドは、他のタイプのフィルタを含んでよい。例えば、一実施例では、分散器マニホールドは、金属管まわりを覆う金属ワイヤ布を含んでよい。当該管は、水素貯蔵容器の入口部内に配置することができる。または、水素ガスの流路における水素貯蔵容器内の他の箇所に配置することができる。
【0047】
水素貯蔵媒体262は、いくつかのタイプの水素貯蔵媒体の1つであってよい。一実施例では、水素貯蔵媒体は、水素化金属貯蔵材料である。例示の水素化金属水素貯蔵媒体は、AB合金材料(例えばLaNi)、AB合金材料(例えばFeTi)、AB(例えばMgNi)、AB合金材料(例えばZrV)、体心立方(BCC)合金、及びA合金材料を含む。他実施例では、水素貯蔵媒体は、水素化金属貯蔵材料とともに又はその代わりに異なるタイプの貯蔵材料の1つ又は組み合わせを含んでよい。かかる貯蔵材料は、ガラスマイクロスフィア貯蔵材料、ポリマー貯蔵材料、ホウ化リン酸塩貯蔵材料、フラーレン貯蔵材料、グラファイト貯蔵材料、アンモニア貯蔵材料等の貯蔵材料を含む。
【0048】
取り外し可能キャップ部材268は、ねじ付外周を有する。当該ねじ付外周は、端部274のねじ付内周と結合して内側チャンバ272を密封する。オペレータは、内側チャンバ272を開け及び再密封するべく当該キャップ部材を回して取り付け及び取り外しができる。したがって、水素貯蔵媒体は、ケーシングの端部274を介して内側チャンバ272から定期的に取り外すこと及び新たな水素貯蔵媒体にリプレースすることができる。
【0049】
力分散コンポーネント266は、水素貯蔵容器のケーシング260にかかる局所的な力を低減するべく設けられる。力分散コンポーネントは当該低減を、水素貯蔵媒体に水素が充填されていない場合に水素貯蔵媒体を所望位置に維持するのに十分な反力を水素貯蔵媒体に与える一方で、水素貯蔵媒体が水素で充填されている場合に水素貯蔵媒体の膨張に起因する力を吸収することにより達成する。
【0050】
一般に、力分散コンポーネントは水素貯蔵容器の外壁にかかる局所的な力を低減する任意の構造を含んでよい。一実施例では、力分散コンポーネントは、水素貯蔵媒体の空間的位置を維持することによって局所的な力を低減する。一実施例では、力分散コンポーネントは、水素貯蔵媒体の膨張に起因する力を分散することによって局所的な応力を低減する。一実施例では、力分散コンポーネントは、水素貯蔵媒体の膨張に起因する力を吸収することによって局所的な応力を低減する。一実施例では、力分散コンポーネントは、水素貯蔵媒体の膨張に起因する力を吸収するべく可逆的に形状を変化又は位置を変化することによって局所的な応力を低減することができる。
【0051】
力分散コンポーネントの特徴は、その主な機能が水素貯蔵ではなく、水素貯蔵合金の膨張及び収縮により生じる力を均等化及び分散することにある。しかし、力分散コンポーネントは力分散のほか、熱伝達又はガス分散のような他の機能を与えることもできる。
【0052】
水素貯蔵媒体の膨張及び収縮に起因して加わる力は、張力(引く力)、圧縮力(押す力)、剪断、曲げ、又はトーション(ねじれ)であり得る。変形は、任意の幾何学的変化を含む。詳しくは、水素貯蔵コンポーネントの一部の高さ、長さ、深さ、又は角度に、少なくとも0.1%以上、特に材料の機械的挙動によっては少なくとも10%、の変化をもたらす寸法変化として定義される。水素貯蔵媒体によって導入される応力量に応答するひずみ量は、水素貯蔵容器の外壁に取り付けられたひずみゲージによって検出される。詳しくは、ひずみゲージは、水素貯蔵材料の不均一性膨張により生じる容器壁上の最大局所ひずみを測定するべく使用される。一実施例では、力分散コンポーネントを備える容器の外壁上の最大局所応力は、力分散コンポーネントが組み込まれていない最大局所応力の50%未満である。
【0053】
力分散コンポーネントは膨張力に応じて形状又は位置が変化し得るが、他の刺激に応答して他の物体により誘発された力に応じて形状又は位置を変化することもできる。一実施例では、力分散コンポーネントは、水素貯蔵容器内の温度変化に応じて位置が変化する。一実施例では、力分散コンポーネントは、当該力分散コンポーネントに電界又は磁界が加わる場合に形状又は位置が変化する。
【0054】
