説明

水車羽根型発電装置

【課題】往動側では羽根への水圧の抵抗が軽減され、かつ水車の中に泥、砂、ゴミ等が溜まらないと共に、装置のコストダウンが図れる。
【解決手段】発電機30に動力を伝達する回転軸4と、回転軸4に固定された回転体1と、回転体1の外周に設けられ、流体の流れを受けて回転体1を回転させる羽根10とを備えている。羽根10は回転体1に回動自在に配設され、短いストッパ部11と、ストッパ部11より立ち上がって該ストッパ部11より長い流体受け部12とが形成され、流体受け部12は、羽根10が倒れた場合、倒れる側の羽根10のストッパ部11を覆う長さに形成されている。装置の枠体を構成する天板23には、回転体1の回転軸4より下方の羽根10に流体を導くように内側に傾斜した流体ガイド板24が固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば河川や海等の水流や海流等を利用して水力発電を得る水車羽根型発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水車羽根型発電装置として、本願出願人は特許文献1の図17及び図18の構造のものを提案している。この構造は、発電機に動力を伝達する回転軸と、この回転軸に固定された回転体と、この回転体の外周に設けられ、流体の流れを受けて前記回転体を回転させる羽根とを備えている。そして、前記回転体の下方には、流体通路を形成するように流体通路枠体が設けられ、前記羽根は前記回転体に回動自在に配設された流体受け部と、この流体受け部より短いストッパー部とがL字形状に形成され、かつ前記流体受け部が前記流体通路の流体圧を受ける側で、前記ストッパー部が前記流体受け部の起立を維持するように配設されている。
【0003】
前記回転体の外周には、前記羽根の回転を妨げなく、該回転体を囲むように羽根通路枠体が設けられている。また前記流体受け部には、流体受け部側と反対面側に錘が設けられるか、又は前記流体受け部は、基部の流体受け部と、この先端に固定された錘とからなっている。前記回転体の外周は、前記羽根の回転支軸の部分より流体受け部の先端が当接する部分の外側が大きく円弧形状に形成され、更に回転体には、ストッパ部側に円弧部がストッパ部されている。
【特許文献1】特願2009−104591
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体は水車(回転体、羽根等)の下方を流れるので、水車の中に川の中の泥、砂、ゴミ等が溜まらない。また復動側では羽根が倒れるので、復動時における抵抗が軽減されるという特徴を有する。しかし、回転体には、流体の抵抗を軽減するために、羽根取付け面が円弧状に形成され、また羽根の起立を容易にするためにストッパ部側にも円弧部が形成されている。また羽根の流体受け部には錘を設けるか、又は先端に錘を固定している。このように回転体及び羽根は複雑な構造であるので高価になる。
【0005】
本発明の課題は、往動側では羽根への水圧の抵抗が軽減され、かつ水車の中に泥、砂、ゴミ等が溜まらないと共に、装置のコストダウンが図れる水車羽根型発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の請求項1は、発電機に動力を伝達する回転軸と、この回転軸に固定された回転体と、この回転体の外周に設けられ、流体の流れを受けて前記回転体を回転させる羽根とを備えた水車羽根型発電装置において、前記羽根は前記回転体に回動自在に配設され、短いストッパ部と、このストッパ部より立ち上がって該ストッパ部より長い流体受け部とが形成され、前記流体受け部は、羽根が倒れた場合、倒れる側の羽根のストッパ部を覆う長さに形成され、装置の枠体を構成する天板には、前記回転体の回転軸より下方の羽根に流体を導くように内側に傾斜した流体ガイド板が固定されていることを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の請求項2は、請求項1において、前記流体受け部は、流体受け部側がR形状に窪んだ形状よりなることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の請求項3は、請求項1において、前記回転体は、ドラム体と、このドラム体の両側にそれぞれ固定された側板とからなり、前記ドラム体は、羽根が取付けられる支軸単位に分割された複数個のトレーよりなり、前記トレーは、四角形状の底板より前記側板に固定されるように折り曲げられて形成された側板固定部と、前記底板より隣接するトレーに固定されるように折り曲げられて形成されたトレー固定部とからなり、前記側板固定部と前記側板及び前記トレー固定部と隣接するトレー固定部とは、それぞれボルトとナットで固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によれば、流体受け部はストッパ部より長くて重いので、回転軸より上方の羽根は自重により自然に倒れる。即ち、羽根が倒れると、羽根の流体を受ける流体受け面積が著しく小さくなり、復動側では抵抗が軽減する。また羽根が倒れた場合、流体受け部が次の羽根のストッパ部と流体受け部の下方部を覆うので、流体受け部がストッパ部に当接する。この点からも復動側では羽根の流体に対する抵抗は軽減される。また流体ガイド板によって流体は回転体の下方側に流れるので、水車(回転体、羽根等)の中に川の中の泥、砂、ゴミ等が溜まらない。また回転体は単純な形状よりなり、更にストッパ部及び流体受け部は同一部材で製作できるので、装置の大幅なコストダウンが図れる。
【0010】
