説明

水銀除去機能を有するガス処理設備

【課題】 広い温度範囲にある処理ガスに対し、銅系吸収剤により水銀を効果的に除去する。
【解決手段】 銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤3が充填され、焼却設備1からの燃焼排ガス(〜250℃)を流通させることで燃焼排ガスに含まれる水銀を銅系吸収剤に吸収させる水銀除去手段2を備え、適用温度の範囲が限られた活性炭を用いることなく、250℃以下の広い温度範囲の処理ガスに含まれる水銀を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水銀除去機能を有するガス処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料やバイオマス、廃棄物から製造した原料ガス(ガス化ガス等)、各種焼却設備や燃焼設備から排出される燃焼排ガス、天然から産出されるガス(天然ガス)には、使用機器や環境に悪影響を与える不純物が含まれているため、不純物を除去することが不可欠である。特に、蒸気圧が高く蒸気として存在する水銀は、フィルタ等では除去しにくく、中でも金属水銀蒸気は、水に不溶性であるため、洗浄水により洗浄を行っても除去することができない。このため、水銀の除去には、吸着現象を利用した活性炭が使用されている。
【0003】
水銀を除去するための活性炭は、安価である反面、水銀を吸着できる温度範囲(適用温度)が、例えば、60℃以下の低温範囲に制約されている。また、水銀を吸着した後の活性炭を廃棄物として処理する必要があり、水銀等を除去するために大量の廃棄物を排出する結果になってしまう。
【0004】
このような状況から、銅を主体とした銅系吸収剤を用いて水銀を吸収する技術(例えば、特許文献1参照)が従来から提案されている。原料ガス(ガス化ガス等)、燃焼排ガス、天然ガス等の各種の処理ガスに対して、この種の銅系吸収剤により水銀を除去する技術が本願発明者等により種々研究されている。銅系吸収剤は広い温度範囲の処理ガスに対して水銀を除去できると考えられているが、広い温度範囲にある処理ガスに銅系吸収剤を適用するための効果的な技術は、確立される過程にあるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−161255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、適用温度の範囲が限られた活性炭を用いることなく、250℃以下の広い温度範囲の処理ガスに含まれる水銀を除去することができる水銀除去機能を有するガス処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の水銀除去機能を有するガス処理設備は、銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤が充填され、250℃以下の温度の処理ガスを流通させることで前記処理ガスに含まれる水銀を前記銅系吸収剤に吸収させる水銀除去手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、適用温度の範囲が限られた活性炭を用いることなく、250℃以下の広い温度範囲の処理ガスに含まれる水銀を水銀除去手段で除去することが可能になる。
【0009】
そして、請求項2に係る本発明の水銀除去機能を有するガス処理設備は、請求項1に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、前記処理ガスに含まれる不純物を湿式で除去する湿式不純物除去手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る本発明では、湿式不純物除去手段により不純物を除去すると共に、水銀除去手段により250℃以下の温度の処理ガスに含まれる水銀を除去することができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の水銀除去機能を有するガス処理設備は、請求項2に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、前記処理ガスは、燃焼排ガスであることを特徴とし、請求項4に係る本発明の水銀除去機能を有するガス処理設備は、請求項2に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、前記処理ガスは、ガス化ガスであることを特徴とする。
【0012】
請求項3、請求項4に係る本発明では、高温の燃焼排ガス、ガス化ガスに含まれる不純物を湿式不純物除去手段により除去すると共に、水銀除去手段により水銀を除去することができる。
【0013】
また、請求項5に係る本発明の水銀除去機能を有するガス処理設備は、請求項3もしくは請求項4に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、前記湿式不純物除去手段の上流側に水銀除去手段を備えたことを特徴とし、湿式不純物除去手段により、温度が低下する前の処理ガスの水銀を除去することができる。
【0014】
また、請求項6に係る本発明の水銀除去機能を有するガス処理設備は、請求項3もしくは請求項4に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、前記湿式不純物除去手段の下流側に水銀除去手段を備えたことを特徴とし、湿式不純物除去手段では除去されない(水に不溶性の)金属水銀も除去することができる。
