説明

水道直圧式大便器

【課題】発生音が小さい水道直圧式大便器を提供する。
【解決手段】水道直圧式大便器に、ボウル部及びトラップ部を設け、ボウル部吐水口及びトラップ部吐水口に洗浄水を供給する給水装置を設ける。給水装置には、ボウル給水量及びトラップ給水量を調節する流量調整部を設け、この流量調整部を制御する制御部を設ける。制御部には時計を設ける。そして、予め静音モードとする時間帯を設定し、この時間帯においては、便器を洗浄するときに静音洗浄を行う。即ち、トラップ給水によりトラップ部にサイホン作用を発現させて溜水を一気に排出し、その後、ブロー洗浄時にトラップ給水量を低減すると共に少量のボウル給水を行い、トラップ給水のジェット水流に伴う発生音を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道直圧式大便器に関し、より詳細には、便器のボウル面を流れるように洗浄水を吐出するボウル部吐水口と、トラップ部の下流側に向けて洗浄水を吐出するトラップ部吐水口とを備えたシーケンシャルバルブ方式の水道直圧式大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水洗大便器の給水方式には、ロータンク方式、ハイタンク方式、フラッシュバルブ方式及びシーケンシャルバルブ方式がある。このうち、ロータンク方式及びハイタンク方式は、一旦タンクに給水を受け、これを放出して便器を洗浄する方式である。この方式は、給水管径及び給水圧の制約がほとんどないという利点があるが、タンクを設ける必要があるため、タンクを設置するためのスペースが必要であると共に、デザインの面で制約がある。また、フラッシュバルブ方式は、給水管から直接一定量の水を放出させて便器を洗浄する方式である。この方式は、タンクを設ける必要はないが、一定以上の給水管径及び給水圧が必要であり、一般住宅には適していない。
【0003】
これに対して、シーケンシャルバルブ方式の水道直圧式大便器は、タンクを設ける必要がなく、且つ、給水管径及び給水圧の制約がフラッシュバルブ方式よりも緩く一般住宅にも設置可能であるため、近年急速に普及しつつある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図26〜図30は、水道直圧式大便器及びその動作を示す断面図であり、
図31は、横軸に時間をとり、縦軸に瞬間流量をとって、各吐水口から吐出される洗浄水の流量を示すグラフ図である。
この水道直圧式大便器101においては、ボウル部102が設けられており、このボウル部102の底部102aに連通したトラップ部103が設けられている。トラップ部103はS字形状をなしており、ボウル部102の底部102aに連結された入口103aから、一旦下方に向かって下方側の屈曲部103bに到達し、その後上方に向かって上方側の屈曲部103cに到達し、その後再び下方に向かって出口103dで下水管122に連通している。
【0005】
また、水道直圧式大便器101には給水装置105が設けられており、この給水装置105からボウル部吐水口106及びトラップ部吐水口107が引き出されている。ボウル部吐水口106は、ボウル部102の内面に向けて洗浄水を吐出するものであり、トラップ部吐水口107は、トラップ部103の上流側の屈曲部103bから下流側の屈曲部103cに向けて洗浄水を吐出するものである。給水装置105内には切替バルブ(図示せず)が設けられており、この切替バルブが、上水管(図示せず)から給水装置105に供給された洗浄水を、ボウル部吐水口106に供給するかトラップ部吐水口107に供給するか切替えるようになっている。
【0006】
次に、この水道直圧式大便器101の動作を説明する。
水道直圧式大便器101は、待機状態においては、ボウル部102の下部及びトラップ103の入口103aから屈曲部103bまでの部分に、溜水125が溜まっている。また、ボウル部吐水口106及びトラップ部吐水口107からは洗浄水は吐出されていない。
【0007】
この状態で、使用者が便器洗浄スイッチ(図示せず)をオンにすると、図31の期間T101及び図26に示すように、まずボウル部吐水口106から洗浄水を吐出する。この洗浄水はボウル部102の内面に沿って例えば回転しながら流下する。これにより、ボウル部102の内面が洗浄されると共に、溜水125の水面125aが上昇する。
次に、図31の期間T102及び図27に示すように、ボウル部吐水口106からの吐水を停止すると共に、トラップ部吐水口107から洗浄水を吐出する。これにより、トラップ部103が満水状態となる。すると、トラップ部103においてサイホン作用が発現し、トラップ部103及びボウル部102内の溜水125が下水側に吸引され、一気に排出される。この結果、溜水125内の汚物が排出される。
このとき、図28に示すように、溜水125の水面125aが下降し、トラップ部103の入口103aよりも下がると、トラップ部103内に空気が流入し、サイホン作用が消失する。
【0008】
この後も、図29に示すように、トラップ部吐水口107から洗浄水を吐出し続けることにより、トラップ部103内がブロー洗浄され、トラップ部103内に残留した少量の溜水125が排出される。
次に、図31の期間T103及び図30に示すように、トラップ部吐水口107が吐水を停止すると共に、ボウル部吐水口106から吐水を再開する。これにより、溜水が復水し、溜水125の水面125aが元の位置まで上昇する。その後、ボウル部吐水口106からの吐水を停止する。これにより、一連の洗浄動作が完了する。
【0009】
また、図32は、横軸に時間をとり、縦軸に瞬間流量をとって、他の水道直圧式大便器の動作を示すグラフ図である。
この水道直圧式大便器においては、ボウル部吐水口に洗浄水を供給する水路、及びトラップ部吐水口に洗浄水を供給する水路に、それぞれ止水構造を持つダイレクトバルブ(図示せず)が設けられている。これにより、図32に示すように、給水の切替時に、ボウル部吐水口からの給水とトラップ部吐水口からの給水とがオーバーラップしないようになっている。
【0010】
【特許文献1】特開2001−73434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の技術には、以下の点で改善の余地があった。すなわち、この水道直圧式大便器101においては、図29に示す工程において、溜水125の水面125aが低くなり、トラップ部吐水口107から吐出されるジェット水流が大気中に露出する。このため、このジェット水流に起因する発生音が大きくなってしまう。水道直圧式大便器101は一般住宅に設置されることが多いため、特に夜間において、発生音はできるだけ抑えることが望ましい。
