説明

水銀除去システムおよび水銀除去方法

【解決課題】 信頼性が高く、運転コストが低い水銀除去方法および水銀除去手段を提供する。
【解決手段】 煙道内の窒素酸化物、硫黄酸化物および水銀を含む排ガスに対し、水銀塩素化剤を供給する水銀塩素化剤供給手段、窒素酸化物の還元を行う還元脱硝手段、硫黄酸化物を除去する脱硫手段を備えた水銀含有排ガスからの水銀除去システムであって、上記水銀塩素化剤供給手段は、常温常圧で非ガス状である非ガス状水銀塩素化剤を加熱する加熱手段、または、非ガス状水銀塩素化剤からガス状水銀塩素化剤を得るガス化手段を備えた水銀除去システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置から排出される排ガス中に含まれる水銀を除去する水銀除去システムおよび水銀除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚き排ガスや重質油を燃焼した際に生じる排ガス中には、煤塵、SOx、NOxのほか、金属水銀が含まれることがある。
近年、NOxを還元する脱硝装置、および、アルカリ吸収液をSOx吸収剤とする湿式脱硫装置と組み合わせて、この金属水銀を処理する方法や装置について様々な考案がなされてきた。
【0003】
排ガス中の金属水銀を処理する方法としては、活性炭やセレンフィルター等の吸着剤による除去方法が知られているが、特殊な吸着除去手段が必要であり、発電所排ガス等の大容量排ガスの処理には適していない。
【0004】
大容量排ガス中の金属水銀を処理する方法として、煙道中、高温の脱硝装置の前流工程で塩素化剤をガス噴霧し、脱硝触媒上で水銀を酸化(塩素化)させ、水溶性の塩化水銀にしたのち、後流の湿式脱硫装置で吸収させる方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
煙道にガス噴霧する装置および技術は脱硝装置のNH3噴霧装置で実用化されており、塩素化剤のガス噴霧にも同様の手段が採用されうる。しかしながら、塩化水素ガスは腐食性が高いので、必要以上の塩素化剤を添加することは、システム中の煙道や後流装置の腐食原因となり、プラント寿命の低下をもたらすという問題があった。
【0006】
塩素化剤による装置への腐食破損等の影響を抑え信頼性を向上するため、湿式脱硫後の排ガスについて水銀濃度を水銀モニターで測定し、脱硫後の水銀濃度に基づいて塩素化剤の供給量を調整するシステムが提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【0007】
塩素化剤の供給量調整は、塩素化剤として高純度塩化水素ガスを直接用いれば比較的容易であるが、価格が高く、大容量排ガス処理には経済的でない。
また、塩素化剤を噴霧する場合、脱硝装置の運転温度(350〜420℃)で直接噴霧可能な材料はなかった。また、NaCl等の中性塩スラリーを用いた場合も脱硝手段の運転温度では分解せず、効果を発揮しないだけでなく閉塞のおそれが生じるという問題があった。
【特許文献1】特開平10−230137号公報
【特許文献2】特開2001−198434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、信頼性が高く、運転コストが低い水銀除去方法および水銀除去手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明に係る水銀除去システムは、上記目的を達成するために、煙道内の窒素酸化物、硫黄酸化物および水銀を含む排ガスに対し、水銀塩素化剤を供給する水銀塩素化剤供給手段、窒素酸化物の還元を行う還元脱硝手段、硫黄酸化物を除去する脱硫手段を備えた水銀含有排ガスからの水銀除去システムであって、上記水銀塩素化剤供給手段は、常温常圧で非ガス状である非ガス状水銀塩素化剤を加熱する加熱手段、または、非ガス状水銀塩素化剤からガス状水銀塩素化剤を得るガス化手段を備えたものであることを特徴とするものである。
本発明に係る水銀除去システムは、上記ガス化手段が、所定の温度に加熱した圧縮空気であることが好適である。
本発明に係る水銀除去システムは、上記ガス化手段が、排ガスの一部であることが好適である。