【0015】
また、請求項7に係る本発明の水銀除去機能を有するガス処理設備は、請求項3もしくは請求項4に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、前記湿式不純物除去手段の上流側及び下流側に水銀除去手段をそれぞれ備えたことを特徴とし、湿式不純物除去手段により温度が低下する前の処理ガスの水銀及び湿式不純物除去手段では除去されない(水に不溶性の)金属水銀も除去することができる。
【0016】
また、請求項8に係る本発明の水銀除去機能を有するガス処理設備は、請求項2に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、前記処理ガスは、天然に存在するガスであることを特徴とし、天然に存在するガス(天然ガス)に含まれる不純物を湿式不純物除去手段で除去すると共に、水銀除去手段により250℃以下の天然ガスに存在するガスに含まれる水銀を除去することができる。
【0017】
また、請求項9に係る本発明の水銀除去機能を有するガス処理設備は、請求項8に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、前記天然に存在するガス(天然ガス)を液化する液化手段が備えられていることを特徴とする。
【0018】
請求項9に係る本発明では、天然ガスを液化する液化手段の上流側もしくは液化手段の途中に水銀除去手段を備えることで、液化される前(液化される過程)の250℃以下の温度の天然ガスに含まれる水銀を除去することができ、液化手段の機器に水銀による影響を与えることを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水銀除去機能を有するガス処理設備は、適用温度の範囲が限られた活性炭を用いることなく、250℃以下の広い温度範囲の処理ガスに含まれる水銀を除去することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施例に係るガス処理設備の概略系統図である。
【図2】本発明の第2実施例に係るガス処理設備の概略系統図である。
【図3】本発明の第3実施例に係るガス処理設備の概略系統図である。
【図4】本発明の第4実施例に係るガス処理設備の概略系統図である。
【図5】本発明の第5実施例に係るガス処理設備の概略系統図である。
【図6】本発明の第6実施例に係るガス処理設備の概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1、図2に基づいて第1実施例及び第2実施例を説明する。
【0022】
図1には本発明の第1実施例に係る水銀除去機能を有するガス処理設備の概略系統、図2には本発明の第2実施例に係る水銀除去機能を有するガス処理設備の概略系統を示してある。第1実施例及び第2実施例は、焼却設備等の燃焼排ガスを処理ガスとしている。
【0023】
焼却設備1は、例えば、ごみの焼却設備や電池や蛍光灯等の廃棄物を処理する設備であり、高温の排ガスが排出される設備となっている。燃焼排ガスを処理ガスとする設備としては、発電設備の排気ガスの処理設備等がある。
【0024】
図1に基づいて第1実施例を説明する。
【0025】
図に示すように、焼却設備1からの処理ガスとしての燃焼排ガスの温度が、例えば、冷却手段により調整され(燃焼排ガスが冷却され)、温度が調整された燃焼排ガス(250℃以下)は水銀除去手段2に送られ、水銀除去手段2では主に金属水銀が吸収除去される。水銀除去手段2には銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤3が充填され、銅系吸収剤3は燃焼排ガスが流通することにより燃焼排ガスに含まれる水銀を吸収する。
【0026】
水銀除去手段2で水銀が除去された燃焼排ガスは湿式不純物除去手段4に送られ、湿式不純物除去手段4では燃焼排ガスに含まれる不純物が洗浄水(水、アルカリ性水溶液、中性水溶液、酸性水溶液)によって除去される。即ち、湿式不純物除去手段4の上部にはノズル5が設けられ、ノズル5から洗浄水が噴出されることで、燃焼排ガス中の不純物が洗浄水によって除去される。不純物として、塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物が洗浄水によって除去される。
【0027】
尚、湿式不純物除去手段4としては、上部から加圧された洗浄水を燃焼排ガスに噴射する形式の手段を例に挙げて説明したが、下部から洗浄水を燃焼排ガスに噴射することも可能である。また、洗浄水の中に燃焼排ガスを直接吹き込んで不純物を洗浄水に溶かして除去する手段や、充填物に噴霧した洗浄水の水膜に燃焼排ガスを接触させることで不純物を除去する手段、洗浄水を回転体で分散させて燃焼排ガスを接触させることで不純物を除去する手段等を適用することが可能である。
【0028】
尚、湿式不純物除去手段の洗浄水としては、水、水溶液(アルカリ性、中性、酸性)の他に、不溶性の物質と混合したスラリー、有機物質を含む溶液も使用することができる。
【0029】
水銀除去手段2で高温の燃焼排ガスから水銀が除去され、湿式不純物除去手段4で塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物が除去された燃焼排ガスは、煙突6から大気に放出される。