【0012】
本発明はかかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、発生音が小さい水道直圧式大便器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、
ボウル部に洗浄水を吐出するボウル部吐水口と、
トラップ部に洗浄水を吐出するトラップ部吐水口と、
前記ボウル部吐水口に供給する前記洗浄水の量及び前記トラップ部吐水口に供給する前記洗浄水の量を調整する流量調整部と、
前記流量調整部を制御し、通常洗浄を行う通常モードと前記通常洗浄よりも発生音が小さい静音洗浄を行う静音モードとを切替える制御部と、
を備えたことを特徴とする水道直圧式大便器が提供される。
【0014】
また、本発明の他の一態様によれば、
ボウル部に洗浄水を吐出するボウル部吐水口と、
トラップ部に洗浄水を吐出するトラップ部吐水口と、
前記ボウル部吐水口に供給する前記洗浄水の量及び前記トラップ部吐水口に供給する前記洗浄水の量を調整する流量調整部と、
前記ボウル部を覆う便蓋と、
前記便蓋を開閉する開閉装置と、
前記流量調整部及び前記開閉装置を制御し、前記便蓋を開けたまま洗浄を行う通常モードと前記便蓋を閉じて洗浄を行う静音モードとを切替える制御部と、
を備えたことを特徴とする水道直圧式大便器が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発生音が小さい水道直圧式大便器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る水道直圧式大便器に設定されるモードを示す図である。
また、図2(a)〜(d)は、この水道直圧式大便器の動作を示すタイミングチャートであり、(a)は時計が計測する時刻を示し、(b)は便器洗浄スイッチの状態を示し、(c)は通常洗浄の動作状態を示し、(d)は静音洗浄の動作状態を示す。
また、図3は、この水道直圧式大便器を示すブロック図であり、
図4は、この水道直圧式大便器を示す断面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る水道直圧式大便器(以下、単に「便器」ともいう)は、「通常モード」及び「静音モード」の2つのモードを切替えて実行できるようになっている。通常モードとは、使用者が便器洗浄スイッチをオンにしたときに、通常洗浄を行うモードであり、静音モードとは、使用者が便器洗浄スイッチをオン(ON)にしたときに、通常洗浄よりも発生音が小さい静音洗浄を行うモードである。
【0018】
図3及び図4に示すように、本実施形態に係る水道直圧式大便器(便器)1は、上水管21及び下水管22に接続されて使用されるものである。便器1には、上部が開口したボウル部2が設けられている。ボウル部2の開口部の周囲には、側壁が内側に折り込まれたリムが形成されており、ボウル部2内の水が外部に飛散することを防止している。また、便器1には、ボウル部2の底部2aに連通したトラップ部3が設けられている。トラップ部3はS字形状をなしており、ボウル部2の底部2aに連通した入口3aから、一旦下方に向かって上流側の屈曲部3bに到達し、その後上方に向かって下流側の屈曲部3cに到達し、その後再び下方に向かって出口3dで下水管22に連通している。即ち、屈曲部3cは屈曲部3bよりも高い位置にあり、上に凸となっている。
【0019】
また、水道直圧式大便器1には、上水管21に連通された給水装置5が設けられており、この給水装置5から、ボウル部2の内面に向けて洗浄水を吐出するボウル部吐水口6と、トラップ部3の下流側に向けて洗浄水を吐出するトラップ部吐水口7とが引き出されている。給水装置5は、上水管21から供給された洗浄水を、ボウル部吐水口6及びトラップ部吐水口7に供給するものである。
【0020】
ボウル部吐水口6は、ボウル部2のリムに沿ってほぼ水平に洗浄水を吐出する。これにより、ボウル部吐水口6から吐出された洗浄水は、先ずリムに沿って流れ、ボウル部2の内面に沿って例えば回転するように流れながら、次第に底部2aに向かって流下する。以下、ボウル部吐水口6からの洗浄水の吐出を「ボウル給水」といい、その瞬間流量を「ボウル給水量」という。
また、トラップ部吐水口7は、トラップ部3の上流側(下側)の屈曲部3bに設けられており、下流側(上側)の屈曲部3cに向けて洗浄水を高圧で吐出する。トラップ部吐水口7から吐出された洗浄水は、ジェット水流を形成して、屈曲部3b内の水を屈曲部3cを越えて下流側に押し流すことができる。以下、トラップ部吐水口7からの洗浄水の吐出を「トラップ給水」といい、その瞬間流量を「トラップ給水量」という。
【0021】
給水装置5においては、流量調整部8及び制御部9が設けられている。流量調整部8には、上水管21に接続された定流量弁10が設けられており、この定流量弁10とボウル部吐水口6及びトラップ部吐水口7との間に、流路切替兼開閉バルブ11が設けられている。定流量弁10は、上水管21内の水圧が変動しても水の瞬間流量を一定値、例えば毎分20リットルに維持するものである。流路切替兼開閉バルブ11は、定流量弁10を介して供給された洗浄水をボウル部吐水口6及びトラップ部吐水口7に分配することにより、ボウル給水量及びトラップ給水量を調整するものである。なお、ボウル給水量とトラップ給水量との合計量は一定量となり、例えば毎分20リットルとなる。
【0022】
一方、制御部9は、給水装置5の外部に設けられた便器洗浄スイッチ13に接続されている。便器洗浄スイッチ13は、待機時「オフ」となっており、使用者が便器を洗浄したいときに「オン」とするものである。制御部9は、便器洗浄スイッチ13から指令信号が入力されることにより、流量調整部8を制御して便器の洗浄を行うものである。制御部9には時計12が設けられており、この時計12に基づいて、通常モードと静音モードとが切替えられる。
【0023】
便器1においては、ボウル部2、トラップ部3及び給水装置5を覆う筐体15が設けられている。ボウル部2には開口部2bが形成されており、この開口部2bを介して、ボウル部2の内部が外部に連通する。例えば、ボウル部2、トラップ部3及び筐体15は一体的に形成されており、例えば、陶器により形成されている。
また、ボウル部2の開口部2bの周辺領域の上部には、例えば環状の便座16が設けられている。便座16は、その奥側、即ち、給水装置5側の端部を軸として筐体15に対して回動可能となっており、その上昇位置にあるときは、ほぼ垂直に起立し、その下降位置にあるときは、開口部2bの周辺領域上でほぼ水平となり、便座として使用できるようになっている。
