説明

水酸化アルミニウムの製造法

本発明は改善された熱安定性をもつ水酸化アルミニウムの燃焼遅延剤を製造する新規方法、この場合に製造される水酸化アルミニウム粒子、これからつくられた水酸化アルミニウム粒子の燃焼遅延性重合体組成物における使用、および該燃焼遅延性重合体組成物からつくられた型成形品および押出し成形品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉱物性の燃焼遅延剤に関する。特に本発明は水酸化アルミニウムの燃焼遅延剤を製造する新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水酸化アルミニウムは多くの別名、例えばアルミニウム水和物、三水和アルミニウム、三水酸化アルミニウム等の名前をもっているが、通常はATHと呼ばれている。以後ATHと呼ぶ粒子状の水酸化アルミニウムは、多くの材料、例えば紙、樹脂、ゴム、プラスティックス等の充填剤として多くの用途が見出だされている。ATHの最も多い用途はプラスティックスのような合成樹脂、および針金およびケーブルの中の燃焼遅延剤としての用途である。
【0003】
ATHの工業的用途はかなり以前から知られていた。燃焼遅延剤の分野においては、プラスティックスのような合成樹脂、および針金およびケーブルの中において燃焼遅延性を賦与するためにATHの粒子が使用される。ATHの粒子を含んだ合成樹脂の配合性能および粘度はATH粒子に関連した重要な寄与を及ぼす。合成樹脂産業においては、この明白な理由のために良好な配合特性に対する要求が増えている。
【0004】
このように良好な配合性能に対する要求が増えるにつれて、当業界においてこれらの要求に合うようなATH粒子を製造する方法が必要になっている。
【発明の開示】
【0005】
本発明の概要
本発明は乾式粉砕されたATHを製造する方法に関し、この方法は一般に
(a)水酸化アルミニウムのスラリまたはフィルターケーキを噴霧乾燥して噴霧乾燥された水酸化アルミニウム粒子をつくり;
(b)該噴霧乾燥された水酸化アルミニウム粒子を乾式粉砕して乾式粉砕されたATH粒子をつくることを含んで成り、
ここで該乾式粉砕されたATHは細孔半径の中央値(「r50」)が約0.09〜0.33μmの範囲にあり、また
(i)BET比表面積が約3〜約6m/gであって、約1000バールにおける最大比細孔容積が約390〜約480mm/gであるか、或いは
(ii)BET比表面積が約6〜約9m/gであって、約1000バールにおける最大比細孔容積が約400〜約600mm/gであるか、また或いは
(iii)BET比表面積が約9〜約15m/gであって、約1000バールにおける最大比細孔容積が約300〜約700mm/gである。
【0006】
他の具体化例においては、本発明は乾式粉砕されたATHを製造する方法に関し、この方法は一般に
(a)水酸化アルミニウムのスラリまたはフィルターケーキを噴霧乾燥して噴霧乾燥された水酸化アルミニウム粒子をつくり;
(b)該噴霧乾燥された水酸化アルミニウム粒子を乾式粉砕して乾式粉砕されたATH粒子をつくることを含んで成り、
ここで乾式粉砕されたATH粒子は
(i)BET比表面積が約3〜約6m/gであって、約1000バールにおける最大比細孔容積が約390〜約480mm/gであるか、或いは
(ii)BET比表面積が約6〜約9m/gであって、約1000バールにおける最
大比細孔容積が約400〜約600mm/gであるか、また或いは
(iii)BET比表面積が約9〜約15m/gであって、約1000バールにおける最大比細孔容積が約300〜約700mm/gである。
【0007】
本発明の詳細な説明
樹脂に対するATH粒子の湿潤性はATH粒子の形状に依存し、本発明の発明人はこれに関し予想外にも、本発明を使用することにより現在入手できるATH粒子に比較して改善された湿潤性をもつATH粒子を製造できることを発見した。理論に拘束されることを望むものではないが、この湿潤性の改善は本発明方法によってつくられたATH粒子の形状の改善によると本発明の発明人は考えている。
【0008】
スラリおよびフィルターケーキ
本発明の一具体化例においては、ATH粒子を含むスラリまたはフィルターケーキを噴霧乾燥して噴霧乾燥されたATH粒子をつくり、次にこれを乾式粉砕して乾式粉砕されたATH粒子をつくる。好適な一具体化例においてはスラリを噴霧乾燥し、他の好適具体化例においてはフィルターケーキを噴霧乾燥する。
【0009】
スラリまたはフィルターケーキはスラリまたはフィルターケーキの全重量に関し典型的には約1〜約85重量%の範囲のATH粒子を含んでいる。好適具体化例においては、スラリまたはフィルターケーキは同じ基準で約25〜約70重量%、もっと好ましくは約55〜約65重量%の範囲のATH粒子を含んでいる。他の好適具体化例においては、スラリまたはフィルターケーキは同じ基準で約40〜約60重量%、もっと好ましくは約45〜約55重量%の範囲のATH粒子を含んでいる。さらに他の好適具体化例においては、スラリまたはフィルターケーキは同じ基準で約25〜約50重量%、もっと好ましくは約30〜約45重量%の範囲のATH粒子を含んでいる。
【0010】
本発明を実施するのに使用されるスラリまたはフィルターケーキは、ATH粒子を製造するのに用いられる任意の方法で得ることができる。好ましくはスラリまたはフィルターケーキは、沈澱および濾過によってATH粒子を製造することを含む方法から得ることができる。例示的な一具体化例においては、スラリまたはフィルターケーキは、粗製の水酸化アルミニウムを苛性ソーダに溶解してアルミン酸ナトリウム含有液(liquor)をつくり、これを冷却し濾過してこの例示的な具体化例に使用されるアルミン酸ナトリウム含有液をつくる。このようにしてつくられたアルミン酸ナトリウム含有液は典型的にはNaO:Alの比が約1.4:1〜約1.55:1の範囲にある。アルミン酸ナトリウム含有液からATH粒子を沈澱させるためには、アルミン酸ナトリウム含有液1リットル当たり約1〜3gの範囲の量のATH種子粒子をアルミン酸ナトリウム含有液に加えて工程混合物をつくる。アルミン酸ナトリウム含有液の液温が約45〜約80℃にある時にATHの種子粒子をアルミン酸ナトリウム含有液に加える。ATHの種子粒子を加えた後、工程混合物を100時間撹拌するか、または別法としてNaO:Alのモル比が約2.2:1〜約3.5:1の範囲になるまで撹拌してATH懸濁物をつくる。得られたATH懸濁物は典型的には懸濁物に関して約80〜約160g/LのATHを含んで成っている。しかし、ATH濃度は上記の範囲内に入るように変えることができる。得られたATH懸濁物を次に濾過し洗滌してその中から不純物を除去し、フィルターケーキをつくる。このフィルターケーキを一回、或る具体化例においては1回以上水で、好ましくは脱塩した水で洗滌する。次にこのフィルターケーキを直接噴霧乾燥することができる。
【0011】
しかし、或る好適な具体化例においては、フィルターケーキを水で再スラリ化してスラリをつくるか、或いは一好適具体化例においては少なくとも1種の、好ましくは唯1種の分散剤をフィルターケーキに加え上記範囲のATH濃度をもつスラリをつくる。水と分散剤との組み合わせを用いてフィルターケーキを再スラリ化することも本発明の範囲内に入