【0030】
上述した焼却設備1では、適用温度の範囲が限られた活性炭を用いることなく、250℃以下の高温の燃焼排ガスに含まれる水銀を除去することが可能になる。また、塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物を湿式により除去することができる。
【0031】
図2に基づいて第2実施例を説明する。第1実施例の処理設備と同一構成部材には同一符号を付してある。
【0032】
図に示すように、焼却設備1からの処理ガスとしての燃焼排ガスの温度が、例えば、冷却手段により調整され(燃焼排ガスが冷却され)、温度が調整された燃焼排ガス(250℃以下)は湿式不純物除去手段4に送られ、湿式不純物除去手段4では燃焼排ガスに含まれる不純物が洗浄水によって除去される。即ち、湿式不純物除去手段4の上部にはノズル5が設けられ、ノズル5から洗浄水が噴出されることで、燃焼排ガス中の不純物が洗浄水によって除去される。不純物として、塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物が洗浄水によって除去される。
【0033】
湿式不純物除去手段4で不純物が除去されて室温程度の低温にされた燃焼排ガスは水銀除去手段2に送られ、水銀除去手段2では洗浄水で洗い流すことができない(水に不溶性の)金属水銀が吸収除去される。水銀除去手段2には銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤3が充填され、銅系吸収剤3は燃焼排ガスが流通することにより燃焼ガスに含まれる水銀を吸収する。
【0034】
尚、湿式不純物除去手段4としては、第1実施例で説明した他の手段を適用することも可能である。
【0035】
湿式不純物除去手段4で塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物が除去され、室温程度にされた燃焼排ガスから水銀除去手段2で水銀が除去され、水銀をはじめとする不純物が除去された燃焼排ガスは煙突6から大気に放出される。
【0036】
上述した処理設備では、塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物を湿式により除去することができ、適用温度の範囲が限られた活性炭を用いることなく、室温程度にされた燃焼排ガスに含まれる水銀を除去することが可能になる。
【0037】
図3から図5に基づいて第3実施例、第4実施例及び第5実施例を説明する。
【0038】
図3には本発明の第3実施例に係る水銀除去機能を有するガス処理設備の概略系統、図4には本発明の第4実施例に係る水銀除去機能を有するガス処理設備の概略系統、図5には本発明の第5実施例に係る水銀除去機能を有するガス処理設備の概略系統を示してある。尚、図1、図2に示した部材と同一部材には同一符号を付してある。第3実施例から第5実施例は、ガス化設備のガス化ガスを処理ガスとしている。
【0039】
ガス化設備は、例えば、化石燃料やバイオマス、廃棄物を原料としてガス化設備でガス化された原料ガス(ガス化ガス)を処理ガスとし、高温の処理ガスが生成される設備である。そして、ガス化ガスの不純物が除去され、化学原料の製品とされ、または、燃焼用の燃料にされる。
【0040】
図3に基づいて第3実施例を説明する。
【0041】
図に示すように、ガス化設備15で生成された高温の処理ガスとしてのガス化ガスの温度が、例えば、冷却手段により調整され(ガス化ガスが冷却され)、温度が調整されたガス化ガス(250℃以下)は水銀除去手段2に送られ、水銀除去手段2では主に金属水銀が吸収除去される。水銀除去手段2には銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤3が充填され、銅系吸収剤3はガス化ガスが流通することによりガス化ガスに含まれる水銀を吸収する。
【0042】
水銀除去手段2で水銀が除去されたガス化ガスは湿式不純物除去手段4に送られ、湿式不純物除去手段4ではガス化ガスに含まれる不純物が洗浄水によって除去される。即ち、湿式不純物除去手段4の上部にはノズル5が設けられ、ノズル5から洗浄水が噴出されることで、ガス化ガス中の不純物が洗浄水によって除去される。不純物として、塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物が洗浄水によって除去される。
【0043】
尚、湿式不純物除去手段4としては、第1実施例で説明した他の手段を適用することも可能である。
【0044】
水銀除去手段2で高温のガス化ガスから水銀が除去され、湿式不純物除去手段4で塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物が除去されたガス化ガスは、例えば、燃焼装置や発電機器の燃料や、化学合成の原料として利用される。燃焼設備や化学合成設備に供給する原料ガスに水銀が含まれないため、燃焼後の排ガスや化学合成で製造される製品には水銀が混入することがなくなる。
【0045】
上述した処理設備では、適用温度の範囲が限られた活性炭を用いることなく、250℃程度の高温のガス化ガスに含まれる水銀を除去することが可能になる。また、塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物を湿式により除去することができる。