更に、下降位置にあるときの便座16の上方には、便蓋17が設けられている。便蓋17も、その奥側の端部を軸として筐体15に対して回動可能となっており、下降位置にあるときは開口部2bを覆い、上昇位置にあるときは開口部2bを露出させて便器1を使用可能な状態とするものである。
【0024】
次に、本実施形態に係る水道直圧式大便器1の動作について説明する。
便器1の動作には、いくつかの異なる態様が考えられる。本実施形態においては、これらの態様のうち3つの態様を、第1〜第3の具体例として説明する。
【0025】
先ず、第1の具体例について説明する。
図5は、横軸に時間をとり、縦軸に瞬間流量をとって、各吐水口から吐出される洗浄水の流量を示すグラフ図であり、
図6〜図10は、この水道直圧式大便器の動作を示す断面図である。
以下、図1〜図10を参照しつつ説明する。
【0026】
使用者は、予め制御部9に対して、便器1を静音モードとする時間帯を入力する。例えば、図1に示すように、21時から翌朝9時までの夜間の時間帯を静音モードとし、それ以外の昼間の時間帯を通常モードとする。これにより、制御部9は、時計12から出力される信号に基づいて、静音モードと通常モードとを切替える。
【0027】
先ず、静音モードにおける便器1の動作について説明する。図4に示すように、待機状態、即ち、便器洗浄スイッチ13(図3参照)がオフとなっている状態においては、ボウル部2の下部及びトラップ3の下部に、溜水25が溜まっている。また、給水装置5には上水が供給されておらず、従って、ボウル部吐水口6及びトラップ部吐水口7からは洗浄水が吐出されていない。
【0028】
図2に示すように、静音モードに設定された時間帯に使用者が便器洗浄スイッチ13をオンにすると、静音洗浄が実行される。即ち、図5の期間T1及び図6に示すように、ボウル部吐水口6から洗浄水を吐出する。このときの瞬間流量(ボウル給水量)は例えば毎分20リットルである。この洗浄水はボウル部2のリムに沿ってほぼ平行に吐出された後、ボウル部2の内面に沿って回転しながら流下する。これにより、ボウル部2の内面が洗浄されると共に、溜水25の水面25aが上昇する。
【0029】
次に、期間T2及び図7に示すように、流量調整部8の流路切替兼開閉バルブ11を切替えることにより、ボウル部吐水口6からの吐水を停止すると共に、トラップ部吐水口7からの吐水を開始する。このとき、トラップ給水量は例えば毎分20リットルとなる。これにより、トラップ部3の屈曲部3cに向けて洗浄水が流入し、トラップ部3が満水状態となる。
すると、トラップ部3においてサイホン作用が発現し、トラップ部3内が負圧となるため、トラップ部3及びボウル部2内の溜水25が下水側に吸引され、一気に下水管22に流出する。この結果、トラップ部3及びボウル部2から、汚物を含む溜水25が排出される。
そして、図8に示すように、溜水25の水面25aが下降し、トラップ部3の入口3aよりも下がると、トラップ部3内に空気が流入し、サイホン作用が消失する。
【0030】
次に、期間T3及び図9に示すように、流路切替兼開閉バルブ11を切替えることにより、トラップ給水量の一部をボウル給水に振り分ける。即ち、トラップ給水量を低減すると共に、ボウル部吐水口6から少量の洗浄水を吐出する。これにより、トラップ部3内がブロー洗浄され、トラップ部3内に残留した少量の溜水25が排出される。なお、この少量の溜水25には少量の汚物が混在していることもあるが、ブロー洗浄により、この少量の汚物も溜水ごと排出される。
このとき、トラップ給水量をQ1とし、ボウル給水量をQ2とすると、合計水量(Q1+Q2)は、定流量弁10によって規定される一定流量、例えば、毎分20リットルとなる。本具体例においては、例えば、Q1を毎分13リットルとし、Q2を毎分7リットルとする。
【0031】
次に、期間T4及び図10に示すように、トラップ給水を停止すると共に、ボウル給水量を増加させ、毎分20リットルに戻す。これにより、溜水が復水し、溜水25の水面25aが元の位置まで上昇する。その後、ボウル給水を停止する。これにより、便器1が待機状態に戻る。このようにして、静音洗浄が完了する。
【0032】
この静音洗浄においては、期間T3において、トラップ給水量を例えば毎分20リットルから毎分13リットルに低減することにより、トラップ部吐水口7から噴射されるジェット水流の勢いが弱まり、このジェット水流に起因する発生音が低減する。また、ボウル部吐水口6から少量の洗浄水を吐出することにより、この洗浄水がトラップ部吐水口7から吐出されるジェット水流を一部覆い、大気から遮断する。これにより、ジェット水流に起因する発生音が更に低減する。
【0033】
なお、期間T2から期間T3に移行するタイミング、即ち、トラップ給水量を低減すると共に、少量のボウル給水を開始するタイミングは、サイホン作用が発現した時点から、ジェット水流が大気中に露出する時点までの期間であることが好ましい。これは、サイホン作用が発現するまでは、トラップ部3内を満水にするために十分なトラップ給水量を必要とするが、サイホン作用が発現した後のブロー洗浄では、それほど大きなトラップ給水量は必要とせず、一方、ジェット水流が大気中に露出すると、発生音が大きくなるからである。この条件を満たす限りにおいて、期間T2からT3への移行のタイミングは、破封した時点、即ち、溜水25の水面25aがトラップ部3の入口3aよりも低下した時点よりも前であってもよく、後であってもよい。
【0034】
次に、通常モードにおける便器1の動作について説明する。通常モードにおける待機状態の動作は、静音モードにおける待機状態の動作と同様である。即ち、図4に示す状態である。
図2に示すように、この状態で使用者が便器洗浄スイッチ13をオンにすると、通常洗浄が実行される。通常洗浄の動作は、上述の水道直圧式大便器の洗浄動作(図26〜図31参照)と同じである。即ち、先ず、ボウル給水量を例えば毎分20リットルとして、ボウル部2の内面を洗浄する。次に、ボウル給水を停止すると共に、毎分20リットルのトラップ給水を開始する。これにより、トラップ部3が満水状態となり、サイホン作用が発現し、トラップ部3及びボウル部2内の溜水25が、汚物ごと排出される。そして、引き続き、毎分20リットルのトラップ給水を行うことにより、ブロー洗浄を行う。次に、トラップ給水を停止すると共にボウル給水を再開して溜水を復水し、その後、ボウル給水を停止する。これにより、通常洗浄が完了する。
【0035】
上述の如く、通常洗浄においては、ブロー洗浄時にトラップ給水量を最大流量(例えば毎分20リットル)とすることにより、強力な洗浄効果を得ることができる。但し、この場合はトラップ部吐水口7からのジェット水流が大気中に曝されるため、タンク式の便器と比較して発生音が大きくなる場合がある。