ることに注目すべきである。この場合に使用するのに適した分散剤の例にはポリアクリレート、有機酸、ナフタレンスルフォネート/フォルムアルデヒド縮合物、脂肪アルコール−ポリグリコール−エーテル、ポリプロピレン−エチレンオキシド、ポリグリコール−エステル、ポリアミン−エチレンオキシド、フォスフェート、ポリビニルアルコールが含まれる。スラリが分散剤を含んで成る場合、分散剤の効果のためにスラリはその全重量に関し最高約80重量%のATHを含んでいることができる。この具体化例においては、スラリまたはフィルターケーキの残り(即ちATH粒子および分散剤を含まない部分)は典型的には水であるが、沈澱に由来する若干の試薬、汚染物質等が存在することができる。
【0012】
スラリまたはフィルターケーキの中のATH粒子は一般にBETが約1.0〜約4.0m/gの範囲あることを特徴としている。好適具体化例においてはATH粒子は約1.5〜約2.5m/gの範囲のBETをもっている。スラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子はさらに約2.0〜約3.5μmの範囲のd50をもっていることを特徴としている。また好適具体化例においてはスラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子は、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子よりも粗い約1.8〜約2.5μmの範囲のd50をもっている。他の好適具体化例においてはスラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子はBETが約4.0〜約8.0m/gの範囲あることを特徴としている。他の好適具体化例においてはスラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子は、BETが約5〜約7m/gの範囲ある。この具体化例においてはスラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子は、さらに約1.5〜約2.5μmの範囲のd50をもつことを特徴としている。さらに他の好適具体化例においてはスラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子は、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子よりも粗い約1.6〜約2.0μmの範囲のd50をもっている。さらに他の好適具体化例においてはスラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子は、BETが約8.0〜約14m/gの範囲あることを特徴としていることができる。さらに他の具体化例においてはスラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子は、BETが約9〜約12m/gの範囲ある。この好適具体化例においてはスラリまたはフィルターケーキは、さらに約1.5〜約2.0μmの範囲のd50をもつとして特徴付けることができる。好適具体化例においてはスラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子は、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子よりも粗い約1.5〜約1.8μmの範囲のd50をもっている。
【0013】
「乾式粉砕されたATH粒子よりも粗い」という言葉は、一般にスラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子のd50の上限値が、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子のd50の上限値よりも少なくとも約0.2μm大きいことを意味する。
【0014】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明によりつくられたATH粒子の改善された形状は少なくとも部分的にはATHを沈澱させるのに使用される過程に起因すると本発明の発明人は考えている。このように、乾式粉砕の技術は当業界において公知ではあるが、好適具体化例を含み本明細書に記載された沈澱および濾過の方法を本明細書に記載された乾式粉砕法と共に用いることにより、下記のような改善された形状をもつATH粒子を容易につくることができることを本発明の発明人は発見したのである。
【0015】
噴霧乾燥
噴霧乾燥は水酸化アルミニウムの製造に通常用いられる方法である。この方法は一般にATH供給物、ここでは乾式粉砕されたATHのスラリまたはフィルターケーキをノズルおよび/または回転微粒子化器を使用して微粒子化することを含んでいる。微粒子化された供給物を次に高温のガス、典型的には高温の空気と接触させ、次にこの噴霧乾燥されたATHを高温のガス流から回収する。微粒子化された供給物の接触は向流式または順流式のいずれかで行うことができ、ガスおよび/または微粒子化された供給物の流速を制御して所望の生成物特性を有するATH粒子をつくることができる。
【0016】
噴霧乾燥されたATHの回収は、濾過のような回収法を使用するか、或いは噴霧乾燥された粒子を噴霧乾燥器の中でそれらを取り出し得る場所に落下させるか捕集できるようにすることによって行うことができるが、任意の回収法を使用することができる。好適具体化例においては、噴霧乾燥されたATHを沈降させ、噴霧乾燥器からスクリューコンベヤで回収し、次いで圧縮空気によりパイプを通してサイロの中に運ぶことにより噴霧乾燥されたATHを噴霧乾燥器から回収する。
【0017】
噴霧乾燥の条件は通常の条件であり、下記に述べるような所望のATH粒子の生成物についての知識をもった当業界の専門家は容易に選択することができる。一般に、これらの条件には典型的には250〜550℃の入口温度、および105〜150℃の出口温度が含まれる。
【0018】
乾式粉砕
「乾式粉砕」という言葉は、噴霧乾燥されたATHをさらに処理し、噴霧乾燥されたATHの粒径を殆ど減少させずにATHのデアグロメレーション(de−agglomeration)を行うことを意味する。「粒径を殆ど減少させない」という言葉は、乾式粉砕されたATHのd50が噴霧乾燥を行う前のスラリまたはフィルターケーキの中のATHの約40%〜約90%の範囲にあることを意味する。好適具体化例においては、乾式粉砕されたATHのd50は噴霧乾燥を行う前のスラリまたはフィルターケーキ中のATHの約60〜約80%の範囲にあり、さらに好ましくは噴霧乾燥を行う前のスラリまたはフィルターケーキ中のATHの約70〜約75%の範囲にある。
【0019】
噴霧乾燥されたATHを乾式粉砕するのに使用される粉砕機は当業界に公知の任意の乾式粉砕機から選ぶことができる。適当な乾式粉砕機の本発明を限定しない例にはボールミルまたは媒体ミル、円錐型および旋回型破砕機、円板摩耗ミル、コロイドミルおよび回転ミル、スクリーンミルおよび造粒機、ハンマーミルおよび籠形ミル、ピンミルおよびユニバーサルミル、衝撃式ミルおよび破断機、ジョークラッシャー、ジェットおよび流体エネルギー・ミル、ロール・クラッシャー、および垂直ローラおよびドライパン、振動ミルが含まれる。
【0020】