図4を参照すると、一実施例の力分散コンポーネントは弾性力分散コンポーネント266である。弾性力分散コンポーネントは、水素貯蔵媒体が収縮状態にある(水素がない)場合に当該水素貯蔵媒体を所望位置に維持するのに十分な剛性を有する。しかし、水素貯蔵媒体が水素を吸収して膨張するにつれて、当該弾性材料にかかる力が増加することにより力分散コンポーネントが見かけ上可塑的に変形する。
【0055】
力分散コンポーネント266は、平均直径が約2.54cm(1インチ)の種々のサイズを有するほぼ球形状のモジュールをいくつか含む。当該モジュールは、内側チャンバ272全体にわたり実質的に均一に分散される。代替実施例では、力分散コンポーネントは、材料の一の大きな連続体又はいくつかの大きな連続体を含む。力分散コンポーネントのサイズ及び量は貯蔵媒体及び動作要件に応じて変えることができる。力分散コンポーネントは、ペレット、ビーズ、ボール、粒子、プレート、ロッド、又はチューブ等を含むアプリケーションに適した任意の形状にしてよい。これらの形状の柔軟性及びサイズにより、入口部270又は端部274を介して内側チャンバ272内に容易に装荷することができる。
【0056】
当該弾性部材は、水素貯蔵容器の一般動作環境に適合する特性の任意の弾性材料を含んでよい。当該特性は、水素還元雰囲気における不活性、及び動作温度(例えば低温水素化金属を使用するシステムでは0から100℃の動作温度)での水素貯蔵媒体との不活性を含む。
【0057】
一実施例では、弾性部材は弾性フォーム部材を含む。一実施例では、当該フォーム部材は発泡シロキサンポリマーを含む。一実施例では、当該フォーム部材はポリスチレンフォームを含む。他実施例では、当該フォーム部材は、他の合成ポリマー材料又は天然ポリマー材料のような他の弾性材料を含む。フォーム材料は低密度及び高空隙率を有するので、当該フォーム材料は軽量であり貯蔵システムに対して質量をほとんど付加しない。
【0058】
代替実施例では、弾性部材は、ばね部材を含む。当該ばね部材は、水素貯蔵容器の動作条件下でその弾性特性を保持するばね材料を含む。一実施例では、当該ばね材料は、高いクロム及び/又はニッケル含有量を有するステンレス鋼ワイヤを含む。例示のばね材料は、ASI316ワイヤを含むワイヤのようなステンレス鋼、Special Metals Corporationの登録商標インコネルとして販売されるようなニッケル基超合金を含む。
【0059】
代替実施例では、力分散コンポーネントは、アルミニウム金属及び銅金属並びにこれらの合金のカールチップのような中空シェル又は多孔性金属を含む。金属及び合金の中空シェル、多孔性金属、又はカールチップは軽量であり良好な熱伝導体である。これらは、水素貯蔵媒体の充填密度を緩和し、当該水素貯蔵媒体の膨張に起因する力を吸収することができる。
【0060】
内側チャンバ内に存在する力分散コンポーネントの体積及び重量は、水素貯蔵容器に貯蔵され得る水素量を著しく制限することなく水素貯蔵媒体の膨張に起因する力を吸収するのに十分である。一実施例では、力分散コンポーネントは、その膨張状態において内側チャンバ272の体積の1%から30%を占める。一実施例では、力分散コンポーネントは、その膨張状態において内側チャンバ272の体積の2%から10%を占める。
【0061】
図5を参照すると、力分散コンポーネント310が示される。力分散コンポーネント310は、非変形力分散コンポーネントである。当該力分散コンポーネントは、複数のビームを有するケージを含む。当該複数のビームは水素貯蔵媒体を固定箇所に保持するべく当該水素貯蔵媒体と相互作用をする。ケージはステンレス鋼のビームから形成される。当該ビームは、水素貯蔵媒体の膨張時にケージが著しく変形しない程度の十分な厚さを有する。当該膨張量は、水素貯蔵媒体の凝集体を分割することによって制限される。代替実施例では、ケージは、他の金属又は他の金属合金のような他の材料から形成することができる。
【0062】
水素貯蔵媒体はケージによって固定箇所に保持されるので、水素貯蔵媒体の大きな連続凝集体が形成されることがない。したがって、水素貯蔵媒体の膨張に起因する力は当該水素貯蔵容器を通して均一に分散される。水素貯蔵媒体が水素で充填されるにつれて、ビームは撓んで膨張水素化金属の力を分散することができる。これにより、膨張に起因する容器壁にかかる局所的応力が最小限にされる。
【0063】
図6を参照すると、力分散コンポーネント330を有する水素貯蔵容器が示される。力分散コンポーネント330は弾性ライニングを含む。
