説明

水道管内面の洗浄方法および洗浄装置

【課題】大径の水道管に対しても良好に洗浄することができ、さらには、管の途中でピグとも称される弾性体が停止してそれより先への移動が不可能となった場合でも前記弾性体を回収することができる水道管内面の洗浄方法および洗浄装置を提供する。
【解決手段】水道管1に接続されている分岐管13に、弾性変形可能で内部に中空部を有する弾性体31を収縮させた状態で挿入し、分岐管13を介して、洗浄対象となる水道管1内に弾性体31を送り込んだ段階で、弾性体31の中空部に水を注入して拡径させ、管1の上流側から送水して弾性体31を下流側に送り出して管1の洗浄を行う。弾性体31の中空部に水を注入して拡径させるので、洗浄対象となる管1が大径であっても、弾性体31が管1の内面に接触して押し付ける力を十分に大きくすることができて、大きな洗浄能力で良好に洗浄できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水道管路や下水道管路などの水道管の内面を洗浄する水道管内面の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上水道管路や下水道管路などの水道管は、長期間使用していると、その内面に付着物等を生じることがあるため、この付着物等を除去すべく各種の洗浄方法が実施されている。
この種の従来の洗浄方法の1つ(第1の従来洗浄方法と称す)としては、図4、図5に示すように、洗浄用のピグ8を導入するための導入部と取り出すための取出部とを設けるべく、管の一部を切断して洗浄する方法がある。ここで、図4、図5などにおける1は地中に埋設された管(水道管)、Aはこの管1における洗浄対象となる区間(洗浄区間)、2は洗浄区間Aの上流側に配設されている開閉弁(上流側開閉弁と称す)、3は洗浄区間Aの下流側に配設されている開閉弁(下流側開閉弁と称す)、Bは管1における洗浄時に断水となる区間(断水区間)である。なお、図4、図5や、後述する図6、図7、図1、図2において、各種の開閉弁が、閉じている状態のものは黒塗り状態で示し、開いている状態のものは白抜き状態で示している。
【0003】
前記第1の従来洗浄方法では、図4(a)に示すように、まず、上流側開閉弁2と下流側開閉弁3とを閉じて、洗浄区間Aを断水状態とした後に、図4(b)に示すように、いわゆるランチャーと呼ばれるピグ発射装置4を導入する導入用箇所5と、いわゆるキャッチャーと呼ばれるピグ回収装置6を地上に取り出す取出用箇所7とを掘削するとともに、これらの導入用箇所5および取出用箇所7の管路を切断して撤去する。そして、図4(c)に示すように、各箇所5、7に対応させてピグ発射装置4とピグ回収装置6とを設置し、ピグ発射装置4にピグ8をセットする。なお、この種のピグ発射装置4やピグ回収装置6で用いられるピグ8は、管の径に対応する大きさで、先端が半球状となった円柱形状の(いわゆる砲弾型の)ウレタンフォームで形成されたものなどが用いられている。また、ピグ回収装置6には、内部に流入した水を外部に排水する排水管6aが設けられている。
【0004】
次に、図5(a)に示すように、上流側開閉弁2を開けて、管1内を流れる水の圧力によりピグ8を洗浄区間A内で圧送することにより、管1の内面に付着した付着物等をピグ8で掻き落とすようにして、管1の内面を洗浄する。この後、図5(b)に示すように、ピグ8がピグ回収装置6に到達したら、上流側開閉弁2を閉じて洗浄区間A内への水の圧送を停止し、ピグ回収装置6からピグ8を取り出す。なお、管1内面の汚れ具合に応じて、汚れ(付着物)が多い場合などには、図4(c)および図5(a)、(b)に示す工程を数回繰り返す。この洗浄作業が終了すると、洗浄区間A内を排水して、管1の内面から掻き落とされた付着物等の夾雑物を排出した後、切断した管路を復旧させるとともに埋め戻しを行い、この後、上流側開閉弁2と下流側開閉弁3とを開けて、通水する(図5(c)参照)。このようにして、洗浄区間A内の洗浄作業を行うことができる。
【0005】
しかし、上記第1の従来洗浄方法を用いた場合、導入用箇所5と取出用箇所7との2箇所を掘削した後に管路を切断して撤去し、洗浄作業後に、管路を復旧させ、埋め戻す作業が必要であるので、これらの掘削作業、管路の切断作業、管路の復旧作業、埋め戻し作業の工事費が極めて多額となるとともに、断水時間が長くなる欠点がある。