そこで、本実施形態においては、夜間等の発生音を抑制したい時間帯においては、便器1のモードを静音モードとして、発生音が小さい静音洗浄を行う。静音洗浄は、ブロー洗浄時にジェット水流の勢いを弱めるため、通常洗浄と比較するとブロー洗浄の効果が低いが、時間帯によって通常モードと静音モードとを切替えることにより、発生音対策と清浄な便器の維持とを両立させることができる。これは、静音洗浄の方法として、後述の第2及び第3の具体例を採用した場合においても、同様である。
【0036】
次に、期間T3におけるトラップ部吐水口から吐出される洗浄水の瞬間流量について、定量的に説明する。
図11は、横軸に期間T3におけるトラップ給水量をとり、縦軸に、トラップ給水量を毎分20リットルとした場合を基準として低減される発生音レベル(発生音レベル差)をとって、トラップ給水量が発生音に及ぼす影響を示すグラフ図である。なお、前述の如く、期間T3においては、トラップ給水量が低減した分、ボウル給水量は増加する。
【0037】
図11に示すように、トラップ給水量が少なくなるほど、発生音は低減する。一般に、人間は、発生音レベルが3dB以上低下すると、発生音が低減したと感じる。そして、図11より、発生音レベル差を3dB以上とするためには、トラップ給水量を毎分14.5リットル以下とする必要がある。一方、期間T3に実施するブロー洗浄において、少量の汚物を含有した溜水を確実に排水するためには、トラップ給水量を毎分11リットル以上とすることが好ましい。従って、期間T3におけるトラップ給水量は、毎分11〜14.5リットルとすることが好ましい。
【0038】
次に、第2の具体例について説明する。
図12は、横軸に時間をとり、縦軸に瞬間流量をとって、各吐水口から吐出される洗浄水の流量を示すグラフ図であり、
図13は、この水道直圧式大便器の動作の一部を示す断面図である。
本第2の具体例においては、図3に示す流量調整部8に、定流量弁10に代えて全体の瞬間流量を調整する瞬間流量調整バルブ(図示せず)が設けられている。従って、流路切替兼開閉バルブ11は、瞬間流量調整バルブの下流側に設けられている。その他の構成は、第1の具体例と同様である。なお、本具体例では、瞬間流量調整バルブ及び流路切替兼開閉バルブ11に代えて、ボウル部吐水口6の吐水量を調整するバルブ及びトラップ部吐水口7の吐水量を調整するバルブがそれぞれ設けられていてもよい。
【0039】
本具体例において、静音モードとする時間帯の設定については、前述の第1の具体例と同様である。また、通常モードにおける洗浄動作も、前述の第1の具体例と同様である。更に、静音モードの待機状態における動作も、前述の第1の具体例と同様である。そこで、以下、静音モードにおける洗浄動作について説明する。
【0040】
便器1が静音モードにあるときに、使用者が便器洗浄スイッチ13をオンにすると、静音洗浄が実行される。このとき、図12に示す期間T11、T12及びT14における動作は、前述の第1の具体例における期間T1、T2及びT4(図5参照)の動作と同様である。
即ち、図12の期間T11及び図6に示すように、ボウル給水量を例えば毎分20リットルとする。これにより、ボウル部2の内面が洗浄されると共に、溜水25の水面25aが上昇する。
【0041】
次に、期間T12及び図7に示すように、ボウル給水を停止すると共に、トラップ給水量を例えば毎分20リットルとする。これにより、トラップ部3が満水状態となり、サイホン作用が発現し、トラップ部3及びボウル部2内の溜水25が下水側に排出される。そして、図8に示すように、溜水25の水面25aが下降し、トラップ部3の入口3aよりも下がると、トラップ部3内に空気が流入し、サイホン作用が消失する。
【0042】
次に、期間T13及び図13に示すように、トラップ給水量を例えば毎分13リットルに低減する。これにより、トラップ部3内がブロー洗浄され、トラップ部3内に残留した少量の溜水が排出される。なお、このとき、ボウル給水は行わない。トラップ給水量を毎分20リットルから毎分13リットルに低減することにより、トラップ部吐水口7から噴射されるジェット水流の勢いが弱まり、このジェット水流に起因する発生音が低減する。
【0043】
次に、期間T14及び図10に示すように、トラップ給水を停止すると共に、ボウル給水を再開する。このとき、ボウル給水量を例えば毎分20リットルとする。これにより、溜水が復水し、溜水25の水面25aが元の位置まで上昇し、待機状態に戻る。その後、ボウル給水を停止する。このようにして、静音洗浄が完了する。
【0044】
次に、第3の具体例について説明する。
図14は、横軸に時間をとり、縦軸に瞬間流量をとって、各吐水口から吐出される洗浄水の流量を示すグラフ図であり、
図15は、この水道直圧式大便器の動作の一部を示す断面図である。
本第3の具体例においては、流量調整部8の制御方法を除き、第2の具体例と同様である。
【0045】
本第3の具体例において、静音モードとする時間帯の設定については、前述の第1の具体例と同様である。また、通常モードにおける洗浄動作も、前述の第1の具体例と同様である。更に、静音モードの待機状態における動作も、前述の第1の具体例と同様である。そこで、以下、静音モードにおける洗浄動作について説明する。
【0046】
便器1が静音モードにあるときに、使用者が便器洗浄スイッチ13をオンにすると、静音洗浄が実行される。このとき、図14に示す期間T21、T22及びT24における動作は、前述の第1の具体例における期間T1、T2及びT4(図5参照)の動作と同様である。
【0047】
即ち、先ず、図14の期間T21及び図6に示すように、ボウル給水を行い、ボウル部2の内面を洗浄する。次に、期間T22及び図7に示すように、ボウル給水を停止すると共に、トラップ給水量を例えば毎分20リットルとし、トラップ部3にサイホン作用を発現させて、溜水25を排出する。その後、図8に示すように、トラップ部3内に空気が流入すると、サイホン作用が消失する。
【0048】
次に、期間T23及び図15に示すように、トラップ給水量を毎分20リットルに維持したまま、少量のボウル給水を開始する。ボウル給水量は例えば毎分7リットルとする。これにより、トラップ部3内がブロー洗浄され、トラップ部3内に残留した少量の溜水が排出される。このとき、少量のボウル給水を行うことにより、このボウル給水がトラップ部吐水口7から噴射されるジェット水流を覆い、ジェット水流を大気から遮断することができる。これにより、このジェット水流に起因する発生音が低減する。
【0049】
