説明

水質改質システム

【課題】 濾過成分に関する第一要求水質および溶存酸素に関する第二要求水質を満たしつつ、システムの省エネを実現する水質改質システムを提供すること。
【解決手段】 互いに並列接続された複数の濾過膜部10,10,…と、各濾過膜部10,10,…毎に設けられ被処理水を各濾過膜部10,10,…へ供給するポンプ11と、各濾過膜部10,10,…の下流側に接続される脱気膜部8と、各ポンプ11を制御する制御部13,20とを備える水質改質システムであって、各ポンプ11が回転数制御可能に構成され、制御部13,20は、各濾過膜部10,10,…による濾過成分に関する処理水の水質が第一要求水質以上を満たすとともに、脱気膜部8による溶存酸素に関する処理水の水質が第二要求水質以上を満たす処理水流量の範囲で各ポンプ11の回転数を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラなどの機器に供給するための給水の水質を膜濾過装置を用いて改質する水質改質システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種水質改質システムにおいて、被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の濾過膜部と、各濾過膜部毎に設けられ被処理水を濾過膜部へ供給するポンプと、濾過膜部の下流側に接続される脱気膜部と、ポンプを制御する制御部とを備え、濾過膜部による濾過成分に関する処理水の水質(除去成分残存値)が第一要求水質以上を満たすとともに、脱気膜部による溶存酸素に関する処理水の水質(溶存酸素濃度)が第二要求水質以上を満たし、かつ機器の要求処理水流量となるようにポンプを制御するものは、特許文献1(図1参照)にて公知である。
【0003】
この水質改質システムは、各ポンプの運転と停止とを行う,すなわちポンプの運転台数を制御するのみであるので、要求処理水流量が減少してもポンプの消費電力の効果的な低減ができないとともに、運転中の各濾過膜部の処理水流量が第一要求水質以上となることが多く、第一要求水質を超える過剰水質の処理水を供給してしまう虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−279462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、前記第一要求水質および前記第二要求水質を満たしつつ、システムの省エネを実現する水質改質システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の濾過膜部と、前記各濾過膜部毎に設けられ被処理水を前記各濾過膜部へ供給するポンプと、前記各濾過膜部の下流側に接続される脱気膜部と、前記各ポンプを制御する制御部とを備える水質改質システムであって、前記各ポンプが回転数制御可能に構成され、前記制御部は、前記各濾過膜部による濾過成分に関する処理水の水質が第一要求水質以上を満たすとともに、前記脱気膜部による溶存酸素に関する処理水の水質が第二要求水質以上を満たす処理水流量の範囲で前記各ポンプの回転数を制御することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、前記ポンプの運転台数のみで流量を制御する従来装置と比較して、きめ細かく前記各ポンプの回転数を制御できるので、前記ポンプの消費電力を低減することができるとともに、前記第一要求水質に関して水質過剰を抑えることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記制御部は、前記処理水流量の範囲の下限値に近い処理水流量とする省エネ優先運転と前記処理水流量の範囲の上限値に近い処理水流量とする流量優先運転とを選択することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、省エネ優
先運転を行うことにより、省エネを実現できるとともに、前記流量優先運転を行うことで、供給処理水流量を多くできるという効果を奏する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の濾過膜部と、前記各濾過膜部毎に設けられ被処理水を前記各濾過膜部へ供給するポンプと、前記各濾過膜部の下流側に接続される脱気膜部と、前記各ポンプを制御する制御部とを備える水質改質システムであって、前記各ポンプが回転数制御可能に構成され、前記制御部は、前記各濾過膜部による濾過成分に関する処理水の水質が第一要求水質以上を満たし、前記脱気膜部による溶存酸素に関する処理水の水質が第二要求水質以上を満たすとともに前記機器からの総要求処理水流量以上となるように、前記各ポンプの回転数を制御するとともに前記ポンプの運転台数を制御することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記ポンプの運転台数のみで流量を制御する従来装置と比較して、きめ細かく前記各ポンプの回転数を制御し、かつポンプ運転台数を制御できるので、前記ポンプの消費電力を低減することができるとともに、前記第一要求水質に関して水質過剰を抑えることができ、しかも前記総要求処理水流量以上の処理水を供給することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、前記ポンプの運転台数のみで流量を制御する従来装置と比較して、前記ポンプの消費電力を低減することができるとともに、きめ細かく前記各ポンプの回転数を制御できるので、前記第一要求水質に関して水質過剰を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を実施した水質改質システムの実施例1の概略構成図である。
【図2】同実施例1の逆浸透膜部の概略構成図である。
【図3】同実施例1の制御手順の要部を示すフローチャート図である。
【図4】同実施例1の処理水タンク水位と運転モードとの関係を説明する図である。
【図5】同実施例1の流量比率に対する濾過水質(第一水質)Q1および脱気水質(第二水質)Q2の模式的特性図である。
【図6】同実施例1の濾過水質(第一水質)Q1および脱気水質(第二水質)Q2の水温による変化を説明する模式的性図である。