【0006】
これに対して、ピグ発射装置4やピグ回収装置6を設置するための管の切断作業や復旧作業を必要としない、別途の水道管内面の洗浄方法(第2の従来の洗浄方法と称す)が、特許文献1〜3などにも開示されているように既に知られている。上水道管には、ほぼ所定間隔ごとに消火栓が設けられるが、このように消火栓を設けるためなどに、水道管にはその管1に対して分岐された状態で分岐管が配設されている。そして、前記第2の従来洗浄方法は、この消火栓用などとして設けられている分岐管を利用するものである。
【0007】
この第2の従来洗浄方法を、図6、図7を用いて説明する。なお、これらの図において、11、12は分岐管13、14上に補修弁15、16を介して取り付けられた消火栓であり、これらの消火栓11、12、分岐管13、14、補修弁15、16は、地中に掘られた消火栓用空間(いわゆる消火栓用ボックス)17、18内に配設されている。なお、19、20は、消火栓用空間17、18の上面開口部を閉じる蓋体である。
【0008】
この洗浄方法では、図6(a)に示すように、上流側開閉弁2と下流側開閉弁3とをまず閉じて、洗浄区間Aを断水状態とした後に、図6(b)に示すように、洗浄区間Aの上流側に設けられている消火栓11を取り外して、この消火栓11の代わりにピグ導入用治具21を取付けるとともに、洗浄区間Aの下流側に設けられている消火栓12を取り外して、この消火栓12の代わりにピグ回収用治具22を取付ける。また、ピグ導入用治具21の導入口に、ウレタンフォームなどからなる弾性変形可能(伸縮可能)な球状のピグ23をセットする。
【0009】
次に、図6(c)に示すように、ピグ導入用治具21から送水するための水槽24やポンプ25をピグ導入用治具21に接続し、また、ピグ回収用治具22に排水管26を取り付ける。そして、排水管26から排気および排水しながら、ポンプ25を駆動させてピグ導入用治具21内に送水して、ピグ23を管1内へ送り込み、さらに送水を続けることで、図7(a)に示すように、水圧によりピグ23を洗浄区間A内で送り出す。これにより、管1の内面に付着した付着物等を掻き落とすようにして、管1の内面を洗浄する。
【0010】
この後、図7(b)に示すように、ピグ23がピグ回収用治具22側に到着したら、ポンプ25を停止して洗浄区間A内への水の圧送を停止し、ピグ回収用治具22からピグ23を取り出す。なお、管1内面の汚れ具合に応じて、汚れ(付着物)が多い場合などには、図6(c)および図7(a)、(b)に示す工程を数回繰り返す。そして、洗浄作業が終了した場合は、ピグ導入用治具21やピグ回収用治具22などを取り外して撤去した後、図7(c)に示すように、上流側の消火栓11と下流側の消火栓15を取り付け直して復旧させ、上流側開閉弁2と下流側開閉弁3とを開けて、通水する(図7(c)参照)。このようにして、洗浄区間A内の洗浄作業を行うことができる。
【0011】
この第2の従来洗浄方法によれば、消火栓用などの分岐管を利用してピグ導入用治具16やピグ回収用治具17などを着脱するため、前記第1の従来洗浄方法で必要であった掘削作業、管路の切断作業、管路の復旧作業、埋め戻し作業が不要となり、前記第1の従来洗浄方法を実施する場合と比較して、工事費を低減させることができる。また、これらの作業時間も省くことができるので、断水時間を短縮できる利点がある。
【0012】
なお、前記第2の従来洗浄方法に用いるピグ23としては、特許文献1、2に開示されているように、発泡体などの球状で中実(中空ではなく、内部まで材料がつまった)の弾性体に、掻き取り用材を被せたものや、特許文献2の一部(段落番号[0023]の最終文節)や特許文献3等に開示されているように、中空のゴムボールなどの弾性体に、掻き取り用材を被せて、空気を注入したものが用いられている。そして、中実の弾性体からなるピグを用いる場合には、外力をかけて収縮させた状態で分岐管から挿入し、管(いわゆる本管)にて元の大きさやこれに近い大きさに復元させて洗浄するよう構成されている。