噴霧乾燥されたATHを乾式粉砕して回収される乾式粉砕されたATHは、乾式粉砕の際に使用する粉砕機に依存して凝集物をつくることができるから、公知の分類法により分類することができる。本発明を限定しない適当な分類法の例には、空気分類法が含まれる。或る種の粉砕機は内蔵した分類機をもっていることに注意すべきである。そうでない場合には、分離した空気分類機を使用することができる。乾式粉砕にピンミルを使用しない場合には、乾式粉砕されたATHをさらに一つまたはそれ以上のピンミルで処理することができる。噴霧乾燥されたATHの乾式粉砕は、改善された形状をもつ乾式粉砕されたATHをつくるのに効果的な条件下で行われる。
【0021】
改善された形状をもつ乾式粉砕されたATH
一般に、本発明方法は多くの異なった性質を有する乾式粉砕されたATH粒子を製造するために用いることができる。一般に、この方法はISO787−5:1980により決定される油吸収率が約1〜約35%の範囲にあり、DIN−66132により決定されるBET比表面積が約1〜15m/gの範囲にあり、d50が約0.5〜約2.5μmの範囲にある乾式粉砕された乾燥したATH粒子の製造に使用することができる。
【0022】
しかし、本発明方法は、現在得られるATHと比較した場合、改善された形状を有する乾式粉砕されたATHを製造するのに特に適している。この場合も、理論に拘束されることを望むものではないが、この改善された形状は乾式粉砕されたATH粒子の全比細孔容
積および/または細孔半径の中央値(「r50」)に起因するものと本発明の発明人は考えている。或る与えられた重合体分子に対し、高度の構造をもった凝集物は多数の大きな細孔を有し湿潤させるのが困難なため、当業界に公知のこの目的に使用されているBuss Ko−kneaderまたは二重押出し機または他の機械のような捏和機の中で配合を行う際に困難(モーター上で引出される動力(power draw)の変動が大きい)を生じると本発明の発明人は信じている。従って本発明の発明人は、重合体材料による湿潤性が改善されていることと関連しており、従って改善された配合特性、即ち乾式粉砕されたATH充填剤を含む燃焼遅延性樹脂を配合するのに使用される配合機のエンジン(モーター)の動力の引出しの変動を少なくするような、細孔の大きさの中央値が小さくおよび/または全細孔容積が小さいことを特徴とする乾式粉砕されたATH粒子を製造する方法を発見した。
【0023】
本発明により製造される乾式粉砕されたATH粒子のr50およびVmaxは水銀ポロシメリーから得ることができる。非反応性で非湿潤性の液体は、侵入させるのに十分な圧力がかけられるまでは細孔の中に侵入しないという物理的原理に水銀ポロシメトリーの理論は基づいている。従って液体が細孔の中に侵入するのに必要な圧力が高いほど、細孔の大きさは小さい。細孔の大きさが小さいことおよび/または全比細孔容積が小さいことは本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子の良好な湿潤性と関連があることが見出だされた。本発明によってつくられた乾式粉砕されたATH粒子の細孔の大きさは、イタリーのCarlo Erba Strumentazione製のPorosimeter 2000を用い水銀ポロシメトリーから得ることができる。Porosimeter 2000のマニュアルに従えば、測定された圧力pから細孔の半径rを計算するためには次の式が用いられる:r=−2γcos(θ)/p;ここでθは濡れ角、γは表面張力である。本明細書における測定ではθに対しては141.3°の値を用い、θは480ダイン/cmであると設定した。
【0024】
測定の再現性を改善するために、Porosimeter 2000のマニュアル記載のように第2のATH侵入試験を行ってATHの細孔の大きさを計算した。侵入試験後に、即ち圧力を周囲圧力まで緩めた後、容積Vを有する量の水銀が試料の中に残ったので、この第2の試験を用いた。このようにして、図1、2、および3を参照して説明されているように、このデータからr50を導くことができる。
【0025】
第1の試験を行った際、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子の試料をPorosimeter 2000のマニュアル記載のようにしてつくり、約1000バールの最高圧力を用いかけた侵入圧力pの関数として細孔の容積を測定した。第1の試験終了後、圧力を緩め、周囲圧力に到達させる。第1の試験を行ったのと全く同じようにして、同じATH試料を用い、第2の侵入試験を行った(Porosimeter 2000のマニュアルによる)。この場合、第2の試験における比細孔容積V(p)の測定では新しい初期容積としてVを採り、この時第2の試験に対してこれを0に設定する。
【0026】
第2の侵入試験を行う際、約1000バールの最高圧力を用い、V(p)の関数としてATH試料の比細孔容積の測定を再び行った。図1は、第2の侵入試験に対しかけた圧力、並びに本発明によりつくられたATHの等級の関数としての比細孔容積Vを、現在市販されているATH製品と比較して示す。約1000バールの細孔容積、即ち測定に使用した最高圧力における細孔容積をここではVmaxとして示すことにする。
【0027】
第2のATH侵入試験の実験から、Porosimeter 2000により式r=−2γcos(θ)/pに従って細孔の半径rが計算される。ここでθは濡れ角、γは表面張力、pは侵入圧力である。この場合すべての測定において、θに対しては141.3°の値を用い、θは480ダイン/cmであると設定した。このようにして比細孔容積を細
孔半径rに対してプロットすることができる。図2は、細孔半径rに対してプロットした第2の侵入試験(同じ試料を用いた)の比細孔容積Vを示す。
【0028】
図3は、細孔半径rに対してプロットされた第2の侵入試験における正規化された比細孔容積を示す。即ちこの曲線では、第2の侵入試験の1000バールにおける最高比細孔容積Vmaxは100%に設定され、その特定のATHに対する他の比細孔容積はこの最高値で割った値である。本明細書においては、相対比細孔容積50%における細孔半径を定義により細孔半径r50における中央値と呼ぶ。例えば図3によれば、本発明に従う、即ち本発明のATHの細孔半径の中央値r50は0.33μmである。
【0029】
本発明に従ってつくられたATH粒子の試料を用いて上記方法を繰り返し、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子のr50、即ち最大比細孔容積の50%における細孔半径は約0.09〜約0.33μmの範囲であることが示された。本発明の好適具体化例においては本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子のr50は約0.20〜約0.33μm、さらに好ましくは約0.2〜約0.3μmの範囲にある。他の好適具体化例においては、r50は約0.185〜0.325μm、さらに好ましくは約0.185〜約0.25μmの範囲にある。さらに他の好適具体化例においては、r50は約0.09〜0.21μm、もっと好ましくは約0.09〜約0.165μmの範囲にある。
【0030】
本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子は、また1000バールにおいて約300〜700mm/gのVmax、即ち最大比細孔容積をもつとして特徴付けることができる。本発明の好適具体化例においては、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子のVmaxは、約390〜480mm/g、さらに好ましくは約410〜約450mm/gの範囲にある。他の好適具体化例においては、このVmaxは約400〜600mm/g、さらに好ましくは約450〜約550mm/gの範囲にある。さらに他の好適具体化例においては、Vmaxは約300〜700mm/g、さらに好ましくは約350〜約550mm/gの範囲にある。