本発明に係る水銀除去システムは、上記水銀塩素化剤供給手段が、さらに、ガス状水銀塩素化剤を希釈する希釈手段を備えたものであることが好適である。
本発明に係る水銀除去システムは、さらに、煙道内の脱硫手段の前流に設置された上記ガス状水銀塩素化剤の濃度計測手段と、上記ガス状水銀塩素化剤の濃度計測値に基づいて、上記水銀塩素化剤供給手段において供給すべきガス状水銀塩素化剤の初期濃度を算出する算出手段と、算出された上記初期濃度に基づいて、煙道内に供給する非ガス状水銀塩素化剤の量を制御する制御手段とを備えたものであることが好適である。
本発明に係る水銀除去システムは、上記非ガス状水銀塩素化剤が、塩化アンモニウム、塩化水素水溶液または液体塩素であることが好適である。
本発明に係る水銀除去システムは、さらに、煙道内の脱硫手段の前流または後流に設置された水銀濃度計測手段と、上記水銀濃度の計測値に基づいて、上記水銀塩素化剤供給手段において供給すべきガス状水銀塩素化剤の初期濃度を算出する算出手段と、算出された上記初期濃度に基づいて、煙道内に供給する非ガス状水銀塩素化剤の量を制御する制御手段とを備えたものであることが好適である。
【0010】
本発明に係る水銀除去方法は、煙道内の窒素酸化物、硫黄酸化物および水銀を含む排ガスに対し、水銀塩素化剤を供給する工程、固体触媒下の還元脱硝処理工程、アルカリ吸収液を用いた湿式脱硫工程をこの順で行う水銀含有排ガスからの水銀除去方法であって、前記水銀塩素化剤を供給する工程は、常温常圧で非ガス状である非ガス状水銀塩素化剤を加熱またはガス化するステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る水銀含有排ガスからの水銀除去方法は、上記水銀塩素化剤を供給する工程が、上記ガス状水銀塩素化剤を希釈するステップを含むことが好適である。
本発明に係る水銀除去方法は、煙道内の脱硫手段の前流でガス状水銀塩素化剤濃度を計測するステップと、上記ガス状水銀塩素化剤の濃度計測値に基づいて、水銀塩素化剤供給手段において供給すべきガス状水銀塩素化剤の初期濃度を算出するステップと、算出された上記初期濃度に基づいて、煙道内に供給するガス状水銀塩素化剤の量を制御するステップとを含むことが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配管として一般的な金属材料を使用可能であり、長期の信頼性を有し、運転コストを低減させた排ガス処理システムを得ることができる。
以下に、本発明の水銀除去システムにおける水銀塩素化剤供給手段の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。同じ部材には同じ符号を付して表した。なお、本発明は以下に説明する形態に制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の水銀除去システムを含む排ガス処理システムの全体像を図1を用いて説明する。
ボイラ1から排出された窒素酸化物、硫黄酸化物および水銀含有排ガスは、窒素酸化物の還元を行う還元脱硝手段5、エアヒータ6、熱回収器7、および集塵機8を通り、硫黄酸化物を除去する脱硫手段9、再加熱器10を経て処理され、煙突11より排出される。
還元脱硝手段5の前流にはNH3注入箇所2があり、NH3タンク3から供給されるNH3によって窒素酸化物の還元を行う。
【0013】
本発明の水銀除去システムは、上記一連の排ガス処理システムに、図1に示すように煙道内の脱硫手段9の前流に設置された上記ガス状水銀塩素化剤の濃度計測手段と、上記ガス状水銀塩素化剤の濃度計測値に基づいて、上記水銀塩素化剤供給手段において供給すべきガス状水銀塩素化剤の初期濃度を算出する算出手段15と、算出された上記初期濃度に基づいて、非ガス状水銀塩素化剤タンクから煙道内に供給される非ガス状水銀塩素化剤の量を制御する制御手段16とを備えたシステムとすることができる。ガス状/非ガス状水銀塩素化剤については、後述する。
ガス状水銀塩素化剤の濃度計測手段は、ガス状水銀塩素化剤が脱硫手段9でほぼ全量捕集されてしまうので、脱硫手段9よりも前流で、かつ水銀塩素化剤注入箇所4より後流であればどこに設置してもよいが、ガス状水銀塩素化剤の濃度計測手段13に排ガスをサンプリングする管として細いものを用いた場合、塵等によって配管が詰まりやすいことから、集塵基8の後で脱硫手段9の前に設置することが好ましい。