また、空気を注入したピグを用いる場合には、特許文献2や特許文献3等に具体的な使用方法については開示されていないが、中空のゴムボールなどの弾性体を用いる場合と同様に、外力をかけて収縮させた状態で分岐管から挿入して、その弾性力により元の大きさやこれに近い大きさに復元させて洗浄するよう構成したり、空気導入用のゴムチューブや空気注入用の針などを付けながら空気を抜いた状態で分岐管から挿入し、管(本管)に届いた段階でピグに空気を注入して膨らませ、前記空気導入用のゴムチューブや空気注入用の針を外した状態で洗浄するよう構成したりすることが考えられる。なお、特許文献3については、洗浄対象物が、ばら材料を空気圧で移送するコンベア装置の管路であり、本発明のような水道管を洗浄対象としたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−66522号公報
【特許文献2】特開2008−25283号公報
【特許文献3】特開2001−87727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記第2の従来洗浄方法を用いると、掘削作業などが不要となり、工事費を低減させることができたり、断水時間を短縮できたりする利点がある一方で、以下のような課題を有する。
【0015】
分岐管は洗浄対象の管(いわゆる水道管の本管)より径が小さいとともに、消火栓が取り付けられる分岐管の内径は一般に所定の大きさ(例えば75mm)に統一されている。これに対して、洗浄対象の管(本管)の大きさは300mmや450mmのものなど、各種の大きさがあり、分岐管に対して非常に大きな径のものがある。そして、洗浄作業に用いるピグは、分岐管を通過させた後、分岐管よりも大径の管を洗浄しなければならない。しかし、ピグとして、中実の弾性体からなるものを用いた場合には、その圧縮比は限られているので、洗浄対象が大径の管である場合には、ピグが管の内面に接触して押し付ける力が極めて弱かったり、管の内面に接触できる大きさとならなかったりして、洗浄能力が低く、良好に洗浄することができない。
【0016】
また、ピグとして、中空で、内部に空気を注入するものを用いた場合には、洗浄対象の管に入れてから大きく膨張させることができるので、洗浄対象が大径の管である際でも、ピグを管の内面に接触させることは可能である。しかし、ピグは空気で膨張させているだけであるので、管の内面に対してピグの外周面を押し付ける力があまり大きくできず、その結果、大径の管に対して十分な洗浄を行うことができない。また、洗浄対象の管内に水が残っている状態でピグを挿入すると、空気を入れたピグがその浮力により管内で浮いてしまい、ピグの下方と管の内面底部との間に隙間(水の逃げ道)ができて、水圧によるピグの送り出し(移送方向への推進)が不良となったり、付着物の発生し易い管の内面底部の洗浄が不良となったりする可能性もある。
【0017】
さらに、洗浄作業中に、管内の付着物が大きかったり、管同士の接合部での互いの管の径の差が大きかったり、継手部の形状変化が大きかったりして、管の洗浄経路の途中でピグがそれより先の通路へ移動できず、止まったままとなることがあった。この場合、ピグを回収するために、道路の掘削作業が必要となっていた。また、このような場合に備えて、ピグの存在場所を外部から検知するための送信機をピグに内蔵させたり、受信機や検索装置などを必要としたりするなどのさらなる設備費の増加を招く短所もあった。
【0018】
本発明は、上記課題を解決するもので、掘削作業や管路の切断作業などが不要となり、工事費を低減させることができたり、断水時間を短縮できたりするだけでなく、大径の水道管に対しても良好に洗浄することができ、さらには、管の途中でピグとも称される弾性体が停止してそれより先への移動が不可能となった場合でも前記弾性体を回収することができる水道管内面の洗浄方法および洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の水道管内面の洗浄方法は、水道管に接続されている分岐管に、内部に中空部を有する弾性体を収縮させた状態で挿入し、前記分岐管を介して、洗浄対象となる水道管内に前記弾性体を送り込んだ段階で、前記弾性体の中空部に水を注入して前記弾性体を拡径させ、管の上流側から送水して前記弾性体を下流側に送り出して管の洗浄を行うことを特徴とする。
【0020】