【0031】
本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子はまた、ISO787−5:1980により決定された油吸収率が約1〜約35%の範囲にあることによって特徴付けることができる。或る好適な具体化例においては、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子は約23〜約30%、さらに好ましくは約25〜約28%の範囲の油吸収率もつことによって特徴付けられる。他の好適具体化例においては、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子は約25〜約32%、さらに好ましくは約26〜約30%の範囲の油吸収率もつことによって特徴付けられる。さらに他の好適具体化例においては、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子は約25〜約35%、さらに好ましくは約27〜約32%の範囲の油吸収率もつことによって特徴付けられる。他の好適具体化例においては、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子の油吸収率は約19〜約23%の範囲にあり、さらに他の好適具体化例においては、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子の油吸収率は約21〜約25%の範囲にある。
【0032】
本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子はまた、DIN−66132により決定されたBET比表面積が約1〜約15m/gの範囲にあることによって特徴付けることができる。好適具体化例においては、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子は約3〜約6m/g、好ましくは約3.5〜約5.5m/gの範囲のBET比表面積をもっている。他の好適具体化例においては、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子は約6〜約9m/g、さらに好ましくは約6.5〜約8.5m/gの範囲のBET比表面積をもっている。さらに他の好適具体化例においては、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子は約9〜約15m/g、さらに好ましくは約10.5〜約12.5m/gの範囲のBET比表面積をもっている。
【0033】
本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子はまた、d50が約0.5〜約2.5μmの範囲にあることによって特徴付けることができる。好適具体化例においては、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子は約1.5〜約2.5μm、さらに好ましくは約1.8〜約2.2μmの範囲のd50をもっている。他の好適具体化例においては、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子は約1.3〜約2.0μm、さらに好ましくは約1.4〜約1.8μmの範囲のd50をもっている。さらに他の好適具体化例においては、本発明によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子は約0.9〜約1.8μm、さらに好ましくは約1.1〜約1.5μmの範囲のd50をもっている。
【0034】
本明細書に記載された粒径、即ちd50のすべての測定はQuantachrome製のCilas 1064L分光計を用いレーザー回折法で測定したことに注目されたい。一般に、d50を測定するのにここで使用した方法は、先ず適当な水分散剤の溶液(調製法は下記参照)を装置の試料調製容器に導入することにより実施することができる。次に、「Particle Expert」と呼ばれる標準測定法を選び、また測定モデル「範囲1」を選んだ後、期待される粒子の大きさの分布に適用する装置の内部パラメータを選択する。注意すべきことは、分散および測定を行う際典型的には試料を約60秒間超音波に露出する。バックグラウンドの測定を行った後、約75〜約100mgの分析試料を水/分散剤溶液と共に試料容器に入れ、測定を開始する。水/分散剤溶液は、先ず500gのKMF Laborchemie製のCalgon、および3リットル(L)のBASF製のCAL Polysaltから濃縮物をつくることによって調製することができる。この溶液に脱イオン水を加えて10Lにする。この10Lの原液を100ml採取し、これをさらに10Lの脱イオン水で希釈し、最終的な溶液を水/分散剤溶液として使用する。
【0035】
上記の説明は、本発明のいくつかの具体化例に対するものである。当業界の専門家は、本発明の精神を実施するために同様に効果的な他の方法を工夫できることを理解するであろう。また、本発明の好適具体化例は、上記に説明したすべての範囲が任意の小さい量から大きな量に亙る範囲を含むことを意図していることに注目すべきである。例えば、乾式粉砕されたATHのVmaxについて論ずる場合、Vmaxは約450〜490mm/gの範囲の値、約550〜700mm/gの範囲の値、約390〜410mm/gの範囲の値等を含むことができる。下記実施例により本発明を例示する。これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0036】
実施例
下記実施例に記載されたr50およびVmaxは、上記のようにPorosimeter 2000を使用して水銀ポロシメトリーから導くことができる。特記しない限り、すべてのd50、BET、油吸収率等は上記の方法に従って測定した。また実施例に使用されている「本発明の水酸化アルミニウムの等級」、「本発明の」および「本発明の充填剤」とい言葉は本発明に従ってつくられたATHに関するものであり、「対照の水酸化アルミニウムの等級」、「競合的な」および「対照の」という言葉は、本発明に従ってつくられたものではない市販のATHを参照するものである。
【実施例1】
【0037】
スラリをつくるために、適当な量の分散剤、即ちCiba(R)から市販されているAntiprex(R)A40を固体分含量55重量%のATHのフィルターケーキに加え、粘度約150cPoiseのスラリをつくった。このスラリの中の、即ち噴霧乾燥を行う前の水酸化アルミニウムはBET比表面積が2.3m/gであり、d50は2.48μmであった。次にNiro F100噴霧乾燥機により噴霧乾燥を行ない、次に水酸化アルミニウムをオーストリアのPMT−Jetmill GmbHから市販されているS