次に、期間T24及び図10に示すように、トラップ給水を停止すると共に、ボウル給水量を毎分20リットルまで増加させる。これにより、溜水が復水し、溜水25の水面25aが元の位置まで上昇し、待機状態に戻る。そして、ボウル給水を停止する。このようにして、静音洗浄が完了する。
【0050】
次に、本実施形態の効果について説明する。
上述の如く、本実施形態によれば、通常モードと静音モードとを設定できるようにし、発生音の抑制よりも確実な洗浄を優先させたい時間帯においては通常モードを選択し、発生音の抑制を優先させたい時間帯においては静音モードを選択することにより、発生音対策と清浄な便器の維持とを両立させることができる。
また、通常モードと静音モードとの切替を時計により行っているため、一度、静音モードとする時間帯を設定しておけば、以後は時計の動作により、自動的に通常モードと静音モードとを切替えることができる。
【0051】
なお、本実施形態に係る便器には、暖房便座装置や温水洗浄便座装置等の便座装置を設けてもよい。この場合、制御部9においては時計12を設けず、便座装置に内蔵されている時計を使用してもよい。
また、静音モードへの自動切替を行わないようにするスイッチを設けてもよい。さらに、静音モードへ移行する時間帯の設定は、静音モードに移行する開始時刻のみを設定するようにして、この開始時刻から所定時間経過した後には通常モードに切替えるようにしてもよく、それぞれのモードの開始時間を設定するようにしてもよい。さらにまた、その時間帯の設定は、毎日行うようにしてもよいし、週毎、月毎、曜日毎に行えるようにしてもよい。曜日毎に設定した場合には、同一曜日の同一時刻に自動的にモードが自動的に切替わるので、より人の生活パターンに近い設定が可能となる。
【0052】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図16は、本実施形態に係る水道直圧式大便器を示すブロック図である。なお、図16に示す構成要素のうち、図3に示す構成要素と同じ要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
また、図17(a)〜(d)は、この水道直圧式大便器の動作を示すタイミングチャートであり、(a)は温水洗浄便座装置の節電運転モードの状態を示し、(b)は便器洗浄スイッチの状態を示し、(c)は通常洗浄の動作状態を示し、(d)は静音洗浄の動作状態を示す。
【0053】
本実施形態に係る水道直圧式大便器31においては、温水洗浄便座装置32が設けられている。温水洗浄便座装置32は、上水管21から水が供給され、この水を加熱して人体洗浄用ノズル33に対して供給すると共に、便座16(図4参照)を適宜暖房するものである。温水洗浄便座装置32は、通常運転モードの他に、節電運転モードを設定できるようになっている。通常運転モード時には、温水洗浄便座装置32は、人体洗浄用ノズル33に供給する水を設定温度まで加熱すると共に、便座16を設定温度に暖房する。これに対して、節電運転モード時には、人体洗浄用ノズル33に対して供給する水の温度を設定温度よりも低い温度とし、便座16の温度も設定温度よりも低い温度とする。これにより、快適性を大きく損なうことなく、消費電力を低減することができる。
【0054】
また、給水装置35には流量調整部8及び制御部39が設けられており、制御部39は便器洗浄スイッチ13及び流量調整部8に接続されている。また、制御部39は温水洗浄便座装置32に接続されており、温水洗浄便座装置32が通常運転モードにあるときは通常モードとなり、温水洗浄便座装置32が節電運転モードにあるときは静音モードとなるようになっている。本実施形態における上記以外の構成は、上述の第1の実施形態と同様である。なお、制御部39が温水洗浄便座装置32の制御及び給水装置35の制御を兼用するようにしてもよい。
【0055】
次に、本実施形態の動作及び効果について説明する。
本実施形態によれば、給水装置35の制御部39を温水洗浄便座装置と連動させることにより、便器31は、昼間等の使用頻度が高い時間帯には通常モードに設定され、夜間等の使用頻度が低い時間帯には静音モードに設定される。このため、使用者がわざわざ静音モードの時間帯を設定する必要がない。
本実施形態における静音洗浄の具体的な手順、即ち、ボウル給水及びトラップ給水のシーケンスは、第1の実施形態の第1〜第3の具体例と同様である。本実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0056】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図18は、本実施形態に係る水道直圧式大便器を示すブロック図である。なお、図18に示す構成要素のうち、図3に示す構成要素と同じ要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
また、図19は、本実施形態に係る水道直圧式大便器の記憶手段を示す図であり、
図20(a)〜(d)は、この水道直圧式大便器の動作を示すタイミングチャートであり、(a)は便器のモードを示し、(b)は便器洗浄スイッチの状態を示し、(c)は通常洗浄の動作状態を示し、(d)は静音洗浄の動作状態を示す。
【0057】
本実施形態に係る水道直圧式大便器41においては、給水装置45に流量調整部8及び制御部49が設けられており、制御部49は便器洗浄スイッチ13及び流量調整部8に接続されている。制御部49においては、時計12と、便器41が使用されたときにそれを検知するセンサー43と、時計12の出力信号及びセンサー43の出力信号が入力され、便器41の使用回数を時間帯毎に記憶する記憶手段44とが設けられている。
【0058】
センサー43は、例えば、便器洗浄スイッチ13がオンになったときにそれを検知する検出回路である。又は、センサー43は、使用者が便座に座ったときに便座に加わる加重を検知する接点スイッチ、使用者が便座に座ったときに便座に伝わる使用者の体温を検知する温度サーミスタ、使用者が便器の前に立ったときにそれを検知する赤外線検出器若しくは超音波検出器、又は便器の洗浄に伴う配管内の水流の変化を検知する水流計であってもよい。記憶手段44には、例えばRAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)や不揮発性メモリなどが設けられている。本実施形態における上記以外の構成は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0059】
次に、本実施形態の動作について説明する。