【図7】同実施例1の流量比率および水温をパラメータとした有効操作圧力特性図である。
【図8】同実施例1の流量比率および水温をパラメータとした省エネ比率特性図である。
【図9】この発明の実施例2の制御手順を説明するフローチャート図である。
【図10】同実施例2の処理水タンク水位と運転モードとの関係を説明する図である。
【図11】同実施例2における前記各逆浸透膜部および前記各脱気膜部の処理水流量と運転台数との関係を説明する図である。
【図12】この発明の実施例3の制御手順を説明するフローチャート図である。
【図13】同実施例3における前記各逆浸透膜部および前記各脱気膜部の処理水流量と運転台数との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施の形態を説明する。この発明の実施の形態は、ナノ濾過膜(NF膜、NF:Nanofiltration)を含む逆浸透膜による濾過処理部および脱気膜による脱気処理部を用いた水質改質システムに好適に実施することができる。
【0015】
(実施の形態1)
この発明の実施の形態1は、被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の濾過膜部と、前記各濾過膜部毎に設けられ被処理水を前記各濾過膜部へ供給するポンプと、前記各濾過膜部の下流側に接続される脱気膜部と、前記各ポンプを制御する制御部とを備える水質改質システムであって、前記各ポンプが回転数制御可能に構成され、前記制御部は、前記各濾過膜部による濾過成分に関する処理水の水質Q1が第一要求水質Q10以上を満たすとともに、前記脱気膜部による溶存酸素に関する処理水の水質Q2が第二要求水質Q20以上を満たす処理水流量の範囲で前記各ポンプの回転数を制御することを特徴とする水質改質システムである。前記濾過膜部,前記脱気膜部は、それぞれ膜濾過部,膜脱気部と称することができる。
【0016】
この実施の形態1においては、前記濾過膜部において被処理水中の不純物が除去され、前記脱気膜部にて被処理水中の溶存気体が除去される。この実施の形態1の水質改質システムは、前記濾過膜部による濾過成分に関する処理水の水質Q1が第一要求水質Q10以上を満たすとともに、前記脱気膜部による溶存酸素に関する処理水の水質Q2が第二要求水質Q20以上を満たす所定の処理水流量の範囲(所定流量範囲RW)が存在するように構成されている。前記制御部は、前記各ポンプの回転数を制御して、処理水流量が前記所定流量範囲RWに収まるように制御することにより、処理水の濾過水質(第一水質)Q1を第一要求水質Q10以上で、かつ脱気水質(第二水質)Q2を第二要求水質Q20以上に制御する。
【0017】
この実施の形態1によれば、ポンプの運転台数のみで流量を制御する従来装置と比較して、きめ細かく前記各ポンプの回転数を制御して流量を制御できるので、前記ポンプの消費電力を低減し、省エネを実現できるとともに、前記第一要求水質に関して水質過剰となることを抑制することができる。
【0018】
ここで、この実施の形態1の構成要素について説明する。前記濾過膜部は、好ましくは、ナノ濾過膜等の逆浸透膜により濾過成分を除去する逆浸透膜部を有する濾過装置とするが、逆浸透膜以外の限外濾過膜(UF膜)や精密濾過膜(MF膜)などの濾過膜を用いた濾過膜部とすることができ、特定の構造の濾過装置に限定されるものではない。
【0019】
前記濾過膜部の処理水流量(または流量比率)に対する濾過水質(第一水質)Q1は、処理水流量が多くなるほど濾過成分残存濃度が減少する(水質が良くなる)特性を有している。そして、この第一水質Q1は、被処理水の水温が上昇すると水質値が全体的に悪くなり(下がり)、水温が低下すると水質値が全体的に良くなる(上がる)特性を有するものである。前記流量比率とは定格流量などの特定流量に対する処理水流量の比率である。
【0020】
前記脱気膜部は、被処理水中の溶存気体を除去する脱気膜を有する脱気装置とするが、特定の構造の脱気装置に限定されるものではない。
【0021】
前記脱気膜部の処理水流量(または流量比率)に対する脱気水質(第二水質)Q2は、前記濾過膜部の特性と反対の特性,すなわち処理水流量が多くなるほど溶存気体残存濃度が増加する(水質が悪くなる)特性を有している。そして、この第二水質Q2は、被処理水の水温が上昇すると水質値が全体的に良くなり、水温が低下すると水質値が全体的に悪くなる特性を有するものである。
【0022】
前記ポンプは、回転数が制御可能なものであれば、特定のポンプに限定されない。回転数の制御は、好ましくは、インバータにより行うものとする。
【0023】
前記制御部は、被処理水の水温を検出する水温検出手段による検出信号に基づいて、検
出温度における前記第一水質Q1の特性(第一水質特性)および前記第二水質Q2の特性(第二水質特性)を特定する第一ステップと、処理水を使用する機器が要求する前記第一水質Q1に関する第一要求水質Q10以上を満たすとともに、前記機器が要求する第二水質Q2に関する第二要求水質Q2が第二要求水質Q20以上を満たす処理水流量の範囲(所定流量範囲RW)を演算する第二ステップと、前記各膜濾過部の処理水流量が前記所定流量範囲RW内の制御流量となるように前記各ポンプの回転数を制御する第三ステップを行う機能を有する。
【0024】
前記第一ステップにおける前記第一水質特性および前記第二水質特性の特定とは、前記制御部内または外部の記憶手段に記憶した特定温度における前記第一水質特性および前記第二水質特性を前記特定温度と前記水温検出手段による検出水温との差に基づく水温補正係数Xで補正する制御である。前記第一水質特性および前記第二水質特性は、処理水流量および水温をパラメータとして水質を表現するテーブル形式とするか、水質を処理水流量および水温の関数として表現した数式とすることができる。
【0025】
前記第二ステップにおいては、特定した前記第一水質特性と前記第一要求水質Q10とからこの第一要求水質Q10を満たす第一流量R10が演算され、特定した前記第二水質特性と前記第二要求水質Q20とからこの第二要求水質Q10を満たす第二流量R20が演算される。前記第一流量R10と前記第二流量R20との間が前記所定流量範囲RWとされる。
【0026】