【0064】
弾性ライニングは、水素貯蔵容器の動作条件下で弾性特性を維持する弾性のばね状材料から形成される。一実施例では、弾性ライニングは弾性ステンレス鋼繊維メッシュ材料を含む。他実施例では、力分散ライニングは、上述の力分散コンポーネント330のような他の弾性材料を含むことができる。当該ライニングが第1状態のとき、当該ライニングは、水素貯蔵媒体を選択位置に維持するのに十分な機械的強度を有する。しかし、力分散ライニングは水素貯蔵の膨張に起因して収縮し得るので、当該ライニングの局所的領域に接触する材料からの力は、当該ライニング全体にわたり吸収かつ分散される。
【0065】
各水素貯蔵容器180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216の第1端の外周は、エンドプレートマニホールド12の対応する水素貯蔵ポートの内周に溶接される。水素貯蔵容器は、裏当てパネル24をマニホールド部22に溶接する前に入口プレートに溶接される。
【0066】
他実施例では、各水素貯蔵容器180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216の第1端のねじ付外周は、エンドプレートマニホールド22の対応する水素貯蔵ポートのねじ付内周に接続される。当該ねじ付周部の間にはシーラントが適用されて、水素ガスを漏洩させない密封接続が形成される。水素貯蔵容器は好ましくは、裏当てパネル24をマニホールド部22に溶接した後に入口プレートに取り付けられる。これにより、当該ねじ付周部の間のシーラントが熱により損傷を受けることがない。
【0067】
各水素貯蔵容器は互いに同軸に配置される。すなわち、各容器は一の軸に沿って同じ方向に延びる。
【0068】
システム10は、当該システムに効率的に水素を貯蔵するべく水素貯蔵容器からの熱除去を与えるべく設計される。システム10内に複数の水素貯蔵容器を使用することにより、1つの大きな水素貯蔵容器を使用するシステムと比べて効率的に水素貯蔵容器から熱が取り除かれる。詳しくは、水素貯蔵容器の外壁と冷却流体との間で得られる伝熱表面積が増加することにより、及び、容器壁の厚さが減少することにより、効率的に熱を伝達することができる。したがって、熱伝達効率の増加は、水素貯蔵容器の表面積対体積比に直接関連する。
【0069】
当該複数の容器がほぼ円筒形状、ほぼ同等の高さとすれば、5の容器を有する複数容器システムの表面積対体積比は、同じ体積の単一容器システムと比べて外側冷却流体と接触する表面積が2.2倍よりも大きい。したがって、この実施例では、複数容器システムの容器からの放熱は、同じ貯蔵体積を有する単一容器システムの放熱率よりも2.2倍大きい。また、7の容器を有する複数容器システムの表面積対体積比は、単一容器システムよりも外側冷却流体と接触する表面積が2.6倍よりも大きい。
【0070】
したがって、この実施例では、複数容器システムの容器からの放熱は、同じ貯蔵体積を有する単一容器システムよりも放熱率が2.6倍よりも大きい。さらに、10の容器を有する複数容器システムの表面積対体積比は、単一容器システムよりも外側冷却流体と接触する表面積が3.1倍よりも大きい。したがって、この実施例では、複数容器システムの容器からの放熱は、同じ貯蔵体積を有する単一容器システムよりも放熱率が3.1倍よりも大きい。
【0071】
さらに、水素化金属水素貯蔵媒体の熱伝導率は、ステンレス鋼よりも10倍低く、アルミニウムよりも100倍低い。したがって、水素貯蔵材料を通しての熱コンダクタンスを欠くことにより、熱伝達もまた低減される。このため、単一容器システムの大きな容器のための大きな径方向距離は、複数容器システムの小さな容器の径方向距離よりも高い熱抵抗を与えることになる。熱伝達率が増大することは、水素システムに多くの利点を与える。例えば、水素貯蔵媒体と冷却流体との間の熱伝達率が増大すると、冷却流体の必要体積流量が低減する。冷却流体の体積流量が低減することにより、システムは、エネルギー効率を増大させ、かつ、サイズ及びコストを低減するいくつかのオプションが得られる。例えば、システム内の冷却流体のために必要なスペースが少なくなることで、システムの体積が低減され、材料コストが低減される。また、冷却流体の必要な流量が低下することで、必要なポンプサイズが低減され、冷却流体をシステムを通してポンピングするのに関連するエネルギーコストが低減される。
