説明

水素貯蔵材料及び関連システム

【課題】金属水素化物と有機水素担体からなる水素貯蔵材料を提供する。
【解決手段】有機水素担体は環式炭化水素、部分的又は完全に水素化された窒素含有芳香族複素環、部分的又は完全に水素化された芳香族炭化水素からなる液体形態であり、金属水素化物と前記有機水素担体からなる水素貯蔵材料がスラリー又はエマルションである。脱水素化反応器14と流体連通している燃料電池12、及び脱水素化反応器14と流体連通している水素貯蔵材料タンク16を含んでなり、水素貯蔵材料タンク16が前記水素貯蔵材料を含有している水素貯蔵/燃料電池システム10。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
水素は燃料として広範な可能性をもっているが、その利用の際の、殊に車両の動力供給のような輸送用途における主要な短所は、許容できる軽量の水素貯蔵媒体がないことである。固体状態のある種の材料及び合金には水素を吸収・脱着する能力がある。これらの材料は水素貯蔵容量が大きいために水素貯蔵の可能な形態と考えられている。固体水素化物として水素を貯蔵すると、圧縮ガス又は液体として圧力タンク内に貯蔵する場合より大きな体積貯蔵密度を得ることができる。また、固体水素化物での水素貯蔵では、加圧ガス又は低温液体として容器内に貯蔵された水素と比べて、生じる安全性の問題が少ない。金属又は合金システムへの水素の固相貯蔵は、特定の温度/圧力又は電気化学条件下での金属水素化物の形成を通して水素を吸収し、これらの条件を変化させる(通常加熱下)ことにより水素を放出することによって機能する。金属水素化物のシステムは長時間の高密度の水素貯蔵という利点を有する。
【0002】
しかし、金属水素化物には幾つかの短所がある。大部分の金属水素化物は酸素及び湿気に対して感受性である。空気又は湿気に暴露されると発熱化学反応が起こり、材料はその水素貯蔵能を失うと共に火災の危険を生じ得る可能性がある。加えて、水素の吸着と脱着は高温で起こり、そのため金属水素化物は熱伝達媒体により包囲されている必要がある。金属水素化物は通常、最も効率的な熱伝達を得るために熱交換体、好ましくは内部熱交換体と熱的に一体化された貯蔵容器内に貯蔵される。現在使用されている熱伝達媒体は金属フィン又はアルミニウム発泡体である。水素を放出するためには、貯蔵容器全体を加熱することが必要であり、そのため熱損失が増大する。内蔵型充填は必要とされる高い水素圧及び速い放熱のために実行可能ではないと考えられるので、この水素貯蔵システムでは、金属水素化物が消尽されるか又は汚染され、水素を有効に再充填することができなくなったとき、金属水素化物と熱交換体を含有する貯蔵容器を交換する必要がある。容器の交換は、車及び燃料補給基盤の再設計を要する手間のかかるプロセスであり、車両におけるこの技術の大衆の支持を妨げる。加えて、容器の交換には、広範な種類の車両にわたる容器の標準化が必要であり、困難であろう。その結果、貯蔵タンク全体を加熱することなく、水素に基づくエネルギーシステムに燃料を補給し、必要に応じて燃料電池に水素を供給する迅速な方法に対するニーズがある。実際、このニーズは米国エネルギー省により、3分の燃料補給時間という大きな目標の設定という形で認識されている。加熱により水素を放出し、脱水素化された液体形態に変化することができる液体の有機水素担体を使用することが既に提案されている。しかし、これらの有機担体は水素含有量が低い。従って、燃料補給を容易にする高い容量の水素貯蔵材料に対するニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0026272号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0128485号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記ニーズは、金属水素化物及び有機水素担体からなる水素貯蔵材料により、少なくとも一部分対処される。この有機水素担体は液体形態又はゲル形態であることができる。