前記第一流量R10は、好ましくは、前記所定流量範囲RWの下限値とするが、前記第一要求水質Q10以上を確実に満たすために、前記下限値に所定値を加算した値とすることが望ましい。また、前記第二流量R20は、好ましくは、前記所定流量範囲RWの上限値とするが、前記第二要求水質Q20以下を確実に満たすために、前記上限値から所定値を減算した値とすることが望ましい。
【0027】
前記第三ステップは、好ましくは、前記所定流量範囲RWの下限値(第一流量R10)またはこれに近い処理水流量とする省エネ優先運転と、前記所定流量範囲RWの上限値(第二流量R20)またはこれに近い処理水流量とする流量優先運転とを選択するように構成する。この省エネ優先運転と流量優先運転との切り換えは、前記脱気膜部にて処理された処理水を貯留する処理水タンクの水位に応じて行うよう構成する。具体的には、前記処理水タンクの水位が設定水位未満の場合は、流量優先運転を行い、前記水位が設定水位以上の場合は、省エネ優先運転を行うように構成することができる。
【0028】
前記水温検出手段は、水温センサにより被処理水の温度を検出するが、処理水の水温または前記各逆浸透膜部からの排水(濃縮水)の水温により間接的に検出するように構成することができる。
【0029】
前記実施の形態1においては、前記各濾過膜部の膜性能が一定という条件で説明したが、好ましくは、前記膜性能の変化を考慮した制御とする。この場合、前記各濾過膜部の膜性能を検出する膜性能検出手段を備え、前記制御部は、検出した膜性能に基づく劣化補正係数Yにより前記第一水質特性を補正することで求めることができる。前記膜性能検出手段により検出する膜性能は、膜の個体差および劣化に基づくもので、好ましくは、除去率または透過率として検出される。
【0030】
ここで、前記温度補正係数Xおよび前記劣化補正係数Yについて説明する。前記各濾過膜部の膜は、固体差による初期基準性能を有している。この初期基準性能は、初期基準透過率で表すことができる。この初期基準透過率は、システムの使用開始時に通水して前記制御部により求めることもできるが、システムの出荷前に、前記各濾過膜部毎に初期基準
透過率を求めてインプットしておくことができる。
透過率(%)=100−除去率(%)とする。透過率および除去率は、水質を表し、膜の固体差および劣化による膜性能を表す数値である。
【0031】
透過率は水温、圧力(流量)により影響を受ける。よって、実際の運転条件下での基準透過率は、次式で求めることができる。
実際の運転条件下での基準透過率=基準透過率(25℃、基準定格流量)×水温補正係数X×圧力(流量)補正係数
【0032】
実際に前記各濾過膜部を使用していくと除去率は、膜の劣化等によって悪くなる可能性もあるため、基準透過率は経時的に変化する。よって、劣化を考慮した実際の運転条件下での基準透過率は、次式となる。
実際の運転条件下での基準透過率=基準透過率(25℃、基準定格流量)×水温補正係数×圧力(流量)補正係数×劣化補正係数Y
この劣化補正係数Yは、現在の基準透過率/初期基準透過率によって求めることができる。この劣化補正係数Yは、リアルタイムで求めてもよいし、通水時間によってあらかじめ一定の係数としてもよい。例えば、1000h通水で劣化補正係数1.1とする。
【0033】
この実施の形態1においては、前記第一水質特性を流量変化に対する水質特性としているので、水温変化による補正は、前記第一水質特性に前記温度係数Xを乗ずることで行うことができ、膜性能変化による補正は、前記第一水質特性に前記劣化係数Yを乗ずることにより行うことができる。
前記除去率は、前記各膜濾過部の入口側と出口側の電気伝導度の差を入口側の電気伝導度で除すことで求める。
【0034】
結局、前記実施の形態1は、好ましくは、つぎのような構成を具備した水質改質システムである。
【0035】
この水質改質システムは、被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の濾過膜部と、前記各濾過膜部毎に設けられ被処理水を前記濾過膜部へ供給するポンプと、前記濾過膜部の下流側に接続される膜脱気部と、前記ポンプを制御する制御部とを備える水質改質システムであって、被処理水の水温を検出する水温検出手段と前記各濾過膜部の膜性能を検出する膜性能検出手段とを備え、前記各ポンプが回転数制御可能に構成され、前記制御部は、前記水温検出手段による水温および前記膜性能検出手段による膜性能に基づき、前記各濾過膜部の第一水質特性および前記第二水質特性を特定し、前記濾過膜部による濾過成分に関する処理水の水質Q1が第一要求水質Q10以上を満たすとともに、前記膜脱気部による溶存酸素に関する処理水の水質Q2が第二要求水質Q20以上を満たす所定処理水流量の範囲で前記各ポンプの回転数を制御することを特徴とする水質改質システムである。
【0036】
この水質改質システムによれば、前記各濾過膜部の膜性能を考慮した流量制御を行うので、前記所定流量範囲RWを適確に求めることができる。
【0037】
前記各濾過膜部が同じ構造で、同じ定格処理流量のものであり、かつ膜の初期性能が実質的に同じである場合は、前記記憶手段に記憶する前記第一水質特性は共通のものとすることができる。
【0038】
前記各濾過膜部の膜の初期性能が異なる場合は、前記水質特性を補正して前記各濾過膜部毎に求める。この場合、前記制御部は、前記各濾過膜部の膜の初期性能の相違に基づき前記第一水質特性を補正して前記所定流量範囲RWを求めることができる。
【0039】
(実施の形態2)
この発明は、上述の実施の形態1に限定されるものではなく、つぎの実施の形態2とすることができる。この実施の形態2は、被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の濾過膜部と、前記各濾過膜部毎に設けられ被処理水を前記各濾過膜部へ供給するポンプと、前記各濾過膜部の下流側に接続される膜脱気部と、前記各ポンプを制御する制御部とを備える水質改質システムであって、前記各ポンプが回転数制御可能に構成され、前記制御部は、前記各濾過膜部による濾過成分に関する処理水の水質Q1が第一要求水質Q10以上を満たし、前記膜脱気部による溶存酸素に関する処理水の水質Q2が第二要求水質Q20以上を満たすとともに要求処理水流量以上となるように、前記各ポンプの回転数を制御するとともに前記ポンプの運転台数を制御することを特徴とする水質改質システムである。
【0040】