上記方法によれば、洗浄対象となる水道管内に弾性体を送り込んだ段階で、この弾性体の中空部に水を注入して前記弾性体を拡径させるので、洗浄対象となる管が大径であっても、弾性体が管の内面に接触して押し付ける力を十分に大きくすることができて、大きな洗浄能力で良好に洗浄することができる。また、弾性体の内部に水が注入されているので、洗浄対象の管内に水が残っている状態で弾性体を挿入した場合でも、弾性体が管内で浮いてしまうことがなく、弾性体の管内での送り出しを良好に行えるとともに、付着物の発生し易い管の内面底部などを良好に洗浄することができる。
【0021】
また、本発明の水道管内面の洗浄方法は、管の上流側から送水して、前記弾性体を、下流側の分岐管に対応する箇所まで送り出して管の洗浄を行い、この後、前記弾性体を収縮させて、下流側の分岐管を介して前記弾性体を外部に取り出すことを特徴とする。この方法により、容易に弾性体を外部に取り出すことができる。
【0022】
また、本発明の水道管内面の洗浄方法は、前記弾性体が、下流側の分岐管に対応する箇所まで送り出された際に、前記弾性体を破損させて中空部内の水を出すことにより前記弾性体を収縮させることを特徴とする。この方法により、弾性体を簡単に収縮させて取り出すことができる。
【0023】
また、本発明の水道管内面の洗浄方法は、前記弾性体に弾性体回収用の線材を取り付け、上流側の分岐管を介して管内に前記弾性体回収用の線材を延ばしながら、前記弾性体を管内で送り出し、前記線材を引き戻すことにより、前記弾性体を前記上流側の分岐管を介して引き戻して回収することを特徴とする。この方法により、管の洗浄経路の途中で弾性体がそれより先の通路へ移動できず、止まったままとなった場合でも、線材を引き戻すことにより、簡単に弾性体を回収できる。
【0024】
また、本発明の水道管内面の洗浄装置は、前記水道管内面の洗浄方法に用いる洗浄装置であって、弾性体の中空部に注入する水注入機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によれば、洗浄対象となる水道管内に弾性体を送り込んだ段階で、この弾性体の中空部に水を注入して前記弾性体を拡径させるので、洗浄対象となる管が大径であっても、弾性体が管の内面に接触して押し付ける力を十分に大きくすることができて、大きな洗浄能力で良好に洗浄することができる。また、弾性体の内部に水が注入されているので、洗浄対象の管内に水が残っている状態で弾性体を挿入した場合でも、弾性体が管内で浮いてしまうことがなく、弾性体の管内での送り出しを良好に行えるとともに、付着物の発生し易い管の内面底部などを良好に洗浄することができる。また、水道管内に弾性体を送り込んだ段階で、この弾性体の中空部に水を注入して前記弾性体を拡径させるという比較的簡単な構造であるので設備費の増加も最小限に抑えることができる。また、本発明においても、消火栓用などの分岐管を利用して弾性体を挿入したり取り出したりするので、掘削作業や管路の切断作業などが不要となり、工事費を低減させることができたり、断水時間を短縮できたりする。
【0026】
また、この方法によっても、洗浄作業が終了した段階で、弾性体を、下流側の分岐管から容易に外部に取り出すことができる。また、弾性体が、下流側の分岐管に対応する箇所まで送り出された際に、前記弾性体を破損させて中空部内の水を出すことにより、簡単に弾性体を収縮させることができて、作業能率が良好となる。
【0027】
また、弾性体に弾性体回収用の線材を取り付け、上流側の分岐管を介して管内に前記弾性体回収用の線材を延ばしながら、前記弾性体を管内で送り出し、前記線材を引き戻すことにより、前記弾性体を上流側の分岐管を介して引き戻して回収することにより、万一、管の洗浄経路の途中で弾性体がそれより先の通路へ移動できず、止まったままとなった場合でも、線材を引き戻すことにより、従来必要であった道路の掘削作業などを行わなくても、簡単に弾性体を回収できる。したがって、弾性体の存在場所を外部から検知するための送信機や受信機、検索装置なども不要となり、これによっても設備費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る水道管内面の洗浄方法の工程を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)はそれぞれ同実施の形態に係る水道管内面の洗浄方法の工程を示す断面図である。