J50−ER100型ジェット・ミルに供給した。この目的のために、積算分類機のローターの速度を5200rpmに設定し、粉砕圧力を6.6バールに設定した。この粉砕パラメータにより水酸化アルミニウムの処理量として1066kg/時が得られ、粉砕温度は161℃になった。乾式粉砕を行った後、空気フィルターシステムを介してSJ50−ER100から出る高温の空気流から乾式粉砕されたATH粒子を捕集した。回収された乾式粉砕されたATH粒子(本発明による)の生成物の性質は下記表1に含まれている。
【0038】
対照の水酸化アルミニウム級のMartinswerk GmbH製のMartinal(R)OL104 LEの生成物の性質、および他の競合的な水酸化アルミニウム級の生成物、即ち「競合品」の性質も表1に示されている。
【0039】
【表1】

【0040】
表1からわかるように、本発明の水酸化アルミニウム級の本発明によりつくられたATHは細孔半径の中央値が最低であり、最大比細孔容積も最低である。
【実施例2】
【0041】
対照の水酸化アルミニウム粒子であるMartinal(R)OL−104 LEおよび実施例1の本発明の水酸化アルミニウム級の材料を別々に使用して燃焼遅延性樹脂組成物をつくる。使用した合成樹脂は、ExxonMobil製のEVA Escorene(R)Ultra UL00328、ExxonMobil製のLLDPE級LL1001XV、Albemarle(R)Corporation製のEthanox(R)310酸化防止剤、およびDegussa製のアミノシラン、Dynasylan AMEOの混合物であった。これらの成分を46mmのBuss Ko−kneader(長さ:直径の比=1:1)の上で、温度およびスクリュー速度を当業界の専門家には良く知られた通常の方法で設定して処理量25kg/時で混合した。燃焼遅延性樹脂組成物を調合するのに使用した各成分の量を下記表2に詳細に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
本明細書において使用される熱安定性は乾式粉砕されたATH粒子の水の放出性を参照するものであり、いくつかの熱分析法、例えば熱重量分析法(TGA)により直接評価することができ、本発明においては、乾式粉砕されたATH粒子の熱安定性はTGAによっ
て測定した。測定を行う前に、ATH粒子の試料をオーブンの中で4時間105℃において乾燥し、表面の水分を除去する。次に70μlのアルミナの坩堝(初期重量約12mg)を用い,窒素下において(毎分70ml)下記の加熱速度に従いMettler社製のToledoを使用してTGAの測定を行った:30℃から150℃までは毎分10℃、150℃から350℃までは毎分1℃、350℃から600℃までは毎分10℃。両方とも乾式粉砕されたATH粒子の重量に関し重量減が1重量%および2重量%になった時に乾式粉砕されたATH粒子(上記のようにして乾燥したもの)のTGAの温度を測定した。上記のTGAの測定は坩堝を覆う蓋をして行ったことに注意されたい。
【0044】
また、乾式粉砕されたATH粒子は電気伝導度が約200μS/cmより小さく、若干の具体化例においては150μS/cmより小さく、他の具体化例においては100μS/cmより小さいことにより特徴付けることができる。他の具体化例においては乾式粉砕されATH粒子の電気伝導度は約10〜約45μS/cmの範囲にある。すべての電気伝導度の測定は下記のようにして溶液に関し約10重量%の乾式粉砕されたATHを含む溶液について行われたことに注意されたい。
【0045】
電気伝導度は、ドイツ、WeilheimのWissenschaftlich−Technische−Werkstatten GmbH製のMultiLab 540測定装置を用い下記に方法で測定した:10gの測定試料および90mlの脱イオン水(周囲温度)を、ドイツ、BurgwedelのGesellschaft for Labortechnik mbH製のGFL 3015振盪装置の上に載せた100mlのエルレンマイヤー・フラスコ中に入れ10分間最大出力において振盪する。次に伝導度用の電極を該懸濁液の中に浸漬し、電気伝導度を測定する。
【0046】
乾式粉砕されたATH粒子はまた、乾式粉砕されたATH粒子に関し約0.1重量%より少ない可溶性のソーダ含量をもつとして特徴付けることができる。他の具体化例においては、乾式粉砕されたATH粒子はさらに、乾式粉砕されたATH粒子に関し約0.001〜約0.1重量%の範囲、或る具体化例においては約0.02〜約0.1重量%の範囲の可溶性のソーダ含量をもつとして特徴付けることができる。他の具体化例においては乾式粉砕されたATH粒子はさらに、すべて同じ基準で約0.001重量%以上で約0.03重量%より少ない範囲の可溶性ソーダ含量をもつとして特徴付けることができるが、或る具体化例においては約0.001重量%以上で0.04重量%より少ない範囲の可溶性ソーダ含量をもつとして、また他の具体化例においては約0.001重量%以上で0.02重量%より少ない範囲の可溶性ソーダ含量をもつとして特徴付けることができる。可溶性ソーダ含量は上記に概説した方法で測定することができる。
【0047】
乾式粉砕されたATH粒子は不溶性のソーダ含量によって特徴付けることができ、またそうであることが好ましい。ATHの熱安定性はATHの全ソーダ含量と関係があることは経験的な証拠により示されてはいるが、理論に拘束されることを望むものではないが、本発明方法によりつくられた乾式粉砕されたATH粒子の改善された熱安定性は不溶性のソーダ含量に関係があることを本発明の発明人は発見し、またそうであると信じている。本発明の乾式粉砕されたATH粒子の不溶性ソーダ含量は典型的には乾式粉砕されたATHの全ソーダ含量の約70〜約99.8%であり、残りは可溶性のソーダである。本発明の或る具体化例においては、乾式粉砕されたATH粒子の全ソーダ含量は典型的には乾式粉砕されたATHに関し約0.20重量%未満であり、同じ基準で好ましくは0.18重量%未満、さらに好ましくは約0.12重量%未満である。本発明の他の具体化例においては、乾式粉砕されたATH粒子の全ソーダ含量は典型的には乾式粉砕されたATHに関し約0.30重量%未満の範囲にあり、好ましくは乾式粉砕されたATHに関し約0.25重量%未満の範囲にあり、さらに好ましくは同じ基準で約0.20重量%未満の範囲にある。本発明のさらに他の具体化例においては、乾式粉砕されたATH粒子の全ソーダ含
量は典型的には乾式粉砕されたATHに関し約0.40重量%未満の範囲にあり、好ましくは乾式粉砕されたATHに関し約0.30重量%未満の範囲にあり、さらに好ましくは同じ基準で約0.25重量%未満の範囲にある。
【0048】
乾式粉砕されたATHの使用
本発明の乾式粉砕されたATH粒子は種々の合成樹脂の中で燃焼遅延剤として使用することができる。即ち本発明は、一具体化例においては少なくとも1種の、或る具体化例においては唯1種の合成樹脂、および燃焼遅延性を賦与する量の本発明の乾式粉砕されたATH粒子を含んで成る燃焼遅延性をもった重合体組成物、および燃焼遅延性重合体組成物からつくられた型成形品および/または押出し成形品に関する。
【0049】
乾式粉砕されたATH粒子の燃焼遅延性を賦与する量という言葉は、一般に燃焼遅延性重合体組成物の重量に関し約5〜約90重量%の範囲、好ましくは同じ基準で約20〜約70重量%の範囲にあるATH粒子の量を意味する。最も好適な具体化例においては、燃焼遅延性を賦与する量は同じ基準で約30〜約65重量%の範囲の乾式粉砕されたATH粒子の量である。従って、燃焼遅延性の重合体組成物は典型的には燃焼遅延性重合体組成物の重量に関し少なくとも1種の合成樹脂を約10〜約95重量%の範囲、好ましくは同じ基準で約30〜約40重量%の範囲、さらに好ましくは同じ基準で約35〜約70重量%の範囲で含んで成っている。
【0050】
ATH粒子が用途を見出だされている熱可塑性樹脂の本発明を限定しない例には、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、C〜Cオレフィン(α−オレフィン)の重合体および共重合体、例えばポリブテン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等、これらのオレフィンとジエンとの共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、ポリスチレン、ABS樹脂、AAS樹脂、AS樹脂、MBS樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−塩化ビニル−酢酸ビニル・グラフト重合体樹脂、塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩素化されたポリエチレン、塩化ビニル−プロピレン共重合体、酢酸ビニル樹脂、フェノキシ樹脂等が含まれる。適当な合成樹脂のさらに他の例には、熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂および尿素樹脂、および天然ゴムまたは合成ゴム、例えばEPDM、ブチルゴム、イソプレンゴム、SBR、NIR、ウレタンゴム、ポリブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フルオロエラストマー、NBRおよびクロロスルフォン化されたポリエチレンが含まれる。さらにまた重合体懸濁液(ラテックス)も含まれる。
【0051】
好ましくは、合成樹脂はポリエチレンをベースにした樹脂、例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、EVA(エチレン−酢酸ビニル樹脂)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル樹脂)、EMA(エチレン−アクリル酸メチル共重合体樹脂)、EAA(エチレン−アクリル酸共重合体樹脂)、および超高分子量ポリエチレン;およびC〜Cオレフィン(α−オレフィン)の重合体および共重合体、例えばポリブテンおよびポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリ塩化ビニルおよびゴムである。さらに好適な具体化例においては、合成樹脂はポリエチレンをベースにした樹脂である。
【0052】
燃焼遅延性重合体組成物はまた当業界に通常使用される他の添加物を含んでいることができる。本発明の燃焼遅延性重合体組成物に使用するのに適した他の添加物の本発明を限定しない例には、押出し助剤、例えばポリエチレンワックス、Siをベースにした押出し助剤、脂肪酸、カップリング剤、例えばビニル−またはアルキルシラン、またはマレイン酸がグラフトした重合体;ステアリン酸バリウムまたはステアリン酸カルシウム;有機過酸化物;染料;顔料;充填剤;膨張剤:脱臭剤;熱安定剤;酸化防止剤;帯電防止剤;補
強材;金属除去剤または失活剤;衝撃変性剤;加工助剤;型抜き剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、他の燃焼遅延剤;紫外線安定剤;可塑剤;流動助剤等が含まれる。必要に応じ、珪酸カルシウムまたはインジゴのような造核剤を燃焼遅延剤の中に含ませることもできる。これらの他の随時加えられる添加物の割合は任意の与えられた状況に適合させて変えることができる。
【0053】
燃焼遅延剤重合体組成物の成分を混入し添加する方法、および成形を行う方法は本発明にとってはあまり重要ではなく、選んだ方法が均一な混合成形を行うことができる限り任意の公知方法であることができる。例えば、上記の各成分および使用される場合随時加えられる添加物はBuss Ko−kneader、内部混合機、Farrelの連続混合機または二重スクリュー押出し機、また或る場合には単一スクリュー押出し機または二つのロールをもったミルを用いて混合し、次の工程段階で燃焼遅延性重合体組成物を成形することができる。さらにまた、燃焼遅延性重合体組成物の成形品は、延伸加工、エンボッシング加工、被覆、プリント操作、メッキ、穿孔または切断のような加工による処理を施した後に使用することができる。また捏和した混合物はインフレーション成形、押出し成形、吹込み成形、プレス成形、回転成形、またはカレンダー掛け成形を行うことができる。
【0054】
押出し成形の場合、燃焼遅延性重合体組成物に使用される合成樹脂について有効であることが知られている任意の押出し法を使用することができる。例示的な一つの方法では、合成樹脂、乾式粉砕されたATH粒子、およびもし選ばれた場合随時加えられる成分を配合機の中で配合して燃焼遅延性重合体組成物をつくる。この燃焼遅延性重合体組成物を次に押出し機の中で加熱して熔融状態にし、次いで熔融した燃焼遅延性樹脂組成物を選ばれたダイス型を通して押出して押出し品をつくるか、或いは例えばデータ転送に使用される金属線またはガラス繊維に被覆する。
【0055】
或る具体化例においては、合成樹脂はエポキシ樹脂、ノボラック樹脂、DOPOのような燐含有樹脂、臭素化されたエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、およびビニルエステルから選ばれる。この具体化例においては、燃焼遅延性を賦与する量の乾式粉砕されたATH粒子は樹脂100部当たり約5〜約200部(「phr」)のATHの範囲にある。好適具体化例においては、燃焼遅延性組成物は約15〜約100phr,好ましくは約15〜約75phr、さらに好ましくは約20〜約55phrの乾式粉砕されたATH粒子を含んで成っている。この具体化例においては、燃焼遅延性重合体組成物はまたこれらの特定の樹脂と共に当業界に通常使用される他の添加物を含んでいる。この燃焼遅延性重合体組成物に使用するのに適した他の添加物の本発明を限定しない例には、例えば臭素、燐または窒素をベースにした他の燃焼遅延剤;溶媒、硬化剤、例えばハードナー(hardener)または促進剤、分散剤、または燐含有化合物、微粉末シリカ、粘土またはタルクが含まれる。これらの随時加えられる他の添加物の割合は通常の割合であり、任意の与えられた状況の必要に応じて変えることができる。この燃焼遅延性重合体促進剤の成分を混入し添加する好適な方法は、高度の剪断をかけて混合する方法である。例えば、Silverson Companyで製造されているヘッド混合機を剪断に使用する。この樹脂を充填した混合物をさらに加工して「プリプレグ」の段階にし、次いで硬化した積層品にする方法は当業界において通常の方法であり、例えばMcGraw−Hill Book Company発行の「Handbook of Epoxide Resins」に記載されている。この文献は引用によりその全文が本明細書に包含される。
【0056】
上記の説明は本発明のいくつかの具体化例を記述したものである。当業界の専門家は、本発明の精神を実施するために、同様に効果的な他の方法を工夫できることがわかるであろう。また、本発明の好適な具体化例においては、本明細書に論じられたすべての範囲は任意の小さい値から任意の大きな値に亙る範囲を含んでいると考えるべきであることに注