【0014】
本発明の水銀除去システムは、さらに、煙道内の脱硫手段の前流または後流に設置された水銀濃度計測手段と、上記水銀濃度の計測値に基づいて、上記水銀塩素化剤供給手段において供給すべきガス状水銀塩素化剤の初期濃度を算出する算出手段15と、算出された上記初期濃度に基づいて、煙道内に供給する非ガス状水銀塩素化剤の量を制御する制御手段16とを備えたものであることが好適である。
水銀濃度計測手段の設置位置は、(I)Hg0、Hg2+を分別定量可能な濃度計測手段、または、(II)TotalHgの濃度計測手段、のいずれを用いるかにより異なる。本明細書において、上記Hg0は、蒸発した金属水銀である。
(I)を用いる場合、還元脱硝手段5の後流のどこに設置してもよいが、脱硫手段出口では脱硫手段での捕集率の影響を受けるため、脱硫手段入口より前流側に設置するのが好ましい。より好ましくは、集塵機での捕集効果も排除できる脱硝手段出口に設置する。
(II)を用いる場合、集塵機でいずれの成分も捕集されなかった場合に酸化率の変化で組成比率が変化しても脱硫手段入口では検出できないため、脱硫手段出口への設置となる。
煙道内の排ガス中に含まれる水銀の濃度は、通常、0.1〜50μg/m3Nの範囲である。
【0015】
ガス状水銀塩素化剤の濃度計測手段及び水銀濃度計測手段による計測値に基づいて以下のようにガス状水銀塩素化剤の初期濃度を算出し、制御することができる。
非ガス状水銀塩素化剤の供給量は、脱硝手段での所定の塩化水素ガスまたは塩素ガス中、Hg0酸化性能に必要なHCl濃度または必要なCl2濃度となるよう制御する。
(I)を用いる場合、触媒酸化率と各成分の濃度との関係は以下のとおりとなっており、いずれかの計測値より酸化率が低下した場合にHg0濃度の上昇またはHg2+濃度の低下が検出され、所定の酸化率が得られるように水銀塩素化剤噴霧量を増加させて制御を行う。
【0016】
【数1】

【0017】
(II)を用いる場合、Hg2+がある一定の捕集率で捕集され、Hg0が捕集されないとすると水銀の触媒酸化率と脱硫手段出口TotalHg濃度との関係は以下の通りとなり、触媒酸化率が低下した場合、TotalHg濃度の増加が検出され、所定の酸化率が得られるように水銀塩素化剤噴霧量を増加させて制御を行う。
【0018】
【数2】

【0019】
なお、脱硫手段での水銀捕集性能に対して、吸収塔内に蓄積した亜硫酸イオンの作用により、吸収したHg2+がHg0に再還元され、吸収塔より再揮散する現象も報告されているが、特開2004−313833号公報に示すような吸収液の酸化還元電位の制御により、抑制可能である。
【0020】
塩化水素または塩素ガスの濃度計測手段または水銀濃度計測手段による制御はそれぞれ別個に適用することも可能であるが、組み合わせてカスケード制御(どちらか一方を主要制御パラメータとし、他方を補助的パラメータとする)する方法も可能である。
【0021】
煙道内におけるHClの初期濃度は、1〜500ppm、好ましくは、10〜100ppmとなるよう噴霧する。また,Cl2の場合,0.1〜100ppm,好ましくは1〜10ppmとなるよう噴霧する。多すぎるとコスト増加で経済性が失われる。
排ガスに供給される水銀塩素化剤のモル濃度(本明細書において、塩化水素または塩素ガスの初期濃度ということがある。)に対するHgモル濃度の比[Hgモル濃度/塩化水素または塩素ガスのモル濃度]は、塩化水素ガス、NH4Cl粉末等の1価の塩素化物を用いた場合、好ましくは、0.001以下、より好ましくは、0.0001以下である。塩化水素ガスの初期濃度に対するHgモル濃度は、上記範囲内であれば経済性の観点で好ましい下限を例えば、0.00001以上とすることができる。塩素ガスの場合、好ましくは0.01以下,より好ましくは0.001以下である。塩素ガスの初期濃度に対するHgモル濃度は、上記範囲内であれば経済性の観点で好ましい下限を例えば、0.0001以上とすることができる。
【0022】
本発明に係る水銀除去システムは、水銀塩素化剤供給手段として、常温常圧で非ガス状である非ガス状水銀塩素化剤を加熱する加熱手段、または、非ガス状水銀塩素化剤からガス状水銀塩素化剤を得るガス化手段を備えたものである。