【0005】
また、本明細書には、脱水素化反応器と流体連通している燃料電池、及び脱水素化反応器と流体連通している水素貯蔵材料タンクを含んでなる水素貯蔵/燃料電池システムも開示されており、この水素貯蔵材料タンクは水素貯蔵材料を含有しており、水素貯蔵材料は金属水素化物及び有機水素担体を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、水素貯蔵/燃料電池システムを示す。
【図2】図2は、水素貯蔵/燃料電池システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上に述べたように、金属水素化物は湿気及び酸素に対して感受性である。これらの感受性は、金属水素化物を固定された内蔵型(onboard)タンクにポンプで送る又は供給することを含む燃料補給法にとって主要な障害となる。かかる供給法では確実に金属水素化物が湿気、酸素又はその両方に暴露されることになろう。さらに反応性の低い粉末形態の固体の移送もまた非常に困難な課題である。この問題は、金属水素化物用のマトリックスとして有機担体を使用して、金属水素化物と有機担体とを含む移動可能な水素貯蔵材料とすることによって克服された。この水素貯蔵材料には、高い水素貯蔵能、並びに材料の容易な装填及び除去を始めとして幾つかの重要な利点がある。有機水素担体は水素吸収、水素脱着、又は吸収と脱着の両方のための加熱媒体として機能することができ、また有機水素担体はシステムに対する水素の追加の供給源として機能し、従って貯蔵材料の全体能力を高めることができる。加えて、水素貯蔵材料は必要に応じて所要の量の水素を供給することができる。
【0008】
有機水素担体としては、液体とゲルの両方がある。有機水素担体は、金属水素化物の水素吸収/脱着プロセスに干渉することがなく、しかも金属水素化物の脱水素化の温度領域に近い温度領域で脱水素するように選択する。幾つかの実施形態では、有機水素担体は、金属水素化物の脱水素化温度の約100℃以内、特に金属水素化物の脱水素化温度の約75℃以内、特に金属水素化物の脱水素化温度の約50℃以内の温度で脱水素する。幾つかの実施形態では、有機水素担体は約200℃以上、特に約250℃以上、特に約300℃以上の沸点を有する。有機水素担体は約400℃以下の沸点を有することができる。
【0009】
幾つかの実施形態では、有機水素担体は液体の水素担体である。幾つかの実施形態では、液体有機水素担体は環式炭化水素からなる。幾つかの実施形態では、液体有機水素担体は部分的に又は完全に水素化された窒素含有芳香族複素環、例えば、2−アミノピリジン、4−メチルピリミジン、ジピリミジンメタン、ジメチルテトラジン、ジピリミジン、ジアザカルバゾール、アルキルカルバゾール、4−アミノピリジン、ジピラジンメタン、トリピラジンメタン、トリピラジンアミン、ジピラジン、テトラアザカルバゾール、イソキノリン、ジ(2−ピリジル)アミン、キナゾリン、又は以上のもの2種以上の組合せからなる。幾つかの実施形態では、液体有機水素担体は部分的に又は完全に水素化された芳香族炭化水素、例えばナフタレン、ベンゼン、アントラセン、又は以上のもの2種以上の組合せからなる。幾つかの実施形態では、液体水素担体はペルヒドロ−N−エチルカルバゾール、シクロヘキサン、テトラヒドロイソキノリン、テトラリン、デカリン、及びこれらの組合せの1つである。
【0010】