【0072】
図1から3を再び参照すると、システム10は、流体冷却水素貯蔵システムである。詳しくは、システム10は、液体冷却水素貯蔵システムである。液体冷却を使用することにより、システム10は、空気冷却水素貯蔵システムよりも効率的に水素貯蔵容器から熱を伝達することができる。冷却流体は、冷却流体入口を通り、水素貯蔵容器の外側表面を通過し、冷却流体出口を通る経路を流れる。システム10を冷却するべく様々な冷却液体を使用することができる。詳しくは、高熱容量、低凝固点、及び高蒸発点を有する液体を使用することができる。例示的な流体は、メタノール、水、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール)、及びこれらの組み合わせを含む。代替実施例では、冷却流体は、空気のような気相成分を含むことができる。
【0073】
スペーシング部材が、各水素貯蔵容器の間に配置される。スペーシング部材は、細長いロッドのような細長い形状を有することができる。また、当該システムの総重量を低減するべく中空にすることもできる。スペーシング部材は、構造安定性を与えて複数の水素貯蔵容器間の過剰な振動を防止することができる。また、スペーシング部材は、高い冷却レベルを維持できるように水素貯蔵容器の外部へ冷却流体を偏向させることができる。一実施例では、スペーシング部材はナイロンポリマー材料を含む。代替実施例では、当該スペーサは、当該システムの冷却流体チャンバ内の温度条件及び動作条件に耐え得る他の様々な材料を含んでよい。代替実施例では、スペーシング部材は、ポリマー形態のような他の軽量材料であってよい。さらなる代替実施例では、システム10は、複数の水素貯蔵容器間にスペーシング部材を含まない。
【0074】
複数の水素貯蔵容器及びスペーシング部材のそれぞれは、外側ケーシング218内に配置される。外側ケーシング218は、当該ケーシング218の第1端にてエンドプレート22の外周に溶接される。また、ケーシング218の第2端にて水素貯蔵媒体装荷部16のエンドプレート54の外周に溶接される。
【0075】
図1を再び参照すると、水素貯蔵媒体装荷部16は、冷却材出口56のエンドプレート54を含む。エンドプレート54は、孔302、304、306、308、310、312、314、及び316を画定する。水素貯蔵容器は、当該水素貯蔵容器の第2端にて出口エンドプレート54の孔を通して配置される。水素貯蔵容器のそれぞれの第2端の外周は、エンドプレート54の孔の1つの内周に溶接される。
【0076】
一実施例では、予備熱交換回路が当該システムの流体チャンバと入口及び出口20、56にて接続される。これにより、冷却流体から熱が取り除かれる。当該外部熱交換回路は、冷却流体リザーバ、ポンプ、ラジエータ、及び配管システムを含む。
【0077】
ポンプが、冷却流体を強制的に当該システムを通して冷却流体システムを通す。冷却は、リザーバから当該システムの入口への経路を通る。冷却流体は当該システムを通って移動する。これにより、冷却流体が加熱される。加熱された冷却流体は次に、当該システムの出口からラジエータへの経路を通る。移動空気がラジエータを通過することにより、熱が冷却流体から伝達される。冷却流体は、ラジエータを出た後にリザーバまでの経路を流れる。
【0078】
水素貯蔵媒体を個々の水素貯蔵容器内に充填する方法を説明する。まず、水素貯蔵媒体のバルクインゴッドが微細粒子まで破砕される。次に、粒子サイズのふるい分け及び粒子サイズ分布の制御を目的として当該材料がふるいに通される。これにより、選択された狭い範囲の粒子のみが水素貯蔵容器内への装荷に使用される。一実施例では、粒子サイズ範囲は、1ミリメートルから3ミリメートルである。
【0079】
一実施例では、その後水素貯蔵媒体は、90−95%の水素貯蔵媒体及び5−10%の力分散材料(膨張状態において)という体積比でフォーム力分散粒子と混合される。
【0080】
当該方法はさらに、水素貯蔵媒体を選択された体積充填密度まで水素容器内に導入することを含む。体積充填密度は、当該システム内で使用される水素貯蔵媒体のタイプに基づいて選択することができる。詳しくは、体積充填密度は、水素貯蔵媒体が水素ガス貯蔵時に最大充填密度で十分に存在するように選択することができる。例えば、容器を充填する場合、バルク(結晶)密度が約50%の水素貯蔵媒体が充填用に選択される。一実施例では、6.5g/cc(空隙のない合金インゴッドで測定)のバルク密度を有するTiMn基金属合金が使用される。したがって、容器内の水素貯蔵合金の充填密度は約3.25g/ccであるのが好ましい。このため、充填率(すなわち内側チャンバの総体積に対する充填材料の体積)は約0.5となる。