本明細書において、常温および常圧は、25℃、1気圧である。
本明細書において、非ガス状水銀塩素化剤は、固体の塩素化物、塩素化物を生成しうる固体化合物、または塩素化物の蒸気圧が0.1MPa以下の状態で溶媒に溶解している塩素化物および液体塩素である。非ガス状塩素化物としては、塩化アンモニウム[NH4Cl]粉末、次亜塩素酸アンモニウム、亜塩素酸アンモニウム等の固体の塩素化物、塩化水素水溶液[HCl水溶液]、亜塩素酸水溶液、過塩素酸水溶液等の溶媒に溶解した塩素化物を採用することができる。
上記加熱手段またはガス化手段は、図1に示すように、還元脱硝手段5の前流に設置され、水銀塩素化剤注入箇所4と接続している。水銀塩素化剤注入箇所4から供給される水銀塩素化剤は、排ガス中の水銀と還元脱硝手段5において反応しHgCl2を生成する。
本発明に係る水銀除去システムは、高純度の塩化水素ガスを用いる代わりに安価な非ガス状水銀塩素化剤を用いることにより、運転コストを低減することができたものである。
【0023】
図2および図3は、それぞれ本発明の水銀除去システムにおける水銀塩素化剤供給手段の実施の形態の例示である。
図2の実施の形態では、溶液タンク12に貯蔵された常温のHCl水溶液を、溶液供給ポンプ17を用いて噴霧ノズル23に供給し、ガス化手段21たる噴霧空気圧縮器から供給される所定の温度に加熱した圧縮空気によってスプレー・気化される。上記所定の温度は、通常、50〜60℃である。
スプレー・気化させた塩化水素は、希釈手段22から供給される希釈用加熱空気を流通させた配管内に供給し、所定濃度の塩化水素/水/空気混合ガスに調整することができる。得られた塩化水素/水/空気混合ガスは煙道内にNH3噴霧用のものと同等の分散器24を用いて分散させ水銀含有排ガス流100中に均一に噴霧する。
図3の実施の形態では、溶液タンク12に貯蔵された常温の塩化水素水溶液は、溶液供給ポンプ17を用いてガス化手段21たる塩化水素気化器に供給し、塩化水素と水蒸気の混合ガスとなり、気液分離器25を経て希釈手段22から供給される希釈用加熱空気を流通させた配管内に供給し、所定濃度の塩化水素/水/空気混合ガスに調整する。上記塩化水素/水/空気混合ガスの温度は、通常、70〜80℃である。
図2および図3における希釈用加熱空気の温度は、従来に比較して低温であり、通常、90〜150℃である。
【0024】
HCl噴霧時に煙道に供給する塩化水素/水/空気混合ガスに占める塩化水素ガス濃度は、1〜10体積%が好適である。より好ましい下限は、2体積%である。
【0025】
図2または図3に示す態様では、希釈用空気流量またはHCl溶液供給流量を制御することで煙道噴霧時の煙道内HCl濃度制御が容易となる。
また、腐食性の高い塩化水素水溶液を比較的低い温度で噴霧あるいは気化させているので、噴霧ノズル、供給配管、分散器等に一般的に用いられる材料を使用することができる。とくに、分散器は実績あるNH3噴霧用のものを用いることができるので、設計コスト低減でき、ガスを噴霧できることで混合も容易で均一化しやすい。
【0026】
図2の実施形態は、流量制御容易という特徴を有し、図3の実施形態は、安定性に優れるという特徴を有する。図3の形態によりベース流量を供給し、図2の形態により制御変動量を供給する組み合わせもまた、本発明に含まれる実施形態である。
【0027】
図4および図5は、それぞれ本発明の水銀除去システムにおける水銀塩素化剤供給手段の実施の形態の他の例示である。
図4の実施の形態では、粉末サイロ31から供給されたNH4Cl粉末が、粉末ブロワ35からエアードライヤー34を経てもたらされる圧縮空気によって、噴霧ノズル23から煙道に直接噴霧供給される。
煙道に供給されるNH4Cl/空気混合物に占めるNH4Cl濃度としては、1〜50質量%が好適である。
煙道に供給されたNH4Cl粉末は、煙道内で加熱され,昇華分解し、NH3とともに塩素化物たるHClを生成する。
なお、NH4Cl粉末の昇華分解反応は、吸熱反応であるので、サイロ31をヒーター33により予備加熱することが好ましい。ヒーター33の温度は、高いほど好ましいが、サイロや配管等の装置材料の耐熱温度から通常、150℃〜300℃である。