便器41が使用されると、センサー43がそれを検知して、検知信号を記憶手段44に対して出力する。記憶手段44は、検知信号が入力されると、時計12を参照してその時刻を認識し、便器41の使用回数を時間帯毎に記憶する。記憶手段44は例えば1日を複数の時間帯に分割し、各時間帯における使用回数を記憶し、例えば30日前までのデータを記憶するようになっている。例えば、図19に示す例においては、記憶手段44は1日を45分毎に32の時間帯に分割し、今日の第1の時間帯(0時00分〜0時45分)の使用回数は0回であり、今日の第4の時間帯(2時45分〜3時30分)の使用回数は1回であることを記憶している。
【0060】
次に、制御部49は、記憶手段44に蓄積された情報に基づいて、便器41の使用頻度が相対的に高い時間帯と、使用頻度が相対的に低い時間帯とを識別する。この識別の方法には種々の方法が考えられるが、例えば、最近のデータに重みを付けて加重平均をとって識別してもよく、同じ曜日のデータ、即ち、7日前、14日前、21日前及び28日前のデータに重みを付けて加重平均をとって識別してもよい。そして、制御部49は、使用頻度が相対的に高い時間帯を通常モードに設定し、使用頻度が相対的に低い時間帯を静音モードに設定する。例えば、制御部49は、32に分割した時間帯を、連続する20の時間帯と12の時間帯の2つに分割し、最も使用頻度が高くなる連続した20の時間帯を通常モードに設定し、残りの使用頻度が低くなる連続した12の時間帯を静音モードに設定するようにしてもよい。これにより、昼間等の使用頻度が高い時間帯には通常モードが設定され、夜間等の使用頻度が低い時間帯には静音モードが設定される。
【0061】
そして、図20に示すように、静音モードに設定されている時間帯では、便器洗浄スイッチがオンにされたときに静音洗浄を行い、通常モードに設定されている時間帯では、便器洗浄スイッチがオンにされたときに通常洗浄を行う。本実施形態においては、上述の如く、静音モードの時間帯及び通常モードの時間帯を便器の使用状況によって自動的に設定するが、本実施形態における静音洗浄の具体的手順、即ち、ボウル給水及びトラップ給水のシーケンスは、第1の実施形態の第1〜第3の具体例と同様である。本実施形態における上記以外の動作は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0062】
次に、本実施形態の効果について説明する。
上述の如く、本実施形態によれば、制御部49が時間帯毎の便器の使用頻度を判断して静音モードを設定することにより、通常モードと静音モードとを効果的に使い分けることができる。また、使用者がわざわざ静音モードの時間帯を設定する必要がない。本実施形態における上記以外の効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0063】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図21(a)〜(d)は、本実施形態に係る水道直圧式大便器の動作を示すタイミングチャートであり、(a)は便器のモードを示し、(b)は便器洗浄スイッチの状態を示し、(c)は通常洗浄の動作状態を示し、(d)は静音洗浄の動作状態を示す。
本実施形態に係る水道直圧式大便器の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
本実施形態においては、静音モードが設定されている場合においても、静音洗浄を所定の回数行う毎に1回、便器洗浄スイッチがオンにされたときに通常洗浄を行うようになっている。これにより、ボウル部又はトラップ部内に、静音洗浄によっては排出されにくい汚物が滞留している場合においても、数回に1回通常洗浄を行うことにより、汚物を確実に排出することができる。本実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0064】
なお、本実施形態においては、静音洗浄を所定の回数行う毎に通常洗浄を行う例を示したが、本発明はこれに限定されず、静音モードが設定されてから所定の時間が経過した後、便器洗浄スイッチがオンにされたときに、1回通常洗浄を行ってもよい。
また、本実施形態は、前述の第2又は第3の実施形態と組み合わせてもよい。
【0065】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
図22は、本実施形態に係る水道直圧式大便器を示すブロック図であり、
図23は、この水道直圧式大便器の動作を示すフローチャートである。
本実施形態に係る水道直圧式大便器51においては、便蓋17を開閉する開閉装置52が設けられている。開閉装置52は給水装置の制御部59に接続されており、制御部59からの指令信号によって作動するものである。また、開閉装置52には、便蓋17の開閉状態を検知する検知部(図示せず)が設けられている。
【0066】
また、便器51には、人体センサー53が設けられている。人体センサー53は、人体(使用者)が便器51の周辺、即ち、便座16上または便器51の前方にいるかどうかを検知するものであり、例えば、赤外線センサーや超音波センサーなどにより構成されている。人体センサー53の検知結果は、制御部59に入力されるようになっている。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0067】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図23のステップS1に示すように、便器洗浄スイッチ13がオフになっているときは、便器51は待機状態となっている。そして、使用者が便器洗浄スイッチ13をオンにすると、その信号が制御部59に入力される。これにより、制御部59は、ステップS2に示すように、便器51が静音モードにあるかどうかを判断する。その結果、通常モードにあればステップS6に進み、直ちに便器の洗浄を行い、静音モードにあれば、ステップS3に進む。
ステップS3においては、制御部59は、人体センサー53からの信号に基づいて、使用者が便座16上または便器51の前方にいるかどうかを判断する。使用者が便座16上または便器51の前方にいなければ、ステップS4に進み、開閉装置52を作動させて便蓋17を閉じる。
そして、ステップS5に進み、開閉装置52の検知部により便蓋17が閉じたことを確認した後、ステップS6に示すように、便器の洗浄を行う。便器の洗浄は、通常洗浄でもよいが、第1の実施形態の第1〜第3のいずれかの具体例に示す静音洗浄を行うことが好ましい。