【0081】
水素システムの水素貯蔵容量は、容器内に充填された水素貯蔵媒体質量に関連する。水素貯蔵容器の充填率を高くすると、水素貯蔵容量が高くなる。このため、軽量かつコンパクトなシステムとなる。しかし、アグレッシブな充填は、上述のように水素吸収時の水素貯蔵媒体の膨張に起因して望ましくないと考えられる。
【0082】
一実施例では、力分散コンポーネントの使用により、内側チャンバ内に存在する間隙スペースがなくなり、均一装荷での所望の充填率が達成される。これにより、ケーシング260にかかる最大局所応力のレベルが低減される。一実施例では、水素貯蔵容器の内側チャンバは、体積において55−95%の水素貯蔵媒体(充填密度)、5−30%の力分散コンポーネント、及び25−45%の、水素吸収時の体積膨張のためのフリースペースを含む。貯蔵材料、力分散コンポーネント、及びフリースペースは、水素貯蔵容器の内側チャンバ全体にわたり均一に分散されるのが好ましい。
【0083】
なお、本発明は説明された実施例の構造そのものに限られない。本明細書に記載された開示及び説明は例証であって、本発明の実施を限定するものではない。本発明の実施例と信じられるものが記載されてきたが、当業者は、これに他の及びさらなる変更及び修正を、本発明の要旨を逸脱することなく、なし得ることがわかるだろう。本発明の範囲全体に属する変更及び修正のすべてが請求される。上述の開示と当業者に利用可能な通常の知識との組み合わせにおいて均等物を含む以下の特許請求の範囲こそが本発明の範囲を画定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水素貯蔵容器と、
水素受け入れポート、複数の水素出口ポート、及び一体化水素フローチャネルを有するエンドプレートマニホールドと
を含む水素の固体貯蔵システムであって、
前記複数の水素貯蔵容器の各水素貯蔵容器は、内側チャンバと、前記内側チャンバ内に水素ガスを導入する入口とを有し、
前記内側チャンバは、中に固体水素貯蔵媒体を有し、
前記水素出口ポートのそれぞれは、前記複数の水素貯蔵容器の1つの入口と流体連通され、
前記水素フローチャネルは、前記水素受け入れポートと各水素出口ポートとの流体連通を与えるシステム。
【請求項2】
前記複数の水素貯蔵容器は少なくとも5の水素貯蔵容器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記エンドプレートマニホールドの前記水素フローチャネルは、材料を取り除くプロセスにより形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記エンドプレートマニホールドの前記水素フローチャネルは、前記受け入れポートを通る水素流路と直交する流路に水素の経路を定める、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記エンドプレートマニホールドの前記水素フローチャネルは、前記複数の水素出口ポートを通る水素流路と直交する流路に水素の経路を定める、請求項5に記載のシステム。
【請求項6】
前記エンドプレートマニホールドの構造体積の50%超過が1つの金属プレートから形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数の水素貯蔵容器の各水素貯蔵容器は前記エンドプレートマニホールドに溶接される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数の水素貯蔵容器の各水素貯蔵容器は前記エンドプレートマニホールドにねじ接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記水素貯蔵媒体は水素貯蔵合金である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記水素貯蔵媒体は、グラファイト水素貯蔵媒体、フラーレン水素貯蔵媒体、又はポリマー水素貯蔵媒体からなるグループから選択される少なくとも1つの水素貯蔵媒体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数の水素貯蔵容器の各水素貯蔵容器は水素ガス分散器部材をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数の水素貯蔵容器の各水素貯蔵容器は、水素ガス流を通す一方で水素貯蔵媒体粒子の通過を制限する粒子フィルタをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の水素貯蔵容器の各水素貯蔵容器は前記水素貯蔵容器の前記内側チャンバ内に水素貯蔵媒体を導入する入口をさらに含み、
前記内側チャンバ内に水素貯蔵媒体を導入する前記入口は前記内側チャンバ内に水素を導入する前記入口ではない、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記水素貯蔵容器の前記内側チャンバ内に水素貯蔵媒体を導入する前記入口を通る水素流を防止する取り外し可能プラグ部材をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記取り外し可能プラグ部材は前記水素貯蔵容器にねじ接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記エンドプレートは0.318cm(0.125インチ)から3.81cm(1.5インチ)の厚さを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記複数の水素貯蔵容器は互いに対して同軸に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
外側円筒及び熱伝達流体をさらに含み、
前記水素貯蔵容器は前記外側円筒内に配置され、
前記外側円筒は前記熱伝達流体の流路を画定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数の水素貯蔵容器はスピニング鋳造プロセスにより形成されたアルミニウム又はステンレス鋼容器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記水素貯蔵媒体の膨張により生じた力を分散させる力分散コンポーネントをさらに含み、
前記力分散コンポーネントは前記水素貯蔵容器における局所的な力を低減する、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記力分散コンポーネントは、最大の局所的な力が、前記力分散コンポーネントがない場合の最大の局所的な力の50%未満である、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記水素貯蔵媒体は充填及び放出状態を有する水素貯蔵合金を含み、
前記水素貯蔵合金は、前記水素貯蔵合金が前記放出状態にある場合に前記水素貯蔵容器の前記内側チャンバの体積の70%超過を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記力分散コンポーネントは、前記水素貯蔵容器の前記内側チャンバの内周沿いに分散される、請求項20に記載の水素貯蔵容器。
【請求項24】
前記力分散コンポーネントは弾性部材である、請求項20に記載の水素貯蔵容器。
【請求項25】
前記力分散は、前記水素貯蔵媒体全体にわたり分散された複数のモジュールである、請求項20に記載の水素貯蔵容器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−501076(P2011−501076A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531006(P2010−531006)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/011768
【国際公開番号】WO2009/054902
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(510115568)オヴォニック ハイドロゲン システムズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】