請求項2の構成のように、流体受け部側はR形状に窪んだ形状に形成すると、ストッパ部が回転体のドラム体に当接して起立した時は、流体を多く受けるようになる。
【0011】
請求項3の構成によれば、トレーは側板固定部が側板に、またトレー固定部同士が固定されるので、強度が増し、水圧にも十分に耐えられる。また側板固定部及びトレー固定部は折り曲げて形成されるので、加工が簡単で安価に製作できる。またトレーと側板及びトレー同士は、ボルトとナットの結合で固定される。即ち、ステンレスは溶接であると組成が変化して赤錆劣化するが、ボルトとナット結合であるので、酸化劣化しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の水車羽根型発電装置の一実施の形態を図により説明する。図3及び図4に示すように、回転体1は、外周が12面体に形成されたドラム体2と、このドラム体2の両側面にそれぞれ固定された側板3とからなっており、側板3の外径はドラム体2の外径より大きく形成されている。側板3は回転軸4に固定具5で固定されている。側板3のドラム体2より上方に突出した部分には12面体にそれぞれ対応して軸受6が固定されている。
【0013】
回転体1には、図5に示す羽根10が取付けられている。羽根10は、短い長さのストッパ部11と、このストッパ部11より立ち上がった流体受け部12とからなり、支軸13に固定具14により固定されている。支軸13の両端部は、相対向して配設された前記軸受6に回転自在に支承されている。流体受け部12は、ストッパ部11が回転体1のドラム体2に当接して起立した時は、流体を多く受けるように、流体受け面側はR形状に窪んだ形状となっている。また流体受け部12は、図1に示すように、羽根10が倒れた場合、倒れる側の羽根10のストッパ部11と流体受け部12の下方部を覆う長さとなっている。
【0014】
図1及び図2に示すように、羽根10が取付けられた回転体1の回転軸4は、底板20の両側に固定された側板21に軸受22を介して回転自在に支承されている。また両方の側板21上には天板23が固定されている。即ち、底板20、側板21及び天板23で装置の枠体を構成している。天板23の前端部には、内側に傾斜して流体ガイド板24が固定されている。ここで、流体ガイド板24は、流体流れ方向Aの流体を回転軸4より下方の羽根10に導くように傾斜した長さとなっている。
【0015】
天板23上には、発電機30の入力軸31が回転軸4と平行になるように発電機30が固定されている。回転軸4の一端部及び入力軸31にはそれぞれ歯車32、33が固定されており、歯車32、33にはチェーン34が掛け渡されている。
【0016】
次に作用について説明する。流体ガイド板24が流体流れ方向Aに向くように、本装置を水中又は海中の所定位置に置固定すると、流体ガイド板24に導かれた流体及び流体ガイド板24の下方を流れる流体は、回転軸4より下方の羽根10(101〜105)の流体受け部12に当たり、回転体1及び回転軸4は矢印B方向に回転させられる。回転軸4の回転は、歯車32、33及びチェーン34を介して入力軸31に伝達され、発電機30によって発電される。
【0017】
また流体受け部12はストッパ部11より長くて重いので、回転軸4より上方の羽根10(107〜112)は自重により自然に倒れる。即ち、羽根10が倒れると、羽根10の流体を受ける流体受け面積が著しく小さくなるので、復動側では抵抗が軽減する。また羽根10が倒れた場合、流体受け部12が次の羽根10のストッパ部11と流体受け部12の下方部を覆うので、流体受け部12がストッパ部11に当接する。この点からも復動側では羽根10の流体に対する抵抗は軽減される。
【0018】
本装置は、上記効果の他に次のような効果も得られる。流体ガイド板24によって流体は回転体1の下方側に流れるので、水車(回転体1、羽根10等)の中に川の中の泥、砂、ゴミ等が溜まらない。また回転体1は単純な形状よりなり、更にストッパ部11及び流体受け部12は同一部材で製作できるので、装置の大幅なコストダウンが図れる。
【0019】
図6はドラム体の製作の一実施の形態を示す。前記実施の形態は、ステンレス板を12面体に形成した場合を図示して説明した。本実施の形態はドラム体2を12個のトレー40で構成したものである。トレー40は、四角形状の底板41の短辺側の両側より側板3に固定させるように直角に折り曲げられた側板固定部42と、長辺側の両側より隣のトレー40に固定されるように斜め外側に傾斜して折り曲げられたトレー固定部43とが形成されている。側板固定部42には側板3にボルトとナットで固定する複数個のボルト挿入穴44と、支軸13が挿入される支軸挿入穴45が形成されている。トレー固定部43にも隣接するトレー40同士をボルトとナットで固定する複数個のボルト挿入穴46が形成されている。なお、図示しないが、側板3にはボルト挿入穴44に対応してボルト挿入穴が形成されている。また側板3に固定された軸受6は、トレー40を側板3に固定した場合、支軸挿入穴45に対応して形成されている。
【0020】
次にドラム体2の組立について説明する。トレー40の側板固定部42のボルト挿入穴44と側板3のボルト挿入穴を合わせ、側板固定部42のボルト挿入穴44と側板3のボルト挿入穴にボルトを挿入してナットで固定する。このようにして12個のトレー40を側板3に固定する。その後、隣接するトレー40同士のボルト挿入穴46にボルトを挿入してナットで固定する。これにより、12個のトレー40が側板3に固定されると共に、トレー40同士が固定されて回転体1が構成される。その後は、支軸13をトレー40の支軸挿入穴45に挿入した後、支軸13の両端部に軸受6を取付け、軸受6を側板3に固定する。続いて図5に示すように、支軸13に羽根10を固定具14で固定する。