有機水素担体は、金属水素化物を含む溶液を形成し、金属水素化物の表面を被覆し、また金属水素化物が固体形態にあるとき移動可能なスラリーを形成し、又は金属水素化物が液体又は溶融形態にあるときエマルションを形成するのに充分な量で存在する。幾つかの実施形態では、金属水素化物は液体有機担体に部分的に又は完全に可溶性である。固体金属水素化物の例としては、水素化アルミニウムAlH、金属アラネートM(AlH(M=Li、Na、Mg)、金属ホウ水素化物M(BH(M=Li、Be、Mg、Zn)、金属アミドトリヒドロボレートM(NHBH(M=Li、Na、Mg、Ca)がある。液体及び溶融金属水素化物の例としては、ホウ水素化アルミニウムAl(BH(融点−64℃)、ホウ水素化ジルコニウムZr(BH(融点29℃)、アンモニアボランHNBH(融点104℃)、及びホウ水素化マグネシウムのアンモニア錯体Mg(BH2.2NH(融点94℃)がある。水素貯蔵材料はこの貯蔵材料の総重量を基準にして約30〜約70重量%の量で有機担体を含み得る。この範囲内で、担体の量は約35重量%以上、特に約50重量%以上であることができる。また、この範囲内で、担体の量は約65重量%以下、特に約55重量%以下であることができる。
【0011】
金属水素化物には、約100〜約300℃の温度で水素を吸収し脱着することができる全ての金属水素化物が包含される。代表的な金属水素化物には、可逆と非可逆の両方の金属水素化物がある。MgH及びNaAlHのような可逆金属水素化物は吸収/脱着サイクルを通して循環使用することができる。非可逆金属水素化物は水素を脱着することができるが、脱着により通例金属水素化物がその構成部分に分解する。非可逆金属水素化物は別個のシステム(場外)で再生することができる。非可逆金属水素化物の例としては、水素化アルミニウム(AlH)、ボラン類(B)及び複合金属水素化物がある。複合金属水素化物には、Mg(AlHのようなある種のアラネート、及び金属ホウ水素化物がある。金属水素化物の組合せも考えられる。アラネートは次の一般式(I)で表される。
p(1−x)pxAlH3+p (I)
式中、Mはナトリウム又はカリウムであることができ、Mはリチウム又はカリウムであることができ、0≦x≦約0.8、1≦p≦3である。
【0012】
具体的なアラネートとしては、ナトリウムアラネート、カリウムアラネート、混合ナトリウム−リチウムアラネート、混合ナトリウム−カリウムアラネート、及び混合カリウム−リチウムアラネートがある。一実施形態では、複合金属水素化物はナトリウムアラネートからなる。
【0013】
金属ホウ水素化物には、ボラン類、多面体ボラン、及びホウ水素化物又は多面体ボランの陰イオンがある。適切なホウ水素化物としては、限定されることはないが、デカボラン(14)(B1014)のような中性ボラン化合物、式NHBH及びNHRBH(式中、x及びyは独立して1〜4に等しく、同一である必要はなく、Rはメチル又はエチル基である)のアンモニアボラン化合物、アンモニアボラン(ボラザン又はNHBH)、金属アミドトリヒドロボレートM(NHBH、ホウ水素化物塩(M(BH)、トリホウ水素化物塩(M(B)、デカヒドロデカボレート塩(M(B1010)、トリデカヒドロデカボレート塩(M(B1013)、ドデカヒドロドデカボレート塩(M(B1212)、並びにオクタデカヒドロイコサボレート塩(M(B2018)(ここで、Mはアルカリ金属陽イオン、アルカリ土類金属陽イオン、アルミニウム陽イオン、亜鉛陽イオン、及びアンモニウム陽イオンからなる群から選択される陽イオンであり、nは陽イオンの電荷に等しい)がある。幾つかの実施形態では、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、又はカルシウムである。幾つかの実施形態では、金属ホウ水素化物は式M(BHを有しており、式中のM=Mg、Ca、Zn、Ti、Zrであり、そしてこれらのアンモニアとの複合体M(BHmNHがあり、ここでmはn以下である。幾つかの実施形態では、金属ホウ水素化物はMg(BHである。幾つかの実施形態では、金属ホウ水素化物はMg(BH2NHである。これらのホウ素水素化物燃料は一般式M(OH)を有する金属水酸化物のような安定剤成分を含有していてもよく、式中のMはナトリウム、カリウム又はリチウムのようなアルカリ金属陽イオン、カルシウムのようなアルカリ土類金属陽イオン、アルミニウム陽イオン、及びアンモニウム陽イオンからなる群から選択される陽イオンであり、nは陽イオンの電荷に等しい。
【0014】