【図3】(a)および(b)はそれぞれ同実施の形態に係る水道管内面の洗浄方法で使用する弾性体の斜視図および断面図である。ただし、(a)は掻き取り材を貼り付ける前の状態の弾性体を示している。
【図4】(a)〜(c)はそれぞれ第1の従来洗浄方法の工程を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)はそれぞれ同第1の従来洗浄方法の工程を示す断面図である。
【図6】(a)〜(c)はそれぞれ第2の従来洗浄方法の工程を示す断面図である。
【図7】(a)〜(c)はそれぞれ同第2の従来洗浄方法の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態に係る水道管内面の洗浄方法および洗浄装置を図面に基づき説明する。なお、上述した第1、第2の従来の洗浄方法で説明した構成要素と同様な機能の構成要素には同符号を付す。
【0030】
図1、図2に示すように、本発明の実施の形態に係る水道管内面の洗浄方法も、消火栓11、12などを取り付けるための分岐管13、14や、これらの分岐管13、14や消火栓11、12が設けられている消火栓用空間17、18などを利用して、後述する導入(挿入)設備や取出(排水)設備などを着脱する構成とされている。なお、この実施の形態における管1は上水道管とされ、ほぼ所定間隔ごとに消火栓11、12・・・が設けられている。なお、19、20は、消火栓用空間17、18の上面開口部を閉じる蓋体、15、16は分岐管13、14と消火栓11、12との間に配設されている補修弁15、16である。
【0031】
また、図1(c)、(d)、図2(a)〜(c)に示すように、本発明の実施の形態に係る水道管内面の洗浄装置は、管1内に導入されるピグとも称される弾性体31と、弾性体31内に水を注入するポンプ32a、水注入ホース32b、水タンク(図示せず)などを有する水注入装置32と、弾性体31を回収するための弾性体回収用ワイヤ(弾性体回収用の線材)33が巻きつけられたワイヤリール34と、弾性体31を管1内に導入させる際に分岐管13に接続される導入(挿入)設備としての導入接続管35および導入側開閉弁36と、弾性体31を管1内より取り出す際に分岐管14に接続される取出(排水)設備としての取出用接続管37、排水用接続管38および取出側開閉弁39などを備えている。
【0032】
ここで、弾性体31は、図3(a)、(b)に示すように、中空のゴムボールなどの弾性を有する材料で形成され、水注入口41aを介して中空部41bに外部から、水注入ホース32bに接続された注入用の針を挿脱可能な弾性球体41に、弾性体回収用ワイヤ33を取り付けるための係止用リング42aを有する金属製等の係止具42が、円形に巻かれた帯状の固定材43により挟持された状態で固定されており、さらに、これらの球面部分の外周全面にわたって、ウレタンフォームなどからなる掻き取り材44が接着剤などを用いて貼り付けられた構成とされている。なお、図3(a)は、掻き取り材44を貼り付ける前の状態の弾性体31を示している。
【0033】
次に、本発明の実施の形態に係る水道管内面の洗浄方法を具体的に説明する。まず、図1(a)に示すように、洗浄区間Aの上流側に配設されている上流側開閉弁2と、洗浄区間Aの下流側に配設されている下流側開閉弁3とを閉じて、洗浄区間Aを断水状態とする。次に、図1(b)に示すように、洗浄区間Aの上流側に設けられている分岐管13から消火栓11および補修弁15を取り外して、この消火栓11などの代わりに、導入(挿入)設備としての導入接続管35および導入側開閉弁36を取付けるとともに、洗浄区間Aの下流側に設けられている分岐管13から消火栓12および補修弁16を取り外して、この消火栓12などの代わりに、取出(排水)設備としての取出用接続管37、排水用接続管38および取出側開閉弁39を取付ける。
【0034】
次に、図1(c)に示すように、前記導入(挿入)設備の近傍に、水注入装置32やワイヤリール34を設置し、収縮させた状態の弾性体31に弾性体回収用ワイヤ33や水注入ホース32bを取り付ける。そして、導入側開閉弁36を開けた状態で、弾性体31を、導入側開閉弁36を介して導入接続管35内に導入(挿入)する。なお、取出(排水)設備の取出側開閉弁39については閉じておく。