この実施の形態2は、前記制御部が前記第一要求水質Q10および前記第二要求水質Q20を満たすように前記各ポンプの回転数を制御する構成において、前記実施の形態1と同様であるが、前記脱気膜部から流出する処理水について所定の要求流量が存在し、前記制御部がこの要求流量を満たすために、前記ポンプの運転台数をも制御する点で前記実施の形態1とは異なる。
【0041】
この実施の形態2において、前記制御部は、被処理水の水温を検出する水温検出手段による検出信号に基づいて、検出温度における前記第一水質Q1の特性(第一水質特性)および前記第二水質Q2の特性(第二水質特性)を特定する第一ステップと、処理水を使用する機器が要求する前記第一水質Q1に関する第一要求水質Q10以上を満たすとともに、前記機器が要求する第二水質Q2に関する第二要求水質Q2が第二要求水質Q20以上を満たす処理水流量の所定流量範囲RWを演算する第二ステップと、この第二ステップによる所定流量範囲RWおよび前記機器の要求流量から、前記第一要求水質Q10および前記第二要求水質Q2以上を満たすとともに、前記各濾過膜部にて処理された処理水流量の合計が前記要求流量以上となるポンプ運転台数および前記各濾過膜部の制御流量(目標流量)を演算する第三ステップと、この第三ステップにて設定されたポンプ運転台数となるようにポンプ運転台数を制御する第四ステップと、前記各膜濾過部の処理水流量が前記制御流量となるように前記各ポンプの回転数を制御する第五ステップとを行う機能を有する。
【0042】
この実施の形態2における前記第一ステップ,第二ステップおよび第五ステップは、それぞれ前記実施の形態1の前記第一ステップ,第二ステップおよび第三ステップに相当するので、その説明を省略する。
【0043】
前記第四ステップは、要求流量以上を満たす流量優先運転であり、ある水温において前記各濾過膜部の処理水流量が前記所定流量範囲RWに入らない場合は、前記ポンプの運転台数を制御することにより、前記各濾過膜部の処理水流量が前記所定流量範囲RWに入るように、かつ前記各濾過膜部の処理水流量の合計流量が前記要求流量以上となるように制御する。
【0044】
この実施の形態2においては、好ましくは、前記流量優先運転と省エネ優先運転とを選択可能に構成する。この省エネ優先運転は、前記要求流量を考慮しない運転で、前記実施の形態1の省エネ優先運転と同様である。
【0045】
前記実施の形態1、2において、前記脱気膜部が互いに並列の関係に接続される複数の脱気膜部から構成される場合、前記各脱気膜部の前記各濾過膜部に対する接続関係は、つぎの二つの態様を含んでいる。
【0046】
第一の態様は、前記各濾過膜部の出口配管が集合され、前記各脱気膜部の入口配管が集合されている態様である。この態様においては、前記濾過膜部の運転台数を前記ポンプの運転台数で制御することができるが、前記各脱気膜部の処理水の流れを制御する弁を設けない場合は、前記脱気膜部の運転台数を制御することはできない。前記各脱気膜部の処理水の流れを制御する弁を設ける場合は、前記脱気膜部の運転台数を制御することができる。
【0047】
第二の態様は、前記各濾過膜部の出口配管および前記各脱気膜部の入口配管が集合されず、前記各濾過膜部の出口配管に前記各脱気膜部を接続した態様である。この態様では、前記ポンプの運転を停止した前記各濾過膜部および前記各脱気膜部には被処理水は流れない、すなわち前記濾過膜部の運転台数と前記脱気膜部の運転台数とを別個に制御することはできない。
【実施例1】
【0048】
以下、この発明の水質改質システムの実施例1を図面に基づき説明する。図1は、同実施例1の概略構成図である。図2は、同実施例1の各膜濾過部の概略構成図である。図3は、同実施例1の制御手順を説明するフローチャート図である。図4は、同実施例1の処理水タンク水位と運転モードとの関係を説明する図である。図5は、同実施例1の流量比率に対する濾過水質(第一水質)Q1および脱気水質(第二水質)Q2の模式的特性図であり、図6は、同実施例1の濾過水質(第一水質)Q1および脱気水質(第二水質)Q2の水温による変化を説明する模式的特性図であり、図7は、同実施例1の流量比率および水温をパラメータとした有効操作圧力特性図であり、図8は、同実施例1の流量比率および水温をパラメータとした省エネ比率特性図である。
【0049】
図1において、実施例1の水質改質システム1は、熱機器2へ供給する給水の水質を改質するための水質改質システムであって、前記熱機器2へ給水を供給する給水ライン3と、この給水ライン3に接続される活性炭濾過装置4と、軟水装置5と、プレフィルタ6と、互いに並列に接続される複数の膜濾過装置7(7−1,7−2,7−3)と、互いに並列に接続される複数の脱気膜部8(8−1,8−2,8−3)と、前記熱機器2へ供給する処理水を貯留する処理水タンク9とを備えて構成されている。前記各膜濾過装置7の出口配管は、1本の集合配管(符号省略)にて連結され、前記各脱気膜部8の入口配管は、1本の集合配管(符号省略)にて連結されている。
【0050】
前記熱機器2は、蒸気ボイラ、温水ボイラ、クーリングタワー、給湯器等である。前記活性炭濾過装置4は、給水中に溶存する次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を吸着除去するための装置として構成されている。前記軟水装置5は、前記残留塩素が除去された給水中に含まれるカルシウム、マグネシウム等の硬度成分をイオン交換樹脂(図示省略)により除去する装置として構成されている。前記プレフィルタ6は、給水中のゴミ等を除去するためのものである。
【0051】
図2を参照して、前記各膜濾過装置7は、それぞれ逆浸透膜部10と、この逆浸透膜部10の上流側に接続されるポンプ11と、前記各逆浸透膜部10の上流側および下流側に接続される各種検出器12(12a〜12e)と、前記ポンプ11に接続されるインバータ(図示省略)と、前記ポンプ11の制御と、前記各逆浸透膜部10の濾過部材の詰まりおよび/または劣化の判断、および装置全体の制御と、前記詰まりおよび/または劣化の警報を表示にて行う通報手段(図示省略)の制御とを行う第一制御器13とを備えて構成されている。以下、前記各構成について説明する。
【0052】
前記各逆浸透膜部10は、濾過部材としてナノ濾過膜(NF膜、NF:Nanofil
tration)を備えて構成されている。
【0053】