金属水素化物は、水素貯蔵材料の総重量を基準にして約30〜約70重量%の量で存在することができる。この範囲内で、金属水素化物は、約40重量%以上、特に約45重量%以上の量で存在することができる。また、この範囲内で、複合金属水素化物は約60重量%以下の量で存在し得る。
【0015】
水素貯蔵材料はさらに、金属水素化物若しくは液体有機担体又は両者のための吸収/脱着触媒を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、触媒はPd、Pt、Ru、Ni、及びこれらの混合物を含む脱水素化触媒であり、これらは活性炭、アルミナ、シリカなどのような高い表面積の支持体上にあることができる。幾つかの実施形態では、触媒はチタンの化合物又は合金である。幾つかの実施形態では、触媒はホウ水素化物触媒である。ホウ水素化物触媒は第IV族、第V族金属又はこれらの組合せ、並びに任意の有機リガンド、例えばシクロペンタジエニルリガンドを含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、金属はチタン、ジルコニウム又はこれらの組合せからなる群から選択される。代表的な有機リガンドとして、上に述べたようなシクロペンタジエニル、並びにホスフィン、アミン、及びエーテルのような中性リガンドがある。
【0016】
幾つかの実施形態では、水素貯蔵材料はさらに、有機水素担体中の金属水素化物のスラリー又はエマルションを安定化するために、金属水素化物と反応しない界面活性剤を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、界面活性剤はポリエチレングリコールのジアルキルエーテルからなる。幾つかの実施形態では、界面活性剤はテトラアルキルアンモニウム又はテトラアルキルホスホニウム陽イオンとハロゲン化物又はホウ水素化物陰イオンとの塩からなる。
【0017】
水素貯蔵材料は、予め粉砕した金属水素化物を有機水素担体と単に混合することにより、又は金属水素化物を有機水素担体中にボールミル粉砕又は分散させることにより製造し得る。幾つかの実施形態では、水素貯蔵材料は金属ホウ水素化物のスラリー又はエマルションをアンモニアで処理することにより製造することができる。
【0018】
燃料電池12(例えば、PEM燃料電池)、水素貯蔵材料タンク16、及び脱水素化反応器14を含む水素貯蔵/燃料電池システム10を図1に示す。燃料電池は脱水素化反応器と流体連通している。脱水素化反応器はまた水素貯蔵材料タンクとも流体連通している。水素貯蔵材料は、限定されることはないが圧力差、重力供給法、及びポンプを始めとする幾つかの方法により水素貯蔵材料タンクから脱水素化反応器へ移動させることができる。図に示したように、脱水素化反応器14内で必要に応じて生成した水素(H)及び空気は燃料電池12内で電気化学的に反応して電気と排ガスを生じる。この排ガスは通例、脱水素化反応器14を加熱して、PEM燃料電池12内における電気化学反応のための水素を放出するのに使用される。脱水素化反応器は、有機水素担体の脱水素化を促進するために脱水素化触媒を有する触媒活性表面をもっていてもよい。脱水素化触媒はまた金属水素化物と液体有機水素担体の移動可能な混合物中に分散していることもできる。システム10はさらに、水素を消耗した液体担体及び消耗した金属水素化物の混合物を貯蔵するための貯蔵タンクを含んでいる。システム10は、水素貯蔵システム内に必要とされる2つの貯蔵タンクを兼ね備えていることができ、有機水素担体中の金属水素化物のスラリーと水素を消耗した液体及び金属水素化物との両方を貯蔵するために、貯蔵タンクまたは容器を複数の部分に分割するセパレーター104、例えば膜セパレーターを含む単一の貯蔵タンクまたは容器16を利用する。別の実施形態では、膜セパレーター104は可撓性の膜である。かかる構成により、システム10は、殊に燃料再供給プロセスにおいてずっとコンパクトで効率的になる。
【0019】