【0035】
図1(d)に示すように、導入接続管35を通して、管(水道管)1内に弾性体31が到達したら、ポンプ32aなどを駆動して、水注入ホース32bを介して弾性体31の中空部41bに所定量の水を注入する。ここで、注入する水の量は、予め、注入する水の体積と弾性体31の外径との関係を調べておき、洗浄対象の管1の内径に対応した弾性体31の外径となるように注入することが好ましい。また、予め、同じ径の試験用管に弾性体31を配置して、弾性体31が良好な圧力で、管1の内面に接触するように水量を決定してもよい。なお、弾性体31に水を注入した後は、水注入ホース32bを弾性体31から取り外して外部に取り出し、弾性体回収用ワイヤ33を除き、導入側開閉弁36から水などが通過しないよう閉状態とする。
【0036】
この後、上流側開閉弁2を開けて管1の洗浄区間Aおよび取出(排水)設備としての取出用接続管37、排水用接続管38を通して、通水する。これにより、図2(a)に示すように、弾性体31が水圧により洗浄区間A内で送り出され、弾性体31によって管1の内面に付着した付着物等を掻き落とすようにして、管1の内面が洗浄される。そして、図2(b)に示すように、弾性体31が洗浄区間Aの終端(管1における下流側の分岐管13)まで到達したら、槍などの破砕用治具を用いるなどして、弾性体31を破損させて中空部41b内の水を抜き出すことにより弾性体31を収縮させ、排水用接続管38まで送った後、取出側開閉弁39を開けて、図2(c)に示すように、弾性体31を外部に取り出す。なお、管1内面の汚れ具合に応じて、汚れ(付着物)が多い場合などには、図1(c)、図1(d)および図2(a)〜図2(c)に示す工程を数回繰り返す。そして、洗浄作業が終了した場合は、洗浄装置(導入(挿入)設備としての導入接続管35や導入側開閉弁36、ワイヤリール34などと、取出(排水)設備としての取出用接続管37、排水用接続管38、取出側開閉弁39など)を除去する。最後に、上流側の消火栓11や下流側の消火栓15などを取り付け直して復旧させ、上流側開閉弁2と下流側開閉弁3とを開けて、通水する(図2(d)参照)。このようにして、洗浄区間A内の洗浄作業を行うことができる。
【0037】
この洗浄方法によっても、消火栓用などの分岐管13、14を利用して導入(挿入)設備や取出(排水)設備などを着脱するため、洗浄作業を行うためだけの、掘削作業、管路の切断作業、管路の復旧作業、埋め戻し作業が不要となり、前記第1の従来洗浄方法と比較して、工事費を低減させることができる。また、これらの作業時間も省くことができるので、断水時間を短縮できる利点がある。
【0038】
また特に、本発明の洗浄方法によれば、洗浄対象となる管(水道管)1内に弾性体31を送り込んだ段階で、この弾性体31の中空部中空部41bに水を注入して弾性体31を拡径させる手法を採用したので、比較的小径である分岐管13(例えば口径が75mm)から管1に弾性体31を支障なく導入でき、かつ、洗浄対象となる管1が大径(例えば口径が300mm以上)であっても、弾性体31が管1の内面に接触して押し付ける力を十分に大きくすることができて、大きな洗浄能力で良好に洗浄することができる。また、弾性体31の内部に水が注入されているので、洗浄対象の管1内に水が残っている状態で弾性体31を挿入した場合でも、弾性体31が管1内で浮いてしまうことがなく、弾性体31の管1内での送り出しを良好に行えるとともに、付着物の発生し易い管1の内面底部などを良好に洗浄することができる。
【0039】
また、弾性体31を、中空のゴムボールなどの弾性球体41に、球面部分の外周全面にわたって、ウレタンフォームなどからなる掻き取り材44を貼り付けた構成としたことにより、比較的安価に製造できながら、管1の内面に付着した付着物を良好に掻き取って除去することができて、良好に洗浄できる。
【0040】
また、弾性体31が下流側の分岐管14に対応する箇所まで送り出された際に、弾性体31を破損させて中空部41b内の水を出すことにより、弾性体31を簡単に収縮させて外部に取り出すことができる。
【0041】