【0068】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態によれば、静音モードにおいては、便蓋17を閉めてから洗浄を行うため、発生音を低減することができる。また、このとき、静音洗浄を行うことにより、発生音をより一層低減することができる。本実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
なお、本実施形態は前述の第2〜第4のいずれかの実施形態と組み合わせてもよい。
【0069】
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
図24は、本実施形態に係る水道直圧式大便器を示すブロック図であり、
図25は、この水道直圧式大便器の動作を示すフローチャートである。
本実施形態に係る水道直圧式大便器61においては、便蓋17を開閉する開閉装置62が設けられており、この開閉装置62には、便蓋17の開閉状態を検知する検知部63が設けられている。開閉装置62は給水装置65の制御部69に接続されており、制御部69からの指令信号によって作動すると共に、検知部63の検知結果を制御部69に対して出力するものである。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0070】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図25のステップS11に示すように、便器洗浄スイッチ13がオフになっているときは、便器61は待機状態となっている。そして、使用者が便器洗浄スイッチ13をオンにすると、その信号が制御部69に入力される。これにより、制御部69は、ステップS12に示すように、便器61が静音モードにあるかどうかを判断する。その結果、通常モードにあればステップS14に進み、通常洗浄にて便器洗浄を行い、静音モードにあれば、ステップS13に進む。
ステップS13においては、制御部69は、検知部63により便蓋17が閉じた状態にあるかどうかを判断する。
そして、便蓋17が閉じていれば、S14に進み通常洗浄にて便器洗浄を行う。
便蓋17が閉じていなければ、ステップS15に進み、第1の実施形態の第1〜第3のいずれかの具体例に示す静音洗浄にて便器の洗浄を行う。
【0071】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態によれば、静音モードにおいて、便蓋17の開状態のときは、静音洗浄を行うので、発生音を低減することができる。また、便蓋が閉状態のときは、通常洗浄を行うが、便蓋17が閉じているため、洗浄に伴う発生音は小さい。これにより、発生音対策と清浄な便器の維持とを、より高いレベルで両立させることができる。
なお、本実施形態は前述の第2〜第4のいずれかの実施形態と組み合わせてもよい。
【0072】
なお、上述の各実施形態において、ボウル部吐水口に洗浄水を供給する水路、及びトラップ部吐水口に洗浄水を供給する水路に、それぞれ止水構造を持つダイレクトバルブを設けてもよい。これにより、図32に示すように、給水の切替時に、ボウル部吐水口からの給水とトラップ部吐水口からの給水とがオーバーラップしなくなる。
【0073】
以上、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。例えば、照度センサ等を用いて明るさを検知し、暗くなってから直ちにあるいは所定時間経過後に自動的に静音モードに移行し、明るくなった時点で通常モードに復帰するように構成してもよい。すなわち、本発明の水道直圧式大便器を構成する要素について当業者が設計変更を加えたものであっても、本発明の要旨を備えたものであれば、本発明の範囲に包含される。例えば、ボウル部、トラップ部、ボウル部吐水口、トラップ部吐水口、筐体、便座及び便蓋の形状、並びに給水装置内の配管構成などについては、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の要旨を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水道直圧式大便器に設定されるモードを示す図である。
【図2】(a)〜(d)は、この水道直圧式大便器の動作を示すタイミングチャートであり、(a)は時計が計測する時刻を示し、(b)は便器洗浄スイッチの状態を示し、(c)は通常洗浄の動作状態を示し、(d)は静音洗浄の動作状態を示す。
【図3】この水道直圧式大便器を示すブロック図である。
【図4】この水道直圧式大便器を示す断面図である。
【図5】横軸に時間をとり、縦軸に瞬間流量をとって、第1の具体例において各吐水口から吐出される洗浄水の流量を示すグラフ図である。
【図6】第1の具体例における水道直圧式大便器の動作を示す断面図である。
【図7】第1の具体例における水道直圧式大便器の動作を示す断面図であり、図6の次の工程を示す。
【図8】第1の具体例における水道直圧式大便器の動作を示す断面図であり、図7の次の工程を示す。
【図9】第1の具体例における水道直圧式大便器の動作を示す断面図であり、図8の次の工程を示す。
【図10】第1の具体例における水道直圧式大便器の動作を示す断面図であり、図9の次の工程を示す。
【図11】横軸に期間T3におけるトラップ給水量をとり、縦軸に、トラップ給水量を毎分20リットルとした場合を基準として低減される発生音レベル(発生音レベル差)をとって、トラップ給水量が発生音に及ぼす影響を示すグラフ図である。
【図12】横軸に時間をとり、縦軸に瞬間流量をとって、第2の具体例において各吐水口から吐出される洗浄水の流量を示すグラフ図である。
【図13】第2の具体例における水道直圧式大便器の動作の一部を示す断面図である。
【図14】横軸に時間をとり、縦軸に瞬間流量をとって、第3の具体例において各吐水口から吐出される洗浄水の流量を示すグラフ図である。
【図15】第3の具体例における水道直圧式大便器の動作の一部を示す断面図である。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る水道直圧式大便器を示すブロック図である。
【図17】(a)〜(d)は、この水道直圧式大便器の動作を示すタイミングチャートであり、(a)は温水洗浄便座装置の節電運転モードの状態を示し、(b)は便器洗浄スイッチの状態を示し、(c)は通常洗浄の動作状態を示し、(d)は静音洗浄の動作状態を示す。
【図18】本発明の第3の実施形態に係る水道直圧式大便器を示すブロック図である。
【図19】本実施形態に係る水道直圧式大便器の記憶手段を示す図である。
【図20】(a)〜(d)は、この水道直圧式大便器の動作を示すタイミングチャートであり、(a)は便器のモードを示し、(b)は便器洗浄スイッチの状態を示し、(c)は通常洗浄の動作状態を示し、(d)は静音洗浄の動作状態を示す。