【0046】
図4に基づいて第4実施例を説明する。
【0047】
図に示すように、ガス化設備15で生成された高温の処理ガスとしてのガス化ガスの温度が、例えば、冷却手段により調整され(ガス化ガスが冷却され)、温度が調整されたガス化ガス(250℃以下)は水銀除去手段2に送られ、水銀除去手段2では主に金属水銀が吸収除去される。水銀除去手段2には銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤3が充填され、銅系吸収剤3はガス化ガスが流通することによりガス化ガスに含まれる水銀を吸収する。
【0048】
水銀除去手段2で水銀が除去されたガス化ガスは乾式不純物除去手段16に送られ、乾式不純物除去手段16ではガス化ガスに含まれる不純物が化学変換や物理的な吸収等により除去される。不純物として、塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物が除去される。
【0049】
水銀除去手段2で高温のガス化ガスから水銀が除去され、乾式不純物除去手段16で塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物等の不純物が除去された高温のガス化ガスは、例えば、発電設備の燃焼器に燃料ガスとして利用される。
【0050】
上述した処理設備では、適用温度の範囲が限られた活性炭を用いることなく、250℃以下の高温のガス化ガスに含まれる水銀を除去することが可能になる。また、乾式によりガス化ガスを高温の状態に維持したまま、塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物を除去することができる。
【0051】
図5に基づいて第5実施例を説明する。
【0052】
図に示すように、ガス化設備15で生成された高温の処理ガスとしてのガス化ガスの温度が、例えば、冷却手段により調整され(ガス化ガスが冷却され)、温度が調整されたガス化ガス(250℃以下)は湿式不純物除去手段4に送られ、湿式不純物除去手段4ではガス化ガスに含まれる不純物が洗浄水によって除去される。即ち、湿式不純物除去手段4の上部にはノズル5が設けられ、ノズル5から洗浄水が噴出されることで、ガス化ガス中の不純物が洗浄水によって除去される。不純物として、塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物が洗浄水によって除去される。
【0053】
湿式不純物除去手段4で不純物が除去されて室温程度の低温にされたガス化ガスは水銀除去手段2に送られ、水銀除去手段2では洗浄水で洗い流すことができない(水に不溶性の)金属水銀が吸収除去される。水銀除去手段2には銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤3が充填され、銅系吸収剤3はガス化ガスが流通することによりガス化ガスに含まれる水銀を吸収する。
【0054】
尚、湿式不純物除去手段4としては、第1実施例で説明した他の手段を適用することも可能である。
【0055】
湿式不純物除去手段4で塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物が除去され、室温程度にされたガス化ガスから水銀除去手段2で水銀が除去され、水銀をはじめとする不純物が除去されたガス化ガスは、例えば、燃焼装置や発電機器の燃料や、化学合成の原料として利用される。燃焼設備や化学合成設備に供給する原料ガスに水銀が含まれないため、燃焼後の排ガスや化学合成で製造される製品には水銀が混入することがなくなる。
【0056】
上述した処理設備では、塵、硫黄化合物、ハロゲン化合物、窒素化合物、その他のガス状不純物を湿式により除去することができ、適用温度の範囲が限られた活性炭を用いることなく、室温程度にされたガス化ガスに含まれる水銀を除去することが可能になる。
【0057】
図6に基づいて第6実施例を説明する。
【0058】
図6には本発明の第6実施例に係る水銀除去機能を有するガス処理設備の概略系統を示してある。尚、図1に示した部材と同一部材には同一符号を付してある。第6実施例は、液化される前(液化される過程)の天然ガス(天然に存在するガス)を処理ガスとしている。
【0059】
天然に存在する天然ガスは、液化されて液化天然ガスとして製品化される。天然ガスは熱交換器等の冷却手段(液化手段)により冷却されることで液化されるが、天然ガスに混入する水銀を除去することにより、熱交換器等の構成機器(例えば、アルミニウム製のプレートフィンやチューブ等)の腐食を防止する必要がある。本実施例は、適用温度の範囲が制約された活性炭を使用することなく、天然ガスから水銀を除去するガス処理設備である。
【0060】
図に示すように、処理ガスとして自然から産出される天然ガス(室温程度)は水銀除去手段2に送られ、水銀除去手段2では主に金属水銀が除去される。水銀除去手段2には銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤3が充填され、銅系吸収剤3は原料天然ガスが流通することにより天然ガスに含まれる水銀を吸収する。
【0061】