意されたい。例えば乾式粉砕されたATHの油吸収率を考察する際、約30〜約32%、約19〜約25%、約21〜約27%等の範囲は本発明の範囲内に入るものと考えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第2の侵入試験に対し、細孔半径rに対してプロットした比細孔容積Vについて、本発明による([本発明の」)ATHを標準的な等級のものと比較した図。
【図2】第2の侵入試験に対し、かけた圧力の関数として表した比細孔容積Vについて、本発明による([本発明の」)ATHを標準的な等級のものと比較した図。
【図3】本発明による([本発明の」)ATHを標準的な等級のものと比較した正規化された比細孔容積。このグラフは各ATHの等級に対し最大比細孔容積を100%にし、対応するATHの等級の他の比細孔容積はこの最大値で割ることによって得られている。
【図4】実施例1でつくられ実施例2で使用されている本発明の水酸化アルミニウムの等級に対する放出押出し機のモーターにおける動力の取り出し。
【図5】対照品の水酸化アルミニウムOL−104LE級に対する放出押出し機のモーターにおける動力の取り出し。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式粉砕されたATH粒子を製造する方法であって、該方法は
(a)スラリまたはフィルターケーキの全重量に関し約1〜約85重量%の範囲でATHを含む水酸化アルミニウムのスラリまたはフィルターケーキを噴霧乾燥して噴霧乾燥された水酸化アルミニウムの粒子をつくり;
(b)該噴霧乾燥された水酸化アルミニウム粒子を乾式粉砕して乾式粉砕されたATH粒子をつくる段階を含んで成り、
ここで該乾式粉砕されたATH粒子は約300〜約700mm/gの範囲のVmaxをもっているか、或いは約0.09〜約0.33μmの範囲のr50をもっており、且つ一つまたはそれ以上の下記の特性、即ち
(i)約0.5〜約2.5μmのd50
(ii)乾式粉砕されたATH粒子の全重量に関し約0.4重量%未満の全ソーダ含量;
(iii)約50%未満のISO787−5:1980で決定された油吸収率;および
(iv)約1〜約15m/gのDIN−66132により決定された比表面積(BET)を有し、またここで該乾式粉砕されたATH粒子の電気伝導度は、水中に10重量%のATHを含む液中で測定して約200μS/cmより小さいことを特徴とする方法。
【請求項2】
該スラリまたはフィルターケーキは、沈澱および濾過によりATH粒子をつくることを含む方法から得られることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
該スラリまたはフィルターケーキは、水酸化アルミニウムを苛性ソーダに溶解してアルミン酸ナトリウム含有液をつくり;このアルミン酸ナトリウム含有液を冷却および希釈して適切な温度および濃度にし;ATH種子粒子をアルミン酸ナトリウム溶液に加え;該溶液からATH粒子を沈澱させ;このようにして懸濁液に関し約80〜約160g/Lの範囲のATHを含むATH懸濁液をつくり;ATH懸濁液を濾過して該フィルターケーキをつくり、噴霧乾燥を行う前に随時該フィルターケーキを水で1回以上洗滌する段階を含んで成る方法で得られることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
該スラリまたはフィルターケーキは、水酸化アルミニウムを苛性ソーダに溶解してアルミン酸ナトリウム含有液をつくり;アルミン酸ナトリウム溶液を濾過して不純物を除き;このアルミン酸ナトリウム含有液を冷却および希釈して適切な温度および濃度にし;ATH種子粒子をアルミン酸ナトリウム溶液に加え;該溶液からATH粒子を沈澱させ;このようにして懸濁液に関し約80〜約160g/Lの範囲のATHを含むATH懸濁液をつくり;ATH懸濁液を濾過して該フィルターケーキをつくり、再スラリ化を行う前に随時該フィルターケーキを水で1回以上洗滌し;該フィルターケーキを再スラリ化してスラリの全重量に関し約1〜約85重量%のATHを含んで成るスラリをつくる段階を含んで成る方法で得られることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
スラリまたはフィルターケーキの中のATH粒子のBETは(a)約1.0〜約4.0m/gの範囲にあるか,または(b)約4.0〜約8.0m/gの範囲にあるか、或いは(c)約8.0〜約14m/gの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
スラリまたはフィルターケーキの中のATH粒子のBETは約1.5〜約3.5μmの範囲のd50を有することを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
該スラリまたはフィルターケーキは、すべてスラリまたはフィルターケーキの重量に関し(i)約1〜約85重量%のATH粒子;(ii)約25〜約70重量%のATH粒子
;(iii)約55〜約65重量%のATH粒子;(iv)約40〜約60重量%のATH粒子;(v)約45〜約55重量%のATH粒子;(vi)約25〜約50重量%のATH粒子;または(vii)約30〜約45重量%のATH粒子を含むことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
スラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子は、スラリまたはフィルターケーキの中のATH粒子の重量に関し約0.2重量%未満の全ソーダ含量を有することを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
スラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子は、スラリまたはフィルターケーキの中のATH粒子の重量に関し約0.1重量%未満の可溶性ソーダ含量を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載された方法。
【請求項10】
スラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子は、全ソーダ含量の約70〜約99.8重量%の範囲の不溶性ソーダ含量を有し、残りは可溶性ソーダであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載された方法。
【請求項11】
該スラリまたはフィルターケーキは分散剤を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
乾式粉砕されたATH粒子は、スラリまたはフィルターケーキ中のATH粒子に関し約0.1重量%未満の可溶性ソーダ含量をもっていることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項13】
乾式粉砕されたATH粒子は、全ソーダ含量の約70〜約99.8重量%の範囲の不溶性ソーダ含量を有し、残りは可溶性ソーダであることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