幾つかの実施形態では、燃料電池システム10は図2に示したようにさらに触媒燃焼器18を含んでいる。燃料電池システム10は燃料電池12、触媒燃焼器18、脱水素化反応器14及び水素貯蔵タンク16を含んでいる。消費されていない水素を含有する燃料電池12からのアノード排ガスを、カソード排ガス及び場合によっては空気を用いて触媒燃焼器18で燃焼させて約150℃より高く、通例約300℃より高い温度のオフガスを生成する。高めの温度のオフガスは脱水素化反応器14から水素を放出するのに使用される。幾つかの実施形態では、触媒燃焼器は、より低い温度で燃料電池を始動するための電熱器と連結される。触媒燃焼器及びこれを含む燃料電池システムは米国特許出願公開第2007/0026272号及び同第2007/0128485号に記載されている。貯蔵タンク16は、セパレーター104により分離された、水素に富む貯蔵材料と水素を消耗した貯蔵材料を貯蔵するための2つの貯蔵タンクを併せもっている。
【実施例】
【0020】
以上の材料を、以下の非限定的実施例によりさらに説明する。
【0021】
金属水素化物は、自社内で合成し、その後元素分析とX線回折結晶学(XRD)によって特性を決定した。ペルヒドロ−N−エチルカルバゾール(CAS# 146900−30−3)はAir Productsから入手した。
【0022】
水素脱着実験は、凝縮器、並びにガス入口用及びガス出口用の栓を備えた50mlの三首フラスコで行った。アルゴングローブボックス内で0.5〜1ミリリットル(ml)のペルヒドロ−N−エチルカルバゾール、脱水素化触媒(5%Pd/Al)、金属水素化物及び磁気撹拌棒をフラスコに入れた。このフラスコを加熱マントルの上に載せ、窒素パージに繋いだ。15分の窒素パージの後、圧力ゲージを備えた3リットル(L)の水銀を密閉したピストン体積試験装置にガス出口を接続して発生するガスを測定した。加熱はDigi−Sense温度調節器で制御した。30℃から250℃まで2℃/minで、次いで250℃から275℃まで1℃/minで温度を上げた。装置を室温に冷却した後最終のガス測定をした。ガス体積は温度と圧力に対して補正した。液体生成物をGCMSとNMRで分析した。結果を下記表に示す。金属水素化物担体、及び触媒の量をグラム(g)で示す。「MH(wt%)」は混合物中の金属水素化物の重量%である。「担体変換率」は有機水素担体の完全に脱水素化された生成物への変換率を示す。「全H(wt%)」は金属水素化物と有機水素担体の混合物から放出された水素の重量%である。
【0023】
【表1】

脱水素化後の液体相のNMRとGCMSは、対照実験及び水素化アルミニウムを用いた実験で出発ペルヒドロ−N−エチルカルバゾールから芳香族N−エチルカルバゾールへのほぼ完全な変換を示している。水素化アルミニウムを添加すると、貯蔵材料の水素容量が30%超まで増大する。金属水素化物としてBHNHとMg(BH2NHを使用した場合、これらの水素化物から放出される微量のアンモニアによるPd触媒の被毒のために部分的な変換のみが観察された。アンモニアに対して感受性でない脱水素化触媒を使用すると材料の変換率と全水素貯蔵能が増大する。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を使用しているが、以下の意味を有するものとして定義される。用語「第1」、「第2」など、「一次」、「二次」など、「(a)」、「(b)」などは、本明細書で使用する場合、順序、量、又は重要度を意味するものではなく、ある要素を別の要素から区別するために使用している。同一の成分又は性質に関する全ての範囲の終点はこの終点を含むものとし、独立して組合せ可能である。本明細書を通じて「一実施形態」、「別の実施形態」、「ある実施形態」、「幾つかの実施形態」などという場合、その実施形態に関連して記載した特定の要素(例えば、特徴、構造、性質、及び/又は特性)が本明細書に記載した少なくとも一実施形態に含まれており、他の実施形態では存在してもしなくてもよいことを意味する。加えて、記載されている要素は様々な実施形態で適切に組み合わせることができるものと了解されたい。単数形態は前後関係から明らかに他の意味を有さない限り複数の場合も意味する。「任意の」又は「場合により」とは、その後に記載されている事象又は状況が起こってもよいし起こらなくてもよいことを意味し、その記載はその事象が起こる場合と起こらない場合とを包含して意味している。