前記各逆浸透膜部10の一端には、前記ポンプ11から送り出された給水が流入するようになっている。流入した給水は、前記各逆浸透膜部10の内部において、ナノ濾過膜により、濾過成分としての腐食促進成分が捕捉されるとともに腐食抑制成分が透過されるようになっている。前記各逆浸透膜部10の他端からは、透過水と濃縮水とが流出するようになっている。その透過水は、処理水として前記給水ライン3を流れて前記処理水タンク9に貯留されるようになっている。一方、濃縮水は、その一部が排水ライン14側へ流れるとともに、残りが循環水ライン15を流れて前記ポンプ11の上流側に供給されるようになっている。
【0054】
前記ポンプ11は、前記プレフィルタ6の下流側の給水ライン3を流れる、ゴミ等が除去された給水を前記各逆浸透膜部10に供給するためのものであって、その回転数は、前記インバータから出力される出力周波数に応じて可変するように構成されている。
【0055】
前記各脱気膜部8は、脱気膜の一側に被処理水を流し、前記脱気膜の他側を真空ポンプ(図示省略)により真空引きして被処理水中に含まれる溶存気体を除去するもので、周知の構成のものが使用される。
【0056】
前記各種検出器12としては、第一流量センサ12a、水温センサ12b、第一電気伝導度センサ12c、第二電気伝導度センサ12dを含む。前記第一流量センサ12aは、前記各逆浸透膜部10を通過した透過水の水量を検知して流量検知信号を前記第一制御器13に出力するものであって、前記各逆浸透膜部10の下流側の給水ライン3に接続されている。
【0057】
前記水温センサ12bは、水温検出手段として機能するもので、前記各逆浸透膜部10の上流側の給水ライン3、前記各逆浸透膜部10の下流側の給水ライン3、前記排水ライン14のいずれかに接続され、この実施例1では、前記各逆浸透膜部10の上流側であって、前記ポンプ11の上流側の給水ライン3に接続されている。この水温センサ12bは、給水の温度を検知して温度検知信号を前記第一制御器13に出力するように構成されている。
【0058】
前記第一伝導度センサ12c,前記第二電気伝導度センサ12dは、それぞれ前記各逆浸透膜部10の上流側の給水ライン3,下流側の給水ライン3に接続され、その検知信号を前記第一制御器13に出力するように構成されている。
【0059】
前記第一電気伝導度センサ12c,前記第二電気伝導度センサ12dは、透過率を検出する膜性能検出手段として機能する。
【0060】
前記第一制御器13は、CPU,記憶手段(ROM,RAM)およびインタフェースを備えている。前記記憶手段には、前記各逆浸透膜部10の処理水流量,水温および濾過水質(第一水質)Q1の相互の関係特性と、前記各脱気膜部8の処理水流量,水温および脱気水質(第二水質)Q2の相互の関係特性とを予め記憶している。
【0061】
ある膜性能における前記逆浸透膜部10の処理水流量に対する第一水質Q1は、図5の太い実線で模式的に示すように、処理水流量が多くなるほど濾過水質が良くなる特性(第一水質特性)となっている。そして、この第一水質Q1は、図6に示すように、被処理水の水温が上昇すると水質値が全体的に悪くなり、水温が低下すると水質値が全体的に良くなる特性を有するものである。水温変化に伴う前記第一水質Q1は、基準温度(例えば、25℃)における第一水質特性Q1に前記各逆浸透膜部10の温度補正係数を乗ずること
で求める。
【0062】
また、ある膜性能における前記脱気膜部8の処理水流量に対する第二水質Q2は、図5の細い実線で模式的に示すように、前記逆浸透膜部10の特性と逆に,処理水流量が多くなるほど脱気水質が悪くなる特性(第二水質特性)となっている。そして、この第二水質Q2は、図6に示すように、被処理水の水温が上昇すると水質値が全体的に良くなり、水温が低下すると水質値が全体的に悪くなる特性となっている。水温変化に伴う前記第一水質Q1は、基準温度(例えば、25℃)における第二水質特性Q2に前記各脱気膜部8の温度補正係数を乗ずることで求める。
【0063】
よって、前記熱機器2による前記第一水質Q1の第一要求水質をQ10,前記第二水質Q2の第二要求水質をQ20とした場合、被処理水の水温が所定の低温,中温,高温における前記第一要求水質Q10および前記第二要求水質Q20を満たす処理水流量の範囲(所定流量範囲RW)は、図6のように模式的に変化する。但し、これは、前記逆浸透膜部10および前記脱気膜部8のそれぞれの膜性能を所定値とし、被処理水の第一水質Q1および第二水質Q2を一定にするという条件下において成立する。
【0064】
前記第一制御器13は、前記各種検出器12a〜12eからの信号と後記第二制御器20からの信号を入力して、前記記憶手段に記憶している図3に示す流量制御手順などを実行する。この流量制御手順は、検出温度における前記第一水質特性および前記第二水質特性を特定する第一ステップと、前記第一要求水質Q10以上を満たすとともに、前記第二要求水質Q20以上を満たす所定流量範囲RWを演算する第二ステップと、前記各逆浸透膜部10の処理水流量が前記所定流量範囲RW内の所定制御流量となるように前記各ポンプ11の回転数を制御する第三ステップを行うものである。この実施例1では、前記第一要求水質Q10は、腐食促進成分残存許容値であり、前記第二要求水質Q20は、溶存酸素残存許容値である。
【0065】
前記第三ステップは、前記所定流量範囲RWの下限値の処理水流量(第一流量R10)とする省エネ優先運転と、前記所定流量範囲RWの上限値の処理水流量(第二流量R20)とする流量優先運転とを選択するように構成されている。
【0066】
図1を再び参照して、前記各膜濾過装置7の下流側には、それぞれ電磁弁17(17−1,17−2,17−3)を設けるとともに、前記処理水タンク9の上流側であって、前記各膜濾過装置7の処理水が合流して流れる前記給水ライン3には、第一水質確認用の第三電気伝導度センサ12eおよび流量確認用の第二流量センサ12fを設け、前記各脱気膜部8と前記処理水タンク8との間の給水ライン3には、第二水質確認用の溶存酸素濃度センサ12gを設けており、その検出信号は、第二制御器20へ入力される。
【0067】
前記第二制御器20は、前記各第一制御器13と接続され、前記各膜濾過装置7を制御するとともに、前記各電磁弁17を制御する。前記各電磁弁17は、前記各逆浸透膜部10の洗浄が必要となったときなどに、閉じられるが、それ以外は開いている。
【0068】