水銀除去手段2で水銀が除去された天然ガスは液化手段としての熱交換器21に送られ、所定の温度に冷却されることで液化天然ガス(LNG)とされ製品化される。熱交換器21の冷媒は圧縮機22により加圧され、断熱膨張により低温・低圧の冷媒とされて熱交換器21に送られる。
【0062】
尚、図には1段階の熱交換器21を示してあるが、複数段階に分けて冷却サイクルを構成することもできる。この場合、熱交換器21の途中に水銀除去手段2を備えることが可能である。
【0063】
また、天然ガスそのものを圧縮して圧力を急激に降下させて冷却する冷却手段を適用することも可能である。この場合、圧縮手段の下流側に水銀除去手段2を備え、高温となった天然ガスから水銀を除去することができる。
【0064】
上述した処理設備では、熱交換器21の上流側で、適用温度の範囲が限られた活性炭を用いることなく、原料天然ガスに含まれる水銀を除去することが可能になる。このため、熱交換器21の構成機器の水銀による腐食を防止することができる。
【0065】
尚、図6では、天然に存在する天然ガスを熱交換器21で液化するガス処理設備を例に挙げて説明したが、天然ガスから水銀を除去するガス処理設備として、天然ガスを圧縮し、圧縮した天然ガスを液化することなく使用ガスとして処理するガス処理設備を適用することも可能である。
【0066】
上述した第1実施例から第6実施例に係る水銀除去機能を有するガス処理設備は、適用温度の範囲が限られた活性炭を用いることなく、250℃以下の広い温度範囲の処理ガス(燃焼排ガス・ガス化ガス・天然ガス等)に含まれる水銀を除去することが可能になる。
【0067】
尚、本発明は上記各実施例の構成に限定されるものではなく、250℃以下の広い温度範囲の処理ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去手段を備えたガス処理設備であれば、処理ガスとしては例示した燃焼排ガス、ガス化ガス、天然ガスに限定されず、高温の排出ガス等も適用可能であり、また、使用する構成機器と使用する処理ガスを任意に選定して組み合わせることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は水銀除去機能を有するガス処理設備の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 焼却設備
2 水銀除去手段
3 銅系吸収剤
4 湿式不純物除去手段
5 ノズル
6 煙突
15 ガス化設備
16 乾式不純物除去手段
21 熱交換器
22 圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤が充填され、250℃以下の温度の処理ガスを流通させることで前記処理ガスに含まれる水銀を前記銅系吸収剤に吸収させる水銀除去手段を備えたことを特徴とする水銀除去機能を有するガス処理設備。
【請求項2】
請求項1に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、
前記処理ガスに含まれる不純物を湿式で除去する湿式不純物除去手段を備えた
ことを特徴とする水銀除去機能を有するガス処理設備。
【請求項3】
請求項2に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、
前記処理ガスは、燃焼排ガスである
ことを特徴とする水銀除去機能を有するガス処理設備。
【請求項4】
請求項2に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、
前記処理ガスは、ガス化ガスである
ことを特徴とする水銀除去機能を有するガス処理設備。
【請求項5】
請求項3もしくは請求項4に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、
前記湿式不純物除去手段の上流側に水銀除去手段を備えた
ことを特徴とする水銀除去機能を有するガス処理設備。
【請求項6】
請求項3もしくは請求項4に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、
前記湿式不純物除去手段の下流側に水銀除去手段を備えた
ことを特徴とする水銀除去機能を有するガス処理設備。
【請求項7】
請求項3もしくは請求項4に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、
前記湿式不純物除去手段の上流側及び下流側に水銀除去手段をそれぞれ備えた
ことを特徴とする水銀除去機能を有するガス処理設備。
【請求項8】
請求項2に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、
前記処理ガスは、天然に存在するガスである
ことを特徴とする水銀除去機能を有するガス処理設備。
【請求項9】
請求項8に記載の水銀除去機能を有するガス処理設備において、
前記天然に存在するガスを液化する液化手段が備えられている
ことを特徴とする水銀除去機能を有するガス処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−71226(P2012−71226A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216149(P2010−216149)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】