【0021】
このように、ドラム体2は羽根10が取付けられる支軸13単位に形成された12個のトレー40よりなり、トレー40には側板3に固定される側板固定部42とトレー40同士を固定するトレー固定部43が形成されている。即ち、トレー40は側板固定部42が側板3に、またトレー固定部43同士が固定されるので、強度が増し、水圧にも十分に耐えられる。また側板固定部42及びトレー固定部43は折り曲げて形成されるので、加工が簡単で安価に製作できる。またトレー40と側板3及びトレー40同士は、ボルトとナットの結合で固定される。即ち、ステンレスは溶接であると組成が変化して赤錆劣化するが、ボルトとナット結合であるので、酸化劣化しない。
【0022】
本装置の大きさは本発明の特徴とする構成でないので限定されないが、実験的に次の大きさで試作品を製作した。以下、主な寸法のみ記載する。ドラム体2の外径は100cm、両方の側板3間の長さは180cm。羽根10の主な寸法は、ストッパ部11の長さ8cm、流体受け部12の長さ40cm、ストッパ部11及び流体受け部12は幅175cm、厚さ2mm、ストッパ部11から流体受け部12の直線部の角度は102. 27度。流体ガイド板24は、天板23に対して角度θは35. 47度、長さ160cmで製作した。本装置は、水中は海中に設置されるので、殆どの部材は錆びにくいステンレス材で製作した。このように製作した本装置を水中で実験した結果、非常に良好な結果が得られた。
【0023】
図7は羽根の他の実施の形態を示す。前記実施の形態における羽根10(図5参照)は、流体受け部12の流体受け面側がR形状に窪んだ形状となっている。図7(a)は流体受け面側をV字形状に形成し、図7(b)は台形形状に形成したものである。このように形成しても、前記実施の形態と同様に流体を多く受けるので好ましい。図7(c)は流体受け部12の流体受け面側は直線の平面となっている。この場合は、図5、図7(a)、図7(b)の羽根のような効果は得られないが、本装置の効果は得られる。
【0024】
なお、上記各実施の形態においては、ドラム体2を12面として12個の羽根10を設けたが、羽根10の数は特に限定されるものではない。またドラム体2は角型ではなく円形状に形成しても良い。また流体ガイド板24の天板23に対する角度θは、30度〜45度が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の水車羽根型発電装置の一実施の形態の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】回転体の側面図である。
【図4】図3の断面図である。
【図5】羽根を示し、(a) は側面図、(b)は正面図である。
【図6】ドラム体の製作の一実施の形態を示し、(a) はドラム体を構成するトレーの斜視図、(b)はドラム体の組立を示す斜視図である。
【図7】羽根の他の実施の形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 回転体
2 ドラム体
3 側板
4 回転軸
10 羽根
11 ストッパ部
12 流体受け部
13 支軸
21 側板
23 天板
24 流体ガイド板
30 発電機
32、33 歯車
34 チェーン
40 トレー
41 底板
42 側板固定部
43 トレー固定部
44 ボルト挿入穴
45 支軸挿入穴
46 ボルト挿入穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機に動力を伝達する回転軸と、この回転軸に固定された回転体と、この回転体の外周に設けられ、流体の流れを受けて前記回転体を回転させる羽根とを備えた水車羽根型発電装置において、前記羽根は前記回転体に回動自在に配設され、短いストッパ部と、このストッパ部より立ち上がって該ストッパ部より長い流体受け部とが形成され、前記流体受け部は、羽根が倒れた場合、倒れる側の羽根のストッパ部を覆う長さに形成され、装置の枠体を構成する天板には、前記回転体の回転軸より下方の羽根に流体を導くように内側に傾斜した流体ガイド板が固定されていることを特徴とする水車羽根型発電装置。
【請求項2】
前記流体受け部は、流体受け部側がR形状、V字形状又は台形形状に窪んだ形状よりなることを特徴とする請求項1記載の水車羽根型発電装置。
【請求項3】
前記回転体は、ドラム体と、このドラム体の両側にそれぞれ固定された側板とからなり、前記ドラム体は、羽根が取付けられる支軸単位に分割された複数個のトレーよりなり、前記トレーは、四角形状の底板より前記側板に固定されるように折り曲げられて形成された側板固定部と、前記底板より隣接するトレーに固定されるように折り曲げられて形成されたトレー固定部とからなり、前記側板固定部と前記側板及び前記トレー固定部と隣接するトレー固定部とは、それぞれボルトとナットで固定されていることを特徴とする請求項1記載の水車羽根型発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−2220(P2012−2220A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170678(P2010−170678)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【特許番号】特許第4659917号(P4659917)
【特許公報発行日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(598030238)日本システム企画株式会社 (16)
【Fターム(参考)】