前記第二制御器20は、前記水位センサ16の検出水位に応じて、停止,省エネ優先運転,流量優先運転の信号を前記各第一制御器13へ送り、前記膜濾過装置7および前記脱気膜部8を制御する。その制御手順は、つぎのように構成されている。
【0069】
すなわち、図4に示すように、前記処理水タンク9の水位上昇時において、水位が第一水位L未満のとき、前記各ポンプ11を流量優先運転させる第一指令を、第一水位L+A以上となると前記各ポンプ11を前記省エネ優先運転させる第二指令を、第二水位H以上となると前記各ポンプ11を停止させる第三指令を前記第一制御器13へ送信する制御を
行うものである。
【0070】
また、前記第二制御器20は、前記第三電気伝導度センサ12eおよび前記溶存酸素濃度センサ12gの検出信号により、第一要求水質Q10および前記第二要求水質Q20が満たされているかどうかを判定することが望ましい。そして、両要求水質Q10,Q20が満たされていない場合は、前記制御流量を調整して前記流量センサ19の検出信号により、要求水量が満たされているかどうかを判定し、満たされていない場合には、通報手段により使用者に通報する制御を行うことが望ましい。さらに、この場合、両要求水質Q10,Q20が満たされるように制御流量の自動的な変更を行うことが望ましい。
【0071】
前記第二制御器20の制御手順には、前記各電磁弁17を前記各逆浸透膜部10の洗浄が必要となったときなどに閉じ、それ以外は開く制御を含んでいる。
【0072】
この第二制御器20の制御機能は、前記各第一制御器13に持たせることができる。この場合、前記第二制御器20を省略することができる。また、前記各第一制御器13の制御機能を前記第二制御器20に統合して持たせることができる。この場合、前記第一制御器13を省略することができる。
【0073】
つぎに、この実施例1の動作を以下に説明する。
(全体的な動作)
図示しない被処理水タンクから流出した給水は、先ず、前記活性炭濾過装置4を通過し、残留塩素が除去された状態の給水となる。次に、その給水は、前記軟水装置5を通過して軟水となる。続いて、その軟水である給水(被処理水)は、前記プレフィルタ6を通過以後、前記各膜濾過装置7において濾過処理がなされて処理水となり前記熱機器2へ供給可能な給水となる。具体的には、軟水である被処理水が前記膜濾過装置7の各逆浸透膜部10において、ナノ濾過膜を通過する際に、硫酸イオン、塩化物イオン等の腐食促進成分がナノ濾過膜により捕捉される。すなわち、腐食促進成分が軟水から除去される。一方、軟水に含まれるシリカ、すなわち腐食抑制成分は、軟水と共にナノ濾過膜を透過する。濾過処理後の腐食抑制成分を含む軟水となる処理水は、前記各脱気膜部8へ供給され、ここで脱気された後、前記熱機器2へ供給可能な給水として前記処理水タンク9に貯留される。
【0074】
(流量制御動作)
つぎに、図3の制御手順に基づく、この実施例1の動作を説明する。
処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する。)において、事前に前記記憶手段に記憶した前記第一要求水質Q10および前記第二要求水質Q20を読み出す(判定する)。S2において前記第二要求、前記水温センサ12aにより水温を検出する。
【0075】
S3において、前記各逆浸透膜部10の膜性能の検出,すなわち透過率を演算する。この透過率(%)の演算は、100−除去率(%)で求める。前記除去率は、前記各膜濾過部の入口側と出口側の電気伝導度の差を入口側の電気伝導度で割ることにより求める。
【0076】
S4において、前記記憶手段に記憶している図5に示すような前記第一水質特性Q1および前記第二水質特性Q2を読み出す。そして、S5において、前記第一水質特性Q1について、S3で検出した膜性能に基づき補正する。具体的には、前記第一水質特性Q1に、つぎの前記劣化補正係数Yを乗ずることにより補正する。
劣化補正係数Y=検出(現在)基準透過率÷初期基準透過率
但し、初期基準透過率は、前記各膜濾過部10の膜性能の個体差を表すシステム運転開始当初の透過率であり、検出基準透過率は、現在の透過率である。
【0077】
ついで、S6において、補正した前記第一水質特性および前記第二水質特性から前記第一要求水質Q10および前記第二要求水質Q20を満たす前記所定流量範囲RW(図6参照)を演算する。
【0078】
そして、S7において、前記第二制御器20からの指令に基づき、前記第一制御器13は、運転モードを判定する。前記処理水タンク9の水位が第一水位L未満であると、前記第二制御器20から流量優先運転の指令が送付される。すると、S7にて、流量優先運転が判定され、S10へ移行して、前記各ポンプ11による制御流量を前記所定流量範囲RWの上限値R20に設定する。S11で、前記各ポンプ11の回転数を前記各流量センサ12aの検出流量がS10で設定した制御流量となるようにフィードバック制御する。この流量優先運転により、処理水が前記各逆浸透膜部10から前記所定流量範囲RWの最大処理流量で前記処理水タンク9へ供給されるので、前記処理水タンク9の水位は比較的速く上昇する。
【0079】
前記処理水タンク9の水位が第二水位(L+A)以上となると、前記第二制御器20から省エネ優先運転の指令が送付される。すると、S7にて、省エネ優先運転が判定され、S8へ移行して、前記第一制御器13は、前記各ポンプ11による制御流量を前記所定流量範囲RWの下限値R10に設定する。そして、S9にて、前記各ポンプ11の回転数を前記各流量センサ12aの検出流量がS8で設定した制御流量となるようにフィードバック制御する。
【0080】
ここで、処理水流量が前記所定流量範囲RWにおける最小流量となるように前記各ポンプ11を制御することによりと省エネが実現される理由について説明する。今、前記透過流束を40(L/m2・h・MPa),定格流量を4000(L/h)とした場合、前記逆浸透膜部10の流量比率(処理水流量)と水温とをパラメータとした操作圧特性は、例えば、図7で示すような特性となる。この特性は、水温を一定とした場合、流量比率が増大するにつれて当該処理水流量とするために必要とする操作圧が増大する傾向を示している。
【0081】