【0025】
本明細書では、最良の形態を含めて本発明を開示するために、また当業者が本発明を実施し利用することができるように、実施例を記載している。本発明が特許を請求する範囲は後続の特許請求の範囲に定義されており、当業者には自明の他の例も包含し得る。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言通りでない構成要素を有していても、又は特許請求の範囲の文言とは多少異なる等価な構成要素を含んでいても、特許請求の範囲の範囲内に入る。
【0026】
引用した特許、特許出願、その他の文献は全て、援用によりその全体が本明細書の一部をなす。しかし、本明細書中の用語が援用した文献中の用語と異なる場合は、本明細書中の用語が援用する文献の用語より優先する。
【符号の説明】
【0027】
10 水素貯蔵/燃料電池システム
12 燃料電池
14 脱水素化反応器
16 水素貯蔵材料タンク
18 触媒燃焼器
104 セパレーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属水素化物及び有機水素担体を含んでなる水素貯蔵材料。
【請求項2】
有機水素担体が液体形態である、請求項1記載の貯蔵材料。
【請求項3】
有機水素担体が金属水素化物の脱水素化温度の約100℃以内の温度で脱水素し、有機水素担体が約200℃以上の沸点を有する、請求項1又は2に記載の貯蔵材料。
【請求項4】
有機水素担体が環式炭化水素、部分的又は完全に水素化された窒素含有芳香族複素環、部分的又は完全に水素化された芳香族炭化水素からなる、請求項1又は2に記載の貯蔵材料。
【請求項5】
有機水素担体が、2−アミノピリジン、4−メチルピリミジン、ジピリミジンメタン、ジメチルテトラジン、ジピリミジン、ジアザカルバゾール、アルキルカルバゾール、4−アミノピリジン、ジピラジンメタン、トリピラジンメタン、トリピラジンアミン、ジピラジン、テトラアザカルバゾール、イソキノリン、ジ(2−ピリジル)アミン、キナゾリン、部分的若しくは完全に水素化されたナフタレン、ベンゼン、アントラセン、ペルヒドロ−N−エチルカルバゾール、シクロヘキサン、テトラヒドロイソキノリン、テトラリン、デカリン、又は以上のものの2種以上の組合せからなる、請求項1又は2に記載の貯蔵材料。
【請求項6】
水素貯蔵材料がスラリー又はエマルションである、請求項1又は2に記載の貯蔵材料。
【請求項7】
脱水素化反応器(14)と流体連通している燃料電池、及び
脱水素化反応器(14)と流体連通している水素貯蔵材料タンク(16)
を含んでなり、水素貯蔵材料タンク(16)が水素貯蔵材料を含有しており、水素貯蔵材料が金属水素化物及び有機水素担体を含んでなる、水素貯蔵/燃料電池システム(10)。
【請求項8】
脱水素化反応器が触媒活性表面を有する、請求項7記載の水素貯蔵/燃料電池システム。
【請求項9】
さらに、消耗した水素貯蔵材料用の貯蔵タンクを含む、請求項7記載の水素貯蔵/燃料電池システム。
【請求項10】
水素貯蔵材料タンクが水素貯蔵材料の貯蔵用の第1の部分及び消耗した水素貯蔵材料の貯蔵用の第2の部分を含んでなり、第1の部分及び第2の部分が可撓性の膜により分離されている、請求項9記載の水素貯蔵/燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−242232(P2009−242232A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75416(P2009−75416)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】