該乾式粉砕されたATH粒子は、一つまたはそれ以上のピンミルの中で分類されるか処理されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載された乾式粉砕されたATH粒子。
【請求項16】
maxが約300〜約700mm/gの範囲にあるか、および/またはr50が約0.09〜約0.33μmの範囲にあり、且つ一つまたはそれ以上の下記の特性、即ち
(i)約0.5〜約2.5μmのd50;(ii)乾式粉砕されたATH粒子の全重量に関し約0.4重量%未満の全ソーダ含量;(iii)約50%未満のISO787−5:1980で決定された油吸収率;および(iv)約1〜約15m/gのDIN−66132により決定された比表面積(BET)を有し、またここで該乾式粉砕されたATH粒子の電気伝導度は、水中に10重量%のATHを含む液中で測定して約200μS/cmより小さいことを特徴とする乾式粉砕されたATH粒子。
【請求項17】
該乾式粉砕されたATH粒子は、約19〜約23%の範囲の油吸収率を有していることを特徴とする請求項16記載の乾式粉砕されたATH粒子。
【請求項18】
乾式粉砕されたATH粒子は(a)約3〜約6m/gの範囲のBET、約1.5〜約2.5μmの範囲のd50、約23〜約30%の範囲の油吸収率、約0.2〜約0.33μmの範囲のr50、約390〜約480mm/gのVmax、約0.2重量%未満の全ソーダ含量、約100μS/cm未満の範囲の電気伝導率、乾式粉砕されたATH粒子に関し0.001重量%以上で0.02重量%よりも少ない可溶性ソーダ含量、乾式粉砕
されたATHの全ソーダ含量の約70〜約99.8%の不溶性ソーダ含量、および下記表1:
【表1】

に記載されたように熱重量分析で決定された熱安定性をもつか、または
(b)約6〜約9m/gの範囲のBET、約1.3〜約2.0μmの範囲のd50、約25〜約40%の範囲の油吸収率、約0.185〜約0.325μmの範囲のr50、約400〜約600mm/gのVmax、約0.3重量%未満の全ソーダ含量、約150μS/cm未満の範囲の電気伝導率、乾式粉砕されたATH粒子に関し0.001重量%以上で0.03重量%よりも少ない可溶性ソーダ含量、乾式粉砕されたATHの全ソーダ含量の約70〜約99.8%の不溶性ソーダ含量、および下記表2:
【表2】

に記載されたように熱重量分析で決定された熱安定性をもつか、
または(c)約9〜約15m/gの範囲のBET、約0.9〜1.8μmの範囲のd50、約25〜約50%の範囲の油吸収率、約0.09〜約0.21μmの範囲のr50、約300〜約700mm/gのVmax、約0.4重量%未満の全ソーダ含量、約200μS/cm未満の範囲の電気伝導率、乾式粉砕されたATH粒子に関し0.001重量%以上で0.04重量%よりも少ない可溶性ソーダ含量、乾式粉砕されたATHの全ソーダ含量の約70〜約99.8%の不溶性ソーダ含量、および下記表3:
【表3】

に記載されたように熱重量分析で決定された熱安定性をもっていることを特徴とする請求項16記載の乾式粉砕されたATH粒子。
【請求項19】
該乾式粉砕されたATH粒子は乾式粉砕されたATHの全ソーダ含量の約70〜約99重量%の範囲の不溶性ソーダ含量をもっていることを特徴とする請求項16記載の乾式粉砕された粒子。
【請求項20】
少なくとも1種の合成樹脂、並びに燃焼遅延性重合体組成物の重量に関し約5〜約90重量%の請求項15記載の乾式粉砕されたATH粒子を含んで成ることを特徴とする燃焼遅延性重合体組成物。
【請求項21】
該乾式粉砕されたATH粒子は約300〜約700mm/gの範囲のVmaxをもっているか、および/または約0.09〜約0.33μmの範囲のr50をもっており、且つ一つまたはそれ以上の下記の特性、即ち(i)約0.5〜約2.5μmのd50;(ii)乾式粉砕されたATH粒子の全重量に関し約0.4重量%未満の全ソーダ含量;(iii)約50%未満のISO787−5:1980で決定された油吸収率;および(iv)約1〜約15m/gのDIN−66132により決定された比表面積(BET)を有し、またここで該乾式粉砕されたATH粒子の電気伝導度は、水中に10重量%のATHを含む液中で測定して約200μS/cmより小さいことを特徴とする請求項20記載の
燃焼遅延性重合体組成物。
【請求項22】
該乾式粉砕されたATH粒子は約19〜約23%の油吸収率をもっていることを特徴とする請求項21記載の燃焼遅延性重合体組成物。
【請求項23】
乾式粉砕されたATH粒子は(a)約3〜約6m/gの範囲のBET、約1.5〜約2.5μmの範囲のd50、約23〜約30%の範囲の油吸収率、約0.2〜約0.33μmの範囲のr50、約390〜約480mm/gのVmax、約0.2重量%未満の全ソーダ含量、約100μS/cm未満の範囲の電気伝導率、乾式粉砕されたATH粒子に関し0.001重量%以上で0.02重量%よりも少ない可溶性ソーダ含量、乾式粉砕されたATHの全ソーダ含量の約70〜約99.8%の不溶性ソーダ含量、および下記表1:
【表4】

に記載されたように熱重量分析で決定された熱安定性をもつか、または
(b)約6〜約9m/gの範囲のBET、約1.3〜約2.0μmの範囲のd50、約25〜約40%の範囲の油吸収率、約0.185〜約0.325μmの範囲のr50、約400〜約600mm/gのVmax、約0.3重量%未満の全ソーダ含量、約150μS/cm未満の範囲の電気伝導率、乾式粉砕されたATH粒子に関し0.001重量%以上で0.03重量%よりも少ない可溶性ソーダ含量、乾式粉砕されたATHの全ソーダ含量の約70〜約99.8%の不溶性ソーダ含量、および下記表2:
【表5】

に記載されたように熱重量分析で決定された熱安定性をもつか、
または(c)約9〜約15m/gの範囲のBET、約0.9〜1.8μmの範囲のd50、約25〜約50%の範囲の油吸収率、約0.09〜約0.21μmの範囲のr50、約300〜約700mm/gのVmax、約0.4重量%未満の全ソーダ含量、約200μS/cm未満の範囲の電気伝導率、乾式粉砕されたATH粒子に関し0.001重量%以上で0.04重量%よりも少ない可溶性ソーダ含量、乾式粉砕されたATHの全ソーダ含量の約70〜約99.8%の不溶性ソーダ含量、および下記表3:
【表6】

に記載されたように熱重量分析で決定された熱安定性をもっていることを特徴とする請求項21記載の燃焼遅延性重合体組成物。
【請求項24】
該乾式粉砕されたATH粒子は、乾式粉砕されたATHに関し約70〜99重量%の全ソーダ含量をもっていることを特徴とする請求項23記載の燃焼遅延性重合体組成物。
【請求項25】
請求項20〜24のいずれか一つに記載された燃焼遅延性重合体組成物から押出し製品または型成形製品を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−507546(P2010−507546A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515997(P2009−515997)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004405
【国際公開番号】WO2008/075203
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(508340857)マルテインスベルク・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (8)
【Fターム(参考)】