一方、前記ポンプの消費電力は、操作圧力の1.5乗に比例する。すなわち、省エネ比率=(W2/W1)∝(P2/P1)1.5で表される。操作圧力特性が図7であるとすると、省エネ比率は、図8のようになる。したがって、前記第一要求水質Q10を満たす最小流量とする流量比率が70%運転の場合、ポンプ消費電力比は、100/70(時間比)×0.586(ポンプ消費電力比)=0.837となり、16.3%の省電力となる。同様に60%運転なら22.5%の省電力,50%運転なら29.2%の省電力となる。
【0082】
また、前記処理水タンク9の水位が第三水位H以上となると、前記第二制御器20から停止の指令が送付される。すると、S7にて、停止が判定され、S12にて前記各ポンプ11は運転停止となる。前記処理水タンク9の水位が低下する場合は、停止から前記第三水位,前記第二水位をそれぞれ所定のディファレンシャルで下回る毎に、省エネ優先運転→流量優先運転となる制御が行われる。
【0083】
この実施例1の水質改質システムによれば、ポンプの運転台数のみで流量を制御する従来装置と比較して、きめ細かく前記各ポンプ11の回転数を制御して流量を制御できるので、前記各ポンプ11の消費電力を低減し、省エネを実現できるとともに、前記第一要求水質Q10に関して水質過剰となることを抑制することができる。そして、水温および前記各逆浸透膜部10の膜性能の変化(膜の劣化)に拘わらず、処理水の水質を維持しつつポンプの消費電力を低減し、高い省エネを簡易に実現することができる。また、前記各逆浸透膜部10毎に膜性能の変化を考慮した流量制御を行えるので、前記各逆浸透膜部10の処理水の水質を前記第一要求水質Q10を満たしつつ均一化できるものである。
【0084】
また、処理水水質の変化を処理水流量で捉えて、前記所定流量となるように前記各ポンプ11の回転数を制御するように構成しているので、処理水水質を検出して所定の処理水質となるように制御するものと比較して、ハンチングの可能性が少なく、安定した水質、流量制御を行うことができる。
【実施例2】
【0085】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではなく、図9に示す制御手順を実行する実施例2を含むものである。この実施例2は、被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の逆浸透膜部10,10,10と、前記各逆浸透膜部10毎に設けられ被処理水を前記逆浸透膜部へ供給するポンプ11と、前記逆浸透膜部10の下流側に接続される膜脱気部8と、前記ポンプ11を制御する制御器13,20とを備える水質改質システムであって、被処理水の水温を検出する水温センサ12bと前記各逆浸透膜部10の膜性能を検出する膜性能検出手段とを備え、前記各ポンプ11が回転数制御可能に構成され、前記制御器12、13は、前記水温センサ12bによる水温および前記膜性能検出手段による膜性能に基づき、前記各逆浸透膜部10の第一水質特性および前記第二水質特性を特定し、前記各逆浸透膜部10による濾過成分に関する処理水の水質Q1が第一要求水質Q10以上を満たし、前記膜脱気部8による溶存酸素に関する処理水の水質Q2が第二要求水質Q20以上を満たすとともに前記機器の要求処理水流量以上となるように、前記各ポンプ11の回転数を制御するとともに前記ポンプ11の運転台数を制御することを特徴とする水質改質システムである。
【0086】
以下、実施例2の水質改質システムを図面に基づき説明する。以下の実施例2の説明で、前記実施例1と異なる構成を中心に説明し、それ以外は、前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。図9は、同実施例2の制御手順を説明するフローチャート図である。図10は、同実施例2の処理水タンク水位と運転モードとの関係を説明する図である。図11は、同実施例2における前記各逆浸透膜部10および前記各脱気膜部8の処理水流量と運転台数との関係を説明する図である。前記処理水流量は、前記各ポンプ11の回転数に対応する。
【0087】
前記実施例1と異なるのは、処理水タンク水位と運転モードとの関係と制御手順である。処理水タンク水位と運転モードとの関係については、図10に示すように、水位が第一水位L未満のとき、流量優先運転において、前記第一要求水質Q10以上および前記第二要求水質Q20以上という条件に加えて前記逆浸透膜部10に対する要求流量の合計値である総要求処理水流量(流量比率)を所定値,この実施例2では6t/h(流量比率60%)以上とするという条件が新たに加えている点である。
【0088】
また、前記制御手順において前記実施例1と異なるのは、図9に示すように、流量優先運転の際には、前記要求流量とS6にて演算した所定流量範囲RWとから、前記各ポンプ11の制御流量と運転台数を設定する制御(S13)と、前記ポンプ11の運転台数をS13で設定された運転台数とする制御(S14)とを加えた点である。その他の構成は、前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0089】
この実施例2について、前記総要求処理水流量を6t/h以上としていて、ある水温高における前記所定流量範囲RWが3.5〜4.0t/hであるとし、ある水温中における前記所定流量範囲RWが2.5〜3.0t/hであるとし、ある水温低における前記所定流量範囲RWが2.0〜2.5t/hであるとした場合について、以下に説明する。
【0090】
こうした条件の場合、S13の処理は、水温高時には、図11に示すように、全ての前記各ポンプ11を定格流量の4.0t/hの処理流量となるように制御する。こうすること
により、総処理水流量は、4×3=12で、前記総要求処理水流量以上となる。また、前記各逆浸透膜部10においては、前記第一要求水質Q10に対応する3.5t/h以上であるので前記第一要求水質Q10以上を満たす。また、前記各脱気膜10においては、前記第二要求水質Q20に対応する4.0t/h以下であるので前記第二要求水質Q20以上を満たす。
【0091】
また、水温中時には、図11に示すように、一台の前記ポンプ11を停止し、他の前記各ポンプ11を3.0t/hの処理流量となるように制御する。こうすることにより、総処理水流量は、3×2=6で、前記総要求処理水流量以上となる。また、前記各逆浸透膜部10においては、前記第一要求水質Q10に対応する2.5t/h以上であるので前記第一要求水質Q10以上を満たす。また、前記各脱気膜10においては、前記第二要求水質Q20に対応する3.0t/h以下であるので前記第二要求水質Q20以上を満たすことになる。