【図21】(a)〜(d)は、本実施形態に係る水道直圧式大便器の動作を示すタイミングチャートであり、(a)は便器のモードを示し、(b)は便器洗浄スイッチの状態を示し、(c)は通常洗浄の動作状態を示し、(d)は静音洗浄の動作状態を示す。
【図22】本発明の第5の実施形態に係る水道直圧式大便器を示すブロック図である。
【図23】この水道直圧式大便器の動作を示すフローチャートである。
【図24】本発明の第6の実施形態に係る水道直圧式大便器を示すブロック図である。
【図25】この水道直圧式大便器の動作を示すフローチャートである。
【図26】水道直圧式大便器及びその動作を示す断面図である。
【図27】この水道直圧式大便器及びその動作を示す断面図であり、図26の次の工程を示す。
【図28】この水道直圧式大便器及びその動作を示す断面図であり、図27の次の工程を示す。
【図29】この水道直圧式大便器及びその動作を示す断面図であり、図28の次の工程を示す。
【図30】この水道直圧式大便器及びその動作を示す断面図であり、図29の次の工程を示す。
【図31】横軸に時間をとり、縦軸に瞬間流量をとって、各吐水口から吐出される洗浄水の流量を示すグラフ図である。
【図32】横軸に時間をとり、縦軸に瞬間流量をとって、他の水道直圧式大便器の動作を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0075】
1、31、41、51、61 水道直圧式大便器
2 ボウル部
2a 底部
2b 開口部
3 トラップ部
3a 入口
3b 屈曲部
3c 屈曲部
3d 出口
5、35、45、65 給水装置
6 ボウル部吐水口
7 トラップ部吐水口
8 流量調整部
9、39、49、59、69 制御部
10 定流量弁
11 流路切替兼開閉バルブ
12 時計
13 便器洗浄スイッチ
15 筐体
16 便座
17 便蓋
21 上水管
22 下水管
25 溜水
25a 水面
32 温水洗浄便座装置
33 人体洗浄用ノズル
43 センサー
44 記憶手段
52、62 開閉装置
53 人体センサー
63 検知部
101 水道直圧式大便器
102 ボウル部
102a 底部
103 トラップ部
103a 入口
103b 屈曲部
103c 屈曲部
103d 出口
105 給水装置
106 ボウル部吐水口
107 トラップ部吐水口
122 下水管
125 溜水
125a 水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウル部に洗浄水を吐出するボウル部吐水口と、
トラップ部に洗浄水を吐出するトラップ部吐水口と、
前記ボウル部吐水口に供給する前記洗浄水の量及び前記トラップ部吐水口に供給する前記洗浄水の量を調整する流量調整部と、
前記流量調整部を制御し、通常洗浄を行う通常モードと前記通常洗浄よりも発生音が小さい静音洗浄を行う静音モードとを切替える制御部と、
を備えたことを特徴とする水道直圧式大便器。
【請求項2】
前記制御部は時計を有し、予め設定された時間帯は前記静音モードとし、前記設定された時間帯以外の時間帯は前記通常モードとすることを特徴とする請求項1記載の水道直圧式大便器。
【請求項3】
便座装置をさらに備え、
前記制御部は、前記便座装置が節電運転中であるときは前記静音モードとし、節電運転中でないときは前記通常モードとすることを特徴とする請求項1記載の水道直圧式大便器。
【請求項4】
前記制御部は、前記水道直圧式大便器の使用頻度を識別する使用頻度識別手段を有し、使用頻度が相対的に低い時間帯を前記静音モードとすることを特徴とする請求項1記載の水道直圧式大便器。
【請求項5】
前記制御部は、前記静音モードにあるときに、前記静音洗浄を所定の回数行う毎に、又は、所定の時間が経過する毎に、前記通常洗浄を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の水道直圧式大便器。
【請求項6】
便蓋と、
前記便蓋を開閉する開閉装置と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記静音モードにあるときは、前記開閉装置を作動させて前記便蓋を閉じてから前記洗浄を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の水道直圧式大便器。
【請求項7】
便蓋と、
前記便蓋を開閉する開閉装置と、
前記便蓋の開閉状態を検知する検知手段と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記静音モードにあるときに、前記検知手段が便蓋の開状態を検知した場合には前記静音洗浄を行い、前記検知手段が便蓋の閉状態を検知した場合には前記通常洗浄を行うように前記流量調整部を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の水道直圧式大便器。
【請求項8】
ボウル部に洗浄水を吐出するボウル部吐水口と、
トラップ部に洗浄水を吐出するトラップ部吐水口と、
前記ボウル部吐水口に供給する前記洗浄水の量及び前記トラップ部吐水口に供給する前記洗浄水の量を調整する流量調整部と、
前記ボウル部を覆う便蓋と、
前記便蓋を開閉する開閉装置と、
前記流量調整部及び前記開閉装置を制御し、前記便蓋を開けたまま洗浄を行う通常モードと前記便蓋を閉じて洗浄を行う静音モードとを切替える制御部と、
を備えたことを特徴とする水道直圧式大便器。
【請求項9】
前記制御部は時計を有し、予め設定された時間帯は前記静音モードとし、前記設定された時間帯以外の時間帯は前記通常モードとすることを特徴とする請求項8記載の水道直圧式大便器。
【請求項10】
便座装置をさらに備え、
前記制御部は、前記便座装置が節電運転中であるときは前記静音モードとし、節電運転中でないときは前記通常モードとすることを特徴とする請求項8記載の水道直圧式大便器。
【請求項11】
前記制御部は、前記水道直圧式大便器の使用頻度を識別する使用頻度識別手段を有し、使用頻度が相対的に低い時間帯を前記静音モードとすることを特徴とする請求項8記載の水道直圧式大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2007−146509(P2007−146509A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343091(P2005−343091)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】