【0028】
図5の実施の形態では、煙道から引き込みブロワ41によって高温排ガス42の一部を引き込み、NH4Cl粉末を供給するサイロ31に送り滞留させることにより、ヒーター33とともにNH4Cl粉末の加熱および昇華を補助する。引き込む高温排ガス42の温度は、通常、350〜420℃である。
高温排ガス42のサイロ31内での滞留時間は、通常、数秒〜数分であり、好ましい上限は、5分、好ましい下限は、3秒である。
サイロ内で昇華したNH4Clの一部は、排ガスとともに高温ガス配管44に還流する(43)。高温ガス配管44内で得られた塩化水素/アンモニア/排ガスの混合ガスは分散器24を用いて煙道に噴霧する。
煙道に供給される塩化水素/アンモニア/排ガスの混合ガスに占める塩化水素濃度としては、1〜50質量%程度が好適である。
サイロ内で昇華しないNH4Clは、図4の実施の形態と同様に圧縮空気によって、噴霧ノズル23から煙道に直接噴霧供給される。
高温排ガスの高温ガス配管44内での滞留時間は、通常、数秒〜数百秒であり、好ましい上限は、100秒、好ましい下限は、3秒である。
【0029】
図4および図5に示す態様で用いるNH4Cl粉末の平均粒子径は、通常10mm以下であるが,煙道内または高温排ガスを抜き出し流通させた配管内におけるガス化を迅速に進行させる観点で、小さいほど好ましく、より好ましい上限を、1mm以下とすることができる。
【0030】
図4および図5に示す態様で用いるNH4Cl粉末は、腐食性の少ない中性塩であるので取り扱いが容易であり、供給配管等として、より低級材料を使用することができる。
また、NH4Cl粉末からは、HClとともに脱硝用のNH3も一部供給可能であり、これを脱硝ガスとして使用することにより、脱硝用液体NH3の消費量コストを低減することができる。
さらに図4および図5に示す態様では、粉末ブロワ35から供給される空気の流量でNH4Cl粉末供給流量を制御することにより、煙道噴霧時の煙道内HCl濃度制御を容易に行うことができる。
特に図5に示す態様では、ガスを噴霧できることで混合も容易で均一化しやすいという利点もある。
【0031】
図6の実施の形態では、塩素ボンベ51から供給された液体塩素が、塩素気化器52により40℃程度に加温されてガス化が促進される。
ガス化した塩素は、希釈空気ファン26から供給される空気を流通させた配管内に供給され、所定濃度の塩素/空気混合ガスに調整することができる。得られた塩素/空気混合ガスは、煙道内にNH3噴霧用のものと同等の分散器24を用いて分散させ水銀含有排ガス流100中に均一に噴霧することができる。
【0032】
本発明の水銀除去システムは、火力発電所等の水銀を含有する石炭や重油などの化石燃料を燃焼する装置から排出される排ガスの処理に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、排ガス処理システムに本発明の水銀除去システムを組み込んだ実施の形態の例示である。
【図2】図2は、本発明の水銀除去システムにおける水銀塩素化剤供給手段の実施の形態の例示である。
【図3】図3は、本発明の水銀除去システムにおける水銀塩素化剤供給手段の実施の形態の例示である。
【図4】図4は、本発明の水銀除去システムにおける水銀塩素化剤供給手段の実施の形態の例示である。
【図5】図5は、本発明の水銀除去システムにおける水銀塩素化剤供給手段の実施の形態の例示である。
【図6】図6は、本発明の水銀除去システムにおける水銀塩素化剤供給手段の実施の形態の例示である。
【符号の説明】
【0034】
1 ボイラ
2 NH3注入箇所
3 NH3タンク
4 水銀塩素化剤注入箇所
5 還元脱硝手段
6 エアヒータ
7 熱回収器
8 集塵機
9 脱硫手段
10 再加熱器
11 煙突
12 非ガス状水銀塩素化剤タンク
13 ガス状水銀塩素化剤濃度計測手段
14 水銀濃度計測手段
15 算出手段
16 制御手段
17 溶液供給ポンプ
21 ガス化手段
22 希釈手段
23 噴霧ノズル
24 分散器
25 気液分離器
26 希釈空気ファン
27 希釈空気ヒーター
31 粉末サイロ
33 ヒーター
34 エアードライヤー
35 粉末ブロワ
41 引き込みブロワ
42 高温排ガス
43 一部還流ガス