なお、この洗浄方法を用いた場合でも、管1内の付着物が大きかったり、管1同士の接合部での互いの管1の径の差が大きかったり、継手部の形状変化が大きかったりして、洗浄作業中に管1の洗浄経路の途中で弾性体31がそれより先の通路へ移動できず、止まったままとなる可能性がある。しかし、本発明の前記実施の形態では、弾性体31に弾性体回収用ワイヤ33を取り付け、管1内において弾性体回収用ワイヤ33を延ばしながら弾性体31を送り出すよう構成したので、上記のように弾性体31が管1内で先の通路へ移動できない状態となった場合でも、ワイヤリール34を逆回転させて弾性体回収用ワイヤ33を引き戻すことにより、簡単かつ確実に弾性体31を回収できて、従来必要であった道路の掘削作業などを行わなくても済む。したがって、弾性体の存在場所を外部から検知するための送信機や受信機、検索装置なども不要となり、これによっても設備費を低減することができる。
【0042】
また、上記実施の形態においては、弾性体31の表面に、ウレタンフォームなどからなる掻き取り材44を貼り付けた場合を述べたが、これに限るものではなく、掻き取り材44としては、ゴムスポンジ、ブラシ等の他の部材や材料を用いてもよい。また、上記の実施の形態では、弾性体31に弾性体回収用ワイヤ33を取り付けた場合を述べたが、この回収用ワイヤ33は必ずしも必要ではなく、洗浄対象となる管1の使用年数が短い場合など、大きな付着物が付着している可能性が低い場合などには、回収用ワイヤ33を取り付けなくてもよい。
【0043】
また、上記実施の形態においては、消火栓用の分岐管を用いた場合を述べたが、これに限るものではなく、空気管用の分岐管や各種補修用の分岐管に対しても適用可能であり、下水道などにも対応可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 管(水道管)
11、12 消火栓
13、14 分岐管
17、18 消火栓用空間
31 弾性体
32 水注入装置
33 弾性体回収用ワイヤ(弾性体回収用の線材)
34 ワイヤリール
35 導入接続管
36 導入側開閉弁
37 取出用接続管
38 排水用接続管
39 取出側開閉弁
41b 中空部
42 係止具
44 掻き取り材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管に接続されている分岐管に、内部に中空部を有する弾性体を収縮させた状態で挿入し、前記分岐管を介して、洗浄対象となる水道管内に前記弾性体を送り込んだ段階で、前記弾性体の中空部に水を注入して前記弾性体を拡径させ、管の上流側から送水して前記弾性体を下流側に送り出して管の洗浄を行うことを特徴とする水道管内面の洗浄方法。
【請求項2】
管の上流側から送水して、前記弾性体を、下流側の分岐管に対応する箇所まで送り出して管の洗浄を行い、この後、前記弾性体を収縮させて、下流側の分岐管を介して前記弾性体を外部に取り出すことを特徴とする請求項1記載の水道管内面の洗浄方法。
【請求項3】
前記弾性体が、下流側の分岐管に対応する箇所まで送り出された際に、前記弾性体を破損させて中空部内の水を出すことにより前記弾性体を収縮させることを特徴とする請求項2記載の水道管内面の洗浄方法。
【請求項4】
前記弾性体に弾性体回収用の線材を取り付け、上流側の分岐管を介して管内に前記弾性体回収用の線材を延ばしながら、前記弾性体を管内で送り出し、前記線材を引き戻すことにより、前記弾性体を前記上流側の分岐管を介して引き戻して回収することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の水道管内面の洗浄方法。
【請求項5】
請求項1に記載の水道管内面の洗浄方法に用いる洗浄装置であって、弾性体の中空部に注入する水注入機構を有することを特徴とする水道管内面の洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−101847(P2011−101847A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257570(P2009−257570)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】