【0092】
さらに、水温高時には、図11に示すように、全ての前記各ポンプ11を2.0t/hの処理流量となるように制御する。こうすることにより、総処理水流量は、2×3=6で、前記総要求処理水流量以上となる。また、前記各逆浸透膜部10においては、前記第一要求水質Q10に対応する2.0t/h以上であるので前記第一要求水質Q10以上を満たす。また、前記各脱気膜10においては、前記第二要求水質Q20に対応する2.5t/h以下であるので前記第二要求水質Q20以上を満たすことになる。
【0093】
以上のように、この実施例2によれば、前記ポンプ11の運転台数と回転数を制御することにより、処理水の供給量を前記総要求処理水流量以上とするとともに、処理水の水質を前記第一要求水質Q10および前記第二要求水質Q20を満たすものとすることができる。
【実施例3】
【0094】
この発明は、前記実施例1,2に限定されるものではなく、図12に示す実施例3を含むものである。この実施例3は、複数の前記逆浸透膜部10−1,10−2,10−3と複数の前記脱気膜部8−1,8−2,8−3との接続関係を異ならせている。すなわち、前記実施例1では、前記各逆浸透膜部10の出口配管が集合され、前記各脱気膜部8の入口配管が集合されているのに対して、この実施例3においては、前記各逆浸透部10の出口配管および前記各脱気膜部8の入口配管を集合させず、前記各逆浸透膜部10の出口配管に前記各脱気膜部8を接続している点である。
【0095】
この実施例3においても、前記実施例1の図3に示す制御手順および前記実施例2の図9に示す制御手順が適用可能である。図9の制御手順を適用し、前記実施例2と同じ条件とした場合、この実施例3では、前記ポンプ11の運転を停止した前記各逆浸透膜部10および前記各脱気膜部8には被処理水は流れず、前記逆浸透膜部10の運転台数と前記脱気膜部8の運転台数とを別個に制御することはできない。
【0096】
よって、図13に示すように、水温中時には、1台の前記ポンプ11が停止され、前記各脱気膜10においては、3.0t/hが流れるが、前記第二要求水質Q20に対応する3.0t/h以下であるので前記第二要求水質Q20以上を満たすことができる。その他の構成および動作は、前記実施例1および前記実施例2と同様であるので、その説明を省略する。
【0097】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。すなわち、前記実施例1において、前記各脱気膜部10に処理水の流れを制御する弁(図示省略)を設けることができる。この場合は、前記逆浸透膜部10の運転台数と独立して前記脱
気膜部10の運転台数を制御することができる。
【0098】
また、前記実施例1において、特願2006−170872号公報に記載のように、つぎの回収率調整の構成を付加することができる。その構成は、給水中の不純物を除去する逆浸透膜部を備え、この逆浸透膜部からの濃縮水の一部を排水するとともに、残部を前記逆浸透膜部の上流側へ還流させる水質改質システムであって、濃縮水の還流量調節手段と、前記逆浸透膜部からの濃縮水の排水量または前記逆浸透膜部からの透過水量に応じて、前記還流量調節手段を制御する制御手段とを備えるものである。
【0099】
こうした構成を付加することにより、前記所定流量で前記ポンプを制御する際に、透過水量に対する濃縮水量の割合を維持することができる。これにより、前記逆浸透膜部へ給水を供給するためのポンプにおいて無駄な電力を消費することを防止することができるとともに、前記逆浸透膜部の濾過膜の表面での流速が維持されてファウリングによる前記濾過膜の詰まりを防止することができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0100】
1 水質改質システム
2 熱機器
3 給水ライン
7 膜濾過装置
8 脱気膜部
9 処理水タンク
10 逆浸透膜部
11 ポンプ
12a 第一流量センサ
12b 水温センサ
12c 第一電気伝導度センサ
12d 第二電気伝導度センサ
12e 第三電気伝導センサ
13 第一制御器
14 第二制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の濾過膜部と、前記各濾過膜部毎に設けられ被処理水を前記各濾過膜部へ供給するポンプと、前記各濾過膜部の下流側に接続される脱気膜部と、前記各ポンプを制御する制御部とを備える水質改質システムであって、
前記各ポンプが回転数制御可能に構成され、
前記制御部は、前記各濾過膜部による濾過成分に関する処理水の水質が第一要求水質以上を満たすとともに、前記脱気膜部による溶存酸素に関する処理水の水質が第二要求水質以上を満たす処理水流量の範囲で前記各ポンプの回転数を制御することを特徴とする水質改質システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記処理水流量の範囲の下限値に近い処理水流量とする省エネ優先運転と前記処理水流量の範囲の上限値に近い処理水流量とする流量優先運転とを選択することを特徴とする請求項1に記載の水質改質システム。
【請求項3】
被処理水中の不純物を除去して機器へ供給する互いに並列接続された複数の濾過膜部と、前記各濾過膜部毎に設けられ被処理水を前記各濾過膜部へ供給するポンプと、前記各濾過膜部の下流側に接続される膜脱気部と、前記各ポンプを制御する制御部とを備える水質改質システムであって、
前記各ポンプが回転数制御可能に構成され、
前記制御部は、前記各濾過膜部による濾過成分に関する処理水の水質が第一要求水質以上を満たし、前記脱気膜部による溶存酸素に関する処理水の水質が第二要求水質以上を満たすとともに前記機器からの総要求処理水流量以上となるように、前記各ポンプの回転数を制御するとともに前記ポンプの運転台数を制御することを特徴とする水質改質システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−162500(P2010−162500A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7913(P2009−7913)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】