44 高温ガス配管
51 塩素ボンベ
52 塩素気化器
100 水銀含有排ガス流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道内の窒素酸化物、硫黄酸化物および水銀を含む排ガスに対し、水銀塩素化剤を供給する工程、固体触媒下の還元脱硝処理工程、アルカリ吸収液を用いた湿式脱硫工程をこの順で行う水銀含有排ガスからの水銀除去方法であって、
前記水銀塩素化剤を供給する工程は、常温常圧で非ガス状である非ガス状水銀塩素化剤を加熱またはガス化するステップ
を含むことを特徴とする水銀含有排ガスからの水銀除去方法。
【請求項2】
前記水銀塩素化剤を供給する工程が、前記ガス状水銀塩素化剤を希釈するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の水銀含有排ガスからの水銀除去方法。
【請求項3】
煙道内の脱硫装置の前流でガス状水銀塩素化剤濃度を計測するステップと、
前記ガス状水銀塩素化剤の濃度計測値に基づいて、水銀塩素化剤供給手段において供給すべきガス状水銀塩素化剤の初期濃度を算出するステップと、
算出された前記初期濃度に基づいて、煙道内に供給する非ガス状水銀塩素化剤の量を制御するステップと
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の水銀含有排ガスからの水銀除去方法。
【請求項4】
煙道内の窒素酸化物、硫黄酸化物および水銀を含む排ガスに対し、水銀塩素化剤を供給する水銀塩素化剤供給手段、窒素酸化物の還元を行う還元脱硝手段、硫黄酸化物を除去する脱硫手段を備えた水銀含有排ガスからの水銀除去システムであって、
前記水銀塩素化剤供給手段は、常温常圧で非ガス状である非ガス状水銀塩素化剤を加熱する加熱手段、または、非ガス状水銀塩素化剤からガス状水銀塩素化剤を得るガス化手段
を備えたことを特徴とする水銀含有排ガスからの水銀除去システム。
【請求項5】
前記ガス化手段が、所定の温度に加熱した圧縮空気であることを特徴とする請求項4に記載の水銀含有排ガスからの水銀除去システム。
【請求項6】
前記ガス化手段が、排ガスの一部であることを特徴とする請求項4または5に記載の水銀含有排ガスからの水銀除去システム。
【請求項7】
前記水銀塩素化剤供給手段が、さらに、ガス状水銀塩素化剤を希釈する希釈手段を備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の水銀含有排ガスからの水銀除去システム。
【請求項8】
さらに、煙道内の脱硫手段の前流に設置された前記ガス状水銀塩素化剤の濃度計測手段と、
前記ガス状水銀塩素化剤の濃度計測値に基づいて、前記水銀塩素化剤供給手段において供給すべきガス状水銀塩素化剤の初期濃度を算出する算出手段と、
算出された前記初期濃度に基づいて、煙道内に供給する非ガス状水銀塩素化剤の量を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載の水銀含有排ガスからの水銀除去システム。
【請求項9】
前記非ガス状水銀塩素化剤が、塩化アンモニウム、塩化水素水溶液または液体塩素であることを特徴とする請求項4ないし8のいずれかに記載の水銀含有ガスからの水銀除去システム。
【請求項10】
さらに、煙道内の脱硫手段の前流または後流に設置された水銀濃度計測手段と、
前記水銀濃度の計測値に基づいて、前記水銀塩素化剤供給手段において供給すべきガス状水銀塩素化剤の初期濃度を算出する算出手段と、
算出された前記初期濃度に基づいて、煙道内に供給する非ガス状水銀塩素化剤の量を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項4ないし9のいずれかに記載の水銀含有ガスからの水銀除去システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−167743(P2007−167743A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367344(P2005−367344)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】